(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162605
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】水中ラドン濃度測定装置及び水中ラドン濃度測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 1/00 20060101AFI20241114BHJP
G01N 33/18 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G01N1/00 101L
G01N1/00 101N
G01N33/18 106E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078290
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【弁理士】
【氏名又は名称】末富 孝典
(74)【代理人】
【識別番号】100168114
【弁理士】
【氏名又は名称】山中 生太
(74)【代理人】
【識別番号】100146916
【弁理士】
【氏名又は名称】廣石 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】北村 有迅
(72)【発明者】
【氏名】川端 訓代
(72)【発明者】
【氏名】角森 史昭
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA06
2G052AA38
2G052AB27
2G052AB28
2G052AC03
2G052AC04
2G052AD02
2G052AD06
2G052AD22
2G052AD26
2G052AD42
2G052AD46
2G052BA17
2G052CA35
2G052FC04
2G052FC11
2G052FD17
2G052GA23
2G052HA01
2G052HC04
2G052HC10
2G052HC23
2G052HC38
2G052JA09
2G052JA11
(57)【要約】
【課題】水中のラドン濃度を自動的かつ高精度に連続測定することができる水中ラドン濃度測定装置及び水中ラドン濃度測定方法を提供する。
【解決手段】水中ラドン濃度測定装置1Aにおいて、制御部20は、第1、第2、第3三方電磁弁11、12、13を制御してポンプ4を駆動し、ラドン濃度が許容レベル以下となるまで第2管路6内の気体を外部に排出した後、第1管路5内のラドン濃度を低下させる排出動作と、第1、第2、第3三方電磁弁11、12、13を制御し、第1管路5内を気液平衡状態とした後、ラドン計にラドン濃度を測定させる測定動作と、を繰り返し実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定水と気体とを収容する容器と、
気体のラドン濃度を測定するラドン計と、
外気を吸引するポンプと、
前記容器内の気体を循環させるループ状の第1管路と、
前記第1管路の途中の第1位置から分岐して第2位置で前記第1管路と合流し、前記ラドン計が挿入された第2管路と、
前記ポンプに吸引された外気を前記第1管路に流入させる第1状態と、前記容器から流出した気体を前記第1管路に流入させる第2状態と、に切り換え可能な第1三方電磁弁と、
前記第1位置で前記第1管路から前記第2管路に気体を送る第3状態と、前記第1位置で前記第1管路から前記第2位置に向けて前記第1管路を介して気体を送る第4状態と、に切り換え可能な第2三方電磁弁と、
前記第1位置と前記第2位置との間の前記第1管路を、外部に連通させる第5状態と、外部から遮蔽する第6状態と、に切り換え可能な第3三方電磁弁と、
前記ラドン計、前記ポンプ及び前記第1、第2、第3三方電磁弁を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第1、第2、第3三方電磁弁を前記第1、第3、第5状態として前記ポンプを駆動し、ラドン濃度が許容レベル以下となるまで前記第2管路内の気体を外部に排出した後、前記第1、第2、第3三方電磁弁を前記第1、第4、第6状態として前記ポンプを駆動し、前記第1管路のラドン濃度を低下させる排出動作と、
前記第1、第2、第3三方電磁弁を前記第2、第4、第6状態として前記第1管路内を気液平衡状態とした後、前記第1、第2、第3三方電磁弁を前記第2、第3、第6状態として前記ラドン計にラドン濃度を測定させる測定動作と、
を繰り返し実行させる、
水中ラドン濃度測定装置。
【請求項2】
前記ラドン計は、静電捕集式のラドン計であり、
前記ラドン計に流入する気体の除湿を行う除湿部を備える、
請求項1に記載の水中ラドン濃度測定装置。
【請求項3】
前記容器は、
収容する被測定水の量を一定量に維持可能に構成されている、
請求項1に記載の水中ラドン濃度測定装置。
【請求項4】
前記一定量の被測定水を取得して前記容器に注入する注入部を備え、
前記制御部は、一定のサンプリング間隔で、被測定水を前記容器に注入するように前記注入部を制御する、
請求項3に記載の水中ラドン濃度測定装置。
【請求項5】
前記ラドン計で測定されたラドン濃度に基づいて、被測定水中のラドン濃度を推定する推定部を備える、
請求項1に記載の水中ラドン濃度測定装置。
【請求項6】
被測定水を収容する容器を備えるラドン濃度測定装置を用いて、前記被測定水に含まれるラドンの濃度を測定する水中ラドン濃度測定方法であって、
前記ラドン濃度測定装置は、
一端が外気を吸引するポンプと前記容器とに切り換え可能に接続され、他端が前記容器と接続し、前記容器内の気体を循環させるループ状の第1管路と、
前記第1管路の途中の第1位置から分岐して前記第1管路と第2位置で合流し、ラドン計が挿入された第2管路と、を備え、
前記第1管路の一端を前記ポンプに連通し、前記第1位置で前記第1管路と前記第2管路との間を連通し、前記第1位置と前記第2位置との間を外部と連通した状態で前記ポンプを駆動し、ラドン濃度が許容レベル以下となるまで前記第2管路内の気体を外部に排出した後、前記第1管路の一端を前記ポンプに連通し、前記第1位置で前記第1管路と前記第2管路との間を遮蔽し、前記第1位置と前記第2位置との間を外部から遮蔽した状態で前記ポンプを駆動し、前記第1管路のラドン濃度を低下させる排出動作と、
前記第1管路の一端を前記容器に連通し、前記第1位置で前記第1管路と前記第2管路との間を遮蔽し、前記第1位置と前記第2位置との間を外部から遮蔽して前記第1管路内を気液平衡状態とした後、前記第1管路の一端を前記容器に連通し、前記第1位置で前記第1管路と前記第2管路との間を連通し、前記第1位置と前記第2位置との間を外部から遮蔽した状態で、前記ラドン計でラドン濃度を測定する測定動作と、
を、繰り返し実行する、
水中ラドン濃度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中ラドン濃度測定装置及び水中ラドン濃度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ラドンは、地中において岩石から水に溶解しやすく、定常的な地下水脈中のラドン濃度は、岩石と地下水の接触面積の増減を反映すると見做せる。このため、地下水脈中のラドン濃度は、地震をはじめとする地殻活動の指標として注目されている。温泉水中のラドン濃度を継続的に測定することにより、月1回の測定間隔で経時変化が著しい観測点があることがわかっている。このような観測点では、例えば数時間スケールでラドン濃度が変化する。
【0003】
水中のラドン濃度は、密閉された容器に温泉水を封入し、平衡状態となった気相部分のラドン濃度を静電捕集式のラドン計(既製品)で測定し、この測定結果から推定されるのが一般的である(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】川端訓代、北村有迅、冨安卓滋、「水中ラドン濃度推定に用いるポリエチレン保存容器のラドン拡散係数の推定」、分析化学、68(5)333-338
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この測定法では、1回の測定につき、人の手で被測定水を容器に入れ、振盪させて容器内を気液平衡状態にする必要がある。また、この測定法では、次の測定に移行する前に、ラドン計に残留しているラドンを含む気体を排出する手順が必要となる。
【0006】
本発明は、上記実情の下になされたものであり、水中のラドン濃度を自動的かつ高精度に連続測定することができる水中ラドン濃度測定装置及び水中ラドン濃度測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る水中ラドン濃度測定装置は、
被測定水と気体とを収容する容器と、
気体のラドン濃度を測定するラドン計と、
外気を吸引するポンプと、
前記容器内の気体を循環させるループ状の第1管路と、
前記第1管路の途中の第1位置から分岐して第2位置で前記第1管路と合流し、前記ラドン計が挿入された第2管路と、
前記ポンプに吸引された外気を前記第1管路に流入させる第1状態と、前記容器から流出した気体を前記第1管路に流入させる第2状態と、に切り換え可能な第1三方電磁弁と、
前記第1位置で前記第1管路から前記第2管路に気体を送る第3状態と、前記第1位置で前記第1管路から前記第2位置に向けて前記第1管路を介して気体を送る第4状態と、に切り換え可能な第2三方電磁弁と、
前記第1位置と前記第2位置との間の前記第1管路を、外部に連通させる第5状態と、外部から遮蔽する第6状態と、に切り換え可能な第3三方電磁弁と、
前記ラドン計、前記ポンプ及び前記第1、第2、第3三方電磁弁を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第1、第2、第3三方電磁弁を前記第1、第3、第5状態として前記ポンプを駆動し、ラドン濃度が許容レベル以下となるまで前記第2管路内の気体を外部に排出した後、前記第1、第2、第3三方電磁弁を前記第1、第4、第6状態として前記ポンプを駆動し、前記第1管路のラドン濃度を低下させる排出動作と、
前記第1、第2、第3三方電磁弁を前記第2、第4、第6状態として前記第1管路内を気液平衡状態とした後、前記第1、第2、第3三方電磁弁を前記第2、第3、第6状態として前記ラドン計にラドン濃度を測定させる測定動作と、
を繰り返し実行させる。
【0008】
前記ラドン計は、静電捕集式のラドン計であり、
前記ラドン計に流入する気体の除湿を行う除湿部を備える、
こととしてもよい。
【0009】
前記容器は、
収容する被測定水の量を一定量に維持可能に構成されている、
こととしてもよい。
【0010】
前記一定量の被測定水を取得して前記容器に注入する注入部を備え、
前記制御部は、一定のサンプリング間隔で、被測定水を前記容器に注入するように前記注入部を制御する、
こととしてもよい。
【0011】
前記ラドン計で測定されたラドン濃度に基づいて、被測定水中のラドン濃度を推定する推定部を備える、
こととしてもよい。
【0012】
本発明の第2の観点に係る水中ラドン濃度測定方法は、
被測定水を収容する容器を備えるラドン濃度測定装置を用いて、前記被測定水に含まれるラドンの濃度を測定する水中ラドン濃度測定方法であって、
前記ラドン濃度測定装置は、
一端が外気を吸引するポンプと前記容器とに切り換え可能に接続され、他端が前記容器と接続し、前記容器内の気体を循環させるループ状の第1管路と、
前記第1管路の途中の第1位置から分岐して前記第1管路と第2位置で合流し、ラドン計が挿入された第2管路と、を備え、
前記第1管路の一端を前記ポンプに連通し、前記第1位置で前記第1管路と前記第2管路との間を連通し、前記第1位置と前記第2位置との間を外部と連通した状態で前記ポンプを駆動し、ラドン濃度が許容レベル以下となるまで前記第2管路内の気体を外部に排出した後、前記第1管路の一端を前記ポンプに連通し、前記第1位置で前記第1管路と前記第2管路との間を遮蔽し、前記第1位置と前記第2位置との間を外部から遮蔽した状態で前記ポンプを駆動し、前記第1管路のラドン濃度を低下させる排出動作と、
前記第1管路の一端を前記容器に連通し、前記第1位置で前記第1管路と前記第2管路との間を遮蔽し、前記第1位置と前記第2位置との間を外部から遮蔽して前記第1管路内を気液平衡状態とした後、前記第1管路の一端を前記容器に連通し、前記第1位置で前記第1管路と前記第2管路との間を連通し、前記第1位置と前記第2位置との間を外部から遮蔽した状態で、前記ラドン計でラドン濃度を測定する測定動作と、
を、繰り返し実行する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ラドン計のラドン濃度が許容レベル以下となるまで容器とラドン計との間をつなげる管内の気体を外部に排出する排出動作と、容器及び管内を気液平衡状態とした後、ラドン計にラドン濃度を測定させ、その時点での被測定水中のラドン濃度を算出する測定動作とを繰り返し自動的に実行することができるので、水中のラドン濃度を自動的かつ高精度に連続測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る水中ラドン濃度測定装置の構成を示す模式図である。
【
図3】第1パージ及びブランク測定動作を示す模式図である。
【
図7】制御部による制御処理を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の実施の形態2に係る水中ラドン濃度測定装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。各図面においては、同一又は同等の部分に同一の符号を付す。
【0016】
実施の形態1
まず、本発明の実施の形態1について説明する。
【0017】
[水中ラドン濃度測定装置の構成]
図1に示すように、本実施の形態に係る水中ラドン濃度測定装置1Aは、被測定水のラドン(Rn)の濃度、すなわちラドン濃度を測定する。水中ラドン濃度測定装置1Aは、容器2と、ラドン計3と、ポンプ4と、第1管路5と、第2管路6と、を備える。
【0018】
[容器]
容器2は、被測定水と気体とを収容する。容器2の材質としては、ラドン濃度を測定する対象となる被測定水によって腐食しにくいものが用いられている。被測定水には、例えばくみ上げられた地下水、温泉水、湧き水がある。
【0019】
容器2には、注入管2aと、排出管2bと、が接続され、排出管2bを介してトラップ2cが接続されている。容器2には、注入管2aを介して、被測定水が継続的に注入される。排出管2bは、容器2の底面から容器2内に突き出しており。容器2の底面から排出管2bの上端までの高さはLとなっている。容器2内の被測定水の水位がLを超えた部分、すなわち溢水した被測定水が排出管2bからトラップ2cへ排出される。これにより、容器2内の被測定水の水位は、一定に保たれる。すなわち、容器2内の被測定水の量は、一定量に維持可能となる。また、トラップ2cにより、容器2内の気体が外気から遮断される。
【0020】
容器2内の被測定水の水面上には気体(空気)が充填されている。容器2内のラドン濃度は、温度等の外部気象条件の影響を受けにくくなっている。定常状態、すなわち気液平衡状態では、容器2内の気相部のラドン分圧は、定水位面下の液相部のラドン濃度に比例する。気体に含まれるラドン濃度を測定することにより、被測定水に含まれるラドン濃度を推定することができる。
【0021】
[ラドン計]
ラドン計3は、容器2内から送られた気体のラドン濃度を測定する。ラドン計3は、静電捕集式のラドン計である。気体に含まれるラドンがα崩壊することによって生じたポロニウム(218Po)は通常プラスに帯電している。そのため、電界のかかったチャンバー内ではポロニウムが半導体検出器上に捕集される。ポロニウムが放出するα線をカウントし、そのカウント数から親核種のラドン濃度が測定される。ラドン計3は、ポンプを内蔵している。このポンプが動作して、内部に気体が吸引され、吸引された気体のラドン濃度が測定される。なお、ポンプがなくても気体がラドン計3内に十分に行き渡る場合、ポンプを内蔵する必要はない。このラドン計3では、ラドン濃度とともに、気体の温度も測定することが可能である。
【0022】
[ポンプ]
ポンプ4は、吸入口から外気を吸引し、排出口から出力するポンプである。ポンプ4としては、例えばダイヤフラムポンプが用いられる。
【0023】
[第1管路]
第1管路5は、容器2内の気体を循環させるループ状の管路である。すなわち第1管路5は、容器2から流出した気体を送って再び容器2に戻すように設計されている。第1管路5の材質としては、容器2と同様に、被測定水によって腐食しにくいものが用いられている。
【0024】
[第2管路]
第2管路6は、第1管路5の途中の第1位置P1から分岐して延びている。また、第2管路6は、第2位置P2で第1管路5と合流している。第2管路6にはラドン計3が挿入される。第2管路6の材質としては、容器2と同様に、被測定水によって腐食しにくいものが用いられている。
【0025】
[三方電磁弁]
図1に示すように、水中ラドン濃度測定装置1Aは、第1三方電磁弁11と、第2三方電磁弁12と、第3三方電磁弁13と、を備える。第1三方電磁弁11、第2三方電磁弁12及び第3三方電磁弁13は、第1管路5に挿入されている。
【0026】
第1三方電磁弁11は、2つの流入口と、1つの流出口と、を備える。第1三方電磁弁11は、入力される指令信号に基づいて、流出口に連通する流入口を切り換える。一方の流入口は、容器2の流出口に接続され、他方の流入口は、ポンプ4の排出口に接続される。したがって、第1三方電磁弁11は、容器2内の気体又は外気を第1管路5に導入する。第1三方電磁弁11は、ポンプ4に吸引された外気を第1管路5に流入させる第1状態と、容器2から流出した気体を第1管路5に流入させる第2状態と、に切り換え可能である。
【0027】
第2三方電磁弁12は、第1管路5における第1位置P1に挿入されている。第2三方電磁弁12は、1つの流入口と、2つの流出口と、を備える。第2三方電磁弁12は、入力された指令信号に基づいて、流入口に連通する流出口を切り換える。流入口は、第1管路5の上流側に接続される。そして、一方の流出口は、第1管路5の下流側に接続され、他方の流出口は、第2管路6の一端に接続される。第2三方電磁弁12は、第1位置P1で第1管路5から第2管路6に気体を送る第3状態と、第1位置P1で第1管路5から第2位置P2に向けて第1管路5を介して気体を送る第4状態と、に切り換え可能である。
【0028】
第3三方電磁弁13は、第1ポート、第2ポート及び第3ポートを備える。第3三方電磁弁13は、入力された指令信号に基づいて、第2ポートに連通するポートを、第1ポートか第3ポートのいずれかに切り換える。第1ポートは第1管路5の上流側に連結され、第2ポートは第1管路5の下流側に接続される。第3三方電磁弁13の第3ポートは外部への排出口となっている。第3三方電磁弁13は、入力された指令信号に基づいて、第1位置P1と第2位置P2との間の第1管路5を、外部に連通させる第5状態と、外部から遮蔽する第6状態と、に切り換え可能である。
【0029】
[除湿部及び乾燥剤]
図1に示すように、水中ラドン濃度測定装置1Aは、除湿部7と、排出弁8と、乾燥剤9と、を備える。除湿部7は、第1管路5におけるラドン計3の上流に挿入されている。除湿部7は、ラドン計3に流入する気体の除湿を行う。排出弁8は、除湿部7で気体から分離された水分を排出する。乾燥剤9は、除湿部7で取り切れなかった水分を気体から取り除く。
【0030】
[制御部及び推定部]
図1に示すように、水中ラドン濃度測定装置1Aは、制御部20と、推定部21と、を備える。制御部20及び推定部21の少なくとも一方は、制御を行うため計時を行うタイマを有している。制御部20と推定部21とは一体となっていてもよい。
【0031】
制御部20は、予め定められた制御シーケンスに従って、ラドン計3、ポンプ4及び第1三方電磁弁11、第2三方電磁弁12、第3三方電磁弁13に指令信号を出力することにより、これらを統括制御するプログラマブル・ロジック・コントローラである。
【0032】
推定部21は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、外部記憶装置、通信インターフェイス等を有するコンピュータ上に構築される。CPUがメモリに格納されたプログラムを実行することにより、推定部21の機能が実現される。推定部21は、ラドン計3及び制御部20と通信インターフェイスを介して通信可能に接続されている。ラドン計3で測定されたラドン濃度が入力される。推定部21は、ラドン計3によって測定されたラドン濃度に基づいて、気相と液相の体積比とラドンの平衡定数を用いて水中ラドン濃度を推定する。
【0033】
制御部20は、一定のサンプリング間隔で、ラドン濃度の測定が行われるように、各構成要素を制御する。サンプリング間隔は、数時間、数日、数月間隔など、任意に設定することができる。なお、サンプリング間隔は一定でなくてもよい。ラドン濃度の測定を繰り返し行うようにすればよい。
【0034】
[スタンバイ状態]
測定していない状態では、水中ラドン濃度測定装置1Aは、いわゆるスタンバイ状態となっている。この状態では、
図2に示すように、制御部20は、ポンプ4を停止し、第1三方電磁弁11、第2三方電磁弁12、第3三方電磁弁13を第2状態、第3状態、第6状態となるよう各構成要素を制御する。この状態では、第1管路5及び第2管路6は、外部から閉じられた状態となる。
【0035】
制御部20は、1回のラドン濃度の測定において、管内の気体の排出動作と、気液平衡状態でのラドン濃度を測定する測定動作とを、ラドン計3、ポンプ4及び第1三方電磁弁11、第2三方電磁弁12、第3三方電磁弁13に実行させる。
【0036】
[排出動作]
排出動作では、2段階の制御動作が行われる。まず、第1段階の制御において、制御部20は、ラドン濃度が十分に低くなって、すなわち0近傍の許容レベル以下となるまで第2管路6内の残留気体を外部に排出する制御動作を行う。ここで、0近傍の許容レベルとは、ラドン計3のその後のラドン濃度の測定に影響を及ぼさず、実質的に0とみなすことができる許容値である。具体的には、
図3に示すように、制御部20は、第1三方電磁弁11、第2三方電磁弁12、第3三方電磁弁13を第1状態、第3状態、第5状態に設定して、例えばポンプ4を駆動するとともにラドン計3にラドン濃度を測定させるか、この状態をポンプ4の駆動により、ラドン濃度が0近傍の許容レベル以下となるのに十分な一定時間持続させる。なお、ここで、ラドン濃度を0近傍まで下げるのが困難である場合には、ラドン濃度が0より大きいレベルを許容レベルとしてもよい。
【0037】
ラドン濃度を確認する場合、ラドン計3は、測定されたラドン濃度を、推定部21に送る。推定部21は、ラドン計3で測定されたラドン濃度に基づいて、被測定水中のラドン濃度を推定する。推定部21は、算出されたラドン濃度を、制御部20に送る。制御部20は、送信されたラドン濃度が許容レベル以下となっているか否かを判定する。なお、この段階で行われる制御動作を、第1パージ及びブランク測定動作という。
【0038】
排出動作では、次の第2段階の制御において、制御部20は、ポンプ4を駆動して第1管路5を換気する制御動作を行う。この場合、
図4に示すように、制御部20は、第1三方電磁弁11、第2三方電磁弁12、第3三方電磁弁13を第1状態、第4状態、第6状態に設定してポンプ4を駆動し、第1管路5の換気を行う。この段階で行われる動作を、第2パージ動作という。第2パージ動作では、第1管路5に残留していたラドンは、外気の進入により、容器2の被測定水中に溶け込んだ後、外部に排出される。この結果、第1管路5内におけるラドン濃度が低下する。
【0039】
[測定動作]
測定動作では、2段階の制御動作が行われる。まず、第1段階の制御において、制御部20は、第1管路5内を気液平衡状態とする。この場合、
図5に示すように、制御部20は、第1三方電磁弁11、第2三方電磁弁12、第3三方電磁弁13を第2状態、第4状態、第6状態に設定し、ポンプ4を停止する。この段階で行われる動作を、平衡待ち動作という。
【0040】
次に、第2段階の制御において、制御部20は、ラドン計3にラドン濃度を測定させる。この場合、
図6に示すように、制御部20は、第1三方電磁弁11、第2三方電磁弁12、第3三方電磁弁13を第2状態、第3状態、第6状態に設定する。この段階で行われる動作を、サンプル測定動作という、
【0041】
ラドン計3は、測定されたラドン濃度を示す情報を、推定部21に送る。推定部21は、ラドン計3で測定されたラドン濃度に基づいて、被測定水中のラドン濃度を推定する。
【0042】
次に、本発明の実施の形態に係る水中ラドン濃度測定装置1Aの動作、すなわち水中ラドン濃度測定方法について説明する。ここでは、主として、制御部20による制御動作について説明する。
【0043】
図7に示すように、制御部20は、測定タイミングとなるまで待つ(ステップS1;No)。測定タイミングになると(ステップS1;Yes)、制御部20は、第1パージ及びブランク測定動作を行う(ステップS2)。この動作において、水中ラドン濃度測定装置1Aでは、
図3に示すように、ポンプ4から導入された外気が第1管路5から第2管路6に流れ込み、ラドン計3を経て第3三方電磁弁13から外部に排出されるようになる。この状態では、ラドン計3で測定されるラドン濃度は0に向かって低下する。制御部20は、推定部21から送信されるラドン濃度が0近傍の許容レベル以下となって、十分に低くなるまで待つ(ステップS3;No)。なお、ここで、制御部20は、ポンプ4を駆動してから、ラドン濃度が許容レベルとなるまで十分な時間が経過することをもってラドン濃度が十分に低くなったと判定するようにしてもよい。
【0044】
ラドン濃度が十分に低くなったと判定されると(ステップS3;Yes)、制御部20は、第2パージ動作を行う(ステップS4)。この状態で、制御部20は、時間T1が経過するまで待つ(ステップS5;No)。時間T1には、第1管路5内が換気され、第1管路5に残留するラドンの濃度が十分に低下する時間が設定される。
【0045】
時間T1が経過すると(ステップS5;Yes)、制御部20は、平衡待ち動作を行う(ステップS6)。この状態で、制御部20は、時間T2が経過するまで待つ(ステップS7;No)。時間T2には、容器2内が気液平衡状態となるまでの十分な時間が設定される。
【0046】
時間T2が経過すると(ステップS7;Yes)、制御部20は、サンプル測定動作を行う(ステップS8)。サンプル測定動作終了後、制御部20は、水中ラドン濃度測定装置1Aの状態をスタンバイ状態に戻す(ステップS9)。
【0047】
測定動作終了後、制御部20は、次の測定タイミングとなるまで待つ(ステップS1;No)。測定タイミングになると(ステップS1;Yes)、制御部20は、上述のようにして、第1パージ及びブランク測定動作、第2パージ動作、平衡待ち動作及びサンプル測定動作、スタンバイ状態への復帰を行う(ステップS2~ステップS9)。このようにして、水中ラドン濃度測定装置1Aでは、一定のサンプリング間隔で、第1パージ及びブランク測定と第2パージとを含む排出動作と、平衡待ち及びサンプル測定を含む測定動作と、が実行される。
【0048】
このようにして、今回のサンプリング時点における被測定水におけるラドン濃度の推定データを得ることができる。このような動作を一定のサンプリング間隔で行うことにより、被測定水におけるラドン濃度の時間変化を示すデータが得られる。ラドン濃度の時間変化により、被測定水が取得された地殻活動の様子を知ることができる。なお、一定のサンプリング間隔でなく、所定のサンプリング辞典で、排出動作と測定動作と、を繰り返し行うだけでもよい。
【0049】
なお、本実施の形態に係る水中ラドン濃度測定装置1Aは、排出動作を行った後に測定動作を行った。しかしながら、これには限られない。水中ラドン濃度測定装置1Aは、測定動作を行った後に、排出動作を行ってもよい。また、水中ラドン濃度測定装置1Aは、測定動作の前後に排出動作を行うようにしてもよい。
【0050】
以上詳細に説明したように、本実施の形態に係る水中ラドン濃度測定装置1Aによれば、ラドン計3で測定されるラドン濃度が許容レベル以下となるまで第2管路6内の気体を外部に排出した後、第1管路5を換気する排出動作と、第1管路5及び第2管路6内を気液平衡状態とした後、ラドン計3にラドン濃度を測定させ、その時点での被測定水中のラドン濃度を算出する測定動作とを一定のサンプリング間隔で繰り返し実行するので、水中のラドン濃度を自動的かつ高精度に連続測定することができる。
【0051】
また、本実施の形態に係る水中ラドン濃度測定装置1Aによれば、容器2とラドン計3とをつなぐ管路が、第1管路5と第2管路6とに区切られている。これにより、ラドン計3の周囲から残留気体を排出することができるうえ、その後に行われる気体に含まれるラドン濃度の測定を正確なものとすることができる。
【0052】
実施の形態2
次に、本発明の実施の形態2について説明する。本実施の形態に係る水中ラドン濃度測定装置1Bの構成は、
図8に示すように、容器2に一定量の被測定水を注入する注入部30を備える点が、水中ラドン濃度測定装置1Aと異なっている。
【0053】
制御部20は、測定を行う間隔、すなわち一定のサンプリング間隔で、被測定水を容器2に注入するように注入部30を制御する。これにより、測定タイミング毎に、容器2内の被測定水を入れ替えて、測定を行うことができる。このようにすれば、測定に用いられる被測定水の量を少なくすることができる。
【0054】
上記実施の形態に係る水中ラドン濃度測定装置1A、1Bを用いれば、被測定水のラドン温度の時間変化を検出することができる。例えば、ラドンは、岩石の破壊などによって濃度が変動することが知られているため、地下水のラドン濃度の急激な変化は、地殻変動に関わる可能性がある。そのような地殻変動の検出に、この装置を利用できる。この結果、最終的には地震予知などにこの装置を役立てることができると考えられる。
【0055】
また、上記実施の形態に係る水中ラドン濃度測定装置1A、1Bを用いれば、温泉水のラドン濃度を長時間測定し、ラドン濃度の平均値に基づいて、その温泉が療養泉に指定可能であるか否かを正確に判定することができる。
【0056】
また、欧州など建材として石材を多用する地域では、その石材に含まれるラジウムが放射壊変して生じるラドンによる被ばくが問題となっている。上記実施の形態に係る水中ラドン濃度測定装置1A、1Bは、そのような建物内におけるラドン濃度の測定に用いることもできる。
【0057】
上記実施の形態に係る水中ラドン濃度測定装置1A、1Bを用いれば、ラドン濃度を手動でなく自動的に測定することができるので、サンプリング間隔を短くすることができる。これにより、ラドン濃度の正確な変化を把握することができるうえ、ラドン濃度の急激な変化をいち早く検出することができる。
【0058】
この発明は、この発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明の範囲を限定するものではない。すなわち、この発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、水中のラドン濃度を連続測定するのに適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1A、1B 水中ラドン濃度測定装置、2 容器、2a 注入管、2b 排出管、2c トラップ、3 ラドン計、4 ポンプ、5 第1管路、6 第2管路、7 除湿部、8 排出弁、9 乾燥剤、11 第1三方電磁弁、12 第2三方電磁弁、13 第3三方電磁弁、20 制御部、21 推定部、30 注入部、P1 第1位置、P2 第2位置