(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162584
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20241114BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20241114BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20241114BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20241114BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/38 Z
H01M4/587
H01M4/36 E
H01M4/36 A
H01M4/62 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078235
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】姜 受林
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB08
5H050CB11
5H050DA03
5H050DA10
5H050HA01
5H050HA05
(57)【要約】
【課題】負極活物質としてSi系材料と黒鉛粒子と含む負極を備える二次電池であって、入出力特性とサイクル特性とが好適に両立される二次電池を提供すること。
【解決手段】ここに開示される二次電池は、正極および負極を有する電極体を備えた二次電池であって、負極60は、負極集電体62と、該負極集電体62上に配置された負極活物質層64と、を備えている。負極活物質層64は、負極活物質として、黒鉛粒子66と、Si含有粒子68と、を含む。Si含有粒子68はSiとCとの複合体であり、Si含有粒子68のSiには、元素Mがドープされており、元素Mは、周期表の第15族および第16族に属する元素のうち、少なくともいずれか一種の元素である。Si含有粒子68における前記元素Mのドープ量が0.1at%以上5at%以下である。ここで、黒鉛粒子66とSi含有粒子68との重量比が、9:1~4:6である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極および負極を有する電極体を備えた二次電池であって、
前記負極は、負極集電体と、該負極集電体上に配置された負極活物質層と、を備えており、
前記負極活物質層は、負極活物質として、黒鉛粒子と、Si含有粒子と、を含み、
前記Si含有粒子はSiとCとの複合体であり、
前記Si含有粒子のSiには、元素Mがドープされており、
前記元素Mは、周期表の第15族および第16族に属する元素のうち、少なくともいずれか一種の元素であり、
前記Si含有粒子における前記元素Mのドープ量が0.1at%以上5at%以下であり、
ここで、前記黒鉛粒子と前記Si含有粒子との重量比が、9:1~4:6である、二次電池。
【請求項2】
前記Si含有粒子は、当該Si含有粒子の全重量を100wt%としたときに、Si含有量が30wt%以上75wt%以下である、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記Si含有粒子は、細孔を含む多孔質炭素材と、該多孔質炭素材の前記細孔に配置されるSiナノ粒子と、を含む、請求項1に記載の二次電池。
【請求項4】
前記黒鉛粒子の平均粒子径D50が、10μm以上25μm以下である、請求項1に記載の二次電池。
【請求項5】
前記負極活物質層は、さらに導電材を含んでおり、
前記負極活物質層の全重量を100wt%としたときに、前記導電材の含有量が0.01wt%以上1wt%以下である、請求項1に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の二次電池は、パソコン、携帯端末等のポータブル電源や、電気自動車(BEV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の車両駆動用電源などに好適に用いられている。このような二次電池に用いられる負極は、一般的に、負極集電体上に負極活物質を含む負極活物質層が配置された構成を有する。
【0003】
近年では、二次電池の高容量化を目的として、負極活物質としてSi系材料を使用することが検討されている(例えば特許文献1および2)。特許文献1には、内部空隙チャンネルの平均幅が500nm乃至3μmであり、平均直径が1μm乃至5μmの硫黄-ドーピングシリコン負極材が開示されている。また、特許文献2には、ケイ素と酸素とホウ素とを含み、酸素とホウ素の濃度が傾斜している負極活物質粒子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2022-507948号公報
【特許文献2】特開2016-152213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
Si含有量が多い負極では、抵抗増加による入出力特性の低下や、Li析出等が生じる可能性がある。また、特許文献1に開示されるように、負極活物質としてドーピングシリコンのみを用いた際には、抵抗が小さく二次電池の入出力特性が高い一方で、充放電する際の膨張収縮が大きくなる傾向にある。このため、導電パス切れが生じることや、副反応増加による容量の低下等が生じる虞がある。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、負極活物質としてSi系材料と黒鉛粒子とを含む負極を備える二次電池であって、入出力特性とサイクル特性とが好適に両立される二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示される二次電池は、正極および負極を有する電極体を備えた二次電池であって、上記負極は、負極集電体と、該負極集電体上に配置された負極活物質層と、を備えている。上記負極活物質層は、負極活物質として、黒鉛粒子と、Si含有粒子と、を含んでいる。上記Si含有粒子はSiとCとの複合体であり、上記Si含有粒子のSiには、元素Mがドープされている。上記元素Mは、周期表の第15族および第16族に属する元素のうち、少なくともいずれか一種の元素である。上記Si含有粒子における上記元素Mのドープ量が0.1at%以上5at%以下である。ここで、上記黒鉛粒子と上記Si含有粒子との重量比が、9:1~4:6である。
【0008】
かかる構成によれば、SiとCとを含むSi含有粒子に元素Mをドープすることにより、入出力特性を向上させつつ、充放電に伴うSiの膨張収縮を好適に抑制することができる。また、Si含有粒子と黒鉛粒子とを上記した重量比で含むことにより、負極活物質全体の膨張収縮を好適に抑制することができる。したがって、入出力特性とサイクル特性とが両立された二次電池を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る二次電池の内部構造を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る電極体の構成を模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係る負極を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、ここで開示される技術の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、ここで開示される技術の実施に必要な事柄(例えば、ここに開示される技術を特徴付けない二次電池の一般的な構成および製造プロセス等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここで開示される技術は、本明細書に開示されている内容と、当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、各図面は模式的に描かれており、寸法関係(長さ、幅、厚み等)は実際の寸法関係を必ずしも反映するものではない。また、以下に説明する図面において、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、本明細書において範囲を示す「A~B」(A,Bは任意の数値)の表記は、A以上B以下を意味する。
【0011】
図1は、一実施形態に係る二次電池100の内部構造を模式的に示す図である。
図1に示すように、二次電池100は、正極50および負極60を有する電極体20と、非水電解質(図示せず)と、電極体20および非水電解質を収容する電池ケース30と、を備えている。
図1に示される二次電池100は、ここでは、リチウムイオン二次電池である。ここに開示される負極60は、好ましくはリチウムイオン二次電池用の負極として用いられる。
【0012】
電池ケース30は、外部接続用の正極端子42および負極端子44と、電池ケース30の内圧が所定レベル以上に上昇した場合に該内圧を開放するように設定された薄肉の安全弁36と、が設けられている。また、電池ケース30には、非水電解液を注入するための注入口(図示せず)が設けられている。正極端子42は、正極集電板42aと電気的に接続されている。負極端子44は、負極集電板44aと電気的に接続されている。電池ケース30の材質としては、例えば、アルミニウム等の軽量で熱伝導性の良い金属材料が用いられる。
【0013】
図2は、電極体20の構成を模式的に示す図である。ここでは、電極体20は、扁平形状の捲回電極体である。
図2に示すように、電極体20は、長尺シート状の正極50(以下、「正極シート50」ともいう。)と、長尺シート状の負極60(以下、「負極シート60」ともいう。)とが、2枚の長尺状のセパレータ70を介して重ね合わされて長手方向に捲回された形態を有する。正極シート50は、長尺状の正極集電体52の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って正極活物質層54が形成された構成を有する。負極シート60は、長尺状の負極集電体62の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って負極活物質層64が形成された構成を有する。
図1および
図2に示すように、正極集電体露出部52a(すなわち、正極活物質層54が形成されずに正極集電体52が露出した部分)および、負極集電体露出部62a(すなわち、負極活物質層64が形成されずに負極集電体62が露出した部分)は、電極体20の捲回軸方向(すなわち、上記長手方向に直交するシート幅方向)の両端から外方にはみ出すように形成されている。正極集電体露出部52aおよび負極集電体露出部62aには、それぞれ正極集電板42aおよび負極集電板44aが接合されている。
【0014】
正極シート50を構成する正極集電体52としては、リチウムイオン二次電池に用いられる公知の正極集電体を用いてよく、特に限定されない。例えば、導電性の良好な金属(例えば、アルミニウム、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等)製のシートまたは箔が挙げられる。正極集電体52としては、アルミニウム箔が好ましい。正極集電体52の寸法は特に限定されず、電池設計に応じて適宜決定すればよい。正極集電体52としてアルミニウム箔を用いる場合には、その厚みは、特に限定されないが、例えば5μm以上35μm以下であり、好ましくは7μm以上20μm以下である。
【0015】
正極活物質層54は、正極活物質を含有する。正極活物質としては、リチウムイオン二次電池に用いられる公知の組成の正極活物質を用いてよい。具体的に例えば、正極活物質として、リチウム複合酸化物、リチウム遷移金属リン酸化合物(例えば、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、リン酸マンガンリチウム(LiMnPO4))等を用いることができる。正極活物質の結晶構造は、特に限定されず、層状構造、スピネル構造、オリビン構造等であってよい。
【0016】
リチウム複合酸化物としては、遷移金属元素として、Ni、Co、Mnのうちの少なくとも1種を含むリチウム遷移金属複合酸化物が好ましく、その具体例としては、リチウムニッケル系複合酸化物、リチウムコバルト系複合酸化物、リチウムマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム系複合酸化物、リチウム鉄ニッケルマンガン系複合酸化物等が挙げられる。これらの正極活物質は、1種単独で用いてよく、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、正極活物質としては、リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物を好ましく用いることができる。
【0017】
なお、本明細書において「リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物」とは、Li、Ni、Co、Mn、Oを構成元素とする酸化物の他に、それら以外の1種または2種以上の添加的な元素を含んだ酸化物をも包含する用語である。かかる添加的な元素の例としては、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Na、Fe、Zn、Sn等の遷移金属元素や典型金属元素等が挙げられる。また、添加的な元素は、B、C、Si、P等の半金属元素や、S、F、Cl、Br、I等の非金属元素であってもよい。このことは、上記したリチウムニッケル系複合酸化物、リチウムコバルト系複合酸化物、リチウムマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム系複合酸化物、リチウム鉄ニッケルマンガン系複合酸化物等についても同様である。
【0018】
正極活物質層54は、正極活物質以外の成分、例えば、導電材、バインダ等を含んでいてもよい。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)等のカーボンブラック;気相法炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ(CNT)等の炭素繊維;その他(例、グラファイトなど)の炭素材料を好適に使用し得る。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を使用し得る。
【0019】
特に限定されないが、正極活物質層中の正極活物質の含有量(すなわち、正極活物質層54の全重量に対する正極活物質の含有量)は、例えば、70wt%以上であることが好ましく、80wt%以上99wt%以下であることがより好ましく、85wt%以上98wt%以下であってもよい。また、正極活物質層中の導電材の含有量は、特に限定されないが、0.5wt%以上5wt%以下であることが好ましく、0.7wt%以5wt%以下であることがより好ましい。また、正極活物質層中のバインダの含有量は、特に限定されないが、0.5wt%以上5wt%以下であることが好ましく、0.7wt%以5wt%以下であることがより好ましい。
【0020】
正極活物質層54の片面当たりの厚みは、特に限定されないが、例えば20μm以上であり、好ましくは50μm以上である。一方、当該厚みは、例えば300μm以下であり、好ましくは200μm以下である。
【0021】
セパレータ70としては、従来と同様の各種微多孔質シートを用いることができ、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の樹脂から成る微多孔質樹脂シートが挙げられる。かかる微多孔質樹脂シートは、単層構造であってもよく、二層以上の複層構造(例えば、PE層の両面にPP層が積層された三層構造)であってもよい。また、セパレータ70は、耐熱層(HRL)を備えていてもよい。
【0022】
非水電解質は従来と同様のものを使用可能であり、例えば、有機溶媒(非水溶媒)中に、支持塩を含有させた非水電解液を用いることができる。非水溶媒としては、カーボネート類、エステル類、エーテル類等の非プロトン性溶媒を用いることができる。なかでも、カーボネート類、例えば、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等を好適に採用し得る。あるいは、モノフルオロエチレンカーボネート(MFEC)、ジフルオロチレンカーボネート(DFEC)、モノフルオロメチルジフルオロメチルカーボネート(F-DMC)、トリフルオロジメチルカーボネート(TFDMC)のようなフッ素化カーボネート等のフッ素系溶媒を好ましく用いることができる。このような非水溶媒は、1種を単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。支持塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4等のリチウム塩を好適に用いることができる。支持塩の濃度は、特に限定されるものではないが、0.7mol/L以上1.3mol/L以下程度が好ましい。
なお、上記非水電解質は、本技術の効果を著しく損なわない限りにおいて、上述した非水溶媒、支持塩以外の成分を含んでいてもよく、例えば、ガス発生剤、被膜形成剤、分散剤、増粘剤等の各種添加剤を含み得る。
【0023】
以下、ここに開示される二次電池の負極60について説明する。
図3は、ここに開示される二次電池100の負極60を模式的に示す図である。
図3に示すように、負極60は、負極集電体62と、該負極集電体62上に配置される負極活物質層64と、を備えている。負極集電体62は、従来公知のものを用いてよく、特に限定されない。例えば、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等の金属製のシートまたは箔状体が挙げられる。負極集電体62として銅箔を用いる場合には、その平均厚みは特に限定されないが、例えば5μm以上30μm以下であり、好ましくは5μm以上20μm以下、より好ましくは5μm以上15μm以下である。
【0024】
負極活物質層64は、少なくとも負極活物質を含んでいる。負極活物質層64は、負極活物質として、黒鉛粒子66と、Si含有粒子68と、を含んでいる。かかるSi含有粒子68は、周期表の第15族および第16族のうち、少なくともいずれか一種の元素がドープされている。そして、ここに開示される負極活物質層64において、これら黒鉛粒子66とSi含有粒子68との重量比が9:1~4:6である。かかる構成によれば、サイクル特性と入出力特性とが両立された二次電池100が実現される。なお、本明細書において「ドープ」とは、Si含有粒子に当該Si含有粒子とは異なる少量の添加物として第15族および第16族の元素を加えることをいう。
【0025】
ここに開示される技術を限定する意図はないが、かかる効果が得られる理由は、以下のように推測される。Siに元素Mがドープされていることによりメタル相転移(insulator to metal transition)し、導電性が向上する。これによって、二次電池の入出力特性を向上させることができる。その一方で、充放電に伴う負極の膨張収縮が大きくなる傾向にあり、導電パス切れや副反応が増加し、二次電池のサイクル特性(例えば、容量維持率)が低下し得る。そこで、ここに開示される二次電池100では、元素MがドープされたSiを、SiとCとを含むSi含有粒子68とすることにより、充放電に伴うSiの膨張収縮を抑制することができる。さらに、ここに開示される二次電池100では、黒鉛粒子66とSi含有粒子68とを所定の割合で含むことにより、負極全体の膨張収縮をより好適に抑制することができる。かかる構成によれば、入出力特性とサイクル特性とが好適に両立された二次電池100を実現することができる。
【0026】
黒鉛粒子66としては、例えば人造黒鉛、天然黒鉛等が用いられる。黒鉛粒子66は、その表面に非晶質炭素の被覆層を有していてもよい。特に限定されないが、黒鉛粒子66は略球形状であるとよい。なお、本明細書において、「略球形状」とは、球状、ラグビーボール状等を包含する用語であり、例えば、平均アスペクト比(粒子の外接する最小の長方形において、短軸方向の長さに対する超軸方向の長さの比。)が、例えば1~2(好ましくは、1~1.5)であるものをいう。
【0027】
黒鉛粒子66の平均粒子径(D50粒子径)は、特に限定されないが、例えば5μm以上30μm以下であることが好ましく、10μm以上25μm以下であることがより好ましい。かかる範囲であれば、負極全体の膨張収縮が好適に抑制される。なお、本明細書において、「黒鉛粒子の平均粒子径」とは、レーザー回折・光散乱法に基づく粒度分布測定により測定した体積基準の粒度分布において、微粒子側から累積50%に相当する粒子径(D50粒子径)のことをいう。
【0028】
Si含有粒子68は、SiとCとを含む粒子であれば特に限定されない。Si含有粒子68は、SiおよびCを含む限り、SiおよびC以外の成分を含んでいてもよい。Si含有粒子68としては、Si-C複合体が好ましく採用される。Si-C複合体は、例えば、炭素材料(黒鉛、多孔質炭素材等)に、Siメタル、Si酸化物等が担持されることにより形成され得る。Si含有粒子68は、例えば、
図3に示すように、細孔68pを含む多孔質炭素材68aと、該多孔質炭素材68aの細孔68pに配置されるSiナノ粒子68bと、を含む構成であることが好ましい。
【0029】
特に限定されないが、Si含有粒子68は、当該Si含有粒子68の全重量を100wt%としたときに、Si含有量が30wt%以上であることが好ましく、40wt%以上であることがより好ましく、50wt%以上であることがさらに好ましい。これにより、二次電池100の高容量化が実現される。また、元素Mがドープされていることによる抵抗低減効果がより好適に発揮される。Si含有粒子68における、Si含有量の上限は、特に限定されないが、75wt%以下であることが好ましく、70wt%以下であってもよい。これにより、入出力特性とサイクル特性とが好適に両立される。なお、Si含有粒子におけるSi含有量は、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-OES)装置を用いて確認することができる。
【0030】
特に限定されないが、Si含有粒子68の平均粒子径(D50粒子径)は、例えば0.5μm以上20μm以下であることが好ましく、1μm以上15μm以下であることがより好ましい。なお、本明細書において、「Si含有粒子の平均粒子径」とは、レーザー回折・光散乱法に基づく粒度分布測定により測定した体積基準の粒度分布において、微粒子側から累積50%に相当する粒子径(D50粒子径)のことをいう。
【0031】
Si含有粒子68は、その内部に複数の細孔(空隙)68pを有していることが好ましい。Si含有粒子68がかかる細孔68pを有していることにより、充放電に伴う膨張収縮が好適に抑制される。特に限定されないが、Si含有粒子68は、平均細孔径が比較的小さい細孔68pを複数有していることが好ましい。細孔68pが比較的小さいことにより、負極60を作製する際にプレスされたとしても、細孔68pが残存しやすい傾向にある。このため、充放電に伴うSi含有粒子68の膨張収縮をより好適に緩和することができ、サイクル特性を向上させることができる。
【0032】
Si含有粒子68の空隙率は、例えば5vol%以上であることが好ましい。かかる空隙率の上限は特に限定されないが、例えば60vоl%以下であるとよい。なお、「空隙率」は、式:空隙率(%)=1-Si含有粒子の嵩密度/Si含有粒子の真密度)×100;に基づいて算出することができる。
【0033】
特に限定されないが、Si含有粒子68における酸素含有量は、Si含有粒子全体を100wt%としたとき、例えば、7wt%以下であるとよい。かかる酸素含有量は、酸素分析装置により測定することができる。
【0034】
Si含有粒子68に含まれるSiナノ粒子68bは、ナノサイズ(すなわち、1μm未満)のSiを含む粒子である。Siナノ粒子68bは、多孔質炭素材68aの細孔68pに存在し得る。Siナノ粒子68bが、多孔質炭素材68aの細孔68pに存在することにより、Siナノ粒子68bの膨張収縮が抑制され、Si含有粒子自体の膨張収縮も好適に抑制することができる。これにより、高容量化を実現しつつ、サイクル特性を向上させることができる。
【0035】
特に限定されないが、Siナノ粒子68bは、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましい。これにより、Siナノ粒子68bの一粒あたりの充放電時の膨張収縮量を小さくすることができ、膨張収縮を繰り返しても割れ難くなる。また、特に限定されないが、Siナノ粒子68bの平均粒子径は、例えば、5nm以上であり得る。なお、本明細書において、「Siナノ粒子の平均粒子径」は、以下のようにして求めることができる。まず、負極活物質層を、FIB(集束イオンビーム)加工によって、走査透過型電子顕微鏡(STEM)観察用の試料を作製する。そして、当該試料をEDX元素マッピングにより元素分析した後、BF像(明視野像)およびHAADF像(高角散乱環状暗視野像)を取得する。BF像およびHAADF像により得られるコントラストおよび形状から、Siナノ粒子の直径を求めることができる。少なくとも10個のSiナノ粒子の直径の算術平均のことをここでの「Siナノ粒子の平均粒子径」とする。
【0036】
Si含有粒子68は、上記したように、周期表の第15族および第16族のうち、少なくともいずれか一種の元素Mがドープされている。すなわち、Si含有粒子68は、周期表の第15族および第16族のうち、少なくともいずれか一種の元素Mを含有する。かかる元素Mの具体例としては、硫黄(S)、リン(P)、窒素(N)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、セレン(Se)、テルル(Te)、ポロニウム(Po)等が挙げられる。なかでも、元素MとしてはS、Pを好ましく用いることができる。なお、Si含有粒子68は、上記した元素のうち1種が単独でドープされていてもよく、2種以上が組み合わせてドープされていてもよい。
【0037】
Si含有粒子68における元素Mのドープ量(すなわち、含有量)は、0.1at%以上であることが好ましく、0.5at%以上であることがより好ましく、1at%以上であることがさらに好ましい。これにより、元素Mをドープすることによる抵抗低減効果が好適に発揮され、入出力特性を向上させることができる。一方で、ドープ量が多すぎる場合には、抵抗低減効果が小さくなる傾向にある。元素Mのドープ量としては、5at%以下であることが好ましく、4at%以下であることがより好ましく、3at%以下であることがさらに好ましい。なお、Si含有粒子に元素Mがドープされていること、およびそのドープ量は、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-OES)装置を用いて確認することができる。
【0038】
Si含有粒子68において、元素Mは、Siナノ粒子68bの表面のみに含まれていてもよいし、Siナノ粒子68bの内部に均一に拡散された状態であってもよい。好ましくは、Si含有粒子68において、元素Mは、Siナノ粒子68bの内部に均一に拡散されていることが好ましい。これにより、抵抗低減効果がより好適に向上し得る。特に限定されないが、Si含有粒子68において、元素MとSiおよび/またはCとは、化合物を形成していないことが好ましい。
【0039】
本実施形態に係るSi含有粒子68は、以下の方法により、好適に製造することができる。なお、以下では、Si含有粒子68に元素Mとして硫黄(S)をドープさせた場合を例に挙げて説明する。ただし、本実施形態に係るSi含有粒子68は、以下の製造方法によって製造されたものに限定されない。
【0040】
本実施形態に係るSi含有粒子68の好適な製造方法は、SiO-C複合体(多孔質炭素材-SiO)、硫酸塩化合物、金属還元剤を混合する工程(混合工程)と、当該混合物を加熱する工程(加熱工程)と、を少なくとも含み得る。
【0041】
混合工程では、SiO-C複合体、硫酸塩化合物、金属還元剤を混合し、混合物を調製する。混合工程における混合方法は特に限定されないが、例えば、乳鉢を用いて混合するとよい。また、混合工程で用いられる硫酸塩化合物は特に限定されないが、例えば、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸ナトリウム等が挙げられる。金属還元剤は特に限定されず、Mg、Al等であってよい。
【0042】
次いで、加熱工程では、上記用意した混合物を加熱し還元反応を行う。加熱工程では、選択的に硫黄(S)が還元されて、SiO-C複合体のSiにSがドープされる。加熱工程は、例えば、不活性雰囲気(例えば、アルゴン雰囲気、窒素雰囲気等)において、200℃~500℃の加熱温度で実施することが好ましい。また、加熱の時間は特に限定されないが、例えば0.1~10時間程度であるとよい。なお、本実施形態に係るSi含有粒子68の製造方法は、加熱工程後(還元反応の完了後)に、反応物を溶媒(例えば、水等)に分散させて、硫酸塩化合等を取り除く工程を含んでいてもよい。
【0043】
特に限定されないが、上記した黒鉛粒子66とSi含有粒子68との重量比は、9:1~4:6となるように調整されていることが好ましく、9:1~5:5となるように調整されていることがより好ましく、7:3~5:5となるように調整されていてもよい。黒鉛粒子66とSi含有粒子68との重量比が上記した範囲に調整されていることで、負極全体の膨張収縮が好適に抑制される。これにより、二次電池100のサイクル特性の向上と入出力特性の向上とが好適に両立され得る。
【0044】
負極活物質層64は、本技術の効果を著しく損なわない限りにおいて、Si含有粒子として、SiとCとを含むSi含有粒子以外のSi含有粒子(第2のSi含有粒子)を含んでいてもよい。第2のSi含有粒子としては、例えば、SiOx、多孔質粒子内に異元素がドープされていないSiナノ粒子が分散されたもの等が挙げられる。
【0045】
負極活物質層64は、上記した負極活物質(黒鉛粒子66およびSi含有粒子68)に加えて、導電材を含むことが好ましい。導電材としては、例えば、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、二層カーボンナノチューブ(DWCNT)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)等のカーボンナノチューブ、アセチレンブラック(AB)等のカーボンブラック、炭素繊維等を使用することができる。このなかでも、カーボンナノチューブが好ましく、単層カーボンナノチューブがより好ましい。カーボンナノチューブを導電材として用いることにより、導電パスがさらに好適に維持され、二次電池100のサイクル特性をより好適に向上させ得る。
【0046】
負極活物質層中の負極活物質の含有量(すなわち、負極活物質層64の全重量に対する負極活物質の含有量)は、特に限定されないが、例えば、80wt%以上であることが好ましく、90wt%以上99wt%以下であることがより好ましく、95wt%以上99wt%以下であってもよい。また、負極活物質層中の導電材の含有量は、特に限定されないが、0.01wt%以上1wt%以下であることが好ましく、0.05wt%以上0.5wt%以下であることがより好ましい。
【0047】
負極活物質層64は、上記した負極活物質以外にバインダを含んでいてもよい。バインダとしては、従来公知のものを使用することができる。バインダとしては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリル酸(PAA)、スチレンブタジエンラバー(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等が挙げられる。なかでも、CMC、PAA、SBRを好ましく用いることができる。また、特に限定されないが、CMC、PAAおよびSBRを併用することがより好ましい。負極活物質層中のバインダの含有量は、特に限定されないが、1wt%以上10wt%以下であることが好ましく、1.5wt%以上7wt%以下であることがより好ましい。
【0048】
負極活物質層64の片面当たりの厚みは、特に限定されないが、例えば20μm以上であり、好ましくは50μm以上である。一方、当該厚みは、例えば300μm以下であり、好ましくは200μm以下である。
【0049】
負極活物質層64は、負極活物質としての黒鉛粒子66およびSi含有粒子68と、必要に応じて用いられる材料(例えば、導電材やバインダ)を、適当な溶媒(例えば水)に分散させ、ペースト状(またはスラリー状)の組成物を調製し、該組成物を負極集電体62の表面に塗布して、乾燥することにより形成することができる。その後、必要に応じてプレスすることにより、負極活物質層64の厚みや密度を調整することができる。
【0050】
以上、一実施形態に係る負極60の構成及び二次電池100の構成について説明した。負極60は、非水電解液二次電池に好適に採用される。かかる負極60は、Siに元素Mがドープされていることにより導電性が向上する。また、負極60は、充放電の繰り返しによる膨張収縮によって導電パスが切れることが好適に抑制される。したがって、入出力特性およびサイクル特性が好適に両立された二次電池100が実現される。かかる二次電池100は各種用途に利用可能であるが、例えば、乗用車、トラック等の車両に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV;Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、ハイブリッド自動車(HEV;Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(BEV;Battery Electric Vehicle)等が挙げられる。二次電池100は、組電池の構築においても好適に用いることができる。
【0051】
また、上述の二次電池100では、電極体20として捲回電極体を例示したが、これに限られず、例えば、複数の略矩形状の正極と、複数の略矩形状の負極とがセパレータを介して交互に積層された電極体である積層電極体であってもよい。
【0052】
以下、本発明に関する試験例を説明するが、本発明を以下の試験例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0053】
<例1>
まず、負極活物質として、硫黄(S)をドープしたSi含有粒子(Si-C複合体、Si含有量:50wt%、ドープ量:3at%)と、黒鉛粒子(D50粒子径:15μm)と、を用意した。また、導電材として、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を用意した。そして、バインダとして、カルボキシメチルセルロース(CMC)と、ポリアクリル酸(PAA)と、スチレンブタジエンラバー(SBR)と、を用意した。これらを、黒鉛粒子:Si含有粒子:SWCNT:CMC:PAA:SBR=70:30:0.1:1:1:1.5の重量比となるように、溶媒としての水と混錬し、負極活物質層形成用スラリーを調製した。
【0054】
具体的に、負極活物質層形成用スラリーの混合および混錬は、以下のようにして実施した。まず、Si含有粒子と、ペースト状のSWCNT(固形分率2%)と、分散媒と、を投入し、ディスパーを用いて3000rpmで分散混合してペーストを作製した。次いで、撹拌造粒機を用いて黒鉛粒子と、CMCと、PAAと、を乾式混合した。そして、上記作製したペーストと、乾式混合した混合粉体と、分散媒と、を固練り混錬した。固練り混錬時の固形分率は65%であった。固練り混錬した混合物に対して、さらにSBRと、溶媒(水)とを加えて混合した。このようにして、負極活物質層形成用スラリーを調製した。このスラリーを、銅箔(厚み10μm)の両面に帯状に塗布した。そして、銅箔上のスラリーを乾燥し、所定の厚みまでプレスした後、所定の寸法に加工することで負極シートを作製した。
【0055】
次いで、正極活物質としてのリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(NCM)と、導電材としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを用意した。これらを、NCM:AB:PVDF=100:1:1の重量比となるように、溶媒としてのN-メチルピロリドン(NMP)と混合し、正極活物質層形成用スラリーを調製した。このスラリーを、アルミニウム箔(厚み15μm)の両面に帯状に塗布した。そして、アルミニウム箔上のスラリーを乾燥し、所定の厚みまでプレスした後、所定の寸法に加工することで正極シートを作製した。
【0056】
上記用意した負極シートと、正極シートとをセパレータを介して積層し、積層電極体を作製した。正極板と負極板とにそれぞれ集電用のリードを取り付け、積層電極体をアルミニウムラミネートシートで構成される外装体に挿入した。外装体の内部に非水電解液を注入し、外装体の開口部を封止して実施例1の試験用電池を作製した。なお、セパレータとしては、PP/PE/PPの三層構造を有する多孔性ポリオレフィンシートを使用した。また、非水電解液としては、エチレンカーボネート(EC)と、フルオロエチレンカーボネート(FEC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)と、ジメチルカーボネート(DMC)とを、EC:FEC:EMC:DMC=15:5:40:40の体積比となるように混合した混合溶媒に、支持塩としてのLiPF6を1mol/Lの濃度で溶解させたものを用いた。
【0057】
<例2>
Si含有粒子として、リン(P)をドープしたSi含有粒子(Si-C複合体、Si含有量:50wt%、ドープ量:3at%)を用意したこと以外は、例1と同様にして、例2の評価用電池を作製した。
【0058】
<例3>
黒鉛粒子:Si含有粒子:SWCNT:CMC:PAA:SBR=90:10:0.1:1:1:1.5の重量比となるように、各材料の配合比を変更したこと以外は例1と同様にして、例3の評価用電池を作製した。
【0059】
<例4>
黒鉛粒子:Si含有粒子:SWCNT:CMC:PAA:SBR=50:50:0.1:1:1:1.5の重量比となるように、各材料の配合比を変更したこと以外は例1と同様にして、例4の評価用電池を作製した。
【0060】
<例5>
Si含有粒子として、Si含有量が25wt%であるSi含有粒子を用意したこと以外は、例1と同様にして、例5の評価用電池を作製した。
【0061】
<例6>
Si含有粒子として、Si含有量が75wt%であるSi含有粒子を用意したこと以外は、例1と同様にして、例6の評価用電池を作製した。
【0062】
<例7>
Si含有粒子として、ドープをしていないSi含有粒子を用意したこと以外は、例1と同様にして、例7の評価用電池を作製した。
【0063】
<例8>
Si含有粒子として、ドープをしていないSi含有粒子を用意し、黒鉛粒子:Si含有粒子:SWCNT:CMC:PAA:SBR=50:50:0.1:1:1:1.5の重量比となるように、各材料の配合比を変更したこと以外は例1と同様にして、例8の評価用電池を作製した。
【0064】
<例9>
Si含有粒子として、Sのドープ量が6at%であるSi含有粒子を用意したこと以外は、例1と同様にして、例9の評価用電池を作製した。
【0065】
<例10>
Si含有粒子として、Pのドープ量が6at%であるSi含有粒子を用意したこと以外は、例1と同様にして、例10の評価用電池を作製した。
【0066】
<例11>
黒鉛粒子:Si含有粒子:SWCNT:CMC:PAA:SBR=30:70:0.1:1:1:1.5の重量比となるように、各材料の配合比を変更したこと以外は例1と同様にして、例11の評価用電池を作製した。
【0067】
<サイクル容量維持率の評価>
25℃環境下、CCCV充電(4.2Vまでレート0.4C、その後0.1Cカット)をした後、CC放電(レート0.4Cで2.5Vカット)することを1サイクルとして、このときの容量を初期容量とした。200サイクル充放電を繰り返すサイクル試験を行った。1サイクル目の放電容量(初期容量)と、200サイクル目の放電容量とを測定し、サイクル容量維持率を以下の式(1)により求めた。サイクル容量維持率が高いほど、二次電池のサイクル特性が高い。結果を表1に示す。
サイクル容量維持率(%)=((200サイクル目の放電容量)/(1サイクル目の放電容量))×100 ・・・式(1)
【0068】
<IV抵抗の評価>
25℃環境下、上記の各評価用電池の初期容量をそれぞれのSOC100%として、25℃の恒温槽中にてSOCが50%になるまで各評価電池を充電した。次いで、25℃の恒温槽中にて、0.1C、0.2C、0.5C、1Cおよび2Cの電流値で10秒間充電を行い、各電流値で充電した後の電池電圧を測定した。各電流値と各電池電圧とをプロットして充電時におけるI-V特性を求め、得られた直線の傾きから放電時におけるIV抵抗(mΩ)を求めた。結果を表1に示す。なお、IV抵抗値が小さいほど、入出力特性が高い。
【0069】
【0070】
表1に示すように、例1~例6の評価用電池では、容量維持率が76%以上であり、かつ、IV抵抗が103mΩ以下であることがわかる。これらの結果より、負極活物質として黒鉛粒子と、Si含有粒子と、を含み、当該Si含有粒子はSiとCとを含み、Si含有粒子のSiには、周期表の第15族および第16族に属する元素のうち、少なくともいずれか一種の元素がドープされ、黒鉛粒子とSi含有粒子との重量比が、9:1~4:6であることにより、優れたサイクル特性と入出力特性とを両立する二次電池を実現することができる。
【0071】
また、表1に示すように、Si含有粒子におけるSi含有量が30wt%以上75wt%以下である例1~例4および例6は、容量維持率が76%以上であり、かつ、IV抵抗が100mΩ以下であり、二次電池の入出力特性とサイクル特性とがより好適に両立されることがわかる。
【0072】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。本発明は、他にも種々の形態にて実施することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を他の変形態様に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【0073】
以上のとおり、ここに開示される技術の具体的な態様として、以下の各項に記載のものが挙げられる。
項1:正極および負極を有する電極体を備えた二次電池であって、前記負極は、負極集電体と、該負極集電体上に配置された負極活物質層と、を備えており、前記負極活物質層は、負極活物質として、黒鉛粒子と、Si含有粒子と、を含み、前記Si含有粒子はSiとCとの複合体であり、前記Si含有粒子のSiには、元素Mがドープされており、前記元素Mは、周期表の第15族および第16族に属する元素のうち、少なくともいずれか一種の元素であり、前記Si含有粒子における前記元素Mのドープ量が0.1at%以上5at%以下であり、ここで、前記黒鉛粒子と前記Si含有粒子との重量比が、9:1~4:6である。
項2:前記Si含有粒子は、当該Si含有粒子の全重量を100wt%としたときに、Si含有量が30wt%以上75wt%以下である、項1に記載の二次電池。
項3:前記Si含有粒子は、細孔を含む多孔質炭素材と、該多孔質炭素材の前記細孔に配置されるSiナノ粒子と、を含む、項1または項2に記載の二次電池。
項4:前記黒鉛粒子の平均粒子径D50が、10μm以上25μm以下である、項1~項3のいずれか一つに記載の二次電池。
項5:前記負極活物質層は、さらに導電材を含んでおり、前記負極活物質層の全重量を100wt%としたときに、前記導電材の含有量が0.01wt%以上1wt%以下である、項1~項4のいずれか一つに記載の二次電池。
【符号の説明】
【0074】
20 電極体
30 電池ケース
36 安全弁
42 正極端子
42a 正極集電板
44 負極端子
44a 負極集電板
50 正極(正極シート)
52 正極集電体
52a 正極集電体露出部
54 正極活物質層
60 負極(負極シート)
62 負極集電体
62a 負極集電体露出部
64 負極活物質層
66 黒鉛粒子
68 Si含有粒子
68a 多孔質炭素材
68b Siナノ粒子
68p 細孔
70 セパレータ
100 二次電池