(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162611
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】自律移動体システム及び自律移動体
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20241114BHJP
H04W 4/02 20180101ALI20241114BHJP
【FI】
G08G1/00 A
H04W4/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078301
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲瀬▼川 武紀
(72)【発明者】
【氏名】陵城 孝志
(72)【発明者】
【氏名】廣上 達也
(72)【発明者】
【氏名】原 純哉
【テーマコード(参考)】
5H181
5K067
【Fターム(参考)】
5H181AA27
5H181BB04
5H181BB13
5H181CC02
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF13
5H181FF14
5H181FF22
5H181FF27
5H181FF32
5H181LL09
5K067AA13
5K067BB21
5K067EE02
5K067EE16
5K067FF03
5K067HH21
(57)【要約】
【課題】自律移動体とサーバとの間の通信トラフィックを簡単に削減する。
【解決手段】自律移動体システムは、地図データを保存するデータベースに接続され且つ通信ネットワークに接続されたサーバ処理回路と、を有するサーバと、前記通信ネットワークに接続された少なくとも1つのローカル処理回路と、を備える。前記ローカル処理回路は、前記エリアにおける障害物の位置データを検出する少なくとも1つのセンサが検出した前記位置データを受信し、前記受信した位置データを圧縮して圧縮データを生成し、前記通信ネットワークを介して前記圧縮データを前記サーバにアップロードする。前記サーバ処理回路は、前記アップロードされた圧縮データに基づいて前記データベースに保存された前記地図データを更新し、前記通信ネットワークを介して前記地図データを前記複数の自律移動体に送信する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の自律移動体が移動可能なエリアの地図データを保存するデータベースと、前記データベースに接続され且つ通信ネットワークに接続されたサーバ処理回路と、を有するサーバと、
前記通信ネットワークに接続された少なくとも1つのローカル処理回路と、を備え、
前記ローカル処理回路は、
前記エリアにおける障害物の位置データを検出する少なくとも1つのセンサが検出した前記位置データを受信することと、
前記受信した位置データを圧縮して圧縮データを生成することと、
前記通信ネットワークを介して前記圧縮データを前記サーバにアップロードすることと、を行うように構成され、
前記サーバ処理回路は、
前記アップロードされた圧縮データに基づいて前記データベースに保存された前記地図データを更新することと、
前記通信ネットワークを介して前記地図データを前記複数の自律移動体に送信することと、
を行うように構成されている、自律移動体システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つのセンサは、前記複数の自律移動体にそれぞれ備えられたセンサを含み、
前記少なくとも1つのローカル処理回路は、前記複数の自律移動体がそれぞれ備える複数の移動体処理回路を含む、請求項1に記載の自律移動体システム。
【請求項3】
前記圧縮データを作成することは、前記位置データと前記地図データとの間の差分を示す差分データを作成することを含む、請求項1又は2に記載の自律移動体システム。
【請求項4】
前記位置データは、点群データを含み、
前記圧縮データを作成することは、前記点群データを幾何学データに変換することを含む、請求項1又は2に記載の自律移動体システム。
【請求項5】
前記幾何学データは、少なくとも2つの点を示す座標情報と、前記少なくとも2つの点を結ぶ線の形状を示す線形状情報と、を含む、請求項4に記載の自律移動体システム。
【請求項6】
自律移動体が移動可能なエリアの地図データを保存するデータベースと、前記データベースに接続されたサーバ処理回路と、を有するサーバに対し、通信ネットワークを介して通信可能な自律移動体であって、
前記エリアにおける障害物の位置データを検出するセンサと、
前記センサに接続され且つ前記通信ネットワークに接続された移動体処理回路と、を備え、
前記移動体処理回路は、
前記センサが検出した前記位置データを受信することと、
前記受信した位置データを圧縮して圧縮データを生成することと、
前記通信ネットワークを介して前記圧縮データを前記サーバにアップロードすることと、を行うように構成されている、自律移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自律移動体システム及び自律移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の車両が走行中に取得した画像データをサーバに送信し、サーバが当該画像データを解析して道路地図を生成するデータ収集システムが開示されている。このシステムでは、地図上の単位領域ごとに車両からサーバに送信するデータの優先度を付けてデータ受信量の削減が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、画像データは、容量が大きいため、優先度を設定してサーバに送信したとしても大容量のデータ通信が必要となる。
【0005】
そこで本開示の一態様は、自律移動体とサーバとの間の通信トラフィックを削減できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る自律移動体システムは、複数の自律移動体が移動可能なエリアの地図データを保存するデータベースと、前記データベースに接続され且つ通信ネットワークに接続されたサーバ処理回路と、を有するサーバと、前記通信ネットワークに接続された少なくとも1つのローカル処理回路と、を備える。前記ローカル処理回路は、前記エリアにおける障害物の位置データを検出する少なくとも1つのセンサが検出した前記位置データを受信することと、前記受信した位置データを圧縮して圧縮データを生成することと、前記通信ネットワークを介して前記圧縮データを前記サーバにアップロードすることと、を行うように構成されている。前記サーバ処理回路は、前記アップロードされた圧縮データに基づいて前記データベースに保存された前記地図データを更新することと、前記通信ネットワークを介して前記地図データを前記複数の自律移動体に送信することと、を行うように構成されている。
【0007】
本開示の一態様に係る自律移動体は、自律移動体が移動可能なエリアの地図データを保存するデータベースと、前記データベースに接続されたサーバ処理回路と、を有するサーバに対し、通信ネットワークを介して通信可能な自律移動体であって、前記エリアにおける障害物の位置データを検出するセンサと、前記センサに接続され且つ前記通信ネットワークに接続された移動体処理回路と、を備える。前記移動体処理回路は、前記センサが検出した前記位置データを受信することと、前記受信した位置データを圧縮して圧縮データを生成することと、前記通信ネットワークを介して前記圧縮データを前記サーバにアップロードすることと、を行うように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、複数の自律移動体が移動可能なエリアにおいてセンサによって検出された障害物の位置データは、圧縮されてサーバにアップロードされる。よって、センサから得られる位置データがサーバにアップロードされるときの通信トラフィックの増大が抑えられ、複数の自律移動体のための他のデータ通信を妨害することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る自律移動体システムの全体図である。
【
図4】
図4は、
図1のシステムの処理を説明するフローチャートである。
【
図5】
図5は、
図1のデータベースが記憶する地図データの例を示す概略図である。
【
図6】
図6は、
図5の地図データに対応する実際のエリアを示す平面図であって、当該エリアに変更が生じたことを示す図である。
【
図7】
図7は、障害物の三次元点群データの二次元点群データへの変換を説明する図面である。
【
図8】
図8は、二次元点群データの占有格子化を説明する図面である。
【
図9】
図9は、
図8の格子地図に紐づいたテーブルを示す図面である。
【
図10】
図10は、差分二次元点群データから幾何学データへの変換を説明する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0011】
図1は、実施形態に係る自律移動体システム1の全体図である。
図1に示すように、自律移動体システム1は、複数の自律移動体10と、複数の自律移動体10に通信ネットワーク13を介して通信可能なサーバ11と、サーバ11に接続されたデータベース12と、を備える。通信ネットワーク13は、例えば、インターネットとし得るが、イントラネット等であってもよい。自律移動体10は、所定のエリアを自律移動する。例えば、自律移動体10は、建物内のフロアを自律移動するものであるが、屋外の所定領域を自律移動するものであってもよい。データベース12は、自律移動体10が移動するエリアの地図データ40を記憶している。データベース12は、サーバ11に設けられてもよいし、通信ネットワーク13を介してサーバ11に接続されてもよい。
【0012】
自律移動体10は、ナビゲーションに必要な機能を搭載し、自律的に目的地に向かって移動する装置である。自律移動体10は、地上を走行するものでもよいし、空中を飛行するものでもよい。一例として、自律移動体10は、複数の車輪15、ボディ16、少なくとも1つの測距センサ24、タッチパネルディスプレイ26等を備える。車輪15は、駆動輪であり操舵可能に構成されている。ボディ16は、車輪15に支持されている。ボディ16は、キャリア16aを有する。キャリア16aには、例えば、搬送を要する物資が積載される。測距センサ24及びタッチパネルディスプレイ26については、後述する。
【0013】
図2は、
図1の自律移動体10のブロック図である。
図2に示すように、自律移動体10は、移動体処理回路20、測距センサ24、速度センサ25、タッチパネルディスプレイ26、走行アクチュエータ27、及び、通信インターフェース28を備える。装置24~28は、移動体処理回路20に電気的に接続されている。自律移動体10の移動体処理回路20は、複数の自律移動体10が移動可能なエリア50に存在するローカル処理回路の一例である。
【0014】
移動体処理回路20は、プロセッサ21、システムメモリ22及びストレージメモリ23を含む。プロセッサ21は、CPU(中央演算処理装置)を含み得る。システムメモリ22は、RAMを含み得る。ストレージメモリ23は、ハードディスク、フラッシュメモリ又はその組合せを含み得る。ストレージメモリ23は、プログラムP1を記憶している。ストレージメモリ23からシステムメモリ22に読み出されたプログラムP1をプロセッサ21が実行する構成は、移動体処理回路の一例である。
【0015】
測距センサ24は、自律移動体10の周囲を三次元的に測距することで、自律移動体10の周囲の形状を三次元的に検出する。測距センサ24は、自律移動体10の周囲の障害物からの反射波を受信することで、エリア50における障害物の外面の位置データを検出する。例えば、測距センサ24は、自律移動体10の周囲に向けて光、電波又は超音波を出射して反射波を受信してもよい。測距センサ24は、外界に存在する光、電波又は超音波が物体に反射した反射波を受信してもよい。測距センサ24は、自律移動体10を基準として水平方向の全方位を測距し得る。測距センサ24は、例えば、レーザ光を照射してから反射波を受光するまでに時間を計測して障害物までの距離を検出するものとし得る。測距センサ24は、LIDAR(Light Detection and Ranging)センサとし得る。一例として、測距センサ24は、三次元LIDARセンサである。なお、測距センサ24は、前方に向いたLIDARセンサ、後方に向いたLIDARセンサ、左方に向いたLIDARセンサ、及び、右方に向いたLIDARセンサを含むセンサアッセンブリでもよい。測距センサ24は、赤外線測距センサでもよいし、ミリ波レーダーでもよいし、深度センシングカメラでもよい。深度センシングカメラは、ステレオカメラによる視差を利用して物体までの距離を測定するものとしてもよい。
【0016】
移動体処理回路20は、測距センサ24によって検出された周囲の形状を、後述する地図データ40の形状とマッチングさせることで、地図データ40上における自律移動体10の位置が特定される。即ち、測距センサ24による検出形状を地図データ40にマッチングさせるソフトウェアと測距センサ24との組合せによって、測位センサが実現されている。
【0017】
速度センサ25は、自律移動体10の走行速度を検出する。速度センサ25は、例えば、車輪15の回転数を検出する。タッチパネルディスプレイ26は、ユーザインターフェースの一例である。即ち、タッチパネルディスプレイ26は、ユーザ入力インターフェース及びユーザ出力インターフェースを兼ねる。なお、ユーザ入力インターフェースとしてキーボード、マウス等が用いられてもよく、ユーザ出力インターフェースとして非タッチパネル式のディスプレイが用いられてもよい。
【0018】
走行アクチュエータ27は、車輪15を回転するように駆動する車輪駆動アクチュエータを含む。走行アクチュエータ27は、車輪15を制動するブレーキを駆動する制動アクチュエータを含む。走行アクチュエータ27は、例えば、電気モータである。自律移動体10は、左右の車輪15の回転数を異ならせることで走行する向きを変更してもよいし、左右の車輪15の回転方向を異ならせることで走行する向きを変更してもよいし、操舵アクチュエータで車輪15を操舵させることで走行する向きを変更してもよい。自律移動体10は、対向差動二輪機構を有してもよいし、全方位型メカナム機構を有してもよい。なお、自律移動体をドローンとする場合には、車輪の代わりにプロペラを用い、走行アクチュエータの代わりにプロペラ駆動アクチュエータを用いることができる。
【0019】
通信インターフェース28は、通信ネットワーク13に無線接続するインターフェースである。ストレージメモリ23からシステムメモリ22に読み出されたプログラムP1を実行するプロセッサ21は、測距センサ24、速度センサ25、タッチパネルディスプレイ26及び通信インターフェース28の少なくとも1つから入力される情報に基づいて、タッチパネルディスプレイ26及び走行アクチュエータ27の少なくとも1つを制御する。
【0020】
図3は、
図1のサーバ11のブロック図である。
図3に示すように、サーバ11は、サーバ処理回路30及び通信インターフェース34を備える。サーバ処理回路30は、プロセッサ31、システムメモリ32及びストレージメモリ33を含む。通信インターフェース34は、通信ネットワーク13に有線又は無線で接続するインターフェースと、データベース12に有線又は無線で接続するインターフェースと、を含む。プロセッサ31は、CPU(中央演算処理装置)を含み得る。システムメモリ32は、RAMを含み得る。ストレージメモリ33は、ハードディスク、フラッシュメモリ又はその組合せを含み得る。ストレージメモリ33は、プログラムP2を記憶している。ストレージメモリ33からシステムメモリ32に読み出されたプログラムP2をプロセッサ31が実行する構成は、サーバ処理回路の一例である。
【0021】
データベース12は、地図データ40を予め記憶している。地図データ40は、自律移動体10が走行可能なエリアの形状を特定している。例えば、地図データ40は、建物内のフロアの形状を特定している。具体的には、
図5に示すように、地図データ40は、当該エリアにおいて障害物輪郭41A~Eを特定することで、自律移動体10の走行可能領域42の輪郭を特定している。
【0022】
図4は、
図1のシステム1の処理を説明するフローチャートである。
図5は、
図1のデータベース12が記憶する地図データ40の例を示す平面図である。
図6は、
図5の地図データ40に対応する実際のエリア50を示す概略図であって、当該エリア50に変更が生じたことを示す図である。なお、エリア50の水平面上において、所定の一方向をX方向とし、X方向に直交する方向をY方向とする。X方向及びY方向に直交する鉛直方向をZ方向とする。
【0023】
以下、
図4以外の図も適宜参照しながら
図4のフローに沿って説明する。以下の説明では、
図6に示すように、エリア50において障害物51A~Eに追加して新たに障害物51Fが設置される変更が生じた状態での走行可能領域52を自律移動体10が走行する場合を例示する。即ち、
図5に示すように、最新の地図データ40には、障害物51A~Eに対応する障害物輪郭41A~Eが存在するが、新たに追加された障害物51Fに対応するデータ(障害物輪郭)が存在しない例について説明する。
【0024】
以下の説明において、自律移動体10の処理は移動体処理回路20により実行され、サーバ11の処理はサーバ処理回路30により実行される。自律移動体10が走行開始する前、自律移動体10は、サーバ11からデータベース12から最新の地図データ40をダウンロードする(ステップS1)。即ち、サーバ11は、データベース12に記憶された最新の地図データ40を自律移動体10に送信する(ステップS2)。自律移動体10は、測距センサ24によって自律移動体10の周囲の障害物51A~Fを測距しながら、地図データ40を参照してエリア50の走行可能領域52を自律走行する(ステップS3)。自律移動体10は、測距センサ24によって測距して得られる三次元点群データを蓄積して保存する(ステップS4)。三次元点群データは、障害物51A~Fの外面上の点を示す位置データである。自律移動体10は、三次元点群データを二次元点群データに変換することによって、測距センサ24によって測距して得られる位置データを圧縮する(ステップS5)。
【0025】
図7は、障害物51Fの三次元点群データの二次元点群データへの変換を説明する図面である。
図7に示すように、自律移動体10は、測距センサ24によって障害物51Fを測距することで、障害物51Fの外面上の点群を示す三次元点群データQを取得する。自律移動体10は、取得された三次元点群データQから、自律移動体10が干渉する可能性のある所定の高さ範囲Hに存在する三次元点群データQを抽出して保存する。即ち、自律移動体10は、取得された三次元点群データQから高さ範囲Hの外に存在する三次元点群データQを破棄する。
【0026】
自律移動体10は、測距センサ24によって鉛直方向に延びたセンシングラインLを水平方向に移動させることで自律移動体10の周囲のものをスキャンする場合、同一のセンシングラインL上にある複数の三次元点群データQのうち走行可能領域52を最も狭める位置にある点、即ち、測距センサ24に最も近い位置にある点のX-Y座標を代表点Pとして記憶し、三次元点群データQを破棄する。自律移動体10は、こうして得られた代表点Pの集合を二次元点群データPとする。
【0027】
次に、自律移動体10は、今回得られた二次元点群データPを占有格子化する(ステップS6)。即ち、自律移動体10は、
図6のエリア50に対応する平面地図である格子地
図60(
図8参照)を二次元点群データPに基づいて作成する。
【0028】
図8は、二次元点群データPの占有格子化を説明する図面である。
図8に示すように、格子地
図60は、格子状に並んだ複数のセル61を有する。例えば、格子地
図60は画像データであり、セル61は画像データの画素である。占有格子化においては、二次元点群データPは、ブランク状態の格子地
図60上において二次元点群データPの座標情報が示す位置に配置される。二次元点群データPが存在しないセル61は、障害物の外面が存在しないことを示す不存在情報(
図8ではブランク表示)を有する。自律移動体10は、二次元点群データPが存在するセル61に対し、障害物51A~Fの外面が存在することを示す存在情報(
図8ではハッチング表示)を付与する。例えば、二次元点群データPが存在しないセル61は「白」の情報を有し、二次元点群データPが存在するセル61は「黒」の情報を有する。或いは、二次元点群データPが存在しないセル61は「0」の情報を有し、二次元点群データPが存在するセル61は「1」の情報を有してもよい。即ち、格子地
図60は、二次元点群データPの情報を保有することなく、各セル61が前記不存在情報又は前記存在情報を有する。
【0029】
図9は、
図8の格子地
図60に紐づいたテーブル70を示す図面である。
図9に示すように、占有格子化においては、自律移動体10は、格子地
図60に紐づけたテーブル70を作成する。テーブル70は、二次元点群データPが存在するセル61の識別情報(例えば、行番号及び列番号)と、セル61の識別情報に関連付けられた二次元点群データPの座標情報と、を有する。なお、自律移動体10は、テーブル70を参照することで、格子地
図60を二次元点群データPに逆変換することができる。
【0030】
次に、自律移動体10は、直前の格子地図に対して今回の格子地
図60の相違する部分を差分として抽出する(ステップS7)。直前の格子地図は、ステップS1でサーバ11からダウンロードした最新の地図データ40に対応する。最新の地図データ40が格子地図でなく幾何学地図である場合には、自律移動体10は、その地図データ40を格子地図に変換する。即ち、自律移動体10は、幾何学地図をブランクの格子地図に重ねた状態で、格子地図上において幾何学地図の線分が存在するセルに対し、障害物の外面が存在することを示す存在情報を付与する。そして、自律移動体10は、直前の格子地図に対して今回の格子地
図60の相違する部分を差分として抽出してなる差分格子地図を作成する。即ち、差分格子地図は、データベース12に保存された地図データと、自律移動体10の測距センサ24が検出した位置データと、の間の差分を示す差分データに相当する。
【0031】
次に、自律移動体10は、測距センサ24によって測距して得られた位置データを更に圧縮するため、差分格子地図を逆変換した二次元点群データを幾何学データに変換する(ステップS8)。具体的には、自律移動体10は、差分格子地図に対応するテーブルを参照し、差分格子地図を二次元点群データに逆変換する。この差分格子地図を逆変換した二次元点群データは、差分二次元点群データと称することとする。差分二次元点群データは、差分データであるため、ステップS5で得た二次元点群データPよりもデータ量が小さい。
【0032】
図10は、差分二次元点群データから幾何学データへの変換を説明する図面である。
図10に示すように、自律移動体10は、幾何学データへの変換のために、差分二次元点群データにおいて同一構造物(例えば、障害物51F)に属する点の集合(P
i、P
j、P
k)を特定する。即ち、同一構造物を判定することは、二次元点群データのうち連続面に属する点の集合を特定することを意味する。例えば、判定対象とする点の集合(P
i、P
j、P
k)は、互いに隣接すると判定され、かつ、互いに同一直線上に存在すると判定されると、同一構造物に属する点であると判定される。
【0033】
図10において、d
iは、測距センサ24から点P
iまで延びたベクトルを示し、d
jは、測距センサ24から点P
jまで延びたベクトルを示し、d
kは、測距センサ24から点P
kまで延びたベクトルを示す。θ
ijは、ベクトルd
iとベクトルd
jとがなす角を示し、θ
jkは、ベクトルd
jとベクトルd
kとがなす角を示す。なお、
図10では、差分二次元点群データにおいて同一構造物に属する点の集合(P
i、P
j、P
k)として簡略化のために3点のみ図示したが、実際には同一構造物に属する点は多数存在する。
【0034】
自律移動体10は、判定対象とする点の集合(Pi、Pj、Pk)が下記の数式1及び数式2を満たすと、それら点の集合(Pi、Pj、Pk)は互いに隣接すると判定する。即ち、ベクトルdiとベクトルdjとがなす角θijと、ベクトルdjとベクトルdkとがなす角θjkとが等しく、かつ、点Piから点Pjまでの距離と、点Pjから点Pkまでの距離とが等しい場合に、それら点の集合(Pi、Pj、Pk)は互いに隣接すると判定する。
【0035】
【0036】
【数2】
自律移動体10は、判定対象とする点の集合(P
i、P
j、P
k)が下記の数式3を満たすと、それら点の集合(P
i、P
j、P
k)は同一直線上に存在すると判定する。即ち、点P
jが点P
iと点P
kとの間の中点に位置する場合に、それら点の集合(P
i、P
j、P
k)は同一直線上に存在すると判定する。
【0037】
【数3】
このようにして、自律移動体10は、上記の数式1~3を満たした点の集合(P
i、P
j、P
k)は同一構造物に属する点であると判定する。そして、自律移動体10は、それら点の集合(P
i、P
j、P
k)のうち両端の2点(P
i、P
k)のみを示す座標情報と、その両端の2点(P
i、P
k)を結ぶ線の形状(直線)を示す線形状情報と、を含む幾何学データを作成する。即ち、自律移動体10は、同一構造物に属する点であると判定された点の集合(P
i、P
j、P
k)を前記幾何学データに変換する。この幾何学データは、測距センサ24が取得したデータを圧縮したデータに相当する。なお、幾何学データは、直線に限られず他の形状でもよく、例えば、少なくとも3点を結ぶ円弧線であってもよい。
【0038】
次に、自律移動体10は、その作成した幾何学データを、通信ネットワーク13を介してサーバ11にアップロードする(ステップS9)。即ち、サーバ11は、自律移動体10から通信ネットワーク13を介して幾何学データを受信する(ステップS10)。サーバ11は、その受信した幾何学データを地図データ40に反映させるようにデータベース12の地図データ40を更新する(ステップS11)。
【0039】
差分二次元点群データのうち幾何学データへの変換ができなかった残余の点群データがある場合には、自律移動体10は、その残余の点群データを幾何学データとともにサーバ11にアップロードしてもよい。その場合、サーバ11を操作するオペレータは、その残余の点群データを手動で幾何学化してデータベース12の地図データ40を更新してもよい。
【0040】
なお、本開示の技術は、前述した実施形態に限定されるものではない。例えば、測距センサ24は、自律移動体10に設けられるのではなく、エリア50の特定の場所に設置された定置式の測距センサであってもよい。自律移動体の測距センサ24と、エリア50の特定の場所に設置された定置式の測距センサとの両方が、エリアにおける障害物の位置データを検出してもよい。定置式の測距センサが検出した位置データは、定置されたローカル処理回路によって圧縮されてサーバ11にアップロードされてもよい。
【0041】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかし、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。例えば、実施形態中の一部の構成は、その実施形態中の他の構成から分離して任意に抽出可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれる。
【0042】
本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた、汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU、従来の回路、及び/又は、それらの組み合わせ、を含む回路又は処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路又は回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット若しくは手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、又は、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、又は、列挙された機能を実行するようにプログラム若しくは構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段若しくはユニットは、ハードウェア及びソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェア及び/又はプロセッサの構成に使用される。
【0043】
以下の項目のそれぞれは、好ましい実施形態の開示である。
【0044】
[項目1]
複数の自律移動体が移動可能なエリアの地図データを保存するデータベースと、前記データベースに接続され且つ通信ネットワークに接続されたサーバ処理回路と、を有するサーバと、
前記通信ネットワークに接続された少なくとも1つのローカル処理回路と、を備え、
前記ローカル処理回路は、
前記エリアにおける障害物の位置データを検出する少なくとも1つのセンサが検出した前記位置データを受信することと、
前記受信した位置データを圧縮して圧縮データを生成することと、
前記通信ネットワークを介して前記圧縮データを前記サーバにアップロードすることと、を行うように構成され、
前記サーバ処理回路は、
前記アップロードされた圧縮データに基づいて前記データベースに保存された前記地図データを更新することと、
前記通信ネットワークを介して前記地図データを前記複数の自律移動体に送信することと、
を行うように構成されている、自律移動体システム。
【0045】
この構成によれば、複数の自律移動体が移動可能なエリアにおいてセンサによって検出された障害物の位置データは、圧縮されてサーバにアップロードされる。よって、センサから得られる位置データがサーバにアップロードされるときの通信トラフィックの増大が抑えられ、複数の自律移動体のための他のデータ通信を妨害することを防止できる。
【0046】
[項目2]
前記少なくとも1つのセンサは、前記複数の自律移動体にそれぞれ備えられたセンサを含み、
前記少なくとも1つのローカル処理回路は、前記複数の自律移動体がそれぞれ備える複数の移動体処理回路を含む、項目1に記載の自律移動体システム。
【0047】
この構成によれば、複数の自律移動体とサーバとの間の通信トラフィックが多い傾向にある構成において、位置データを圧縮したものが複数の自律移動体からサーバにアップロードされるため、通信帯域の逼迫を防止できる。
【0048】
[項目3]
前記圧縮データを作成することは、前記位置データと前記地図データとの間の差分を示す差分データを作成することを含む、項目1又は2に記載の自律移動体システム。
【0049】
この構成によれば、地図データの更新に必要な情報を保ちながらも、エリアにおける障害物の位置データを好適に圧縮できる。
【0050】
[項目4]
前記位置データは、点群データを含み、
前記圧縮データを作成することは、前記点群データを幾何学データに変換することを含む、項目1乃至3のいずれか1項に記載の自律移動体システム。
【0051】
この構成によれば、地図データの更新に必要な情報を保ちながらも、データ量の多い点群データを好適に圧縮できる。
【0052】
[項目5]
前記幾何学データは、少なくとも2つの点を示す座標情報と、前記少なくとも2つの点を結ぶ線の形状を示す線形状情報と、を含む、項目4に記載の自律移動体システム。
【0053】
この構成によれば、幾何学データのデータ量を好適に小さくすることができる。
【0054】
[項目6]
自律移動体が移動可能なエリアの地図データを保存するデータベースと、前記データベースに接続されたサーバ処理回路と、を有するサーバに対し、通信ネットワークを介して通信可能な自律移動体であって、
前記エリアにおける障害物の位置データを検出するセンサと、
前記センサに接続され且つ前記通信ネットワークに接続された移動体処理回路と、を備え、
前記移動体処理回路は、
前記センサが検出した前記位置データを受信することと、
前記受信した位置データを圧縮して圧縮データを生成することと、
前記通信ネットワークを介して前記圧縮データを前記サーバにアップロードすることと、を行うように構成されている、自律移動体。
【0055】
この構成によれば、自律移動体が移動可能なエリアにおいてセンサによって検出された障害物の位置データは、圧縮されてサーバにアップロードされる。よって、通信トラフィックの増大が抑えられ、自律移動体のための他のデータ通信を妨害することを防止できる。
【符号の説明】
【0056】
1 自律移動体システム
10 自律移動体
11 サーバ
12 データベース
13 通信ネットワーク
20 移動体処理回路(ローカル処理回路)
24 測距センサ
30 サーバ処理回路
40 地図データ
50 エリア
51A~F 障害物