(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162585
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
H02M3/28 C
H02M3/28 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078237
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(72)【発明者】
【氏名】田中 和裕
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 仁
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA15
5H730AS02
5H730BB26
5H730BB27
5H730BB82
5H730BB88
5H730DD03
5H730DD04
5H730FD01
5H730FD31
5H730FG01
5H730XX04
5H730XX24
5H730XX32
5H730XX42
(57)【要約】
【課題】並列接続された電源回路のそれぞれのインバータ回路毎に電流アンバランスを検出するための電流検出器が必要となり、並列接続された電源回路の回路数が増える毎にコストが増大する。
【解決手段】N個の並列接続された電源回路PMのトランス12に巻かれた補助巻線123に発生する補助巻線電圧波形V1~VNを入力として
{(V1+V2+・・・+VN-1)}-{(N-1)×VN}
の絶対値を算出(全波整流)して、平均化(平滑)するアンバランス算出回路CAのアンバランス値Caが所定値を超えたとき、並列運転異常検出回路PEは並列接続された電源回路PMのいずれかが故障していると判断し、インバータ回路11を停止する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力を高周波電力に変換するインバータ回路と、
前記インバータ回路によって発生させた前記高周波電力を一次巻線に印可して所定の電圧に変換するトランスと、
前記トランスの二次巻線に発生する高周波電力を直流電力に変換する直流出力回路と、
を備えた電源回路をN個備え、それぞれの前記直流出力回路がすべて並列接続された電源装置において、
前記電源回路のいずれかに故障が発生していることを検出する並列運転異常検出回路と、
前記トランスに巻かれた補助巻線に発生する補助巻線電圧波形V1~VNを入力として
{(V1+V2+・・・+VN-1)}-{(N-1)×VN}
の絶対値を算出(全波整流)して、平均化(平滑)するアンバランス算出回路と、
を備え、
前記並列運転異常検出回路は、前記アンバランス算出回路の値が所定値を超えたとき、前記電源回路のいずれかが故障したと判断し、前記インバータ回路を停止する電源装置。
【請求項2】
前記電源装置の出力端子に流れる電流を検出する電流検出器を備え、
前記電流検出器の検出値が電流設定値と等しくなるように制御されており、前記電流検出器の検出値又は前記電流設定値が大きくなるほど前記所定値を大きくする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記補助巻線に発生する前記補助巻線電圧波形V1~VNをそれぞれ整流して平滑後、加算して平均値を算出する平均電圧算出回路を備え、
前記平均電圧算出回路の算出値が電圧設定値に等しくなるように制御されており、前記平均電圧算出回路の算出値又は前記電圧設定値が大きくなるほど前記所定値の値を大きくする請求項1に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電源回路の並列接続の異常検出に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電源回路を並列接続し、出力電力の大容量を実現させることがある。例えば、特許文献1及び特許文献2には、このような電源装置の一例が開示されている。複数の電源回路を並列動作させた場合、複数の電源回路のうちのいずれかが故障すると、電源回路に流れる電流バランスが偏り、二次的に他の電源回路も故障する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-19149号公報
【特許文献2】特開平6-133557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の電源装置では、並列接続された複数の電源回路のそれぞれのインバータ回路に電流検出器を備え、異常検出回路は、この検出した電流と平均電流とを比較することにより、各インバータ回路に流れる電流がアンバランス状態であるか否かを検出している。また、特許文献2記載の電源装置では、同じく並列接続された2つの電源回路のそれぞれのインバータ回路に電流検出器を備え、両者の差分によりアンバランスを検出することも記載されている。しかし、特許文献1及び特許文献2に記載の電源装置では、並列接続された電源回路のそれぞれのインバータ回路毎に電流検出器を前提としており、並列接続された電源回路の回路数が増えると、電流検出器にかかるコストが増大する課題がある。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みて考え出されたものであり、並列接続された電源回路のそれぞれのインバータ回路毎に電流検出器を必要とせず、トランスに巻かれた補助巻線により安価なコストで複数の並列接続された電源回路のアンバランスを算出し、電源回路の故障を判定できる電源装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、請求項1の発明は、
直流電力を高周波電力に変換するインバータ回路と、
前記インバータ回路によって発生させた前記高周波電力を一次巻線に印可して所定の電圧に変換するトランスと、
前記トランスの二次巻線に発生する高周波電力を直流電力に変換する直流出力回路と、
を備えた電源回路をN個備え、それぞれの前記直流出力回路がすべて並列接続された電源装置において、
前記電源回路のいずれかに故障が発生していることを検出する並列運転異常検出回路と、
前記トランスに巻かれた補助巻線に発生する補助巻線電圧波形V1~VNを入力として
{(V1+V2+・・・+VN-1)}-{(N-1)×VN}
の絶対値を算出(全波整流)して、平均化(平滑)するアンバランス算出回路と、
を備え、
前記並列運転異常検出回路は、前記アンバランス算出回路の値が所定値を超えたとき、前記電源回路のいずれかが故障したと判断し、前記インバータ回路を停止する電源装置である。
【0007】
請求項2の発明は、
前記電源装置の出力端子に流れる電流を検出する電流検出器を備え、
前記電流検出器の検出値が電流設定値と等しくなるように制御されており、前記電流検出器の検出値又は前記電流設定値が大きくなるほど前記所定値を大きくする請求項1に記載の電源装置である。
【0008】
請求項3の発明は、
前記補助巻線に発生する前記補助巻線電圧波形V1~VNをそれぞれ整流して平滑後、加算して平均値を算出する平均電圧算出回路を備え、
前記平均電圧算出回路の算出値が電圧設定値に等しくなるように制御されており、前記平均電圧算出回路の算出値又は前記電圧設定値が大きくなるほど前記所定値の値を大きくする請求項1に記載の電源装置である。
【発明の効果】
【0009】
本開示の電源装置によれば、並列接続されたN個の電源回路のいずれにも故障が発生していなければ、補助巻線電圧波形V1~VNはすべて等しいので、アンバランス算出回路の値はゼロとなる。ところが、N個の電源回路のいずれかに故障が発生すれば、故障している電源回路の補助巻線電圧波形のみが、他の補助巻線電圧波形と異なりアンバランス算出回路の値はゼロとならず、N個の電源回路のいずれかが故障していることを判別できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る電源装置の各機能のブロック図である。
【
図2】本発明の実施の形態1に係るアンバランス算出回路及び並列運転異常検出回路の回路図である。
【
図3】本発明の実施の形態1に係る並列接続された電源回路のうち、いずれかが故障した場合の動作を示すタイミングチャートである。
【
図4】本発明の実施の形態2に係る電源装置の各機能のブロック図である。
【
図5】本発明の実施の形態1に係る電源装置の変形例の各機能のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
〔実施の形態1〕
図1は、本発明の実施の形態1に係る電源装置の各機能のブロック図である。以下、同図を参照して各ブロックについて説明する。
【0013】
電源装置PSは、複数の電源回路PMからなる。
図1においては、3個の電源回路PMからなっている。
【0014】
電源回路PMの後述する直流出力回路13は、直流電圧を出力する。複数の電源回路PMの直流出力回路13は、互いに並列接続され、+側は電流検出器IOを介して出力端子+に接続され、-側は出力端子-に接続されている。
【0015】
インバータ回路11は、図示しない直流電源から入力される直流電力を高周波電力に変換して、トランス12の一次巻線121に出力する。直流電源は、例えば、蓄電器などの直流電力を出力するものであってもよいし、商用交流電源や発電機から入力される交流電力を、整流平滑回路で整流し平滑化したものであってもよい。インバータ回路11の回路方式は、フルブリッジ型のPWM制御インバータ回路である。インバータ回路11は、図示しないスイッチング素子を備えており、ドライバ回路DRからの駆動信号Drによってスイッチング素子をオン/オフし、直流電力を高周波電力に変換する。インバータ回路11の回路方式は、ハーフブリッジ型であってもよいし、その他の構成の回路方式であってもよい。
【0016】
トランス12は、一次巻線121に印可されるインバータ回路11の高周波電力を、一次巻線巻数Np、二次巻線巻数Ns及び補助巻線巻数Naに応じて、二次巻線122および補助巻線123の各々に伝送する。
【0017】
直流出力回路13は、トランス12の二次巻線122から出力される高周波電力を直流電力に変換(整流)する。
【0018】
トランス12の補助巻線123の一方の端子は制御電源の基準電圧0Vに接続され、もう一方の端子は、アンバランス算出回路CAに接続されている。
【0019】
電流検出器IOは、出力端子+に流れる電流を検出し、電流検出値Ioとして誤差増幅器EAに出力する。
【0020】
誤差増幅器EAは、電流設定回路ISからの電流設定信号Isと電流検出値Ioを比較して、電流検出値Ioと電流設定信号Isが等しくなるように誤差増幅信号Eaをドライバ回路DRに出力する。
【0021】
ドライバ回路DRは、誤差増幅信号Eaをもとに、電流検出値Ioと電流設定信号Isが等しくなるようにインバータ回路11の図示しないスイッチング素子をオン/オフする。スイッチング素子はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOS-FET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)などの半導体スイッチが用いられている。また、ドライバ回路DRには、後述する並列運転異常検出回路PEからの並列運転異常信号Peが入力され、並列運転異常信号PeがHighの場合は、スイッチング素子をオフし、インバータ回路11の動作を停止させる。
【0022】
アンバランス算出回路CAは、トランス12の補助巻線123から入力される補助巻線電圧波形V1~V3を{(V1+V2)-2×V3}に従って算出し、その絶対値を算出(全波整流)し、平均化(平滑)して、アンバランス値Caとして並列運転異常検出回路PEに出力する。すなわち、
Ca=AVERAGE〔|{(V1+V2)}-{2×V3}|〕
となる。N個の電源回路PMから構成され、N個の直流出力回路13が並列接続されている場合は、
Ca=AVERAGE〔|{(V1+V2+V3+・・・+VN-1)}-{(N-1)×VN}|〕
となる。N個の電源回路PMがすべて正常である場合、補助巻線電圧波形V1~VNはすべて同一波形であり、アンバランス値Caは0Vとなる。しかし、N個の電源回路PMのうち少なくとも1つが故障した場合、故障した電源回路PMのトランス12の補助巻線123の補助巻線電圧波形のみが、他の故障していない電源回路PMの補助巻線123の補助巻線電圧波形と異なり、アンバランス値Caは0Vとならない。
図2は、アンバランス算出回路CAをオペアンプにより実現した回路であり、動作の詳細は後述で説明する。
【0023】
並列運転異常検出回路PEは、アンバランス値Ca、電流設定値Is又は電流検出値Ioを入力として次のとおり並列運転異常信号Peを出力する。複数の電源回路PMのうち少なくとも1つが故障した場合、前述したとおりアンバランス値Caは0Vでなくなる。従って、アンバランス値Caが所定の値以上になった場合、複数の電源回路PMのうち少なくとも1つが故障したと判断し、並列運転異常信号PeをLowからHighに切り替える。電源回路PMが故障した場合のアンバランス値Caは、インバータ回路11のスイッチング素子のオン比率が大きい程大きくなるため、オン比率の小さい(すなわち電流設定値Is又は電流検出値Ioの値が小さい)場合は、所定の値を小さくし、オン比率の大きい(すなわち電流設定値Is又は電流検出値Ioの値が大きい)場合は、所定の値を大きくすることにより、広い範囲でアンバランスを精度よく検出できる。
図2は、並列運転異常検出回路PEをコンパレータ及びその他の集積回路を用いて実現した回路であり、動作の詳細は後述で説明する。
【0024】
図2は、3個の電源回路PMから構成され、それぞれの直流出力回路13がすべて並列接続されている場合のアンバランス算出回路CA及び並列運転異常検出回路PEをオペアンプ、コンパレータ及びフリップフロップなどの集積回路にて実現した回路である。同図を用いて、アンバランス算出回路CA及び並列運転異常検出回路PEの動作を詳しく説明する。なお、同図において抵抗Rは20kオームの抵抗とした場合、抵抗R/2は抵抗Rの半分の抵抗値である10kオームの抵抗であることを示す。
【0025】
同図のアンバランス算出回路CAは、次のとおり動作し、アンバランス値Caを算出し、同図の並列運転異常検出回路PEに出力する。
1)オペアンプOP1は、トランス12の補助巻線123からの補助巻線電圧波形V3を反転させて2倍に増幅し、オペアンプOP1の出力は{-2×V3}となる。
2)オペアンプOP2は、補助巻線123から補助巻線電圧波形V1、V2及びオペアンプOP1の出力{-2×V3}を加算反転し、{-(V1+V2)+2×V3}を出力する。
3)オペアンプOP3及びOP4は、オペアンプOP2の出力の絶対値(全波整流)を算出し、コンデンサCにより平均化(平滑)する回路であり、オペアンプOP4の出力であるアンバランス値Caは、後述する
図3の(e)のような波形となる。
【0026】
並列運転異常検出回路PEは、オペアンプOP4の出力であるアンバランス値Caと判定値VrとをコンパレータCOM1で比較し、アンバランス値Caが判定値Vrを超えた場合は、コンパレータCOM1の出力をLowからHighに切り替える。RSフリップフロップFFのセット端子Sの入力もLowからHighに切り替わると、RSフリップフロップFFの出力端子QもHighにセットされHighの状態を維持する。判定値Vrは、電流設定値Is又は電流検出値Ioを増幅器100により増幅率K倍し、加算器110にてオフセット電圧値Vfに加算することにより、電流設定値Is又は電流検出値Ioに比例して大きくなるようにしている。
【0027】
図2では、アンバランス算出回路CA及び並列運転異常検出回路PEの動作説明を分かり易くするため、オペアンプ、コンパレータ及びその他の集積回路を用いて実現したが、これに限らずCPUを用いて演算及び制御を行うことでも実現可能である。
【0028】
図3は、3個の電源回路PMのうちのいずれかに故障が発生した場合を示すタイミングチャートである。同図(a)~(c)は、補助巻線123に発生する補助巻線電圧波形V1~V3を示し、同図(d)は、
図2のアンバランス算出回路CAのオペアンプOP2の出力を示し、同図(e)は、アンバランス値Caを示し、同図(f)は、並列運転異常信号Peを示し、同図(g)は、駆動信号Drを示す。
【0029】
t0~t1:時刻t0からt1の期間は、3個の電源回路PMのいずれも故障しておらず、同図(a)~(c)に示すとおり、補助巻線電圧波形V1~V3はすべて±3Vの矩形波となり、同図(f)に示すとおり、並列運転異常信号PeもLowを維持している。
【0030】
t1~t2:時刻t1において、3個の電源回路PMのうち補助巻線電圧波形V2を出力している電源回路PMに故障が発生する。故障原因としては、インバータ回路11のスイッチング素子の故障やスイッチング素子を駆動するドライバ回路DRの故障や信号線の断線、トランス12の巻線の断線、トランス12の磁気飽和による二次巻線122及び補助巻線123への電力伝送不足などがある。時刻t1以降、同図(b)に示すとおり、補助巻線電圧波形V2は、±3Vの矩形波から±1.5Vの矩形波になり、故障していない電源回路PMの補助巻線電圧波形V1とV3からは乖離が生じてしまう。そのため、同図(d)に示すとおり、アンバランス算出回路CAのオペアンプOP2の出力は0Vではなく、±1.5の矩形波となる。そのため、同図(e)に示すとおり、アンバランス値Caも徐々に上昇し、やがて所定値Vrを超えた時刻t2にて、同図(f)に示すとおり、並列運転異常信号PeもLowからHighに切り替わる。なお、故障している電源回路の補助巻線電圧波形V2は、±1.5Vの矩形波に限らず他の故障していない電源回路の補助巻線電圧波形V1、V3と異なっていればよい。
【0031】
t2~:時刻t2以降、同図(f)に示すとおり、並列運転異常信号PeはHighにセットされた状態を維持するため、同図(g)に示すとおり、駆動信号Drはオフの状態を維持し、インバータ回路11のスイッチング素子はオフし、電源装置PSは出力を停止する。
【0032】
〔実施の形態2〕
図4は、実施の形態2に係る電源装置のブロック図である。
図4を用いて、実施の形態1と異なる点についてのみ動作を説明する。
【0033】
平均電圧算出回路AVは、N個の電源回路PMの補助巻線123から入力される補助巻線電圧波形V1~VNをそれぞれ整流して平滑後、加算しNで除して平均電圧値Avを算出し、誤差増幅器EAに出力する。
【0034】
誤差増幅器EAは、平均電圧値Av及び電圧設定回路VSからの電圧設定値Vsを比較し、平均電圧値Avと電圧設定値Vsが等しくなるように誤差信号Eaをドライバ回路DRに出力する。
【0035】
ドライバ回路DRは、誤差増幅器EAからの誤差信号Eaに基づき平均電圧値Avと電電圧設定値Vsが等しくなるように駆動信号Drをインバータ回路11に出力し、出力端子+、-間に出力される電圧をコントロールする。
【0036】
並列運転異常検出回路PEは、アンバランス値Ca、電圧設定値Vs又は平均電圧値Avを入力として次のとおり並列運転異常信号Peを出力する。3個の電源回路PMのうち少なくとも1つが故障した場合、実施の形態1と同様にアンバランス値Caは0Vでなくなる。従って、アンバランス値Caが所定の値以上になった場合、複数の電源回路PMのうち少なくとも1つが故障したと判断し、並列運転異常信号PeをLowからHighに切り替える。電源回路PMに故障が発生した場合のアンバランス値Caは、スイッチング素子のオン比率が大きい程大きくなるため、オン比率が小さい(すなわち電圧設定値Vs又は平均電圧値Avの値が小さい)場合は、所定の値を小さくし、オン比率の大きい(すなわち電圧設定値Vs又は平均電圧値Avの値が大きい)場合は、所定の値を大きくすることにより、広い範囲でアンバランスを精度よく検出できる。
【0037】
本実施の形態2においては、3個の電源回路PMのうちのいずれかに故障が発生した場合、平均電圧値Avも正常動作時の値から異なることになる。
図3の時刻t1以降と同じ故障が発生した場合、正常時3.0V程度であった平均電圧値Avも故障時は(3.0V+3.0V+1.5V)/3=2.5V程度に低下するため、誤差増幅器EAは平均電圧値Avが設定電圧値Vsに等しくなるように誤差増幅信号Eaを大きくし、電源装置PSの出力電圧を上昇させるので、故障していない電源回路PMの負荷分担が上昇し、二次的に故障していない電源回路PMが故障することを防止できる。
【0038】
本発明の実施の形態1及び実施の形態2においては、並列接続された複数の電源回路PMの回路数が増えても、1つのアンバランス算出回路CAにて、一括してアンバランス値Caを算出することができる。また、先行文献1では、平均値を算出して、平均値の差分によりアンバランスを検出するため、並列接続された複数の電源回路の回路数が増えると、平均値との差分が小さくなり、アンバランスの検出が困難となることも解決できる。
【0039】
本開示に係る電源装置は、上記した実施形態に限定されるものではない。例えば、
図5に示すとおり、補助巻線電圧波形V3を出力する補助巻線123のみを他の補助巻線電圧波形V1、V2を出力する補助巻線123と逆極性となるように0Vに接続すれば、
図2に示したアンバランス算出回路CAのオペアンプOP1は省略し、補助巻線電圧波形V3を抵抗R/2を介してオペアンプOP2の反転入力端子(-)に入力することにより実現できるなど、本開示の電源装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0040】
11 インバータ回路
12 トランス
121 一次巻線
122 二次巻線
123 補助巻線
13 直流出力回路
+、- 出力端子
CA アンバランス算出回路
Ca アンバランス値
AV 平均電圧算出回路
Av 平均電圧値
DR ドライバ回路
Dr 駆動信号
EA 誤差増幅回路
Ea 誤差増幅信号
IO 電流検出器
Io 電流検出値
IS 電流設定回路
Is 電流設定値
Na 補助巻線巻数
Np 一次巻線巻数
Ns 二次巻線巻数
PE 並列運転異常検知回路
Pe 並列運転異常信号
PM 電源回路
PS 電源装置
V1~VN 補助巻線電圧波形
VS 電圧設定回路
Vs 電圧設定値