IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社大北製作所の特許一覧

<>
  • 特開-端子付きケース及びその製造方法 図1
  • 特開-端子付きケース及びその製造方法 図2
  • 特開-端子付きケース及びその製造方法 図3
  • 特開-端子付きケース及びその製造方法 図4
  • 特開-端子付きケース及びその製造方法 図5
  • 特開-端子付きケース及びその製造方法 図6
  • 特開-端子付きケース及びその製造方法 図7
  • 特開-端子付きケース及びその製造方法 図8
  • 特開-端子付きケース及びその製造方法 図9
  • 特開-端子付きケース及びその製造方法 図10
  • 特開-端子付きケース及びその製造方法 図11
  • 特開-端子付きケース及びその製造方法 図12
  • 特開-端子付きケース及びその製造方法 図13
  • 特開-端子付きケース及びその製造方法 図14
  • 特開-端子付きケース及びその製造方法 図15
  • 特開-端子付きケース及びその製造方法 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162621
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】端子付きケース及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/103 20210101AFI20241114BHJP
   H01M 50/119 20210101ALI20241114BHJP
   H01M 50/15 20210101ALI20241114BHJP
   H01M 50/159 20210101ALI20241114BHJP
   H01M 50/169 20210101ALI20241114BHJP
   H01M 50/176 20210101ALI20241114BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20241114BHJP
   H01M 50/193 20210101ALI20241114BHJP
   H01M 50/197 20210101ALI20241114BHJP
   H01M 50/198 20210101ALI20241114BHJP
   H01M 50/543 20210101ALI20241114BHJP
【FI】
H01M50/103
H01M50/119
H01M50/15
H01M50/159
H01M50/169
H01M50/176
H01M50/184 A
H01M50/193
H01M50/197
H01M50/198
H01M50/543
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078327
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】513045127
【氏名又は名称】株式会社大北製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大北 幸史
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 大輝
(72)【発明者】
【氏名】大北 浩司
【テーマコード(参考)】
5H011
5H043
【Fターム(参考)】
5H011AA17
5H011CC06
5H011DD09
5H011DD13
5H011EE04
5H011FF02
5H011GG09
5H011HH02
5H011HH13
5H011JJ03
5H011JJ07
5H043AA01
5H043BA11
5H043DA02
5H043DA09
5H043DA13
5H043HA12D
5H043HA21D
5H043KA08D
5H043KA09D
5H043KA22D
5H043KA27D
(57)【要約】
【課題】気密性を確保しつつ薄型化と大容量化の両立が図られるとともに、強度に優れた端子付きケースを提供する。
【解決手段】端子付きケース1は、外部端子30が挿通され、シール部40によりシールされた貫通孔12を有する金属製の第1ケース部10と、第1ケース部10の外縁の一辺から延在し、折り曲げ部14を介して第1ケース部10に重なるように折り曲げられて第1ケース部10との間に電極101が収容される空間部102を形成するように構成された金属製の第2ケース部20と、第1ケース部10の外縁のうち第2ケース部20が延在する一辺を除く三辺には第2ケース部20を第1ケース部10に重ね合わせた状態で第2ケース部20の外縁に溶接可能なフランジ部13が形成されており、空間部102はフランジ部13と第2ケース部20の外縁との溶接により形成される溶接部Bと折り曲げ部14とにより密閉可能に構成されている。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電デバイスの電極を収容するように構成されており、一端が前記電極に接続されるとともに他端が外部機器に接続される外部端子が固定された端子付きケースであって、
平面視形状が四角形であって、前記外部端子が挿通されるとともに樹脂材料製のシール部によりシールされた貫通孔を有する金属製の第1ケース部と、
前記第1ケース部の外縁の一辺から延在するとともに、折り曲げ可能に構成された折り曲げ部を介して前記第1ケース部に重ね合わせるように折り曲げられて前記第1ケース部との間に前記電極が収容される空間部を形成するように構成された、平面視形状が四角形の金属製の第2ケース部と、
前記第1ケース部の外縁のうち、前記第2ケース部が延在する上記一辺を除く三辺には、前記第2ケース部を前記第1ケース部に重ね合わせた状態で前記第2ケース部の外縁に溶接可能なフランジ部が形成されており、
前記空間部は、前記フランジ部と前記第2ケース部の外縁との溶接により形成される溶接部と前記折り曲げ部とにより密閉可能に構成されている、端子付きケース。
【請求項2】
前記フランジ部の幅は、前記端子付きケースの長手方向の長さの20分の1以下である、請求項1に記載の端子付きケース。
【請求項3】
前記第1ケース部及び前記第2ケース部の少なくとも一方には、前記空間部を構成する凹部が形成されており、
前記折り曲げ部と前記凹部との間には、前記凹部の外方に延在する平面部が形成されている、請求項1又は2に記載の端子付きケース。
【請求項4】
前記貫通孔は、前記凹部における、前記第1ケース部と前記第2ケース部との重ね方向に立ち上がった立ち面に形成されている、請求項3に記載の端子付きケース。
【請求項5】
前記第1ケース部と前記第2ケース部との重ね方向の大きさは、前記第1ケース部の四辺のうち最も長い長辺の長さの10分の1以下である、請求項1又は2に記載の端子付きケース。
【請求項6】
前記第1ケース部及び前記第2ケース部の形成材料は、ステンレス鋼、鉄鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン又はチタン合金からなる、請求項1又は2に記載の端子付きケース。
【請求項7】
前記シール部は、前記外部端子に積層された第1接合層と、前記貫通孔の壁面に積層された第2接合層と、前記第1接合層と第2接合層との間に位置して両者に接合された第3接合層とを有しており、
前記第1接合層及び前記第2接合層は、エポキシ樹脂、ポリアミド・イミド樹脂又はポリイミド樹脂からなり、
前記第3接合層は、エンジニアリングプラスチック又はスーパーエンジニアリングプラスチックからなる、請求項1又は2に記載の端子付きケース。
【請求項8】
前記第1接合層及び前記第2接合層は電着塗装被膜からなる、請求項7に記載の端子付きケース。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の端子付きケースの製造方法であって、
一枚の金属製の板材を加工して前記第1ケース部と前記第2ケース部との一体物を成型し、前記一体物における前記第1ケース部に貫通孔を形成する成形工程と、
前記貫通孔に前記外部端子を挿通して前記シール部を形成して、前記外部端子を前記一体物に取り付ける端子取り付け工程と、
前記一体物における前記第2ケース部を前記第1ケース部に重ね合わせて前記折り曲げ部を形成する折曲部形成工程と、
を含む、端子付きケースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子付きケース及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池やキャパシタなどの蓄電デバイスでは、薄型化の要請に対応するために外装材をラミネートフィルムで構成したいわゆるパウチ型ケースが広く用いられている。例えば、特許文献1には、シート状のラミネートフィルム外装体で電極体を覆い、ラミネートフィルム外装体の外周を互いに溶着することで電極体を内部空間に密閉する構成が開示されている。当該構成では、電極体に接続される正極接続端子及び負極接続端子は、樹脂部材を介してラミネートフィルム外装体外周の溶着部に挟み込まれた状態で外方に突出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-200822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の構成では、ラミネートフィルム外装体外周の溶着部は樹脂製のフィルム同士を溶着して形成されるため、気密性を確保するにはある程度の幅が必要となり、溶着部の幅は少なくともラミネートフィルム外装体の長手方向の長さの10分の1以上は必要とされる。そして、当該溶着部をラミネートフィルム外装体外周の全域において確保する必要があるため、その分、電極体が設けられる内部空間が狭くなっている。これにより、電極体の体積が小さく制限されており、蓄電デバイスの大容量化を図るには改善の余地がある。また、ラミネートフィルム外装体は柔らかく、比較的強度が低い。そのため、強い衝撃が加わると内部の電極体の破損や、ラミネートフィルム外装体自体の破損を招く恐れがある。また、ラミネートフィルム外装体では樹脂同士の接合となるため、金属同士の溶接に比べて気密に対する信頼性が低い。
【0005】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、気密性を確保しつつ薄型化と大容量化の両立が図られるとともに、強度に優れた端子付きケースを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様は、
蓄電デバイスの電極を収容するように構成されており、一端が前記電極に接続されるとともに他端が外部機器に接続される外部端子が固定された端子付きケースであって、
平面視形状が四角形であって、前記外部端子が挿通されるとともに樹脂材料製のシール部によりシールされた貫通孔を有する金属製の第1ケース部と、
前記第1ケース部の外縁の一辺から延在するとともに、折り曲げ可能に構成された折曲部を介して前記第1ケース部に重ね合わせるように折り曲げられて前記第1ケース部との間に前記電極が収容される空間部を形成するように構成された、平面視形状が四角形の金属製の第2ケース部と、
前記第1ケース部の外縁のうち、前記第2ケース部が延在する上記一辺を除く三辺には、前記第2ケース部を前記第1ケース部に重ね合わせた状態で前記第2ケース部の外縁に溶接可能なフランジ部が形成されており、
前記空間部は、前記フランジ部と前記第2ケース部の外縁との溶接により形成される溶接部と前記折り曲げ部とにより密閉可能に構成されている、端子付きケースにある。
【0007】
本発明の他の態様は、
上述の端子付きケースの製造方法であって、
一枚の金属製の板材を加工して前記第1ケース部と前記第2ケース部との一体物を成型し、前記一体物における前記第1ケース部に貫通孔を形成する成形工程と、
前記貫通孔に前記外部端子を挿通して前記シール部を形成して、前記外部端子を前記一体物に取り付ける端子取り付け工程と、
前記一体物における前記第2ケース部を前記第1ケース部に重ね合わせて前記折り曲げ部を形成する折曲部形成工程と、
を含む、端子付きケースの製造方法にある。
【発明の効果】
【0008】
上記一の態様の端子付きケースによれば、第1ケース部の外縁のうち、第2ケース部が延在する一辺を除く三辺には、第2ケース部を第1ケース部に重ね合わせた状態で第2ケース部の外縁に溶接可能なフランジ部が形成されており、蓄電デバイスの電極が収容される空間部は、フランジ部と第2ケース部の外縁との溶接部と折り曲げ部とにより密閉可能となっている。これにより、溶接部は金属同士の溶接により形成されるため、ラミネートフィルム外装体における樹脂同士の接合部よりも狭い幅でも十分な気密性が得られる。そのため、ラミネートフィルム外装体を用いる場合に比べて、フランジ部の幅を小さくすることができる。その結果、ケースの厚みを大きくしなくても空間部を広く確保しやすくなり、薄型化と大容量化との両立を図ることができる。また、第1ケース部及び第2ケース部は、金属製であるため、ラミネートフィルム外装体を用いる場合に比べて強度を高めることができるとともに、溶接部は金属同士の溶接であるため、ラミネートフィルム外装体を用いた場合の樹脂同士の接合に比べて、気密に対する信頼性を向上することができる。
【0009】
上記他の態様の端子付きケースの製造方法によれば、上記効果を奏する端子付きケースを製造することができる。
【0010】
以上のごとく、本発明によれば、気密性を確保しつつ薄型化と大容量化の両立が図られるとともに、強度に優れた端子付きケースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1における、第1ケース部と第2ケース部の一体物の斜視図。
図2】実施形態1における、第1ケース部と第2ケース部の一体物の上面図。
図3】実施形態1における、第1ケース部と第2ケース部の一体物と外部端子の斜視図。
図4図3における、IV-IV線位置矢視断面図。
図5】実施形態1における、端子付きケースの折り曲げ前の状態を示す斜視図。
図6図5におけるVI-VI線位置矢視断面図。
図7図6の一部拡大図。
図8】実施形態1における、端子付きケースの折り曲げ状態を説明する概念図。
図9】変形形態における、端子付きケースの折り曲げ状態を説明する概念図。
図10】実施形態1における、端子付きケースの折り曲げ後の状態の一例を示す斜視図。
図11】実施形態1における、端子付きケースの使用態様を説明する斜視図。
図12】実施形態1における、端子付きケースの使用態様を説明する断面図。
図13】変形形態における、端子付きケースの使用態様を説明する断面図。
図14】実施形態1における、端子付きケースの使用態様を説明する他の斜視図。
図15図14におけるXV- XV線位置矢視断面図。
図16図14におけるXVI- XVI線位置矢視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
前記フランジ部の幅は、前記端子付きケースの長手方向の長さの20分の1以下であることが好ましい。この場合には、フランジ部の幅が十分に小さくなるため、蓄電デバイスの大容量を一層図ることができる。
【0013】
前記第1ケース部及び前記第2ケース部の少なくとも一方には、前記空間部を構成する凹部が形成されており、前記折り曲げ部と前記凹部との間には、前記凹部の外方に延在する平面部が形成されていることが好ましい。第2ケース部を折り曲げ部において折り曲げた際に折り曲げ部の近傍領域が変形する恐れがあるが、折り曲げ部と凹部との間の平面部が設けられていることにより、このような変形は平面部に生じて、凹部に変形が生じることを防止することができる。これにより、空間部の形状を維持することができる。
【0014】
前記貫通孔は、前記凹部における、前記第1ケース部と前記第2ケース部との重ね方向に立ち上がった立ち面に形成されていることが好ましい。これにより、外部端子を上記重ね方向(すなわち、厚さ方向)に直交する方向に取り出すことができるため、当該ケースを備える蓄電デバイスを厚さ方向に積層したり厚さ方向に近接させて配置する際に外部端子が干渉することを防止できる。
【0015】
前記第1ケース部と前記第2ケース部との重ね方向の大きさは、前記第1ケース部の四辺のうち最も長い長辺の長さの10分の1以下であることが好ましい。これにより、一層の薄型化を図ることができる。
【0016】
前記第1ケース部及び前記第2ケース部は、鉄、鉄合金、アルミニウム又はアルミニウム合金の板材からなることが好ましい。この場合には、ケースの強度を向上することができる。
【0017】
前記シール部は、前記貫通孔の壁面に積層された第1接合層と、前記外部端子に積層された第2接合層と、前記第1接合層と第2接合層との間に位置して両者に接合された第3接合層とを有しており、前記第1接合層及び前記第2接合層は、エポキシ樹脂、ポリアミド・イミド樹脂又はポリイミド樹脂からなり、前記第3接合層は、エンジニアリングプラスチック又はスーパーエンジニアリングプラスチックからなる。この場合には、エンジニアリングプラスチック又はスーパーエンジニアリングプラスチックにより第3接合層を形成することにより、シール部の絶縁性、耐熱性、耐薬品性、機械特性を向上できる。そして、第1接合層及び第2接合層を形成するエポキシ樹脂、ポリアミド・イミド樹脂又はポリイミド樹脂は、熱溶融されたエンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックと濡れ性がよく互いになじみやすく、エンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックに対して親和性及び相溶性の高い表面特性を有する。また、これらの材料は耐熱性に優れるため、成型時に熱溶融したエンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックによる熱劣化も生じにくい。従って、第1接合層、第2接合層及び第3接合層を上述のごとく形成することにより、金属製である貫通孔の壁面及び外部端子とシール部の第1接合層及び第2接合層との間に十分な密着性が得られる。また、第1接合層及び第2接合層と第3接合層とは樹脂同士のため互いに十分な密着性が得られる。その結果、シール部の気密性を一層向上させることができる。
【0018】
なお、本明細書では、エンジニアリングプラスチックとは、耐熱温度が100℃以上であって、いわゆる汎用プラスチックよりも引張強度及び弾性率が優れた樹脂材料を指す。また、スーパーエンジニアリングプラスチックとは、エンジニアリングプラスチックのうち耐熱温度が150℃以上の樹脂材料を指す。
【0019】
前記第1接合層及び前記第2接合層は電着塗装被膜からなることが好ましい。電着塗装は、水溶性の電着塗装用塗料を入れた浴中に、導体である被塗物を浸漬し、被塗物と対向電極との間に電圧を印加し、電流を流すことにより被塗物の表面に均一な水不溶性の塗膜を形成し、これを焼付乾燥することにより、被塗物の表面に強固な高分子薄膜を形成する技術である。そして、電着塗装によれば、被塗物が金属などの導電体であれば、複雑な形状であってもその表面に均一な樹脂製の薄膜を形成することができる。従って、第1接合層及び第2接合層が電着塗装被膜からなることにより、貫通孔の壁面や外部端子が複雑な形状であっても第1接合層及び第2接合層を均一な膜厚にすることができる。また、第1接合層及び第2接合層を強固な樹脂被膜にして耐熱性に優れたものとすることができる。その結果、第3接合層を形成する際の溶融熱による第1接合層及び第2接合層の熱劣化を防止することができ、シール部の気密性に一層向上できる。
【0020】
(実施形態1)
上記端子付きケースの実施形態について、図1~14を用いて以下に説明する。
図12に示すように、実施形態1の端子付きケース1は、蓄電デバイス100の電極101を収容するように構成されており、第1ケース部10、第2ケース部20及び外部端子30を備える。なお、本実施形態では、端子付きケース1の厚さ方向をZ、端子付きケース1の長手方向をY、厚さ方向Z及び長手方向Yに直交する方向を幅方向Xとする。以下、各構成について詳述する。なお、本実施形態では、厚さ方向Zは、第1ケース部10と第2ケース部20との重ね方向(図14参照)と一致している。
【0021】
1.第1ケース部10
図1及び図2に示すように、第1ケース部10は、平面視形状が四角形であって、本実施形態では長方形としており、4つの辺となる端部10a、10b、10c及び10dを有する。なお、第1ケース部10は正方形でもよい。
【0022】
第1ケース部10は、凹部11を有している。当該凹部11は、厚さ方向Zに凹んでいる。そして、図1及び図2に示すように、凹部11は、4つの壁面11a、11b、11c及び11dと底面11eを有する。4つの壁面11a~11dは、厚さ方向Zに立ち上がった立ち面であり、底面11eは幅方向X及び長手方向Yに平行な面となっている。図14に示すように、凹部11は、後述する第2ケース部20と第1ケース部10を重ね合わせた状態で、両者の間に電極101が収容される空間部102を形成する。凹部11の大きさは、収容する電極101の大きさに合わせて設定される。なお、本実施形態では、凹部11の大きさは、厚さ方向Zの大きさ(すなわち凹部11の深さ)は4.0mm、長手方向Yの長さが80mm、幅方向Xの長さが60mmとしている。
【0023】
凹部11を形成する壁面11cには、貫通孔12が形成されている。貫通孔12は、後述するように図3に示す外部端子30が挿通され、図6に示すシール部40によりシールされる。本実施形態では、貫通孔12として二つの貫通孔121、122が設けられている。
【0024】
第1ケース部10は、金属製であって、その形成材料は、例えば、ステンレス鋼、鉄鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金などとすることができる。本実施形態では、第1ケース部10は、ステンレス鋼の板材からなる。第1ケース部10を構成するステンレス鋼の厚さは限定されないが、0.05~0.2mmとすることができる。
【0025】
第1ケース部10の外周には、後述する第2ケース部20が延在する端部10aを除いた3辺の端部10b、10c、10dにフランジ部13が形成されている。フランジ部13は、幅方向X及び長手方向Yの平行な平面状をなしている。フランジ部13は凹部11を囲むように設けられている。そして、図2に示すフランジ部13の幅(平面視において凹部11の外縁から第1ケース部10のそれぞれの端部10b~10dまでの距離)dは、限定されないが、端子付きケース1の長手方向Yの長さの20分の1以下とすることができ、本実施形態では、端子付きケース1の長手方向Yの長さ約80mmに対して、フランジ部13の幅dを3.0mm以下としている。なお、図面では、便宜的にフランジ部13の幅dは大きく示しており、各構成の大きさの大小関係は実物とは異なる。
【0026】
図2に示すように、第1ケース部10の外周のうち第2ケース部20が延在する端部10aは、後に折り曲げ部14となる折り曲げ予定部14aとなっている。そして、折り曲げ予定部14a(折り曲げ部14)と凹部11との間には、凹部11の外方に延在する平面部15が形成されている。本実施形態では、平面部15の幅e、すなわち、折り曲げ予定部14a(折り曲げ部14)と凹部11との距離eは、フランジ部13の幅dと同等となっている。
【0027】
2.第2ケース部20
第2ケース部20は、図1及び図2に示すように、第1ケース部10の外縁の一辺である端部10aから延在する。そして、当該端部10aは折り曲げ可能に構成された折り曲げ予定部14a(折り曲げ部14)となっている。これにより、図8に示すように、第2ケース部20は、折り曲げ予定部14aで折り曲げて折り曲げ部14を形成することで第1ケース部10に重ね合わせることができるようになっている。そして、第2ケース部20の外形は、第1ケース部10に重ね合わせた状態で、第1ケース部10の外形に一致するように平面視形状が四角形となっている。
【0028】
本実施形態では、第2ケース部20は平板状となっているが、これに限定されず、例えば、図9に示すように、第2ケース部20に、第1ケース部10の凹部11と対向する凹部21を設けてもよい。この場合は、凹部11と凹部21とで電極101を収容する空間部102を形成することができる。
【0029】
第2ケース部20は、第1ケース部10と一体的に形成されており、第1ケース部10と同一の形成材料からなる。本実施形態では、第2ケース部20は、第1ケース部10の4つの辺のうちの短辺となる端部10aから延在させたが、これに限らず、第1ケース部10の4つの辺のうちの長辺となる端部10b又は端部10dから延在させてもよい。
【0030】
折り曲げ予定部14aを折り曲げるタイミングは限定されず、電極101を収容するとき、すなわち、フランジ部13を溶接する際に折り曲げることとしてもよい。また、電極101を収容する前の状態、例えば、後述する外部端子30を第1ケース部10に取り付けた後であって、電極101を収容する前に予め折り曲げて折り目をつけておいてもよい。
【0031】
3.外部端子30
上述の通り、第1ケース部10の貫通孔12には、外部端子30(31、32)が挿通されている。図11に示すように、外部端子30は凹部11内に位置する一方の端部31a、32aが電極101の集電体101aに接続され、凹部11外に位置する他方の端部31b、32bが図示しない外部機器に接続される。端部31a、32aと集電体101aとの接続は、スポット溶接、超音波溶接、レーザ溶接などの溶接により行うことができる。外部端子30の材質は限定されず、銅、アルミニウムなどとすることができる。
【0032】
本実施形態では、図5に示すように、第1ケース部10の凹部11における短辺の壁面11a、11cのうち、折り曲げ予定部14a(折り曲げ部14)が設けられる側と反対側の短辺の壁面11cに貫通孔12を設けて、外部端子30が折り曲げ予定部14a(折り曲げ部14)と反対側に位置するようにした。外部端子30を設ける位置はこれに限定されず、第1ケース部10の凹部11における長辺の壁面11b、11dに設けることとしてもよいし、折り曲げ予定部14a(折り曲げ部14)が設けられる側の短辺の壁面11aに設けることとしてもよい。
【0033】
4.シール部40
シール部40は、図6に示すように、外部端子30と貫通孔12との隙間に設けられて、当該隙間をシールする。本実施形態では、シール部40は、第1接合層41、第2接合層42及び第3接合層43からなる。図3に示すように、第1接合層41は、外部端子30の外表面において、貫通孔12内に位置する部位を含む外部端子30の長手方向の中央領域に設けられている。第1接合層41は、電着塗装により形成された樹脂被膜である。第1接合層41を構成する樹脂材料(第1の樹脂材料)は、後述する第3接合層43を形成する第2の樹脂材料よりも、外部端子30への密着性が高いものが採用される。例えば、第1接合層41を構成する樹脂材料として、カチオン電着塗料である熱硬化性のエポキシ樹脂、ポリアミド・イミド樹脂又はポリイミド樹脂を採用することができ、本実施形態では、熱硬化性のエポキシ樹脂を採用している。第1接合層41の平均厚さは、10~80μmの範囲内とすることができ、好ましくは20~50μmの範囲内であり、本実施形態では平均厚さを30μmとしている。第1接合層41の平均厚さが10μm未満である場合は、端子表面の微細な凹凸等に起因して、第1接合層41が薄すぎるなどの塗りむらが生じたり、第1接合層41が形成されない塗り残しが生じたりするため好ましくない。また、第1接合層41の平均厚さが80μmを超える場合は、層形成に過度の時間がかかるおそれがあり現実的でない。
【0034】
本実施形態では、図4に示すように、第1ケース部10における貫通孔12の壁面と、第1ケース部10における貫通孔12の周辺領域に、第2接合層42が形成されている。本実施形態では、第2接合層42は、第1接合層41と同様に、電着塗装により形成された樹脂被膜であって、第1接合層41と同様の構成を有している。
【0035】
なお、第1ケース部10において、電着塗装による樹脂被膜は、第2接合層42として貫通孔12の壁面とその周辺領域に設けるだけでなく、第1ケース部10の凹部11の壁面11a~11d及び底面11eの全域に設けるとともに、さらに第2ケース部20の内側面のうち、凹部11に対向する領域にも設けることとしてもよい。この場合には、電極101が収納される空間部102の内側表面全域を絶縁状態とすることができる。通常、金属製ケースを用いる場合は、金属製ケースとの絶縁のために電極101を絶縁フィルムで覆うことが行われているが、空間部102の内側表面全域を絶縁状態とすることで電極101を絶縁フィルムで覆う必要がなくなり、さらなる薄型化を図ることができる。なお、第1ケース部10及び第2ケース部20における電着塗装による樹脂被膜は、第1ケース部10のフランジ部13と第2ケース部20におけるフランジ部13との対向部分には設けないようにする。これにより、両者が確実に溶接されるようにすることができる。
【0036】
図6に示すように、第1接合層41と第2接合層42との間には、第3接合層43が設けられている。第3接合層43を構成する樹脂材料(第2の樹脂材料)としては、後述するインサート成形が可能なように熱可塑性の樹脂材料であることが好ましく、インサート成形時に高温に曝されることに鑑みて、耐熱温度が150℃以上であることが好ましい。また、第1の樹脂材料と第2の樹脂材料との相溶性及び接着性を確保する観点から、両者の溶解性パラメータ(SP値)を近い値とすることが好ましい。例えば、第1の樹脂材料としてSP値11程度のエポキシ樹脂や、SP値13.6程度のポリアミド・イミド樹脂又はポリイミド樹脂などを採用する場合を考慮して、第2の樹脂材料として溶解性パラメータ(SP値)が9.5~15の範囲内のものを採用とすることができる。
【0037】
例えば、第3接合層43を構成する樹脂材料(第2の樹脂材料)としては、ナイロン樹脂、ポリカーボネート樹脂などのエンジニアリングプラスチックや、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリサルホン(PSF)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリアミド・イミド(PAI)樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂などのスーパーエンジニアリングプラスチックを採用することができ、本実施形態では、PPS樹脂を採用している。
【0038】
本実施形態では、図7に示すように、第1接合層41と第3接合層43との間には、両者の樹脂材料が互いに相溶してなる第1相溶層44が形成されている。また、第2接合層42と第3接合層43との間には、両者の樹脂材料が互いに相溶してなる第2相溶層45が形成されている。なお、第1相溶層44と第3接合層43及び第1接合層41との境界は実際には不明瞭となっている。同様に、第2相溶層45と第3接合層43及び第2接合層42との境界も実際には不明瞭となっている。
【0039】
5.端子付きケース1の製造方法
以下に、本実施形態の端子付きケース1の製造方法について説明する。
端子付きケース1の製造方法は、成形工程S1、端子取り付け工程S2、折曲部形成工程S3を含む。
まず、成形工程S1では、図2に示すように、一枚の金属製の板材を加工して第1ケース部10と第2ケース部20との一体物1aを成型し、当該一体物1aにおける第1ケース部10に貫通孔12を形成する。貫通孔12は、外部端子30が遊嵌可能なように外部端子30の外形よりも大きく形成される。また、図2に示すように、一枚の金属製の板材から形成された一体物1aには、第1ケース部10に凹部11が形成されている。
【0040】
次に、端子取り付け工程S2では、貫通孔12に外部端子30を挿通してシール部40を形成して、外部端子30を一体物1aに取り付ける。本実施形態では、上述のように、外部端子30に電着塗装により水溶性化された熱硬化性のポリエポキシ樹脂を外部端子30に付着させて当該エポキシ樹脂の硬化温度未満の温度環境で乾燥して半硬化状態の第1接合層41を形成する。
【0041】
本実施形態における端子取り付け工程S2の電着塗装は以下のように行う。まず、外部端子30の表面に対して洗浄及び脱脂を行う。その後、20%の固形分濃度のカチオン型エポキシ樹脂系電着塗料(株式会社日本ペイント社製、型番インシュリード3030)を満たした電着塗装用の浴槽中に上記洗浄及び脱脂後の外部端子30を浸漬し、印加電圧200Vで3分間通電させる。その後、外部端子30を浴槽から取り出して水洗いし、130℃の乾燥炉で20分乾燥させる。これにより、平均厚さ50μmの半硬化状態のエポキシ樹脂被膜からなる第1接合層41を形成することができる。
【0042】
これとともに、第1ケース部10の貫通孔12の壁面及び貫通孔12の近傍領域にも、外部端子30の場合と同様に電着塗装により半硬化状態のエポキシ樹脂被膜からなる第2接合層42を作成する。なお、外部端子30及び第1ケース部10において、電着塗装被膜を形成したくない領域にはマスキングを施して、電着塗装被膜が形成されないようにする。
【0043】
その後、外部端子30を貫通孔12に挿通させた状態で、図6に示すように貫通孔12における外部端子30と貫通孔12の壁面との隙間をPPS樹脂からなる第3接合層43で封止する。第3接合層43の形成はインサート成形により行う。本実施形態では、半硬化状態のエポキシ樹脂被膜からなる第1接合層41が形成された外部端子30を、半硬化状態のエポキシ樹脂被膜からなる第2接合層42が形成された第1ケース部10の貫通孔12に挿通した状態で、図示しないインサート成形用金型にセットした後、330℃に加熱して溶融させたPPS樹脂をインサート成形用金型に流し込んで、図6及び図7に示すように第1接合層41と第2接合層42との間に充填して第3接合層43を形成する。これにより、第1接合層41を介して第3接合層43と外部端子30とを互いに接合させるとともに、第2接合層42を介して第3接合層43と第1ケース部10の貫通孔12の壁面とを互いに接合させる。
【0044】
その後、折曲部形成工程S3では、図8に示すように、一体物1aにおける第2ケース部20を第1ケース部10に重ね合わせることで、折り曲げ予定部14aが矢印Pの方向に折り曲げられて、折り曲げ部14が形成される。その結果、折り曲げ予定部14aが予め折り曲げられて折り目がついた折り曲げ部14となる。これにより、図10に示す端子付きケース1が形成される。なお、端子付きケース1の使用前の状態での折り曲げ部14の折り曲げ角度は限定されない。
【0045】
6.使用態様
次に、端子付きケース1の使用態様を説明する。図11及び図12に示すように、端子付きケース1は、蓄電デバイス100の電極101を収容して使用される。まず、図11に示すように、外部端子30の一端31a、32aに電極101に備えられた集電体101aが重なるように、電極101を第1ケース部10の凹部11内に載置する。そして、外部端子30の一端31a、32aと集電体101aとを接続する。当該接続は、図12に示すように、外部端子30の一端31aと集電体101aとを厚さ方向Zにおいて重ねた状態にして両者を溶接して溶接部33を形成することにより行う。当該溶接は、スポット溶接、超音波溶接、レーザ溶接などとすることができる。
【0046】
外部端子30の一端31a、32aと集電体101aとの溶接を行う際に、両者の間に隙間が生じていると溶接部33が溶接不良となる恐れがあるため、両者を互いに押し付けあった状態で溶接することが好ましい。そのために、図13に示す変形形態のように、第3接合層43をインサート成形する際に、図示しない所定の金型を用いて、第3接合層43の一部を外部端子30の一端31a、32aと凹部11の底面11eとの間に充填することにより支持台431を形成することができる。当該支持台431により、外部端子30の一端31a、32aと集電体101aとの溶接を行う際に厚さ方向Zの上方から両者を支持台431に押し付けることにより、外部端子30の一端31a、32aと集電体101aとの間に隙間が生じないようにして、溶接部33に溶接不良が発生することを防止することができる。
【0047】
続いて、折り曲げられて折り目がついた折り曲げ部14に沿って折り曲げて、図14に示すように、第2ケース部20を第1ケース部10に重ね合わせる。そして、図14に太線Lで示すように、フランジ部13に沿って第2ケース部20側から厚さ方向Zにレーザを照射して溶接を行う。当該溶接は、第1ケース部10の外周の4辺のうち、折り曲げ部14が形成された短辺の端部10aを除く3辺の端部10b、10c、10dにおいて行われる。すなわち、当該溶接は、図14に太線Lで示すように、厚さ方向Zから見てU字状に行う。このようにU字状にレーザを照射すればいいため、治具により第2ケース部20を第1ケース部10に押し付けながらレーザを照射する場合に、折り曲げ部14側から治具を使用することで治具とレーザ照射装置とが干渉することが防止され、治具がレーザ照射の邪魔にならず、作業性が良い。
【0048】
これにより、図15に示すように、端部10cにおいて、フランジ部13とフランジ部13に重なる第2ケース部20の外周部とが溶接部Bにより互いに溶接される。これと同様に、端部10c、10dも溶接され、3辺の端部10b、10c、10dが溶接される気密状態が保たれる。また、図16に示すように、端部10aは、折り曲げ部14が折りたたまれた状態となっており、気密状態が保たれる。なお、図16に示すように、折り曲げ部14の内側には、幅方向Xに連通する隙間Qが形成される可能性があるが、図14に示すL1、L2で示した部位において、フランジ部13の溶接の際に溶けだした溶融金属が当該隙間Qの幅方向Xの端部に流れ込んで閉塞することとなる。そのため、隙間Qが形成された場合でも、気密状態は維持されることとなる。これにより蓄電デバイス100が完成する。
【0049】
図14に示すように、本実施形態の端子付きケース1は薄型に形成される。例えば、図15に示す端子付きケース1の厚さhは、図14に示す端子付きケース1の長手方向Yの長さkに対して十分小さく、例えば、厚さhは長さkの10分の1以下とすることができ、より好ましくは、20分の1以下である。
【0050】
7.作用効果
次に、本実施形態の端子付きケース1における作用効果について、詳述する。
本実施形態の端子付きケース1によれば、第1ケース部10の外縁のうち、第2ケース部20が延在する一辺10aを除く三辺10b、10c、10dには、第2ケース部20を第1ケース部10に重ね合わせた状態で第2ケース部20の外縁に溶接可能なフランジ部13が形成されており、蓄電デバイス100の電極101が収容される空間部102は、フランジ部13と第2ケース部20の外縁との溶接部Bと折り曲げ部14とにより密閉可能となっている。これにより、溶接部Bは金属同士の溶接により形成されるため、ラミネートフィルム外装体における樹脂同士の接合部よりも狭い幅でも十分な気密性が得られる。そのため、ラミネートフィルム外装体を用いる場合に比べて、フランジ部13の幅を小さくすることができる。その結果、ケースの厚みを大きくしなくても空間部102を広く確保しやすくなり、薄型化と大容量化との両立を図ることができる。また、第1ケース部10及び第2ケース部20は、金属製であるため、ラミネートフィルム外装体を用いる場合に比べて強度を高めることができるとともに、溶接部Bは金属同士の溶接であるため、ラミネートフィルム外装体を用いた場合の樹脂同士の接合に比べて、気密に対する信頼性を向上することができる。
【0051】
また、本実施形態では、フランジ部13の幅dは、端子付きケース1の長手方向Yの長さの20分の1以下である。これにより、フランジ部13の幅dが十分に小さくなるため、蓄電デバイス100の大容量を一層図ることができる。
【0052】
また、本実施形態では、第1ケース部10及び第2ケース部20の少なくとも一方には、空間部102を構成する凹部11が形成されており、折り曲げ部14と凹部11との間には、凹部11の外方に延在する平面部15が形成されている。第2ケース部20を折り曲げ部14において折り曲げた際に折り曲げ部14の近傍領域が変形する恐れがあるが、折り曲げ部14と凹部11との間の平面部15が設けられていることにより、このような変形は平面部15に生じて、凹部11に変形が生じることを防止することができる。これにより、空間部102の形状を維持することができる。
【0053】
また、本実施形態では、貫通孔12は、凹部11における、第1ケース部10と第2ケース部20との重ね方向に立ち上がった立ち面11cに形成されている。これにより、外部端子30を重ね方向(すなわち、厚さ方向Z)に直交する方向に取り出すことができるため、端子付きケース1を備える蓄電デバイス100を厚さ方向Zに積層したり厚さ方向Zに近接させて配置する際に外部端子30が干渉することを防止できる。
【0054】
また、本実施形態では、第1ケース部10と第2ケース部20との重ね方向の大きさ(厚さh)は、第1ケース部10の四辺のうち最も長い長辺である端部10b、10dの長さkの10分の1以下である。これにより、一層の薄型化が図られている。
【0055】
また、本実施形態では、第1ケース部10及び第2ケース部20は、鉄、鉄合金、アルミニウム又はアルミニウム合金の板材からなる。これにより、端子付きケース1の強度を向上することができる。
【0056】
また、本実施形態では、シール部40は、外部端子30に積層された第1接合層41と、貫通孔12の壁面に積層された第2接合層42と、第1接合層41と第2接合層42との間に位置して両者に接合された第3接合層43とを有しており、第1接合層41及び第2接合層42は、エポキシ樹脂、ポリアミド・イミド樹脂又はポリイミド樹脂からなり、第3接合層43は、エンジニアリングプラスチック又はスーパーエンジニアリングプラスチックからなる。これにより、エンジニアリングプラスチック又はスーパーエンジニアリングプラスチックにより第3接合層43を形成することにより、シール部40の絶縁性、耐熱性、耐薬品性、機械特性を向上できる。そして、第1接合層41及び第2接合層42を形成するエポキシ樹脂、ポリアミド・イミド樹脂又はポリイミド樹脂は、熱溶融されたエンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックと濡れ性がよく互いになじみやすく、エンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックに対して親和性及び相溶性の高い表面特性を有する。また、これらの材料は耐熱性に優れるため、成型時に熱溶融したエンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックによる熱劣化も生じにくい。従って、第1接合層41、第2接合層42及び第3接合層43を上述のごとく形成することにより、金属製である貫通孔12の壁面及び外部端子30とシール部40の第1接合層41及び第2接合層42との間に十分な密着性が得られる。また、第1接合層41及び第2接合層42と第3接合層43とは樹脂同士のため互いに十分な密着性が得られる。その結果、シール部40の気密性を一層向上させることができる。
【0057】
また、本実施形態では、第1接合層41及び第2接合層42は電着塗装被膜からなる。電着塗装は、水溶性の電着塗装用塗料を入れた浴中に、導体である被塗物を浸漬し、被塗物と対向電極との間に電圧を印加し、電流を流すことにより被塗物の表面に均一な水不溶性の塗膜を形成し、これを焼付乾燥することにより、被塗物の表面に強固な高分子薄膜を形成する技術である。そして、電着塗装によれば、被塗物が金属などの導電体であれば、複雑な形状であってもその表面に均一な樹脂製の薄膜を形成することができる。従って、第1接合層41及び第2接合層42が電着塗装被膜からなることにより、貫通孔12の壁面や外部端子30が複雑な形状であっても第1接合層41及び第2接合層42を均一な膜厚にすることができる。また、第1接合層41及び第2接合層42を強固な樹脂被膜にして耐熱性に優れたものとすることができる。その結果、第3接合層43を形成する際の溶融熱による第1接合層41及び第2接合層42の熱劣化を防止することができ、シール部40の気密性に一層向上できる。
【0058】
そして、本実施形態では、端子付きケース1の製造方法S1~S3によれば、上述の作用効果を奏する端子付きケース1を製造することができる。
【0059】
以上のごとく、本実施形態によれば、気密性を確保しつつ薄型化と大容量化の両立が図られるとともに、強度に優れた端子付きケース1を提供することができる。
【0060】
本発明は上記各実施形態及び各変形形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 端子付きケース
10 第1ケース部
20 第2ケース部
11 凹部
12 貫通孔
13 フランジ部
14 折り曲げ部
14a 折り曲げ予定部
15 平面部
30 外部端子
40 シール部
41 第1接合層
42 第2接合層
43 第3接合層
44 第1相溶層
45 第2相溶層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16