(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162620
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】家具
(51)【国際特許分類】
A47B 88/00 20170101AFI20241114BHJP
【FI】
A47B88/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078326
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(72)【発明者】
【氏名】穴沢 信寛
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 真由
(72)【発明者】
【氏名】村上 孝子
【テーマコード(参考)】
3B160
【Fターム(参考)】
3B160AA03
3B160AB02
3B160CA02
3B160CA14
3B160DA02
3B160EA22
3B160EA32
3B160EA36
3B160EA42
3B160EA43
3B160EA44
3B160EA53
3B160EB75
3B160EB82
(57)【要約】
【課題】引出可能な収納体の高さを変更可能な家具を提供する。
【解決手段】家具1は、筐体2と、物品が載置可能に構成され、前記筐体に対してスライド可能に取り付けられる収納体3A,3Bと、前記収納体を前記筐体に対してスライド可能に支持し、前記収納体を支持する高さを切り替え可能に構成された支持機構4と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
物品が載置可能に構成され、前記筐体に対してスライド可能に取り付けられる収納体と、
前記収納体を前記筐体に対してスライド可能に支持し、前記収納体を支持する高さを切り替え可能に構成された支持機構と、を備える家具。
【請求項2】
前記支持機構は、
前記筐体を構成する一対の側板の対向する内面に前記筐体の高さ方向に複数設けられる係止部と、
前記係止部に係止される被係止部を備え、前記係止部に着脱可能に係止され、前記収納体を前記筐体に対してスライドさせるスライド機構と、を備える請求項1に記載の家具。
【請求項3】
前記スライド機構は、前記被係止部が前記係止部に対して検飩式で係止される
請求項2に記載の家具。
【請求項4】
前記支持機構は、高さ方向に前記係止部が複数設けられ、前記一対の側板の前記内面にそれぞれ取り付けられる支持具を前記側板の前後方向に離間して2以上備える請求項2または請求項3に記載の家具。
【請求項5】
前記被係止部が設けられ、前記スライド機構を前記係止部に対して着脱可能に係止させる取付具を備え、
前記スライド機構は前記取付具を介して前記係止部に係止される請求項2に記載の家具。
【請求項6】
前記取付具は、上係止片及び下係止片を備え、
前記係止部は、前記上係止片および前記下係止片が挿入されて係止可能な複数の係止孔であり、
前記上係止片および前記下係止片が前記係止孔に挿入されることにより、前記取付具が前記係止部に対して係止される請求項5に記載の家具。
【請求項7】
前記支持機構は、高さ方向に前記係止部が複数設けられ、前記一対の側板の前記内面にそれぞれ取り付けられる支持具を前記側板の前後方向に離間して2以上備え、
前記取付具には、前記スライド機構が前後方向に異なる高さで前記係止部に係止されることを防止する誤組防止部を備える請求項5または請求項6に記載の家具。
【請求項8】
前記収納体は、
収納物が載置可能に構成される載置部と、
前記載置部の下方に設けられ、前記収納体を前記筐体に対してスライド可能に前記支持機構と係合するスライダが取り付けられるスライダ収納部と、を備える
請求項1に記載の家具。
【請求項9】
前記収納体の前端の角部には、前記収納体に対して回転可能に保持された回転体が露出して設けられている
請求項1に記載の家具。
【請求項10】
前記支持機構は、
レール部を有し、前記係止部に係止されて前記筐体に取り付けられるレール部材と、
前記レール部に対してスライド可能に係止され、前記収納体と連結されるスライダと、を備え、
前記レール部材の後端部に前記レール部の後端を塞ぐカバーが設けられている請求項2に記載の家具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、家具に関する。
【背景技術】
【0002】
物品を収納するキャビネット等の家具において、収納部の手前に置かれた物品は取り出しやすいが、奥側に収納された物品は、手前の物品により動線が妨げられるため取り出し辛い。この他、例えば、炊飯器や電気給湯ポット等は、加熱調理時に蒸気や熱が発生する為、収納棚に収納した状態で加熱調理できない。このような課題に対し、収納部から引き出すことが可能な収納棚を備える家具がある。例えば、特許文献1には、炊飯器、電気給湯ポット、家庭用製パン機等の電化製品を収納する家電収納部を備えるキャビネットが開示されている。特許文献1のキャビネットの家電収納部には、電化製品が載置され、前後に移動可能なスライド部材が設けられている。奥側に収納された物品を取り出す際や炊飯器、電気給湯ポット等を加熱調理する際、スライド部材を収納部から引き出し、電化製品を家電収納部から引き出して使用する。例えば、炊飯器や家庭用製パン機等は内容物を取り出す際、上蓋を開けて使用し、その他の時は上蓋を閉じている。そのため、電化製品の上蓋を開ける際、スライド部材を収納部から引き出して内容物を取り出す。電化製品の上蓋を閉じているときはスライド部材を家電収納部に押し戻した状態で電化製品を収納する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キャビネットに収納される電化製品や食器等の収納物品の寸法は物品によって異なる。これに対し、従来のスライド可能な収納棚や引き出しを備える家具は、収納棚や引き出しを出し入れするための機構を備えるため、高さが固定されている。その結果、収納部の有効高さが既定値となり、収納できる物品が制約される。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、引出可能な収納棚等の収納体を備えた家具において収納体を適切な配置にすることによって収納効率を向上させることができる家具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る家具は、筐体と、物品が載置可能に構成され、前記筐体に対してスライド可能に取り付けられる収納体と、前記収納体を前記筐体に対してスライド可能に支持し、前記収納体を支持する高さを切り替え可能に構成された支持機構と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図8】第一実施形態に係る家具の一部を拡大した正面図。
【
図9】第一実施形態に係る家具の使用態様を示す模式図。
【
図10】第一実施形態に係る家具の使用態様を示す断面図。
【
図18】第四実施形態の家具の使用態様を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第一実施形態)
以下、図面を参照し、家具1の一実施形態を説明する。
図1から
図3に示すように、家具1は、スライド可能な収納棚であるスライド棚3A,3Bを含み、スライド棚3A,3Bに物品を収納可能に構成される。家具1は、例えば、キッチンキャビネット、洗面キャビネット、書類、衣類、雑貨等の各種部品を収納するキャビネットである。スライド棚3A,3Bは収納体の一例である。家具1は、筐体2と、スライド棚3A,3Bと、支持機構4とを備える。筐体2の内部に支持機構4が取り付けられる。スライド棚3A,3Bは、支持機構4を介して筐体2に取り付けられている。
【0009】
筐体2は、底板21と、一対の側板22と、上板23と、背板24とが矩形に組み立てられて構成されている。本実施形態では、筐体2の前部26が開口しているオープンキャビネットを家具1の一例として示している。
【0010】
筐体2の内部に一以上のスライド棚3A,3Bが設けられる。スライド棚3A,3Bは棚の天板である。スライド棚3A,3Bは、物品を載置可能な天板部30を備える。本実施形態では、筐体2の内部に上下2つのスライド棚3A,3Bが設けられた例を示している。スライド棚3A,3Bは、物品が載置可能に構成されている。スライド棚3A,3Bは、筐体2に対して奥行方向Dにスライド可能に取り付けられる。スライド棚3A,3Bは、支持機構4によって筐体2に対して着脱可能に取り付けられる。
図1から
図3に示すように、下段のスライド棚3Bは、天板部30の周縁部から上方に立ち上がる側板39が設けられている。下段のスライド棚3Bはトレー型の棚である。トレー型のスライド棚3Bは、天板部30に載せる物品の落下を防ぐことができるため、転がりやすい物品や滑りやすい物品の収納に適している。上段のスライド棚3Aは側板39を備えず、平板形状を有する。側板を備えない平板形状のスライド棚3Aは、正面視の外観において棚が細く見え、外観意匠性に優れる。
【0011】
スライド棚3A,3Bは、例えば、鋼板製である。スライド棚3A,3Bは、矩形平面の天板部30の周縁部が下方に曲折して前垂れ部35を形成している。
図4に示すように、天板部30の下面31には、長尺な補強部材37が固定されている。補強部材37は、例えば、鋼板製の平板を折り曲げて略直方体形状に形成されている。補強部材37は、例えば、不図示のネジ、接着剤、係合構造等により天板部30に固定されている。補強部材37は、下面31の奥行方向Dの中間部に幅方向Wに沿って延びて設けられている。補強部材37は、天板部30の撓みを防ぎ、物品の安定支持およびスライド棚3A,3Bの円滑なスライド動作に寄与する。
【0012】
天板部30の幅方向Wの両端部の下面31には、スライダ収納部32が設けられている。スライダ収納部32は、スライド機構6の一部が収納される。収納されたスライド機構6は、前垂れ部35で隠れ、家具1の外方から視認できない。天板部30の後端部には、後壁38が上方に突出して設けられている。後壁38は幅方向Wに沿って延びるように設けられている。後壁38の幅方向W両端部には、係合孔381が形成されている。
図4に示すように、天板部30の前部の角33は上面視で外方に突出する曲面を有する。
【0013】
支持機構4は、筐体2に対してスライド可能にスライド棚3A,3Bを支持する。支持機構4は、スライド棚3A,3Bを支持する高さを切り替え可能に構成されている。支持機構4は、支持柱5と、スライド機構6とを備える。
図5に示すように、支持柱5は、一対の側板22の対向する内面25にそれぞれネジ90で取り付けられている。支持柱5は、高さ方向に長尺な柱形状の成形部材である。図示例では、奥行方向Dに離れて2本の支持柱5が側板22の内面25に固定されている。
【0014】
支持柱5は、スライド機構6を係止する複数の係止部49を備える。支持柱5には、奥行方向Dに略平行な係止面55を有する。支持柱5の係止面55の裏面56と側板22の内面25とは離れており、係止面55の裏面56には空間S5が形成されている。係止部49は、例えば、係止面55に貫通して形成され、支持柱5の内外に連通する係止孔49である。複数の係止孔49は、高さ方向に間隔を空けて配置されている。係止孔49は、後述する被係止部である上係止片71および下係止片72が係止可能な孔である。支持柱5は支持具の一例である。
【0015】
スライド機構6は、支持柱5に着脱可能に係止される。スライド機構6は、スライド棚3A,3Bを筐体2に対してスライドさせる機構である。スライド機構6は、レール部材61と、スライダ63とを備える。
図5に示すように、レール部材61は、固定部611と、下部612と、レール部613とが奥行方向Dに沿って延びて設けられている。下部612は略長方形の平板形状を有する。下部612は水平方向に沿って配置される。下部612の幅方向Wの両端部に連続して固定部611ならびにレール部613が略平行に設けられている。固定部611は略長方形の平板形状を有する。固定部611には厚さ方向に貫通する貫通孔615が形成されている。レール部613は、固定部611と幅方向Wに離れた位置に配置されている。固定部611が筐体2の側板22の内面25側に配置され、レール部613が固定部611よりも幅方向Wの中央側に配置される。レール部材61は、奥行方向Dの前端から後端まで連続して形成されている。高さ方向において、固定部611の寸法は、レール部613の寸法より長い。固定部611の上端がレール部613の上端よりも高い位置にある。固定部611、下部612およびレール部613は、筐体2の内面25に固定された状態で、スライダ63およびスライド棚3A,3Bを支持可能な強度を備える。
【0016】
スライダ63は、レール部613に係止されてスライド可能な装置である。
図5および
図9および
図10に示すように、スライダ63は、スライダ本体631と、前ロック部632と、後ロック部634と、を備える。
図8から
図10に示すように、スライダ本体631の下部がレール部613に係止された状態でレール部材61に取り付けられている。
図5に示すように、前ロック部632は、スライダ本体631の前端部に設けられている。前ロック部632は、スライド棚3A,3Bの前部分と着脱可能に係合される。後ロック部634は、スライダ本体631の後端部から上方に突出する後端壁633に設けられている。後ロック部634は、スライド棚3A,3Bの後壁38の係合孔381に挿入され、スライド棚3A,3Bの後部と着脱可能に係合する。スライド機構6は、操作部639をさらに備える。操作部639は、
図4に示すように、スライド棚3A,3Bのスライダ収納部32に取り付けられる。操作部639は、スライド棚3A,3Bとスライダ63との係合解除操作を行う際に操作される。
【0017】
スライド機構6は、取付金具7を介して筐体2に着脱可能に取り付けられる。
図6から
図8に示すように、取付金具7は、固定板70と、上係止片71および下係止片72を備える。取付金具7は、取付具の一例である。固定板70は、厚さ方向が筐体2の幅方向に沿う方向に配置される。取付金具7の内面702は、レール部材61に対向配置される面である。取付金具7の外面701は筐体2の内面25に対向配置される面である。取付金具7の説明は、家具1に取り付けられた状態を用いて説明する。取付金具7の説明における奥行方向Dは、家具1の奥行方向Dであり、
図6は、取付金具7の外面701側から見た斜視図である。
図7は、取付金具7の内面702側から見た斜視図である。固定板70は略矩形の平板形状を有する。固定板70には、貫通孔73が形成されている。固定板70の内面702には、貫通孔73の周囲に突出する環状突起74が形成されている。上係止片71および下係止片72は被係止部の一例である。
【0018】
上係止片71は、固定板70の上端75から外面701方向に突出している。上係止片71は、固定板70の上端75から外面701方向に曲折し、さらに上方に向かって曲折するように突出している。上係止片71の上端部の内面711は固定板70と略平行な面である。下係止片72は、固定板70の外面701に対して鈍角に曲折して下方に傾斜している。下係止片72は、固定板70の下端76から外面701方向に突出している。上係止片71と下係止片72との高さ方向の離間距離は、各係止孔49のピッチに対応している。例えば、上係止片71と下係止片72との高さ方向の離間距離は、係止孔49間のピッチの整数倍に略等しい。
【0019】
取付金具7は、レール部材61の固定部611における一対の支持柱5の奥行方向Dの位置に対応する位置にそれぞれ取り付けられる。固定板70の内面702がレール部材61の固定部611に固定される。固定板70の外面701が支持柱5に対向配置される。固定板70の高さ方向の寸法は、固定部611の高さ方向の寸法と略等しい。この結果、上係止片71および下係止片72の位置をユーザが認識し易い、固定部611の上端部および下端部が上係止片71および下係止片72で安定的に支持される、固定板70がレール部材61と一体的な外観が得られる等の効果が得られる。
【0020】
支持機構4の構造について説明する。取付金具7は、支持柱5に対して検飩式で係止される。
図10に示すように、支持柱5の複数の係止孔49の一つに上係止片71が挿入され、上係止片71が挿入された係止孔49より下方の係止孔49に下係止片72が挿入される。上係止片71および下係止片72は支持柱5の空間S5内に配置されている。下係止片72の下面721が係止孔49の下縁492に接触している。挿入された上係止片71は、係止孔49の上縁491および下縁492から離間し、内面711が支持柱5の裏面56に接触している。取付金具7は、下係止片72の下面721および上係止片71の内面711で支持柱5に支持される。下係止片72は下方に傾斜しており、係止孔49の下縁492に接触した状態で下方に荷重が掛かりながら支持されるため、下係止片72は抜け難い。上係止片71の内面711が係止孔49の上縁491よりも上方で支持柱5の裏面56に接触しているため、上係止片71も抜け難い。この状態で、スライド機構6は支持柱5に係合される。
【0021】
図8に示すように、スライド棚3A,3Bが取り付けられ、かつスライド機構6が支持柱5に係合された状態では、レール部613は、天板部30の幅方向Wの端部のスライダ収納部32内に配置されており、スライダ63が露出しない。この結果、天板部30の幅方向Wの端部がレール部613よりも支持柱5に近い位置に配置され、天板部30の有効載置面積を広く確保できる。天板部30の幅方向Wの端部と支持柱5の係止面55との間の隙間は小さく、スライド棚3A,3Bの意匠性に優れる。
【0022】
家具1の使用方法について説明する。
図1に示すように、家具1は、上下2段のスライド棚3A,3Bと、底板21の上部の固定棚部210とを備える。
図1および
図2に示すように、支持柱5は、各側板22の内面25の高さ方向の中間部に固定されている。各側板22の内面25には、それぞれ2本の支持柱5が奥行方向Dに離間して平行に設けられている。したがって、筐体2には、4本の支持柱5が取り付けられている。4本の支持柱5の係止孔49の高さが略一致するように各支持柱5が取り付けられている。各スライド棚3A,3Bは、支持柱5の係止孔49の範囲内で取り付ける高さを選択できる。
図1では、使用態様の一例として収納物品を二点鎖線で示している。例えば、炊飯器101、電気給湯ポット102を上段のスライド棚3Aに載せて収納している。下段のスライド棚3Bには、茶椀104、コップ105、雑貨箱103を載せて収納している。最下段の固定棚には薄型の電気調理器106が収納されている。炊飯器101、電気給湯ポット102の加熱調理機能を使用する時、筐体2内部に熱や蒸気が溜まることを防ぐため、スライド棚3Aを前方DFに引き出して使用する。スライド棚3Bの手前側に茶椀104が置かれ、奥側にコップ105が置かれている場合、奥側のコップ105を取り外す際、茶椀104と干渉する。しかし、スライド棚3Bを引き出せば、奥側に置かれたコップ105を容易に取り出せる。この例の場合、コップ105の高さに応じて、スライド棚3A,3Bの高さを任意に設定できる。あるいは、固定棚部210に収納する物品の高さに応じてスライド棚3A,3Bの取付高さを任意に設定できる。このように、収納物品のレイアウト、収納物品の高さや収納棚の用途に応じてユーザがスライド棚3A,3Bの高さを所望の高さに設定できる。用途に応じて、スライド棚3Aとスライド棚3Bの上下の位置を入れ替えてもよい。
【0023】
スライド棚3A,3Bの高さを変更する場合、まず、スライド機構6からスライド棚3A,3Bを取り外す。スライド棚3A,3Bは、前ロック部632および後ロック部634によってスライダ63に係合している。ユーザは、スライド棚3A,3Bの前端部の下方に設けられた操作部639を手で操作し、前ロック部632とスライド棚3A,3Bとの係合を解除する。前ロック部632の係合が解除されると、スライド棚3A,3Bが前方に付勢され、後ロック部634を係合孔381から取り外すことができる。スライド棚3A,3Bとスライダ63との係合を解除した後、ユーザはスライド棚3A,3Bを持ち上げて取り外す。
【0024】
次に、スライド機構6を支持柱5から取り外す。取付金具7は支持柱5に対して検飩式で係止されている。上係止片71が係止孔49の上縁491に当たるまでレール部材61を上方に持ち上げると、下係止片72の下端の位置が係止孔49の下縁492よりも高くなり、下係止片72が係止孔49から取り出せる状態になる。この状態で、
図9に二点鎖線で示すようにレール部材61を傾けると、下係止片72が下の係止孔49から露出する。この状態でレール部材61を斜め下方に下げると、上係止片71を上の係止孔49から取り外すことができる。
【0025】
続いて、スライド機構6を任意の高さで支持柱5に取り付ける。ユーザはスライド棚3A,3Bの取付位置を決めたら、レール部材61を支持柱5に対して傾けた状態で斜め下方から近付け、上係止片71を上の係止孔49に挿入する。上係止片71が上の係止孔49の上縁491に当たるまでレール部材61を持ち上げる。その後、上係止片71が係止孔49に挿入された状態で下係止片72が係止面55に近付くように、上係止片71を軸としてレール部材61を回転させて取付金具7の外面701を支持柱5の係止面55に対向配置すると、下係止片72が下の係止孔49に挿入される。続いて、レール部材61を下方に下げる、あるいはレール部材61から手を離してレール部材61を自重により下方に移動させると、挿入された上係止片71は、係止孔49の上縁491および下縁492から離間し、内面711が支持柱5の裏面56に接触する。取付金具7は、下係止片72の下面721および上係止片71の内面711の2箇所で支持柱5に支持される。
【0026】
左右の各レール部材61を上述の方法で装着した後、スライド棚3A,3Bをスライド機構6に係合させる。スライド棚3A,3Bを筐体2の前方からスライド機構6の上方において奥側DRに挿入し、後壁38をスライダ本体631の後端壁633に近付ける。後壁38の係合孔381に後ロック部634を挿入し、天板部30の前端をレール部材61の前端に近付け、押し下げると、前ロック部632と操作部639とが係合する。この状態で、スライド棚3A,3Bはスライダ63と係合し、レール部材61に沿ってスライド棚3A,3Bおよびスライダ63がスライド可能に取り付けられる。
【0027】
上記実施形態に係る家具1によれば、引出可能なスライド棚3A,3Bの高さを変更可能である。したがって、引出可能な収納棚を備えた家具1において収納効率を向上させることができる。ユーザが利用環境に応じて、任意の高さにスライド棚3A,3Bを取り付けることができ、利便性の高い家具1を提供できる。
【0028】
上記実施形態に係る家具1によれば、筐体2に支持されたスライド棚3A,3Bが引き出せるため、筐体2の内部の奥側に載置した物品を容易に取り出すことができる。
【0029】
家具1は、スライド棚3A,3Bが鋼板等の成形材であるため、スライド棚3A,3Bの堅牢性と軽量化を両立でき、取扱い性に優れる。スライド棚3A,3Bが鋼板等の成形材であるため、スライド棚3A,3Bにスライダ収納部32を容易に設けることができる。
【0030】
スライド棚3A,3Bは、幅方向Wの両端部の下面部にスライダ収納部32を備える。この結果、スライド棚の幅方向Wの側部にスライド機構6を設ける場合に比べて、スライド棚3A,3Bの幅方向Wの寸法を長く確保できる。スライド機構6をスライド棚3A,3Bのスライダ収納部32に収められる結果、外観上、スライド機構6が露出せず、意匠性に優れたスライド棚3A,3Bを採用できる。
【0031】
上記実施形態に係る家具1によれば、取付金具7を支持柱5の係止孔49に係止させることによってレール部材61とスライド棚3A,3Bとが係合する。この構成を備える結果、スライド機構6を支持柱5に着脱可能に容易に係合させることができる。支持柱5には複数の係止孔49を備えるため、取付金具7を係止させる係止孔49の位置に応じて、スライド機構6を支持柱5に取り付ける高さを多段階に調整できる。
【0032】
上記実施形態に係る家具1によれば、取付金具7をレール部材61に固定し、取付金具7を介してスライド機構6を支持柱5に係止することができる。この結果、支持機構4に既存のスライド機構6のレール部材61を利用することができる。
【0033】
取付金具7は、支持柱5に対して所謂検飩式で係合されるため、ユーザがスライド機構6を支持柱5に容易に着脱できる。
【0034】
スライド棚3A,3Bは、天板部30の下面側にスライダ収納部32を備えるため、スライダ63を天板部30の幅方向端部の下部に収めることができる。この結果、スライド棚3A,3Bの天面を側板22の近傍まで配置でき、物品の載置面積を広く確保できるとともに、スライド機構6が外観上目立つことなく、意匠性を向上させることができる。スライダ収納部32の前方にリムが設けられるため、スライド機構6が外観上目立つことなく、意匠性を向上させることができる。
【0035】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態に係る家具1Aについて、
図11および
図12を参照して説明する。以下で説明する実施形態において、上記に示す実施形態に対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。本実施形態に係る家具1Aは、筐体2の前部26に扉27を備える例である。
図11に示すように、側板22の内面25に蝶番28が固定されている。蝶番28は、支持柱5の上方に固定されている。図示は省略するが、支持柱5の下方にも蝶番28が固定されている。
【0036】
扉27は、蝶番28を介して筐体2に取り付けられている。扉27は、筐体2の前部26の開口を開閉可能に設けられている。スライド棚3Cを前方DFに引き出し可能にするため、扉27は、レール部材61が延びる方向である奥行方向Dに沿う角度以上に開けることができる。
【0037】
スライド棚3Cは第一実施形態の上段のスライド棚3Aと同様に、側板39を備えない例である。
図11および
図12に示すように、本実施形態のスライド棚3Cは、角33にローラ8が設けられている。
図12に示すように、ローラ8は、高さ方向に沿う回転軸81を中心として回転可能に設けられている。ローラ8は、天板部30に対して回転自在に設けられている。天板部30の角33に、回転体収容部331が形成されている。回転体収容部331内に、ローラ8が軸支されている。角33には、ローラ8が収容された状態で回転体収容部331の開口に嵌合するコーナーカバー80が取り付けられている。ローラ8は、コーナーカバー80から外部に露出している。ローラ8は角33よりも外方に僅かに突出している。具体的には、ローラ8は、コーナーカバー80の外縁よりも外側に僅かに突出している。ローラ8は、回転体の一例である。ローラ8は、
図11に示すように、スライド棚3Cの厚さ方向の一部に設けられていてもよい。回転体は、天板部30の上端から前垂れ部35の下端近傍まで天板部30の厚さ略等しい寸法のローラが設けられていてもよい。
【0038】
図11に示すように、扉27が筐体2の前部26に対して平面視90度以上開くと、扉27に干渉することなくスライド棚3Cを前方DFに引き出すことができる。しかし、扉27の開度が90度未満の状態でスライド棚3Cが引き出されると、天板部30の角33が扉27の内面271に接触して内面271に傷が付く場合がある。これに対し、本実施形態では、扉27とスライド棚3Cとが接触する時、スライド棚3Cの角33よりも外方に突出しているローラ8が扉27の内面271に接触する。天板部30の角33が内面271に直接接触しないため、内面271に傷が付くことを防止できる。さらに、スライド棚3Cを引き出す時にローラ8が内面271に接触すると、スライド棚3Cの移動時にローラ8が内面271に接触することによって回転し、内面271とローラ8との摩擦力がローラ8の回転に作用し、内面271に傷が付くことを防止できる。
【0039】
第一実施形態のように扉27を備えない家具1の場合も、スライド棚3Cの角33にローラ8を設けてもよい。この場合、家具1の前方に他の物品が置かれている状態で、スライド棚3A,3Bが引き出され、角33が当該物品に接触した場合にも、他の物品に傷が付くことを防止できる。
【0040】
実施形態に係る家具1Aによれば、第一実施形態と同様に、引出可能なスライド棚3Cの高さを変更可能である。したがって、引出可能な収納棚を備えた家具1Aにおいて収納効率を向上させることができる。ユーザが利用環境に応じて、任意の高さにスライド棚3Cを取り付けることができ、利便性の高い家具1Aを提供できる。
【0041】
実施形態に係る家具1Aによれば、扉27を備えるため、筐体2内部の収納部を閉じることができる。扉27を備える家具1Aにおいて、ローラ8を備えることによって、スライド棚3Cの扉27への接触に起因して、扉27の内面271に傷が付くことを防止できる。
【0042】
上記実施形態では、家具の一例として電化製品や食器等を収納するキャビネットを例示したが、本開示の家具は、図示例のキャビネットに限定されない。本開示の家具は、例えば、システムキッチンに備えるキャビネット、事務用品や書類を収納する事務用キャビネット、納戸、倉庫、クローゼット等に設置される収納用キャビネット等の収納棚に適用可能である。家具は、例えば、持ち上げて移動可能であり床上に載置する構成であってもよい。家具は、例えば、納戸、倉庫、クローゼットに側板を固定する構成であってもよい。
【0043】
上記実施形態では、筐体2の内部にスライド棚3A,3B,3Cのみが設けられた例を示したが、本開示の家具はこの例に限定されない。家具は、少なくとも1つのスライド棚を備え、他に固定された収納棚、引出、機能部品の固定部等、その他の収納部を備えてもよい。
【0044】
取付具は
図7および
図8に示す例に限定されない。例えば、
図13に示す取付金具7Aのように、固定板70は、固定部611にネジ固定する場合の固定位置や、支持柱5を避けた位置での固定箇所を確保するために、奥行方向Dの寸法を長くしてもよい。この例の取付金具7Aによれば、取付金具7と固定部611とをそれぞれの貫通孔73,615にネジを挿通して固定する場合に、支持柱5と、ネジとが干渉しない位置で、取付金具7と固定部611とを固定できる。この例の取付金具7Aによれば、固定板70とスライダ63の固定部611との固定部分の面積を広く確保でき、取付金具とレール部材61とを強固に固定できる。
【0045】
取付具の他の例を
図14から
図16を参照して説明する。以下の説明において、既に説明した構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
図14から
図16に示す取付金具7Bは、固定板70と、上係止片71と、下係止片72と、複数の外片77,78,79とを備える。固定板70は、略矩形平板形状を有する。
【0046】
図14および
図15に示すように、上係止片71は、固定板70の上端704における奥行方向Dの略中央部に設けられている。下係止片72は、固定板70の高さ方向の中間部に設けられている。固定板70の下端703は下係止片72より下方に位置する。下係止片72および上係止片71は外面701側に折り曲げられている。下係止片72は、固定板70の略中央部において切り込まれ、内面702側から外面701側に曲折して形成されている。
図16に示すように、下係止片72は、固定板70の外面701と略直交する方向に曲折している。図示例では、上係止片71と下係止片72との高さ方向の離間距離は、支持柱5の係止孔49の高さ方向のピッチに略等しい。
【0047】
複数の外片77,78,79は、固定板70の外周縁から外面701側に曲折してそれぞれ形成されている。複数の外片77,78,79は、一対の上外片77と、一対の下外片78と、一対の横外片79とを含む。一対の上外片77は、固定板70の上端704における上係止片71の奥行方向Dの両側に設けられている。一対の上外片77は、上係止片71と同じ外面701側に曲折している。
図16に示すように、上外片77は、固定板70の内面702側から外面701側に向かう方向に略直交する方向に曲折して形成されている。上外片77と上係止片71との間は離間している。上外片77は、上係止片71の変形を防止するために設けられている。詳細は後述する。
【0048】
一対の下外片78は、固定板70の下端703の奥行方向Dの両側に離間して設けられている。
図16に示すように、下外片78は、固定板70の外面701と略直交する方向に曲折している。一対の下外片78は、誤組防止部の一例である。誤組防止部は、スライド機構6が前後方向に異なる高さで係止孔49に係止されることを防止する。詳細は後述する。
【0049】
一対の横外片79は、固定板70の奥行方向Dの両端部から固定板70の外面701と略直交する方向に曲折している。図示例では、一対の横外片79は、固定板70の高さ方向の略全長にわたって形成されている。横外片79は、固定板70の高さ方向の一部に形成されていてもよく、一辺に離間して複数箇所に形成されていてもよい。取付金具7は、複数の外片77,78,79を備えることによって、取付金具7が支持柱5および筐体2の内面25に対して安定配置される。取付金具7は、複数の外片77,78,79を備えることによって、固定板70の強度を高めることができる。
【0050】
図14および
図15に示すように、一対の上外片77の上係止片71側の端部771間の離間距離L1は、支持柱5の奥行方向Dの長さL5より長い。一対の下外片78の離間距離L2は、支持柱5の奥行方向Dの長さL5より僅かに長い。一対の下外片78の離間距離L2は、下外片78の奥行方向Dの中央側の端部781が支持柱5に近接配置された状態で、一対の下外片78間に支持柱5を挿入可能な程度の長さを有する。一対の下外片78の離間距離L2は、上係止片71の離間距離L1よりも短い。
【0051】
上係止片71は、固定板70の上端704から延びる部分が曲折して形成されている。このため、上係止片71に外力が掛かり、上係止片71が変形する場合がある。上外片77は、上係止片71が変形するような外力が上係止片71に掛かることを防ぐ位置に設けられている。家具1の幅方向、すなわち、固定板70の板厚方向における、固定板70の内面702からの上外片77の突出端772の突出長L7は、上係止片71の突出端712の突出長L3より僅かに長い。上外片77は、上係止片71の突出長L3以上で突出することによって、上係止片71に外力が掛かることに起因する上係止片71の変形を防止できる。
【0052】
家具1の幅方向、すなわち、固定板70の板厚方向における、固定板70の内面702からの上係止片71の突出長L3および上外片77の突出長L7は、下係止片72の突出長L4および下外片78の突出長L6より短い。上外片77は、上係止片71を係止孔49に挿入する際に、筐体2の内面25に近付く方向に押し込まれることがある。このとき、上外片77が筐体2の内面25に接触しないように突出長L7が設定されている。
図16に示すように、家具1の幅方向、すなわち固定板70の厚さ方向において、固定板70の内面702からの下外片78および横外片79の突出長L6と下係止片72の突出長L4とは略等しい。下係止片72の突出端722、下外片78の突出端782、および横外片79の突出端791は、同一面上に位置してもよい。
【0053】
取付金具7Bは、第一実施形態の取付金具7と同様に、固定板70の内面702がレール部材61に当接されて固定される。取付金具7Bは、レール部材61の長手方向に離間して取り付けられている。取付金具7Bが支持柱5の係止孔49に係止される態様も第一実施形態の取付金具7と同様である。取付金具7Bは、支持柱5に対して検飩式で係止される。まず、レール部材61を筐体2の内部に挿入し、支持柱5に近付ける。
図17に示すように、筐体2の奥側DRに配置される取付金具7Bの上係止片71を所望の係止孔49に挿入する。続いて、筐体2の手前側に配置される取付金具7Bの上係止片71を係止孔49に挿入する。このとき、手前側の係止孔49は奥側DRの係止孔49と同じ高さの孔に挿入する。その後、上係止片71を軸としてレール部材61を回転させて取付金具7の外面701を支持柱5の係止面55に対向配置すると、下係止片72が下の係止孔49に挿入される。下係止片72が係止孔49に進入すると、第一実施形態の取付金具7と同様に、検飩式で取付金具7が係止される。一対の下外片78の離間距離L2は支持柱5の奥行方向Dの長さL5より僅かに長い。このため、下係止片72が係止孔49に進入すると同時に、一対の下外片78は、支持柱5に近接配置されて一対の下外片78の間に支持柱5が収まる。以上の動作によって、取付金具7Bを介してスライド機構6が筐体2に係止される。
【0054】
ユーザがスライド機構6を所望の位置に取り付ける際、奥行方向Dの奥側の取付金具7Bと手前側の取付金具7Bとを、同じ高さの係止孔49に係止する必要がある。しかし、支持柱5は奥行方向Dに離れて設けられており、複数の係止孔49が高さ方向に並んで形成されている為、奥側と手前側とで高さが異なる係止孔49に取付金具7Bを取り付ける誤組が生じることがある。スライド機構6を異なる高さの係止孔49に係止すると、スライド機構6が適正に動作できなくなる。これに対し、取付金具7Bは、誤組防止部として一対の下外片78を備えるため、誤組を防止できる。具体的には、異なる高さの係止孔49に各上係止片71を挿入した場合、下係止片72を係止孔49に近付けるため、上係止片71を軸としてレール部材61を回転させると、幅方向から見たとき、下外片78の中央側の端部781が支持柱5に対して傾いた状態で近付く。上述の通り、一対の下外片78の離間距離L2は、支持柱5の奥行方向Dの長さL5より僅かに長いため、幅方向から見て支持柱5に対して傾いていると、下外片78の端部781が支持柱5に接触する。この結果、下外片78の端部781同士の間に支持柱5が進入できない。このため、ユーザは、誤組を認識できる。
【0055】
下外片78は、下係止片72と同じ高さ、もしくは下係止片72よりも下側に設けられている。この構成によって、下係止片72が誤った場所の係止孔49に挿入されると、一対の下外片78間に支持柱5が進入できず、誤組を防止できる。下外片78は、下係止片72よりも下方に離れて設けられていると、僅かな傾きであっても、下外片78の端部781間に支持柱5を配置できず、より精度よく誤組を防止できる。
【0056】
取付金具7Bによれば、固定板70の下端703は下係止片72よりも下方に位置する。この結果、スライド機構6は、上係止片71および下係止片72により係止された状態で、下方に荷重が掛かった場合に固定板70の下部がスライド機構6を安定支持する。上外片77に誤組防止機能を付与するよりも円滑に操作できる。
【0057】
図17に示すように、スライド機構6にカバー64,65,66を設けてもよい。レール部材61の前端に前カバー64が設けられている。レール部材61の後端に後カバー65が設けられている。スライダ63の前端にスライダカバー66が設けられている。各カバー64,65,66は、レール部材61およびスライダ63の端部を覆う樹脂製の部材である。前カバー64は、スライダ63の少なくとも前端を覆う。後カバー65は、レール部材61の少なくとも後端を覆う。
【0058】
後カバー65は、さらに、後板部651を有する。後板部651は、レール部材61の後端部に縦方向に延びる壁である。後板部651は、固定部611と、下部612と、レール部613の間に跨るように設けられている。後カバー65は、後板部651の縁部から前方に突出する突出縁652を備える。突出縁652は、スライド棚3A,3B等の収納体が収納位置に配置された時に収納体の後端が当接する位置まで突出している。突出縁652は、スライダ本体631の後端壁633の突出量と略等しい。スライダカバー66は、スライダ63の前端部のうち、収納体から露出する部分を覆う。図示は省略するが、スライダ63の後端にもカバーを設けてもよい。後カバー65において、後板部651の奥側DRの面に、例えば、「奥」という文字や印を付与し、ユーザがレール部材61の奥行方向Dの配置を目視により確認できる構成を採用してもよい。
【0059】
スライド機構6にカバー64,65,66を設けることによって、レール部材61およびスライダ63の製造時の切断面を覆うことができる。この結果、例えば、レール部材61およびスライダ63の切断面が粗い、所謂バリが生じていても、カバー64,65,66で覆うことができる。したがって、バリを除去する作業を行うことなくレール部材61およびスライダ63の品質を均一に保つことができる。後カバー65は後板部651を備える結果、ユーザがスライド機構6の取付方向を直感的に認識しやすい。具体的には、奥行方向Dの奥側DRに向かって筐体2を見たとき、左用のスライド機構6と右用のスライド機構6とは略同一形態のものが左右対称に構成されている。そのため、ユーザがレール部材61の前後方向を誤認する場合がある。これに対し、後カバー65に後板部651が設けられることによって、ユーザは、後カバー65が設けられている側がレール部材61の後端であることを直感的に把握できる。
【0060】
後カバー65に突出縁652を設けることによって、
図18に示すように、スライド棚3Aが奥側DRに押し込まれた時、収納体の後端が突出縁652に接触するため、突出縁652が緩衝材として機能し得る。
【0061】
上記実施形態では、レール部材61に取付金具7,7A,7Bを固定し、取付金具7,7A,7Bを介してレール部材61を支持柱5に係止する例を示したが、取付具がスライド機構6と一体に形成される構成であってもよい。例えば、取付金具7,7A,7Bの各係止片71,72のような突起を、被係止部としてレール部材61の固定部611に一体に設ける構成であってもよい。
【0062】
上記実施形態では、取付金具7,7A,7Bの各係止片71,72を支持柱5の係止部49に挿入して検飩式で係止する例を示したが、スライド機構6を支持柱5に係止させる構成はこの例に限定されない。例えば、支持柱5の表面から突出する複数の突起を設け、取付金具7に上係止孔および下係止孔を設け、取付金具7を検飩式で係止することによって、スライド機構6を支持柱5に係止する構成であってもよい。上記実施形態のように、支持柱5に係止部として係止孔49を設け、スライド機構6側の取付金具7,7A,7Bに各係止片71,72を設ける構成の場合、支持柱5から係止突起が突出せず、かつ取付金具7に係止部としてのスペースが不要であるため、支持機構4を筐体2に取り付ける機構の省スペース化を図ることができる。この結果、スライド棚3A,3B,3Cを側板22の内面25近傍まで設けることができ、天板部30の有効載置面積をより広く確保でき、かつ、支持機構4を外観上目立ち難くする効果が得られる。
【0063】
上記実施形態では、スライド棚3A,3B,3Cが鋼板製の成型品である例を示したが、スライド棚3A,3B,3Cは上記の例に限定されない。スライド棚は支持機構を介して筐体に対して高さを切り替え可能かつスライド可能に取り付けられる構成であれば、他の材料や構成であってもよい。
【0064】
回転体として、天板部30の厚さ方向に沿う回転軸回りに回転可能なローラ8の例を示したが、回転体は図示例に限定されない。回転体は、スライド棚の角部から僅かに突出して露出し、スライド棚に対して回転可能に構成されていればよい。例えば、回転体が球形であり、回転体収納部が回転体の球面に沿って接触する曲面を有し、回転体が回転体収納部内で回転可能に保持されるトラックボール構造であってもよい。
【0065】
家具1は、スライド棚3A,3Bのみを備える例の他、引き出し、非スライド棚等、他の収納部を含む家具であってもよい。例えば、
図19に示すように、収納体として、引出3Dが設けられる家具であってもよい。
図19に示す家具1Bでは、引出3Dおよび第一実施形態で示したスライド棚3Aを備える。引出3Dは、スライド棚3Aの天板部30に対応する矩形板状の底部の外周縁に4枚の側板39が設けられている。左右の側板39の下端部には、スライダ63を係止する係止溝67が形成されている。係止溝67は、側板39の外面から窪んで形成されている。係止溝67は、奥行方向Dに沿って延びる溝である。スライダ63は、係止溝67内を奥行方向Dに進退可能に設けられている。引出3Dも、スライド棚3A,3Bと同様に、筐体2に対して着脱可能且つ奥行方向Dに進退可能に取り付けられる。
【0066】
家具は、
図1に示す扉を備えない家具1や、
図11に示すように開閉可能な扉27を側板22に取り付けた家具1Aに限定されない。例えば、筐体2の前部開口の一部に回転扉を設ける例や、スライド機構と干渉しない位置にスライド式扉を設ける例であってもよい。
【0067】
上記実施形態では、係止部の一例として、筐体2の内面25に支持柱5を取り付ける例を示したが、係止部の構成は支持柱5の例に限定されない。例えば、
図20に示すように、支持柱5を用いず、筐体2の内面25に複数の係止孔49が形成されている構成であってもよい。この例の場合、筐体2が鋼板等で形成され、側板22の内部に中空部が形成されている。筐体2の内面の係止孔49に、例えば第一実施形態の取付金具を係止させてスライド機構を筐体2に取り付ける。その他の構成は、第一実施形態と同様である。
【0068】
以上、本開示の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。上述の各実施形態において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0069】
(1)筐体と、
物品が載置可能に構成され、前記筐体に対してスライド可能に取り付けられる収納体と、
前記収納体を前記筐体に対してスライド可能に支持し、前記収納体を支持する高さを切り替え可能に構成された支持機構と、を備える家具。
(2)前記支持機構は、
前記筐体を構成する一対の側板の対向する内面に前記筐体の高さ方向に複数設けられる係止部と、
前記係止部に係止される被係止部を備え、前記係止部に着脱可能に係止され、前記収納体を前記筐体に対してスライドさせるスライド機構と、を備える上記(1)に記載の家具。
(3)前記スライド機構は、前記被係止部が前記係止部に対して検飩式で係止される上記(2)に記載の家具。
(4)前記支持機構は、高さ方向に前記係止部が複数設けられ、前記一対の側板の前記内面にそれぞれ取り付けられる支持具を前記側板の前後方向に離間して2以上備える上記(2)または(3)に記載の家具。
(5)前記被係止部が設けられ、前記スライド機構を前記係止部に対して着脱可能に係止させる取付具を備え、
前記スライド機構は前記取付具を介して前記係止部に係止される上記(2)または(3)に記載の家具。
(6)前記取付具は、上係止片及び下係止片を備え、
前記係止部は、前記上係止片および前記下係止片が挿入されて係止可能な複数の係止孔であり、
前記上係止片および前記下係止片が前記係止孔に挿入されることにより、前記取付具が前記係止部に対して係止される上記(5)に記載の家具。
(7)前記支持機構は、高さ方向に前記係止部が複数設けられ、前記一対の側板の前記内面にそれぞれ取り付けられる支持具を前記側板の前後方向に離間して2以上備え、
前記取付具には、前記スライド機構が前後方向に異なる高さで前記係止部に係止されることを防止する誤組防止部を備える上記(5)または(6)に記載の家具。
(8)前記収納体は、
収納物が載置可能に構成される載置部と、
前記載置部の下方に設けられ、前記収納体を前記筐体に対してスライド可能に前記支持機構と係合するスライダが取り付けられるスライダ収納部と、を備える上記(1)から(7)のいずれかに記載の家具。
(9)前記収納体の前端の角部には、前記収納体に対して回転可能に保持された回転体が露出して設けられている上記(1)から(8)のいずれかに記載の家具。
(10)前記支持機構は、
レール部を有し、前記係止部に係止されて前記筐体に取り付けられるレール部材と、
前記レール部に対してスライド可能に係止され、前記収納体と連結されるスライダと、を備え、
前記レール部材の後端部に前記レール部の後端を塞ぐカバーが設けられている上記(2)から7のいずれかに記載の家具。
【符号の説明】
【0070】
1,1A・・・家具、2・・・筐体、3A,3B,3C・・・スライド棚、4・・・支持機構、5・・・支持柱(支持具)、6・・・スライド機構、7・・・取付金具(取付具)、8・・・ローラ(回転体)、30・・・天板部、32・・・スライダ収納部、49・・・係止孔(係止部)、63・・・スライダ、71・・・上係止片、72・・・下係止片