(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162606
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20241114BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G02B27/01
G02F1/13 505
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078291
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】笠原 毅
【テーマコード(参考)】
2H088
2H199
【Fターム(参考)】
2H088EA33
2H088EA45
2H088GA10
2H088JA04
2H088MA20
2H199DA03
2H199DA15
2H199DA17
2H199DA30
2H199DA36
2H199DA46
(57)【要約】
【課題】シンプルな構成でウインドシールドの外側及び内側の両方の位置に視認者に対する所望の表示を行えるヘッドアップディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】プロジェクター11と、実像スクリーン121及び虚像スクリーン122からなるスクリーン機構12と、反射部13と、制御部14とを備え、実像スクリーン121は焦点面Fよりもプロジェクター11側に配置され、虚像スクリーン122は焦点面Fよりも反射部13側に配置され、制御部14は、実像スクリーン121を拡散状態にすると共に虚像スクリーン122を透過状態にする実像視認モードと、実像スクリーン121を透過状態にすると共に虚像スクリーン122を拡散状態にする虚像視認モードとを切り替える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出口を有し、前記射出口から表示光を透光部材に向けて射出することで前記表示光が表す表示像の虚像を視認させるヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記表示像となる光を出射する光源を含む表示器と、
光を拡散させる拡散状態及び光を透過させる透過状態に切り替え可能に構成された第1スクリーン及び第2スクリーンを含み、前記光源が出射した光に基づき前記表示像を表示するスクリーン機構と、
前記スクリーン機構に表示された前記表示像を表す光を前記透光部材に向けて反射させる反射部と、
前記第1スクリーン及び前記第2スクリーンを前記拡散状態又は前記透過状態にそれぞれ制御する制御部と、
を備え、
前記第1スクリーンは、前記透光部材及び前記反射部を含む結像光学系の光学焦点よりも前記光源側に配置され、
前記第2スクリーンは、前記光学焦点よりも前記射出口側に配置され、
前記制御部は、
前記第1スクリーンを前記拡散状態に制御すると共に前記第2スクリーンを前記透過状態に制御する第1制御モード、及び、前記第1スクリーンを前記透過状態に制御すると共に前記第2スクリーンを前記拡散状態に制御する第2制御モード、のいずれか一方の制御モードにより前記第1スクリーン及び前記第2スクリーンを制御する
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記第1スクリーンと前記光学焦点との間の光軸に沿った距離は、前記第2スクリーンと前記光学焦点との間の光軸に沿った距離よりも長い
ことを特徴とする請求項1記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
前記第1スクリーンの面積は、前記第2スクリーンの面積よりも小さい
ことを特徴とする請求項1記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
前記制御部は、
操作部での操作に応じた第1信号の入力に基づき、前記第1スクリーン及び前記第2スクリーンに対する制御を、前記第1制御モード及び前記第2制御モードのいずれか一方に切り替える
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記表示器における前記表示像を表す光の切替信号に同期した第2信号に基づき、前記第1スクリーン及び前記第2スクリーンに対する制御を、前記第1制御モード及び前記第2制御モードのいずれか一方に切り替える
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視認者に対して所望の表示を行うヘッドアップディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載のヘッドアップディスプレイ装置が知られている。このヘッドアップディスプレイ装置は、プロジェクターから投影された映像光をスクリーンで拡散し、この拡散された映像光を拡大光学系で拡大し、ウインドシールドで結像させて視認者が虚像として観察できるように表示するものである。
【0003】
また、例えば特許文献2に記載のヘッドアップディスプレイは、表示器からの光によりスクリーンに表示された表示像を透光部材へと反射させる構成において、結像光学系の光学焦点とスクリーンとの間の前後位置関係を変更することで、虚像が透光部材の外に視認される状態と、実像が透光部材の内側に視認される状態と、の表示切替を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-80860号公報
【特許文献2】特開2011-70074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のヘッドアップディスプレイ装置は、映像光をウインドシールドの外側に位置するように視認させるものであり、視認者からすると情報を参照する際のバリエーションが少なく、面白みに欠けるといった問題があった。加えて、スクリーンと拡大光学系の配置関係により、視認される映像光の奥行方向の表示距離が一義的に決まるため、映像光はウインドシールドの外側又は内側のいずれか一方にしか表示することができないという問題があった。
【0006】
また、特許文献2に記載のヘッドアップディスプレイは、結像光学系の光学焦点とスクリーンとの間の前後位置関係を変更するための機械的な移動機構を有する必要があることから、装置構成が複雑化してしまうという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、シンプルな構成でウインドシールドの外側及び内側の両方の位置に視認者に対する所望の表示を行えるヘッドアップディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、射出口15を有し、前記射出口15から表示光Lを透光部材WSに向けて射出することで前記表示光Lが表す表示像の虚像V1を視認させるヘッドアップディスプレイ装置1であって、前記表示像となる光を出射する光源を含む表示器11と、光を拡散させる拡散状態及び光を透過させる透過状態に切り替え可能に構成された第1スクリーン121及び第2スクリーン122を含み、前記光源が出射した光に基づき前記表示像を表示するスクリーン機構12と、前記スクリーン機構12に表示された前記表示像を表す光を前記透光部材WSに向けて反射させる反射部13と、前記第1スクリーン121及び前記第2スクリーン122を前記拡散状態又は前記透過状態にそれぞれ制御する制御部14と、を備え、前記第1スクリーン121は、前記透光部材WS及び前記反射部13を含む結像光学系の光学焦点Fよりも前記光源側に配置され、前記第2スクリーン122は、前記光学焦点Fよりも前記射出口15側に配置され、前記制御部14は、前記第1スクリーン121を前記拡散状態に制御すると共に前記第2スクリーン122を前記透過状態に制御する第1制御モード、及び、前記第1スクリーン121を前記透過状態に制御すると共に前記第2スクリーン122を前記拡散状態に制御する第2制御モードのいずれか一方の制御モードにより前記第1スクリーン121及び前記第2スクリーン122を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シンプルな装置構成で、ウインドシールドの外側及び内側の両方の位置に所望の情報をバリエーション豊かに表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るHUD装置の構成を示す図。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係るHUD装置においてスクリーン機構を制御した場合のスクリーン機構の状態と表示される表示像との関係を示すタイミングチャート。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係るHUD装置において実像スクリーン及び虚像スクリーンの配置位置を調整した場合の一例を示す図。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係るHUD装置において実像スクリーン及び虚像スクリーンのサイズを調整した場合の一例を示す図。
【
図6】本発明の第3の実施形態に係るHUD装置においてスクリーン機構を制御した場合のスクリーン機構の状態と表示される表示像との関係を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本発明の第1の実施形態)
本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ(Head-Up Display)装置(以下、HUD装置という)について
図1ないし
図3を参照して説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係るHUD装置の構成を示す図である。
図1において、HUD装置1は、車両CのウインドシールドWS(透光部材)の下方(例えばインストゥルメントパネルの内部)に配置されており、カバーガラス15(射出口)から表示光LをウインドシールドWSに向けて射出することで、表示光Lが表す表示像の虚像V1や実像V2を車両C内の乗員の視点Eから視認できるように表示する。
【0013】
HUD装置1は、LED等の光源から表示像となる表示光Lを生成して射出するプロジェクター11(表示器)と、表示光Lを拡散させる拡散状態及び表示光Lを透過させる透過状態に切り替え可能な実像スクリーン121(第1スクリーン)及び虚像スクリーン122(第2スクリーン)を含み、表示光Lに基づいた表示像を表示するスクリーン機構12と、スクリーン機構12に表示された表示像を表す表示光Lをカバーガラス15を通してウインドシールドWSに向けて反射させる平面鏡131及び凹面鏡132を含む反射部13と、スクリーン機構12の拡散状態及び透過状態を制御する制御部14と、上記プロジェクター11、スクリーン機構12、反射部13及び制御部14を内部に収納する筐体16とを備える。ここで、プロジェクター11は表示器の一例、実像スクリーン121は第1スクリーンの一例、虚像スクリーン122は第2スクリーンの一例、カバーガラス15は射出口の一例、ウインドシールドWSは透光部材の一例である。
【0014】
虚像V1と実像V2は、後述するように制御部14によるスクリーン機構12の制御に応じて切り替えて表示される。具体的には、ウインドシールドWS及び反射部13を含む結像光学系の光学焦点である焦点面Fよりも前段側(光源があるプロジェクター11側)に配置されている実像スクリーン121に投影された表示像は、反射部13によって実像V2として結像し視点Eから視認される。焦点面Fよりも後段側(射出口であるカバーガラス15側)に配置されている虚像スクリーン122に投影された表示像は、反射部13によって虚像V1として結像し視点Eから視認される。
【0015】
虚像V1は、例えば車両Cの速度やエンジン回転数と言った車両情報や、ターンバイターンや地図などの経路案内表示、ブラインドスポットインジケータや制限速度超過警告などの警告表示など、乗員へ注意喚起する必要性が高い情報を車外(すなわち乗員から見てウインドシールドWSの向こう側)に表示する。また、実像V2は、例えば乗員をサポートするアシスタントやエージェント、それらを示すキャラクターなどの情報を車内(すなわち乗員から見てウインドシールドWSの手前側)に表示する。これらの表示により、視点移動及び眼の焦点距離調整の必要が低減された運転環境が提供されると共に、バリエーション豊かな表示態様を実現することができる。虚像V1や実像V2にはこれらの情報を示す文字やアイコンの他、背景部分も含まれており、乗員からの平面視ではこれは例えば略矩形状をなしている。
【0016】
プロジェクター11は、表示像となる表示光Lを出射する光源を含む表示器であり、公知の技術を用いたもので構成されてもよい。具体的には、例えば赤色、青色、緑色の光をそれぞれ出力可能な複数のLEDからなる光源と、特定の波長の光を反射しその他の波長の光を透過するダイクロイックミラーを含む複数のレンズからなるバックライト光学系と、DMD(Digital Mirror Device)に代表される光変調デバイスと、入射する光を拡大して後述するスクリーン機構12に表示光Lとして出射するための複数のレンズからなる投射光学系とを備える。
【0017】
スクリーン機構12は、例えば電圧により、光を拡散させる拡散状態及び光を透過させる透過状態に切り替え可能に制御できるように構成された調光フィルムからなり、実像スクリーン121及び虚像スクリーン122を有する。
図2は、調光フィルムの構成の一例を示す模式図である。実像スクリーン121及び虚像スクリーン122として構成される調光フィルムは、例えば、対向して配設される一対の平板状の透明基板20a,20bのそれぞれの内側対向面に一対の透明電極21a,21bを有し、当該透明電極21a,21bの内側対向面に、電界の有無に応じて配向性を有する液晶分子22を内在する高分子層23を積層する構造である。
【0018】
図2(A)に示すように、透明電極21a,21bに電圧が印加されていない場合は、液晶分子22の配向がランダムになることで調光フィルムが拡散状態(白濁状態)となり、表示光Lが拡散する。
図2(B)に示すように、透明電極21a,21bに電圧が印加されている場合は、液晶分子22の配向が電極面に対して垂直方向に揃うことで調光フィルムが透明状態となり、表示光Lが透過する。実像スクリーン121及び虚像スクリーン122のそれぞれの透明電極21a,21bに印加する電圧の制御については詳細を後述する。
【0019】
なお、調光フィルムの光学特性として、例えば、全入射光に対して拡散せずに透過する光の割合を示す平行透過率は、拡散状態では1%程度、透過状態では80%程度とし、全入射光に対する拡散光の割合(白濁具合)を示すヘイズ値は、拡散状態では90%程度、透過状態では5%程度とするのが望ましい。
【0020】
反射部13は、スクリーン機構12に表示された表示像を表す表示光LをウインドシールドWSに向けて反射させる複数の反射鏡からなり、平面鏡131と凹面鏡132とを有する。平面鏡131は、スクリーン機構12に表示される表示像を表す表示光Lの光路を折り返して凹面鏡132に反射させる。この折り返しにより筐体16の体積を低減することができる。凹面鏡132は、自由曲面形状の反射鏡であり、平面鏡131で反射された表示光Lによる表示像を拡大し、カバーガラス15を通してウインドシールドWSへ投射する。平面鏡131、凹面鏡132及びウインドシールドWSは拡大光学系を構成し、それらの光学的配置によって光軸上に位置が決定される焦点面Fを有する。実像スクリーン121は焦点面Fに対してプロジェクター11側に配置され、虚像スクリーン122は焦点面Fに対して平面鏡131側に配置される。
【0021】
制御部14は、
図2に示したように、スイッチを切り替えることで実像スクリーン121及び虚像スクリーン122を拡散状態又は透過状態にそれぞれ制御する。具体的には、実像スクリーン121を拡散状態に制御すると共に虚像スクリーン122を透過状態に制御する実像視認モード(第1制御モード)、及び、実像スクリーン121を透過状態に制御すると共に虚像スクリーン122を拡散状態に制御する虚像視認モード(第2制御モード)のいずれか一方の制御モードにより実像スクリーン121及び虚像スクリーン122を制御する。ここで、実像視認モードは第1制御モードの一例、虚像視認モードは第2制御モードの一例である。
【0022】
実像視認モードの場合、プロジェクター11の表示光Lは実像スクリーン121上に投影されると共に虚像スクリーン122を透過し、平面鏡131、凹面鏡132及びウインドシールドWSからなる拡大光学系によって実像V2として結像し、視点Eから観察される。虚像視認モードの場合、プロジェクター11の表示光Lは実像スクリーン121を透過すると共に虚像スクリーン122上に投影され、上記の拡大光学系によって虚像V1として結像し、視点Eから観察される。
【0023】
図3は、本実施形態に係るHUD装置においてスクリーン機構12を制御した場合のスクリーン機構12の状態と表示される表示像との関係を示すタイミングチャートである。
図3(A)は実像スクリーン121の挙動を示す波形、
図3(B)は虚像スクリーン122の挙動を示す波形、
図3(C)は虚像V1/実像V2の表示状態を示す波形である。
図3(A)及び
図3(B)は、横軸が時間、縦軸が拡散度合いを示す波形であり、パルス波形がONの場合は拡散状態であることを示し、パルス波形がOFFの場合は透過状態であることを示している。また
図3(C)は、横軸が時間、縦軸が結像状態を示す波形であり、パルス波形がONの場合は虚像V1又は実像V2のいずれかが結像(表示)されている状態であることを示し、パルス波形がOFFの場合は虚像V1及び実像V2のいずれも結像(表示)されていない状態であることを示している。
【0024】
図3に示すように、実像視認モードの場合、すなわち虚像スクリーン122を構成する調光フィルムの透明電極21a,21bには電圧を印加し、実像スクリーン121を構成する調光フィルムの透明電極21a,21bには電圧を印加しないようにスイッチ制御した場合は、実像V2が表示像として結像される。虚像視認モードの場合、すなわち実像スクリーン121を構成する調光フィルムの透明電極21a,21bには電圧を印加し、虚像スクリーン122を構成する調光フィルムの透明電極21a,21bには電圧を印加しないようにスイッチ制御した場合は、虚像V1が表示像として結像される。
【0025】
なお、制御部14は、
図2で示したスクリーン機構12におけるスイッチングによる実像視認モード/虚像視認モードの切り替えを、車両Cの乗員が操作部(図示しない)に対して行った操作に応じた操作信号(第1信号)の入力に基づいて行うようにしてもよい。また、これ以外にも、上記実像視認モード/虚像視認モードの切り替えを、予め設定された区切られた期間ごとに行ってもよいし、車両Cの駆動状態に関する信号(例えば、アクセル踏み込み中(低速前進、中速前進、高速前進、後退)、ブレーキ踏み込み中、サイドブレーキ作動中、ウインカー作動中、直進中、ワイパー作動中、ハザードランプ点灯中等の信号)に応じて行ってもよい。ここで、操作信号は第1信号の一例である。
【0026】
さらに、制御部14は、プロジェクター11が出射する表示光Lが表す表示像の内容に応じて実像視認モードと虚像視認モードとを切り替えるようにしてもよい。表示像の表示内容に応じて視認モードを切り替える場合は、制御部14とプロジェクター11とを協働させて、表示内容に応じた視認モードの切り替えを行う。例えば、プロジェクター11から出射される表示像を表す表示光Lの切替信号に同期した同期信号(第2信号)に基づいて、制御部14が実像視認モードと虚像視認モードとを切り替える。そうすることで、表示像の表示内容に対応した虚像V1又は実像V2の切り替えを実現することが可能となる。ここで、同期信号は第2信号の一例である。
【0027】
このように、焦点面Fに対して実像スクリーン121及び虚像スクリーン122を上述したように配置し、それぞれのスクリーンの拡散状態/透過状態を制御することで、乗員の視点Eから見た奥行方向に関してウインドシールドWSの手前側に実像V2、奥側に虚像V1を観察することが可能となり、バリエーションに富んだ表示を実現することができる。
【0028】
また、実像視認モード/虚像視認モードの切り替えを車両Cの乗員の操作や表示内容に応じて制御することで、乗員にとって適正なタイミング及び表示内容で虚像V1と実像V2とを切り替えて視認することが可能となる。
【0029】
(本発明の第2の実施形態)
本実施形態に係るHUD装置について
図4及び
図5を参照して説明する。本実施形態に係るHUD装置1は、上記第1の実施形態において説明したスクリーン機構12における実像スクリーン121及び虚像スクリーン122の配置位置やサイズを調整することで、乗員にとって適正な視認を可能とするものである。なお、本実施形態において第1の実施形態と重複する説明は省略する。
【0030】
図4は、本実施形態に係るHUD装置において実像スクリーン121及び虚像スクリーン122の配置位置を調整した場合の一例を示す図である。ここでは、HUD装置1の一部の構成のみを図示している。実像V2は、実像スクリーン121が焦点面Fに近づくほどウインドシールドWSから離れて乗員の視点Eに近づく位置(乗員の手前側の位置)に結像する。同様に虚像V1は、虚像スクリーン122が焦点面Fに近づくほどウインドシールドWSから乗員の視点Eと離れる位置(乗員の奥側の位置)に結像する。つまり、実像V2は、実像スクリーン121の配置位置によっては乗員の視点Eに近い位置に結像してしまう可能性があり、その場合に乗員が視覚的な疲労を起こす可能性がある。このような可能性を防止するために、
図4に示すように、実像スクリーン121と焦点面Fとの光軸に沿った距離をL1とし、虚像スクリーン122と焦点面Fとの光軸に沿った距離をL2とした場合に、L1>L2となるように実像スクリーン121及び虚像スクリーン122を配置する。
【0031】
こうすることで、乗員の視点Eから見て実像V2の結像位置が近づきすぎることがなく適度な位置で実像V2を視認することができ、視覚的な疲労が生じてしまうことを防止することができる。
【0032】
図5は、本実施形態に係るHUD装置において実像スクリーン121及び虚像スクリーン122のサイズを調整した場合の一例を示す図である。上述したように、虚像V1及び実像V2を切り替えて視認するためには、実像スクリーン121及び虚像スクリーン122の配置関係が重要であるが、この配置関係により、実像スクリーン121は必然的に虚像スクリーン122よりもプロジェクター11に近い位置に配置され、乗員にとって実像V2が必要以上に大きく視認されてしまう可能性がある。そのため、
図5に示すように、実像スクリーン121のサイズ(面積)をS1とし、虚像スクリーン122のサイズ(面積)をS2とした場合に、S1<S2を満たす実像スクリーン121及び虚像スクリーン122を配置する。
【0033】
こうすることで、乗員の視点Eから見て実像V2が必要以上に大きく表示されることを防止して虚像V1及び実像V2の大きさを適正に視認することができると共に、筐体16の体積を低減することができる。
【0034】
なお、
図4においては実像スクリーン121のサイズS1と虚像スクリーン122のサイズS2とを同じサイズとして記載しているが、
図5に示したようにそれぞれのスクリーンのサイズがS1<S2を満たすようにしてもよい。また、
図5においては実像スクリーン121と焦点面Fとの距離L1と、虚像スクリーン122と焦点面Fとの距離L2とが同じ距離として記載しているが、
図4に示したようにそれぞれの距離がL1>L2を満たすようにしてもよい。すなわち、L1、L2、S1及びS2の各パラメータを総合的に細かく設定することで、乗員にとって最適な結像を視認できるように調整することが可能となる。
【0035】
(本発明の第3の実施形態)
本実施形態に係るHUD装置について
図6を参照して説明する。本実施形態に係るHUD装置1は、上記各実施形態において説明したスクリーン機構12における実像スクリーン121及び虚像スクリーン122の拡散状態/透過状態の制御を時分割することで、乗員の残像効果を利用して虚像V1及び実像V2を同時に視認させるものである。なお、本実施形態において上記各実施形態と重複する説明は省略する。
【0036】
図6は、本実施形態に係るHUD装置においてスクリーン機構12を制御した場合のスクリーン機構12の状態と表示される表示像との関係を示すタイミングチャートである。
図6(A)は実像スクリーン121の挙動を示す波形、
図6(B)は虚像スクリーン122の挙動を示す波形、
図6(C)は虚像V1/実像V2の表示状態示す波形である。
【0037】
上記で説明した
図3の場合は、実像視認モードと虚像視認モードとをそれぞれ第1期間以上(例えば数秒~数時間以上で、可変できるものとする)維持する制御を行うことで、その期間に応じて虚像V1又は実像V2のいずれか一方を視認できるように制御している。この制御は、
図6に示すT2の期間の制御に相当する。これに加えて本実施形態に係るHUD装置1の場合は、実像視認モードと虚像視認モードとを第2期間以下(例えば視覚的にちらつきが見えない時間間隔であり、100ミリ秒以下とする)の一定間隔で切り替える制御を行うことで、虚像V1の表示と実像V2の表示とが時分割され、乗員が虚像V1及び実像V2を同時に視認することが可能となる。この制御は、
図6に示すT1の期間の制御に相当する。
【0038】
なお、このT1の期間は、
図6の波形が示すように、第2期間の間隔で虚像V1又は実像V2のいずれか一方のみが結像されている状態であるが、非常に短い期間での切り替えであることから、乗員の目には残像効果で虚像V1と実像V2とを同時に視認できるものとなっている。
【0039】
また、
図6において虚像V1と実像V2との表示内容を異ならせる場合は、
図3のときと同様に、表示内容の切り替えと視認モードの切り替えとを上記同期信号で同期させることで、それぞれの視認モードごとに異なる表示内容で表示することが可能となり、乗員は虚像V1と実像V2とを異なる表示内容で同時に視認することが可能となる。
【0040】
このように、虚像V1と実像V2とを短期間で連続的に切り替えて表示することで乗員に虚像V1及び実像V2を同時に視認させ、ウインドシールドWSの外側及び内側の両方の位置に所望の情報をバリエーション豊かに表示することができる。
【符号の説明】
【0041】
C 車両
E 視点
F 焦点面
L 表示光
V1 虚像
V2 実像
WS ウインドシールド
1 HUD装置
11 プロジェクター
12 スクリーン機構
13 反射部
14 制御部
15 カバーガラス
16 筐体
20a,20b 透明基板
21a,21b 透明電極
22 液晶分子
23 高分子層
121 実像スクリーン
122 虚像スクリーン
131 平面鏡
132 凹面鏡