(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001626
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】操舵装置
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20231227BHJP
B62D 1/14 20060101ALI20231227BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20231227BHJP
B62D 3/08 20060101ALI20231227BHJP
B62D 3/12 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D1/14
B62D5/04
B62D3/08 E
B62D3/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100402
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】應矢 敏明
(72)【発明者】
【氏名】冷水 由信
(72)【発明者】
【氏名】仲 正美
(72)【発明者】
【氏名】日比 元明
【テーマコード(参考)】
3D030
3D232
3D333
【Fターム(参考)】
3D030DB92
3D232CC48
3D232DA03
3D232DA04
3D232DA63
3D232EA01
3D232EB04
3D232EC22
3D232EC37
3D232GG01
3D333CB02
3D333CB31
3D333CC15
3D333CC18
3D333CD04
3D333CD05
3D333CD09
(57)【要約】
【課題】構成を簡素化することができる操舵装置を提供する。
【解決手段】操舵装置100は、第1の操舵ユニット1、第2の操舵ユニット2、転舵ユニット3、および制御装置4を有している。第1の操舵ユニット1は、車両の旋回操作を行うための第1のレバー1Bと、第1のレバー1Bの操作量である第1の傾角θ1を検出する第1の傾斜角センサ1Cと、を有する。第2の操舵ユニット2は、車両の旋回操作を行うための第2のレバー2Bと、第2のレバー2Bの操作量である第2の傾角θ2を検出する第2の傾斜角センサ2Cと、を有する。転舵ユニット3は、車両の転舵輪5を転舵させるための力を発生する転舵モータ31を有する。制御装置4は、第1の傾角θ1および第2の傾角に応じて、転舵モータを制御する。第1のレバー1Bと第2のレバー2Bとは、互いに機械的に連動しないように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の旋回操作を行うための第1の操作子と、前記第1の操作子の操作量である第1の操作量を検出するように構成される第1のセンサと、を有する第1の操舵ユニットと、
車両の旋回操作を行うための第2の操作子と、前記第2の操作子の操作量である第2の操作量を検出するように構成される第2のセンサと、を有する第2の操舵ユニットと、
前記第1の操舵ユニットとの間の動力伝達、および前記第2の操舵ユニットとの間の動力伝達が分離された転舵ユニットであって、車両の転舵輪を転舵させるための力を発生するモータを有する転舵ユニットと、
前記第1のセンサを通じて検出される前記第1の操作量、および前記第2のセンサを通じて検出される前記第2の操作量に応じて、前記モータを制御するように構成される制御装置と、を有し、
前記第1の操作子と前記第2の操作子とは、互いに機械的に連動しないように構成される操舵装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第1の操作量と前記第2の操作量とを調停するための処理である調停処理の実行を通じて、前記モータの制御に使用される最終的な操作量である最終操作量を設定し、設定される前記最終操作量に応じて、前記モータを制御するように構成される請求項1に記載の操舵装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記調停処理として、前記第1の操作量および前記第2の操作量のうち、絶対値が大きい方を、前記最終操作量として設定するように構成される請求項2に記載の操舵装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記第1の操作子および前記第2の操作子の操作方向が異なる場合、前記調停処理として、操作方向を判定する直前の前記転舵輪の転舵方向に対応する方向へ操作されている前記第1の操作子または前記第2の操作子の操作量を、前記最終操作量として設定するように構成される請求項2または請求項3に記載の操舵装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記調停処理として、前記第1の操作量と前記第2の操作量との平均値を、前記最終操作量として設定するように構成される請求項2に記載の操舵装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記第1の操作量および前記第2の操作量のうちいずれか一方の値が零または零の近傍値に設定される操作量しきい値以下である場合、前記調停処理として、前記第1の操作量および前記第2の操作量のうちいずれか他方を、前記最終操作量として設定するように構成される請求項2または請求項5に記載の操舵装置。
【請求項7】
前記第1の操作子は、車両の操作者が右手で把持可能であって、車両の進行方向に対して左右方向に操作可能に構成される第1のレバーであり、
前記第2の操作子は、車両の操作者が左手で把持可能であって、車両の進行方向に対して左右方向に操作可能に構成される第2のレバーであり、
前記制御装置は、前記第1の操作子および前記第2の操作子の操作方向と、前記転舵輪の転舵方向とが同じになるように、前記モータを制御するように構成される請求項2に記載の操舵装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記調停処理として、前記第1の操作量および前記第2の操作量に対して、個別に設定される配分割合を乗算した値を合算することにより前記モータの制御に使用される最終的な操作量である最終操作量を演算し、演算される前記最終操作量を使用して前記モータを制御するように構成され、
前記制御装置は、前記第1の操作子および前記第2の操作子が車両の進行方向に対して右方向へ操作されるとき、前記左手で把持される前記第2のレバーの前記配分割合を、前記右手で把持される前記第1のレバーの前記配分割合よりも大きい値に設定する一方、
前記第1の操作子および前記第2の操作子が車両の進行方向に対して左方向へ操作されるとき、前記右手で把持される前記第1のレバーの前記配分割合を、前記左手で把持される前記第2のレバーの前記配分割合よりも大きい値に設定するように構成される請求項7に記載の操舵装置。
【請求項9】
車両の旋回操作を行うための第3の操舵ユニット、
車両の旋回操作を行うための第4の操舵ユニットと、をさらに有し、
前記第1の操舵ユニットおよび前記第2の操舵ユニットは、車両の運転席に設けられ、
前記第3の操舵ユニットおよび前記第4の操舵ユニットは、車両の助手席に設けられ、
前記制御装置は、車載されるスイッチの操作を通じて、車両の運転席の設定状態を、第1の設定状態と、第2の設定状態との間で切り替えるように構成され、
前記第1の設定状態は、前記制御装置が、前記第1の操舵ユニットおよび前記第2の操舵ユニットの機能を有効化する一方、前記第3の操舵ユニットおよび前記第4の操舵ユニットの機能を無効化する設定状態であり、
前記第2の設定状態は、前記制御装置が、前記第1の操舵ユニットおよび前記第2の操舵ユニットの機能を無効化する一方、前記第3の操舵ユニットおよび前記第4の操舵ユニットの機能を有効化する設定状態である請求項1または請求項2に記載の操舵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステアリングホイールと転舵輪との間の動力伝達を分離した、いわゆるステアバイワイヤ方式の操舵装置が存在する。操舵装置は、ステアリングホイールを有する操舵ユニットと、転舵輪を転舵させるための力を発生する転舵ユニットとを有している。ステアリングホイールは、運転者の操作対象である操作子である。近年では、操舵ユニットと転舵ユニットとが機械的に繋がっていないことを利用して、ステアリングホイール以外にも様々な操作子が提案されている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、操作子として、左右一対のジョイスティックを有する操舵装置が記載されている。2つのジョイスティックは、複数のプーリに巻き掛けられた操舵用プッシュプルケーブルを介して、互いに連動するように構成されている。このため、運転者は、必要に応じて両手でジョイスティックを操作したり、片手運転時に左右の手を容易に持ち替えたりすることができる。また、運転者は、片手運転時において、必ず利腕を使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の操舵装置は、2つのジョイスティックを連動させるための連動機構を設ける必要がある。連動機構は、複数のプーリおよび操舵用プッシュプルケーブルなどを含む。このため、部品点数の増加、ひいては製品コストの増大が懸念される。また、連動機構などが、車両におけるレイアウト上の制約を受けるおそれがある。したがって、操舵装置の構成を簡素化することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決し得る操舵装置は、車両の旋回操作を行うための第1の操作子と、前記第1の操作子の操作量である第1の操作量を検出するように構成される第1のセンサと、を有する第1の操舵ユニットと、車両の旋回操作を行うための第2の操作子と、前記第2の操作子の操作量である第2の操作量を検出するように構成される第2のセンサと、を有する第2の操舵ユニットと、前記第1の操舵ユニットとの間の動力伝達、および前記第2の操舵ユニットとの間の動力伝達が分離された転舵ユニットであって、車両の転舵輪を転舵させるための力を発生するモータを有する転舵ユニットと、前記第1のセンサを通じて検出される前記第1の操作量、および前記第2のセンサを通じて検出される前記第2の操作量に応じて、前記モータを制御するように構成される制御装置と、を有している。前記第1の操作子と前記第2の操作子とは、互いに機械的に連動しないように構成される。
【0007】
この構成によれば、第1の操作子と第2の操作子とを、互いに独立して操作することが可能となる。また、第1の操作子と第2の操作子とを、互いに機械的に連動させる場合と異なり、第1の操作子と第2の操作子とを互いに連動させるための構成が不要である。したがって、操舵装置を構成する部品の点数を削減すること、ひいては操舵装置の構成を簡素化することが可能である。また、車両におけるレイアウト上の制約も受けにくい。
【0008】
上記の操舵装置において、前記制御装置は、前記第1の操作量と前記第2の操作量とを調停するための処理である調停処理の実行を通じて、前記モータの制御に使用される最終的な操作量である最終操作量を設定し、設定される前記最終操作量に応じて、前記モータを制御するように構成されてもよい。
【0009】
第1の操作子と第2の操作子とが、互いに機械的に連動しないように構成される場合、第1の操作子と第2の操作子とは、互いに独立して操作することが可能となる。このため、第1の操作子の操作量である第1の操作量と、第2の操作子の操作量である第2の操作量との間で調停することが好ましい場合がある。この点、上記の構成によれば、第1の操作量と第2の操作量とを調停するための処理である調停処理の実行を通じて、モータの制御に使用される最終的な操作量である最終操作量が設定される。設定される最終操作量に応じて、モータの制御が実行されることにより、転舵輪を適切に転舵させることができる。したがって、操舵装置の構成を簡素化しつつも操作性を確保することができる。
【0010】
上記の操舵装置において、前記制御装置は、前記調停処理として、前記第1の操作量および前記第2の操作量のうち、絶対値が大きい方を、前記最終操作量として設定するように構成されてもよい。
【0011】
第1の操作量および第2の操作量は、車両を旋回させようとする操作者の意思を反映している。上記の構成によれば、第1の操作量および第2の操作量のうち、絶対値が大きい方が最終操作量として設定される。設定される最終操作量に応じてモータの制御が実行されることにより、操作者の意図する転舵方向へ転舵輪が転舵されやすくなる。
【0012】
上記の操舵装置において、前記制御装置は、前記第1の操作子および前記第2の操作子の操作方向が異なる場合、前記調停処理として、操作方向を判定する直前の前記転舵輪の転舵方向に対応する方向へ操作されている前記第1の操作子または前記第2の操作子の操作量を、前記最終操作量として設定するように構成されてもよい。
【0013】
車両の操作者が、意図せず、第1の操作子と第2の操作子とを異なる方向へ操作することが懸念される。上記の構成によれば、第1の操作子および第2の操作子の操作方向が異なる場合、操舵方向が判定される直前の転舵輪の転舵方向に対応する方向へ操作されている第1の操作子または第2の操作子の操作量が最終操作量として設定される。設定される最終操作量に応じてモータの制御が実行されることにより、転舵輪が、意図せず、操舵方向が判定される直前の転舵方向と反対方向へ転舵されることを抑制することができる。したがって、車両の挙動を安定させることができる。
【0014】
上記の操舵装置において、前記制御装置は、前記調停処理として、前記第1の操作量と前記第2の操作量との平均値を、前記最終操作量として設定するように構成されてもよい。
【0015】
この構成によれば、第1の操作量と第2の操作量の両方の値を考慮して、モータが制御される。このため、第1の操作量と第2の操作量とで値が異なる場合であれ、転舵輪を適切に転舵させることができる。
【0016】
上記の操舵装置において、前記制御装置は、前記第1の操作量および前記第2の操作量のうちいずれか一方の値が零または零の近傍値に設定される操作量しきい値以下である場合、前記調停処理として、前記第1の操作量および前記第2の操作量のうちいずれか他方を、前記最終操作量として設定するように構成されてもよい。
【0017】
この構成によれば、第1の操作子および第2の操作子のうちいずれか一方のみが操作されているとき、操作されている第1の操作子または第2の操作子の操作量に応じて、転舵輪が転舵される。このため、操作者による片手運転に対して、適切に対応することができる。片手運転は、操作者が片手で第1の操作子または第2の操作子を操作することである。
【0018】
上記の操舵装置において、前記第1の操作子は、車両の操作者が右手で把持可能であって、車両の進行方向に対して左右方向に操作可能に構成される第1のレバーであってもよい。前記第2の操作子は、車両の操作者が左手で把持可能であって、車両の進行方向に対して左右方向に操作可能に構成される第2のレバーであってもよい。前記制御装置は、前記第1の操作子および前記第2の操作子の操作方向と、前記転舵輪の転舵方向とが同じになるように、前記モータを制御するように構成されてもよい。
【0019】
この構成によれば、転舵輪が、第1の操作子および第2の操作子の操作方向と同じ方向へ転舵する。このため、車両の操作者は、車両を旋回させたい方向へ第1の操作子および第2の操作子を操作すればよい。すなわち、操作者は、直感的に車両の進行方向を変更することが可能となる。したがって、車両の操縦性を向上させることができる。
【0020】
上記の操舵装置において、前記制御装置は、前記調停処理として、前記第1の操作量および前記第2の操作量に対して、個別に設定される配分割合を乗算した値を合算することにより前記モータの制御に使用される最終的な操作量である最終操作量を演算し、演算される前記最終操作量を使用して前記モータを制御するように構成されてもよい。この場合、前記制御装置は、前記第1の操作子および前記第2の操作子が車両の進行方向に対して右方向へ操作されるとき、前記左手で把持される前記第2のレバーの前記配分割合を、前記右手で把持される前記第1のレバーの前記配分割合よりも大きい値に設定する一方、前記第1の操作子および前記第2の操作子が車両の進行方向に対して左方向へ操作されるとき、前記右手で把持される前記第1のレバーの前記配分割合を、前記左手で把持される前記第2のレバーの前記配分割合よりも大きい値に設定するように構成されてもよい。
【0021】
レバーの操作は、手の甲方向の操作よりも、手のひら方向の操作の方が、物理的に簡単で正確である。上記の構成によれば、手のひら方向に操作されるレバーの操作量の最終操作量に対する配分割合が、手の甲方向に操作されるレバーの操作量の最終操作量に対する配分割合よりも大きい値に設定される。このため、車両の操作者の意図する転舵方向へ転舵輪をより適切に転舵させることができる。
【0022】
上記の操舵装置において、車両の旋回操作を行うための第3の操舵ユニット、車両の旋回操作を行うための第4の操舵ユニットと、をさらに有していてもよい。前記第1の操舵ユニットおよび前記第2の操舵ユニットは、車両の運転席に設けられ、前記第3の操舵ユニットおよび前記第4の操舵ユニットは、車両の助手席に設けられてもよい。この場合、前記制御装置は、車載されるスイッチの操作を通じて、車両の運転席の設定状態を、第1の設定状態と、第2の設定状態との間で切り替えるように構成されてもよい。前記第1の設定状態は、前記制御装置が、前記第1の操舵ユニットおよび前記第2の操舵ユニットの機能を有効化する一方、前記第3の操舵ユニットおよび前記第4の操舵ユニットの機能を無効化する設定状態である。前記第2の設定状態は、前記制御装置が、前記第1の操舵ユニットおよび前記第2の操舵ユニットの機能を無効化する一方、前記第3の操舵ユニットおよび前記第4の操舵ユニットの機能を有効化する設定状態である。
【0023】
この構成によれば、車載されるスイッチの操作を通じて、運転席と助手席とを切り替えることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の操舵装置によれば、構成を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】操舵装置の第1の実施の形態の構成図である。
【
図2】第1の実施の形態にかかる制御装置のブロック図である。
【
図3】第1の実施の形態にかかる制御装置が実行する目標ピニオン角の演算処理の手順を示すフローチャートである。
【
図4】第1の実施の形態にかかる最終傾角と目標ピニオン角との関係を示すグラフである。
【
図5】第2の実施の形態にかかる制御装置が実行する目標ピニオン角の演算処理の手順を示すフローチャートである。
【
図6】第3の実施の形態にかかる制御装置が実行する目標ピニオン角の演算処理の手順を示すフローチャートである。
【
図7】他の実施の形態にかかる車両室内の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<第1の実施の形態>
以下、操舵装置の第1の実施の形態を説明する。
<全体構成>
図1に示すように、操舵装置100は、ステアバイワイヤ式の操舵装置である。操舵装置100は、第1の操舵ユニット1、第2の操舵ユニット2、転舵ユニット3、および制御装置4を有している。第1の操舵ユニット1、および第2の操舵ユニット2は、車両の進行方向を変更する際、運転者により操作される機構部分である。転舵ユニット3は、車両の転舵輪5を転舵させるための機構部分である。第1の操舵ユニット1と転舵ユニット3との間、および第2の操舵ユニット2と転舵ユニット3との間の機械的な動力伝達は分離されている。制御装置4は、第1の操舵ユニット1、および第2の操舵ユニット2の操作状態に応じて、転舵ユニット3の動作を制御する。
【0027】
第1の操舵ユニット1は、第1の基台1A、および第1のレバー1Bを有している。第1の基台1Aは、第1のレバー1Bを傾動可能に支持する。第1のレバー1Bは、操作者により操作される第1の操作子である。操作者は、車両の運転者を含む。第1のレバー1Bは、たとえば、車両の進行方向に対する左右方向に傾動可能である。第1のレバー1Bは、運転席に座っている操作者が、たとえば、右手で操作できる位置に設けられる。
【0028】
第1のレバー1Bに操作力が加えられていないとき、第1のレバー1Bは中立位置に維持される。中立位置は、車両の直進状態に対応する第1のレバー1Bの位置である。操作者は、車両を進行方向に対して左へ旋回させる場合、第1のレバー1Bを中立位置から左へ傾ける。操作者は、車両を進行方向に対して右へ旋回させる場合、第1のレバー1Bを中立位置から右へ傾ける。第1のレバー1Bに加えられた操作力が解除されると、第1のレバー1Bは、原位置である中立位置に自動復帰する。
【0029】
第1の操舵ユニット1は、第1の傾斜角センサ1Cを有している。第1の傾斜角センサ1Cは、第1のレバー1Bの傾角である第1の傾角θ1を検出する。第1の傾斜角センサ1Cは、第1の傾角θ1に応じた電気信号を生成する。第1の傾角θ1は、第1のレバー1Bの中立位置を基準とする傾斜角であって、第1のレバー1Bの操作量を示す。第1のレバー1Bが中立位置に対して右へ傾いたとき、第1の傾角θ1は正の値となる。第1のレバー1Bが中立位置に対して左へ傾いたとき、第1の傾角θ1は負の値となる。ただし、第1のレバー1Bの傾動方向と、第1の傾角θ1の正負の符号との対応関係は、逆であってもよい。
【0030】
なお、第1の傾角θ1は、第1の操作子の操作量である第1の操作量に相当する。第1の傾斜角センサ1Cは、第1の操作量を検出する第1のセンサに相当する。
第2の操舵ユニット2は、第1の操舵ユニット1と同様の構成を有している。すなわち、第2の操舵ユニット2は、第2の基台2A、第2のレバー2B、および第2の傾斜角センサ2Cを有している。第2の基台2Aは、第2のレバー2Bを傾動可能に支持する。第2のレバー2Bは、操作者により操作される第2の操作子である、第2のレバー2Bは、たとえば、車両の進行方向に対する左右方向に傾動可能である。第2のレバー2Bは、運転席に座っている操作者が、たとえば、左手で操作できる位置に設けられる。第2の傾斜角センサ2Cは、第2のレバー2Bの傾角である第2の傾角θ2を検出する。第2の傾斜角センサ2Cは、第2の傾角θ2に応じた電気信号を生成する。第2の傾角θ2は、第2のレバー2Bの中立位置を基準とする傾斜角であって、第2のレバー2Bの操作量を示す。
【0031】
なお、第2の傾角θ2は、第2の操作子の操作量である第2の操作量に相当する。第2の傾斜角センサ2Cは、第2の操作量を検出する第2のセンサに相当する。
第1の操作子である第1のレバー1Bと、第2の操作子である第2のレバー2Bとは、互いに機械的に連動しない。第1のレバー1Bと第2のレバー2Bとは、互いに独立して操作可能である。本実施の形態では、操作者が車両の進行方向を変更する際、操作者が右手で第1のレバー1Bを把持するとともに、左手で第2のレバー2Bを把持した状態で、第1のレバー1Bおよび第2のレバー2Bを同じ方向へ操作することを想定している。
【0032】
第1の操舵ユニット1、および第2の操舵ユニット2は、たとえば電線であるハーネスを介して、制御装置4に接続される。第1の傾斜角センサ1Cにより検出される第1の傾角θ1、および第2の傾斜角センサ2Cにより検出される第2の傾角θ2は、たとえばハーネスを介して、制御装置4へ送信される。
【0033】
ちなみに、第1の操舵ユニット1は、無線通信によって、第1の傾角θ1を制御装置4へ送信するようにしてもよい。第2の操舵ユニット2は、無線通信によって、第2の傾角θ2を制御装置4へ送信するようにしてもよい。この場合、第1の操舵ユニット1、第2の操舵ユニット2および制御装置4には、それぞれ通信回路を設ける。通信回路は、無線信号を送信する送信回路、および、無線信号を受信する受信回路を含む。
【0034】
転舵ユニット3は、ピニオンシャフト21と、転舵シャフト22と、ハウジング23と、を有している。ハウジング23は、ピニオンシャフト21を回転可能に支持する。また、ハウジング23は、転舵シャフト22を往復動可能に収容する。ピニオンシャフト21は、転舵シャフト22に対して交わるように設けられている。ピニオンシャフト21のピニオン歯21aは、転舵シャフト22のラック歯22aと噛み合う。転舵シャフト22の両端には、ボールジョイントからなるラックエンド24を介して、タイロッド25が連結されている。タイロッド25の先端は、転舵輪5が組み付けられた図示しないナックルに連結される。
【0035】
転舵ユニット3は、転舵モータ31と、伝動機構32と、変換機構33とを備えている。転舵モータ31は、転舵シャフト22に付与する転舵力の発生源である。転舵力は、転舵輪5を転舵させるための力である。転舵モータ31は、たとえば三相のブラシレスモータである。伝動機構32は、たとえばベルト伝動機構である。伝動機構32は、転舵モータ31の回転を変換機構33に伝達する。変換機構33は、たとえばボールねじ機構である。変換機構33は、伝動機構32を介して伝達される回転を、転舵シャフト22の軸方向の運動に変換する。
【0036】
転舵シャフト22が軸方向に移動することによって、転舵輪5の転舵角θwが変更される。ピニオンシャフト21のピニオン歯21aは、転舵シャフト22のラック歯22aと噛み合っている。このため、ピニオンシャフト21は、転舵シャフト22の移動に連動して回転する。ピニオンシャフト21は、転舵輪5の転舵動作に連動して回転するシャフトである。転舵輪5は、車両の直進状態に対応する中立位置を基準として、車両の進行方向に対する左方向または右方向に転舵する。転舵角θwの符号は、たとえば、中立位置を基準とする左転舵方向では負であり、右転舵方向では正である。
【0037】
制御装置4は、転舵モータ31の動作を制御する。制御装置4は、つぎの3つの構成A1,A2,A3のうちいずれか一を含む処理回路を有している。
A1.ソフトウェアであるコンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)およびメモリを含む。
【0038】
A2.各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する特定用途向け集積回路(ASIC)などの1つ以上の専用のハードウェア回路。ASICは、CPUおよびメモリを含む。
【0039】
A3.構成A1,A2を組み合わせたハードウェア回路。
メモリは、コンピュータで読み取り可能とされた媒体であって、コンピュータに対する処理あるいは命令を記述したプログラムを記憶している。本実施の形態では、コンピュータは、CPUである。メモリは、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)を含む。CPUは、メモリに記憶されたプログラムを定められた演算周期で実行することによって各種の制御を実行する。
【0040】
制御装置4は、車載されるセンサの検出結果を取り込む。センサは、第1の傾斜角センサ1C、第2の傾斜角センサ2C、および回転角センサ41を含む。回転角センサ41は、転舵モータ31に設けられている。回転角センサ41は、転舵モータ31の回転角θbを検出する。制御装置4は、第1の傾斜角センサ1C、第2の傾斜角センサ2C、および回転角センサ41の検出結果に基づき、転舵モータ31の動作を制御する。制御装置4は、第1の操舵ユニット1および第2の操舵ユニット2の操作状態に応じて転舵輪5が転舵されるように、転舵モータ31に対する給電を制御する。
【0041】
制御装置4は、第1のレバー1Bおよび第2のレバー2Bが中立位置に位置しているとき、転舵輪5が転舵中立位置に維持されるように、転舵モータ31を制御する。転舵中立位置は、車両の直進状態に対応する転舵輪5の位置である。制御装置4は、第1のレバー1Bおよび第2のレバー2Bが中立位置を基準として左に傾いているとき、転舵輪5が車両の進行方向に対して左方向へ転舵するように、転舵モータ31を制御する。制御装置4は、第1のレバー1Bおよび第2のレバー2Bが中立位置を基準として右に傾いているとき、転舵輪5が車両の進行方向に対して右方向へ転舵するように、転舵モータ31を制御する。
【0042】
制御装置4は、第1のレバー1Bおよび第2のレバー2Bが中立位置を基準として左または右に傾いているとき、第1の傾斜角センサ1Cを通じて検出される第1の傾角θ1、および第2の傾斜角センサ2Cを通じて検出される第2の傾角θ2に応じた転舵角θwが実現されるように、転舵モータ31を制御する。
【0043】
<制御装置4の構成>
つぎに、制御装置4の構成について説明する。
図2に示すように、制御装置4は、ピニオン角演算部61、目標ピニオン角演算部62、ピニオン角フィードバック制御部63、および通電制御部64を有している。
【0044】
ピニオン角演算部61は、回転角センサ41を通じて検出される転舵モータ31の回転角θbに基づき、ピニオン角θpを演算する。ピニオン角θpは、ピニオンシャフト21の回転角である。転舵モータ31とピニオンシャフト21とは、伝動機構32、変換機構33、および転舵シャフト22を介して連動する。このため、転舵モータ31の回転角θbとピニオン角θpとの間には相関関係がある。この相関関係を利用して、転舵モータ31の回転角θbからピニオン角θpを求めることができる。ピニオンシャフト21は、転舵シャフト22と噛み合っている。このため、ピニオン角θpと転舵シャフト22の移動量との間にも相関関係がある。すなわち、ピニオン角θpは、転舵輪5の転舵角θwを反映する値である。回転角センサ41は、ピニオン角θpを検出するためのセンサでもある。
【0045】
目標ピニオン角演算部62は、第1の操舵ユニット1、および第2の操舵ユニット2の操作状態に応じて、目標ピニオン角θp
*を演算する。目標ピニオン角θp
*は、ピニオン角θpの目標値である。目標ピニオン角演算部62は、第1の傾斜角センサ1Cを通じて検出される第1の傾角θ1、および第2の傾斜角センサ2Cを通じて検出される第2の傾角θ2を取り込む。目標ピニオン角演算部62は、第1の傾角θ1、および第2の傾角θ2を使用して、目標ピニオン角θp
*を演算する。目標ピニオン角θp
*は、転舵輪5の転舵動作に連動して回転するシャフトの目標回転角に相当する。
【0046】
ピニオン角フィードバック制御部63は、目標ピニオン角演算部62により演算される目標ピニオン角θp
*、およびピニオン角演算部61により演算されるピニオン角θpを取り込む。ピニオン角フィードバック制御部63は、ピニオン角θpが目標ピニオン角θp
*に追従するように、ピニオン角θpのフィードバック制御を通じて、転舵トルク指令値Tp
*を演算する。転舵トルク指令値Tp
*は、転舵力の目標値である。
【0047】
通電制御部64は、転舵トルク指令値Tp
*に応じた電力を転舵モータ31へ供給する。具体的には、通電制御部64は、転舵トルク指令値Tp
*に基づき、転舵モータ31に対する電流指令値を演算する。通電制御部64は、転舵モータ31に対する給電経路に設けられた電流センサ65を通じて、給電経路に生じる電流Ibの値を検出する。電流Ibの値は、転舵モータ31に供給される電流の値である。通電制御部64は、電流指令値と電流Ibの値との偏差を求め、当該偏差を無くすように転舵モータ31に対する給電を制御する。これにより、転舵モータ31は転舵トルク指令値Tp
*に応じたトルクを発生する。
【0048】
<目標ピニオン角の演算処理手順>
つぎに、制御装置4が実行する目標ピニオン角θ
p
*の演算処理の手順を
図3のフローチャートに従って説明する。フローチャートの処理は、定められた演算周期で実行される。第1のレバー1Bと第2のレバー2Bとは、基本的には、同じ方向へ操作される。
【0049】
図3のフローチャートに示すように、制御装置4は、第1の傾斜角センサ1Cを通じて検出される第1の傾角θ1、および第2の傾斜角センサ2Cを通じて検出される第2の傾角θ2を取り込む(ステップS101)。第1の傾角θ1は、第1の傾斜角センサ1Cにより生成される電気信号である。第2の傾角θ2は、第2の傾斜角センサ2Cにより生成される電気信号である。
【0050】
つぎに、制御装置4は、第1の傾角θ1の絶対値と、第2の傾角θ2の絶対値とを比較する(ステップS102)。制御装置4は、第1の傾角θ1の絶対値が第2の傾角θ2の絶対値よりも大きいとき(ステップS102でYES)、第1の傾角θ1を最終傾角θfinとして設定する(ステップS103)。制御装置4は、第1の傾角θ1の絶対値が第2の傾角θ2の絶対値よりも大きくないとき(ステップS102でNO)、第2の傾角θ2を最終傾角θfinとして設定する(ステップS104)。最終傾角θfinは、目標ピニオン角θp
*を演算するために使用される最終的な傾角である。また、最終傾角θfinは、転舵モータ31の制御に使用される最終的な操作量である最終操作量に相当する。
【0051】
つぎに、制御装置4は、先のステップS103またはステップS104で設定される最終傾角θfinに基づき、目標ピニオン角θp
*を演算する(ステップS105)。制御装置4は、たとえばマップM1を使用して、目標ピニオン角θp
*を演算する。
【0052】
図4のグラフに示すように、マップM1は、最終傾角θ
finの絶対値と、目標ピニオン角θ
p
*の絶対値との関係を規定する二次元マップである。マップM1は、つぎのような特性を有している。すなわち、最終傾角θ
finの絶対値が増加するほど、目標ピニオン角θ
p
*の絶対値は、より大きな値となる。目標ピニオン角θ
p
*の絶対値は、最終傾角θ
finの絶対値の変化に対して、線形的に変化する。ただし、制御仕様によっては、目標ピニオン角θ
p
*の絶対値を、最終傾角θ
finの絶対値の変化に対して非線形的に変化するようにしてもよい。
【0053】
以上で、目標ピニオン角θp
*の演算処理が完了となる。
なお、先のステップS102~ステップS104の処理は、第1の傾角θ1と第2の傾角θ2とを調停するための処理である調停処理を構成する。調停処理は、第1のレバー1Bおよび第2のレバー2Bの操作状態に応じて、より適切な目標ピニオン角θp
*を演算する観点、あるいは転舵輪5をより適切に転舵させる観点に基づき実行される処理である。
【0054】
<2つのレバーの操作方向が異なる場合>
ちなみに、第1のレバー1Bおよび第2のレバー2Bが異なる方向に操作されることも考えられる。この場合、制御装置4は、先のステップS101で第1の傾角θ1および第2の傾角θ2を取り込んだ後、調停処理として、つぎの処理を実行するようにしてもよい。すなわち、制御装置4は、ステップS101で取り込まれる第1の傾角θ1および第2の傾角θ2の符号に基づき、第1のレバー1Bおよび第2のレバー2Bの操作方向を認識する。
【0055】
制御装置4は、第1の傾角θ1および第2の傾角θ2の符号が同じであるとき、第1のレバー1Bおよび第2のレバー2Bの操作方向が同じであると判定し、先のステップS102へ処理を移行する。制御装置4は、第1の傾角θ1および第2の傾角θ2の符号が異なるとき、第1のレバー1Bおよび第2のレバー2Bの操作方向が異なると判定する。
【0056】
制御装置4は、第1のレバー1Bおよび第2のレバー2Bの操作方向が異なると判定されるとき、操作方向を判定する直前の転舵輪5の転舵方向に対応する方向へ操作されている第1のレバー1Bまたは第2のレバー2Bの傾角を使用して、転舵モータ31を制御する。傾角は、第1の傾角θ1または第2の傾角θ2である。
【0057】
制御装置4は、第1の傾角θ1が、操作方向を判定する直前の目標ピニオン角θp
*と同じ符号を有する場合、第1の傾角θ1を最終傾角θfinとして設定し、ステップS105へ処理を移行する。また、制御装置4は、第2の傾角θ2が、操作方向を判定する直前の目標ピニオン角θp
*と同じ符号を有する場合、第2の傾角θ2を最終傾角θfinとして設定し、ステップS105へ処理を移行する。直前は、たとえば、一演算周期前である。目標ピニオン角θp
*の符号は、転舵輪5の転舵方向を反映する値である。
【0058】
<第1の実施の形態の効果>
第1の実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1-1)第1のレバー1Bおよび第2のレバー2Bは、互いに独立して操作可能である。すなわち、第1のレバー1Bと第2のレバー2Bとは、機械的に連結されておらず、互いに連動しないように構成される。このため、第1のレバー1Bと第2のレバー2Bとを、互いに機械的に連動させる場合と異なり、第1のレバー1Bと第2のレバー2Bとを連動させるための構成が不要である。したがって、操舵装置100を構成する部品の点数を削減すること、ひいては操舵装置100の構成を簡素化することが可能である。また、製品コストを低減することも可能である。車両におけるレイアウト上の制約も受けにくい。
【0059】
(1-2)第1のレバー1Bと第2のレバー2Bとは、互いに独立して操作することが可能である。このため、第1のレバー1Bの操作量である第1の傾角θ1と、第2のレバー2Bの操作量である第2の傾角θ2との間で調停することが好ましい場合がある。この点、本実施の形態によれば、調停処理の実行を通じて、転舵モータ31の制御に使用される最終的な操作量である最終傾角θfinが設定される。設定される最終傾角θfinに応じて、転舵モータ31の制御が実行されることにより、転舵輪5を適切に転舵させることができる。したがって、操舵装置100の構成を簡素化しつつも操作性を確保することができる。
【0060】
(1-3)制御装置4は、第1のレバー1Bおよび第2のレバー2Bの操作方向が同じである場合、調停処理として、第1の傾角θ1および第2の傾角θ2のうち絶対値の大きい方を最終傾角θfinとして設定する。車両を特定の旋回方向へ旋回させようとする操作者の意思が強いほど、特定の旋回方向に対応する方向へのレバーの操作量が多くなる。このため、最終傾角θfinに応じて、転舵モータ31の制御が実行されることにより、操作者の意図する転舵方向へ転舵輪5が転舵されやすくなる。したがって、操舵装置100の構成を簡素化しつつも、車両の操縦性を確保することができる。
【0061】
(1-4)制御装置4は、第1のレバー1Bおよび第2のレバー2Bの操作方向が異なる場合、調停処理として、つぎの処理を実行するように構成されることがある。すなわち、制御装置4は、第1のレバー1Bおよび第2のレバー2Bの操作方向が異なる場合、操作方向を判定する直前の転舵輪5の転舵方向に対応する方向へ操作されている第1のレバー1Bまたは第2のレバー2Bの傾角を最終傾角θfinとして設定する。このため、最終傾角θfinに応じて、転舵モータ31の制御が実行されることにより、転舵輪5が、意図せず、操舵方向が判定される直前の転舵方向と反対方向へ転舵されることを抑制することができる。したがって、車両の挙動を安定させることができる。
【0062】
なお、製品仕様などによっては、第1のレバー1Bおよび第2のレバー2Bの操作方向が異なる場合であれ、制御装置4は、第1の傾角θ1と第2の傾角θ2とのうち絶対値の大きい方を最終傾角θfinとして設定するようにしてもよい。レバーの傾角の絶対値が大きいほど、レバーの操作方向へ旋回する操作者の意思が強いともいえる。
【0063】
(1-5)制御装置4は、第1のレバー1Bおよび第2のレバー2Bの操作方向と、転舵輪5の転舵方向とが同じになるように、転舵モータ31を制御する。転舵輪5の転舵方向は、車両の進行方向に対する左右方向である。このため、車両の操作者は、車両を旋回させたい方向へ第1のレバー1Bおよび第2のレバー2Bを操作すればよい。すなわち、操作者は、直感的に車両の進行方向を変更することが可能となる。したがって、車両の操縦性を向上させることができる。
【0064】
(1-6)従来、単一のレバーを有する操舵装置も存在する。単一のレバーは、基本的には、片手で操作するものであって、反対の手に持ち替えることができない。このため、操作者は、肉体的に疲労しやすい。これに対し、本実施の形態の操舵装置100は、2つのレバーを有している。このため、操作者は、両手で第1のレバー1Bおよび第2のレバー2Bを把持した状態で、第1のレバー1Bおよび第2のレバー2Bを操作することもできるし、片手で第1のレバー1Bまたは第2のレバー2Bを操作することもできる。このため、単一のレバーを有する操舵装置に比べて、操作者の肉体的な疲労を軽減することができる。
【0065】
<第2の実施の形態>
つぎに、操舵装置の第2の実施の形態を説明する。本実施の形態は、基本的には、先の
図1および
図2に示される第1の実施の形態と同様の構成を有する。このため、第1の実施の形態と同様の部材および構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を割愛する。本実施の形態は、目標ピニオン角θ
p
*の演算処理手順の点で、第1の実施の形態と異なる。
【0066】
図5のフローチャートに示すように、制御装置4は、第1の傾斜角センサ1Cを通じて検出される第1の傾角θ1、および第2の傾斜角センサ2Cを通じて検出される第2の傾角θ2を取り込む(ステップS201)。
【0067】
つぎに、制御装置4は、第1の傾角θ1と第2の傾角θ2との平均値θaveを最終傾角θfinとして設定する(ステップS202)。制御装置4は、たとえば、次式(1)を使用して、平均値θaveを演算する。式(1)中の「/」は、除算を示す。
【0068】
θ
ave=(θ1+θ2)/2 …(1)
つぎに、制御装置4は、先のステップS202で設定される最終傾角θ
finに基づき、目標ピニオン角θ
p
*を演算する(ステップS203)。制御装置4は、たとえば先の
図4に示されるマップM1を使用して、目標ピニオン角θ
p
*を演算する。
【0069】
以上で、目標ピニオン角θp
*の演算処理が完了となる。
なお、先のステップS202の処理は、第1の傾角θ1と第2の傾角θ2とを調停するための調停処理を構成する。
【0070】
<第2の実施の形態の効果>
第2の実施の形態によれば、先の第1の実施の形態における(1-1),(1-2),(1-5),(1-6)と同様の効果に加え、以下の効果を得ることができる。
【0071】
(2-1)制御装置4は、調停処理として、第1の傾角θ1および第2の傾角θ2の平均値θaveを演算し、演算される平均値θaveを最終傾角θfinとして設定する。すなわち、最終傾角θfin、ひいては目標ピニオン角θp
*は、第1の傾角θ1と第2の傾角θ2の両方の値を考慮して演算される。このため、第1の傾角θ1と第2の傾角θ2とで値が異なる場合であれ、転舵輪5を適切に転舵させることができる。
【0072】
<第3の実施の形態>
つぎに、操舵装置の第3の実施の形態を説明する。本実施の形態は、基本的には、先の
図1および
図2に示される第1の実施の形態と同様の構成を有する。このため、第1の実施の形態と同様の部材および構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を割愛する。本実施の形態は、目標ピニオン角θ
p
*の演算処理手順の点で、第1の実施の形態と異なる。
【0073】
図6のフローチャートに示すように、制御装置4は、第1の傾斜角センサ1Cを通じて検出される第1の傾角θ1、および第2の傾斜角センサ2Cを通じて検出される第2の傾角θ2を取り込む(ステップS301)。
【0074】
つぎに、制御装置4は、第2の傾角θ2の絶対値が、「0」または「0」の近似する値であるかどうかを判定する(ステップS302)。具体的には、制御装置4は、次式(2)または次式(3)が成立するかどうかを判定する。
【0075】
│θ2│=0 …(2)
│θ2│≦θth …(3)
ただし、「θth」は、傾角しきい値であって、傾角の絶対値が「0」に近似する値であるかどうかを判定する際の基準である。傾角しきい値θthは、「0」の近傍値に設定される。
【0076】
制御装置4は、第2の傾角θ2の絶対値が、「0」または「0」の近似する値であると判定されるとき、すなわち先の式(2)または式(3)が成立するとき(ステップS302でYES)、ステップS303へ処理を移行する。
【0077】
制御装置4は、ステップS303において、第1の傾角θ1の絶対値が、「0」または「0」の近似する値であるかどうかを判定する。具体的には、制御装置4は、次式(4)または次式(5)が成立するかどうかを判定する。
【0078】
│θ1│=0 …(4)
│θ1│≦θth …(5)
制御装置4は、第1の傾角θ1の絶対値が、「0」または「0」の近似する値であると判定されるとき、すなわち先の式(4)または式(5)が成立するとき(ステップS303でYES)、最終傾角θfinの値を「0」に設定する(ステップS304)。
【0079】
制御装置4は、第1の傾角θ1の絶対値が、「0」または「0」の近似する値ではないと判定されるとき、すなわち先の式(4)または式(5)が成立しないとき(ステップS303でNO)、第1の傾角θ1を最終傾角θfinとして設定する(ステップS305)。
【0080】
また、制御装置4は、先のステップS302において、第2の傾角θ2の絶対値が、「0」または「0」の近似する値ではないと判定されるとき、すなわち先の式(2)または式(3)が成立しないとき(ステップS302でNO)、ステップS306へ処理を移行する。
【0081】
制御装置4は、ステップS306において、第1の傾角θ1の絶対値が、「0」または「0」の近似する値であるかどうかを判定する。具体的には、制御装置4は、先の式(4)または式(5)が成立するかどうかを判定する。
【0082】
制御装置4は、第1の傾角θ1の絶対値が、「0」または「0」の近似する値であると判定されるとき、すなわち先の式(4)または式(5)が成立するとき(ステップS306でYES)、第2の傾角θ2を最終傾角θfinとして設定する(ステップS307)。
【0083】
制御装置4は、第1の傾角θ1の絶対値が、「0」または「0」の近似する値ではないと判定されるとき、すなわち先の式(4)または式(5)が成立しないとき(ステップS306でNO)、第1の傾角θ1と第2の傾角θ2との平均値θaveを最終傾角θfinとして設定する(ステップS308)。制御装置4は、たとえば、先の式(1)を使用して、平均値θaveを演算する。
【0084】
制御装置4は、先のステップS304、ステップS305、ステップS307またはステップS308で設定される最終傾角θ
finに基づき、目標ピニオン角θ
p
*を演算する(ステップS309)。制御装置4は、先の
図4に示されるマップM1を使用して、目標ピニオン角θ
p
*を演算する。
【0085】
以上で、目標ピニオン角θp
*の演算処理が完了となる。
なお、先のステップS302~ステップS308の処理は、第1の傾角θ1と第2の傾角θ2とを調停するための調停処理を構成する。
【0086】
<第3の実施の形態の効果>
第3の実施の形態によれば、先の第1の実施の形態における(1-1),(1-2),(1-5),(1-6)と同様の効果に加え、以下の効果を得ることができる。
【0087】
(3-1)制御装置4は、第1の傾角θ1および第2の傾角θ2のうちいずれか一方の値が、「0」または「0」に近似する値であるとき、第1の傾角θ1および第2の傾角θ2のうちいずれか他方の値を最終傾角θfinとして設定する。すなわち、第1のレバー1Bおよび第2のレバー2Bのうちいずれか一方のみが操作されているとき、操作されている第1のレバー1Bまたは第2のレバー2Bの操作量に応じて、転舵輪5が転舵される。このため、操作者による片手運転に対して、適切に対応することができる。片手運転は、操作者が片手で第1のレバー1Bまたは第2のレバー2Bを操作することである。
【0088】
(3-2)制御装置4は、第1の傾角θ1および第2の傾角θ2の両方の値が、「0」または「0」に近似する値ではないとき、調停処理として、第1の傾角θ1および第2の傾角θ2の平均値θaveを最終傾角θfinとして設定する。すなわち、最終傾角θfin、ひいては目標ピニオン角θp
*は、第1の傾角θ1と第2の傾角θ2の両方の値を考慮して演算される。このため、第1の傾角θ1と第2の傾角θ2とで値が異なる場合であれ、転舵輪5を適切に転舵させることができる。
【0089】
<他の実施の形態>
なお、各実施の形態は、つぎのように変更して実施してもよい。
・第2および第3の実施の形態において、制御装置4は、調停処理として、第1の傾角θ1と第2の傾角θ2との平均値θ
aveを最終傾角θ
finとして設定するようにしたが(
図5のステップS202,
図6のステップS308)、つぎの処理を実行するようにしてもよい。すなわち、制御装置4は、先のステップS202またはステップS308において、車両の旋回方向、すなわち第1のレバー1Bおよび第2のレバー2Bの操作方向に応じて、最終傾角θ
finに占める第1の傾角θ1および第2の傾角θ2の割合を異ならせる。制御装置4は、第1の傾角θ1および第2の傾角θ2の符号に基づき、第1のレバー1Bおよび第2のレバー2Bの操作方向、ひいては車両の旋回方向を判定することが可能である。
【0090】
たとえば、車両の右旋回時においては、左手で把持される第2のレバー2Bの傾角である第2の傾角θ2の割合を、右手で把持される第1のレバー1Bの傾角である第1の傾角θ1の割合よりも大きくする。また、車両の左旋回時においては、右手で把持される第1のレバー1Bの傾角である第1の傾角θ1の割合を、左手で把持される第2のレバー2Bの傾角である第2の傾角θ2の割合よりも大きくする。これは、レバーの操作は、手の甲方向の操作よりも、手のひら方向の操作の方が、物理的に簡単で正確だからである。
【0091】
制御装置4は、車両の右旋回時、先のステップS202またはステップS308において、次式(6)を使用して、最終傾角θfinを演算する。式(6)中の「・」は、乗算を示す。
【0092】
θfin=θ1・R1+θ2・(1-R1) …(6)
ただし、「R1」は、車両の右旋回時における第1の傾角θ1の配分割合である。配分割合R1は、「0」~「1」の範囲において、たとえば「0.1」刻みで設定される。「1-R1」は、車両の右旋回時における第2の傾角θ2の配分割合である。
【0093】
車両の右旋回時において、第1の傾角θ1の配分割合R1は、たとえば、次式(7)を満たす値である。
0≦R1<0.5 …(7)
第1の傾角θ1の配分割合R1は、製品仕様などに応じて、あらかじめ設定される値である。第1の傾角θ1の配分割合R1の値が決まれば、第2の傾角θ2の配分割合「1-R1」の値も決まる。第1の傾角θ1の配分割合R1の値が、たとえば「0.4」であるとき、第2の傾角θ2の配分割合「1-R1」の値は「0.6」となる。
【0094】
制御装置4は、車両の左旋回時、先のステップS202またはステップS308において、次式(8)を使用して、最終傾角θfinを演算する。式(8)中の「・」は、乗算を示す。
【0095】
θfin=θ1・R2+θ2・(1-R2) …(8)
ただし、「R2」は、車両の左旋回時における第1の傾角θ1の配分割合である。配分割合R2は、「0」~「1」の範囲において、たとえば「0.1」刻みで設定される。「1-R2」は、車両の左旋回時における第2の傾角θ2の配分割合である。
【0096】
車両の左旋回時において、第1の傾角θ1の配分割合R2は、たとえば、次式(9)を満たす値である。
0.5<R2≦1.0 …(9)
第1の傾角θ1の配分割合R2は、製品仕様などに応じて、あらかじめ設定される値である。第1の傾角θ1の配分割合R2の値が決まれば、第2の傾角θ2の配分割合「1-R2」の値も決まる。第1の傾角θ1の配分割合R2の値が、たとえば「0.6」であるとき、第2の傾角θ2の配分割合「1-R2」の値は「0.4」となる。
【0097】
このようにすれば、手のひら方向に操作されるレバーの傾角の最終傾角θfinに対する配分割合が、手の甲方向に操作されるレバーの傾角の最終傾角θfinに対する配分割合よりも大きい値に設定される。このため、車両の操作者の意図する転舵方向へ転舵輪をより適切に転舵させることができる。
【0098】
・第1~第3の実施の形態において、
図4に示されるマップM1は、最終傾角θ
finの絶対値の変化に対して、目標ピニオン角θ
p
*の絶対値が非線形に変化するように設定してもよい。たとえば、最終傾角θ
finの絶対値が増加するほど、最終傾角θ
finの絶対値に対する目標ピニオン角θ
p
*の絶対値の変化の割合である傾きが徐々に小さくなるように、マップM1を設定してもよい。また、最終傾角θ
finの絶対値が増加するほど、最終傾角θ
finの絶対値に対する目標ピニオン角θ
p
*の絶対値の変化の割合である傾きが徐々に大きくなるように、マップM1を設定してもよい。
【0099】
・第1~第3の実施の形態において、第1のレバー1Bおよび第2のレバー2Bの操作方向は、車両の進行方向に直交する左右方向である必要はない。第1のレバー1Bおよび第2のレバー2Bの操作方向は、車両の進行方向に対して、斜状に交わる方向であってもよい。また、第1のレバー1Bおよび第2のレバー2Bの操作方向は、車両の進行方向に対する前後方向であってもよい。この場合、第1のレバー1Bおよび第2のレバー2Bの操作方向は、転舵輪5の転舵方向に対して、つぎのように関連付けてもよい。
【0100】
たとえば、右手で把持される第1のレバー1Bが中立位置を基準として前方へ傾いているとき、制御装置4は、転舵輪5を車両の進行方向に対して左方向へ転舵させる。第1のレバー1Bが中立位置を基準として後方へ傾いているとき、制御装置4は、転舵輪5を車両の進行方向に対して右方向へ転舵させる。また、左手で把持される第2のレバー2Bが中立位置を基準として前方へ傾いているとき、制御装置4は、転舵輪5を車両の進行方向に対して右方向へ転舵させる。第2のレバー2Bが中立位置を基準として後方へ傾いているとき、制御装置4は、転舵輪5を車両の進行方向に対して左方向へ転舵させる。
【0101】
・第1~第3の実施の形態において、運転席のみならず、助手席にも2つの操舵ユニットを設けてもよい。
図7に示すように、操舵装置100は、第1の操舵ユニット1および第2の操舵ユニット2に加えて、第3の操舵ユニット11、および第4の操舵ユニット12を有している。第3の操舵ユニット11、および第4の操舵ユニット12は、それぞれ第1の操舵ユニット1と同様の構成を有している。すなわち、図示は割愛するものの、第3の操舵ユニット11は、第3の基台、第3のレバー、および第3の傾斜角センサを有している。第3のレバーは、操作者により操作される第3の操作子である。第3のレバーは、助手席に座っている操作者が、たとえば、右手で操作できる位置に設けられる。第4の操舵ユニット12は、第4の基台、第4のレバー、および第4の傾斜角センサを有している。第4のレバーは、操作者により操作される第4の操作子である。第4のレバーは、助手席に座っている操作者が、たとえば、左手で操作できる位置に設けられる。
【0102】
この場合、車載されるスイッチ(SW)13の操作を通じて、運転席と助手席とを切り替えるようにしてもよい。すなわち、制御装置4は、スイッチ13により生成される電気信号に基づき、運転席の設定状態を第1の設定状態と第2の設定状態との間で切り替える。第1の設定状態は、制御装置4が、第1の操舵ユニット1および第2の操舵ユニット2の機能を有効化する一方、第3の操舵ユニットおよび第4の操舵ユニットの機能を無効化する設定状態である。第2の設定状態は、制御装置4が、第1の操舵ユニット1および第2の操舵ユニット2の機能を無効化する一方、第3の操舵ユニットおよび第4の操舵ユニットの機能を有効化する設定状態である。このようにすれば、スイッチ13の操作を通じて、運転席と助手席とを切り替えることができる。
【0103】
・第1~第3の実施の形態において、第1のレバー1Bおよび第2のレバー2Bに代えて、第1のダイヤルおよび第2のダイヤルを第1の操舵ユニット1および第2の操舵ユニット2の操作子として採用してもよい。ダイヤルは、中立位置を基準として、時計方向または反時計方向へ回転可能である。車両を進行方向に対して右へ旋回させる場合、ダイヤルを時計方向へ回転させる。車両を進行方向に対して左へ旋回させる場合、ダイヤルを反時計方向へ回転させる。この場合、第1の操舵ユニット1および第2の操舵ユニット2には、回転角センサを設ける。回転角センサは、ダイヤルの回転角を検出する。制御装置4は、回転角センサの検出結果に応じて、目標ピニオン角θp
*を演算する。たとえば、ダイヤルの中立位置を基準とする回転角が増加するにつれて、目標ピニオン角θp
*の絶対値が増加する。
【0104】
・第1~第3の実施の形態において、第1のレバー1Bおよび第2のレバー2Bに代えて、第1のスライダおよび第2のスライダを第1の操舵ユニット1および第2の操舵ユニット2の操作子として採用してもよい。スライダは、中立位置を基準として、たとえば車両の進行方向に対する左右方向へスライド操作することが可能である。車両を進行方向に対して右へ旋回させる場合、スライダを右方向へスライドさせる。車両を進行方向に対して左へ旋回させる場合、スライダを左方向へスライドさせる。この場合、第1の操舵ユニット1および第2の操舵ユニット2には、変位センサを設ける。変位センサは、スライダの中立位置を基準とする変位量を検出する。制御装置4は、変位センサの検出結果に応じて、目標ピニオン角θp
*を演算する。たとえば、スライダの中立位置を基準とする変位量が増加するにつれて、目標ピニオン角θp
*の絶対値が増加する。
【0105】
・第1~第3の実施の形態において、操舵装置100は、操作子の一つとして、ステアリングホイールを有していてもよい。第1の操舵ユニット1、第2の操舵ユニット2操舵、およびステアリングホイールが共存する場合、たとえば、運転席に設けられるスイッチの操作を通じて、第1の操舵ユニット1および第2の操舵ユニット2と、ステアリングホイールとの間で、使用する操作子を切り替える。この場合、操舵装置100は、ステアリングホイールに操舵反力を付与する反力機構を有していてもよい。
【0106】
・第1~第3の実施の形態において、転舵ユニット3は、左右の転舵輪5をそれぞれ独立して転舵させる、いわゆる左右独立型の転舵ユニットであってもよい。この場合、転舵ユニット3は、左の転舵輪5に対応する第1の転舵モータ、第1の伝動機構、および第1の変換機構を有する。また、転舵ユニット3は、右の転舵輪5に対応する第2の転舵モータ、第2の伝動機構、および第2の変換機構を有する。制御装置4は、第1の転舵モータおよび第2の転舵モータの制御を通じて、左右の転舵輪5を独立して転舵させる。この場合、制御装置4は、右手で把持される第1のレバー1Bの操作に応じて右の転舵輪5を転舵させるとともに、左手で把持される第2のレバー2Bの操作に応じて左の転舵輪5を転舵させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0107】
1…第1の操舵ユニット
1B…第1のレバー(第1の操作子)
1C…第1の傾斜角センサ(第1のセンサ)
2…第2の操舵ユニット
2B…第2のレバー(第2の操作子)
2C…第2の傾斜角センサ(第2のセンサ)
3…転舵ユニット
4…制御装置
5…転舵輪
11…第3の操舵ユニット
12…第4の操舵ユニット
13…スイッチ
31…転舵モータ(モータ)
100…操舵装置