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特開2024-162593防音体、その製造方法及び自動車用サイレンサー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162593
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】防音体、その製造方法及び自動車用サイレンサー
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/168 20060101AFI20241114BHJP
   B60R 13/08 20060101ALI20241114BHJP
   B29C 39/10 20060101ALI20241114BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20241114BHJP
   B29C 44/12 20060101ALI20241114BHJP
   G10K 11/175 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G10K11/168
B60R13/08
B29C39/10
B29C44/00 A
B29C44/12
G10K11/175
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078269
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】509069892
【氏名又は名称】株式会社HOWA
(74)【代理人】
【識別番号】100117503
【弁理士】
【氏名又は名称】間瀬 ▲けい▼一郎
(72)【発明者】
【氏名】上田 康介
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大輔
【テーマコード(参考)】
3D023
4F204
4F214
5D061
【Fターム(参考)】
3D023BA03
3D023BB17
3D023BB21
3D023BC01
3D023BD04
3D023BD12
3D023BE06
4F204AA42
4F204AB02
4F204AC05
4F204AD05
4F204AD08
4F204AE06
4F204AG03
4F204AG20
4F204AH17
4F204EA01
4F204EB01
4F204EB12
4F204EF05
4F204EF27
4F204EK17
4F214AA42
4F214AB02
4F214AC05
4F214AD05
4F214AD08
4F214AE06
4F214AG03
4F214AG20
4F214AH17
4F214UA01
4F214UB01
4F214UB12
4F214UD17
4F214UF05
4F214UF27
5D061AA07
5D061AA09
5D061AA26
5D061BB24
5D061DD11
5D061FF01
(57)【要約】
【課題】本発明は、少なくとも発泡ポリウレタン層と非通気層との2層積層構造を有して、広い周波数帯域以内にて当該2層積層構造を構成する複数の異なる厚さ部位にとって共通な周波数を有する騒音に対し、当該各厚さ部位が共に良好な遮音性能を発揮することで、良好な防音性能を発揮するようにした防音体、その製造方法及び自動車用サイレンサーを提供することを目的とする。
【解決手段】防音体は、発泡ポリウレタン層60とフィルム層70との2層積層構成でもって形成されている。発泡ポリウレタン層60は複数の異なる厚さ部位でもって形成されており、当該複数の異なる厚さ部位は、共に、所定の複数の異なる厚さ部位に亘り良好な遮音性能を発揮し得る範囲以内の体積密度を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡ポリウレタン層と、当該発泡ポリウレタン層に積層してなる非通気層とを備えており、
前記発泡ポリウレタン層は、複数の異なる厚さ部位でもって形成されており、
前記発泡ポリウレタン層は、前記複数の異なる厚さ部位にて、共に、所定の複数の異なる厚さ部位に亘り良好な遮音性能を発揮し得る範囲以内の体積密度を有し、かつ、所定の広い周波数帯域以内にて前記複数の異なる厚さ部位にとって共通な周波数を有する騒音に基づき前記非通気層との間に生ずる空気伝搬及び固体伝搬の各振動を互いに逆位相に変化させるような硬度を有するように形成されている防音体。
【請求項2】
前記発泡ポリウレタン層は、前記硬度にて、前記非通気層との間に生ずる空気伝搬及び固体伝搬の各振動を互いに逆位相に変化させるような所定の硬度範囲以内の値を有するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の防音体。
【請求項3】
前記所定の硬度範囲は、CS硬度1~CS硬度25と設定されていることを特徴とする請求項2に記載の防音体。
【請求項4】
前記非通気層を介し前記発泡ポリウレタン層に対向するように前記非通気層に積層してなる吸音層を備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の防音体。
【請求項5】
固定型及び可動型を有し当該可動型を前記固定型に係合させて閉じたとき前記可動型と前記固定型との間に非通気層と当該非通気層上に位置する複数の異なる厚さ部位からなる発泡ポリウレタン層とからなる積層構造体の外形形状に対応する空洞形状を有するキャビティを形成する金型を準備して、前記可動型を前記固定型から開いた状態にて前記キャビティの前記固定型側空洞面内に非通気層層を載置する載置工程と、
当該載置工程後、前記可動型を前記固定型に係合させて前記金型を閉じる閉型工程と、
前記金型を閉じた状態にて液状のポリオール及び液状のイソシアネートを混合して発泡させながら所定の体積密度範囲以内の体積密度からなる液状発泡ポリウレタンとして前記金型の前記キャビティ内に対し前記非通気層上にて流出する混合工程と、
前記キャビティ内の前記液状発泡ポリウレタンをその発泡状態のまま硬化させる発泡硬化工程と、
前記液状発泡ポリウレタンの発泡硬化により前記キャビティ内にて前記同一の体積密度を有する発泡ポリウレタン層が、前記非通気層との間に生ずる空気伝搬及び固体伝搬の各振動を互いに逆位相に変化させるような所定の硬度範囲以内の硬度にて前記非通気層上に成形された後、前記金型を開く開型工程と、
当該開型工程後、前記発泡ポリウレタン層と前記非通気層との積層構造体を前記金型の前記キャビティから取り出す取り出し工程とを備えて、
前記発泡ポリウレタン層と前記非通気層との前記積層構造体からなる防音体を製造するようにした防音体の製造方法。
【請求項6】
前記所定の体積密度は、25kg/m3~80kg/m3であることを特徴とする請求項5に記載の防音体の製造方法。
【請求項7】
前記所定の硬度範囲は、CS硬度1~CS硬度25であることを特徴とする請求項5または6に記載の防音体の製造方法。
【請求項8】
自動車の車体の一部に設けられるサイレンサーであって、
前記車体の一部に装着される発泡ポリウレタン層と、当該発泡ポリウレタン層に積層してなる非通気層とを備えており、
前記発泡ポリウレタン層は、複数の異なる厚さ部位でもって形成されており、
前記発泡ポリウレタン層は、前記複数の異なる厚さ部位にて、共に、所定の複数の異なる厚さ部位に亘り良好な遮音性能を発揮し得る範囲以内の体積密度を有し、かつ、所定の広い周波数帯域以内にて前記複数の異なる厚さ部位にとって共通な周波数を有する騒音に基づき前記非通気層との間に生ずる空気伝搬及び固体伝搬の各振動を互いに逆位相に変化させるような硬度を有するように形成されている自動車用サイレンサー。
【請求項9】
前記発泡ポリウレタン層は、前記硬度にて、前記非通気層との間に生ずる空気伝搬及び固体伝搬の各振動を互いに逆位相に変化させるような所定の硬度範囲以内の値を有するように形成されていることを特徴とする請求項8に記載の自動車用サイレンサー。
【請求項10】
前記所定の硬度範囲は、CS硬度1~CS硬度25と設定されていることを特徴とする請求項8に記載の自動車用サイレンサー。
【請求項11】
前記非通気層を介し前記発泡ポリウレタン層に対向するように前記非通気層に積層してなる吸音層を備えることを特徴とする請求項8~10のいずれか1つに記載の自動車用サイレンサー。
【請求項12】
前記車体の一部は、当該車体のエンジンルームと車室を区画するダッシュパネルであり、
前記発泡ポリウレタン層にて前記ダッシュパネルに前記車室内側から装着されるダッシュサイレンサーであることを特徴とする請求項8~10のいずれか1つに記載の自動車用サイレンサー。
【請求項13】
前記車体の一部は、当該車体の車室内の後部に設けてなるフロアパネルであり、
前記発泡ポリウレタン層にて前記フロアパネルに沿い前記車室内側から付設してなるリアフロアサイレンサーであることを特徴とする請求項8~10のいずれか1つに記載の自動車用サイレンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮音や吸音等の防音に適した防音体、その製造方法、及び自動車の車室内への伝搬騒音の防音に適した自動車用サイレンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の防音体においては、下記特許文献1に記載された防音体が提案されている。当該防音体は、ポリウレタンフォーム及び表皮材を備えており、表皮材は、ウレタンフォームの片面に一体的に成形されて、ウレタンフォームと共に、積層体を形成している。
【0003】
ここで、ポリウレタンフォームは、ポリウレタンフォーム原料から得られた発泡体からなるものである。表皮材は、第1の層及び第2の層からなる2層の不織布シートでもって形成されており、第1の層は、非通気膜からなる第2の層を介しポリウレタンフォームに対向している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-196551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のように構成してなる防音体は、上述したごとく、ポリウレタンフォーム及び不織布シートからなる表皮材でもって2層積層構造として形成されている。このように形成してなる当該防音体は、1600Hzの周波数を有する騒音に対する遮音性能に優れているのみで、広い周波数帯域に亘る周波数を有する騒音に対しては何ら対策を講じていない。このことは、当該防音体は、周波数1600Hzを有する騒音に対しては防音性能を良好に発揮し得ても、広い周波数帯域の周波数を有する騒音に対しては、良好には発揮し得ないことを意味する。
【0006】
そこで、本発明は、以上のようなことに対処するため、少なくとも発泡ポリウレタン層と非通気層との2層積層構造を有して、広い周波数帯域以内において、当該2層積層構造の発泡ポリウレタン層を構成する複数の異なる厚さ部位にとって共通な周波数を有する騒音に対し、当該各厚さ部位が共に良好な遮音性能を発揮することで、良好な防音性能を発揮するようにした防音体、その製造方法及び自動車用サイレンサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の解決にあたり、本発明に係る防音体は、請求項1の記載によれば、
発泡ポリウレタン層(60)と、当該発泡ポリウレタン層に積層してなる非通気層(70)とを備えており、
発泡ポリウレタン層は、複数の異なる厚さ部位でもって形成されており、
発泡ポリウレタン層は、上記複数の異なる厚さ部位にて、共に、所定の複数の異なる厚さ部位に亘り良好な遮音性能を発揮し得る範囲以内の体積密度を有し、かつ、所定の広い周波数帯域以内にて上記複数の異なる厚さ部位にとって共通な周波数を有する騒音に基づき非通気層との間に生ずる空気伝搬及び固体伝搬の各振動を互いに逆位相に変化させるような硬度を有するように形成されている。
【0008】
このように、発泡ポリウレタン層と非通気層との2層積層構造からなる防音体において、発泡ポリウレタン層の複数の異なる厚さ部位が、共に、所定の複数の異なる厚さ部位に亘り良好な遮音性能を発揮し得る範囲以内の体積密度を有する。このため、当該発泡ポリウレタン層と非通気層との2層積層構造からなる防音体は、その複数の異なる厚さ部位にて、共に、良好な遮音性能を発揮し得る。
【0009】
しかも、当該発泡ポリウレタン層は、上述したごとく、所定の広い周波数帯域以内にて複数の異なる厚さ部位にとって共通な周波数を有する騒音に基づき非通気層との間に生ずる空気伝搬及び固体伝搬の各振動を互いに逆位相に変化させるような硬度を有するように形成されている。
【0010】
従って、所定の広い周波数帯域以内にて複数の異なる厚さ部位にとって共通な周波数を有する騒音が当該複数の異なる厚さ部位に入射しても、当該騒音は、発泡ポリウレタン層の硬度のもとに当該発泡ポリウレタン層と非通気層との間に生ずる空気伝搬及び固体伝搬の各振動を互いに逆位相に変化させることにより、非通気層の遮音性能がより一層良好となる。
【0011】
その結果、発泡ポリウレタン層及び非通気層の2層積層構造に基づく良好な遮音性能との双方に基づき、良好な防音性能を発揮し得る防音体の提供が可能となる。
【0012】
また、本発明は、請求項2の記載のように、請求項1に記載の防音体において、発泡ポリウレタン層は、上記硬度にて、非通気層との間に生ずる空気伝搬及び固体伝搬の各振動を互いに逆位相に変化させるような所定の硬度範囲以内の値を有するように形成されていることが望ましい。
【0013】
また、本発明は、請求項3の記載のように、請求項2に記載の防音体において、
上記所定の硬度範囲は、CS硬度1~CS硬度25と設定されていることが望ましい。
【0014】
また、本発明は、請求項4の記載によれば、請求項1~3のいずれか1つに記載の防音体において、
非通気層を介し発泡ポリウレタン層に対向するように非通気層に積層してなる吸音層を備えることを特徴とする。
【0015】
このように、発泡ポリウレタン層と非通気層との2層積層構造に対し吸音層を付加して3層積層構造とすることにより、吸音層が、その吸音性能でもって、上記2層積層構造の防音体としての防音性能をさらに良好に向上させることができる。
【0016】
また、本発明に係る防音体の製造方法は、請求項5の記載によれば、
固定型及び可動型を有し当該可動型を固定型に係合させて閉じたとき可動型と固定型との間に非通気層と当該非通気層上に位置する複数の異なる厚さ部位からなる発泡ポリウレタン層とからなる2層積層構造体の外形形状に対応する空洞形状を有するキャビティを形成する金型を準備して、前記可動型を前記固定型から開いた状態にて前記キャビティの前記固定型側空洞面内に非通気層層(70)を載置する載置工程(S1)と、
当該載置工程後、可動型を固定型に係合させて金型を閉じる閉型工程(S2)と、
金型を閉じた状態にて液状のポリオール及び液状のイソシアネートを混合して発泡させながら所定の体積密度範囲以内の体積密度からなる液状発泡ポリウレタンとして金型の上記キャビティ内に対し非通気層上にて流出する混合工程(S3)と、
上記キャビティ内の上記液状発泡ポリウレタンをその発泡状態のまま硬化させる発泡硬化工程(S4)と、
上記液状発泡ポリウレタンの発泡硬化により上記キャビティ内にて上記同一の体積密度を有する発泡ポリウレタン層が、非通気層との間に生ずる空気伝搬及び固体伝搬の各振動を互いに逆位相に変化させるような所定の硬度範囲以内の硬度にて非通気層上に成形された後、金型を開く開型工程(S5)と、
当該開型工程後、上記発泡ポリウレタン層と非通気層との積層構造体を金型の上記キャビティから取り出す取り出し工程(S6)とを備えて、
発泡ポリウレタン層と非通気層との積層構造体からなる防音体を製造するようにした発泡ポリウレタン層と非通気層との積層構造体からなる防音体を製造するようにしたものである。
【0017】
このような構成によれば、固定型及び可動型を有し当該可動型を固定型に係合させて閉じたとき可動型と固定型との間に非通気層と当該非通気層上に位置する複数の異なる厚さ部位からなる発泡ポリウレタン層とからなる積層構造体の外形形状に対応する空洞形状を有するキャビティを形成する金型を準備する。
【0018】
そして、可動型を固定型から開いた状態にて上記キャビティの上記固定型側空洞面内に非通気層を載置する。
【0019】
当該載置後、可動型を固定型に係合させて金型を閉じる。このように金型を閉じた状態にて、液状のポリオール及び液状のイソシアネートを混合して発泡させながら所定の体積密度範囲以内の体積密度からなる液状発泡ポリウレタンとして金型のキャビティ内に対し非通気層上にて流出する。
【0020】
然る後、キャビティ内の液状発泡ポリウレタンをその発泡状態のまま硬化させる。このような液状発泡ポリウレタンの発泡硬化によりキャビティ内にて、所定の複数の異なる厚さ部位に亘り良好な遮音性能を発揮し得る範囲以内の体積密度を有する発泡ポリウレタン層が、非通気層との間に生ずる空気伝搬及び固体伝搬の各振動を互いに逆位相に変化させるような所定の硬度範囲以内の硬度にて非通気層上に成形された後、金型を開く。
【0021】
その後、発泡ポリウレタン層と非通気層との積層構造体を金型のキャビティから取り出す。
【0022】
このようにして、発泡ポリウレタン層と非通気層との積層構造体からなる防音体を製造する。
【0023】
このような防音体の製造方法によれば、液状のポリオール及び液状のイソシアネートの混合が金型を閉じた状態にて行われるので、金型のキャビティ内の液状発泡ポリウレタンには外部から圧力が加えられることがない。
【0024】
このため、キャビティ内の液状発泡ポリウレタンは、その全体に亘り、当該キャビティ内において、所定の体積密度範囲以内の体積密度及び所定の硬度範囲以内の硬度を有する液状発泡ポリウレタンとして充満されている。従って、当該液状発泡ポリウレタンがその硬化に伴い発泡ポリウレタン層として成形されたとき、当該発泡ポリウレタン層は、その全体に亘り、所定の体積密度範囲以内の体積密度及び所定の硬度範囲以内の硬度を有するように形成されている。
【0025】
これにより、発泡ポリウレタン層の複数の異なる厚さ部位、換言すれば、防音体の複数の異なる厚さ部位の各々に同一の周波数の騒音が入射すると、複数の異なる厚さ部位が共に所定の体積密度範囲以内の体積密度を同一の体積密度として有することから、発泡ポリウレタン層と非通気層との積層構造からなる防音体の複数の異なる厚さ部位が、その同一の体積密度のもと、例えば、同一の周波数の騒音に対し、非通気層と相俟って当該非通気層の遮音性をより一層良好に高める。その結果、請求項1に記載の発明の作用効果を有する防音体の製造が可能となる。
【0026】
また、本発明は、請求項6の記載によれば、請求項5に記載の防音体の製造方法において、上記所定の体積密度は、25kg/m3~80kg/m3であってもよい。
【0027】
また、本発明は、請求項7の記載によれば、請求項5または6に記載の防音体の製造方法において、上記所定の硬度範囲は、CS硬度1~CS硬度25であることが望ましい。
【0028】
また、本発明に係る自動車用サイレンサーは、請求項8の記載によれば、 自動車の車体の一部に設けられる。
【0029】
当該サイレンサーは、
車体の一部に装着される発泡ポリウレタン層と、当該発泡ポリウレタン層に積層してなる非通気層とを備えており、
発泡ポリウレタン層は、複数の異なる厚さ部位でもって形成されており、
当該発泡ポリウレタン層は、上記複数の異なる厚さ部位にて、共に、同一の体積密度を有し、かつ、所定の広い周波数帯域以内にて前記複数の異なる厚さ部位にとって共通な周波数を有する騒音に基づき非通気層との間に生ずる空気伝搬及び固体伝搬の各振動を互いに逆位相に変化させるような硬度を有するように形成されている。
【0030】
これによれば、請求項1に記載の発明と同様の作用効果を達成し得る自動車用サイレンサーの提供が可能である。
【0031】
また、本発明は、請求項9の記載によれば、請求項8に記載の自動車用サイレンサーにおいて、
発泡ポリウレタン層は、上記硬度にて、非通気層との間に生ずる空気伝搬及び固体伝搬の各振動を互いに逆位相に変化させるような所定の硬度範囲以内の値を有するように形成されていることを特徴とする。
【0032】
これによれば、請求項2に記載の発明と同様の作用効果を達成し得る自動車用サイレンサーの提供が可能となる。
【0033】
また、本発明は、請求項10の記載によれば、請求項8に記載の自動車用サイレンサーにおいて、
上記所定の硬度範囲は、CS硬度1~CS硬度25と設定されていることを特徴とする。
【0034】
これによれば、請求項3に記載の発明と同様の作用効果を達成し得る自動車用サイレンサーの提供が可能となる。
【0035】
また、本発明は、請求項11の記載によれば、請求項8~10のいずれか1つに記載の自動車用サイレンサーにおいて、
非通気層を介し発泡ポリウレタン層に対向するように非通気層に積層してなる吸音層を備えることを特徴とする。
【0036】
これによれば、請求項4に記載の発明と同様の作用効果を達成し得る自動車用サイレンサーの提供が可能となる。
【0037】
また、本発明は、請求項12の記載によれば、請求項8~10のいずれか1つに記載の自動車用サイレンサーにおいて、
車体の一部は、当該車体のエンジンルームと車室を区画するダッシュパネルであり、
発泡ポリウレタン層にてダッシュパネルに車室内側から装着されるダッシュサイレンサーであることを特徴とする。
【0038】
これによれば、請求項8~10のいずれか1つに記載の自動車用サイレンサーを自動車用ダッシュサイレンサーとして適用することができる。
【0039】
また、本発明は、請求項13の記載によれば、請求項8~10のいずれか1つに記載の自動車用サイレンサーにおいて、
車体の一部は、当該車体の車室内の後部に設けてなるフロアパネルであり、
発泡ポリウレタン層にてフロアパネルに沿い車室内側から付設してなるリアフロアサイレンサーであることを特徴とする。
【0040】
これによれば、請求項8~10のいずれか1つに記載の自動車用サイレンサーを自動車用リアフロアサイレンサーとして適用することができる。
【0041】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明に係る自動車用サイレンサーのダッシュサイレンサーとしての第1実施形態を適用した自動車の部分破断による模式的概略側面図である。
図2図1のダッシュサイレンサーを当該自動車の車室内側からみた概略正面図である。
図3図1の自動車のダッシュサイレンサーの周囲の模式的部分拡大破断図である。
図4図1のダッシュサイレンサーの拡大側面図である。
図5】上記第1実施形態におけるダッシュサイレンサーの製造方法を説明するための製造工程図である。
図6】上記第1実施形態におけるダッシュサイレンサーを製造するための発泡ポリウレタン生成装置を示す概略ブロック図である。
図7】上記第1実施形態における実施例1~3の透過損失特性を周波数との関係で表す各グラフである。
図8】上記第1実施形態における実施例1~3との比較対象である従来の比較例1~3の透過損失特性を周波数との関係で表す各グラフである。
図9】上記第1実施形態における他の実施例及び実施例1の各透過損失特性を周波数との関係で表す各グラフである。
図10】本発明に係るサイレンサーのダッシュサイレンサーとしての第2実施形態を示す側面図である。
図11図10のダッシュサイレンサー及び図4のダッシュサイレンサーの各透過損失特性を周波数との関係で表す各グラフである。
図12】本発明に係る自動車用サイレンサーのリアフロアサイレンサーとしての第3実施形態を適用した自動車の部分破断による模式的概略側面図である。
図13図12のリアフロアサイレンサーを付設してなる当該自動車をその後部からみた部分破断図である。
図14】(a)は、図12のリアフロアサイレンサーを示す展開側面図であり、(b)は、当該リアフロアサイレンサーを示す部分破断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の各実施形態を、図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態を示している。当該第1実施形態においては、本発明を自動車用サイレンサーのうちの自動車用ダッシュサイレンサー(以下、自動車用ダッシュサイレンサーDSという)として自動車に適用する例が示されている。
【0044】
当該自動車は、図1にて示すごとく、エンジンルーム10及び車室20を備えており、車室20は、当該自動車において、エンジンルーム10に後続して設けられている。なお、図1にて、符号30は、当該自動車の左右両側前輪(図1では、左側前輪のみを示す。
【0045】
エンジンEは、図1にて示すごとく、エンジンルーム10内に配設されている。また、左右両側前席S(図1では、左側前席Sのみを示す)は、車室20内にて、フロアシート20a(フロアカーペット20aともいう)を介しフロアパネル40上に配設されている。なお、フロアシート20aは、フロアパネル40に沿いその上面側から敷かれている。
【0046】
また、当該自動車は、ダッシュパネル50(ダッシュボード50ともいう)を備えている。このダッシュパネル50は、図1にて示す縦断面湾曲形状を有するように形成されており、当該ダッシュパネル50は、エンジンルーム10と車室20との境界に設けられて、これらエンジンルーム10及び車室20を相互に区画している。
【0047】
ここで、ダッシュパネル50は、その上端部にて、車室20のフロントウインドシールドWS(図1及び図3参照)の下端部に連結されており、このダッシュパネル50の下端部は、車室20のフロアパネル40(図1及び図3参照)の前端部に連結されている。なお、本第1実施形態において、ダッシュパネル50は、例えば、鉄板でもって形成されている。
【0048】
また、当該自動車は、ダッシュサイレンサーDSを備えている。このダッシュサイレンサーDSは、図1にて示すごとく、ダッシュパネル50に沿うように縦断面湾曲形状にて形成されており、当該ダッシュサイレンサーDSは、その上側部位にて、インストルメントパネルIP(図3参照)によって覆われるように、ダッシュパネル50に沿い車室20側から組み付けられている。
【0049】
なお、本第1実施形態では、ダッシュサイレンサーDSの外形形状(図2参照)は、ダッシュパネル50の外形形状とほぼ同一となっている。また、インストルメントパネルIPは、図3にて示すごとく、フロントウインドシールドWSの下端部から車室20内にて左右両側前席S側へ延出するとともにダッシュサイレンサーDSの上側部位に向けて略横U字状に湾曲するように形成されている。
【0050】
当該ダッシュサイレンサーDSは、図4にて示すごとく、発泡ポリウレタン層60及びフィルム層70を備えている。発泡ポリウレタン層60は、ダッシュパネル50に沿い車室20側から装着されており、当該発泡ポリウレタン層60は、その全体に亘り、発泡ポリウレタンでもって、所定の体積密度範囲以内の体積密度(例えば、40kg/m3)を有するように形成されている。
【0051】
本第1実施形態において、当該所定の体積密度範囲は、例えば、25kg/m3~80kg/m3に設定されている。当該所定の体積密度範囲において、25kg/m3を下限値としたのは、当該下限値未満の体積密度では、液状発泡ポリウレタン原料の流動性が良くないためである。また、80kg/m3を上限値としたのは、当該上限値よりも大きな体積密度では、液状発泡ポリウレタン原料(後述する)の発泡性が良くないためである。
【0052】
発泡ポリウレタン層60は、パッド層として機能するもので、当該発泡ポリウレタン層60は、上側層状ウレタン部60a及び下側層状ウレタン部60bでもって形成されている。上側層状ウレタン部60aは、その表面部位61a(図4にて図示右側面部位)にて、図4にて図示上端部から下端部にかけて裏面部位62aに対し順次接近するように傾斜状に延出している。換言すれば、上側層状ウレタン部60aは、その縦断面形状にて、その上端部から下端部にかけて順次薄くなるように形成されている。なお、当該上側層状ウレタン部60aの厚さ分布は一例にすぎない。
【0053】
一方、下側層状ウレタン層部60bは、上側層状ウレタン部60aの下端部から下方へ延出してなるもので、当該下側層状ウレタン部60bは、上側層状ウレタン部60aに対し鈍角をなすように当該上側層状ウレタン部60aの下端部から図4にて図示右側下方に向けて屈曲している。ここで、当該下側層状ウレタン部60bは、その表面部位61bと裏面部位62bとの間の間隔にて、上側層状ウレタン部60aの表面部位61a及び裏面部位62aの各下端部の間隔と一致している。
【0054】
換言すれば、下側層状ウレタン部60bは、その全体に亘り、上側層状ウレタン部60aの下端部の厚さと同様の厚さを有する。なお、両表面部位61a、61bは、発泡ポリウレタン層60の表面部位61を形成し、一方、両裏面部位62a、62bは、発泡ポリウレタン層60の裏面62を形成する。また、当該下側層状ウレタン部60bの厚さ分布形状は一例にすぎない。
【0055】
ここで、本第1実施形態において、発泡ポリウレタン層60はフェルト層と同様にパッド層としての役割を果たすにもかかわらず、当該発泡ポリウレタン層60を、フェルト層に代えて、採用することとした根拠について説明する。
【0056】
今日、自動車に採用されるダッシュサイレンサーの遮音性能を、騒音の周波数帯域のうち、可能な限り広い周波数帯域において改善したいという要請が強い。ここで、当該広い周波数数帯域とは、所定の広い周波数帯域、例えば、1/3オクターブバンドの中心周波数で、200Hz~1600Hzの周波数帯域、より一層好ましくは、400Hz~1600Hzの周波数帯域をいう。
【0057】
なお、エンジンから発生する騒音(以下、エンジンノイズともいう)の周波数帯域は、250Hz~6300Hzである。また、自動車の走行中にロードから発生する騒音(以下、ロードノイズともいう)の周波数帯域も、エンジンの場合と同様である。
【0058】
上述のような所定の広い周波数帯域においてダッシュサイレンサーの遮音性能を改善したいという要請に対する対策としては、パッド層、例えば、フェルト層に積層されるフィルム層の遮音性能を当該所定の広い周波数帯域において高めることで、ダッシュサイレンサーとしての遮音性能を改善する対策が考えられる。
【0059】
当該対策としては、例えば、フェルト層の質量を増大する方法が考えられるものの、これでは、ダッシュサイレンサーとしての質量が増大してしまい、軽量化の要請に反することとなる。
【0060】
また、当該ダッシュサイレンサーにおいて、フェルト層の質量の増大に代えて、フェルト層を構成する複数種類の繊維のうちの1種類の繊維を残りの種類の繊維よりも太くし、かつ、当該1種類の繊維を含む複数種類の繊維の配向方向をフェルト層の両面に直交する方向とする対策も考えられる。
【0061】
しかしながら、これによって、フェルト層に入射して当該フェルト層を介しフィルム層に固体伝搬により伝搬する騒音の位相が、フェルト層を介しフィルム層に空気伝搬により伝搬する騒音の位相に対し逆位相にずれることで、フィルム層の遮音性能、ひいてはダッシュサイレンサーの遮音性能を、上記所定の広い周波数帯域において改善し得るとしても、上述のように複数種類の繊維の配向方向をフェルト層の両面に直交する方向にするためには、特殊な設備が必要となり、製造能力やコスト面からすれば、得策ではない。
【0062】
そこで、ダッシュサイレンサーとしての遮音性能を、騒音の上記所定の広い周波数帯域において、上述した各対策に依存することなく、改善することが要請される。このような要請に応えるべく、本発明者等は、フェルト層について種々検討してみた。
【0063】
ところで、ダッシュサイレンサーの一構成部材として従来から採用の対象とされているフェルト層は、通常、ダッシュサイレンサーの厚さの異なる各部位(各厚さ部位)の形状に合わせるように、複数の異なる厚さ部位でもって形成されているものの、当該フェルト層は、その複数の異なる厚さ部位に亘り、でき得る限り、広い周波数帯域において良好な遮音性能を発揮し得ることが望ましい。
【0064】
しかしながら、フェルト層は、その厚さ形状に合わせて、原料であるフェルトの複数の繊維を圧縮成形することで、形成されるため、当該フェルト層のうちの異なる各厚さ部位の体積密度は、当然のことながら、相互に異なる。
【0065】
換言すれば、フェルト層の圧縮成形時の圧縮度合いが小さいために当該フェルト層の体積密度が小さければ、当該フェルト層内に含まれる空気成分が増大することから、当該フェルト層の通気性が良くなる。一方、当該フェルト層の圧縮成形時の圧縮度合いが大きいために当該フェルト層の体積密度が大きければ、当該フェルト層内に含まれる空気成分が減少することから、当該フェルト層の通気性は悪化する。これでは、当該フェルト層の遮音性能は、厚さ部位ごとに、相互に異なってしまう。
【0066】
このようなことから、フェルト層が、複数の繊維に対する圧縮成形でもって形成されている以上、当該フェルト層が、その全体に亘り、体積密度の変化に起因して、広い周波数帯域に亘り、遮音性能を良好に発揮することができない。従って、このようなフェルト層にフィルム層を積層してダッシュサイレンサーを形成しても、当該ダッシュサイレンサーは、そのフェルト層の異なる厚さ部位に対する各対応厚さ部位に亘り、上記所定の広い周波数帯域の周波数を有する騒音に対し、最良な遮音性能を発揮し得ないことを、本発明者等は、認識せざるを得なかった。
【0067】
これに対し、本発明者等は、フェルト層に対する代替層について種々検討調査を行った。その結果、複数の発泡ポリウレタン層が、互いに異なる厚さにて形成されていても、本発明者等は、これら発泡ポリウレタン層を、相互に、同一の体積密度を有するように形成し得ることに辿り着いた。
【0068】
換言すれば、単一の発泡ポリウレタン層が複数の異なる厚さ部位でもって形成されていても、当該単一の発泡ポリウレタン層を、その全体に亘り、同一の体積密度を有するように形成し得ることにたどり着いたのである。このことは、複数の異なる厚さ部位からなる発泡ポリウレタン層は、その全体に亘り、同一の体積密度のもとに遮音性能を良好に発揮し得るように形成され得ることを意味する。
【0069】
また、当該発泡ポリウレタン層とフィルム層との2層積層構造においては、騒音が発泡ポリウレタン層を介し固体伝搬によりフィルム層に伝わることで当該フィルム層に生ずる振動は、その位相において、騒音が発泡ポリウレタン層を介し空気伝搬によりフィルム層に伝わることで当該フィルム層に生ずる振動の位相に対し、逆位相となるようなずれを生ずることも分かった。
【0070】
ただし、このような逆位相となるずれを生ずるためには、当該発泡ポリウレタン層が所定の硬度範囲以内の硬度を有することが前提となる。本第1実施形態において、当該所定の硬度範囲とは、CS硬度にて、1~25の範囲をいう。当該所定の硬度範囲において、CS硬度「1」を下限値としたのは、当該下限値未満では上述した逆位相のずれが、上記所定の広い周波数帯域における下限周波数よりもさらに低い周波数帯域において発生してしまうという不具合が生ずるからである。また、CS硬度「25」を上限値としたのは、当該上限値よりもさらに大きいと、上述した逆位相のずれが、上記所定の広い周波数帯域における上限周波数よりもさらに高い周波数帯域において発生してしまうという不具合が生ずるからである。
【0071】
以上述べたことを考慮して、上述した所定の硬度範囲以内のCS硬度(例えば、CS硬度15)を有する発泡ポリウレタン層を、フェルト層の代替層として、採用することとした。これにより、上述した中高周波数帯域の周波数を有する騒音に対し、フィルム層の遮音性能、換言すれば、ダッシュサイレンサーとしての遮音性能を改善し得るということに到達した。
【0072】
以上が、発泡ポリウレタン層を、フェルト層の代替層として採用することとした根拠である。
【0073】
また、ダッシュサイレンサーDSにおいて、フィルム層70は、発泡ポリウレタン層60に沿い車室20の内部から積層されている。本第1実施形態では、当該フィルム層70は、例えば、6-ナイロンからなる非通気性フィルムでもって形成されている。当該フィルム層70は、所定の目付量範囲以内の目付量を有する。ここで、当該所定の目付量範囲は、例えば、30g/m2~200m2に設定されている。また、本第1実施形態では、フィルム層70の厚さは、例えば、20μmである。
【0074】
以上のように構成してなる本第1実施形態において、当該自動車がエンジンEの作動に伴い走行状態におかれると、エンジンEがエンジン音をエンジンノイズとして発生するとともに、ロードノイズが走行路面から左右両前輪30を介し発生する。これに伴い、エンジンノイズ及びロードノイズは、ダッシュパネル50を介しダッシュサイレンサーDSに入射する。
【0075】
ここで、ダッシュパネル50は上述した鉄板により形成されていることから、当該ダッシュパネル50に入射したエンジンノイズ及びロードノイズは、当該ダッシュパネル50によりその非通気性のもとに部分的に遮音されて、ダッシュサイレンサーDSに入射する。
【0076】
このようにしてエンジンノイズ及びロードノイズがダッシュサイレンサーDSに入射すると、当該エンジンノイズ及びロードノイズは、ダッシュパネル50を介し発泡ポリウレタン層60に入射する。これに伴い、発泡ポリウレタン層60に入射したエンジンノイズ及びロードノイズは、当該発泡ポリウレタン層60により部分的に減衰されて当該発泡ポリウレタン層60を通りフィルム層70に入射する。
【0077】
ここで、当該発泡ポリウレタン層60は、その厚さにおいて、図4にて示すごとく、同一ではなく異なっているものの、当該発泡ポリウレタン層60は、その全体に亘り、同一の体積密度、例えば、40kg/m3を有するように形成されている。従って、発泡ポリウレタン層60が、異なる厚さを有するように形成されていても、当該発泡ポリウレタン層60は、その全体に亘り、入射したエンジンノイズ及びロードノイズに対し、良好な防音性能を発揮し得る。
【0078】
しかして、上述のようにエンジンノイズ及びロードノイズが発泡ポリウレタン層60からフィルム層70に入射すると、フィルム層70が非通気性を有することから、当該エンジンノイズ及びロードノイズが、その音圧のレベル変動に応じてフィルム層70に振動を生じさせる。
【0079】
このような段階においては、上記所定の広い周波数帯域では、エンジンノイズ及びロードノイズが発泡ポリウレタン層60を空気伝搬により伝搬する際のフィルム層70の振動の位相が、エンジンノイズ及びロードノイズが発泡ポリウレタン層60を介し固体伝搬によりフィルム層70に伝搬する際の当該フィルム層70の振動の位相とは同一の位相にならず、逆位相に向けてずれた位相となる。これにより、ダッシュサイレンサーDSの遮音性能が、上記所定の広い周波数帯域以内の周波数を有するエンジンノイズ及びロードノイズに対し、大幅に改善され得る。
【0080】
次に、上述のように構成してなるダッシュサイレンサーDSの製造方法について説明する。当該製造方法の説明に先立ち、発泡ポリウレタン生成装置Kの構成について説明する。
【0081】
当該発泡ポリウレタン生成装置Kは、両原料タンクT1、T2、混合機I及び金型Mを備えている。原料タンクT1は、発泡ポリウレタンの両主たる原料の1つである液状のポリウレタンを収容してなるものである。原料タンクT2は、発泡ポリウレタンの両主たる原料のうちの残りの原料である液状のイソシアネートを収容してなるものである。
【0082】
混合機Iは、混合機本体I1及び混合発泡ノズルI2を有する。当該混合機Iにおいて、混合機本体I1は、ゴムホースH1を介し原料タンクT1から液状のポリオールを供給されるとともに、ゴムホースH2を介し原料タンクT2から液状のイソシアネートを供給されるようになっている。
【0083】
混合発泡ノズルI2は、混合機本体I1からの液状のポリオール及び液状のイソシアネートを混合しながら発泡させて液状発泡ポリウレタンとして生成し金型Mに吐出するようになっている。
【0084】
金型Mは、図6にて示すごとく、可動型M1及び固定型M2でもって構成されている。可動型M1は、そのパーティング面P1にて、固定型M2のパーティング面P2に対向しており、両パーティング面P1、P2の間には、キャビティCが、ダッシュサイレンサーDS(発泡ウレタン層60及びフィルム層70からなる2層積層構造)の外形形状に対応する空洞形状を有するように形成されている。
【0085】
ここで、キャビティCの上側内面に相当するパーティング面P1は、発泡ポリウレタン層60の表面61に対応しており、当該パーティング面P1は、可動型M1において、当該表面61と同様の面形状を有するように形成されている。また、キャビティCの下側内面に相当するパーティング面P2は、フィルム層70の表面(発泡ウレタン層60とは反対側の面)に対応しており、当該パーティング面P2は、フィルム層70の表面と同一の面形状を有するように形成されている。換言すれば、キャビティCは、ダッシュサイレンサーDSの外形形状に対応する空洞形状を有するように形成されている。
【0086】
また、可動型M1はスプールF及びランナJを有しており、スプールF及びランナJは、可動型M1の内部に形成されている(図6参照)。スプールFは、可動型M1の中央上端部内に形成されており、当該スプールFは、混合機Iの混合発泡ノズルI2から液状発泡ポリウレタンを流入されてランナJに流出するようになっている。
【0087】
ランナJは、分配管部J1及び複数のランナ管部J2を備えている。分配管部J1は、スプールFの下側にて、可動型M1の上壁に平行に位置するように当該可動型M1内に形成されており、当該分配管部J1は、その長手方向中央開口部にてスプールFの下端開口部内に連通している。これに伴い、当該分配管部J1は、スプールFからの液状発泡ポリウレタンを複数のランナ管部J2内に流出するようになっている。
【0088】
また、複数のランナ管部J2は、分配管部J1から互いに間隔をおいて下方へ延出するように、可動型M1内に形成されており、当該複数のランナ管部J2は、分配管部J1からの液状発泡ポリウレタン層をキャビティC内にその全体に亘り流動するように流出する役割を果たす。本第1実施形態において、液状発泡ポリウレタンの流れ抵抗は、所定の流れ抵抗範囲以内の流れ抵抗値に設定されている。
【0089】
本第1実施形態において、当該所定の流れ抵抗範囲は、例えば、20000Ns/m4~300000Ns/m4に設定されている。当該所定の流れ抵抗範囲において、20000Ns/m4を下限値としたのは、当該下限値未満では、発泡ポリウレタン層内におけるノイズの減衰の悪化を招くためである。また、200000Ns/m4を上限値としたのは、当該上限値よりも大きいと、発泡ポリウレタン層が非通気層化して遮音性能の悪化を招くためである。
【0090】
以下、ダッシュサイレンサーDSの製造方法について説明する。まず、載置工程S1(図5参照)において、予め金型Mを開いた状態に維持する。然る後、予め準備したフィルム層70を固定型M2のパーティング面P2上に載置する。
【0091】
然る後、閉型工程S2において、発泡ポリウレタン生成装置Kの金型Mを閉型状態におく。ついで、混合工程S3において、混合機Iが、混合機本体I1にて、タンクT1からの液状ポリオール及びタンクT2からの液状イソシアネートを供給されて混合発泡ノズルI2内に流入させる。これに伴い、混合発泡ノズルI2は、流入液状ポリオール及び流入液状イソシアネートを混合しながら発泡させて、液状発泡ポリウレタンとして生成しスプールFを介しランナJに流入する。
【0092】
これに伴い、ランナJにおいては、複数のランナ管部J2が、液状発泡ポリウレタンを、スプールFを通して流入されて、当該液状発泡ポリウレタンをキャビティC内に注入する。すると、当該液状発泡ポリウレタンがキャビティC内に充満することとなる。ここで、キャビティC内への液状発泡ポリウレタンの注入は、非加圧状態にてなされているので、液状発泡ポリウレタンがキャビティC内に充満したときに、キャビティC内への液状発泡ポリウレタンの注入は終了する。
【0093】
本第1実施形態において、液状発泡ポリウレタン内の気泡(セル)の内径(セル径)は、所定の平均セル径範囲以内の値に設定されている。ここで、当該所定のセル径範囲は、例えば、50μm~1000μmと設定されている。当該所定のセル径範囲において、50μmを下限値としたのは、当該下限値未満では、発泡ポリウレタン層が非通気層化して発泡ポリウレタン層としての防音性能の悪化を招くためである。また、1000μmを上限値としたのは、発泡ポリウレタン層におけるノイズの減衰が低下して当該発泡ポリウレタン層としてノイズの減衰の悪化を招くためである。
【0094】
上述のように混合工程S3における処理が終了すると、次の発泡硬化工程S4において、キャビティC内における液状発泡ポリウレタンが、その加熱下、発泡状態にて硬化するまでの所定の発泡硬化待ち時間の間、待つ。これに伴い、液状発泡ポリウレタンが、その加熱のもと、CS硬度15の硬度に硬化されて、フィルム層70上において発泡ポリウレタン層として成形される。なお、当該所定の発泡硬化待ち時間は、熱硬化性樹脂である液状発泡ポリウレタンが、その発泡状態にて硬化するに要する時間をいう。
【0095】
しかして、発泡硬化工程S4の終了後、次の開型工程S5において、可動型M1を固定型M2から上動させて開く。然る後、取り出し工程S6において、上述のようにフィルム層70上にて発泡硬化した発泡ポリウレタンからなる発泡ポリウレタン層を発泡ポリウレタン層60としてフィルム層70との積層構造のもとに固定型M2のパーティング面P2から取り出す。
【0096】
このことは、発泡ポリウレタン層60が、その全体に亘り、実質的に同一の体積密度を有することを前提に、当該発泡ポリウレタン層60とフィルム層70との2層積層構造からなるダッシュサイレンサーDSのモールド成型による製造が完了したことを意味する、なお、発泡ウレタン層60は、上述した発泡硬化過程における液状発泡ウレタンの接着力のもとに、フィルム層70と接着される。
【0097】
以上のように製造してなるダッシュサイレンサーDSにおいては、発泡ポリウレタン層60のCS硬度15は、上述したごとく、上記所定のCS硬度範囲以内の値である。従って、上述した固体振動によりフィルム層70に生ずる振動の位相が上述した空気振動によりフィルム層70に生ずる振動の位相に対し逆位相となるようなずれが良好に実現され得る。
【0098】
また、金型Mを閉じた状態において、混合機Iが、その混合発泡ノズルI2にて、液状ポリオール及び液状イソシアネートを混合するとともに発泡させながら可動型M1を介しキャビティC内にフィルム層70上にて注入するようにしたので、キャビティC内に充満する液状の発泡ポリウレタンは、可動型M1の下動による圧力等の外圧を受けることがない。
【0099】
これにより、ダッシュサイレンサーDSの外形形状に対応する空洞形状からなるキャビティCは、その厚さ(金型Mの閉型状態における両パーティング面P1、P2の間隔に対応)にて、フィルム層70上における発泡ポリウレタン層60の厚さの異なる部位に対応して、異なっているものの、当該キャビティC内の発泡硬化後の発泡ポリウレタンは、その全体に亘り、同一の体積密度(例えば、40kg/m3)を有することとなる。
【0100】
従って、ダッシュサイレンサーDSにおいて、上述した発泡硬化後の発泡ポリウレタンからなる発泡ポリウレタン層60は、その異なる厚さを有する部位とはかかわりなく、同一の体積密度に起因して、全体に亘り、良好な遮音性能を発揮し得るパッド層として形成され得る。
【0101】
また、上述のように、液状発泡ポリウレタンを閉型状態にある金型MのキャビティC内に注入するようにしたので、余分な設備に依存することなく、同一の体積密度を有する液状発泡ポリウレタンをキャビティC内にフィルム層70上にて充満させることができる。
【0102】
ちなみに、上述のように構成したダッシュサイレンサーDSの透過損失特性を調べてみた。当該ダッシュサイレンサーDSにおいて、発泡ポリウレタン層60は、上述のごとく、その全体に亘り、同一の厚さを有するのではなく、異なる厚さの分布でもって形成されているものの、当該発泡ポリウレタン層60の体積密度は、当該発泡ポリウレタン層60の全体に亘り、40kg/m3である。また、当該発泡ポリウレタン層60の硬度は、CS硬度15である。
【0103】
そこで、第1~第3の矩形平板状実施試料を実施例1~3として準備した(表―1参照)。当該表―1は、以下に示す通りである。
【表-1】
【0104】
当該第1~第3の矩形平板状実施試料は、それぞれ、発泡ポリウレタン層60の形成材料である発泡ポリウレタンから形成してなる矩形平板状発泡ポリウレタン部と、フィルム層70の形成材料である6-ナイロンから形成してなる矩形平板状フィルム部とを有している。しかして、当該第1~第3の矩形平板状実施試料は、それぞれ、上記矩形平板状フィルム部を上記矩形平板状発泡ポリウレタン部に積層して形成されている。なお、当該矩形平板状フィルム部の厚さは、フィルム層70の厚さと同様に、20μmと設定されている。
【0105】
ここで、第1矩形平板状実施試料の厚さは、25mmと設定されている。また、第2及び第3の矩形平板状実施試料の各厚さは、15mm及び10mmと設定されている。また、第1~第3の矩形平板状実施試料の各矩形平板状発泡ポリウレタン部は、互いに異なる厚さを有するものの、発泡ポリウレタン層60の体積密度40kg/m3と同一の体積密度を有する。なお、実施例1~3である第1~第3の矩形平板状実施試料の各厚さは、それぞれ、ダッシュサイレンサーDSの互い異なる各部位の厚さに相当する。
【0106】
さらに、当該実施例1~3に対する各比較対象として、第1~第3の矩形平板状実施試料に対応するように、第1~第3の矩形平板状比較試料を、比較例1~3として準備した(表―2参照)。ただし、当該第1~第3の矩形平板状比較試料は、複数種類の繊維からなる矩形平板状フェルト部に上述の矩形平板状フィルム部を積層して形成されている。上述した表―2は、以下の通りである。
【表-2】
【0107】
また、当該第1~第3の矩形平板状比較試料の矩形平板状フェルト部は、複数種類の繊維からなるフェルトを互いに異なる厚さとなるように圧縮成形することで形成されている。
【0108】
ここで、比較例1である第1矩形平板状比較試料は、実施例1である第1矩形平板状実施試料の厚さ25mmと同一の厚さを有しており、当該第1矩形平板状比較試料は、体積密度aを有する。また、比較例2である第2矩形平板状比較試料は、実施例2である第2矩形平板状実施試料の厚さ15mmと同様の厚さを有する。
【0109】
また、当該第2矩形平板状比較試料は、体積密度bを有しており、当該第2矩形平板状比較試料の体積密度bは、第1矩形平板状比較試料の体積密度aよりも大きい。また、比較例3である第3矩形平板状比較試料は、実施例3である第3矩形平板状実施試料の厚さ10mmと同一の厚さを有する。当該第3矩形平板状比較試料は、体積密度cを有しており、当該第3矩形平板状比較試料の体積密度cは、第2矩形平板状比較試料の体積密度bよりも大きい。
【0110】
しかして、上述のように準備してなる各実施例1~3及び各比較例1~3の各透過損失特性を、騒音の周波数との関係において、透過損失試験により測定してみた。なお、透過損失特性における透過損失は、各測定対象に対する入射騒音と当該各測定対象からの出射騒音との差であって、当該差が小さいほど、各測定対象からの出射騒音が多いために透過損失が低くて遮音性能が悪く、上記差が大きい程、各測定対象からの出射騒音が少ないために透過損失が高く遮音性能が良い。
【0111】
しかして、実施例1~3について、上述したように、透過損失特性を透過損失試験により測定してみたところ、図7にて示すようなグラフW1~W3が、それぞれ、折れ線グラフとして得られた。ここで、図7において、グラフW1~W3は、それぞれ、実施例1~3の透過損失特性の騒音の周波数との関係を示している。なお、図7に示す座標において横軸により示す周波数は、1/3オクターブバンドにて示す周波数をいう。この点については、後述する図8図9及び図11の各座標の横軸についても同様である。
【0112】
また、比較例1~3について、上述したように、透過損失特性を透過損失試験により測定してみたところ、図8にて示すようなグラフC1~C3が、それぞれ、折れ線グラフとして得られた。ここで、図8において、グラフC1~C3は、それぞれ、比較例1~3の透過損失特性の騒音の周波数との関係を示している。
【0113】
図7のグラフW1~W3は、騒音の周波数帯域250Hz~800Hzにおいて、-5dB~+10dBの範囲以内の透過損失特性を示している。また、グラフW1~W3は、互いに、透過損失を少しずつ異にするものの、ほぼ同一の折れ線形状を有するように変化している。また、当該各グラフW1~W3においては、透過損失が、周波数400Hzにおいて、少しずつ異なるものの、各ピーク値を有することが分かる。
【0114】
しかして、当該グラフW1~W3を対比してみると、騒音の周波数帯域250Hz~800Hzにおいては、実施例1、2及び3が、その各厚さにおいて、25mm、15mm及び10mmと相互に異なるものの、周波数400Hzにおいて、共に、透過損失を、その各ピーク値にて発揮し得ることが分かる。
【0115】
換言すれば、ダッシュサイレンサーDSは、各実施例1、2及び3の厚さ25mm、15mm及び10mmと同一の厚さを有する各部位にて、それぞれ、周波数400Hzの騒音に対して透過損失をその各ピーク値でもって発揮し得ることが分かる。本第1実施形態において、例えば、両グラフW1、W3の周波数400Hzにおける各ピーク値(各透過損失のピーク値)の差(7dBと3dBとの差)が、小さい程、ダッシュサイレンサーDSとしての周波数400Hzの騒音に対する透過損失、換言すれば、遮音性能が、より一層良好になる。
【0116】
また、当該グラフW1~W3は、騒音の周波数帯域250Hz~800Hzのうち400Hz以外の周波数においても、互いにほぼ同様の変化傾向を有する折れ線形状に従う透過損失特性を示している。
【0117】
従って、実施例1、2及び3は、その各厚さにおいて、25mm、15mm及び10mmと相互に異なるものの、周波数帯域250Hz~800Hzのうち400Hz以外の周波数においても、共に、透過損失を、同一の変化傾向の値にて発揮し得ることが分かる。
【0118】
一方、図8のグラフC1~C3は、それぞれ、比較例1~3の透過損失特性を示しており、当該グラフC1~C3は、騒音の周波数帯域250Hz~800Hzにおいて、-3dB~+5dBの範囲以内の透過損失を示している。ここで、グラフC1~C3を対比してみると、当該グラフC1~C3は、互いに全く異なるように変化する折れ線形状を有している。しかも、当該グラフC1~C3のうち、グラフC2の透過損失のピーク値は、周波数400Hzの位置にあるのに対し、グラフC3の透過損失のピーク値は、周波数500Hzの位置にあって、グラフC2の透過損失のピーク値とは、周波数の位置を異にする。さらに、グラフC1は、透過損失のピーク値を有することなく、変化しているのみである。
【0119】
そこで、グラフC1~C3をグラフW1~W3と対比してみると、グラフC1~C3は、騒音の周波数帯域250Hz~800Hzにおいて、グラフW1~W3とは異なり、互いに異なる方向(逆方向)に変化する折れ線形状を有している。従って、比較例1~3は、周波数帯域250Hz~800Hz以内において、実施例1~3とは異なる変化方向(逆方向)に変化するバラバラの透過損失を発揮するにすぎない。
【0120】
換言すれば、ダッシュサイレンサーDSは、各厚さ25mm、15mm及び10mmの部位においては、周波数帯域250Hz~800Hz以内の周波数を有する騒音に対して、共に、周波数の増大(或いは減少)に伴い同一方向に変化するような透過損失に基づく遮音性能を発揮し得る。
【0121】
これに対し、比較例1~3の各フェルト部の厚さと同様の各厚さの部位を少なくとも有するフェルト層とフィルム層70との積層構造からなるダッシュサイレンサーを、ダッシュサイレンサーDSと同様の形状を有する比較用ダッシュサイレンサーとして形成してみても、当該比較用ダッシュサイレンサーは、その上記各厚さの部位にて、ダッシュサイレンサーDSとは異なり、比較例1~3と同様に、バラバラの透過損失を発揮するにすぎない。
【0122】
以上によれば、ダッシュサイレンサーDSは、少なくとも、20mm、15mm及び10mmの各厚さ部位において、共に、比較用ダッシュサイレンサーの20mm、15mm及び10mmの各厚さ部位とは異なり、良好な透過損失に基づく遮音性能を発揮し得る。
【0123】
また、上記各実施例1~3の他に、25mm、15mm及び10mm以外の厚さを有する他の各実施例を準備して当該他の各実施例の透過喪失特性を測定したところ、当該他の各実施例においても、実施例1~3と同様な変化方向を示す透過損失特性を発揮し得ることが分かった。
【0124】
一方、上記各比較例1~3の他に、25mm、15mm及び10mm以外の厚さを有する他の各比較例を準備して当該他の各比較例の透過喪失を測定したところ、当該他の各比較例においても、比較例1~3と同様に異なる変化方向を示す透過損失を発揮するにすぎないことも分かった。
【0125】
以上によれば、本第1実施形態にいうダッシュサイレンサーDSは、その厚さにおいて異なる部位を複数有していても、少なくとも、250Hz~800Hz以内の周波数を有する騒音に対しては、良好な防音性能を発揮し得ることが分かった。
【0126】
また、ダッシュサイレンサーDSとは別のダッシュサイレンサーをその他の実施例として準備してその透過損失特性を測定としてみた。ただし、当該その他の実施例であるダッシュサイレンサーは、ダッシュサイレンサーDSの厚さ分布とは異なる厚さ分布でもって形成されている。
【0127】
具体的には、当該その他の実施例は、その全体に亘り、25mmの厚さ部位、15mmの厚さ部位及び10mmの厚さ部位でもって形成されており、これら25mmの厚さ部位、15mmの厚さ部位及び10mmの厚さ部位の上記その他の実施例における厚さ分布割合は、それぞれ、30%、30%及び40%となっている(表―3参照)。当該表-3は、以下の通りである。
【表-3】
【0128】
ここで、当該その他の実施例は、ダッシュサイレンサーDSの発泡ポリウレタン層60に対する対応発泡ポリウレタン層とダッシュサイレンサーDSのフィルム層70に対する対応フィルム層との2層積層構造でもって形成されている。また、上記対応フィルム層は、上述のごとく、厚さ20μmの6-ナイロンでもって層状に形成されている。
【0129】
従って、当該その他の実施例の対応発泡ポリウレタン層は、当該実施例の厚さ25mmから上記対応フィルム層の厚さ20μmを減じた厚さ部位、当該実施例の厚さ15mmから上記対応フィルム層の厚さ20μmを減じた厚さ部位及び当該実施例の厚さ10mmから上記対応フィルム層の厚さ20μmを減じた厚さ部位でもって、上述の厚さ分布割合に応じて形成されている。
【0130】
なお、当該その他の実施例の対応発泡ポリウレタン層の体積密度及びCS硬度は、ダッシュサイレンサーDSの発泡ポリウレタン層60の体積密度及びCS硬度と同様である。
【0131】
また、当該その他の実施例との比較のために、当該その他の実施例に対応するその他の比較例を準備した。当該その他の比較例は、複数種類の繊維からなるフェルト層と上記その他の実施例のフィルム層70との積層構造でもって、上記その他の実施例と同一の質量及び同一の形状を有するように形成されている。
【0132】
従って、当該その他の比較例は、上記その他の実施例と同様に、25mmの厚さ部位、15mmの厚さ部位及び10mmの厚さ部位でもって形成されており、これら25mmの厚さ部位、15mmの厚さ部位及び10mmの厚さ部位の上記その他の比較例における厚さ分布割合は、それぞれ、30%、30%及び40%となっている。
【0133】
なお、当該その他の比較例のフェルト層は、上記その他の実施例の発泡ポリウレタン層と同様に、25mmから20μmを減じた厚さ部位、15mmから20μmを減じた厚さ部位及び10mmから20μmを減じた厚さ部位でもって、上述の厚さ分布割合に応じて形成されている。
【0134】
しかして、上述したその他の実施例及びその他の比較例の各透過損失特性を透過損失試験により測定してみたところ、その測定結果は、図9にて示す各グラフW4、C4として得られた。ここで、グラフW4は、上述のその他の実施例の透過損失特性を騒音の周波数との関係にて示す。また、グラフC4は、上述のその他の比較例の透過損失特性を騒音の周波数との関係にて示す。
【0135】
両グラフW4、C4を対比してみると、騒音の周波数帯域400Hz以上で1600Hz未満の範囲において、グラフW4は、グラフC4に比べて、良好は透過損失を示すことが分かる。
【0136】
換言すれば、上記その他の実施例は、上述のような厚さ分布を有するように形成されていても、当該その他の実施例は、その全体に亘り、周波数帯域400Hz~1600Hzの範囲以内の周波数の騒音に対し、上記その他の比較例に比べて良好な透過損失特性を有することがわかる。従って、ダッシュサイレンサーDSは、上記その他の実施例とは厚さ分布を異にするものの、当該ダッシュサイレンサーDSは、その全体に亘り、上記その他の実施例と実質的に同様に、良好な透過損失特性を有することが分かる。
【0137】
また、本第1実施形態においては、上述したごとく、複数の異なる厚さ部位からなる発泡ポリウレタン層が、その全体に亘り、同一の体積密度を有すれば、遮音性能を良好に発揮し得るのであるが、この点につき、本発明者等は、
厚さの異なり態様を相互に異にする発泡ポリウレタン層を、さらに、多数、準備して、遮音性能を良好に発揮し得る体積密度について検討してみた。
【0138】
当該検討結果によれば、複数の異なる厚さ部位からなる発泡ウレタン層が、その全体に亘り、同一の体積密度を有する場合に限ることなく、所定の複数の異なる厚さ部位に亘り均一な遮音性能を発揮し得る範囲以内の体積密度を有すれば、当該発泡ウレタン層は、その全体に亘り、遮音性能を良好に発揮し得ることが、本発明者等により確認された。
【0139】
従って、ダッシュサイレンサーDSにおいて、発泡ウレタン層60の体積密度は、その全体に亘り、同一の体積密度でなくても、上述した所定の複数の異なる厚さ部位に亘り均一な遮音性能を発揮し得る範囲以内の体積密度であれば、発泡ウレタン層60は、その全体に亘り、良好な遮音性能を発揮し得る。
(第2実施形態)
図10は、本発明に係るダッシュサイレンサーの第2実施形態を示している。当該第2実施形態にいうダッシュサイレンサー(以下、符号DSaにて示す)は、上記第1実施形態にて述べた発泡ポリウレタン層60及びフィルム層70からなる2層積層構造のダッシュサイレンサーDSに対し、フェルト層70aを付加した構成を有する。
【0140】
当該フェルト層70aは、フィルム層70を介し発泡ポリウレタン層60に積層されている。従って、当該フェルト層70aは、発泡ポリウレタン層60及びフィルム層70とともに3層積層構造のダッシュサイレンサーDSaを形成する。なお、フェルト層70aは複数種類の繊維でもって層状に形成されている。その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0141】
このように構成した本第2実施形態では、フェルト層70aが、上述のごとく、フィルム層70を介し発泡ポリウレタン層60に積層されている。これに伴い、上記第1実施形態と同様に、エンジンEがエンジンノイズを発生するとともにロードノイズが走行路面から左右両前輪30を介し発生すると、当該エンジンノイズ及びロードノイズは、上記第1実施形態と同様に、ダッシュサイレンサーDSaの発泡ポリウレタン層60にダッシュパネル50を介し入射する。
【0142】
このように発泡ポリウレタン層60に入射したエンジンノイズ及びロードノイズは、上記第1実施形態と同様に発泡ポリウレタン層60により良好に減衰された後フィルム層70に入射する。これに伴い、エンジンノイズ及びロードノイズは、上記第1実施形態にて述べたように、フィルム層70の遮音作用に基づき良好に遮音された後、フェルト層70aに入射する。
【0143】
換言すれば、上記第1実施形態にて述べたように、発泡ポリウレタン層60が、騒音の低中周波数帯域において、フィルム層70の遮音性能を大幅に改善することから、エンジンノイズ及びロードノイズは、当該フィルム層70により、その遮音性能のもとに、遮音された上で、フェルト層70aに入射して吸音される。
【0144】
その結果、本第2実施形態にいうダッシュサイレンサーDSaの防音効果が、発泡ポリウレタン層60及びフィルム層70からな2層積層構成による吸遮音による防音を行う効果に比べて、フェルト層70aによる吸音分だけさらに改善され得る。このことは、発泡ポリウレタン層60及びフィルム層70による吸遮音効果及びフェルト層70aによる吸音効果の相乗効果でもって、ダッシュサイレンサーDSaとしての防音効果がより一層改善され得ることを意味する。その他の作用効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0145】
ちなみに、ダッシュサイレンサーDSaの透過損失特性を測定するにあたり、上記第1実施形態にて述べた実施例1において、そのフィルム部にフェルト部を積層してなる3層積層実施例を準備した。ただし、当該3層積層実施例においては、発泡ポリウレタン部の厚さは、実施例1とは異なり、22mmとした。また、当該3層積層実施例に対する比較対象として、上記第1実施形態にて述べた実施例1を採用した。なお、3層積層実施例のフェルト部の目付量及び厚さは、それぞれ、600g/m2及び厚さ3mmである。
【0146】
しかして、上記3層積層実施例の透過損失特性を測定してみた。当該測定結果は、図11にて示すグラフW5として得られた。また、実施例1の透過損失特性は、グラフW1(図7のグラフW1と同一)で示す(図11参照)。
【0147】
両グラフW5、W1を対比してみると、上記3層積層実施例の透過損失特性が、騒音の周波数帯域約500Hz~2000Hzにおいて、実施例1の透過損失特性に比べて、より一層良好な透過損失を発揮し得ることが分かる。
【0148】
従って、ダッシュサイレンサーDSaは、ダッシュサイレンサーDSに比べて、より一層良好な防音性能を発揮し得る。
(第3実施形態)
図12は、本発明の第3実施形態の要部を示している。当該第3実施形態では、本発明がフロアサイレンサー(以下、リアフロアサイレンサーFSという)として、上記第1実施形態にて述べた自動車(図1参照)の後部に適用される例が示されている。当該自動車において、後席Saは当該自動車の車室20内の左右両側前席Sの後方にて、フロアパネル40(図1参照)上に配設されている。また、図12にて符号90は、左右両側後輪を示す。
【0149】
リアフロアパネル80は、図12或いは図13にて示すごとく、車室20内の後部に位置する後席Saの後側から当該自動車の後壁の近傍にかけて延在するように配設されており、当該リアフロアパネル80は、左側パネル部80a、右側パネル部80b及び中側パネル部80cを有している。
【0150】
左側パネル部80aは、左側横壁部81及び左側縦壁部82を有しており、左側横壁部81は、左側後輪90の上側にて、車室20の左側壁21の下端中間部部位から車室20内へ横方向に延出されている。左側縦壁部82は、左側横壁部81の右縁部から下方に向けて延出されている。
【0151】
右側パネル部80bは、右側横壁部83及び左側縦壁部84を有しており、右側横壁部83は、右側後輪90の上側にて、車室20の右側壁21の下端中間部部位から車室20内へ横方向に延出されている。右側縦壁部82は、右側横壁部83の左縁部から下方に向けて延出されている。
【0152】
中側パネル部80cは、その左縁部にて、左側パネル部80aの縦壁部82の下端部に連結されており、当該中側パネル部80cの右縁部は、右側パネル部80bの縦壁部84の下端部に連結されている。
【0153】
左右両側後輪90の直上には、左右両側リアフェンダーライナー22が、車室20の左右両側壁21の各下端中間部位に設けられている。左側リアフェンダーライナー22は、車室20の左側壁21の下端中間部位から左側外方へ緩やかに凸な湾曲形状にて下方に向け延出している。一方、右側リアフェンダーライナー22は、車室20の右側壁21の下端中間部位から右側外方へ緩やかに凸な湾曲形状にて下方に向け延出している。しかして、当該左右両側リアフェンダーライナー22は、その直下に位置する左右両側後輪90からの泥、水や小石等の跳ね返りを防止する役割を果たす。
【0154】
リアフロアサイレンサーFSは、図13及び図14から分かるように、後席Saの後側及びデッキボードDの直下にてリアフロアパネル80上に付設されている。当該リアフロアサイレンサーFSは、ダッシュサイレンサーDSの発泡ポリウレタン層60及びフィルム層70に対応する発泡ポリウレタン層100及びフィルム層110を備えている(図14或いは図15参照)。
【0155】
本第3実施形態において、リアフロアサイレンサーFSの発泡ポリウレタン層100は、上記第1実施形態にて述べたダッシュサイレンサーDSの発泡ポリウレタン層60の体積密度及びCS硬度と各同一の体積密度及びCS硬度を有する。
【0156】
フィルム層110は、上記第1実施形態にて述べたダッシュサイレンサーDSのフィルム層70の形成材料と同一の形成材料でもって形成されており、当該フィルム層110の厚さは、フィルム層70の厚さと同一の20μmに設定されている。
【0157】
また、リアフロアサイレンサーFSは、図14にて示すごとく、左側サイレンサー部FSa、右側サイレンサー部Sb及び中側サイレンサー部Scを備えている。ここで、左側サイレンサー部FSaは、層状発泡ポリウレタン部100a及び層状フィルム部110aからなる積層構造にて形成されている。一方、右側サイレンサー部FSbは、層状発泡ポリウレタン部100b及び層状フィルム部110bからなる積層構造にて形成されている。また、中側サイレンサー部FScは、層状発泡ポリウレタン部100c及び層状フィルム部110cからなる積層構造にて形成されている。
【0158】
しかして、当該リアフロアサイレンサーFSは、フィルム層110を上側に位置させるように、発泡ポリウレタン層100にて、リアフロアパネル80上に沿うように付設されている。
【0159】
具体的には、当該リアフロアサイレンサーFSにおいて、左側サイレンサー部FSaは、リアフロアパネル80の左側パネル部80aの左側横壁部81及び左側縦壁部82に沿うように折り曲げられて、当該左側横壁部81及び左側縦壁部82上に付設されている。このように付設された左側サイレンサー部FSaは、左側パネル部80aの前端部から後端部にかけて当該左側パネル部80aに沿い延在している。
【0160】
右側サイレンサー部FSbは、リアフロアパネル80の右側パネル部80bの右側横壁部83及び右側縦壁部84に沿うように折り曲げられて、当該右側横壁部83及び右側縦壁部84上に付設されている。このように付設された右側サイレンサー部FSbは、右側パネル部80bの前端部から後端部にかけて当該右側パネル部80bに沿い延在している。また、中側サイレンサー部FScは、リアフロアパネル80の中側パネル部80c上に付設されている。このように付設された中側サイレンサー部FScは、中側パネル部80cの前端部から後端部にかけて当該中側パネル部80cに沿い延在している。
【0161】
本第3実施形態においては、中側サイレンサー部Scは、左右両側サイレンサー部Sa、Sbに比べてより大きな負荷を受ける位置にあることから、当該中側サイレンサー部Scは、例えば、左側サイレンサー部FSa及び右側サイレンサー部Sbの各々に比べて、強度性を高めるため、より一層厚くなるように形成されている。換言すれば、フィルム層110の厚さは20μmと一定であることから、中側サイレンサー部Scの層状発泡ポリウレタン部100cは、左右両側サイレンサー部Sa、Sbの各層状発泡ポリウレタン部100a、100bよりも厚くなるように形成されている。その他の構成は上記第1実施形態と同様である。
【0162】
以上のように構成してなる本第3実施形態においては、リアフロアサイレンサーFSは、エンジンEとは当該自動車の反対側の位置にあることから、エンジンノイズを殆ど受けることはない。
【0163】
しかして、上記第1実施形態と同様に当該自動車が走行状態におかれると、ロードノイズが、走行路面から左右両前輪30を介し発生すると同様に、走行路面から左右後輪90を介し発生する。これに伴い、当該左右後輪90からのロードノイズは、リアフロアサイレンサーFSにその発泡ポリウレタン層100側から入射する。
【0164】
このように入射したロードノイズは、発泡ポリウレタン層100により部分的に減衰されて当該発泡ポリウレタン層100を通りフィルム層110に入射する。
【0165】
ここで、当該発泡ポリウレタン層100は、その厚さにおいて、図14(a)にて示すごとく、一様ではなく異なっているものの、当該発泡ポリウレタン層100は、その全体に亘り、発泡ポリウレタン層60の体積密度と同様の体積密度を有する。従って、当該発泡ポリウレタン層100とフィルム層110は、その全体に亘り、良好な遮音性能でもって、入射したロードノイズを良好に防音し得る。
【0166】
上述のようにロードノイズが発泡ポリウレタン層100からフィルム層110に入射すると、フィルム層110が、上記第1実施形態にて述べたフィルム層170と同様に非通気性を有することから、当該ロードノイズが、その音圧のレベル変動に応じてフィルム層110に振動を生じさせる。
【0167】
このような段階では、ロードノイズが発泡ポリウレタン層100を空気伝搬により通る際のフィルム層110の振動の位相が、低中周波数帯域では、ロードノイズが発泡ポリウレタン層100を介し固体伝搬によりフィルム層110に伝わる際の当該フィルム層110の振動の位相とは同一の位相にならず、逆位相にずれた位相となる。これにより、リアフロアサイレンサーFSの遮音性能が、ロードノイズに対して、大幅に改善され得る。その他の作用効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0168】
次に、上述のように構成してなるリアフロアサイレンサーFSの製造方法について説明する。本第3実施形態では、リアフロアサイレンサーFSの製造は、上記第1実施形態にて述べた発泡ポリウレタン生成装置Kを利用して行う。
【0169】
上記第1実施形態と同様に、図5の閉型工程S1において、発泡ポリウレタン生成装置Kの金型Mを閉型状態に維持する。本第3実施形態においては、金型Mの両パーティング面P1、P2の間にて形成されるキャビティが、発泡ポリウレタン層100の外形形状に対応する空洞形状を有するように形成されている。なお、本第3実施形態にいうキャビティは、上記第1実施形態にて述べたキャビティCと同様に、符号Cでもって示されるものとする。
【0170】
ここで、本第3実施形態にいうキャビティCの上側内面に相当するパーティング面P1は、発泡ポリウレタン層100の表面101に対応しており、当該パーティング面P1は、可動型M1において、当該表面101と同様の面形状を有するように形成されている。また、当該キャビティCの下側内面に相当するパーティング面P2は、発泡ポリウレタン層100の裏面102に対応しており、当該パーティング面P2は、発泡ポリウレタン層100の裏面102と同一の面形状を有するように形成されている。換言すれば、本第3実施形態にいうキャビティCは、発泡ポリウレタン層100の外形形状に対応する空洞形状を有するように形成されている。発泡ポリウレタン生成装置Kのその他の構成は上記第1実施形態と同様である。
【0171】
上述のように金型Mを閉型状態とした後、次の混合工程S2において、混合機Iが、上記第1実施形態と同様に、タンクT1からの液状ポリオール及びタンクT2からの液状イソシアネートを混合するとともに発泡させながら、液状発泡ポリウレタンと発泡ポリウレタンは、キャビティC内に充満することとなる。ここで、キャビティC内への液状発泡ポリウレタンの注入は、上記第1実施形態と同様に、非加圧状態にてなされているので、液状発泡ポリウレタンがキャビティC内に充満したときに、キャビティC内への液状混合体の注入は終了する。
【0172】
然る後、上記第1実施形態と同様に、硬化待ち工程S3における処理、開型工程S4における処理及び取り出し工程S5における処理がなされる。このように取り出された発泡ポリウレタン層100は、上記第1実施形態と同様に、発泡ポリウレタン層としてのCS硬度15となっている。
【0173】
ついで、積層工程S6において、予め準備してなるフィルム層110が、発泡ポリウレタン層100に対し、その表面101側から積層される。当該積層は、フィルム層110の裏面を発泡ポリウレタン層100の表面101に接着剤により接着することによって行われる。
【0174】
これにより、上述した発泡ポリウレタン層60の体積密度と同様の体積密度を有する発泡ポリウレタン層100とフィルム層110との2層積層構造からなるリアフロアサイレンサーFSの製造が完了する。ここで、上述した硬化後の発泡ポリウレタンからなる発泡ポリウレタン層100は、その異なる厚さを有する部位とはかかわりなく、全体に亘り、良好な防音性能を発揮し得るパッド層として形成され得る。その他の作用効果は上記第1実施形態と同様である。
【0175】
なお、本発明の実施にあたり、上記各実施形態や変形例に限ることなく、次のような種々の変形例が挙げられる。
(1)本発明の実施にあたり、上記第1或いは第3の実施形態にて述べたダッシュサイレンサーDS或いはリアフロアサイレンサーFSに限ることなく、自動車の車体の一部、例えば、各種のパネルに適用される防音体に本発明を適用して実施してもよい。この場合、当該防音体は、ダッシュサイレンサーDS或いはリアフロアサイレンサーFSの構成と同様の構成を有するように形成してもよい。
(2)本発明の実施にあたり、上記第1実施形態にて述べたダッシュサイレンサーDSは、上記第1実施形態にて述べた縦断面形状に代えて、その全体(例えば、その左右方向及び上下方向の全体)に亘り様々な厚さを分布状に有する断面形状を有するように、適宜変更してもよい。このようなことは、上記第3実施形態にて述べたリアフロアサイレンサーFSについても同様に成立する。
(3)本発明の実施にあたり、フィルム層70の形成材料は、6-ナイロンに限らず、例えば、ポリプロピレン(PP)、6‘6ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、或いはポリエチレン(PE)であってもよい。
(4)本発明の実施にあたり、上記第3実施形態にて述べたリアフロアサイレンサーFSに対し、上記第2実施形態にて述べた
(5)本発明の実施にあたり、上記第3実施形態にて述べたリアフロアサイレンサーFSは、当該自動車の車室20内にてフロアシート20a上に付設されるフロントフロアサイレンサーとして採用してもよい。なお、当該フロントフロアサイレンサーは、リアフロアサイレンサーFSの厚さ分布とは異なる厚さ分布を有するように形成してもよい。
(6)また、本発明の実施にあたり、上記第3実施形態にて述べたリアフロアサイレンサーFSにおいて、そのフィルム層110を介し発泡ポリウレタン層100に対向するようにフェルト層を積層してもよい。当該フェルト層は、上記第2実施形態にて述べたフェルト層70aと実質的に同様の吸音性能を発揮するようにする。
(7)また、本発明の実施にあたり、本発明を、当該自動車のカウルサイドパネルとその外側に位置するフロントサイドパネルとの間に設けてなるフロントフェンダーバッフルに適用して実施してもよく、また、リアホイールインナーサイレンサー(ホイールハウスインナーサイレンサー)に適用して実施してもよい。
【符号の説明】
【0176】
C…キャビティ、DS、DSa…ダッシュサイレンサー、
FS…フロアサイレンサー、K…発泡ウレタン生成装置、I…混合機、
I1…混合機本体、M…金型、M1…可動型、M2…固定型、S1…載置工程、
S2…閉型工程、S3…混合工程、S4…発泡硬化工程、S5…開型工程、
S6…取り出し工程、T1、T2…タンク、40…ダッシュパネル、
50…フロアパネル、60、100…発泡ポリウレタン層、
70、110…フィルム層、70a…フェルト層、80…リアフロアパネル。
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