(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162596
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】空中表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 30/56 20200101AFI20241114BHJP
【FI】
G02B30/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078277
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100121049
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100166408
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦陽
(72)【発明者】
【氏名】代工 康宏
【テーマコード(参考)】
2H199
【Fターム(参考)】
2H199BA32
2H199BB17
2H199BB54
2H199BB65
(57)【要約】
【課題】光制御素子における光の利用効率に優れた空中表示装置を提供する。
【解決手段】画像を表示するとともに前記画像を含む光を出射する表示照明ユニットと、前記表示照明ユニットが出射した前記画像を含む光を、前記表示照明ユニットと反対側の空中に投影して空中像を形成する光学素子と、前記表示照明ユニットと前記光学素子の間に配置されるとともに、前記表示照明ユニットが出射した前記画像を含む光を前記光学素子に導く光制御素子と、を有し、前記光制御素子は、前記表示照明ユニットが出射した前記画像を含む光を透過する透過領域と、前記表示照明ユニットが出射した前記画像を含む光を吸収する吸収領域と、前記表示照明ユニットが出射した前記画像を含む光を反射する反射領域と、を有する、ことを特徴とする空中表示装置。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示するとともに前記画像を含む光を出射する表示照明ユニットと、
前記表示照明ユニットが出射した前記画像を含む光を、前記表示照明ユニットと反対側の空中に投影して空中像を形成する光学素子と、
前記表示照明ユニットと前記光学素子の間に配置されるとともに、前記表示照明ユニットが出射した前記画像を含む光を前記光学素子に導く光制御素子と、
を有し、
前記光制御素子は、
前記表示照明ユニットが出射した前記画像を含む光を透過する透過領域と、
前記表示照明ユニットが出射した前記画像を含む光を吸収する吸収領域と、
前記表示照明ユニットが出射した前記画像を含む光を反射する反射領域と、
を有する、
ことを特徴とする空中表示装置。
【請求項2】
前記透過領域は、前記表示照明ユニットが出射した前記画像を含む光を前記光学素子に向けて透過し、
前記反射領域は、前記表示照明ユニットが出射した前記画像を含む光を前記光学素子に向けて反射する、
ことを特徴とする請求項1に記載の空中表示装置。
【請求項3】
前記透過領域と前記吸収領域と前記反射領域は、前記光制御素子の法線と直交する方向に並んで配置される、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の空中表示装置。
【請求項4】
前記透過領域と前記吸収領域と前記反射領域は、前記光制御素子の法線に対して傾いて配置される、
ことを特徴とする請求項3に記載の空中表示装置。
【請求項5】
前記光制御素子の法線と直交する方向で見たとき、前記吸収領域が中央に位置し、前記吸収領域を挟んだ両側に前記透過領域と前記反射領域が位置したパターンが定義されて、当該パターンが前記光制御素子の法線と直交する方向に繰り返される、
ことを特徴とする請求項4に記載の空中表示装置。
【請求項6】
前記パターンにおいて、前記透過領域が相対的に大きく、前記吸収領域と前記反射領域が相対的に小さい、
ことを特徴とする請求項5に記載の空中表示装置。
【請求項7】
前記パターンにおいて、前記透過領域が占める割合がX[%]であるとき、前記吸収領域と前記反射領域が占める割合がそれぞれ(100-X)/2[%]である、
ことを特徴とする請求項5に記載の空中表示装置。
【請求項8】
隣接する前記パターンにおいて、前記吸収領域の一部が、前記光制御素子の法線方向に重なる、
ことを特徴とする請求項5に記載の空中表示装置。
【請求項9】
隣接する前記パターンにおいて、前記吸収領域が、前記光制御素子の法線方向に重ならない、
ことを特徴とする請求項5に記載の空中表示装置。
【請求項10】
前記光制御素子の法線と直交する方向で見たとき、前記透過領域どうしの境界部、前記反射領域どうしの境界部、及び、前記透過領域と前記反射領域の境界部に前記吸収領域が介在する、
ことを特徴とする請求項4に記載の空中表示装置。
【請求項11】
前記透過領域と前記吸収領域と前記反射領域は、前記光制御素子の法線方向の全域に亘って配置される、
ことを特徴とする請求項4に記載の空中表示装置。
【請求項12】
前記透過領域と前記吸収領域と前記反射領域は、第1の部分が、前記光制御素子の法線方向の全域に亘って配置され、第2の部分が、前記光制御素子の法線方向の一部の領域にのみ配置される、
ことを特徴とする請求項4に記載の空中表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空中表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、画像を表示する表示素子と、表示素子からの光を受けるように配置され、表示素子からの光を表示素子と反対側に反射する光学素子とを具備する空中表示装置が記載されている。光学素子は、平面状の基材と、基材の下に設けられ、それぞれが第1方向に延び、第1方向に直交する第2方向に並んだ複数の光学要素とを有する。複数の光学要素の各々は、基材の法線方向に対してそれぞれが傾き、互いに接する入射端面及び反射端面を有する。光学素子は、表示素子からの光を入射端面で受けることが可能なように配置され、光学素子の表示素子と反対側の空中に空中像を結像するように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の空中表示装置において、表示素子と光学素子の間には、表示素子からの光の一部を透過する光制御素子が配置されているが、本発明者の鋭意研究によれば、光制御素子における光の利用効率という観点で改良の余地がある。
【0005】
本発明は、光制御素子における光の利用効率に優れた空中表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態の空中表示装置は、画像を表示するとともに前記画像を含む光を出射する表示照明ユニットと、前記表示照明ユニットが出射した前記画像を含む光を、前記表示照明ユニットと反対側の空中に投影して空中像を形成する光学素子と、前記表示照明ユニットと前記光学素子の間に配置されるとともに、前記表示照明ユニットが出射した前記画像を含む光を前記光学素子に導く光制御素子と、を有し、前記光制御素子は、前記表示照明ユニットが出射した前記画像を含む光を透過する透過領域と、前記表示照明ユニットが出射した前記画像を含む光を吸収する吸収領域と、前記表示照明ユニットが出射した前記画像を含む光を反射する反射領域と、を有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光制御素子における光の利用効率に優れた空中表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態の空中表示装置の一例を示す斜視図である。
【
図2】本実施形態の空中表示装置の一例を示す側面図である。
【
図3】光学素子の一例を示す斜視図及び部分拡大図である。
【
図4】本実施形態の空中表示装置の一例を示すブロック図である。
【
図5】光学素子における光の反射の様子を説明する斜視図である。
【
図6】光学素子における光の反射の様子を説明するXZ面の側面図である。
【
図7】光学素子における光の反射の様子を説明するYZ面の側面図である。
【
図8】光学素子における入射端面及び反射端面の角度条件を説明する図である。
【
図9】本実施形態の空中表示装置の光線追跡図である。
【
図10】X方向における空中表示装置の配光図である。
【
図11】Y方向における空中表示装置の配光図である。
【
図12】本実施形態の空中表示装置の全体構成を説明する斜視図である。
【
図13】本実施形態の空中表示装置の視野角を説明する斜視図である。
【
図14】光制御素子の第1実施形態を示す断面図である。
【
図15】光制御素子の第2実施形態を示す断面図である。
【
図16】光制御素子の第3実施形態を示す断面図である。
【
図17】光制御素子の第4実施形態を示す断面図である。
【
図18】光制御素子の第5実施形態を示す断面図である。
【
図19】光制御素子の第6実施形態を示す断面図である。
【
図20】本実施形態の空中表示装置による光の利用効率の優位性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。ただし、図面は模式的または概念的なものであり、各図面の寸法および比率等は必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、図面の相互間で同じ部分を表す場合においても、互いの寸法の関係や比率が異なって表される場合もある。特に、以下に示す幾つかの実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための装置および方法を例示したものであって、構成部品の形状、構造、配置等によって、本発明の技術思想が特定されるものではない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
図1は、本実施形態の空中表示装置1の一例を示す斜視図である。
図2は、本実施形態の空中表示装置1の一例を示す側面図である。
図2の矢印は、光路を表している。
図1において、X方向は、空中表示装置1のある一辺に沿った方向であり、Y方向は、水平面内においてX方向に直交する方向であり、Z方向は、XY面に直交する方向(法線方向ともいう)である。X方向、Y方向、Z方向は、互いに直交するXYZ空間(三次元空間)を構成する。
【0011】
空中表示装置1は、画像(動画を含む)を表示する装置である。空中表示装置1は、自身の光出射面の上方の空中に、空中像を表示する。空中表示装置1の光出射面とは、空中表示装置1を構成する複数の部材のうち最上層に配置された部材の上面を意味する。空中像とは、空中に結像する実像である。空中表示装置1は、表示装置(表示照明ユニット)15、光制御素子16、及び光学素子17を備える。
【0012】
表示装置15、光制御素子16、及び光学素子17は、この順に互いに平行に配置される。光制御素子16は、表示装置15と光学素子17の間に配置される。表示装置15、光制御素子16、及び光学素子17は、図示しない支持部材によって、
図1、
図2の位置に固定される。例えば、表示装置15、光制御素子16、及び光学素子17は、筐体20(後述する
図12参照)内に収容される。
【0013】
表示装置15は、表示面に画像を表示する。本実施形態では、表示装置15が液晶表示装置で構成される場合を例に挙げて説明する。表示装置15は、照明素子(バックライトともいう)13、及び表示素子14を備える。
【0014】
照明素子13は、照明光を発光し、この照明光を表示素子14に向けて出射する。照明素子13は、光源部10、導光板11、及び反射シート12を備える。照明素子13は、例えばサイドライト型の照明素子である。照明素子13は、面光源を構成する。
【0015】
光源部10は、照明光を発光する。光源部10は、導光板11の側面に向き合うように配置され、導光板11の側面に向けて照明光を出射する。光源部10は、例えば、Y方向に並んだ複数の発光素子(図示せず)を含む。発光素子は、白色LED(Light Emitting Diode)で構成される。導光板11は、光源部10からの照明光を導光し、照明光を上面から出射する。反射シート12は、導光板11の底面から出射した照明光を、再び導光板11に向けて反射する。
【0016】
表示素子14は、透過型の液晶表示素子で構成される。表示素子14の駆動モードについては特に限定されず、TN(Twisted Nematic)モード、VA(Vertical Alignment)モード、又はホモジニアスモードなどを用いることができる。表示素子14は、照明素子13から出射された照明光を受ける。表示素子14は、照明光を透過して光変調を行う。そして、表示素子14は、その表示面に所望の画像を表示する。
【0017】
このようにして、表示装置(表示照明ユニット)15は、画像(動画を含む)を表示するとともに、画像を含む光を出射する。
【0018】
光制御素子16は、表示装置(表示照明ユニット)15と光学素子17の間に配置されるとともに、表示装置(表示照明ユニット)15が出射した画像(動画を含む)を含む光を光学素子17に導く。光制御素子16は、自身の法線方向(Z方向)に対して斜め方向を中心とした所定の角度範囲内の光成分を透過する一方、所定の角度範囲以外の光成分を遮光するように機能する。光制御素子16の面積は、表示素子14の面積とほぼ同じに設定される。光制御素子16の具体的な構成については後述する。
【0019】
光学素子17は、底面側から入射した光を上面側に反射する。また、光学素子17は、底面側から斜めに入射した入射光を、例えば正面方向(法線方向)に反射する。そして、光学素子17は、空中表示装置1の上方の空中に空中像18を結像する。空中像18は、光学素子17の素子面に平行な位置(平行な面)に結像され、2次元の画像である。素子面とは、光学素子17が面内方向に広がる仮想的な平面を言う。素子面は、素子の面内と同じ意味である。その他の素子の素子面についても同様の意味である。光学素子17の正面にいる観察者19は、空中像18を視認することができる。光学素子17の面積は、表示素子14の面積以上に設定される。
【0020】
このように、光学素子17は、表示装置(表示照明ユニット)15が出射して、光制御素子16から導かれた、画像(動画を含む)を含む光を、表示装置(表示照明ユニット)15と反対側の空中に投影して空中像を形成する。
【0021】
図3は、光学素子17の一例を示す斜視図及び部分拡大図である。
図3の部分拡大図は、XZ面の拡大図である。
【0022】
光学素子17は、基材31、及び複数の光学要素32を備える。基材31は、XY面において平面状に構成され、直方体を有する。
【0023】
基材31の底面には、複数の光学要素32が設けられる。複数の光学要素32の各々は、三角柱で構成される。光学要素32は、三角柱の3個の側面がXY面と平行になるように配置され、1つの側面が基材31に接する。複数の光学要素32は、それぞれがY方向に延び、X方向に並んで配置される。換言すると、複数の光学要素32は、鋸歯状を有する。
【0024】
光学要素32は、入射端面33及び反射端面34を有する。入射端面33は、光制御素子16からの光が入射する面である。反射端面34は、入射端面33に外部から入射した光を、光学要素32の内部で反射する面である。
【0025】
光学要素32は、例えば、基材31と同じ透明材料によって基材31と一体的に形成される。基材31と光学要素32とを個別に形成し、透明な接着材を用いて基材31に光学要素32を接着してもよい。基材31及び光学要素32を構成する透明材料としては、例えばアクリル樹脂、又はガラスが用いられる。
【0026】
光学素子17は、入射光を内部で反射して、空中に実像を結像する。また、光学素子17は、その素子面の正面の位置に、光学素子17と平行に空中像を結像させる。
【0027】
図4は、本実施形態の空中表示装置1の一例を示すブロック図である。空中表示装置1は、表示装置15(照明素子13及び表示素子14を含む)、表示駆動回路40、電圧発生回路41、制御部42、記憶部43、及び入力部44を備える。
【0028】
表示駆動回路40は、表示素子14を駆動し、表示素子14に画像及び/又は動画を表示させる。電圧発生回路41は、照明素子13及び表示駆動回路40が動作するのに必要な複数種類の電圧を発生し、これらの電圧を照明素子13及び表示駆動回路40に供給する。
【0029】
制御部42は、空中表示装置1全体の動作を制御する。すなわち、制御部42は、照明素子13、表示駆動回路40、及び電圧発生回路41の動作を制御する。そして、制御部42は、所望の表示位置に空中像18を表示させる。
【0030】
記憶部43は、揮発性メモリ、及び不揮発性メモリを含む。記憶部43は、空中表示装置1の動作に必要な種々のデータを格納する。また、記憶部43は、空中表示装置1が表示する画像のデータを格納する。
【0031】
入力部44は、ユーザが入力した情報を受け付ける。入力部44は、ユーザにより入力された情報を制御部42に送る。制御部42は、入力部44が受け付けた情報に基づいて、表示装置15に表示する画像を選択することが可能である。
【0032】
次に、上記のように構成された空中表示装置1の動作について説明する。
【0033】
図2に示すように、表示装置15から出射された光は、光制御素子16に入射する。表示装置15から出射された光のうち角度θ
1の光成分は、光制御素子16を透過する。光制御素子16を透過した光は、光学素子17に入射する。光学素子17は、入射光を、光制御素子16と反対側の空中に結像し、空中に空中像18を表示する。
【0034】
図5は、光学素子17における光の反射の様子を説明する斜視図である。
図6は、光学素子17における光の反射の様子を説明するXZ面の側面図である。
図6は、観察者19の両目(すなわち、両目を結ぶ線)がX方向に平行な状態で光学素子17を見た図である。
図7は、光学素子17における光の反射の様子を説明するYZ面の側面図である。
図7は、観察者19の両目がY方向に平行な状態で光学素子17を見た図である。
【0035】
光制御素子16の素子面における任意の点“o”から出射された光は、光学素子17の入射端面33に入射し、反射端面34に到達する。反射端面34の法線方向に対して臨界角よりも大きい角度で到達した光は、反射端面34で全反射され、光学素子17の光学要素32が形成されている側の反対側の平面から出射される。臨界角とは、その入射角を超えると全反射する最少の入射角である。臨界角は、入射面の垂線に対する角度である。
【0036】
図6のXZ面では、点“o”から出射された光は、光学要素32の反射端面34で全反射され、その光は空中で結像されて空中像を生成する。
【0037】
図7のYZ面では、点“o”から出射された光は、光学要素32の反射端面34で反射されず、その光は空中で結像することがないため空中像の生成に寄与しない。
【0038】
すなわち、観察者19が空中像を認識できる条件は、観察者19の両眼がX方向に平行、又はそれに近い状態(例えばX方向に対して±10度)である。また、観察者19の両眼がX方向に平行、又はそれに近い状態でY方向に沿って視点を移動した場合、空中像を常に認識することができる。
【0039】
図8は、光学素子17における入射端面33及び反射端面34の角度条件を説明する図である。
【0040】
Z方向(素子面に垂直な方向)に対する入射端面33の角度をθ2、Z方向に対する反射端面34の角度をθ3、入射端面33と反射端面34とのなす角度をθpとする。角度をθpは、以下の式(1)で表される。
θp=θ2+θ3・・・(1)
【0041】
光制御素子16から角度θ1で出射した光は、入射端面33に入射する。光学素子17の材料の屈折率をnp、空気の屈折率を1とする。入射端面33における入射角をθ4、屈折角をθ5とする。反射端面34における入射角をθ6、反射角をθ7(=θ6)とする。光学素子17の上面における入射角をθ8、屈折角をθ9とする。屈折角θ9が出射角である。出射角θ9は、以下の式(2)で表される。
θ9=sin-1(np*sin(sin-1((1/np)*sin(90°-(θ1+θ2)))+θ2+2θ3-90°))・・・(2)
【0042】
反射端面34における臨界角は、以下の式(3)で表される。
臨界角<θ6(=θ7)
臨界角=sin-1(1/np)・・・(3)
【0043】
すなわち、反射端面34における入射角θ6は、反射端面34における臨界角より大きく設定される。換言すると、反射端面34の角度θ3は、反射端面34に入射する光の入射角が臨界角より大きくなるように設定される。
【0044】
また、入射端面33に入射した光は、入射端面33で全反射されないように設定される。すなわち、入射端面33の角度θ2は、入射端面33に入射する光の入射角が臨界角より小さくなるように設定される。
【0045】
光学素子17の素子面と空中像18の面との角度、及び光学素子17の素子面と空中像18の面との距離は、光学素子17に入射する光の角度θ1、光学素子17の屈折率、光学素子17の入射端面33の角度θ2、光学素子17の反射端面34の角度θ3を最適に設定することで調整が可能である。
【0046】
図9は、空中表示装置1の光線追跡図である。
図9のパラメータは、θ
1=35度、θ
3=22.5度、θ
p=45度である。
【0047】
光制御素子16の素子面における点“o”から出射された光は、点“o´”で結像される。光学素子17を面として“p”とすると、“op:o´p≒1:2”が確保されている。
【0048】
図10は、X方向における空中表示装置1の配光図である。
図10は、
図9のパラメータに対応する波形である。
図10の横軸がX方向に沿って観察者が光学素子17を見る角度(度)を表しており、縦軸が光の出力比(%)を表している。
図10から、角度0度、すなわち正面方向から見た場合に、出力比が大きくなる。観察者は、正面方向から見た場合に、空中像をより鮮明に視認することができる。
【0049】
図11は、Y方向における空中表示装置1の配光図である。
図11も、
図9のパラメータに対応する波形である。
図11の横軸がY方向に沿って観察者が光学素子17を見る角度(度)を表しており、縦軸が光の出力比(%)を表している。
図11から、Y方向に沿って空中表示装置1を見た場合、空中像が結像されず、表示装置15から出射された光は、光学素子17を透過する。
【0050】
図12は、本実施形態の空中表示装置1の全体構成を説明する斜視図である。空中表示装置1は、筐体20を備える。筐体20は、底板及び4個の側板を含む箱形状を有する。筐体20は、表示装置15(照明素子13、及び表示素子14)、光制御素子16、及び光学素子17を収容する。
図12では、光制御素子16の図示を省略している。筐体20は、上部に四角形の開口部を有し、この開口部に光学素子17がはめ込まれる。
【0051】
図12に示すように、空中表示装置1は、自身の光出射面の上方の空中に、空中像18を表示することが可能である。また、空中表示装置1は、光学素子17の素子面と平行かつ2次元の空中像18を表示することが可能である。また、空中表示装置1は、Z方向に薄型化が可能な空中表示装置1を実現できる。
【0052】
図13は、本実施形態の空中表示装置1の視野角を説明する斜視図である。
図13では、空中表示装置1が備える表示素子14及び光学素子17を抽出して示している。
図13の矢印は、視野角方向を示している。
【0053】
観察者19は、その両眼がX方向にほぼ平行な状態で空中表示装置1を見た場合に、空中像18を視認できる。そして、空中表示装置1は、観察者19がY方向に沿って視点を移動した場合に、より広い視野角を実現できる。視野角は、光学素子17の素子面に垂直な方向であるZ方向が0度として定義される。本実施形態では、空中表示装置1は、YZ面において、上下各30度程度の視野角を実現できる。すなわち、空中表示装置1は、上下視野角範囲0度±30度程度を実現できる。
【0054】
従来の空中表示装置として、2面コーナーリフレクタアレイを用い、表示素子と2面コーナーリフレクタアレイとを斜めに(例えば45度で)配置したものが知られている。この従来の空中表示装置は、一般的に、上下左右各0度以上15度以下程度の視野角を有する。よって、本実施形態によれば、従来の空中表示装置に比べて、大幅に視野角を向上できる。
【0055】
このように、本実施形態の空中表示装置1によれば、表示品質を確保しつつ、空中像を表示することができる。
【0056】
また、観察者19の両眼がX方向(すなわち、複数の光学要素32が並ぶ方向)に平行、又はそれに近い状態で光学素子17を見た場合に、観察者19は、空中像を視認することができる。また、観察者19の両眼がX方向に平行、又はそれに近い状態でY方向に沿って視点を移動した場合、空中像を常に視認することができる。すなわち、観察者19の両眼がX方向に平行、又はそれに近い状態において、視野角を確保することができる。
【0057】
また、空中表示装置1を構成する複数の素子を平行に配置することができる。これにより、Z方向に薄型化(小型化)が可能な空中表示装置1を実現できる。
【0058】
また、空中表示装置1の正面方向において、空中像を表示することができる。また、空中像を結像する光学素子17の素子面と平行に2次元の空中像を表示することができる。
【0059】
このように、空中表示装置1は、画像を表示するとともに画像を含む光を出射する表示装置(表示照明ユニット)15を有している。また、空中表示装置1は、表示装置(表示照明ユニット)15が出射した画像を含む光を、表示装置(表示照明ユニット)15と反対側の空中に投影して空中像を形成する光学素子17を有している。そして、空中表示装置1は、表示装置(表示照明ユニット)15と光学素子17の間に配置されるとともに、表示装置(表示照明ユニット)15が出射した画像を含む光を光学素子17に導く光制御素子16とを有している。光制御素子16は、自身の法線方向(Z方向)に対して斜め方向を中心とした所定の角度範囲内の光成分を透過する一方、所定の角度範囲以外の光成分を遮光するように機能する。
【0060】
本発明者は、光制御素子16における光の利用効率を向上するべく、鋭意研究を重ねた結果、光制御素子16に、表示装置(表示照明ユニット)15が出射した画像を含む光を透過する「透過領域」と、表示装置(表示照明ユニット)15が出射した画像を含む光を吸収する「吸収領域」と、表示装置(表示照明ユニット)15が出射した画像を含む光を反射する「反射領域」とを設けることを着想するに至った。
【0061】
「透過領域」は、表示装置(表示照明ユニット)15が出射した画像を含む光を光学素子17に向けて透過する。「反射領域」は、表示装置(表示照明ユニット)15が出射した画像を含む光を光学素子17に向けて反射する。これにより、「吸収領域」による表示装置(表示照明ユニット)15が出射した画像を含む光の吸収機能と相まって(相乗効果により)、光制御素子16における光の利用効率を向上することができる。
【0062】
「透過領域」は、透明領域、透光領域、透過部材、透明部材、透光部材と読み替えてもよい。「吸収領域」は、遮光領域、吸収部材、遮光部材と読み替えてもよい。「反射領域」は、反射部材と読み替えてもよい。「吸収領域」と「反射領域」は、これらを合わせて不透過領域、不透明領域、不透光領域、不透過部材、不透明部材、不透光部材と読み替えてもよい。
【0063】
【0064】
光制御素子16は、自身の法線方向(Z方向)に離間した一対の基材51、52を有している。一対の基材51、52は、それぞれ、XY平面に延びる四角形の平面状に構成される。一対の基材51、52の間には、透過領域53と、吸収領域54と、反射領域55とが配置される。透過領域53と吸収領域54と反射領域55とは、それぞれがY方向に延び、X方向に並んだ複数が設けられるとともに、隣接するもの同士が接するようにして交互に配置される。なお、一対の基材51、52の少なくとも一方を省略してもよいし、一対の基材51、52の少なくとも一方を他の構成要素に置き換えてもよい(光制御素子16の機能が保証される限りにおいて種々の設計変更が可能である)。
【0065】
透過領域53は、X方向において、基材51、52の法線方向に対して角度θ1の斜め方向に延びる。透過領域53は、XZ断面において、側面が角度θ1だけ傾いた平行四辺形である。上述した通り、透過領域53は、表示装置(表示照明ユニット)15が出射した画像を含む光を光学素子17に向けて透過する。
【0066】
吸収領域54は、X方向において、基材51、52の法線方向に対して角度θ1の斜め方向に延びる。吸収領域54は、XZ断面において、側面が角度θ1だけ傾いた平行四辺形である。上述した通り、吸収領域54は、表示装置(表示照明ユニット)15が出射した画像を含む光を吸収する。
【0067】
反射領域55は、X方向において、基材51、52の法線方向に対して角度θ1の斜め方向に延びる。反射領域55は、XZ断面において、側面が角度θ1だけ傾いた平行四辺形である。上述した通り、反射領域55は、表示装置(表示照明ユニット)15が出射した画像を含む光を光学素子17に向けて反射する。
【0068】
基材51、52及び透過領域53としては、例えば、透明な樹脂が用いられ、例えばアクリル樹脂が用いられる。吸収領域54としては、例えば、黒の染料が混入された樹脂が用いられる。反射領域55としては、例えば、金属膜等の反射膜(例えば反射シート)が用いられる。反射領域55の反射特性としては、全反射であってもよいし、全反射以外であってもよい。
【0069】
このように、透過領域53と吸収領域54と反射領域55は、光制御素子16の法線と直交する方向(X方向)に並んで配置される。また、透過領域53と吸収領域54と反射領域55は、光制御素子16の法線(Z方向)に対して傾いて配置される。
図14Aではこの傾き角度をθ
1で描いている。また、透過領域53と吸収領域54と反射領域55は、光制御素子16の法線方向(Z方向)の全域に亘って配置される。
【0070】
さらに、光制御素子16の法線と直交する方向(X方向)で見たとき、吸収領域54が中央に位置し、吸収領域54を挟んだ両側に透過領域53と反射領域55が位置したパターン56が定義される。そして、透過領域53と反射領域55が吸収領域54を挟んだパターン56が、光制御素子16の法線と直交する方向(X方向)に繰り返される。ここで、パターン56における「中央」とは、当該パターン56の並び順における光制御素子16の法線と直交する方向(X方向)の真ん中を意味している。
【0071】
なお、パターン56は、光制御素子16の法線と直交する方向(X方向)に順に並んだ透過領域53と吸収領域54と反射領域55により構成されるパターン、光制御素子16の法線と直交する方向(X方向)に順に並んだ吸収領域54と反射領域55と透過領域53により構成されるパターン、あるいは、光制御素子16の法線と直交する方向(X方向)に順に並んだ反射領域55と透過領域53と吸収領域54により構成されるパターンとして捉えることもできる。
【0072】
ここで、透過領域53と吸収領域54と反射領域55は、XZ断面において側面が角度θ1だけ傾いた平行四辺形であって、Y方向に延びる断面平行四辺形の四角柱でもある。このため、透過領域53と吸収領域54と反射領域55の大きさ(XYZ空間における体積、及び、XZ平面における面積)を計算するとき、Y方向の長さがいずれも同じであり、Z方向の高さがいずれも同じであるため、X方向の幅に依存して、透過領域53と吸収領域54と反射領域55の大きさ(XYZ空間における体積、及び、XZ平面における面積)の比率が決定される。以後、透過領域53の「大きさ、面積及び体積」、吸収領域54の「大きさ、面積及び体積」、反射領域55の「大きさ、面積及び体積」と言うとき、透過領域53と吸収領域54と反射領域55のそれぞれの「XYZ空間における体積」及び/又は「XZ平面における面積」を意味することがある。
【0073】
そして、
図14A~
図14Cの例では、透過領域53のX方向の幅が最も大きく、吸収領域54と反射領域55のX方向の幅が2番目に大きく、且つ、吸収領域54と反射領域55のX方向の幅が同一となっている。このため、
図14Bに示すように、1つのパターン56において、透過領域53の大きさ(面積及び体積)が占める割合がX[%]であるとき、吸収領域54と反射領域55の大きさ(面積及び体積)が占める割合がそれぞれ(100-X)/2[%]となる。パラメータXは、例えば、70<X<99.5を満足するように決定することが好ましく、80<X<99を満足するように決定することがより好ましい。これらの条件式を満足することにより、光制御素子16における光の利用効率を最大化することができる。パラメータXが70以下である場合、透過領域53の大きさ(面積及び体積)が小さくなりすぎて、光制御素子16から光学素子17に供給される光量が不足するおそれがある。パラメータXが99.5以上である場合、光制御素子16による光制御機能、すなわち、法線方向に対して角度θ
1の斜め方向の光強度がピークになるように光学素子17への供給光を制御する機能が不十分となるおそれがある。例えば、パラメータXが90の場合、透過領域53の大きさ(面積及び体積)が占める割合が90%となり、吸収領域54と反射領域55の大きさ(面積及び体積)が占める割合がそれぞれ5%となる。また、パラメータXが95の場合、透過領域53の大きさ(面積及び体積)が占める割合が95%となり、吸収領域54と反射領域55の大きさ(面積及び体積)が占める割合がそれぞれ2.5%となる。
【0074】
隣接するパターン56において、吸収領域54が、少しも/全く、光制御素子16の法線方向(Z方向)に重ならない。これにより、光制御素子16から光学素子17に供給される光量を増大させることが可能になる。
【0075】
このように構成された光制御素子16は、法線方向に対して角度θ
1の斜め方向の光強度がピークになるように、表示光を透過することができる。例えば、光制御素子16は、法線方向に対して30°±30°以外の光成分を遮光するように構成される。望ましくは、光制御素子16は、法線方向に対して30°±20°以外の光成分を遮光するように構成される。
図14Cでは、透過領域53が光学素子17に向けて透過する光、吸収領域54が吸収する光、及び、反射領域55が光学素子17に向けて反射する光を仮想線(二点鎖線)で描いている。なお、光制御素子16における透過領域53と吸収領域54と反射領域55の傾き角度θ
1には自由度があり、種々の設計変更が可能である。
【0076】
透過領域53と吸収領域54と反射領域55を具備する光制御素子16は、例えば、次のようにして製造(作製)することができる。基材51、52、並びに、透過領域53、吸収領域54及び反射領域55を構成する各シートを積層して一体化した後、当該積層体を傾き角度θ1を実現するような角度で切断する。透過領域53とこれを構成するシートの幅は、例えば、100μm程度とすることができ、吸収領域54及び反射領域55とこれを構成するシートの幅は、例えば、数μm~十数μmとすることができる。
【0077】
図15A、
図15Bは、光制御素子16の第2実施形態を示す断面図である。この第2実施形態は、第1実施形態(
図14A~
図14C)において、吸収領域54と反射領域55の位置を入れ替えたものである。第2実施形態によっても、光制御素子16における光の利用効率を向上させることができる。
【0078】
第2実施形態においても、光制御素子16の法線と直交する方向(X方向)で見たとき、吸収領域54が中央に位置し、吸収領域54を挟んだ両側に透過領域53と反射領域55が位置したパターン56が定義される。そして、透過領域53と反射領域55が吸収領域54を挟んだパターン56が、光制御素子16の法線と直交する方向(X方向)に繰り返される。
【0079】
なお、パターン56は、光制御素子16の法線と直交する方向(X方向)に順に並んだ反射領域55と吸収領域54と透過領域53により構成されるパターン、光制御素子16の法線と直交する方向(X方向)に順に並んだ吸収領域54と透過領域53と反射領域55により構成されるパターン、あるいは、光制御素子16の法線と直交する方向(X方向)に順に並んだ透過領域53と反射領域55と吸収領域54により構成されるパターンとして捉えることもできる。
【0080】
このように構成された光制御素子16は、法線方向に対して角度θ
1の斜め方向の光強度がピークになるように、表示光を透過することができる。例えば、光制御素子16は、法線方向に対して30°±30°以外の光成分を遮光するように構成される。望ましくは、光制御素子16は、法線方向に対して30°±20°以外の光成分を遮光するように構成される。
図15Bでは、透過領域53が光学素子17に向けて透過する光、吸収領域54が吸収する光、及び、反射領域55が光学素子17に向けて反射する光を仮想線(二点鎖線)で描いている。
【0081】
ここで、第1実施形態(
図14A~
図14C)と第2実施形態(
図15A、
図15B)を比較する。光制御素子16の法線方向(Z方向)を基準とした場合において、そこから時計回り方向への傾斜が規定されるとき、傾斜の先端側(せり出し側)に反射領域55が存在する第1実施形態(
図14A~
図14C)の方が、傾斜の先端側(せり出し側)に吸収領域54が存在する第2実施形態(
図15A、
図15B)よりも、相対的に多くの光を光学素子17に導くことができるので、光の利用効率に優れている。
【0082】
図16A、
図16Bは、光制御素子16の第3実施形態を示す断面図である。第3実施形態によっても、光制御素子16における光の利用効率を向上させることができる。
【0083】
第1実施形態(
図14A~
図14C)では、パターン56において、透過領域53の大きさ(面積及び体積)が最も大きく、吸収領域54と反射領域55の大きさ(面積及び体積)が2番目に大きく、且つ、吸収領域54と反射領域55の大きさ(面積及び体積)が同一となっていた。これに対して、第3実施形態では、パターン56において、透過領域53の大きさ(面積及び体積)が相対的に大きく、吸収領域54と反射領域55の大きさ(面積及び体積)が相対的に小さければよく、吸収領域54と反射領域55の大きさ(面積及び体積)の大小関係は問わない。
【0084】
図16Aでは、パターン56において、透過領域53の大きさ(面積及び体積)が最も大きく、吸収領域54の大きさ(面積及び体積)が2番目に大きく、反射領域55の大きさ(面積及び体積)が最も小さく設定されている。
図16Bでは、パターン56において、透過領域53の大きさ(面積及び体積)が最も大きく、反射領域55の大きさ(面積及び体積)が2番目に大きく、吸収領域54の大きさ(面積及び体積)が最も小さく設定されている。
【0085】
図17は、光制御素子16の第4実施形態を示す断面図である。第4実施形態によっても、光制御素子16における光の利用効率を向上させることができる。
【0086】
第1実施形態(
図14A~
図14C)では、隣接するパターン56において、吸収領域54が、少しも/全く、光制御素子16の法線方向(Z方向)に重ならない。これにより、光制御素子16から光学素子17に供給される光量を増大させることが可能になる。これに対し、第4実施形態では、隣接するパターン56において、吸収領域54の一部(端部同士)が、光制御素子16の法線方向(Z方向)に重なっている。これにより、光制御素子16による光制御機能、すなわち、法線方向に対して角度θ
1の斜め方向の光強度がピークになるように光学素子17への供給光を制御する機能を強化することができる。第4実施形態(
図17)では、第1実施形態(
図14A~
図14C)と比較して、透過領域53と吸収領域54と反射領域55が基材51、52の法線方向に対して延びる角度θ
1が大きくなっている(大きく描いている)。
【0087】
図18は、光制御素子16の第5実施形態を示す断面図である。第5実施形態によっても、光制御素子16における光の利用効率を向上させることができる。
【0088】
第1実施形態(
図14A~
図14C)では、光制御素子16の法線と直交する方向(X方向)で見たとき、吸収領域54が中央に位置し、吸収領域54を挟んだ両側に透過領域53と反射領域55が位置したパターン56が定義される。そして、透過領域53と反射領域55が吸収領域54を挟んだパターン56が、光制御素子16の法線と直交する方向(X方向)に繰り返される。
【0089】
これに対して、第5実施形態では、吸収領域54をその両側に位置する透過領域53で挟んだパターン56X、吸収領域54をその両側に位置する反射領域55で挟んだパターン56Y、及び、吸収領域54をその両側に位置する透過領域53と反射領域55で挟んだパターン56Zが形成され、このパターン56X~56Zのセットが光制御素子16の法線と直交する方向(Z方向)に繰り返される。すなわち、第5実施形態では、光制御素子16の法線と直交する方向(Z方向)で見たとき、透過領域53どうしの境界部、反射領域55どうしの境界部、及び、透過領域53と反射領域55の境界部に吸収領域54が介在する。
【0090】
図19A、
図19Bは、光制御素子16の第6実施形態を示す断面図である。第6実施形態によっても、光制御素子16における光の利用効率を向上させることができる。
【0091】
第1実施形態(
図14A~
図14C)では、透過領域53と吸収領域54と反射領域55が、光制御素子16の法線方向(Z方向)の全域に亘って配置されている。
【0092】
これに対して、第6実施形態では、透過領域53と吸収領域54と反射領域55の全てを光制御素子16の法線方向(Z方向)の全域に亘って配置するのではなく、透過領域53と吸収領域54と反射領域55のうち、第1の部分が、光制御素子16の法線方向(Z方向)の全域に亘って配置され、第2の部分が、光制御素子16の法線方向(Z方向)の一部の領域にのみ配置される。
【0093】
図19Aでは、透過領域53と吸収領域54が、光制御素子16の法線方向(Z方向)の全域に亘って配置される。その一方、反射領域55の一部分が、光制御素子16の法線方向(Z方向)の一部の領域にのみ配置され、反射領域55の他部分が、光制御素子16の法線方向(Z方向)の全域に亘って配置される。
【0094】
図19Bでは、透過領域53と反射領域55が、光制御素子16の法線方向(Z方向)の全域に亘って配置される。その一方、吸収領域54の一部分が、光制御素子16の法線方向(Z方向)の一部の領域にのみ配置され、吸収領域54の他部分が、光制御素子16の法線方向(Z方向)の全域に亘って配置される。
【0095】
図20A、
図20Bは、本実施形態の空中表示装置1による光の利用効率の優位性を示す図である。
図20Aは光制御素子から出射される光の配光特性を示しており、
図20Bは光学素子から出射される光の配光特性を示している。
図20A、
図20Bにおける実線は、第1実施形態(
図14A~
図14C)の空中表示装置1(光制御素子16、光学素子17)の場合を描いており、
図20A、
図20Bにおける破線は、比較例の空中表示装置(光制御素子、光学素子)の場合を描いている。比較例の光制御素子は、反射領域を有しておらず、透過領域と吸収領域のみを有している(第1実施形態の光制御素子16において反射領域55を吸収領域54に置き換えて一体化したものである)。
【0096】
図20Aに示した光制御素子から出射される光の配光特性を見ると、配光角度35°~90°の範囲に亘って、第1実施形態の空中表示装置1(光制御素子16)の光強度が比較例の空中表示装置(光制御素子)よりも大きくなっており、第1実施形態の空中表示装置1(光制御素子16)による光の利用効率の優位性が読み取れる。
図20Bに示した光学素子から出射される光の配光特性を見ると、配光角度-35°~10°の範囲に亘って、第1実施形態の空中表示装置1(光学素子17)の光強度が比較例の空中表示装置(光学素子)よりも大きくなっており、第1実施形態の空中表示装置1(光学素子17)による光の利用効率の優位性が読み取れる。
【0097】
このように、本実施形態の空中表示装置1は、光制御素子16が、表示装置(表示照明ユニット)15が出射した画像を含む光を透過する透過領域53と、表示装置(表示照明ユニット)15が出射した画像を含む光を吸収する吸収領域54と、表示装置(表示照明ユニット)15が出射した画像を含む光を反射する反射領域55とを有している。これにより、光制御素子16における光の利用効率に優れた空中表示装置1を実現することができる。
【0098】
近年、空中像を提示する非接触入力装置が新たなヒューマンマシンインターフェース(HMI:Human Machine Interface)として期待されている。その中でも、既存の入力機能付き表示装置の置き換えが容易な小型パッケージング非接触入力空中表示装置に、本実施形態の空中表示装置が好適である。
【0099】
非接触入力空中表示装置の空中像を生成するための光学系は、光制御素子と光学素子を有している。上述した特許文献1を含む従来技術において、光制御素子は透明領域と不透明領域からなり、不透明領域は光を吸収することで光の方向を制御している。このため、光の利用効率という点において改良の余地がある。この課題を解決するべく、本実施形態の空中表示装置では、光吸収領域(不透明領域)の1面に反射領域を形成することで光の利用効率を向上させている。
【0100】
また、透明スクリーンへのプロジェクション(Hologram Window)、ハーフミラーを用いた錯視(Holographic display)、LEDが複数配列されたバーの回転(versa-writer)等が、何もない空中に映像を表示する技術、自由空間を情報媒体とする新しいメディアとして注目されている。非接触でアクセス可能な空中操作パネルを実現可能とすることで、新たな技術分野への適用・開拓が期待できる(例えば、銀行ATMや公共施設等の無人・簡易窓口、レストランや医療現場、ポータブルゲーム、車載コックピット等)。さらに、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)等の感染症の感染経路の一つである接触感染対策として、本実施形態の空中表示装置を適用した非接触タッチセンサ付き空中操作パネルが有用である。非接触タッチセンサを実現するための構成としては、例えば、TOF(Time of Flight)方式の距離検出装置を使用することができる。TOFセンサでは、光源装置から検出対象に対してパルス光を投光(照射)し、検出対象からの反射光を受光素子で受光して、反射光の受光までに要した時間に基づいて検出対象との距離を測定する。
【0101】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0102】
例えば、上記実施形態では、表示装置(表示照明ユニット)15として液晶表示装置を例に挙げて説明しているが、これに限定されるものではない。表示装置(表示照明ユニット)15は、自発光型である有機EL(electroluminescence)表示素子、又はマイクロLED(Light Emitting Diode)表示素子などを用いることも可能である。マイクロLED表示素子は、画素を構成するR(赤)、G(緑)、B(青)をそれぞれLEDで発光させる表示素子である。
【0103】
例えば、上記実施形態では、透過領域53と吸収領域54と反射領域55とが隙間なく連続的に設けられる場合を例示して説明したが、透過領域53と吸収領域54と反射領域55の間に僅かなクリアランスが設けられてもよく、透過領域53と吸収領域54と反射領域55の間に極めて薄い他の領域(層)が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0104】
1 空中表示装置
10 光源部
11 導光板
12 反射シート
13 照明素子(バックライト)
14 表示素子
15 表示装置(表示照明ユニット)
16 光制御素子
17 光学素子
18 空中像
19 観察者
20 筐体
31 基材
32 光学要素
33 入射端面
34 反射端面
40 表示駆動回路
41 電圧発生回路
42 制御部
43 記憶部
44 入力部
51 52 基材
53 透過領域(透明領域、透光領域、透過部材、透明部材、透光部材)
54 吸収領域(遮光領域、吸収部材、遮光部材)
55 反射領域(反射部材)
56 56X 56Y 56Z パターン