(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162592
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】プラスチックマルチコア光ファイバ
(51)【国際特許分類】
G02B 6/02 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
G02B6/02 461
G02B6/02 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078267
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 正裕
(72)【発明者】
【氏名】國枝 秀和
(72)【発明者】
【氏名】船越 祥二
(72)【発明者】
【氏名】平川 萌香
(72)【発明者】
【氏名】杉内 大樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 優樹
(72)【発明者】
【氏名】川邉 憲一
【テーマコード(参考)】
2H250
【Fターム(参考)】
2H250AA30
2H250AA33
2H250AB33
2H250AB35
2H250AB37
2H250AC18
2H250AC70
2H250AC93
2H250AC95
2H250AD32
2H250AD37
(57)【要約】
【課題】多数のコアが格子状に配置され、コア間のピッチ精度に優れた光ファイバの発明であって、とくに、大容量通信用に適用できるマルチコアのプラスチック光ファイバの提供。
【解決手段】
コアとクラッドと海からなるプラスチックマルチコア光ファイバであって、その断面においてコアは格子状に配置されており、クラッドがコアを取り囲み、該クラッドの形状が、各格子点を結ぶ格子線の方向(格子線方向)に対して平行な辺を持つ形状である、プラスチックマルチコア光ファイバ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアとクラッドと海からなるプラスチックマルチコア光ファイバであって、
その断面においてコアは格子状に配置されており、
クラッドがコアを取り囲み、
該クラッドの形状が、各格子点を結ぶ格子線の方向(格子線方向)に対して平行な辺を持つ形状である、
プラスチックマルチコア光ファイバ。
【請求項2】
コアとクラッドと海からなるプラスチックマルチコア光ファイバであって、
その断面においてコアは正方格子状に配置されており、
クラッドがコアを取り囲み、
該クラッドの形状が、正方格子方向に対して平行な4つの辺を持つ形状である、
請求項1に記載のプラスチックマルチコア光ファイバ。
【請求項3】
コアとクラッドと海からなるプラスチックマルチコア光ファイバであって、
その断面においてコアとクラッドが下記(1)式の関係式を満足する、請求項2に記載のプラスチックマルチコア光ファイバ。
(B+2C)/2≦A<B+2C ・・・(1)式
A:クラッドの4つの辺の長さA1、A2、A3、およびA4の平均[μm]
B:縦格子方向のコア径B1と、横格子方向のコア径B2の平均[μm]
C:縦格子方向のクラッドの厚みC1およびC3、ならびに横格子方向のクラッドの厚みC2およびC4の平均[μm]
ここで、縦格子方向のクラッドの厚みC1およびC3とは、縦格子方向のコア径B1の延長線上におけるクラッドの厚みである。また、横格子方向のクラッドの厚みC2およびC4とは、横格子方向のコア径B2の延長線上におけるクラッドの厚みである。
【請求項4】
コアとクラッドと海からなるプラスチックマルチコア光ファイバであって、
その断面においてコアは正方格子状に配置されており、
該コアの形状が正方格子方向に対して平行な4つの辺を持つ形状である、
請求項2に記載のプラスチックマルチコア光ファイバ。
【請求項5】
コアとクラッドと海からなるプラスチックマルチコア光ファイバであって、
その断面においてコアとクラッドが下記(2)、(3)および(4)式の関係式を満足する、請求項4に記載のプラスチックマルチコア光ファイバ。
G/2≦E<G ・・・(2)
(G+2H)/2≦F<G+2H ・・・(3)
E<F ・・・(4)
E:コアの4つの辺の長さE1、E2、E3、およびE4の平均[μm]
F:クラッドの4つの辺の長さF1、F2、F3、およびF4の平均[μm
G:コアに内接する円を描いた場合に、縦格子方向の該内接円の径G1と、横格子方向の該内接円の径G2との平均[μm]
H:縦格子方向のクラッドの厚みH1およびH3、ならびに横格子方向のクラッドの厚みH2およびH4の平均[μm]
ここで、縦格子方向のクラッドの厚みH1およびH3とは、縦格子方向の内接円径G1の延長線上に位置するおけるクラッドの厚みである。また、横格子方向のクラッドの厚みH2およびH4とは、横格子方向の内接円径G2の延長線上に位置するおけるクラッドの厚みである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のコアが格子状に配置され、コア間のピッチ精度に優れた光ファイバの発明であって、とくに、大容量通信用に適用できるマルチコアのプラスチック光ファイバに関する。
【背景技術】
【0002】
マルチコア光ファイバは、異なる技術領域において、有用性を有する。例えば光電センサ用途として用いた場合、通常のシングルコア光ファイバに比べると、曲げた時の光量損失が大幅に低減する。これはシングルコアに対して、マルチコアの方が1つ1つのコア径が大幅に小さいため、同じ曲げRで曲げたとしても、マルチコアの曲げRに対する光の入射角が小さくなるためである。(特許文献1)。当該特許文献1では正方格子状に配置されたマルチコアが提案されている。光電センサ用途に於いては、コア1つ1つに異なる光を入射するのではなく、マルチコア全体に光を入射し、マルチコア全体としてまとまった光を伝達するものである。
【0003】
別の用途は、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)のような光源を用いた通信用途が挙げられる。VCSELは、半導体レーザーの一種で、上面から垂直にレーザービームを放射する。ひとつの光源からは数十マイクロメートル径のレーザー光を放射するが、2次元アレイ状に多くの光源を配置できる特徴がある。この光源1つ1つとマルチコアのコア1つ1つを結合することにより、大容量の通信が可能となる。VCSELの2次元アレイ形状としては例えば、六角格子状がある。六角格子状に配置されたVCSELに対しては六角格子状に配置したマルチコアとの結合が提案されている(特許文献2)。当該特許文献2では六角格子状に配置された7つのマルチコアの周りを無数の六角格子状に配置された空孔が取り囲んでいる。マルチコア間を空孔が六角格子状に敷き詰められることで、7つのマルチコア間距離の精度を高まり、VCSELとの結合を可能としている。また、その他のVCSELの2次元アレイ構造としては例えば、正方格子状がある。正方格子状に配置されたVCSELに対しては正方格子状に配置したマルチコアとの結合が提案されている(特許文献3)。当該特許文献3においては、空孔を有する円筒状のクラッドが正方格子状に配置されており、隣接する4つの円筒状クラッドの隙間にコアロッドが配置されている。この状態で加熱延伸することによりコアが正方格子状に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-23848号公報
【特許文献2】特開2011-145562号公報
【特許文献3】特表2008-534995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、VCSELの1つの光源とマルチコアの1つコアを1対1で結合させるには、マルチコアのコア間の高い位置精度が要求される。特許文献2、3はガラス光ファイバで構成されており、コアの周りを空孔で覆う特殊な工程を経て、そのコア間の高い位置精度を達成しているが、一括紡糸で形成されるプラスチックで構成される特許文献1のプラスチック光ファイバではコア間の位置精度が著しく低いため、VCSELと1対1で結合せしめることが難しい。
【0006】
このような課題に鑑み、本発明は、多数のコアが格子状に配置され、コア間のピッチ精度に優れた光ファイバの発明であって、とくに、大容量通信用に適用できるマルチコアのプラスチック光ファイバを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、以下である。
1)
コアとクラッドと海からなるプラスチックマルチコア光ファイバであって、
その断面においてコアは格子状に配置されており、
クラッドがコアを取り囲み、
該クラッドの形状が、各格子点を結ぶ格子線の方向(格子線方向)に対して平行な辺を持つ形状である、
プラスチックマルチコア光ファイバ。
2)
コアとクラッドと海からなるプラスチックマルチコア光ファイバであって、
その断面においてコアは正方格子状に配置されており、
クラッドがコアを取り囲み、
該クラッドの形状が、正方格子方向に対して平行な4つの辺を持つ形状である、
1)に記載のプラスチックマルチコア光ファイバ。
3)
コアとクラッドと海からなるプラスチックマルチコア光ファイバであって、
その断面においてコアとクラッドが下記(1)式の関係式を満足する、2)に記載のプラスチックマルチコア光ファイバ。
(B+2C)/2≦A<B+2C ・・・(1)式
A:クラッドの4つの辺の長さA1、A2、A3、およびA4の平均[μm]
B:縦格子方向のコア径B1と、横格子方向のコア径B2の平均[μm]
C:縦格子方向のクラッドの厚みC1およびC3、ならびに横格子方向のクラッドの厚みC2およびC4の平均[μm]
ここで、縦格子方向のクラッドの厚みC1およびC3とは、縦格子方向のコア径B1の延長線上におけるクラッドの厚みである。また、横格子方向のクラッドの厚みC2およびC4とは、横格子方向のコア径B2の延長線上におけるクラッドの厚みである。
4)
コアとクラッドと海からなるプラスチックマルチコア光ファイバであって、
その断面においてコアは正方格子状に配置されており、
該コアの形状が正方格子方向に対して平行な4つの辺を持つ形状である、
2)に記載のプラスチックマルチコア光ファイバ。
5)
コアとクラッドと海からなるプラスチックマルチコア光ファイバであって、
その断面においてコアとクラッドが下記(2)、(3)および(4)式の関係式を満足する、4)に記載のプラスチックマルチコア光ファイバ。
G/2≦E<G ・・・(2)
(G+2H)/2≦F<G+2H ・・・(3)
E<F ・・・(4)
E:コアの4つの辺の長さE1、E2、E3、およびE4の平均[μm]
F:クラッドの4つの辺の長さF1、F2、F3、およびF4の平均[μm]
G:コアに内接する円を描いた場合に、縦格子方向の該内接円の径G1と、横格子方向の該内接円の径G2との平均[μm]
H:縦格子方向のクラッドの厚みH1およびH3、ならびに横格子方向のクラッドの厚みH2およびH4の平均[μm]
ここで、縦格子方向のクラッドの厚みH1およびH3とは、縦格子方向の内接円径G1の延長線上に位置するおけるクラッドの厚みである。また、横格子方向のクラッドの厚みH2およびH4とは、横格子方向の内接円径G2の延長線上に位置するおけるクラッドの厚みである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のプラスチックマルチコア光ファイバは、以下の特徴を有する。
・断面においてコアは格子状に配置されている。
・クラッドがコアを取り囲んでいる。
・クラッドの形状が、各格子を結ぶ格子線の方向(格子線方向)に対して平行な辺を持つ。
以上の特徴を有する本発明のプラスチックマルチコア光ファイバは、1つのコアとそれを取り囲むクラッドを1つの島とみなした場合に、島と島の距離感が安定し、最終的にコア間の距離が安定する、すなわちコア間のピッチ精度に優れるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明のプラスチックマルチコア光ファイバの実施例1及び2の概略断面図である。複数のコアとクラッドからなる島、および海とからなり、複数の円状コアが正方格子状に、縦方向に7島および横方向に7島ともほぼ等距離で配置されている。また、コアを取り囲むクラッドが格子方向に辺をもつ形状である。
【
図2】本発明のプラスチックマルチコア光ファイバの1つの島を示した実施例1の概略断面図である。島は円状コアとそれを取り囲むクラッドで構成される。クラッドは4辺を有している。本発明では、4つの辺A1、A2、A3、およびA4の平均長さをAとする。また、本発明では、縦格子方向のコア径B1と横格子方向のコア径B2の平均を平均コア径Bとする。また、本発明では、縦格子方向のコア径B1の延長線上に位置するクラッドの厚みをそれぞれC1およびC3とする。また、横格子方向のコア径B2の延長線上に位置するクラッドの厚みをそれぞれC2およびC4とする。そして、C1、C2、C3、およびC4の平均を平均クラッド厚みCとする。
図2は、(B+2C)/2≦A<B+2Cの関係を満たし、かつ、Aの値が「(B+2C)/2」の値に近い状態を示す概略断面図である。なお、本発明では、縦格子方向のコア径B1の延長線上に位置する内海の厚みをそれぞれD1およびD3とする。また、本発明では、横格子方向のコア径B2の延長線上に位置する内海の厚みをそれぞれD2およびD4とする。
【
図3】本発明のプラスチックマルチコア光ファイバである実施例2の1つの島を示した概略断面図である。
図3は、(B+2C)/2≦A<B+2Cの関係を満たし、かつ、「A」の値が「B+2C」の値に近い状態を示す概略断面図である。
【
図4】プラスチックマルチコア光ファイバである比較例1の1つの島を示した概略断面図である。
図4は、A<(B+2C)/2の関係になっていることを示す概略断面図である。
【
図5】本発明のプラスチックマルチコア光ファイバの実施例3及び4の概略断面図である。
図5の光ファイバは複数のコアとクラッドと海とから構成される。コアは格子方向に平行な辺をもつ形状をしており、複数のコアが正方格子状に、縦方向に7つおよび横方向に7つともほぼ等距離で配置されている。更に、クラッドはコアを取り囲んでいる。また、クラッドは格子方向に平行な辺をもつ形状を採る。
【
図6】本発明のプラスチックマルチコア光ファイバである実施例3の1つの島を示した概略断面図である。島は格子方向に平行な辺をもつ形状のコアとそれを取り囲むクラッドで構成される。本発明では、コアの4つの辺E1、E2、E3、およびE4の平均を平均長さEとする。また、本発明では、コアを取り囲むクラッドの4つの辺F1、F2、F3、およびF4の平均を平均長さFとする。また、本発明では、コアに内接する円を記載した場合に、縦格子方向の内接円径G1と、横格子方向の内接円径G2との平均を平均内接径Gとする。また、本発明では、縦格子方向の内接円径G1の延長線上に位置するクラッドの厚みをそれぞれH1およびH3とする。また、横格子方向の内接円径G2の延長線上に位置するクラッドの厚みをそれぞれH2およびH4とする。そして、H1、H2、H3、およびH4の平均を平均クラッド厚みHとする。
図6は、G/2≦E<G、(G+2H)/2≦F<G+2H、および、E<Fの関係を満たし、かつ、「E」の値が「G/2」の値に近く、「F」の値が「G+2H」の値に近い状態を示す概略断面図である。なお、本発明では、縦格子方向のコア径G1の延長線上に位置する内海の厚みをそれぞれI1およびI3とする。また、横格子方向のコア径G2の延長線上に位置する内海の厚みをI2およびI4とする。
【
図7】本発明のプラスチックマルチコア光ファイバである実施例4の1つの島を示した概略断面図である。
図7は、G/2≦E<G、(G+2H)/2≦F<G+2H、およびE<Fの関係を満たし、かつ、「E」の値が「G」の値に近く、「F」の値が「G+2H」の値に近い状態を示す概略断面図である。
【
図8】プラスチックマルチコア光ファイバである比較例2の1つの島を示した概略断面図である。
図8は、E>Fの関係となっていることを示す概略断面図である。
【
図9】評価対象の島を示した図である。正方格子状に配置された49島(「縦方向(列方向)に7島」×「横方向(行方向)に7島」)のうち、最外周の島(1列目、7列目、1行目または7行目に属する島)を除く25島(すなわち、2~6列目かつ2~6行目に属する島)のクラッドを黒で示した。
【
図10】コア面積比の評価エリアを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のプラスチックマルチコア光ファイバは、コアとクラッドと海からなるプラスチックマルチコア光ファイバであって、その断面においてコアは格子状に配置されており、クラッドがコアを取り囲み、該クラッドの形状が、各格子を結ぶ格子線の方向(格子線方向)に対して平行な辺を持つ形状であるプラスチックマルチコア光ファイバである。以下、このようなプラスチックマルチコア光ファイバについて説明する。
【0011】
[コアとクラッドと海からなるプラスチックマルチコア光ファイバ]
本発明のプラスチックマルチコア光ファイバは、コアとそれを取り囲むクラッドからなる島(以下、1つのコアとそれを取り囲む1つのクラッドを「島」と称することがある。)、および更にその周辺を覆う海を有する3層のマルチコア構造である。コアの数は、複数でありさえすれば特に制限されるものではなく、VCSELの光源数に応じて対応が可能である。
【0012】
[コアの配置]
また本発明において、コアは格子状に配置されるが、本発明の効果を損なわない限りは、その格子の形状は特に限定されるものではなく、VCSELの光源配置に応じて選択することが可能である。格子の形状として、例えば、菱形格子、六角格子、正方格子、矩形格子などが挙げられる。
【0013】
本発明における格子とは各コアの中心を格子点として形成される格子を意味する。そして、各格子点を結ぶ格子線の方向を当該格子における格子方向とする。
【0014】
[クラッドの形状]
本発明では、クラッドの形状が、各格子点を結ぶ格子線の方向(格子線方向)に対して平行な辺を持つ形状であることが重要である。コアを取り囲むクラッドを斯様な辺を持つ形状とせしめることにより、コアとクラッドからなる島どうしの位置関係を安定せしめることができるためである。
【0015】
ここで、本発明において「平行な辺」とは、完全に平行な辺だけでなく、格子方向に概ね平行な辺も含むことを意味する、好ましくは完全に平行な辺であることである。
【0016】
[格子の形状]
前述のとおり、本発明の効果を損なわない限りは、格子の形状は特に限定されるものではないが、格子の形状として正方格子を選択すると、四角い島が碁盤目内(Grid)に規則的に揃うため、本発明の効果が特に顕著に発現される。したがって、格子の形状として正方格子を選択することは本発明の好ましい態様の一つである。
【0017】
また、格子の形状が正方格子である場合、クラッドの形状が、正方格子方向に対して平行な4つの辺を持つ形状であることが好ましい。尚、正方格子とは4つの格子の長さ等しいものを意味する。なお、本発明において「正方」とは、完全に正方な形状だけではなく、概ね正方な形状も含むことを意味するが、好ましくは完全に正方な形状であることである。
【0018】
[コアとクラッドの関係(1)]
また、本発明のプラスチックマルチコア光ファイバは、コアとクラッドと海からなるプラスチックマルチコア光ファイバであって、その断面においてコアとクラッドが下記(1)式の関係式を満足することが好ましい。
【0019】
中でも、コアは正方格子状に配列されており、クラッドがコアを取り囲み、クラッドの形状が、正方格子方向に対して平行な4つの辺を持つ形状である場合に、コアとクラッドが下記(1)式の関係式を満足することが特に好ましい。
(B+2C)/2≦A<B+2C ・・・(1)式
A:クラッドの4つの辺の長さA1、A2、A3、およびA4の平均[μm]
B:縦格子方向のコア径B1と、横格子方向のコア径B2の平均[μm]
C:縦格子方向のクラッドの厚みC1と、横格子方向のクラッドの厚みC2の平均[μm]
ここで、縦格子方向のクラッドの厚みC1とは、縦格子方向のコア径B1の延長線上におけるクラッドの厚みである。
また、横格子方向のクラッドの厚みC2とは、横格子方向のコア径B2の延長線上におけるクラッドの厚みである。
【0020】
尚、本明細書における縦7島、横7島のマルチコアの縦と横の関係については、一方向を縦方向とした場合に、もう一方向を横方向としている。
【0021】
図1には、円状コアが正方格子状に縦方向に7島および横方向に7島ともほぼ等距離で配置され、コアを取り囲むクラッドが格子線方向に対して平行な辺をもつ形状を採る構造の光ファイバの概略断面図が示されている。
【0022】
また、
図2には(1)式の関係を満たした1つの島であって、「A」が「B+2C」に近い場合の島の構造が示されている。ここで「B+2C」は平均コア径とその両側のクラッド厚みを足した長さである。したがって、「A」は原理的に「B+2C」と同値を採ることは無いが、「A」の長さが「B+2C」の長さに近づくほど、よりコア間のピッチ精度は高くなる。
【0023】
また、
図3には、(1)式の関係を満たした1つの島あって、「A」が「(B+2C)/2に」近い場合の島の構造が示されている。
【0024】
また、
図4にはコアとクラッドの関係が「A<(B+2C)/2」である場合の島の構造が示されている。この構造は、クラッドが円状のコアを均一なクラッド厚みで取り囲んだ、従来のマルチコア構造と近い構造になり、コア間のピッチ精度にはバラつきが見られるようになる。
【0025】
[コアの形状]
また本発明のプラスチックマルチコア光ファイバは、その断面においてコアは正方格子状に配列されており、該コアの形状が正方格子方向に対して平行な4つの辺を持つ形状であることが好ましい。また、その場合において、コアを取り囲むクラッドの形状が、正方格子方向に対して平行な4つの辺を持つ形状であることが特に好ましい。コアを取り囲むクラッドが、正方格子方向に対して平行な4つの辺を持つ形状を採りつつ、コアの形状を正方格子方向に対して平行な4つの辺をもつ形状にせしめることにより、コアの形状が円形である場合と比較して、コアの面積(断面積)を大きくすることができる。すなわち、斯かる構造を採ることにより、コア間ピッチの精度を維持しつつ、VCSELとの結合許容範囲(Coupling tolerance)を大きくすることができる。VCSELとの結合許容範囲が大きくなることで、VCSELとの結合ずれによる光量損失を防ぐことができる。なお、本発明において「平行な辺」とは、完全に平行な辺だけでなく、格子方向に概ね平行な辺も含むことを意味する、好ましくは完全に平行な辺であることである。
【0026】
[コアとクラッドの関係(2)]
また、本発明のプラスチックマルチコア光ファイバは、コアとクラッドと海からなるプラスチックマルチコア光ファイバであって、その断面においてコアとクラッドが下記(2)、(3)および(4)式の関係式を満足することが好ましい。
【0027】
中でも、コアは正方格子状に配列されており、クラッドがコアを取り囲み、クラッドの形状が、正方格子方向に対して平行な4つの辺を持つ形状であり、かつ、コアの形状が正方格子方向に対して平行な4つの辺を持つ形状である場合に、コアとクラッドが下記(2)、(3)および(4)式の関係式を満足することが特に好ましい。
G/2≦E<G ・・・(2)式
(G+2H)/2≦F<G+2H ・・・(3)式
E<F ・・・(4)式
E:コアの4つの辺の長さE1、E2、E3、およびE4の平均[μm]
F:クラッドの4つの辺の長さF1、F2、F3、およびF4の平均[μm]
G:コアに内接する円を描いた場合に、縦格子方向の該内接円の径G1と、横格子方向の該内接円の径G2との平均[μm]
H:縦格子方向のクラッドの厚みH1と、横格子方向のクラッドの膜厚H2の平均[μm]
ここで、縦格子方向のクラッドの厚みH1とは、縦格子方向の内接円径G1の延長線上に位置するクラッドの厚みである。
また、横格子方向のクラッドの厚みH2とは、横格子方向の内接円径G2の延長線上に位置するクラッドの厚みである。
【0028】
図5には、複数のコアが正方格子状に、縦向に7島および横方向に7島ともほぼ等距離で配置され、該コアの形状は正方格子方向に平行な4つの辺を持つ形状であり、更にコアを取り囲むクラッドが正方格子方向に平行な辺をもつ形状を採る構造が示されている。
を示している。
【0029】
また、
図6には、(2)式、(3)式および(4)式の関係を満たした一つの島であって、「E」が「G/2」の長さに近いものを示している。ここで、「E」が「G/2」よりも短くなると、コアの形状は円形状に近くなるため、接合時のマージン拡大効果は小さくなる。
【0030】
また、
図7には、(2)式、(3)式および(4)式の関係を満たした一つの島であって、「E」が「G」の長さに近いものを示している。ここで、「E」が「G」の長さに近づくほどコア面積は大きくなり、VCSELとの結合許容範囲も大きくなる。
【0031】
一方、
図8には、(2)式および(3)式の関係を満たすが、(4)式の関係を満たさない島の構造が示されている。斯かる構造においては、コアの各4辺のコーナー部のクラッド厚みが薄くなり、クラッド破れを起こすコアが発生し、伝送損失が悪くなる傾向が見られる。クラッド破れとはコアの周りをクラッドが完全に囲えてなく、一部コアと内海がつながった状態を意味する。
【0032】
[コア]
本発明のプラスチックマルチコア光ファイバのコア材料は、メチルメタクリレート(以下、MMAと略記することがある。)を共重合成分の主成分とする(共)重合体であることが透過率の観点からは好ましい。具体的には、ポリメチルメタクリレート(以下、PMMAと略記することがある。)またはMMAが共重合成分の70重量%以上である共重合体を含み、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、(置換)スチレンおよび(N-置換)マレイミドなどを共重合するか、あるいはそれらを高分子反応したグルタル酸無水物やグルタルイミドなどの変性重合体などが挙げられる。上記の(共)重合体は、重合体および共重合体を表している。同様に、(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル酸エステルおよびメタアクリル酸エステルを表している。(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ボルニルメタクリレートおよびアダマンチルメタクリレートなどが、置換スチレンとしては、メチルスチレン、α-メチルスチレンなどが挙げられる。N-置換マレイミドとしては、N-イソプロピルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミドおよびN-o-メチルフェニルマレイミドなどが挙げられる。これら共重合成分は、複数で用いても良く、これら以外の成分を少量使用してもよい。また、耐酸化防止剤などの安定剤が透光性に悪影響しない量だけ含まれていても構わない 。
【0033】
その他、コアを形成する重合体としては、例えば、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリスチレン、ポリカーボネート、フルオレン含有ポリエステル、ポリメチルペンテン等についても、コアと第1クラッドとの組合せにおいて、ファイバ開口数(以下、NA)が0.65を越えない範囲で好ましく使用できる。NAが0.65を超えると、本発明における通信用途に於いては、伝送遅延が発生するために好ましくない。
【0034】
本発明のプラスチック光ファイバのコア径としては、特に限定はされないが、10~200μm程度であることが好ましい。10μm以下では十分な伝送損失(dB/km)が得られない一方で、200μm以上になると、VCSEL光源間のピッチと合わず、VCSEL光源との1対1対応が難しくなる。格子状に配列されたコア間ピッチはVCSELの光源間ピッチと合わせて設計する。
【0035】
[クラッド]
本発明のプラスチックマルチコア光ファイバは、前記コアを取り囲むクラッドを有する。クラッドに用いるクラッド材料は、コア材料がPMMA(屈折率1.48~1.50)の場合にはNAの観点から、低屈折のフッ素樹脂であることが好ましい。フッ素樹脂としては特に限定しないが、ビニリデンフルオライド単位とトリフルオロエチレン単位となる共重合体(屈折率1.39~1.41)、それよりも屈折率が低くPMMAとの接着性がよく加工性にも優れたアクリル酸フッ素化エステルポリマー(屈折率1.35~1.37)、ポリメタクリル酸パーフルオロブチル(屈折率1.36)、ポリメタクリル酸パーフルオロイソプロピル(屈折率1.37)、ポリメタクリル酸ヘキサフルオロ2-プロピル(屈折率1.38)、が好ましい。また更に屈折率を低くする目的でフッ化マグネシウムなどのフッ素系材料等のドーパントを添加してもよい。
【0036】
その他、クラッドを形成する材料としては、例えば、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリスチレン、ポリカーボネート、フルオレン含有ポリエステル、ポリメチルペンテン等が挙げられる。
【0037】
本発明のプラスチックマルチコア光ファイバのクラッド厚みは、
図2、
図3、
図4のようにコアが円状の場合には、縦格子方向のコア径B1の延長線上に位置するクラッド厚みC1およびC3、ならびに横格子方向のコア径B2の延長線上に位置するクラッド厚みC2およびC4として定義される。
【0038】
また、
図6、
図7、
図8のようにコアが格子方向に平行な辺をもつ形状を採る場合には、コアに内接する円を描き、そして、縦格子方向の内接円径G1の延長線上に位置するクラッド厚みH1およびH3、ならびに横格子方向の内接円径G2の延長線上に位置するクラッド厚みH2およびH4で定義される。
【0039】
本発明では、クラッド厚みは特に限定されないが、一般的に、クラッドの厚みはVCSELの光源数、光源径、光源間ピッチにより設計され、1~10μmの範囲にあることが好ましい。1μm未満の場合には、光漏れが生じたり、クラッド破れが生じる可能性がある。また、一般に、クラッドの厚みが10μmまであれば、クラッドの機能としては十分達成される。
【0040】
[海]
本発明のプラスチックマルチコア光ファイバはクラッドの外側に海を有する。海は光ファイバの外径や、柔軟性、クラッドとの屈折率差を利用した光の閉じ込めや放射、また遮光剤を添加することでクロストークを防ぐなどの役割を果たす。加えて、本発明においては、海は、コアを取り囲むクラッドに格子方向に対して平行な辺を持たせるための重要な役割を果たす。
【0041】
本発明では、海について、格子状の島群の外側を覆う海を「外海」、格子状の島の間に存在する海を「内海」と定義する。即ち、この内海が格子線上に配置されることで、島どうしの干渉を防ぐ境界線となる。従って、内海の厚みは0.5μm以上あって、島の径よりも小さいことが好ましい。内海の厚みが0.5μm未満になると、島が内海を突き破って、隣の島と結合するなどの欠陥が生じる。また、内海の厚みが島の径よりも大きくなってしまうと、島間のピッチ精度が悪化する。
【0042】
海に用いられる材料としては上述の、柔軟性、クラッドとの屈折率差を利用した光の閉じ込めや放射、また遮光剤を添加することでクロストークを防ぐなどの役割などの機能を鑑みながら、先に選定したコア、クラッド材料との組合せに於いて選定を行う。特に、本発明において、海(特に内海)は境界線としての役割を果たすことから、海に用いられる材料の溶融粘度の選択が重要となる。本発明では海の溶融粘度(ここでの溶融粘度とは口金温度における溶融粘度を意味する。)が、クラッドの溶融粘度よりも低いことが好ましく、そのような溶融粘度の関係を有する海材料(およびクラッド材料)を選択することが好ましい。海の溶融粘度が低い方が、島どうしが近接しやすく、格子方向に対して平行な辺をクラッドに形成させやすいためである。
【0043】
[プラスチック光ファイバの製造方法]
本発明に係るプラスチック光ファイバの製造方法としては、例えば、コアを構成するための材料と、クラッドを構成するための材料と、海を構成するための材料とをそれぞれ50~90℃の加熱真空下で十分乾燥させた後、200~300℃の加熱溶融状態下で、格子状に設計した複合口金から吐出してコア/クラッド/海の3層の海島構造を形成する複合紡糸法が好ましく用いられる。続いて、破断強度などの機械特性を向上させる目的で、1.2~3倍程度の延伸処理が一般的に行なわれ、本発明に係るプラスチック光ファイバが得られる。
【実施例0044】
以下、本発明を実施例により、更に詳細に説明する。以下の実施例および比較例のプラスチックマルチコア光ファイバにおいては以下の事項を基本設計とする。すなわち、特に記載がない限り以下の構造を採る。
・光ファイバの外形:外径800μm
・コアの形状:真円
・コアの:径45μm
・クラッドの形状:コアを均一の厚さで取り囲む形状
・クラッドの厚み:5μm
・島間の内海の厚み:5μm
・コアピッチ:60μm、
・島の数が縦に7島、横に7島の合計49島
・コアの配置:正方格子状に配置。
【0045】
各実施例および比較例における評価は以下の方法により行った。尚、評価は、正方格子状に配置された49島(「縦方向(列方向)に7島」×「横方向(行方向)に7島」)のうち、最外周の島(1列目、7列目、1行目または7行目に属する島)を除く25島(すなわち、2~6列目かつ2~6行目に属する島)を対象として評価を実施した(
図9)。
【0046】
(1)外径、コア径、コア辺長、クラッド辺長、クラッド厚み、および内海厚み
(手順1:準備)プラスチック光ファイバから無作為に選択した箇所について、延伸方向に対し垂直に切断し、コア/クラッド/海の界面が観察できるように断面を研磨した後、デジタルマイクロスコープ VHX-7000(Keyence製)を用いて拡大観察する。拡大観察の倍率は、10~200倍の間で、断面が全て視野範囲に入り、界面が観察できる範囲を選択する。
【0047】
(手順2:光ファイバの外径の測定)光ファイバの外径は、外海と空気界面で形成される境界円上に於いて、円弧の中心角が120°±10°の範囲になるように、3点を抽出し、3点を通り描かれる円から求めた。
【0048】
(手順3:コア径の測定)
(手順3-1:コアが円の場合のコア径の測定)
コアが円の場合は、コアとクラッド界面で形成される境界円上において、円弧の中心角が120°±10°の範囲になるように、3点を抽出し、3点を通り描かれる円から中心を求めた。
次にこの中心を通り、縦格子方向に直線を伸ばし、コアとクラッドの界面までの距離をコア径B1とした。同様に、当該中心を通り、横格子方向に直線を伸ばし、コアとクラッドの界面までの距離をコア径B2とした。
25島についてB1およびB2のデータを取得した。
B1について平均値を求め、これを最終的なコア径B1の値とした。同様に、B2について平均値を求めこれを最終的なコア径B2の値とした。
得られたB1およびB2の平均をコア径Bとした。
【0049】
(手順3-2:コアが格子方向に対して平行な辺を持つ場合のコア径の測定)
コアが格子方向に対して平行な辺を持つ場合は、縦方向についてはコアとクラッド界面で形成される境界の4辺上に於いて、上下辺上の中点と、左右のどちらか任意の辺の中点を抽出し、この3点を通り描かれる円から中心を求めた。横方向についてはコアとクラッド界面で形成される境界の4辺上に於いて、左右辺上の中点と、上下のどちらか任意の辺の中点を抽出し、この3点を通り描かれる円から中心を求めた。
次にこの中心を通り、縦格子方向に直線を伸ばし、コアとクラッドの界面までをコア径G1とした。同様に、当該中心を通り、横格子方向に直線を伸ばし、コアとクラッドの界面までの距離をコア径G2とした。
25島についてG1およびG2のデータを取得した。
G1について平均値を求め、これを最終的なコア径G1の値とした。同様に、G2について平均値を求めこれを最終的なコア径G2の値とした。
得られたG1およびG2の平均をコア径Gとした。
【0050】
(手順4:コア辺長の測定)
手順1にて得られる拡大観察画像において、コアとクラッド界面で形成される境界線のうち、直線の箇所について、各々の直線の始点と終点の間の長さを計測し、E1、E2、E3、およびE4を求めた。
25島についてE1、E2、E3、およびE4のデータを取得した。
E1について平均値を求め、これを最終的なコア辺長E1の値とした。同様に、E2について平均値を求めこれを最終的なコア辺長E2の値とした。同様に、E3について平均値を求めこれを最終的なコア辺長E3の値とした。同様に、E4について平均値を求めこれを最終的なコア辺長E4の値とした。
得られたE1、E2、E3およびE4の平均をコア辺長Eとした。
【0051】
(手順5:クラッド辺長の測定)
(手順5-1:コアが円の場合のクラッド辺長の測定)
コアが円の場合、手順1にて得られる拡大観察画像において、クラッドと内海界面で形成される境界線のうち、直線の箇所について、各々の直線の始点と終点の間の長さを計測し、A1、A2、A3、およびA4を求めた。
25島についてA1、A2、A3、およびA4のデータを取得した。
A1について平均値を求め、これを最終的なクラッド辺長A1の値とした。同様に、A2について平均値を求めこれを最終的なクラッド辺長A2の値とした。同様に、A3について平均値を求めこれを最終的なクラッド辺長A3の値とした。同様に、A4について平均値を求めこれを最終的なクラッド辺長A4の値とした。
得られたA1、A2、A3およびA4の平均をクラッド辺長Aとした。
【0052】
(手順5-2:コアが格子方向に対して平行な辺を持つ場合のクラッド辺長の測定)
コアが格子方向に対して平行な辺を持つ場合は、クラッドと海界面で形成される境界線のうち、直線の箇所について、各々の直線の始点と終点の間の長さを計測し、F1、F2、F3、およびF4を求めた。
25島についてF1、F2、F3、およびF4のデータを取得した。
F1について平均値を求め、これを最終的なクラッド辺長F1の値とした。同様に、F2について平均値を求めこれを最終的なクラッド辺長F2の値とした。同様に、F3について平均値を求めこれを最終的なクラッド辺長F3の値とした。同様に、F4について平均値を求めこれを最終的なクラッド辺長F4の値とした。
得られたF1、F2、F3およびF4の平均をクラッド辺長Fとした。
【0053】
(手順6:クラッド厚みの測定)
(手順6-1:コアが円の場合のクラッド厚みの測定)
手順3-1において描いた直線をクラッドと海の境界線まで延長した。この直線と、コアとクラッドとの境界線とが交わる点を「始点」とした。次いで、当該直線と、クラッドと海との境界線とが交わる点を「終点」とした。各々の始点と終点の間の長さを計測し、C1、C2、C3、およびC4を求めた。
25島についてC1、C2、C3、およびC4のデータを取得した。
C1について平均値を求め、これを最終的なクラッド厚みC1の値とした。同様に、C2について平均値を求め、これを最終的なクラッド厚みC2の値とした。同様に、C3について平均値を求め、これを最終的なクラッド厚みC3の値とした。同様に、C4について平均値を求め、これを最終的なクラッド厚みC4の値とした。
得られたC1、C2、C3およびC4の平均をクラッド厚みCとした。
【0054】
(手順6-2:コアが格子方向に対して平行な辺を持つ場合のクラッド厚みの測定)
手順3-2において描いた直線をクラッドと海の境界線まで延長した。この直線と、コアとクラッドとの境界線とが交わる点を「始点」とした。次いで、当該直線と、クラッドと海との境界線とが交わる点を「終点」とした。各々の始点と終点の間の長さを計測し、H1、H2、H3、およびH4として求めた。
25島についてH1、H2、H3、およびH4のデータを取得した。
H1について平均値を求め、これを最終的なクラッド厚みH1の値とした。同様に、H2について平均値を求め、これを最終的なクラッド厚みH2の値とした。同様に、H3について平均値を求め、これを最終的なクラッド厚みH3の値とした。同様に、H4について平均値を求め、これを最終的なクラッド厚みH4の値とした。
得られたH1、H2、H3およびH4の平均をクラッド厚みHとした。
【0055】
(手順7-1:コアが円の場合の内海厚みの測定)
手順3-1において描いた直線を隣接する島のクラッドと海の境界線まで延長した。この直線と、クラッドと海との境界線とが交わる点を「始点」とした。次いで、当該直線と、隣接するクラッドと海との境界線とが交わる点を「終点」とした。各々の始点と終点の間の長さを計測し、D1、D2、D3、およびD4を求めた。
25島についてD1、D2、D3、およびD4のデータを取得した。
D1について平均値を求め、これを最終的な内海厚みD1の値とした。同様に、D2について平均値を求め、これを最終的な内海厚みD2の値とした。同様に、D3について平均値を求め、これを最終的な内海厚みD3の値とした。同様に、D4について平均値を求め、これを最終的な内海厚みD4の値とした。
得られたD1、D2、D3およびD4の平均を内海厚みDとした。
【0056】
(手順7-2:コアが格子方向に対して平行な辺を持つ場合の内海厚みの測定)
手順3-2において描いた直線を隣接する島のクラッドと海の境界線まで延長した。この直線と、クラッドと海との境界線が交わる点を「始点」とした。次いで、当該直線と、隣接するクラッドと内海との境界線とが交わる点を「終点」とした。各々の始点と終点の間の長さを計測し、I1、I2、I3、およびI4を求めた。
25島についてI1、I2、I3、およびI4のデータを取得した。
I1について平均値を求め、これを最終的な内海厚みI1の値とした。同様に、I2について平均値を求め、これを最終的な内海厚みI2の値とした。同様に、I3について平均値を求め、これを最終的な内海厚みI3の値とした。同様に、I4について平均値を求め、これを最終的な内海厚みI4の値とした。
得られたI1、I2、I3およびI4の平均を内海厚みIとした。
【0057】
(2)コアピッチ
コアピッチはコア中心点を結んだ線を意味する。
図9に示した25島の各コア中心点を縦横に結んだ合計40のコアピッチデータを取得し、その標準偏差σを算出、σ<1μmであれば合格とした。コア中心点は縦横のコア径の交点を意味する。
【0058】
(3)コア面積比
コア面積比の測定エリアは、
図10に示される25島の4隅に位置するコアのそれぞれの中心を頂点とする1辺240μmの正方形で囲まれたエリア57600μm
2とする。
すなわち、本発明では、以下の手順にてコア面積比を求めた。
まず、縦5島×横5島、合計25島の画像を取得した。
次いで、25島における4つの隅に位置するコアの中心を頂点とする4つの辺(本実施例における1辺の長さ:240μm)からなる正方形で囲まれる領域を測定対象領域とした(本実施例における測定対象領域の面積;57600μm
2)。
次いで、当該測定領域において、コアを白色で、コア以外の領域を黒色で表示させた。
白色の領域を合計し、これをコア領域面積とした。
「コア領域面積/測定対象領域」を算出し、これをコア面積比とした。
ここで、コア面積比が広いほどVCSELとの結合許容範囲が広がる。
【0059】
(4)伝送損失
伝送損失は、10mの長さにカットした光ファイバを用いて、レーザー光(波長650nm、入射NA=0.25)を光ファイバの一方の端部から1つのコアに入射し、他方の端部から出射した光量A(dBm)を測定する。続いて、この10mの試料を5mの長さにカットし、同じ平行光を一方の端部から入射し、他方の端部から出射した光量B(dBm)を測定し、(B-A)/(10-5)から、透光損失C(dB/km)を求める。25島のデータの平均値を算出し、500dB/km以下であれば、合格とした。
【0060】
(5)屈折率
各実施例および比較例において用いた材料からそれぞれ10mm×10mm×3mmの試験片を250℃で射出成形により作製し、アッベ屈折率計を用いて、室温25℃雰囲気下、屈折率を測定した。
【0061】
(6)実施例および比較例に用いた材料
コア材料A:アクリルポリマー(PMMA)(商品名「GH-1000S」、クラレ(株)製)。射出成形後に測定した屈折率は1.49だった。
【0062】
クラッド材料B:フッ化ビニリデン18重量%/テトラフルオロエチレン62重量%/ヘキサフルオロプロピレン16重量%/パーフルオロプロピルビニルエーテル4重量%の共重合体。射出成形後に測定した屈折率は1.35だった。
【0063】
海材料C:フッ化ビニリデン74.5重量%/テトラフルオロエチレン25.5重量%の共重合体。射出成形後に測定した屈折率は1.40だった。
(7)開口数NA
前述の方法により測定した屈折率から、下記式により開口数を算出した。
コア/第1クラッドの開口数=((コアの屈折率)2-(クラッドの屈折率)2)1/2
本実施例の光ファイバのNAは0.63であった。
【0064】
[実施例1]
基本設計における、25島の4隅のコアの中心を頂点とする1辺240μmの正方形で囲まれたエリアにおけるコアの合計面積、クラッドの合計面積、内海の合計面積を1とした場合に、コア面積が1倍、クラッド面積が1.09倍、内海面積が0.94となるように、コア材料A、クラッド材料B、海材料Cを複合紡糸機に供給し、温度250℃で芯鞘複合溶融紡糸し、光ファイバを得た。得られた光ファイバの物性および特性等を表1に示す。また、構造を
図2に示す。得られた光ファイバの伝送損失は340dB/kmで良好であった。
【0065】
[実施例2]
基本設計における25島の4隅のコアの中心を頂点とする1辺240μmの正方形で囲まれたエリアにおけるコアの総合面積、クラッドの総合面積、内海の総合面積を1とした場合に、コア面積が1倍、クラッド面積が1.17倍、内海面積が0.89倍となるように、コア材料A、クラッド材料B、海材料Cを複合紡糸機に供給し、温度250℃で芯鞘複合溶融紡糸し、光ファイバを得た。得られた光ファイバの物性および特性等を表1に示す。また、構造を
図3に示す。得られた光ファイバの伝送損失は330dB/kmで良好であった。
【0066】
[実施例3]
基本設計における25島の4隅のコアの中心を頂点とする1辺240μmの正方形で囲まれたエリアにおけるコアの合計面積、クラッドの合計面積、内海の合計面積を1とした場合に、コア面積が1.15倍、クラッド面積が0.87倍、内海面積が0.89倍となるように、コア材料A、クラッド材料B、海材料Cを複合紡糸機に供給し、温度250℃で芯鞘複合溶融紡糸し、光ファイバを得た。得られた光ファイバの物性および特性等を表1に示す。また、構造を
図6に示す。コア材料の供給量を増やすことで、実施例1、2と比較し、得られた光ファイバのコアは格子方向に4辺を持つ形状をしており、コア面積比は50.7%に拡大した。また、伝送損失は290dB/kmで良好であった。
【0067】
[実施例4]
基本設計における25島の4隅のコアの中心を頂点とする1辺240μmの正方形で囲まれたエリアにおけるコアの合計面積、クラッドの合計面積、内海の合計面積を1とした場合に、コア面積が1.27倍、クラッド面積が0.63倍、内海面積が0.89倍となるように、コア材料A、クラッド材料B、海材料Cを複合紡糸機に供給し、温度250℃で芯鞘複合溶融紡糸し、光ファイバを得た。得られた光ファイバの物性および特性等を表1に示す。また、構造を
図7に示す。得られた光ファイバのコアピッチは60.1μmで偏差σは0.4μmで最良であった。コア材料の供給量を更に増やすことで、コアは格子方向に4辺を持つ形状をしており、実施例3に比較し、4辺の長さは長くなった。また、コア面積比は56.2%に拡大した。伝送損失はコアの面積拡大により、250dB/kmで最良であった。
【0068】
[比較例1]
基本設計における25島の4隅のコアの中心を頂点とする1辺240μmの正方形で囲まれたエリアにおけるコアの合計面積、クラッドの合計面積、内海の合計面積を1とした場合に、コア面積が1倍、クラッド面積が0.97倍、内海面積が1.02倍となるように、コア材料A、クラッド材料B、海材料Cを複合紡糸機に供給し、温度250℃で芯鞘複合溶融紡糸し、光ファイバを得た。得られた光ファイバの物性および特性等を表1に示す。また、構造を
図4に示す。伝送損失は340dB/kmであった。
【0069】
[比較例2]
基本設計における25島の4隅のコアの中心を頂点とする1辺240μmの正方形で囲まれたエリアにおけるコアの合計面積、クラッドの合計面積、内海の合計面積を1とした場合に、コア面積が1.27倍、クラッド面積が0.56倍、内海面積が0.93倍となるように、コア材料A、クラッド材料B、海材料Cを複合紡糸機に供給し、温度250℃で芯鞘複合溶融紡糸し、光ファイバを得た。得られた光ファイバの物性および特性等を表1に示す。また、構造を
図8に示す。ただし、25島のうち17島でクラッドがコア全体を取り囲んでいないことを確認した。また、伝送損失は660dB/kmで不合格であった。
【0070】