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2024-162626化学増幅ポジ型レジスト組成物及びレジストパターン形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162626
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】化学増幅ポジ型レジスト組成物及びレジストパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20241114BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20241114BHJP
   C08F 212/14 20060101ALI20241114BHJP
   C08F 220/30 20060101ALI20241114BHJP
   C08F 232/08 20060101ALI20241114BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/039 601
G03F7/004 503A
C08F212/14
C08F220/30
C08F232/08
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078332
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増永 恵一
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 聡
(72)【発明者】
【氏名】福島 将大
(72)【発明者】
【氏名】小竹 正晃
(72)【発明者】
【氏名】松澤 雄太
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
4J100
【Fターム(参考)】
2H197AA12
2H197CA03
2H197CA06
2H197CA08
2H197CA09
2H197CA10
2H197CE10
2H197HA03
2H197HA08
2H197HA10
2H197JA22
2H225AF15P
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4J100AB02R
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4J100AB07Q
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4J100BC03Q
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4J100BC09Q
4J100BC12R
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4J100BC43Q
4J100CA04
4J100CA05
4J100CA06
4J100DA01
4J100JA38
(57)【要約】      (修正有)
【課題】パターン形成時の矩形性を向上し、かつLER、解像性、パターン忠実性及びドーズマージンが改善されたレジストパターンを得ることができる化学増幅ポジ型レジスト組成物、及びレジストパターン形成方法を提供する。
【解決手段】(A)下記式(A)で表されるオニウム塩を含むクエンチャー、及び(B)水酸基を有する芳香環を側鎖に有する特定構造の繰り返し単位を含み、酸の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大するポリマーを含むベースポリマーを含む化学増幅ポジ型レジスト組成物。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(A)で表されるオニウム塩を含むクエンチャー、及び(B)下記式(B1)で表される繰り返し単位を含み、酸の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大するポリマーを含むベースポリマーを含む化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化1】
(式中、n1は、0~6の整数である。n2は、0~3の整数である。n3は、1~4の整数である。
Wは、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数2~20の窒素原子含有脂肪族複素環である。
A及びLBは、それぞれ独立に、単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合又はカーバメート結合である。
Lは、単結合、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビレン基である。
1は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。n1≧2のとき、複数のR1が、互いに結合してこれらが結合するW上の炭素原子と共に環を形成してもよい。
1~Q4は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~6のヒドロカルビル基又は炭素数1~6のフッ素化ヒドロカルビル基である。ただし、Q1~Q4のうち少なくとも1つは、フッ素原子又は炭素数1~6のフッ素化ヒドロカルビル基である。また、Q3とQ4とが、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。
ALは、酸不安定基である。
+は、オニウムカチオンである。)
【化2】
(式中、a1は、0又は1である。a2は、0~2の整数である。a3は、0≦a3≦5+2(a2)-a4を満たす整数である。a4は、1~3の整数である。
Aは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
11は、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビルオキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基である。
1は、単結合又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基であり、該飽和ヒドロカルビレン基の-CH2-が-O-で置換されていてもよい。)
【請求項2】
ALが、下記式(AL-1)又は(AL-2)で表される基である請求項1記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化3】
(式中、LCは、-O-又は-S-である。
2、R3及びR4は、それぞれ独立に、炭素数1~10のヒドロカルビル基である。また、R2、R3及びR4のいずれか2つが、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。
5及びR6は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~10のヒドロカルビル基である。R7は、炭素数1~20のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基の-CH2-が、-O-又は-S-に置換されていてもよい。また、R6とR7とが、互いに結合してこれらが結合する炭素原子及びLCと共に炭素数3~20の複素環基を形成してもよく、該複素環基の-CH2-が、-O-又は-S-に置換されていてもよい。
m1及びm2は、それぞれ独立に、0又は1である。
*は、隣接する-O-との結合手を表す。)
【請求項3】
+が、下記式(cation-1)で表されるスルホニウムカチオン、下記式(cation-2)で表されるヨードニウムカチオン又は下記式(cation-3)表されるアンモニウムカチオンである請求項1記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化4】
(式中、Rc1~Rc9は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~30のヒドロカルビル基である。また、Rc1及びRc2が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。)
【請求項4】
前記オニウム塩が、下記式(A1)で表されるものである請求項1記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化5】
(式中、n1~n3、W、LA、XL、R1、Q1~Q4、RAL及びZ+は、前記と同じ。)
【請求項5】
前記オニウム塩が、下記式(A2)で表されるものである請求項4記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化6】
(式中、n1、W、LA、XL、R1、Q1~Q3、RAL及びZ+は、前記と同じ。)
【請求項6】
前記ポリマーが、更に、下記式(B2-1)で表される繰り返し単位及び下記式(B2-2)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種を含むものである請求項1記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化7】
(式中、b1は、0又は1である。b2は、0~2の整数である。b3は、0≦b3≦5+2(b2)-b4を満たす整数である。b4は、1~3の整数である。b5は、0又は1である。
c1は、0~2の整数である。c2は、0~2の整数である。c3は、0~5の整数である。c4は、0~2の整数である。
Aは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
12は、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビルオキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基である。
13及びR14は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~10のヒドロカルビル基であり、R13とR14とが、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。
15は、それぞれ独立に、フッ素原子、炭素数1~5のフッ素化アルキル基又は炭素数1~5のフッ素化アルコキシ基である。
16は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~10のヒドロカルビル基である。
2は、単結合又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基であり、該飽和ヒドロカルビレン基の-CH2-が-O-で置換されていてもよい。
b4が1のとき、Xは、酸不安定基である。b4が2又は3のとき、Xは、それぞれ独立に、水素原子又は酸不安定基であるが、少なくとも1つは酸不安定基である。
3は、単結合、フェニレン基、ナフチレン基又は*-C(=O)-O-A31-である。A31は、ヒドロキシ基、エーテル結合、エステル結合若しくはラクトン環を含んでいてもよい炭素数1~20の脂肪族ヒドロカルビレン基、又はフェニレン基若しくはナフチレン基である。*は、主鎖の炭素原子との結合手である。)
【請求項7】
前記ポリマーが、更に、下記式(B3)で表される繰り返し単位、下記式(B4)で表される繰り返し単位及び下記式(B5)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化8】
(式中、d及びeは、それぞれ独立に、0~4の整数である。f1は、0又は1である。f2は、0~2の整数である。f3は、0~5の整数である。
Aは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
21及びR22は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~8の飽和ヒドロカルビル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~8の飽和ヒドロカルビルオキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基である。
23は、ハロゲン原子、炭素数1~20の飽和ヒドロカルビル基、炭素数1~20の飽和ヒドロカルビルオキシ基、炭素数2~20の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基、炭素数2~20の飽和ヒドロカルビルオキシヒドロカルビル基、炭素数2~20の飽和ヒドロカルビルチオヒドロカルビル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1~20の飽和ヒドロカルビルスルフィニル基又は炭素数1~20の飽和ヒドロカルビルスルホニル基である。
4は、単結合又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基であり、該飽和ヒドロカルビレン基の-CH2-が-O-で置換されていてもよい。)
【請求項8】
前記ポリマーが、更に、下記式(B6)で表される繰り返し単位、下記式(B7)で表される繰り返し単位、下記式(B8)で表される繰り返し単位、下記式(B9)で表される繰り返し単位、下記式(B10)で表される繰り返し単位、下記式(B11)で表される繰り返し単位、下記式(B12)で表される繰り返し単位及び下記式(B13)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化9】
(式中、RBは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。
1は、単結合、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基、ナフチレン基若しくはこれらを組み合わせて得られる炭素数7~18の基、又は*-O-Y11-、*-C(=O)-O-Y11-若しくは*-C(=O)-NH-Y11-であり、Y11は、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基、ナフチレン基又はこれらを組み合わせて得られる炭素数7~18の基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。
2は、単結合又は**-Y21-C(=O)-O-であり、Y21は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビレン基である。
3は、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、トリフルオロメチル基で置換されたフェニレン基、*-O-Y31-、*-C(=O)-O-Y31-又は*-C(=O)-NH-Y31-である。Y31は、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、トリフルオロメチル基で置換されたフェニレン基又はこれらを組み合わせて得られる炭素数7~20の基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。
*は、主鎖の炭素原子との結合手であり、**は、式中の酸素原子との結合手である。
4は、単結合、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~30のヒドロカルビレン基である。
g1及びg2は、それぞれ独立に、0又は1であるが、Y4が単結合のとき、g1及びg2は、0である。
31~R48は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。また、R31及びR32が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよく、R33及びR34、R36及びR37、又はR39及びR40が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。
HFは、水素原子又はトリフルオロメチル基である。
Xa-は、非求核性対向イオンである。)
【請求項9】
前記ベースポリマーに含まれるポリマーの全繰り返し単位中、芳香環骨格を有する繰り返し単位の含有率が60モル%以上である請求項1記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【請求項10】
更に、(C)光酸発生剤を含む請求項1記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【請求項11】
前記光酸発生剤のアニオンの酸強度(pKa)が、-3.0以上である請求項10記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【請求項12】
(A)クエンチャーに対する(C)光酸発生剤の含有比率が、質量比で6未満である請求項10記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【請求項13】
更に、(D)下記式(D1)で表される繰り返し単位、下記式(D2)で表される繰り返し単位、下記式(D3)で表される繰り返し単位及び下記式(D4)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種を含み、更に下記式(D5)で表される繰り返し単位及び下記式(D6)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよいフッ素原子含有ポリマーを含む請求項1記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化10】
(式中、xは、1~3の整数である。yは、0≦y≦5+2z-xを満たす整数である。zは、0又は1である。hは、1~3の整数である。
Cは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
Dは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。
101、R102、R104及びR105は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビル基である。
103、R106、R107及びR108は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~15のヒドロカルビル基、炭素数1~15のフッ素化ヒドロカルビル基又は酸不安定基であり、R103、R106、R107及びR108がヒドロカルビル基又はフッ素化ヒドロカルビル基のとき、炭素-炭素結合間に、エーテル結合又はカルボニル基が介在していてもよい。
109は、水素原子、又は炭素-炭素結合間にヘテロ原子を含む基が介在していてもよい直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~5のヒドロカルビル基である。
110は、炭素-炭素結合間にヘテロ原子を含む基が介在していてもよい直鎖状又は分岐状の炭素数1~5のヒドロカルビル基である。
111は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1~20の飽和ヒドロカルビル基であり、前記飽和ヒドロカルビル基の-CH2-の一部が、エステル結合又はエーテル結合で置換されていてもよい。
1は、炭素数1~20の(h+1)価の炭化水素基又は炭素数1~20の(h+1)価のフッ素化炭化水素基である。
2は、単結合、*-C(=O)-O-又は*-C(=O)-NH-である。*は、主鎖の炭素原子との結合手である。
3は、単結合、-O-、*-C(=O)-O-Z31-Z32-又は*-C(=O)-NH-Z31-Z32-である。Z31は、単結合又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基である。Z32は、単結合、エステル結合、エーテル結合又はスルホンアミド結合である。*は、主鎖の炭素原子との結合手である。)
【請求項14】
更に、(E)有機溶剤を含む請求項1記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程、高エネルギー線を用いて前記レジスト膜にパターンを照射する工程、及びアルカリ現像液を用いて前記パターンを照射したレジスト膜を現像する工程を含むレジストパターン形成方法。
【請求項16】
前記高エネルギー線が、極端紫外線又は電子線である請求項15記載のレジストパターン形成方法。
【請求項17】
前記基板の最表面が、クロム、ケイ素、タンタル、モリブデン、コバルト、ニッケル、タングステン及びスズから選ばれる少なくとも1種を含む材料からなる請求項15記載のレジストパターン形成方法。
【請求項18】
前記基板が、透過型又は反射型マスクブランクである請求項15記載のレジストパターン形成方法。
【請求項19】
請求項1~14のいずれか1項記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物を塗布した透過型又は反射型マスクブランク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学増幅ポジ型レジスト組成物及びレジストパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が急速に進んでいる。このうち、0.2μm以下のパターンの加工では、もっぱら酸を触媒とした化学増幅レジスト組成物が使用されている。また、露光源として紫外線、遠紫外線、電子線(EB)等の高エネルギー線が用いられており、特に超微細加工技術として利用されているEBリソグラフィーは、半導体製造用のフォトマスクを作製する際のフォトマスクブランクの加工方法としても不可欠となっている。
【0003】
酸性側鎖を有する芳香族骨格を多量に有するポリマー、例えばポリヒドロキシスチレンは、KrFエキシマレーザーを用いるKrFリソグラフィー用レジスト組成物の材料として有用であるが、波長200nm付近の光に対して大きな吸収を示すため、ArFエキシマレーザーを用いるArFリソグラフィー用レジスト組成物の材料としては使用されなかった。しかし、ArFエキシマレーザーによる加工限界よりも小さなパターンを形成するための有力な技術であるEBリソグラフィー用レジスト組成物や、極端紫外線(EUV)リソグラフィー用レジスト組成物の材料としては高いエッチング耐性が得られる点で重要な材料となっている。
【0004】
通常、ポジ型のEBリソグラフィー用レジスト組成物やEUVリソグラフィー用レジスト組成物のベースポリマーとしては、高エネルギー線を照射することで光酸発生剤より発生した酸を触媒として、ベースポリマーが持つフェノール側鎖の酸性官能基をマスクしている酸分解性保護基(酸不安定基)を脱保護させて、アルカリ現像液に可溶化する材料が主に用いられている。
【0005】
前記酸分解性保護基として、第3級アルキル基、tert-ブトキシカルボニル基、アセタール基等が主として用いられてきた。ここで、アセタール基のような脱保護に必要な活性化エネルギーが比較的小さい保護基を用いると、高感度のレジスト膜が得られるという利点があるものの、発生する酸の拡散の抑制が十分でないと、レジスト膜中の露光していない部分においても脱保護反応が起きてしまい、ラインエッジラフネス(LER)の劣化やパターン線幅の寸法均一性(CDU)の低下を招くという問題があった。また、特に重要な用途であるフォトマスクブランクの加工では、フォトマスク基板に成膜された酸化クロムをはじめとするクロム化合物膜等、化学増幅レジスト膜のパターン形状に影響を与えやすい表面材料を持つものがあり、高解像性やエッチング後の形状を保つためには基板の種類に依存せずレジスト膜のパターンプロファイルを矩形に保つことも重要な性能の1つとなっている。また、近年では、微細化を達成するためにマスクブランクの加工にMBMW(マルチビームマスクライティング)描画プロセスを用いる場合があり、その際、レジスト組成物としてはラフネスに有利な低感度レジスト組成物(高ドーズ領域)を使用するが、この高ドーズ領域におけるレジスト組成物の最適化も脚光を浴びてきた。
【0006】
感度やパターンプロファイルの制御について、レジスト組成物に使用する材料の選択や組み合わせ、プロセス条件等によって種々の改良がなされてきた。その改良の1つとして、酸の拡散の問題がある。この酸の拡散については、化学増幅レジスト組成物の感度と解像性に大きな影響を与えることから多くの検討がされてきた。
【0007】
特許文献1や特許文献2には、露光により光酸発生剤から発生するベンゼンスルホン酸を嵩高くすることで酸拡散を抑制し、ラフネスを低減する例が記載されている。しかし、前記酸発生剤では酸拡散の抑制が未だ不十分であるので、より拡散の小さい酸発生剤の開発が望まれていた。
【0008】
特許文献3には、露光により発生するスルホン酸をレジスト組成物に使用するポリマーに結合させて拡散を抑制することで、酸拡散を制御する例が記載されている。このような露光により酸を発生する繰り返し単位をベースポリマーに含ませて酸拡散を抑える方法は、LERの小さなパターンを得るのに有効である。しかし、このような繰り返し単位の構造や導入率によっては、露光により酸を発生する繰り返し単位を結合させたベースポリマーの有機溶剤に対する溶解性に問題が生じることがあった。
【0009】
また、特許文献4に記載されている、フッ素化アルカンスルホン酸のような酸強度の高い酸を発生させるスルホニウム塩と、アセタール基を有する繰り返し単位を含むポリマーとを用いた場合には、LERの大きなパターンが形成される問題があった。脱保護の活性化エネルギーが比較的小さいアセタール基の脱保護にはフッ素化アルカンスルホン酸の酸強度は高すぎるため、酸の拡散を抑えたとしても未露光部に拡散した微量の酸により脱保護反応が進行してしまうからである。このことは、特許文献1や2に記載されているベンゼンスルホン酸を発生させるスルホニウム塩においても同様である。そこで、アセタール基の脱保護に、より好適な強度の酸を発生する酸発生剤の開発が望まれている。
【0010】
酸の拡散を抑制するには、前述の発生酸を嵩高くする方法のほかに、クエンチャー(酸拡散制御剤)を改良する方法も考えられる。クエンチャーは、酸拡散を抑制するものであり、レジスト組成物の性能を向上させるためには事実上必須成分である。クエンチャーは、これまで様々な検討がなされており、一般的にアミン類や弱酸オニウム塩が用いられている。弱酸オニウム塩の例として、特許文献5には、トリフェニルスルホニウムアセテートの添加により、T-トップの形成、孤立パターンと密集パターンとの線幅の差及びスタンディングウエーブのない良好なレジストパターンを形成できることが記載されている。特許文献6には、スルホン酸アンモニウム塩又はカルボン酸アンモニウム塩の添加により、感度、解像性及び露光マージンが改善されたことが記載されている。また、特許文献7には、フッ素原子含有カルボン酸を発生する光酸発生剤を含む組み合わせのKrFリソグラフィー及びEBリソグラフィー用レジスト組成物が解像力に優れ、露光マージン、焦点深度等のプロセス許容性が改善されたことが記載されている。これらは、KrFリソグラフィー、EBリソグラフィー又はF2リソグラフィーに用いられているものである。
【0011】
特許文献8には、カルボン酸オニウム塩を含むArFリソグラフィー用ポジ型感光性組成物が記載されている。これらは、露光によって光酸発生剤から生じた強酸(スルホン酸)が弱酸オニウム塩と交換し、弱酸及び強酸オニウム塩を形成することで酸性度の高い強酸(スルホン酸)から弱酸(カルボン酸)に置き換わることによって酸不安定基の酸分解反応を抑制し、酸拡散距離を小さくする(制御する)ものであり、見かけ上クエンチャーとして機能する。
【0012】
特許文献9~11には、含窒素複素環化合物であるインドールやインドリン、ピペリジンカルボン酸構造を有するカルボン酸オニウム塩、特許文献12にはアミノ安息香酸構造を有するカルボン酸オニウム塩、特許文献13にはアミド結合を有するカルボン酸オニウム塩が記載されている。これらもクエンチャーとして作用するものの、芳香族アミンやアミド結合は塩基性が高くはないため酸拡散制御能は十分ではなく、ピペリジンカルボン酸は水溶性が極めて高く、工業的に製造するには課題が多く、パターン形成時には膨潤も引き起こす。
【0013】
また、前述したカルボン酸オニウム塩やフルオロカルボン酸オニウム塩を含むレジスト組成物を用いてパターニングを行った際、より微細化が進んだ近年では未だLERや解像性が不十分であるため、よりLERが低減され、解像性、矩形性、パターン忠実性及びドーズマージンを向上できるクエンチャーの開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2009-53518号公報
【特許文献2】特開2010-100604号公報
【特許文献3】特開2011-22564号公報
【特許文献4】特許第5083528号公報
【特許文献5】特許第3955384号公報
【特許文献6】特開平11-327143号公報
【特許文献7】特許第4231622号公報
【特許文献8】特許第4226803号公報
【特許文献9】特許第6217561号公報
【特許文献10】特許第6874738号公報
【特許文献11】特許第6512049号公報
【特許文献12】特許第6323302号公報
【特許文献13】国際公開第2019/087626号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、前記事情に鑑みなされたもので、パターン形成時の矩形性を向上し、かつLER、解像性、パターン忠実性及びドーズマージンが改善されたレジストパターンを得ることができる化学増幅ポジ型レジスト組成物、及びレジストパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、所定の窒素原子含有脂肪族複素環とフルオロカルボン酸構造とを有するアニオンを含むオニウム塩からなるクエンチャーをレジスト組成物に導入した場合、良好な解像性やパターン形状を示し、LER、パターン忠実性及びドーズマージンが改善されたパターンが得られることを知見し、本発明をなすに至った。
【0017】
すなわち、本発明は、下記化学増幅ポジ型レジスト組成物及びレジストパターン形成方法を提供する。
1.(A)下記式(A)で表されるオニウム塩を含むクエンチャー、及び(B)下記式(B1)で表される繰り返し単位を含み、酸の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大するポリマーを含むベースポリマーを含む化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化1】
(式中、n1は、0~6の整数である。n2は、0~3の整数である。n3は、1~4の整数である。
Wは、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数2~20の窒素原子含有脂肪族複素環である。
A及びLBは、それぞれ独立に、単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合又はカーバメート結合である。
Lは、単結合、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビレン基である。
1は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。n1≧2のとき、複数のR1が、互いに結合してこれらが結合するW上の炭素原子と共に環を形成してもよい。
1~Q4は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~6のヒドロカルビル基又は炭素数1~6のフッ素化ヒドロカルビル基である。ただし、Q1~Q4のうち少なくとも1つは、フッ素原子又は炭素数1~6のフッ素化ヒドロカルビル基である。また、Q3とQ4とが、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。
ALは、酸不安定基である。
+は、オニウムカチオンである。)
【化2】
(式中、a1は、0又は1である。a2は、0~2の整数である。a3は、0≦a3≦5+2(a2)-a4を満たす整数である。a4は、1~3の整数である。
Aは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
11は、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビルオキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基である。
1は、単結合又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基であり、該飽和ヒドロカルビレン基の-CH2-が-O-で置換されていてもよい。)
2.RALが、下記式(AL-1)又は(AL-2)で表される基である1の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化3】
(式中、LCは、-O-又は-S-である。
2、R3及びR4は、それぞれ独立に、炭素数1~10のヒドロカルビル基である。また、R2、R3及びR4のいずれか2つが、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。
5及びR6は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~10のヒドロカルビル基である。R7は、炭素数1~20のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基の-CH2-が、-O-又は-S-に置換されていてもよい。また、R6とR7とが、互いに結合してこれらが結合する炭素原子及びLCと共に炭素数3~20の複素環基を形成してもよく、該複素環基の-CH2-が、-O-又は-S-に置換されていてもよい。
m1及びm2は、それぞれ独立に、0又は1である。
*は、隣接する-O-との結合手を表す。)
3.Z+が、下記式(cation-1)で表されるスルホニウムカチオン、下記式(cation-2)で表されるヨードニウムカチオン又は下記式(cation-3)表されるアンモニウムカチオンである1又は2の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化4】
(式中、Rc1~Rc9は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~30のヒドロカルビル基である。また、Rc1及びRc2が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。)
4.前記オニウム塩が、下記式(A1)で表されるものである1~3のいずれかの化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化5】
(式中、n1~n3、W、LA、XL、R1、Q1~Q4、RAL及びZ+は、前記と同じ。)
5.前記オニウム塩が、下記式(A2)で表されるものである4の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化6】
(式中、n1、W、LA、XL、R1、Q1~Q3、RAL及びZ+は、前記と同じ。)
6.前記ポリマーが、更に、下記式(B2-1)で表される繰り返し単位及び下記式(B2-2)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種を含むものである1~5のいずれかの化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化7】
(式中、b1は、0又は1である。b2は、0~2の整数である。b3は、0≦b3≦5+2(b2)-b4を満たす整数である。b4は、1~3の整数である。b5は、0又は1である。
c1は、0~2の整数である。c2は、0~2の整数である。c3は、0~5の整数である。c4は、0~2の整数である。
Aは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
12は、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビルオキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基である。
13及びR14は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~10のヒドロカルビル基であり、R13とR14とが、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。
15は、それぞれ独立に、フッ素原子、炭素数1~5のフッ素化アルキル基又は炭素数1~5のフッ素化アルコキシ基である。
16は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~10のヒドロカルビル基である。
2は、単結合又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基であり、該飽和ヒドロカルビレン基の-CH2-が-O-で置換されていてもよい。
b4が1のとき、Xは、酸不安定基である。b4が2又は3のとき、Xは、それぞれ独立に、水素原子又は酸不安定基であるが、少なくとも1つは酸不安定基である。
3は、単結合、フェニレン基、ナフチレン基又は*-C(=O)-O-A31-である。A31は、ヒドロキシ基、エーテル結合、エステル結合若しくはラクトン環を含んでいてもよい炭素数1~20の脂肪族ヒドロカルビレン基、又はフェニレン基若しくはナフチレン基である。*は、主鎖の炭素原子との結合手である。)
7.前記ポリマーが、更に、下記式(B3)で表される繰り返し単位、下記式(B4)で表される繰り返し単位及び下記式(B5)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種を含む1~6のいずれかの化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化8】
(式中、d及びeは、それぞれ独立に、0~4の整数である。f1は、0又は1である。f2は、0~2の整数である。f3は、0~5の整数である。
Aは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
21及びR22は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~8の飽和ヒドロカルビル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~8の飽和ヒドロカルビルオキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基である。
23は、ハロゲン原子、炭素数1~20の飽和ヒドロカルビル基、炭素数1~20の飽和ヒドロカルビルオキシ基、炭素数2~20の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基、炭素数2~20の飽和ヒドロカルビルオキシヒドロカルビル基、炭素数2~20の飽和ヒドロカルビルチオヒドロカルビル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1~20の飽和ヒドロカルビルスルフィニル基又は炭素数1~20の飽和ヒドロカルビルスルホニル基である。
4は、単結合又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基であり、該飽和ヒドロカルビレン基の-CH2-が-O-で置換されていてもよい。)
8.前記ポリマーが、更に、下記式(B6)で表される繰り返し単位、下記式(B7)で表される繰り返し単位、下記式(B8)で表される繰り返し単位、下記式(B9)で表される繰り返し単位、下記式(B10)で表される繰り返し単位、下記式(B11)で表される繰り返し単位、下記式(B12)で表される繰り返し単位及び下記式(B13)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種を含む1~7のいずれかの化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化9】
(式中、RBは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。
1は、単結合、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基、ナフチレン基若しくはこれらを組み合わせて得られる炭素数7~18の基、又は*-O-Y11-、*-C(=O)-O-Y11-若しくは*-C(=O)-NH-Y11-であり、Y11は、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基、ナフチレン基又はこれらを組み合わせて得られる炭素数7~18の基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。
2は、単結合又は**-Y21-C(=O)-O-であり、Y21は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビレン基である。
3は、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、トリフルオロメチル基で置換されたフェニレン基、*-O-Y31-、*-C(=O)-O-Y31-又は*-C(=O)-NH-Y31-である。Y31は、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、トリフルオロメチル基で置換されたフェニレン基又はこれらを組み合わせて得られる炭素数7~20の基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。
*は、主鎖の炭素原子との結合手であり、**は、式中の酸素原子との結合手である。
4は、単結合、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~30のヒドロカルビレン基である。
g1及びg2は、それぞれ独立に、0又は1であるが、Y4が単結合のとき、g1及びg2は、0である。
31~R48は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。また、R31及びR32が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよく、R33及びR34、R36及びR37、又はR39及びR40が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。
HFは、水素原子又はトリフルオロメチル基である。
Xa-は、非求核性対向イオンである。)
9.前記ベースポリマーに含まれるポリマーの全繰り返し単位中、芳香環骨格を有する繰り返し単位の含有率が60モル%以上である1~8のいずれかの化学増幅ポジ型レジスト組成物。
10.更に、(C)光酸発生剤を含む1~9のいずれかの化学増幅ポジ型レジスト組成物。
11.前記光酸発生剤のアニオンの酸強度(pKa)が、-3.0以上である10の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
12.(A)クエンチャーに対する(C)光酸発生剤の含有比率が、質量比で6未満である10又は11の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
13.更に、(D)下記式(D1)で表される繰り返し単位、下記式(D2)で表される繰り返し単位、下記式(D3)で表される繰り返し単位及び下記式(D4)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種を含み、更に下記式(D5)で表される繰り返し単位及び下記式(D6)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよいフッ素原子含有ポリマーを含む1~12のいずれかの化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化10】
(式中、xは、1~3の整数である。yは、0≦y≦5+2z-xを満たす整数である。zは、0又は1である。hは、1~3の整数である。
Cは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
Dは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。
101、R102、R104及びR105は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビル基である。
103、R106、R107及びR108は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~15のヒドロカルビル基、炭素数1~15のフッ素化ヒドロカルビル基又は酸不安定基であり、R103、R106、R107及びR108がヒドロカルビル基又はフッ素化ヒドロカルビル基のとき、炭素-炭素結合間に、エーテル結合又はカルボニル基が介在していてもよい。
109は、水素原子、又は炭素-炭素結合間にヘテロ原子を含む基が介在していてもよい直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~5のヒドロカルビル基である。
110は、炭素-炭素結合間にヘテロ原子を含む基が介在していてもよい直鎖状又は分岐状の炭素数1~5のヒドロカルビル基である。
111は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1~20の飽和ヒドロカルビル基であり、前記飽和ヒドロカルビル基の-CH2-の一部が、エステル結合又はエーテル結合で置換されていてもよい。
1は、炭素数1~20の(h+1)価の炭化水素基又は炭素数1~20の(h+1)価のフッ素化炭化水素基である。
2は、単結合、*-C(=O)-O-又は*-C(=O)-NH-である。*は、主鎖の炭素原子との結合手である。
3は、単結合、-O-、*-C(=O)-O-Z31-Z32-又は*-C(=O)-NH-Z31-Z32-である。Z31は、単結合又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基である。Z32は、単結合、エステル結合、エーテル結合又はスルホンアミド結合である。*は、主鎖の炭素原子との結合手である。)
14.更に、(E)有機溶剤を含む1~13のいずれかの化学増幅ポジ型レジスト組成物。
15.1~14のいずれかの化学増幅ポジ型レジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程、高エネルギー線を用いて前記レジスト膜にパターンを照射する工程、及びアルカリ現像液を用いて前記パターンを照射したレジスト膜を現像する工程を含むレジストパターン形成方法。
16.前記高エネルギー線が、EUV又はEBである15のレジストパターン形成方法。
17.前記基板の最表面が、クロム、ケイ素、タンタル、モリブデン、コバルト、ニッケル、タングステン及びスズから選ばれる少なくとも1種を含む材料からなる15又は16のレジストパターン形成方法。
18.前記基板が、透過型又は反射型マスクブランクである15~17のいずれかのレジストパターン形成方法。
19.1~14のいずれかの化学増幅ポジ型レジスト組成物を塗布した透過型又は反射型マスクブランク。
【発明の効果】
【0018】
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物は、式(A)で表される適度な脂溶性を有するオニウム塩の作用により、パターン形成時の露光による酸拡散を効果的に制御することができ、これを用いてレジスト膜を成膜してパターンを形成する際に、極めて高い解像性を有し、パターン忠実性が高く、LER及びドーズマージンが改善された矩形性の良いパターンを得ることができる。また、式(B1)で表される繰り返し単位の作用により、アルカリ現像液に対して良好な溶解性を示すものとなるほか、レジスト膜を成膜する際の基板への密着性を向上させることができる。
【0019】
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物を用いるレジストパターン形成方法は、高い解像性、パターン忠実性を有しつつLER及びドーズマージンが改善された矩形性に優れたパターンを形成できるため、微細加工技術、特にEUVリソグラフィーやEBリソグラフィーに好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について詳細に記述する。なお、以下の説明中、化学式で表される構造によっては不斉炭素が存在し、エナンチオマーやジアステレオマーが存在し得るものがあるが、その場合は一つの式でそれら異性体を代表して表す。それらの異性体は、1種単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0021】
[化学増幅ポジ型レジスト組成物]
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物は、(A)所定の窒素含有複素環とフルオロカルボン酸構造とを有するオニウム塩を含むクエンチャー、及び(B)酸の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大するポリマーを含むベースポリマーを含むことを特徴とする。
【0022】
[(A)クエンチャー]
(A)成分のクエンチャーは、下記式(A)で表されるオニウム塩を含むものである。
【化11】
【0023】
式(A)中、n1は、0~6の整数である。n2は、0~3の整数であるが、0又は1が好ましい。n3は、1~4の整数であるが、1又は2が好ましく、1がより好ましい。
【0024】
式(A)中、Wは、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数2~20の窒素原子含有脂肪族複素環である。Wの構造の具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、*はLAとの結合手を表し、**はRAL-O-C(=O)-との結合手を表す。
【化12】
【0025】
式(A)中、LA及びLBは、それぞれ独立に、単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合又はカーバメート結合である。これらのうち、単結合、エーテル結合、エステル結合又はアミド結合であることが好ましく、単結合、エステル結合又はアミド結合であることがより好ましい。
【0026】
式(A)中、XLは、単結合、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビレン基である。前記ヒドロカルビレン基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、アルカンジイル基、環式飽和ヒドロカルビレン基等が挙げられる。前記ヘテロ原子の具体例としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等が挙げられる。
【0027】
Lで表されるヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビレン基の具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、*は、それぞれLA及びLBとの結合手を表す。
【化13】
【0028】
【化14】
【0029】
【化15】
【0030】
これらのうち、XL-0~XL-22及びXL-47~XL-49が好ましく、XL-0~XL-17がより好ましい。
【0031】
式(A)中、R1は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。前記ヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基等の炭素数1~20のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、ノルボルニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、アダマンチル基、アダマンチルメチル基等の炭素数3~20の環式飽和ヒドロカルビル基;フェニル基、ナフチル基、アントリル基等の炭素数6~20のアリール基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。また、前記ヒドロカルビル基の水素原子の一部又は全部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、前記ヒドロカルビル基の-CH2-の一部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、その結果、ヒドロキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、カーバメート結合、アミド結合、イミド結合、ラクトン環、スルトン環、チオラクトン環、ラクタム環、スルタム環、カルボン酸無水物(-C(=O)-O-C(=O)-)、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。
【0032】
また、n1≧2のとき、複数のR1が、互いに結合してこれらが結合するW上の炭素原子と共に環を形成してもよい。このとき形成される環の具体例としては、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、ノルボルナン環、アダマンタン環等が挙げられる。また、前記環中の水素原子の一部又は全部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、前記環中の-CH2-の一部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、その結果、ヒドロキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物(-C(=O)-O-C(=O)-)、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。また、Wを形成する同一の原子に結合した2つのR1が、互いに結合して環を形成し、スピロ環を形成してもよい。
【0033】
式(A)中、Q1~Q4は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~6のヒドロカルビル基又は炭素数1~6のフッ素化ヒドロカルビル基である。ただし、Q1~Q4のうち少なくとも1つは、フッ素原子又は炭素数1~6のフッ素化ヒドロカルビル基である。前記ヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、R1で表される炭素数1~20のヒドロカルビル基として例示したもののうち、炭素数1~6のものが挙げられる。炭素数1~6のフッ素化ヒドロカルビル基としては、トリフルオロメチル基が好ましい。
また、Q3とQ4とが、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。このとき形成される環の具体例としては、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、ノルボルナン環、アダマンタン環等が挙げられる。
【0034】
式(A)中、RALは、酸不安定基である。具体的には、RALは、下記式(AL-1)又は(AL-2)で表される基であることが好ましい。
【化16】
(式中、*は、隣接する-O-との結合手を表す。)
【0035】
式(AL-1)中、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、炭素数1~10のヒドロカルビル基である。また、R2、R3及びR4のいずれか2つが互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。m1は、0又は1である。
【0036】
式(AL-2)中、LCは、-O-又は-S-である。R5及びR6は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~10のヒドロカルビル基である。R7は、炭素数1~20のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基の-CH2-が、-O-又は-S-に置換されていてもよい。また、R6とR7とが、互いに結合してこれらが結合する炭素原子及びLCと共に炭素数3~20の複素環基を形成してもよく、該複素環基の-CH2-が、-O-又は-S-に置換されていてもよい。m2は、0又は1である。
【0037】
式(AL-1)で表される酸不安定基の具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、*は、隣接する-O-との結合手を表す。
【化17】
【0038】
【化18】
【0039】
【化19】
【0040】
【化20】
【0041】
【化21】
【0042】
【化22】
【0043】
【化23】
【0044】
【化24】
【0045】
【化25】
【0046】
【化26】
【0047】
【化27】
【0048】
式(AL-2)で表される酸不安定基の具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、*は、隣接する-O-との結合手を表す。
【化28】
【0049】
【化29】
【0050】
式(A)で表されるオニウム塩としては、下記式(A1)で表されるものが好ましい。
【化30】
(式中、n1~n3、W、LA、XL、R1、Q1~Q4、RAL及びZ+は、前記と同じ。)
【0051】
式(A1)で表されるオニウム塩としては、下記式(A2)で表されるものが好ましい。
【化31】
(式中、n1、W、LA、XL、R1、Q1~Q3、RAL及びZ+は、前記と同じ。)
【0052】
式(A)で表されるオニウム塩のアニオンの具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化32】
【0053】
【化33】
【0054】
【化34】
【0055】
【化35】
【0056】
【化36】
【0057】
【化37】
【0058】
【化38】
【0059】
【化39】
【0060】
【化40】
【0061】
【化41】
【0062】
【化42】
【0063】
【化43】
【0064】
【化44】
【0065】
【化45】
【0066】
【化46】
【0067】
【化47】
【0068】
【化48】
【0069】
【化49】
【0070】
【化50】
【0071】
【化51】
【0072】
【化52】
【0073】
【化53】
【0074】
【化54】
【0075】
【化55】
【0076】
【0077】
式(A)中、Z+は、オニウムカチオンである。前記オニウムカチオンとしては、下記式(cation-1)で表されるスルホニウムカチオン、下記式(cation-2)で表されるヨードニウムカチオン又は下記式(cation-3)表されるアンモニウムカチオンが好ましい。
【化56】
【0078】
式(cation-1)~(cation-3)中、Rc1~Rc9は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~30のヒドロカルビル基である。
【0079】
c1~Rc9で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0080】
c1~Rc9で表されるヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等の炭素数1~30のアルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロプロピルメチル基、4-メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等の炭素数3~30の環式飽和ヒドロカルビル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等の炭素数2~30のアルケニル基;シクロヘキセニル基等の炭素数3~30の環式不飽和ヒドロカルビル基;フェニル基、ナフチル基、チエニル基等の炭素数6~30のアリール基;ベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基等の炭素数7~30のアラルキル基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられるが、アリール基が好ましい。また、前記ヒドロカルビル基の水素原子の一部又は全部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、前記ヒドロカルビル基の-CH2-の一部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、その結果、ヒドロキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物(-C(=O)-O-C(=O)-)、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。
【0081】
また、Rc1及びRc2が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。このとき、式(cation-1)で表されるスルホニウムカチオンの具体例としては、下記式で表されるもの等が挙げられる。
【化57】
(式中、破線は、Rc3との結合手である。)
【0082】
式(cation-1)で表されるスルホニウム塩のカチオンの具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化58】
【0083】
【化59】
【0084】
【化60】
【0085】
【化61】
【0086】
【化62】
【0087】
【化63】
【0088】
【化64】
【0089】
【化65】
【0090】
【化66】
【0091】
【化67】
【0092】
【化68】
【0093】
【化69】
【0094】
【化70】
【0095】
【化71】
【0096】
【化72】
【0097】
【化73】
【0098】
【化74】
【0099】
【化75】
【0100】
【化76】
【0101】
【化77】
【0102】
【化78】
【0103】
【化79】
【0104】
【化80】
【0105】
【化81】
【0106】
【化82】
【0107】
【化83】
【0108】
式(cation-2)で表されるヨードニウムカチオンの具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化84】
【0109】
【化85】
【0110】
式(cation-3)で表されるアンモニウムカチオンの具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化86】
【0111】
式(A)で表されるオニウム塩の具体例としては、前述したアニオンとカチオンとの任意の組み合わせが挙げられる。
【0112】
式(A)で表されるオニウム塩は、公知の方法で製造することができる。例として、下記式(Q-1-ex)で表されるオニウム塩の製造方法について説明する。
【化87】
(式中、n1~n3、W、LA、XL、R1、Q1~Q4、RAL及びZ+は、前記と同じ。RXは、隣接する-CO2-と共に1級又は2級エステルを形成する基である。M+は、対カチオンである。X-は、対アニオンである。)
【0113】
第1工程は、市販品又は公知の合成方法で合成可能な原料SM-1と原料SM-2との反応により、中間体In-1-exを得る工程である。原料SM-1のカルボキシ基と原料SM-2のヒドロキシ基とから直接エステル結合を形成する際、種々の縮合剤を用いることができる。用いる縮合剤としては、N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N'-ジイソプロピルカルボジイミド、1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミド、塩酸1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド等が挙げられるが、反応後に副生成物として生成する尿素化合物の除去のしやすさの観点から、塩酸1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドを使用することが好ましい。反応は、原料SM-1と原料SM-2とを塩化メチレン等のハロゲン系溶剤に溶解し、縮合剤を添加して行う。触媒として、4-ジメチルアミノピリジンを添加すると、反応速度を向上させることができる。反応時間は、シリカゲル薄層クロマトグラフィー(TLC)で反応を追跡して反応を完結させることが収率の点で望ましいが、通常12~24時間程度である。反応を停止後、必要により副生する尿素化合物を濾過又は水洗で除去した後、反応液を通常の水系処理(aqueous work-up)を行うことで、中間体In-1-exを得ることができる。得られた中間体In-1-exは、必要があれば、蒸留、クロマトグラフィー、再結晶等の常法に従って精製することができる。
【0114】
第2工程は、中間体In-1-exに対するアルカリ加水分解により中間体In-2-exを得る工程である。具体的には、中間体In-1-ex中のカルボン酸エステルを、アルカリ金属水酸化物塩又は有機カチオンの水酸化物塩を用いてアルカリ加水分解を行い、カルボン酸塩である中間体In-2-exを得る工程である。用いるアルカリ金属水酸化物塩としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。有機カチオンの水酸化物塩としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。反応は、中間体In-1-exをテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒に溶解し、各種水酸化物塩の水溶液を添加して行う。反応時間は、TLCで反応を追跡して反応を完結させることが収率の点で望ましいが、通常12~24時間程度である。反応混合物から通常の水系処理(aqueous work-up)を行うことで、中間体In-2-exを得ることができる。得られた中間体In-2-exは、必要があれば、クロマトグラフィー、再結晶等の常法に従って精製することができる。
【0115】
第3工程は、得られた中間体In-2-exをZ+-で表されるオニウム塩と塩交換させ、オニウム塩Q-1-exを得る工程である。なお、X-としては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン又はメチル硫酸アニオンが、交換反応が定量的に進行しやすいことから好ましい。反応の進行は、TLCにて確認することが収率の点で望ましい。反応混合物から通常の水系処理(aqueous work-up)を行うことで、オニウム塩Q-1-exを得ることができる。必要があれば、クロマトグラフィー、再結晶等の常法に従って精製することができる。
【0116】
前記スキームにおいて、第3工程のイオン交換は、公知の方法で容易に行うことができ、例えば特開2007-145797号公報を参考にすることができる。
【0117】
なお、前記製造方法はあくまでも一例であり、式(A)で表されるオニウム塩の製造方法は、これに限定されない。
【0118】
式(A)で表される窒素原子含有脂肪族複素環とフルオロカルボン酸構造とを有するアニオンを含むオニウム塩は、クエンチャーとして作用し、露光部において酸発生剤より発生した強酸を芳香族カルボン酸アニオン部位で効果的にトラップするとともに、窒素原子含有脂肪族複素環部位を保護した酸不安定基が強酸により脱保護反応を起こし、塩基性の高い窒素原子含有脂肪族複素環式化合物が生成する。塩基性の高い窒素原子含有脂肪族複素環部位は未露光部への酸の過度な拡散を抑制し、カルボン酸アニオン部位は強酸とのプロトン交換を継続的に繰り返す。これらの相乗効果により露光部と未露光部の溶解コントラストが向上するとともに強酸の酸拡散が適切に制御されることで、微細パターン形成においても良好なリソグラフィー性能を達成できると考えられる。また、フルオロカルボン酸構造と窒素原子含有脂肪族複素環部位を保護した酸不安定基とにより適度な炭素数を有することで有機溶剤溶解性が向上するため、未露光部へのアルカリ現像液の浸透、それに伴うレジストパターンの倒れや剥がれを効果的に抑制することができるため、本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物に適用することで、クエンチャーとして極めて有効に機能する。
【0119】
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物中、前記クエンチャーの含有量は、後述する(B)ベースポリマー80質量部に対し、0.1~100質量部が好ましく、1~50質量部がより好ましく、1~20質量部が更に好ましく、1~10質量部が最も好ましい。前記クエンチャーの含有量が前記範囲であれば、クエンチャーとして十分に機能し、感度低下や溶解性不足で異物が発生したりする等の性能劣化を起こすおそれがない。前記クエンチャーは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0120】
[(B)ベースポリマー]
(B)成分のベースポリマーは、下記式(B1)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B1ともいう。)を含み、酸の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大するポリマーを含むものである。
【化88】
【0121】
式(B1)中、a1は、0又は1である。a2は、0~2の整数であり、0のときはベンゼン骨格を、1のときはナフタレン骨格を、2のときはアントラセン骨格をそれぞれ表す。a3は、0≦a3≦5+2(a2)-a4を満たす整数である。a4は、1~3の整数である。a2が0のとき、好ましくは、a3は0~3の整数であり、a4は1~3の整数であり、a2が1又は2のとき、好ましくは、a3は0~4の整数であり、a4は1~3の整数である。
【0122】
式(B1)中、RAは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0123】
式(B1)中、R11は、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビルオキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基である。前記飽和ヒドロカルビル基、並びに飽和ヒドロカルビルオキシ基及び飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基の飽和ヒドロカルビル部は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、これらの構造異性体等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。炭素数が上限以下であれば、アルカリ現像液に対する溶解性が良好である。a3が2以上のとき、各R11は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0124】
式(B1)中、A1は、単結合又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基であり、該飽和ヒドロカルビレン基の-CH2-の一部が-O-で置換されていてもよい。前記飽和ヒドロカルビレン基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、これらの構造異性体等の炭素数1~10のアルカンジイル基;シクロプロパンジイル基、シクロブタンジイル基、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基等の炭素数3~10の環式飽和ヒドロカルビレン基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。前記飽和ヒドロカルビレン基がエーテル結合を含む場合には、式(B1)中のa1が1のときはエステル酸素原子に対してα位の炭素原子とβ位の炭素原子との間を除くいずれの箇所に入ってもよい。また、a1が0のときは主鎖と結合する原子がエーテル性酸素原子となり、該エーテル性酸素原子に対してα位の炭素原子とβ位の炭素原子との間を除くいずれの箇所に第2のエーテル結合が入ってもよい。なお、前記飽和ヒドロカルビレン基の炭素数が10以下であれば、アルカリ現像液に対する溶解性を十分に得ることができるため好ましい。
【0125】
a1が0かつA1が単結合である場合、つまり芳香環がポリマーの主鎖に直接結合している(すなわち、リンカー(-C(=O)-O-A1-)を有しない)場合、繰り返し単位B1の好ましい例としては、3-ヒドロキシスチレン、4-ヒドロキシスチレン、5-ヒドロキシ-2-ビニルナフタレン、6-ヒドロキシ-2-ビニルナフタレン等に由来する単位が挙げられる。特に、下記式(B1-1)で表される繰り返し単位が好ましい。
【化89】
(式中、RA及びa4は、前記と同じ。)
【0126】
a1が1である(すなわち、リンカーとして-C(=O)-O-A1-を有する)場合、繰り返し単位B1の好ましい例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、RAは、前記と同じである。
【化90】
【0127】
繰り返し単位B1の含有量は、前記ポリマーを構成する全繰り返し単位中、10~95モル%が好ましく、40~90モル%がより好ましい。ただし、後述するポリマーにより高いエッチング耐性を与える式(B3)で表される繰り返し単位及び式(B4)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1種を含み、その単位が置換基としてフェノール性ヒドロキシ基を有する場合には、その比率も加えて前記範囲内とすることが好ましい。繰り返し単位B1は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0128】
前記ポリマーは、ポジ型レジスト組成物として露光部がアルカリ現像液に溶解する特性を与えるため、酸不安定基により保護された酸性官能基を有する繰り返し単位、すなわち、酸不安定基により保護され、酸の作用によりアルカリ可溶性となる繰り返し単位(以下、繰り返し単位B2ともいう。)を含むことが好ましい。この場合、前記繰り返し単位中の酸不安定基(保護基)が酸の作用により脱保護反応を起こすため、前記ポリマーがアルカリ現像液に対してより良好な溶解性を示すものとなる。
【0129】
繰り返し単位B2の最も好ましいものとしては、下記式(B2-1)で表されるもの(以下、繰り返し単位B2-1ともいう。)が挙げられる。
【化91】
【0130】
式(B2-1)中、b1は、0又は1である。b2は、0~2の整数であり、0のときはベンゼン骨格を、1のときはナフタレン骨格を、2のときはアントラセン骨格をそれぞれ表す。b3は、0≦b3≦5+2(b2)-b4を満たす整数である。b4は、1~3の整数である。b5は、0又は1である。b2が0のとき、好ましくは、b3は0~3の整数であり、b4は1~3の整数であり、b2が1又は2のとき、好ましくは、b3は0~4の整数であり、b4は1~3の整数である。
【0131】
式(B2-1)中、RAは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0132】
式(B2-1)中、R12は、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビルオキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基である。前記飽和ヒドロカルビル基、並びに飽和ヒドロカルビルオキシ基及び飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基の飽和ヒドロカルビル部は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、これらの構造異性体等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。炭素数が上限以下であれば、アルカリ現像液に対する溶解性が良好である。b3が2以上のとき、各R12は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0133】
式(B2-1)中、A2は、単結合又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基であり、該飽和ヒドロカルビレン基の-CH2-の一部が-O-で置換されていてもよい。前記飽和ヒドロカルビレン基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、これらの構造異性体等の炭素数1~10のアルカンジイル基;シクロプロパンジイル基、シクロブタンジイル基、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基等の炭素数3~10の環式飽和ヒドロカルビレン基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。前記飽和ヒドロカルビレン基がエーテル結合を含む場合には、式(B2-1)中のb1が1のときはエステル酸素原子に対してα位の炭素原子とβ位の炭素原子との間を除くいずれの箇所に入ってもよい。また、b1が0のときは主鎖と結合する原子がエーテル性酸素原子となり、該エーテル性酸素原子に対してα位の炭素原子とβ位の炭素原子との間を除くいずれの箇所に第2のエーテル結合が入ってもよい。なお、前記飽和ヒドロカルビレン基の炭素数が10以下であれば、アルカリ現像液に対する溶解性を十分に得ることができるため好ましい。
【0134】
式(B2-1)中、Xは、b4が1のときは酸不安定基であり、b4が2又は3のときは水素原子又は酸不安定基であるが、少なくとも1つは酸不安定基である。すなわち、繰り返し単位B2-1は、芳香環に結合したフェノール性ヒドロキシ基の少なくとも1つが酸不安定基で保護されたもの、あるいは芳香環に結合したカルボキシ基が酸不安定基で保護されたものである。前記酸不安定基としては、既に公知の多数の化学増幅レジスト組成物で用いられてきた、酸によって脱離して酸性基を与えるものであれば、特に限定されることなくいずれも使用することができる。前記酸不安定基の具体例としては、式(A)の説明においてRALで表される酸不安定基として例示したものと同様のものが挙げられる。また、前記酸不安定基の他の例としては、フェノール性ヒドロキシ基の水素原子が-CH2COO-(第3級飽和ヒドロカルビル基)で置換されたものを使用することもできる。このとき前記第3級飽和ヒドロカルビル基としては、前述したフェノール性ヒドロキシ基の保護に用いる第3級飽和ヒドロカルビル基と同じものを使用することができる。
【0135】
また、繰り返し単位B2として、下記式(B2-2)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B2-2ともいう。)も挙げられる。繰り返し単位B2-2は、露光部の溶解速度が高くなるため、現像ローディングにおける線幅変動に対して良好な性能を与える酸不安定基含有単位として有用な選択肢である。
【化92】
【0136】
式(B2-2)中、c1は、0~2の整数である。c2は、0~2の整数である。c3は、0~5の整数である。c4は、0~2の整数である。
【0137】
式(B2-2)中、RAは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0138】
式(B2-2)中、R13及びR14は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~10のヒドロカルビル基であり、R13とR14とが、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。
【0139】
式(B2-2)中、R15は、それぞれ独立に、フッ素原子、炭素数1~5のフッ素化アルキル基又は炭素数1~5のフッ素化アルコキシ基である。
【0140】
式(B2-2)中、R16は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~10のヒドロカルビル基である。
【0141】
式(B2-2)中、A3は、単結合、フェニレン基、ナフチレン基又は*-C(=O)-O-A31-である。A31は、ヒドロキシ基、エーテル結合、エステル結合若しくはラクトン環を含んでいてもよい炭素数1~20の脂肪族ヒドロカルビレン基、又はフェニレン基若しくはナフチレン基である。*は、主鎖の炭素原子との結合手である。
【0142】
繰り返し単位B2-2の好ましい例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、RAは、前記と同じである。
【化93】
【0143】
繰り返し単位B2の含有量は、前記ポリマーを構成する全繰り返し単位中、5~50モル%が好ましい。繰り返し単位B2は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0144】
前記ポリマーは、更に、下記式(B3)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B3ともいう。)、下記式(B4)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B4ともいう。)及び下記式(B5)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B5ともいう。)から選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。
【化94】
【0145】
式(B3)及び(B4)中、d及びeは、それぞれ独立に、0~4の整数である。
【0146】
式(B3)及び(B4)中、R21及びR22は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~8の飽和ヒドロカルビル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~8の飽和ヒドロカルビルオキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基である。前記飽和ヒドロカルビル基、飽和ヒドロカルビルオキシ基及び飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。dが2以上のとき、各R21は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。eが2以上のとき、各R22は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0147】
式(B5)中、f1は、0又は1である。f2は、0~2の整数であり、0のときはベンゼン骨格を、1のときはナフタレン骨格を、2のときはアントラセン骨格をそれぞれ表す。f3は、0~5の整数である。f2が0のとき、f3は、好ましくは0~3の整数であり、f2が1又は2のとき、f3は、好ましくは0~4の整数である。
【0148】
式(B5)中、RAは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0149】
式(B5)中、R23は、ハロゲン原子、炭素数1~20の飽和ヒドロカルビル基、炭素数1~20の飽和ヒドロカルビルオキシ基、炭素数2~20の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基、炭素数2~20の飽和ヒドロカルビルオキシヒドロカルビル基、炭素数2~20の飽和ヒドロカルビルチオヒドロカルビル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1~20の飽和ヒドロカルビルスルフィニル基又は炭素数1~20の飽和ヒドロカルビルスルホニル基である。前記飽和ヒドロカルビル基、飽和ヒドロカルビルオキシ基、飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基、飽和ヒドロカルビルオキシヒドロカルビル基、飽和ヒドロカルビルチオヒドロカルビル基、飽和ヒドロカルビルスルフィニル基及び飽和ヒドロカルビルスルホニル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。f3が2以上のとき、各R23は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0150】
23としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、これらの構造異性体等の飽和ヒドロカルビル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、これらの炭化水素部の構造異性体等の飽和ヒドロカルビルオキシ基が好ましい。これらのうち、特にメチル基、エチル基、メトキシ基及びエトキシ基が有用である。
【0151】
また、飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基は、ポリマーの重合後でも容易に化学修飾法で導入することができ、ベースポリマーのアルカリ現像液に対する溶解性の微調整に用いることができる。前記飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基としては、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、プロピルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、ペンチルカルボニルオキシ基、ヘキシルカルボニルオキシ基、シクロペンチルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、これらの炭化水素部の構造異性体等が挙げられる。炭素数が20以下であれば、ベースポリマーとしてのアルカリ現像液に対する溶解性を制御・調整する効果(主に下げる効果)を適切なものとすることができ、スカム(現像欠陥)の発生を抑制することができる。
【0152】
前述した好ましい置換基の中で、特にモノマーとして準備しやすく、有用な置換基としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基等が挙げられる。
【0153】
式(B5)中、A4は、単結合又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基であり、該飽和ヒドロカルビレン基の-CH2-の一部が-O-で置換されていてもよい。前記飽和ヒドロカルビレン基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、これらの構造異性体等の炭素数1~10のアルカンジイル基;シクロプロパンジイル基、シクロブタンジイル基、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基等の炭素数3~10の環式飽和ヒドロカルビレン基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。前記飽和ヒドロカルビレン基がエーテル結合を含む場合には、式(B5)中のf1が1のときはエステル酸素原子に対してα位の炭素原子とβ位の炭素原子との間を除くいずれの箇所に入ってもよい。また、f1が0のときは主鎖と結合する原子がエーテル性酸素原子となり、該エーテル性酸素原子に対してα位の炭素原子とβ位の炭素原子との間を除くいずれの箇所に第2のエーテル結合が入ってもよい。なお、前記飽和ヒドロカルビレン基の炭素数が10以下であれば、アルカリ現像液に対する溶解性を十分に得ることができるため好ましい。
【0154】
f1が0かつA4が単結合である場合、つまり芳香環がポリマーの主鎖に直接結合した(すなわち、リンカー(-C(=O)-O-A4-)を有しない)場合、繰り返し単位B5の好ましい例としては、スチレン、4-クロロスチレン、4-メチルスチレン、4-メトキシスチレン、4-ブロモスチレン、4-アセトキシスチレン、2-ヒドロキシプロピルスチレン、2-ビニルナフタレン、3-ビニルナフタレン等に由来する単位が挙げられる。
【0155】
また、f1が1である場合(すなわち、リンカーとして-C(=O)-O-A4-を有する場合)、繰り返し単位B5の好ましい例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、RAは、前記と同じである。
【化95】
【0156】
【化96】
【0157】
繰り返し単位B3~B5の少なくとも1種を前記ポリマーの構成単位として使用した場合には、芳香環が持つエッチング耐性に加えて主鎖に環構造が加わることによるエッチング耐性やパターン検査の際のEB照射耐性を高めるという効果が得られる。
【0158】
繰り返し単位B3~B5の含有量は、エッチング耐性を向上させるという効果を得るためには、前記ポリマーを構成する全繰り返し単位中、5モル%以上が好ましい。また、繰り返し単位B3~B5の含有量は、前記ポリマーを構成する全繰り返し単位中、35モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましい。官能基を持たない場合や、官能基がヒドロキシ基以外の場合の導入量が35モル%以下であれば、現像欠陥が発生するおそれがないために好ましい。繰り返し単位B3~B5は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0159】
前記ポリマーは、繰り返し単位B1と、繰り返し単位B2と、繰り返し単位B3~B5から選ばれる少なくとも1種とを含むことが、高いエッチング耐性と解像性の両立に優れるという点から好ましい。このとき、これらの繰り返し単位が、前記ポリマーを構成する全繰り返し単位中、60モル%以上含まれることが好ましく、70モル%以上含まれることがより好ましく、80モル%以上含まれることが更に好ましい。
【0160】
前記ポリマーは、更に、下記式(B6)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B6ともいう。)、下記式(B7)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B7ともいう。)、下記式(B8)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B8ともいう。)、下記式(B9)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B9ともいう。)、下記式(B10)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B10ともいう。)、下記式(B11)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B11ともいう。)、下記式(B12)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B12ともいう。)及び下記式(B13)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B13ともいう。)から選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。この場合、酸拡散を効果的に抑制することができ、解像性が向上し、かつ、LERの低減されたパターンを得ることができる。
【化97】
【0161】
式(B6)~(B13)中、RBは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。Y1は、単結合、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基、ナフチレン基若しくはこれらを組み合わせて得られる炭素数7~18の基、又は*-O-Y11-、*-C(=O)-O-Y11-若しくは*-C(=O)-NH-Y11-であり、Y11は、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基、ナフチレン基又はこれらを組み合わせて得られる炭素数7~18の基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。Y2は、単結合又は**-Y21-C(=O)-O-であり、Y21は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビレン基である。Y3は、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、トリフルオロメチル基で置換されたフェニレン基、*-O-Y31-、*-C(=O)-O-Y31-又は*-C(=O)-NH-Y31-である。Y31は、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、トリフルオロメチル基で置換されたフェニレン基又はこれらを組み合わせて得られる炭素数7~20の基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。*は、主鎖の炭素原子との結合手であり、**は、式中の酸素原子との結合手である。Y4は、単結合、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~30のヒドロカルビレン基である。g1及びg2は、それぞれ独立に、0又は1であるが、Y4が単結合のとき、g1及びg2は、0である。
【0162】
式(B6)及び(B10)中、Xa-は、非求核性対向イオンである。Xa-で表される非求核性対向イオンの例としては、特開2010-113209号公報や特開2007-145797号公報に記載されたものが挙げられる。
【0163】
式(B7)及び(B11)中、Y2が-Y21-C(=O)-O-のとき、Y21で表されるヘテロ原子を含んでいてもよいヒドロカルビレン基としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化98】
(式中、破線は、結合手である。)
【0164】
式(B7)及び(B11)中、RHFは、水素原子又はトリフルオロメチル基である。繰り返し単位B7及びB11において、RHFが水素原子である場合の具体例としては、特開2010-116550号公報に記載されたものが挙げられ、RHFがトリフルオロメチル基である場合の具体例としては、特開2010-77404号公報に記載されたものが挙げられる。繰り返し単位B8及びB12としては、特開2012-246265号公報や特開2012-246426号公報に記載されたものが挙げられる。
【0165】
繰り返し単位B9又はB13を与えるモノマーのアニオンの好ましい例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化99】
【0166】
【化100】
【0167】
式(B6)~(B13)中、R31~R48は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。前記ヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。前記ハロゲン原子及びヒドロカルビル基の具体例としては、式(cation-1)~(cation-3)の説明においてRc1~Rc9で表されるハロゲン原子及びヒドロカルビル基としてそれぞれ例示したものと同様のものが挙げられる。また、前記ヒドロカルビル基の水素原子の一部又は全部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、前記ヒドロカルビル基の-CH2-の一部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、その結果、ヒドロキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物(-C(=O)-O-C(=O)-)、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。
【0168】
また、R31及びR32が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよく、R33及びR34、R36及びR37、又はR39及びR40が、が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。このとき形成される環としては、式(cation-1)の説明においてRc1及びRc2が互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に形成し得る環として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0169】
繰り返し単位B7~B9のスルホニウムカチオンの具体例としては、式(cation-1)で表されるスルホニウムカチオンとして例示したものと同様のものが挙げられる。繰り返し単位B11~B13のヨードニウムカチオンの具体例としては、式(cation-2)で表されるヨードニウムカチオンとして例示したものと同様のものが挙げられる。
【0170】
繰り返し単位B6~B13は、高エネルギー線の照射により酸を発生させる単位である。これらの単位がポリマー中に含まれることで、酸拡散が適度に抑制され、LER及びCDUが改善されたパターンを得ることができると考えられる。また、これらの単位がポリマーに含まれていることで、真空中でのベーク時に、露光部から酸が揮発し、未露光部へ再付着するという現象が抑制され、LER及びCDUの改善や、未露光部での望まない脱保護化反応抑制によるパターン欠陥の低減等に効果的であると考えられる。
【0171】
前記ポリマーが、繰り返し単位B6~B13を含む場合、その含有量は、前記ポリマーを構成する全繰り返し単位中、0.5~30モル%が好ましい。繰り返し単位B6~B13は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0172】
(B)ベースポリマーは、繰り返し単位B1に加えて繰り返し単位B6~B13から選ばれる少なくとも1種を含むポリマーと、繰り返し単位B1を含み、繰り返し単位B6~B13を含まないポリマーとの混合物であってもよい。このとき、繰り返し単位B6~B13を含まないポリマーの含有量は、繰り返し単位B6~B13を含むポリマー100質量部に対し、2~5000質量部が好ましく、10~1000質量部がより好ましい。
【0173】
前記ポリマーは、常用される、酸不安定基で保護された(メタ)アクリル酸エステル単位や、ラクトン構造、フェノール性ヒドロキシ基以外のヒドロキシ基等の密着性基を持つ(メタ)アクリル酸エステル単位を含んでもよい。これらの繰り返し単位によってレジスト膜の特性の微調整を行うことができるが、これらの単位を含まなくてもよい。
【0174】
前記密着性基を持つ(メタ)アクリル酸エステル単位の例として、下記式(B14)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B14ともいう。)、下記式(B15)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B15ともいう。)及び下記式(B16)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B16ともいう。)が挙げられる。これらの単位は、酸性を示さず、基板に対する密着性を与える単位や溶解性を調整する単位として補助的に用いることができる。
【化101】
【0175】
式(B14)~(B16)中、RAは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R51は、-O-又はメチレン基である。R52は、水素原子又はヒドロキシ基である。R53は、炭素数1~4の飽和ヒドロカルビル基である。kは、0~3の整数である。
【0176】
繰り返し単位B14~B16を含む場合、その含有量は、前記ポリマーを構成する全繰り返し単位中、0~30モル%が好ましく、0~20モル%がより好ましい。繰り返し単位B14~B16は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0177】
化学増幅ポジ型レジスト組成物をマスク作製に使用する場合、最先端世代における塗布膜厚は150nm以下、好ましくは100nm以下である。前記化学増幅ポジ型レジスト組成物を構成するベースポリマーのアルカリ現像液(例えば、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液)に対する溶解速度は、一般的にレジスト残渣による欠陥をより少なくするため強現像プロセスである場合が多く、微細パターンを形成させるために、好ましくは10nm/分以下、より好ましくは5nm/分以下である。また、例えばウエハーからLSIチップを作製する場合において、EUV露光プロセスにて本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物を使用する際には、50nm以下といった細線をパターニングする必要があるため塗布膜厚を100nm以下にする場合が多く、薄膜であるが故に現像によってパターンの劣化が考えられることから、前記ポリマーの溶解速度は、好ましくは10nm/分以下、より好ましくは5nm/分以下である。
【0178】
前記ポリマーは、公知の方法によって、必要に応じて保護基で保護した各モノマーを共重合させ、その後必要に応じて脱保護反応を行うことで合成することができる。共重合反応は、特に限定されないが、好ましくはラジカル重合、アニオン重合である。これらの方法については、特開2004-115630号公報を参考にすることができる。
【0179】
前記ポリマーは、重量平均分子量(Mw)が1000~50000であることが好ましく、2000~20000であることが更に好ましい。Mwが1000以上であれば、従来知られているように、パターンの頭が丸くなって解像力が低下するとともに、LER及びCDUが劣化するといった現象が生じるおそれがない。一方、Mwが50000以下であれば、特にパターン線幅が100nm以下のパターンを形成する場合においてLER及びCDUが劣化するおそれがない。なお、本発明においてMwは、テトラヒドロフラン(THF)又はジメチルホルムアミド(DMF)を溶剤として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算測定値である。
【0180】
前記ポリマーは、分子量分布(Mw/Mn)が1.0~2.0、特に1.0~1.8と狭分散であることが好ましい。このように狭分散である場合には、現像後、パターン上に異物が生じたり、パターンの形状が悪化したりすることがない。
【0181】
[(C)光酸発生剤]
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物は、(C)成分として光酸発生剤を含んでもよい。前記光酸発生剤は、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であれば、特に限定されない。好適な光酸発生剤としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N-スルホニルオキシイミド、オキシム-O-スルホネート型酸発生剤等がある。
【0182】
前記光酸発生剤の具体例としては、ノナフルオロブタンスルホネートや、特開2012-189977号公報の段落[0247]~[0251]に記載の部分フッ素化スルホネート、特開2013-101271号公報の段落[0261]~[0265]に記載の部分フッ素化スルホネート、特開2008-111103号公報の段落[0122]~[0142]、特開2010-215608号公報の段落[0080]~[0081]に記載されたもの等が挙げられる。これらの中でも、アリールスルホネート型又はアルカンスルホネート型の光酸発生剤が、繰り返し単位B2の酸不安定基を脱保護するのに適度な強度の酸を発生させるため好ましい。
【0183】
また、前記光酸発生剤を(A)成分のクエンチャーと組み合わせせることでLER及びCDUを改善するという効果を得るため、光酸発生剤から発生する酸のpKaは、-3.0以上であり、-3.0~2.0の範囲であることが好ましく、-2.0~1.5の範囲であることがより好ましい。
【0184】
前記光酸発生剤としては、以下に示すアニオンを有する塩化合物が好ましい。
【化102】
【0185】
【化103】
【0186】
【化104】
【0187】
【化105】
【0188】
【化106】
【0189】
【化107】
【0190】
【化108】
【0191】
【化109】
【0192】
前記アニオンと対をなすカチオンとしては、式(cation-1)で表されるスルホニウムカチオンとして例示したものや、式(cation-2)で表されるヨードニウムカチオンとして例示したものが挙げられる。
【0193】
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物が(C)光酸発生剤を含む場合、その含有量は、(B)ベースポリマー80質量部に対し、1~30質量部が好ましく、2~20質量部がより好ましい。なお、ベースポリマーが繰り返し単位B6~B13を含む場合(すなわち、ポリマーバウンド型酸発生剤である場合)には、(C)光酸発生剤の配合を省略してもよい。(C)光酸発生剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0194】
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物が(A)成分のクエンチャーと(C)成分の光酸発生剤とを含む場合、クエンチャーに対する光酸発生剤の含有比率((C)/(A))が、質量比で6未満となるように含まれることが好ましく、5未満となるように含まれることがより好ましく、4未満となるように含まれることが更に好ましい。前記化学増幅ポジ型レジスト組成物に含まれるクエンチャーに対する光酸発生剤の含有比率が前記範囲であれば、酸拡散を十分に抑制することが可能になり、優れた解像性や寸法均一性を得ることができる。
【0195】
[(D)フッ素原子含有ポリマー]
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物は、高コントラスト化や、高エネルギー線照射における酸のケミカルフレアを抑制し、帯電防止膜材料をレジスト膜上に塗布するプロセスにおける帯電防止膜からの酸のミキシングを遮蔽し、予期しない不要なパターン劣化を抑制する目的で、(D)成分として、下記式(D1)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位D1ともいう。)、下記式(D2)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位D2ともいう。)、下記式(D3)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位D3ともいう。)及び下記式(D4)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位D4ともいう。)から選ばれる少なくとも1種を含み、更に下記式(D5)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位D5ともいう。)及び下記式(D6)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位D6ともいう。)から選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよいフッ素原子含有ポリマーを含んでもよい。前記フッ素原子含有ポリマーは、界面活性剤の機能も有することから、現像プロセス中に生じ得る不溶物の基板への再付着を防止できるため、現像欠陥に対する効果も発揮する。
【化110】
【0196】
式(D1)~(D6)中、xは、1~3の整数である。yは、0≦y≦5+2z-xを満たす整数である。zは、0又は1である。hは、1~3の整数である。RCは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。RDは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。R101、R102、R104及びR105は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビル基である。R103、R106、R107及びR108は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~15のヒドロカルビル基、炭素数1~15のフッ素化ヒドロカルビル基又は酸不安定基であり、R103、R106、R107及びR108がヒドロカルビル基又はフッ素化ヒドロカルビル基のとき、炭素-炭素結合間に、エーテル結合又はカルボニル基が介在していてもよい。R109は、水素原子、又は炭素-炭素結合間にヘテロ原子を含む基が介在していてもよい直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~5のヒドロカルビル基である。R110は、炭素-炭素結合間にヘテロ原子を含む基が介在していてもよい直鎖状又は分岐状の炭素数1~5のヒドロカルビル基である。R111は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1~20の飽和ヒドロカルビル基であり、前記飽和ヒドロカルビル基の-CH2-の一部が、エステル結合又はエーテル結合で置換されていてもよい。Z1は、炭素数1~20の(h+1)価の炭化水素基又は炭素数1~20の(h+1)価のフッ素化炭化水素基である。Z2は、単結合、*-C(=O)-O-又は*-C(=O)-NH-である。*は、主鎖の炭素原子との結合手である。Z3は、単結合、-O-、*-C(=O)-O-Z31-Z32-又は*-C(=O)-NH-Z31-Z32-である。Z31は、単結合又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基である。Z32は、単結合、エステル結合、エーテル結合又はスルホンアミド結合である。*は、主鎖の炭素原子との結合手である。
【0197】
式(D1)及び(D2)中、R101、R102、R104及びR105で表される炭素数1~10の飽和ヒドロカルビル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-へプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等の炭素数1~10のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基等の炭素数3~10の環式飽和ヒドロカルビル基が挙げられる。これらのうち、炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基が好ましい。
【0198】
式(D1)~(D4)中、R103、R106、R107及びR108で表される炭素数1~15のヒドロカルビル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、炭素数1~15のアルキル基、炭素数2~15のアルケニル基、炭素数2~15のアルキニル基等が挙げられるが、炭素数1~15のアルキル基が好ましい。前記アルキル基としては、前述したもののほか、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基等が挙げられる。また、フッ素化ヒドロカルビル基としては、前述したヒドロカルビル基の炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基が挙げられる。
【0199】
式(D4)中、Z1で表される炭素数1~20の(h+1)価の炭化水素基としては、炭素数1~20のアルキル基又は炭素数3~20の環式飽和ヒドロカルビル基から更に水素原子をh個除いた基が挙げられる。また、Z1で表される炭素数1~20の(h+1)価のフッ素化炭化水素基としては、前述した(h+1)価の炭化水素基の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された基が挙げられる。
【0200】
繰り返し単位D1~D4の具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、RCは、前記と同じである。
【化111】
【0201】
【化112】
【0202】
【化113】
【0203】
式(D5)中、R109及びR110で表される炭素数1~5のヒドロカルビル基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられるが、アルキル基が好ましい。前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。また、前記ヒドロカルビル基の炭素-炭素結合間に、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む基が介在していてもよい。
【0204】
式(D5)中、-OR109は親水性基であることが好ましい。この場合、R109としては水素原子、炭素-炭素結合間に酸素原子が介在した炭素数1~5のアルキル基等が好ましい。
【0205】
式(D5)中、Z2は、*-C(=O)-O-又は*-C(=O)-NH-であることが好ましい。さらに、RDがメチル基であることが好ましい。Z2にカルボニル基が存在することにより、帯電防止膜由来の酸のトラップ能が向上する。また、RDがメチル基であると、よりガラス転移温度(Tg)が高い剛直なポリマーとなるため、酸の拡散が抑制される。これにより、レジスト膜の経時安定性が良好なものとなり、解像力やパターン形状も劣化することがない。
【0206】
繰り返し単位D5としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、RDは、前記と同じである。
【化114】
【0207】
【化115】
【0208】
式(D6)中、Z3で表される炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メタンジイル基、エタン-1,1-ジイル基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、ブタン-1,1-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-2,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、1,1-ジメチルエタン-1,2-ジイル基等が挙げられる。
【0209】
式(D6)中、R111で表される少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1~20の飽和ヒドロカルビル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、炭素数1~20のアルキル基又は炭素数3~20の環式飽和ヒドロカルビル基の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたものが挙げられる。
【0210】
繰り返し単位D6としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、RDは、前記と同じである。
【化116】
【0211】
【化117】
【0212】
【化118】
【0213】
【化119】
【0214】
繰り返し単位D1~D4の含有量は、前記フッ素原子含有ポリマーの全繰り返し単位中、15~95モル%が好ましく、20~85モル%がより好ましい。繰り返し単位D5及び/又はD6の含有量は、前記フッ素原子含有ポリマーの全繰り返し単位中、5~85モル%が好ましく、15~80モル%がより好ましい。繰り返し単位D1~D6は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0215】
前記フッ素原子含有ポリマーは、前述した繰り返し単位以外のその他の繰り返し単位を含んでもよい。このような繰り返し単位としては、特開2014-177407号公報の段落[0046]~[0078]に記載されているもの等が挙げられる。前記フッ素原子含有ポリマーがその他の繰り返し単位を含む場合、その含有量は、前記フッ素原子含有ポリマーの全繰り返し単位中50モル%以下が好ましい。
【0216】
前記フッ素原子含有ポリマーは、公知の方法によって、必要に応じて保護基で保護した各単量体を共重合させ、その後必要に応じて脱保護反応を行うことで合成することができる。共重合反応は特に限定されないが、好ましくはラジカル重合、アニオン重合である。これらの方法については、特開2004-115630号公報を参考にすることができる。
【0217】
前記フッ素原子含有ポリマーのMwは、2000~50000であることが好ましく、3000~20000であることがより好ましい。Mwが2000未満であると、酸の拡散を助長し、解像性の劣化や経時安定性が損なわれることがある。Mwが大きすぎると、溶剤への溶解度が小さくなり、塗布欠陥を生じることがある。また、前記フッ素原子含有ポリマーは、Mw/Mnが1.0~2.2であることが好ましく、1.0~1.7であることがより好ましい。
【0218】
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物が(D)フッ素原子含有ポリマーを含む場合、その含有量は、(B)ベースポリマー80質量部に対し、0.01~30質量部が好ましく、0.1~20質量部がより好ましく、0.5~10質量部が更に好ましい。(D)フッ素原子含有ポリマーは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0219】
[(E)有機溶剤]
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物は、(E)成分として有機溶剤を含んでもよい。前記有機溶剤としては、各成分を溶解可能なものであれば特に限定されない。このような有機溶剤としては、例えば、特開2008-111103号公報の段落[0144]~[0145]に記載の、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチル-2-n-ペンチルケトン、2-ヘプタノン等のケトン類;3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル(EL)、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸tert-ブチル、プロピレングリコールモノtert-ブチルエーテルアセテート等のエステル類;γ-ブチロラクトン等のラクトン類;これらの混合溶剤等が挙げられる。アセタール系の酸不安定基を用いる場合は、アセタールの脱保護反応を加速させるため、高沸点のアルコール系溶剤、具体的にはジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール等を加えることもできる。
【0220】
これらの有機溶剤の中でも、1-エトキシ-2-プロパノール、PGMEA、PGME、シクロヘキサノン、EL、γ-ブチロラクトン、ジアセトンアルコール及びこれらの混合溶剤が好ましい。
【0221】
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物が(E)有機溶剤を含む場合、その含有量は、(B)ベースポリマー80質量部に対し、200~10000質量部が好ましく、400~5000質量部がより好ましい。(E)有機溶剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0222】
[(F)塩基性化合物]
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物は、パターンの形状補正等を目的に、(A)成分以外のクエンチャーとして(F)塩基性化合物を含んでもよい。塩基性化合物を添加することにより、酸拡散を効果的に制御することができ、かつ、基板として最表面がクロムやタンタル、ケイ素を含む材料からなる基板を用いた場合でも、レジスト膜内に発生する酸による基板への影響を抑えることができる。
【0223】
前記塩基性化合物としては、多数が知られており、第1級、第2級又は第3級脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシ基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、ヒドロキシ基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド類、イミド類、カーバメート類、アンモニウム塩類等が挙げられる。これらの具体例は、特許文献9に多数例示されているが、基本的にはこれらの全てを使用することができる。特に、好ましいものとしては、トリス[2-(メトキシメトキシ)エチル]アミン、トリス[2-(メトキシメトキシ)エチル]アミン-N-オキシド、ジブチルアミノ安息香酸、モルホリン誘導体、イミダゾール誘導体等が挙げられる。
【0224】
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物が(F)塩基性化合物を含む場合、その含有量は、(B)ベースポリマー80質量部に対し、0~10質量部が好ましく、0~5質量部がより好ましい。(F)塩基性化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0225】
[(G)界面活性剤]
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物は、基板への塗布性を向上させるため、慣用されている界面活性剤を含んでもよい。前記界面活性剤は、特開2004-115630号公報にも多数の例が記載されているように多数のものが公知であり、それらを参考にして選択することができる。本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物が(G)界面活性剤を含む場合、その含有量は、(B)ベースポリマー80質量部に対し、0~5質量部が好ましい。(G)界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0226】
[レジストパターン形成方法]
本発明のレジストパターン形成方法は、前述した化学増幅ポジ型レジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程、高エネルギー線を用いて前記レジスト膜にパターンを照射する工程(すなわち、高エネルギー線を用いて前記レジスト膜を露光する工程)、及びアルカリ現像液を用いて前記パターンを照射したレジスト膜を現像する工程を含む。
【0227】
前記基板としては、例えば、集積回路製造用の基板(Si、SiO、SiO2、SiN、SiON、TiN、WSi、BPSG、SOG、有機反射防止膜等)、あるいは透過型又は反射型マスク回路製造用の基板(Cr、CrO、CrON、MoSi2、Si、SiO、SiO2、SiON、SiONC、CoTa、NiTa、TaBN、SnO2等)等を用いることができる。前記基板上に、スピンコーティング等の方法で膜厚が0.03~2μmとなるように前記化学増幅ポジ型レジスト組成物を塗布し、これをホットプレート上で、好ましくは60~150℃、1~20分間、より好ましくは80~140℃、1~10分間プリベークし、レジスト膜を形成する。
【0228】
次いで、高エネルギー線を用いて前記レジスト膜を露光し、パターンを照射する。前記高エネルギー線としては、紫外線、遠紫外線、エキシマレーザー光(KrF、ArF等)、EUV、X線、γ線、シンクロトロン放射線、EB等が挙げられる。本発明においては、EUV又はEBを用いて露光することが好ましい。
【0229】
前記高エネルギー線として紫外線、遠紫外線、エキシマレーザー光、EUV、X線、γ線又はシンクロトロン放射線を用いる場合は、目的のパターンを形成するためのマスクを用いて、露光量が好ましくは1~500mJ/cm2、より好ましくは10~400mJ/cm2となるように照射する。EBを用いる場合は、目的のパターンを形成するため直接、露光量が好ましくは1~500μC/cm2、より好ましくは10~400μC/cm2、更に好ましくは100~400μC/cm2となるように照射する。
【0230】
露光は、通常の露光法のほか、場合によってはマスクとレジスト膜との間を液浸する液浸法を用いることも可能である。その場合には、水に不溶な保護膜を用いることも可能である。
【0231】
次いで、ホットプレート上で、好ましくは60~150℃、1~20分間、より好ましくは80~140℃、1~10分間ポストエクスポージャーベーク(PEB)する。
【0232】
その後、0.1~5質量%、好ましくは2~3質量%のTMAH水溶液等のアルカリ水溶液の現像液を用い、好ましくは0.1~3分間、より好ましくは0.5~2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像することで、基板上に目的のパターンが形成される。
【0233】
なお、本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物は、特に解像性が良好でLERが小さいパターンを形成することができるため、有用である。また、本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物は、レジストパターンの密着性が取り難いことから、パターン剥がれやパターン崩壊を起こしやすい材料を表面に持つ基板のパターン形成に特に有用である。このような基板として、金属クロムや酸素、窒素及び炭素から選ばれる1以上の軽元素を含むクロム化合物を最表面にスパッタリング成膜した基板、SiO、SiOx、タンタル化合物、モリブデン化合物、コバルト化合物、ニッケル化合物、タングステン化合物、スズ化合物を最表層に含む基板等が挙げられる。本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物は、特に、基板としてフォトマスクブランクを用いたパターン形成に有用である。このとき、フォトマスクブランクとしては、透過型でも反射型でもよい。
【0234】
透過型マスクブランクとして、クロム系材料による遮光膜をもつフォトマスクブランクは、バイナリーマスク用フォトマスクブランクでもよく、位相シフトマスク用フォトマスクブランクでもよい。バイナリーマスク用フォトマスクブランクの場合、遮光膜としてクロム系材料による反射防止層と遮光層をもつものでもよく、表層側の反射防止膜全部又は表層側の反射防止膜の更に表層側のみがクロム系材料で、残りの部分は、例えば遷移金属を含有していてもよいケイ素系化合物材料からなるものであってもよい。また、位相シフトマスク用フォトマスクブランクの場合、位相シフト膜上にクロム系遮光膜を有する位相シフトマスク用フォトマスクブランクを対象とすることができる。
【0235】
前述した最表層にクロム系材料をもつフォトマスクブランクは、特開2008-26500号公報、特開2007-302873号公報又はそれらの中で従来技術として例示されているように、非常によく知られているものであり、詳細の説明は省略するが、例えばクロム系材料によって反射防止層と遮光層をもつ遮光膜を構成する場合には、下記のような膜構成を用いることができる。
【0236】
クロム系材料によって反射防止層と遮光層とを有する遮光膜を形成する場合、層構成としては、表層側より反射防止層及び遮光層の順に積層してもよいし、反射防止層、遮光層及び反射防止層の順に積層してもよい。また、反射防止層と遮光層はそれぞれ多層であってもよく、組成の異なる層の間は、不連続に組成が変わるものでもよいし、組成が連続変化するものでもよい。用いるクロム系材料としては、金属クロム及び金属クロムに酸素、窒素、炭素のような軽元素を含有する材料が用いられる。具体的には、金属クロム、酸化クロム、窒化クロム、炭化クロム、酸化窒化クロム、酸化炭化クロム、窒化炭化クロム、酸化窒化炭化クロム等を用いることができる。
【0237】
また、反射型マスクブランクは、基板と、基板の一の主表面(表側の面)上に形成された多層反射膜、具体的には、EUV光などの露光光を反射する多層反射膜と、多層反射膜上に形成された吸収体膜、具体的には、EUV光などの露光光を吸収し、反射率を低下させる吸収体膜とを備える。反射型マスクブランク(EUV用反射型マスクブランク)からは、吸収体膜をパターニングして形成される吸収体パターン(吸収体膜のパターン)を有する反射型マスク(EUV用反射型マスク)が製造される。EUVリソグラフィーに用いられるEUV光の波長は13~14nmであり、通常、波長が13.5nm程度の光である。
【0238】
多層反射膜は、通常、基板の一の主表面に接して設けられることが好ましいが、本発明の効果を失わなければ、基板と多層反射膜との間に下地膜を設けることも可能である。吸収体膜は多層反射膜に接して形成してもよいが、多層反射膜と吸収体膜との間には、好ましくは多層反射膜と接して、より好ましくは多層反射膜及び吸収体膜と接して、保護膜(多層反射膜の保護膜)を設けてもよい。保護膜は、洗浄、修正等の加工などにおいて、多層反射膜を保護するためなどに用いられる。また、保護膜には、吸収体膜をエッチングによりパターニングするときの多層反射膜の保護や、多層反射膜の酸化を防止する機能を有するものが好ましい。一方、基板の一の主表面と反対側の面である他の主表面(裏側の面)下、好ましくは他の主表面に接して、反射型マスクを露光装置に静電チャックするために用いる導電膜を設けてもよい。なお、ここでは、基板の一の主表面を表側の面かつ上側、他の主表面を裏側の面かつ下側としているが、両者の表裏及び上下は便宜上定めたものであり、一の主表面と他の主表面とは、基板における2つの主表面(膜形成面)のいずれかであり、表裏及び上下は置換可能である。より具体的には、特開2021-139970号公報又はそれらの中で従来技術として例示されているような方法にて形成することができる。
【0239】
本発明のレジストパターン形成方法によれば、最表面が、クロム又はケイ素を含む材料等のレジストパターン形状に影響を与えやすい材料からなる基板(例えば、フォトマスクブランク)を用いた場合であっても、基板界面で効率的に本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物が酸拡散を制御することで、高い解像性、矩形性、パターン忠実性を有しつつ、LER及びドーズマージンが改善されたパターンを形成できる。
【実施例0240】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。
【0241】
[1]化学増幅ポジ型レジスト組成物の調製
[実施例1-1~1-42、比較例1-1~1-3]
下記表1~3に示す組成で各成分を有機溶剤中に溶解し、得られた各溶液を10nm以下のサイズから選択されるUPEフィルター及び/又はナイロンフィルターで濾過することで、化学増幅ポジ型レジスト組成物(R-1~R-42、CR-1~CR-3)を調製した。なお、前記有機溶剤は、PGMEA1000質量部、EL2000質量部及びPGME2000質量部の混合溶剤である。
【0242】
【表1】
【0243】
【表2】
【0244】
【表3】
【0245】
表1~3中、クエンチャークエンチャーQ-1~Q-7、比較クエンチャーcQ-1~cQ-3、ポリマーA-1~A-18、ポリマーP-1~P-5、光酸発生剤PAG-A~PAG-C及びフッ素原子含有ポリマーFP-1~FP-5は、以下のとおりである。なお、ポリマーの共重合組成比はモル比であり、Mwは、THF又はDMFを溶剤として用いたGPCによるポリスチレン換算測定値である。
【化120】
【0246】
【化121】
【0247】
【化122】
【0248】
【化123】
【0249】
【化124】
【0250】
【化125】
【0251】
【化126】
【0252】
【化127】
【0253】
【化128】
【0254】
【化129】
【0255】
[2]EBリソグラフィー評価
[実施例2-1~2-42、比較例2-1~2-3]
各化学増幅ポジ型レジスト組成物(R-1~R-42、CR-1~CR-3)を、ACT-M(東京エレクトロン(株)製)を用いて低熱膨張ガラス基板上に膜厚284nmのMо/Si40層多層反射膜、その上に保護膜として3.5nmのRu膜、その上に吸収層として70nmのTaN膜、その上にハードマスクとして6nmのCrN膜を形成したマスクブランク上にスピンコーティングし、ホットプレート上で、110℃で600秒間プリベークして膜厚80nmのレジスト膜を作製した。得られたレジスト膜の膜厚測定は、光学式測定器ナノスペック(ナノメトリックス社製)を用いて行った。測定は、ブランク外周から10mm内側までの外縁部分を除くブランク基板の面内81箇所で行い、膜厚平均値と膜厚範囲を算出した。
【0256】
電子線露光装置((株)ニューフレアテクノロジー製EBM-5000plus、加速電圧50kV)を用いて露光し、100℃で600秒間PEBを施し、2.38質量%TMAH水溶液で現像を行い、ポジ型のパターンを得た。
【0257】
得られたレジストパターンを次のように評価した。作製したパターン付きマスクブランクを上空SEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、200nmの1:1のラインアンドスペース(LS)を1:1で解像する露光量を最適露光量(μC/cm2)とし、200nmのLSを1:1で解像する露光量における最小寸法を解像度(限界解像性)とした。最適露光量で照射して得た200nmLSパターンについて、SEMを用いて200nmLSパターン32本のエッジ各々について80点のエッジ検出を行い、そのばらつき(標準偏差、σ)の3倍値(3σ)を求め、LER(nm)とした。また、1:1で解像する露光量を基準とした際の1μCあたりのCD変化量をドーズカーブ曲線より求めた。結果を表4~6に示す。
【0258】
【表4】
【0259】
【表5】
【0260】
【表6】
【0261】
式(A)で表されるオニウム塩を含むクエンチャーを含む本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物(R-1~R-42)は、比較例のレジスト組成物(CR-1~CR-3)と比較して、酸拡散制御が効果的に働いていずれも良好な解像性を示し、LER及びドーズマージンも良好な値を示した。
【0262】
また、式(A)で表されるオニウム塩はクエンチャー能が高く、感度を調整するために使用する量が少なくできるため、使用する溶剤への相溶性が高く、膜内に均一分散するため、特にLERが良好な数値を示した。さらに、適度な脂溶性を有することで剛直性の向上と膨潤が抑制されるため、パターン矩形性に優れる良好な解像性が得られた。
(CR-1~CR-3は頭丸形状であった。)
【0263】
以上説明したように、本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物を用いれば、解像性が極めて高く、LER及びドーズマージンの良好な矩形パターンを形成することができる。本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物を用いるレジストパターン形成方法は、半導体素子製造、特に透過型又は反射型マスクブランクの加工におけるフォトリソグラフィーに有用である。