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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162616
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】エネルギー予測装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/36 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
G01C21/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078311
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100142918
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 貴志
(72)【発明者】
【氏名】木下 祐輝
(72)【発明者】
【氏名】南條 弘行
(72)【発明者】
【氏名】池本 宣昭
【テーマコード(参考)】
2F129
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB20
2F129DD19
2F129DD20
2F129DD26
2F129DD34
2F129DD39
2F129DD45
2F129DD46
2F129DD47
2F129DD49
2F129EE52
2F129EE81
2F129EE94
2F129EE96
2F129FF02
2F129FF20
2F129FF32
2F129FF59
2F129FF65
2F129FF71
(57)【要約】
【課題】様々な交通状態が混在する経路においても車両における消費エネルギーの予測精度を高めることができるエネルギー予測装置を提供する。
【解決手段】車両が走行する走行経路を分割し区分経路を設定する経路設定部101と、区分経路ごとに車両の消費エネルギーを予測する消費予測モデルを構築するモデル構築部102と、を備えるエネルギー予測装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行する走行経路を分割し区分経路を設定する経路設定部(101)と、
前記区分経路ごとに車両の消費エネルギーを予測する消費予測モデルを構築するモデル構築部(102)と、
を備えるエネルギー予測装置。
【請求項2】
更に、
前記車両が前記走行経路を走行する際のエネルギー消費に関する状態情報を取得する情報取得部(103)を備え、
前記経路設定部は、前記状態情報の近似性に基づいて前記走行経路を分割し区分経路を設定する、請求項1に記載のエネルギー予測装置。
【請求項3】
前記経路設定部は、前記走行経路をプレ分割して複数のプレ区分経路を設定し、前記プレ区分経路それぞれにおける前記状態情報の近似性に基づいて結合条件を判断し、前記結合条件を満たした前記プレ区分経路同士を結合する処理を経て前記区分経路を設定する、請求項2に記載のエネルギー予測装置。
【請求項4】
前記状態情報は、前記走行経路を前記車両が走行する走行状態を特定する走行状態情報、前記走行経路を前記車両が走行する際に要するエネルギーを特定するエネルギー状態情報、および前記走行経路の状態であって前記車両が走行する際に要するエネルギーに影響を与える道路状態を特定する道路状態情報の少なくとも1つを含み、
前記経路設定部は、
前記走行状態情報、前記エネルギー状態情報、および前記道路状態情報の少なくとも1つの情報の近似性に基づいて前記区分経路を設定する、請求項1に記載のエネルギー予測装置。
【請求項5】
前記モデル構築部は、説明変数と目的変数による学習モデルとして前記消費予測モデルを構築するものであって、
前記説明変数は、天候情報、道路状態、時間情報、およびドライバー情報の少なくとも1つであり、
前記目的変数は、車速パターンに関する指標値、および消費エネルギーに関する指標値の少なくとも1つである、請求項1に記載のエネルギー予測装置。
【請求項6】
更に、
前記区分経路ごとに構築された前記消費予測モデルを用いて、前記区分経路ごとに消費エネルギーを予測し、前記走行経路における消費エネルギーを予測するエネルギー予測部(104)を備える、請求項1に記載のエネルギー予測装置。
【請求項7】
更に、
前記目的変数が前記車速パターンに関する指標値である場合に、前記車速パターンに関する指標値に基づいて前記区分経路ごとに生成された車速パターンに基づいた消費エネルギーを予測し、前記走行経路における消費エネルギーを予測するエネルギー予測部(104)を備える、請求項1に記載のエネルギー予測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エネルギー予測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
任意の経路を車両が走行する際に必要なエネルギーを予測する技術が知られている。下記特許文献1に記載の発明では、移動体の移動状況に関する情報に基づき、移動体の複数の特徴量を含む走行データを取得する。予測部は、複数の特徴量の少なくとも1つに関する複数の第1条件と、消費エネルギー量の複数の第1予測モデルとを対応づけた第1分類ルールと、走行データとに基づき、移動体の消費エネルギー量の予測値を計算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-27432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
経路を車両が走行するにあたって、経路には様々な交通状態が混在し、交通状態の変動が消費エネルギーに与える影響度も均一ではない。例えば、雨天になると交通量が増大して渋滞しやすくなる経路や経路部分がある一方で、雨天になっても交通量に変動がさほどない経路や経路部分も存在する。特許文献1では、経路全体を1つの予測モデルを用いて消費エネルギーを予測するため、様々な交通状態が混在するような経路において予測精度を高めることが難しくなる。
【0005】
本開示は、様々な交通状態が混在する経路においても車両における消費エネルギーの予測精度を高めることができるエネルギー予測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、エネルギー予測装置であって、車両が走行する走行経路を分割し区分経路を設定する経路設定部(101)と、区分経路ごとに車両の消費エネルギーを予測する消費予測モデルを構築するモデル構築部(102)と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、様々な交通状態が混在する経路においても車両における消費エネルギーの予測精度を高めることができるエネルギー予測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態に係るエネルギー予測装置を説明するためのブロック構成図である。
図2図2は、図1に示されるエネルギー予測装置による情報処理フローを説明するためのフローチャートである。
図3図3は、区部経路の設定について説明するための図である。
図4図4は、区部経路の設定について説明するための図である。
図5図5は、区部経路の設定について説明するための図である。
図6図6は、区部経路の設定について説明するための図である。
図7図7は、エネルギー予測について説明するための図である。
図8図8は、エネルギー予測について説明するための図である。
図9図9は、エネルギー予測について説明するための図である。
図10図10は、エネルギー予測について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0010】
図1を参照しながら、本実施形態に係るエネルギー予測装置10について説明する。エネルギー予測装置10は、ネットワークNWを介して車両30と情報の授受が可能なように構成されている。エネルギー予測装置10は、車両特性格納部201、走行経路格納部202、ドライバー情報格納部203、環境情報格納部204、及び状態情報格納部205と情報の授受が可能なように構成されている。
【0011】
エネルギー予測装置10は、ハードウエアとして、CPU(Central Processing Unit)といった演算部、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)といった記憶部、データの授受を行うためのインターフェイス部を備えるコンピュータとして構成されている。
【0012】
エネルギー予測装置10は、経路設定部101と、モデル構築部102と、情報取得部103と、エネルギー予測部104と、通知部105と、保持部110と、を備えている。
【0013】
経路設定部101は、車両が走行する走行経路を分割し区分経路を設定する部分である。区分経路の設定については、後に詳述する。
【0014】
モデル構築部102は、区分経路ごとに車両の消費エネルギーを予測する消費予測モデルを構築する部分である。消費予測モデルの構築については、後に詳述する。
【0015】
情報取得部103は、車両が走行経路を走行する際のエネルギー消費に関する状態情報を取得する部分である。状態情報については、後に詳述する。
【0016】
エネルギー予測部104は、区分経路ごとに構築された消費予測モデルを用いて、区分経路ごとに消費エネルギーを予測し、走行経路における消費エネルギーを予測する部分である。別な態様として、エネルギー予測部104は、車速パターンに関する指標値に基づいて区分経路ごとに車速パターンを生成し、区分経路ごとに車速パターンに基づいた消費エネルギーを予測し、走行経路における消費エネルギーを予測する部分でもある。消費エネルギーの予測については、後に詳述する。
【0017】
通知部105は、エネルギー予測部104が予測した消費エネルギーを所定の通知先に通知する部分である。所定の通知先は任意に設定可能であり、車両30に通知してもよく、他の通知先に通してもよい。
【0018】
保持部110は、経路設定部101が設定した区分経路を保持する部分である。保持部110は、モデル構築部102が構築した消費予測モデルを保持する部分である。保持部110は、情報取得部103が取得した状態情報を保持する部分である。
【0019】
車両特性格納部201は、車両30を含む車両全般の特性情報を格納する部分である。特性情報は、車両の消費エネルギーを予測するのに必要な全ての情報を含む。
【0020】
走行経路格納部202は、車両30を含む車両全般が走行または走行予定の走行経路に関する経路情報を格納する部分である。経路情報は走行経路の情報であり、各地点の位置情報、勾配に関する情報、幅員に関する情報、制限速度に関する情報、カーブ曲率に関する情報、信号の位置に関する情報、バス停の位置に関する情報、および交差点の位置に関する情報の少なくとも1つを含む。
【0021】
ドライバー情報格納部203は、車両30を含む車両全般を運転するドライバーに関するドライバー情報を格納する部分である。ドライバー情報は、ドライバー属性とその属性に対応するドライバーの特徴を示す情報を含むものである。
【0022】
環境情報格納部204は、車両30を含む車両全般が走行または走行予定の環境に関する環境情報を格納する部分である。環境情報は、天候情報および日時情報の少なくとも1つを含むものである。天候情報は、降水確率および降水量の少なくとも1つを含むものである。日時情報は、時刻、曜日、祝祭日、および季節の少なくとも1つを含むものである。
【0023】
状態情報格納部205は、車両が走行経路を走行する際のエネルギー消費に関する状態情報を格納する部分である。状態情報は、走行状態情報、エネルギー状態情報、および道路状態情報の少なくとも1つを含むものである。走行状態情報は、走行経路を車両が走行するパターンを特定する情報である。例えば走行状態情報は、停車頻度、最高速度、定常時速度、平均速度、加速度、および減速度の少なくとも1つを示す情報を含む。
【0024】
エネルギー状態情報は、走行経路を車両が走行する際に要するエネルギーを特定する情報である。例えばエネルギー状態情報は、燃費、電費、SOC(充電状態:State of Charge)、およびインバータ電力の少なくとも1つを示す情報を含む。
【0025】
道路状態情報は、走行経路の状態であって車両が走行する際に要するエネルギーに影響を与える道路状態を特定する情報である。例えば道路状態情報は、勾配に関する情報、バス停の位置に関する情報、交差点の位置に関する情報、幅員に関する情報、制限速度に関する情報、信号の位置に関する情報、カーブ曲率に関する情報、および混雑度合いに関する情報の少なくとも1つを示す情報を含む。
【0026】
エネルギー予測装置10が予測対象とする車両30は、ネットワークNWと繋がっており、車両30の走行データはネットワークNWを介してエネルギー予測装置10に送信され、保持部110に格納される。
【0027】
車両30は、状態検出部301と、車速検出部302と、通信部303と、電池ECU304と、インバータ305と、を備えている。状態検出部301は、電池ECUから車両30の走行に用いられる電池の充電状態SOCを取得する。状態検出部301は、インバータ305から電流値を取得する。充電状態SOCおよび電流値は、通信部303がエネルギー予測装置10に送信する。状態検出部301は、車両30の位置情報も検出する。位置情報は、通信部303がエネルギー予測装置10に送信する。車速検出部302は、車両30の車速を検出する。車速は、通信部303がエネルギー予測装置10に送信する。尚、本実施形態では、車両30を電動車両としているが、エネルギー予測装置10が予測対象とする車両の動力源はバッテリーを電力発生源とする電動機に限られるものではなく、公知のガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、電動機と内燃機関とを組み合わせたハイブリッド、燃料電池を電力発生源とする電動機を含め、全ての動力源を対象とすることができる。
【0028】
続いて、図2を参照しながら、エネルギー予測装置10による情報処理フローについて説明する。ステップS001では、経路設定部101が走行経路を分割する処理を実行する。図3を参照しながら走行経路分割処理について説明する。
【0029】
図3(A)に示されるように、経路設定部101は走行経路をプレ分割し、8つのプレ区分経路SA1,SA2,SA3,SA4,SA5,SA6,SA7,SA8を設定する。図示および説明の便宜上、プレ区分経路SA1,SA2,SA3,SA4,SA5,SA6,SA7,SA8は全て同じ長さとしているが、長さの異なるプレ区分経路が含まれていてもよい。プレ区分経路の長さをどのように設定するかは任意である。また、プレ区分経路SA1,SA2,SA3,SA4,SA5,SA6,SA7,SA8が8つのプレ区分経路であるのは一例であって、複数若しくは3つ以上の区分経路を対象にすれば数は適宜決められるものである。
【0030】
経路設定部101は、隣接するプレ区分経路同士で結合条件が満たすかどうかを判定する。図3(A)の例では、経路設定部101は、プレ区分経路SA1とプレ区分経路SA2が結合条件を満たすか否かを判定する。経路設定部101は、プレ区分経路SA2とプレ区分経路SA3が結合条件を満たすか否かを判定する。経路設定部101は、プレ区分経路SA3とプレ区分経路SA4が結合条件を満たすか否かを判定する。経路設定部101は、プレ区分経路SA4とプレ区分経路SA5が結合条件を満たすか否かを判定する。経路設定部101は、プレ区分経路SA5とプレ区分経路SA6が結合条件を満たすか否かを判定する。経路設定部101は、プレ区分経路SA6とプレ区分経路SA7が結合条件を満たすか否かを判定する。経路設定部101は、プレ区分経路SA7とプレ区分経路SA8が結合条件を満たすか否かを判定する。尚、結合条件については、詳細を後述する。
【0031】
図3(A)の例では、プレ区分経路SA1とプレ区分経路SA2は結合条件を満たしている。プレ区分経路SA2とプレ区分経路SA3は結合条件を満たしていない。プレ区分経路SA3とプレ区分経路SA4は結合条件を満たしている。プレ区分経路SA4とプレ区分経路SA5は結合条件を満たしている。プレ区分経路SA5とプレ区分経路SA6は結合条件を満たしていない。プレ区分経路SA6とプレ区分経路SA7は結合条件を満たしていない。プレ区分経路SA7とプレ区分経路SA8は結合条件を満たしている。
【0032】
上記説明したような結合条件の充足関係において、経路設定部101がプレ区分経路を結合すると図3(B)に示されるようになる。具体的には、経路設定部101は、プレ区分経路SA1とプレ区分経路SA2とを結合し、区分経路SB1を設定する。経路設定部101は、プレ区分経路SA1とプレ区分経路SA2とプレ区分経路SA2とを結合し、区分経路SB1を設定する。経路設定部101は、プレ区分経路SA3とプレ区分経路SA4とプレ区分経路SA5とを結合し、区分経路SB2を設定する。経路設定部101は、プレ区分経路SA6を他のプレ区分経路と結合せずに、区分経路SB3に設定する。経路設定部101は、プレ区分経路SA7とプレ区分経路SA8とを結合し、区分経路SB4を設定する。
【0033】
経路設定部101がプレ区分経路を結合し区分経路とする処理は、図3(A)に示されるプレ区分経路SA1,SA2,SA3,SA4,SA5,SA6,SA7,SA8を結合条件に基づいて結合し、図3(B)に示される区分経路SB1,SB2,SB3,SB4とすることで完了としてもよい。
【0034】
経路設定部101は、図3(B)に示される区分経路SB1,SB2,SB3,SB4をプレ区分経路とみなし、更に結合する処理を行うこともできる。図3(B)においては、プレ区分経路とみなされる区分経路SB1と区分経路SB2は結合条件を満たしている。プレ区分経路とみなされる区分経路SB2と区分経路SB3は結合条件を満たしていない。プレ区分経路とみなされる区分経路SB3と区部経路SB4は結合条件を満たしている。
【0035】
上記説明したような結合条件の充足関係において、経路設定部101がプレ区分経路とみなされる区分経路SB1,SB2、SB3,SB4を結合すると図3(C)に示されるようになる。具体的には、経路設定部101は、プレ区分経路としての区分経路SB1と区分経路SB2とを結合し、区分経路SC1を設定する。経路設定部101は、プレ区分経路としての区分経路SB3と区分経路SB4とを結合し、区分経路SC2を設定する。
【0036】
続いて、結合条件について説明する。結合条件は、車両が走行経路を走行する際のエネルギー消費に関する状態情報に基づいて決定される。状態情報は、走行状態情報、エネルギー状態情報、および道路状態情報の少なくとも1つを含むものである。結合条件は、走行状態情報、エネルギー状態情報、および道路状態情報の少なくとも1つに基づいて決定される。
【0037】
経路設定部101は、走行経路をプレ区分経路に分割し、隣接するプレ区分経路が結合条件を満たすか否かでプレ区分経路を結合して区分経路とする処理を行う。結合条件は、車両が走行経路を走行する際のエネルギー消費に関する状態情報に基づいて決定されるので、隣接するプレ区分経路の状態情報がそれぞれ結合できるほどの類似性を持っているか否かで結合可否が判断される。
【0038】
例えば、結合条件が同一走行での単位距離あたりの停車回数で判断される場合について、図4を参照しながら説明する。図4は、同一走行で区間1と区間2を走行した場合に、それぞれの区間において単位距離当たりの車両の停車回数をプロットしたものである。図4から相関係数を求めることで、経路設定部101は結合条件を満たすか否かを判断することができる。尚、相関係数ではなく、回帰曲線や直線の係数を用いて結合条件を判断することもできる。
【0039】
例えば、走行状態の特徴量の相関係数を用いて結合条件を判断することも可能である。例えば、複数の相関係数について閾値を設定し、相関係数が閾値を超えた場合に結合条件を満たすとすることができる。複数の相関係数について任意の重み付けをし、算出した値に基づいて結合条件を判断してもよい。
【0040】
結合条件の判断の別例について図5を参照しながら説明する。図5に示される例は、クラスター分析を用いて結合条件を判断する一例である。図5に示されるように、走行1,2,3に関して区間1,2,3,4,5のそれぞれにおいて単位距離当たりの停車回数を記録する。経路設定部101は、例えば区間1と区間2とが同じクラスターに属するか否かを公知のクラスター分析手法で判断する。経路設定部101は、区間1と区間2とが同じクラスターに属すると判断すれば結合条件を満たすものとし、区間1と区間2とを結合する。経路設定部101は、区間1と区間2とが同じクラスターに属さないと判断すれば結合条件を満たさないものとし、区間1と区間2とを結合しない。経路設定部101は、他の区間についても同様に処理を実行する。
【0041】
図5に示されるような単一データでのクラスタリングではなく、1回若しくは複数回の走行により取得した各区間の代表指標を複数用いるクラスタリングを実行してもよい。 図6に示される例では、「停車回数」「平均車速」「平均道路勾配」といった複数の代表指標を用いている。経路設定部101は、図5を参照しながら説明したのと同様に、例えば区間1と区間2とが同じクラスターに属するか否かを公知のクラスター分析手法で判断する。経路設定部101は、区間1と区間2とが同じクラスターに属すると判断すれば結合条件を満たすものとし、区間1と区間2とを結合する。経路設定部101は、区間1と区間2とが同じクラスターに属さないと判断すれば結合条件を満たさないものとし、区間1と区間2とを結合しない。経路設定部101は、複数のクラスタリングの結果を用いて結合条件の判断を行ってもよい。
【0042】
図2を再び参照しながら、エネルギー予測装置10による情報処理フローについて説明する。ステップS001の走行経路分割処理が終了すると、プロセスはステップS002に進む。ステップS002では、モデル構築部102が消費予測モデルを構築する。
【0043】
モデル構築部102は、区分経路ごとに消費予測モデルを構築する。図3(B)に示される例では、モデル構築部102は、区分経路SB1,SB2,SB3,SB4のそれぞれについて消費予測モデルを構築する。図3(C)に示される例では、区分経路SC1,SC2のそれぞれについて消費予測モデルを構築する。モデル構築部102は、各区分経路に対して異なる消費予測モデルを構築してもよく、同じ消費予測モデルを構築してもよい。モデル構築部102は、それぞれの区分経路の状況に応じて適切な消費予測モデルを構築する。モデル構築部102は、構築した消費予測モデルを保持部110に格納する。
【0044】
モデル構築部102が構築する消費予測モデルの一例として、エネルギー消費量を直接予測する消費予測モデルがある。この消費予測モデルの説明変数は、情報取得部103が取得した天候情報、道路状態情報、日時情報、およびドライバー情報の少なくとも1つを用いる。
【0045】
天候情報は、降水確率、降水量、および気温の少なくとも1つを含む。道路状態情報は、勾配に関する情報、バス停の位置に関する情報、交差点の位置に関する情報、幅員に関する情報、制限速度に関する情報、信号の位置に関する情報、カーブ曲率に関する情報、および混雑度合いに関する情報の少なくとも1つを示す情報を含む。日時情報は、時刻、曜日、祝祭日、および季節の少なくとも1つを含むものである。ドライバー情報は、ドライバー属性とその属性に対応するドライバーの特徴を示す情報を含む。
【0046】
消費予測モデルの目的変数は、消費エネルギーに関する変数である。消費エネルギーに関する変数としては、エネルギー消費量と相関する量が用いられる。具体的に消費エネルギーに関する変数としては、例えば、燃費、電費、SOCの変化、燃料消費量の変化、インバータ電流の積算値である。
【0047】
消費予測モデルのモデリング手法としては、線形回帰、重回帰、非線形回帰、一般化線形モデル、サポートベクター回帰、ガウス過程回帰、アンサンブル法、決定木、ニューラルネットワークなどの任意の回帰手法を用いることができる。図9に決定木を用いた一例を示す。図9に示される例では、目的変数を電費、使用する特徴量を時間帯と降水の有無としている。
【0048】
消費予測モデルの学習方法については、例えば重回帰分析により式(f01)のような線形多項式を構築することで各目的変数の影響度を定式化することができる。式(f01)において、Yは消費エネルギーと相関する変数であり、βは各説明変数Xの影響度を表している。
Y=β+β+β+β+β+・・・ (f01)
【0049】
消費予測モデルの学習方法としては、他の機械学習手法を用いてもよい。消費予測モデルの学習方法としては、機械学習手法以外の手法を用いることもできる。例えば、情報取得部103が取得した情報に応じて、定数値を採用するといった任意の定式化手法を用いることができる。
【0050】
モデル構築部102が構築する消費予測モデルの別例として、車速波形を予測する消費予測モデルがある。この場合、車両特性格納部201に格納されている車両重量や駆動系のエネルギー効率や走行抵抗などを考慮した物理モデルと、予測した車速波形とから消費エネルギーを算出することができる。
【0051】
モデル構築部102が車速波形を予測する場合、説明変数は、情報取得部103が取得した天候情報、道路状態情報、日時情報、およびドライバー情報の少なくとも1つを用いる。
【0052】
天候情報は、降水確率、降水量、および気温の少なくとも1つを含む。道路状態情報は、勾配に関する情報、バス停の位置に関する情報、交差点の位置に関する情報、幅員に関する情報、制限速度に関する情報、信号の位置に関する情報、カーブ曲率に関する情報、および混雑度合いに関する情報の少なくとも1つを示す情報を含む。日時情報は、時刻、曜日、祝祭日、および季節の少なくとも1つを含む。ドライバー情報は、ドライバー属性とその属性に対応するドライバーの特徴を示す情報を含む。
【0053】
消費予測モデルの目的変数は、停車回数や平均車速、定常時車速(加速完了から減速開始するまでの車速)など車速に関わるあらゆる指標としてよい。例えば、モデル構築部102は、異なる予測モデルを用いて停車回数と定常時車速とを推定する。図7に示されるように、モデル構築部102は推定した停車回数と定常時車速を反映した台形型の車速パターンを作成する。モデル構築部102は、加速度および減速度をドライバー情報や車両全般の特性情報に基づいて設定する。モデル構築部102は、停止位置同士の間隔を、1区間分の走行距離に収まるように任意に定める。
【0054】
消費予測モデルのモデリング手法としては、線形回帰、重回帰、非線形回帰、一般化線形モデル、サポートベクター回帰、ガウス過程回帰、アンサンブル法、決定木、ニューラルネットワークなどの任意の回帰手法を用いることができる。図10に決定木を用いた一例を示す。図10に示される例では、目的変数を平均車速、使用する特徴量を時間帯とドライバー情報としている。
【0055】
モデル構築部102は、平均車速に対応する車速パターンを予め準備し、平均車速に適合する車速パターンを選択することで車速パターンを作成してもよい。モデル構築部102は、例えば平均車速が10km/h-15km/hであれば、図8(A)に示されるような車速パターンを選択する。モデル構築部102は、例えば平均車速が15km/h-25km/hであれば、図8(B)に示されるような車速パターンを選択する。モデル構築部102は、例えば平均車速が25km/h-35km/hであれば、図8(C)に示されるような車速パターンを選択する。モデル構築部102は、例えば停車回数と平均車速など、複数の車速指標値に基づいて決定してもよい。
【0056】
モデル構築部102は、車速パターンを複数準備し、特徴量である説明変数からどの車速パターンを採用するかを分類モデルにより直接推定してもよい。モデル構築部102が分類モデルを採用するにあたり、説明変数は、情報取得部103が取得した天候情報、道路状態情報、日時情報、およびドライバー情報の少なくとも1つを用いる。
【0057】
天候情報は、降水確率、降水量、および気温の少なくとも1つを含む。道路状態情報は、勾配に関する情報、バス停の位置に関する情報、交差点の位置に関する情報、幅員に関する情報、制限速度に関する情報、信号の位置に関する情報、カーブ曲率に関する情報、および混雑度合いに関する情報の少なくとも1つを示す情報を含む。日時情報は、時刻、曜日、祝祭日、および季節の少なくとも1つを含む。ドライバー情報は、ドライバー属性とその属性に対応するドライバーの特徴を示す情報を含む。
【0058】
消費予測モデルの目的変数は、郊外パターン、都市パターン、渋滞パターンといった車速パターンの分類である。消費予測モデルのモデリング手法としては、サポートベクターマシン、ロジスティック回帰、k近傍法、ニューラルネットワーク、単純ベイズ分類、判別分析、決定木といった手法が用いられる。
【0059】
ステップS002の処理が終了すると、プロセスはステップS003に進む。ステップS003では、エネルギー予測部104が消費エネルギーを直接予測するか否かを判断する。消費エネルギーを直接予測する場合(ステップS003:YES)、プロセスはステップS004に進む。消費エネルギーを直接予測しない場合(ステップS003:NO)、プロセスはステップS005に進む。
【0060】
ステップS004では、エネルギー予測部104が、エネルギーを予測する。エネルギー予測部104は、区分経路ごとに設定されている消費予測モデル(式f01参照)を用いて、区分経路ごとに消費エネルギーを予測する。エネルギー予測部104は、目的変数を任意の数式やマップを用いて消費エネルギーに変換することができる。エネルギー予測部104は、区分経路ごとに予測した消費エネルギーを合算し、走行経路全体の消費エネルギーを予測する。
【0061】
ステップS005では、エネルギー予測部104が車速パターンを推定する。エネルギー予測部104は、ステップS002においてモデル構築部102が作成した車速パターンを用いて車速パターンを推定する。特段の追加処理がなければ、エネルギー予測部104はモデル構築部102が作成した車速パターンを用いる。
【0062】
ステップS005の処理が終了すると、プロセスはステップS006に進む。ステップS006では、エネルギー予測部104が車速パターンVを用いて、区分経路ごとに消費エネルギーを予測する。エネルギー予測部104は、例えば次式(f02)を用いて総消費エネルギーを予測する。
総消費エネルギー=走行エネルギー+空調エネルギー+その他のエネルギー (f02)
【0063】
走行エネルギーは、次式(f03)で求められる走行抵抗をエネルギーに換算することで算出することができる。
走行抵抗=加速抵抗+空気抵抗+転がり抵抗+勾配抵抗 (f03)
【0064】
加速抵抗、空気抵抗、勾配抵抗、転がり抵抗は下記の通り求めることができる。
加速抵抗:Ma
空気抵抗:0.5ρλAV
勾配抵抗:Mgsinθ
転がり抵抗:μMg
M:車両重量
A:前面投影面積
λ:空気抵抗係数
μ:転がり抵抗係数
θ:道路勾配
V:車速
a:加速度
ρ:空気密度
g:重力加速度
【0065】
電気自動車やハイブリッド車のように回生機能を有する車両については、減速による負の走行抵抗の大きさと相関するように回生エネルギーを決定することができる。空調エネルギーや補器類等によりその他のエネルギーについては、予め定められた値を用いてもよく、気温などの天候や季節に応じた値を用いてもよい。
【0066】
[付記]下記付記1から7は、技術的に矛盾しない限り任意に組合せ可能である。
【0067】
[付記1]
エネルギー予測装置10は、
車両が走行する走行経路を分割し区分経路を設定する経路設定部101と、
区分経路ごとに車両の消費エネルギーを予測する消費予測モデルを構築するモデル構築部102と、
を備える。
【0068】
付記1によれば、走行経路を分割した区分経路ごとに消費予測モデルを構築するので、区分経路により適合した消費予測モデルを構築することができる。
【0069】
[付記2]
エネルギー予測装置10は、更に、車両が走行経路を走行する際のエネルギー消費に関する状態情報を取得する情報取得部103を備える。経路設定部101は、状態情報の近似性に基づいて走行経路を分割し区分経路を設定する、付記1に記載のエネルギー予測装置10。
【0070】
付記2によれば、状態情報の近似性に基づいて区分経路を設定するので、例えば、走行経路中において状態情報が近似しておらず様々な状況が混在する区間では区分経路を細かく設定し、消費予測モデルの精度を高めることができる。また例えば、走行経路中において状態情報が近似している区間が続けば、区分経路を長く設定することが可能となり、消費予測モデルを共通化することができ、演算負荷を低減することができる。
【0071】
[付記3]
経路設定部101は、走行経路をプレ分割して複数のプレ区分経路を設定し、プレ区分経路それぞれにおける状態情報の近似性に基づいて結合条件を判断し、結合条件を満たしたプレ区分経路同士を結合する処理を経て区分経路を設定する、付記2に記載のエネルギー予測装置10。
【0072】
付記3によれば、プレ区分経路の近似性に基づいて結合条件を判断して結合処理を行うので、近似性を反映した区分経路を設定することが容易になる。結合条件を満たしたプレ区分経路同士を結合する処理を経ればよいので、プレ区分経路同士を結合した区分経路を再度プレ区分経路とみなして結合条件を判断することができる。
【0073】
[付記4]
状態情報は、走行経路を車両が走行する走行状態を特定する走行状態情報、走行経路を車両が走行する際に要するエネルギーを特定するエネルギー状態情報、および走行経路の状態であって車両が走行する際に要するエネルギーに影響を与える道路状態を特定する道路状態情報の少なくとも1つを含む。
経路設定部101は、走行状態情報、エネルギー状態情報、および道路状態情報の少なくとも1つの情報の近似性に基づいて区分経路を設定する、付記1から3のいずれか1つに記載のエネルギー予測装置10。
【0074】
付記4によれば、走行状態情報、エネルギー状態情報、および道路状態情報の少なくとも1つの情報の近似性に基づいて区分経路を設定するので、走行経路の多面的な側面を反映して区分経路を設定することができる。
【0075】
[付記5]
モデル構築部102は、説明変数と目的変数による学習モデルとして消費予測モデルを構築するものであって、説明変数は、天候情報、道路状態、時間情報、およびドライバー情報の少なくとも1つであり、目的変数は、車速パターンに関する指標値、および消費エネルギーに関する指標値の少なくとも1つである、付記1から4のいずれか1つに記載のエネルギー予測装置10。
【0076】
[付記6]
区分経路ごとに構築された消費予測モデルを用いて、区分経路ごとに消費エネルギーを予測し、走行経路における消費エネルギーを予測するエネルギー予測部104を更に備える、付記1から5のいずれか1つに記載のエネルギー予測装置10。
【0077】
[付記7]
目的変数が車速パターンに関する指標値である場合に、車速パターンに関する指標値に基づいて区分経路ごとに生成された車速パターンに基づいた消費エネルギーを予測し、走行経路における消費エネルギーを予測するエネルギー予測部104を更に備える、付記1から5のいずれか1つに記載のエネルギー予測装置10。
【0078】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された1つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、1つ乃至は複数の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することで提供される専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、1つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと1つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された1つ乃至は複数の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0079】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0080】
10:エネルギー予測装置
101:経路設定部
102:モデル構築部
103:情報取得部
104:エネルギー予測部
図1
図2
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図10