(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162630
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
A47C 7/40 20060101AFI20241114BHJP
A47C 9/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
A47C7/40
A47C9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078343
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】308022520
【氏名又は名称】ビーム有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082658
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 儀一郎
(72)【発明者】
【氏名】大塚 清弘
【テーマコード(参考)】
3B084
3B095
【Fターム(参考)】
3B084EC06
3B095AC06
3B095CA02
3B095GA03
3B095GA04
(57)【要約】
【課題】本発明は、長時間あるいは長期間座っていたとしても、両肺の下部に接する背中の筋肉が圧迫されないため呼吸時における肺の膨張を妨げず、もって肺機能を維持することで肺機能の低下を抑制し、ひいては肺機能の回復を助けることにつながる呼吸による両肺下部の膨らみ易さ保持を確保できる椅子を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、座面と、座面を保持する複数本の脚と、座面の背面から立ち上がる背もたれ部を有する椅子であり、前記背もたれ部は上部背もたれ部と下部背もたれ部により構成され、前記両背もたれ部の間には腰掛けた人の呼吸時における肺下部の膨出を妨げない膨出開放部が設けられたことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座面と、座面を保持する複数本の脚と、座面の背面から立ち上がる背もたれ部を有する椅子であり、前記背もたれ部は、上部背もたれ部と下部背もたれ部により構成され、前記両背もたれ部の間には、腰掛けた人の呼吸時における肺下部の膨出を妨げない膨出開放部が設けられた、
ことを特徴とする椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸による両肺下部の膨らみ易さ保持を確保することにより、例えば患者、病人、療養中の人や介護を受ける人の肺機能の回復を無理なくサポートできる呼吸による両肺下部の膨らみ易さ保持を確保できる椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
患者、病人、療養中の人並びに介護を受ける人は、特に昼間、複数の理由で、常に布団に横になっているのではなく、できる限り座っていることを医師、看護師や介護人から求められる。
これは、患者、病人、療養中の人や介護を受ける人が、特に仰向けで寝ると両肺の下部が心臓など内臓の重みで圧迫され続け、膨らみ難くなり、さらにこの状況が長時間あるいは長期間にわたると両肺の下部に接する背中の筋肉も圧迫され続け、固くなってしまう。
【0003】
健常者が深呼吸すると、背中側の一番下の肋骨と下から2番目の肋骨の間が大きく広がり、両肺の下部がその隙間に入り込むようにして膨らむが、これは深呼吸をしている人の背中に手を当てることで容易に確認ができる。両肺下部が膨らもうとする辺りの背中の筋肉が固くなると、背中の肋骨の広がりがなくなり、その結果、両肺下部は膨らむための空間がなくなり、膨らむことが出来ず、肺機能の低下をまねいてしまう。
【0004】
肺機能が低下すると少しの運動でも息苦しさや息切れを覚え、生活をする上での活動力の低下に直結することとなる。このことから、患者、病人、療養中の人や介護を受ける人にとって、両肺下部の膨らみ易さ保持の確保は、極めて重要な事項なのである。
しかるに、患者、病人、療養中の人や介護を受ける人が長く座った状態で両肺下部の膨らみ易さ保持の確保するためには、両肺の下部に接する背中の筋肉が背もたれに当たって圧迫されることのない椅子を用意することが極めて好ましい。
【0005】
しかしながら、市場には椅子の種類は豊富にはあるが、両肺の下部が当たらないよう設計された椅子は、一部背もたれが腰部分のものを除き、皆無といって良い。また、例えば介護士が薦める肘付き椅子は、患者や介護を受ける人が座ったり、立ち上がったりするにはとても良いが、両肺の下部については何ら配慮がなされていない。
患者のための椅子と云うポスチャーサポートチェアもあるが、脊椎体圧分散を目的とした主に腰痛などのためのものであり、このポスチャーサポートチェアも両肺の下部については配慮がなされていないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記従来の課題を解決するために創案されたものであって、長時間あるいは長期間座っていたとしても、両肺の下部に接する背中の筋肉が圧迫されないため呼吸時における肺の膨張を妨げず、もって肺機能を維持することで肺機能の低下を抑制し、ひいては肺機能の回復を助けることにつながる呼吸による両肺下部の膨らみ易さ保持を確保できる椅子を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
座面と、座面を保持する複数本の脚と、座面の背面から立ち上がる背もたれ部を有する椅子であり、前記背もたれ部は、上部背もたれ部と下部背もたれ部により構成され、前記両背もたれ部の間には、腰掛けた人の呼吸時における肺下部の膨出を妨げない膨出開放部が設けられた、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の呼吸による両肺下部の膨らみ易さ保持を確保できる椅子であれば、長時間あるいは長期間座っていたとしても、両肺の下部に接する背中の筋肉が圧迫されないため呼吸時における肺の膨張を妨げず、もって肺機能を維持することで肺機能の低下を抑制し、ひいては肺機能の回復を助けることにつながるとの優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明による椅子の構成を説明する正面図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の構成を図に基づき説明する。
図1に示す様に、本発明の椅子1は、座面2と、座面2を保持する例えば4本の脚3と、座面2の背面から立ち上がる背もたれ部4とを有して構成されている。
尚、脚3がない場合の椅子であっても本発明は適用可能である。
【0012】
ここで、背もたれ部4について説明する。通常、背もたれ部4は、前記座面2に人が腰掛けたとき、前記背もたれ部4に腰掛けた人の背中がほぼ全面的に接する様構成されている。
ここで、腰掛けた人が前記背もたれ部4に背中を接した状態で呼吸をするときは、腰掛けた人の背中側に位置する肺の下部分が呼吸時に膨らみ、背中側に膨出する。すると、通常の椅子では呼吸時に背中側に膨出した肺の下部分が背もたれ部4に押され、前記肺の下部分が腰掛けた人の内蔵側に押し戻されるものとなる。かかる状況は特に病弱者や高齢者にとっては好ましいことではない。
【0013】
従って、背中側に膨出した箇所を押し戻す背もたれ部4ではなく、膨出した箇所が押し戻されない例えば空間スペースなどを確保した前記膨出する箇所を押し戻すことのない背もたれ部4を形成することが重要となる。
【0014】
本発明による椅子1は、呼吸時に生ずる背中側に膨出する肺の下部分を押し戻すことのない膨出開放部9を設けた椅子1である。
従来の背もたれ部4を用いた椅子1の構造を調査してみると、背もたれ部4がある椅子1のほとんどが、腰掛けた人の肺下部の呼吸時に背中方向に前記肺下部が膨れる位置に接する接触面を持った背もたれ部4を有している。
【0015】
背もたれ部4がある椅子1の一部には腰掛けた人の腰の位置の高さまでしか背もたれ部4がない椅子1も存在するが、このような椅子1であると病弱者や高齢者が座り続けるためには、背もたれ部4が腰の高さまででは不充分であり、例えば腰掛けた人の肩の位置まで背もたれ部4を有していることが必要となる。長時間の座り心地の良さが必要だからである。
【0016】
ところで、人が背もたれ部4のある椅子1に座り続けなければならないとき、注意しなければならない点が前記したように存在する。
さらにその点につき説明すると、腰掛けた人が呼吸する際、肺が、特に肺下部が背中側に膨れるものとなる。その際、肺下部が膨れる位置の背中の筋肉が常に背もたれ部4に接していると、圧迫されてしまう。その結果、背中の筋肉が固くなってしまうことがあり、通常の呼吸状態であっても肺下部の機能を小さくしてしまう事態が生ずることとなる。
【0017】
よって、肺下部が膨れる位置の筋肉に影響を与えないように(負荷がかからないように)、かつ深呼吸時には、肺下部が大きく膨らむことができるように背もたれに肺下部が膨れる位置の背中の筋肉に接する箇所に空間スペースなどを設け、肺下部が膨れる位置の背中の筋肉に負荷を与えない膨出開放部9が設けられた構成にすることが必要となる。
【0018】
膨出開放部9の構成として考えられるのは、椅子1の背の部分で、肩甲骨の下から腰までの部分に空間スペース5を設けることである。
あるいは、前記空間スペース5の部分を単に空間にするのではなく、柔らかい素材を用いたもので塞ぎ、肺の膨らみを妨げない構成の膨出開放部9にすることが考えられる。特に、空間スペース5によって膨出開放部9を構成する場合には、背もたれ部4を、腰掛けた人の肩甲骨より上の部分と腰の部分に分けて形成する必要がある。
【0019】
図1によって説明すると、腰掛けた人の肩甲骨より上の部分に上部背もたれ部7を設け、腰掛けた人の腰の位置に下部背もたれ部8を構成し、この間を空間スペース5とするのである。
尚、背もたれ部4を、腰掛ける人の肩甲骨より上の部分だけの上部背もたれ部7を設け、その下側はすべて空間スペース5を設けた椅子1にすることも考えられる。
【0020】
前述したが、通常の背もたれ全体に接する部分を有する背もたれ部4がある椅子であると、該背もたれ部4に寄りかかって長時間・長期間座っていると、両肺下部に接する背中の筋肉が圧迫される。そして、圧迫されることで呼吸時の肺の膨張が妨げられる。場合によっては肺の機能を低下させてしまい、特に療養中の人については肺機能の回復の妨げる原因になってしまうことになる。
【0021】
これに対し、腰掛けた人の肩甲骨より上の部分に上部背もたれ部7を設け、腰掛けた人の腰の位置に下部背もたれ部8を構成し、この間を空間スペース5とすることで、腰掛けた人の肺機能を維持し、肺機能の低下を防ぎ、肺機能の回復を促進する効果をもたらすことになる。
すなわち、患者・病人・療養中の人が、長時間・長期間仰向けで寝ると、両肺下部が潰れてしまい、肺機能の低下をまねいてしまう。肺機能の低下は、生活をする上での活動力の低下に直結する。よって、両肺下部の膨らみ易さの確保は、とても重要なことである。
【0022】
患者・病人・療養中の人は、特に昼間、複数の理由で、できる限り横になるのではなく、座っていることを医師・看護師や介護人から求められる。よって、椅子1に座っている時に、特に両肺下部の背中の部分が背もたれ部4に当たることのない、換言すれば肺の下部分の膨出を妨げない膨出開放部9が設けられた椅子1が極めて重要なのである。
本発明の椅子1によれば、病後の機能回復を無理なく促し、入院期間の短縮を期待できるからである。
【0023】
ところで、人が椅子1に腰掛けるとき、腰掛けた人の両肺下部の背中の部分は、両肩甲骨の下辺りになる。よって、前記椅子1の背もたれ部4においては、肩甲骨下から腰上までの間に空間スペース5などの膨出開放部9が確保されることが重要ポイントとなる。
すなわち、腰掛けた人が座った状態で、深くゆっくり深呼吸をすると、両肺下部に空気が入るのを意識することができる。そのとき、腰掛けた人にその背中の部分に手を添えて貰うと、膨らんでいるのを実感できるのである。その膨らんだ部分に対向して膨出開放部9を設けるのである。
【0024】
(本発明による椅子の製品化について)
しかるに、本発明による椅子1の製品化につき、日本人向け製品の製造につき鑑みると、例えば、SサイズとMサイズの2種類あれば、今は、充分であると考えられる。
例えば、主要な寸法の中で、もっとも重要なものは、座面2までの高さで、Sサイズの場合は約35cm、Mサイズの場合は約40cmを想定している。
【0025】
そして、身長140cm程の人には前記Sサイズが適用される。Mサイズの座面2の高さ40cmでは、身長140cm程の人は座っていて足が浮いている状態から立ち上がるのが難いからである。
逆に身長180cm程の人には、座面35cmでは低く過ぎる。よって前記Mサイズの椅子1が適用される。
【0026】
160cm程の身長の人と190cm程の身長の人では、身長差が30cmとなるが、それぞれの座面2から肺下部までの位置(ポイントは直径4cm程度)の差は、5cm程しかない。よって、前記座面2から腰掛けた人の肺下部までの位置の差は、背もたれ部4の膨出開放部9を空間スペース5で構成したとき、該空間スペース5の高さ方向の長さを約20cmで構成すれば、この約20cmの中で充分カバーできると考えられる。よって、座面2までの高さが約35cmのSサイズ、あるいは座面までの高さが約40cmのMサイズの2つのサイズがあればたりると考えられる。
しかし、本発明はこの2つのサイズの製品化に限定されるものではない。
【0027】
次に、本発明において、椅子1の主要な寸法を調整できる椅子1の提供が考えられる。
すなわち、日本人向けには、SサイズとMサイズの2種類で充分賄えると考えられるが、外国人向けには主要な寸法を調整する機能を付ける可能性があるからである。
【0028】
まず、座面2の高さを調整するには、座面2を支持する脚3の長さが調整できる椅子1としなければならない。しかし、その機能を付けた分、製品コストが上昇する。また、特に座面2の高さを調整できるものとなると、しっかりと椅子1の強度を保持する必要がある。従って、強度を向上させた脚3を使用し、しかも外側に向け若干拡がっている脚3にすることが好ましい。
【0029】
尚、前記空間スペース5などで構成された膨出開放部9の高さ方向の長さが調整できる椅子1をも提供できる。特に体格の大きい外国人向けを考慮したものである。その場合、背もたれ部4を構成する両側の保持枠6を伸縮自在の構成にすることが考えられる。
図1に示したように背もたれ部4を上部背もたれ部7と下部背もたれ部8とに分割し、下部背もたれ部8の両側に存する保持枠6間に上部背もたれ部7の両側保持枠6を進入させて当接させ、高さ方向に伸縮スライドして固定できる構成にするのである。すなわち、伸縮スライドさせた後に、例えば、ボルトなどの固定具10によって上部背もたれ部7の両側保持枠6と下部背もたれ部8の両側保持枠6とを連結し、固定できる構成にするのである。
【0030】
尚、上記構成は一つの具体例であって、伸縮スライドさせる構成、そして、上部背もたれ部7と下部背もたれ部8の保持枠6の連結固定は上記実施例に限定されるものではない。
さらに、本発明の椅子1に付加価値をつけることもできる。例えば、背もたれ部4に設けた空間スペース5などの膨出開放部9の箇所に可動式電動ローラを設け、該電動ローラを可働させることが必要なときは、腰掛けた人の肺下部背中側箇所をもみほぐせる構成にしても構わないものである。
【0031】
(結論)
前記したように、椅子1に腰掛けた人が大きい深呼吸をする、すなわち、胸腹式深呼吸をすると、肺下部が位置する背中の肋骨の間から肺下部が膨れ出ることが確認されている。
しかしながら、背もたれ部4を有する椅子1のほとんどは人間の肺下部の呼吸時に背中方向に膨れる位置に対向して接する背もたれ部4を有している。
【0032】
ここで、重要なのは、肺下部が膨れる位置の背中の筋肉が背もたれ部4のある椅子1に座り続けることで、どんどん固くなってしまい、通常の呼吸においても肺下部の機能を小さくしてしまうことである。
よって、その位置の筋肉に影響を与えないように、そして、深呼吸時には、肺下部が大きく膨らむ動作を邪魔しないよう膨出開放部9を設けた背もたれ部4の椅子1が重要なのである。そして、その構成の一具体例が背もたれ部4の前記部分に膨出開放部9となる空間スペース5などを構成することなのである。
【符号の説明】
【0033】
1 椅子
2 座面
3 脚
4 背もたれ部
5 空間スペース
6 保持枠
7 上部背もたれ部
8 下部背もたれ部
9 膨出開放部
10 固定具