(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162633
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】連結車両の連結角算出システム、連結車両の連結角算出装置、および連結車両の連結角算出方法
(51)【国際特許分類】
B60D 1/00 20060101AFI20241114BHJP
B60D 1/62 20060101ALI20241114BHJP
B62D 53/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B60D1/00 Z
B60D1/62
B62D53/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078349
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】安井 祥
(57)【要約】
【課題】連結車両を構成する2つの車両の連結角を、簡易な処理で精度良く検出することが可能な連結車両の連結角算出システムを提供する。
【解決手段】連結角算出システム1は、リンク構造体20と、角度センサ30と、連結角算出装置40とを備える。リンク構造体20は、複数のリンク部材21と複数のリンク部材21を接続させてリンク機構を構成させる関節部材22とにより構成され、両端部が、牽引車11と牽引車11に連結された被牽引車12とにそれぞれ接続される。角度センサ30は、リンク部材21の方向または位置の少なくともいずれかを検出する。連結角算出装置40は、角度センサ30で検出されたリンク部材21の方向または位置の情報に基づいて、牽引車11と被牽引車12との連結角を算出する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のリンク部材と前記複数のリンク部材を接続させてリンク機構を構成させる関節部材とにより構成され、両端部が、第1車両と前記第1車両に連結された第2車両とにそれぞれ接続されたリンク構造体と、
前記リンク部材の方向または位置の少なくともいずれかを検出するリンク検出センサと、
前記リンク検出センサで検出された、前記リンク部材の方向または位置の情報に基づいて、前記第1車両と前記第2車両との連結角を算出する連結角算出装置と、を備えた連結車両の連結角算出システム。
【請求項2】
前記リンク構造体は、シリアルリンク機構またはパラレルリンク機構で構成される、請求項1に記載の連結車両の連結角算出システム。
【請求項3】
前記リンク構造体のリンク部材は、所定方向の軸に対する回転動作または伸縮動作により、方向または位置が変化するように構成される、請求項1に記載の連結車両の連結角算出システム。
【請求項4】
前記リンク検出センサは、接続された前記第1車両または前記第2車両から供給される電力を使用して動作する、請求項1に記載の連結車両の連結角算出システム。
【請求項5】
前記リンク構造体は、前記第1車両の所定位置と前記第2車両の所定位置との間で情報通信を行うケーブルに沿って設置されるか、または、内部に前記ケーブルを通して構成される、請求項1に記載の連結車両の連結角算出システム。
【請求項6】
前記リンク構造体は、一端が、前記第2車両内で、前記第1車両との通信を行うケーブルが接続されるコネクタに接続される、請求項1に記載の連結車両の連結角算出システム。
【請求項7】
前記リンク検出センサは、前記第1車両から前記第2車両に送信される信号を用いて、前記リンク部材の方向または位置の少なくともいずれかを検出する、請求項1に記載の連結車両の連結角算出システム。
【請求項8】
複数のリンク部材と前記複数のリンク部材を接続させてリンク機構を構成させる関節部材とにより構成され、両端部が、第1車両と前記第1車両に連結された第2車両とにそれぞれ接続されたリンク構造体内の、前記リンク部材の方向または位置の少なくともいずれかを検出するリンク検出センサに通信可能に接続され、
前記リンク検出センサで検出された、前記リンク部材の方向または位置の情報に基づいて、前記第1車両と前記第2車両との連結角を算出する連結角算出部を備えた、連結車両の連結角算出装置。
【請求項9】
複数のリンク部材と前記複数のリンク部材を接続させてリンク機構を構成させる関節部材とにより構成され、両端部が、第1車両と前記第1車両に連結された第2車両とにそれぞれ接続されたリンク構造体内の、前記リンク部材の方向または位置の少なくともいずれかを検出するリンク検出センサに通信可能に接続された連結角算出装置が、
前記リンク検出センサで検出された、前記リンク部材の方向または位置の情報に基づいて、前記第1車両と前記第2車両との連結角を算出する、連結車両の連結角算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、連結車両の連結角算出システム、連結車両の連結角算出装置、および連結車両の連結角算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、港湾設備等の大型設備においてコンテナ等の荷物を搬送する車両として、連結車両である牽引自動車が用いられている。牽引自動車とは、牽引車(トレーラヘッドまたはトラクタ)と、この牽引車により牽引される被牽引車(トレーラ)とが、連結機構によって連結された車両である。この牽引自動車の連結機構は、牽引車側のカプラと被牽引車側のキングピンとで構成されている。
【0003】
このように構成された牽引自動車は、左方向または右方向に旋回するように走行すると、連結角が大きくなる。連結角が大きくなると、ジャックナイフ現象などの走行不能状態に陥る危険があり、また運転者が車体の移動エリアを把握し難くなるため、運転者はより一層の注意を払って運転する必要がある。これに鑑み、牽引自動車の走行中に牽引車と被牽引車との連結角を検出し、検出した値に基づいて運転支援を行う技術がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、被牽引車の所定位置にリフレクタを設置しておき、牽引車に設置されたスキャンレーダが被牽引車に対して水平方向にスキャンし、リフレクタから返ってくる反射光の方向を検知することで、牽引車に対する被牽引車の連結角を検出するトレーラ連結角算出装置が記載されている。
【0006】
しかし特許文献1に記載された技術を用いる場合、リフレクタとスキャンレーダとを設置する際に、その設置位置の調整が必要であり、手間がかかるという問題があった。
【0007】
本開示は上記事情に鑑みてなされたものであり、連結車両を構成する2つの車両の連結角を、簡易な処理で精度良く検出することが可能な連結車両の連結角算出システム、連結車両の連結角算出装置、および連結車両の連結角算出方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る連結車両の連結角算出システムは、複数のリンク部材と前記複数のリンク部材を接続させてリンク機構を構成させる関節部材とにより構成され、両端部が、第1車両と前記第1車両に連結された第2車両とにそれぞれ接続されたリンク構造体と、前記リンク部材の方向または位置の少なくともいずれかを検出するリンク検出センサと、前記リンク検出センサで検出された、前記リンク部材の方向または位置の情報に基づいて、前記第1車両と前記第2車両との連結角を算出する連結角算出装置と、を備える。
【0009】
前記リンク構造体は、シリアルリンク機構またはパラレルリンク機構で構成されてもよい。
【0010】
また、前記リンク構造体のリンク部材は、所定方向の軸に対する回転動作または伸縮動作により、方向または位置が変化するように構成されてもよい。
【0011】
また、前記リンク検出センサは、接続された前記第1車両または前記第2車両から供給される電力を使用して動作してもよい。
【0012】
また、前記リンク構造体は、前記第1車両の所定位置と前記第2車両の所定位置との間で情報通信を行うケーブルに沿うように設置されるかまたは、内部にケーブルを設置して構成されてもよい。
【0013】
また、前記リンク構造体は、一端が、前記第2車両内で、前記第1車両との通信を行うケーブルが接続されるコネクタに接続されてもよい。
【0014】
前記リンク検出センサは、前記第1車両から前記第2車両に送信される信号を用いて、前記リンク部材の方向または位置の少なくともいずれかを検出してもよい。
【0015】
また、本開示に係る連結車両の連結角算出装置は、複数のリンク部材と前記複数のリンク部材を接続させてリンク機構を構成させる関節部材とにより構成され、両端部が、第1車両と前記第1車両に連結された第2車両とにそれぞれ接続されたリンク構造体内の、前記リンク部材の方向または位置の少なくともいずれかを検出するリンク検出センサに通信可能に接続され、前記リンク検出センサで検出された、前記リンク部材の方向または位置の情報に基づいて、前記第1車両と前記第2車両との連結角を算出する連結角算出部を備える。
【0016】
また、本開示に係る連結車両の連結角算出方法は、複数のリンク部材と前記複数のリンク部材を接続させてリンク機構を構成させる関節部材とにより構成され、両端部が、第1車両と前記第1車両に連結された第2車両とにそれぞれ接続されたリンク構造体内の、前記リンク部材の方向または位置の少なくともいずれかを検出するリンク検出センサに通信可能に接続された連結角算出装置が、
前記リンク検出センサで検出された、前記リンク部材の方向または位置の情報に基づいて、前記第1車両と前記第2車両との連結角を算出する。
【発明の効果】
【0017】
本開示の連結車両の連結角算出システム、連結車両の連結角算出装置、および連結車両の連結角算出方法によれば、連結車両を構成する2つの車両の連結角を、簡易な処理で精度良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】一実施形態に係る連結角算出システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】一実施形態に係る連結角算出システム内のリンク構造体20の一形態であるリンク構造体20Aが牽引自動車10に設置された状態を横から見た図である。
【
図3】一実施形態に係る連結角算出システム内のリンク構造体20の一形態であるリンク構造体20Bが牽引自動車10に設置された状態を横から見た図である。
【
図4】一実施形態に係る連結角算出システム内のリンク構造体20の一形態であるリンク構造体20Cが牽引自動車10に設置された状態を横から見た図である。
【
図5】一実施形態に係る連結角算出システム内のリンク構造体20の一形態であるリンク構造体20Dが牽引自動車10に設置された状態を横から見た図である。
【
図6】一実施形態に係る連結角算出システム内の連結角算出装置40が実行する連結角の算出処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、連結車両である牽引自動車の連結角を検出する連結角算出装置の実施形態について、図面を参照して説明する。牽引自動車とは、牽引車(トレーラヘッドまたはトラクタ)と、この牽引車により牽引される被牽引車(トレーラ)とが、連結機構によって連結された車両である。この牽引自動車の連結機構は、牽引車側のカプラと被牽引車側のキングピンとで構成され、その連結角は牽引自動車の走行方向の変更等によって変化する。
【0020】
図1は、一実施形態に係る連結角算出システム1の構成を示すブロック図である。連結角算出システム1は、牽引自動車10に設置されたリンク構造体20と、リンク構造体20に設置されたリンク検出センサとしての角度センサ30と、連結角算出装置40とを備える。
【0021】
以下に、牽引自動車10、リンク構造体20、および角度センサ30の構成例(1)~(4)について説明する。
【0022】
[構成例(1)]
図2は、リンク構造体20の一形態であるリンク構造体20Aが牽引自動車10に設置された状態を横から見た図である。
【0023】
牽引自動車10は、第1車両である牽引車11と、第2車両である被牽引車12とが連結部材13で連結された構成されている。牽引車11は、車載器111と、車載器111に接続された自動運転制御装置112とを備える。被牽引車12にはコネクタ14が設置され、コネクタ14と車載器111とがケーブル15で接続されている。ケーブル15は、車載器111から送信されたCAN(Controller Area Network)信号、ブレーキ信号、およびウィンカーランプ信号等の情報を、被牽引車12に送信する。これらの信号は、被牽引車12において適宜ランプ(図示せず)の点灯等に用いられる。
【0024】
リンク構造体20Aは、リンク部材21a、21b、21c、21d、21e、21f、21gと、関節部材22a、22b、22c、22d、22e、22fとを有する。
【0025】
関節部材22aには、リンク部材21aおよび21bが、地面に対して水平方向のピッチ軸を回転軸として上下方向に回転可能な状態で接続されている。関節部材22bには、リンク部材21bおよび21cが、地面に対して垂直方向のヨー軸を回転軸として左右方向に回転可能な状態で接続されている。関節部材22cには、リンク部材21cおよび21dが、ピッチ軸を回転軸として上下方向に回転可能な状態で接続されている。関節部材22dには、リンク部材21dおよび21eが、ヨー軸を回転軸として左右方向に回転可能な状態で接続されている。関節部材22eには、リンク部材21eおよび21fが、ピッチ軸を回転軸として上下方向に回転可能な状態で接続されている。関節部材22fには、リンク部材21fおよび21gが、ヨー軸を回転軸として左右方向に回転可能な状態で接続されている。
【0026】
このように、各部材が、リンク部材21a-関節部材22a-リンク部材21b-関節部材22b-リンク部材21c-関節部材22c-リンク部材21d-関節部材22d-リンク部材21e-関節部材22e-リンク部材21f-関節部材22f-リンク部材21gの順に連続的に接続されることで、シリアルリンク機構のリンク構造体20Aが形成される。
【0027】
リンク構造体20Aは、その一端であるリンク部材21aが牽引車11内の所定位置、例えばケーブル15の根元位置に固定され、他端であるリンク部材21gが被牽引車12内の所定位置、例えばコネクタ14に固定される。また、リンク部材21aからリンク部材21gまでの間は、ケーブル15に沿うように設置される。このようにリンク構造体20Aを設置することで、牽引自動車10の走行の妨げにならないようリンク構造体20Aを設置することができる。
【0028】
このように、既設の設備であるコネクタ14およびケーブル15を用いることで、リンク構造体20Aを、走行の弊害にならないように設置することができる。また、リンク構造体20Aをシリアルリンク機構で構成することで、ケーブル15に沿った設置をし易くなる。
【0029】
関節部材22b内には角度センサ30aが設置され、関節部材22d内には角度センサ30bが設置され、関節部材22f内には角度センサ30cが設置されている。また関節部材22a内には角度センサ31aが設置され、関節部材22c内には角度センサ31bが設置され、関節部材22e内には角度センサ31cが設置されている。
【0030】
角度センサ30aは、地面に対して水平な面における、リンク部材21bおよび21dの方向として、リンク部材21bと21cとがなす角度を検出する。角度センサ30bは、地面に対して水平な面における、リンク部材21dと21eとがなす角度を検出する。角度センサ30cは、地面に対して水平な面における、リンク部材21fと21gとがなす角度を検出する。
【0031】
角度センサ31aは、地面に対して垂直な面における、リンク部材21aおよび21bの方向として、リンク部材21aと21bとがなす角度を検出する。角度センサ31bは、地面に対して垂直な面における、リンク部材21cと21dとがなす角度を検出する。角度センサ31cは、地面に対して垂直な面における、リンク部材21eと21fとがなす角度を検出する。
【0032】
角度センサ30a、30b、30c、31a、31b、および31cは、通信線または無線通信を介して連結角算出装置40に接続され、検出した角度の情報を連結角算出装置40に送信する。このように構成することで、牽引車11と被牽引車12との連結角に応じて変化する、各関節部材22a、22b、22c、22d、22e、22fに接続されたリンク部材21がなす角度の情報を、連結角算出装置40に提供することができる。
【0033】
この構成例(1)では、ヨー軸およびピッチ軸を回転軸としてリンク部材21を回転可能な関節部材を含めてリンク部材21を構成しているため、ケーブル15の設置形状に合わせて設置し易くなる。
【0034】
上述した構成例(1)では、牽引車11内におけるケーブル15の根元位置にリンク構造体20Aの端部を設置した場合について説明したが、これには限定されず、牽引車11内のケーブル15の途中位置近傍等にリンク構造体20Aの端部を設置してもよい。
【0035】
[構成例(2)]
図3は、リンク構造体20の一形態であるリンク構造体20Bが牽引自動車10に設置された状態を横から見た図である。リンク構造体20Bは、リンク部材21h、21i、21jと、関節部材22g、22hと、伸縮機構23と、を有する。
【0036】
牽引車11と被牽引車12との連結角を算出するためには、これらの車両の位置および姿勢の6自由度すべてに関してリンク部材21の角度情報を取得する必要はなく、ヨー軸に対する左右方向の角度情報のみを取得すればよい。そのため、構成例(2)では、リンク構造体20Bを、高さ方向を調整可能な伸縮機構23と、関節部材22にヨー軸を回転軸として接続されたリンク部材21とで構成する。
【0037】
関節部材22gには、リンク部材21hおよび21iが、ヨー軸を回転軸として左右方向に回転可能な状態で接続されている。関節部材22hには、リンク部材21iおよび21jが、ヨー軸を回転軸として左右方向に回転可能な状態で接続されている。また、リンク部材21hには伸縮機構23が接続されている。
【0038】
このように、各部材および機構が、伸縮機構23-リンク部材21h-関節部材22g-リンク部材21i-関節部材22h-リンク部材21jの順に連続的に接続されることで、シリアルリンク機構のリンク構造体20Bが形成される。
【0039】
伸縮機構23は、例えば、牽引車11上に地面に対して高さ方向に垂直な軸方向に伸縮するように設置され、リンク部材21jが被牽引車12内の所定位置、例えばコネクタ14に固定される。また、リンク部材21hからリンク部材21jまでの構造物が、地面に対して水平な状態になり、ケーブル15に沿うように、伸縮機構23によりリンク部材21hの高さを調整して設置位置が決められる。
【0040】
関節部材22g内には角度センサ30dが設置され、関節部材22h内には角度センサ30eが設置されている。角度センサ30dは、地面に対して水平な面における、リンク部材21hと21iとがなす角度を検出する。角度センサ30bは、地面に対して水平な面における、リンク部材21iと21jとがなす角度を検出する。
【0041】
角度センサ30dおよび30eは、通信線または無線通信を介して連結角算出装置40に接続され、検出した角度の情報を、角度検出情報として連結角算出装置40に送信する。このように構成することで、牽引車11と被牽引車12との連結角に応じて変化する、各関節部材22g、22eに接続されたリンク部材21がなす角度の情報を、簡易な構成のリンク構造体20Bを用いて連結角算出装置40に提供することができる。このように少ない関節数でリンク構造体20を構成することで、牽引車11と被牽引車12との連結角の算出に用いる角度情報を、高い精度で検出することができる。
【0042】
[構成例(3)]
図4は、リンク構造体20の一形態であるリンク構造体20Cが牽引自動車10に設置された状態を横から見た図である。リンク構造体20Cは、構成例(2)のリンク構造体20Bと同様の構成を有する。
【0043】
本実施形態では、被牽引車12とコネクタ14との間に後付けコネクタ16が設置され、リンク部材21jの端部がコネクタ14と後付けコネクタ16との間に挟まれて固定される。
【0044】
このようにリンク構造体20Cを設置することで、リンク構造体20C内の角度センサ30d、30eが、牽引車11からコネクタ14を介して供給される電力、または被牽引車12から後付けコネクタ16を介して供給される電力を使用し易くなる。角度センサ30d、30eが牽引車11または被牽引車12から供給される電力を使用して動作するように構成することで、角度センサ30d、30eの管理を簡易に行うことができる。
【0045】
[構成例(4)]
図5は、リンク構造体20の一形態であるリンク構造体20Dが牽引自動車10に設置された状態を横から見た図である。リンク構造体20Dは、リンク部材21k、21m、と、関節部材22iと、伸縮機構23とを有する。
【0046】
関節部材22iには、リンク部材21kおよび21mが、ヨー軸を回転軸として左右方向に回転可能な状態で接続されている。このように、各部材および機構が、伸縮機構23-リンク部材21k-関節部材22i-リンク部材21mの順に連続的に接続されることで、シリアルリンク機構のリンク構造体20Dが形成される。
【0047】
関節部材22i内には、角度センサ30fが設置されている。角度センサ30fは、地面に対して水平な面における、リンク部材21kと21mとがなす角度を検出する。また、リンク部材21kの内部には内部ケーブル24aが通され、リンク部材21mの内部には内部ケーブル24bが通されている。
【0048】
本実施形態においても、構成例(3)の場合と同様に被牽引車12に後付けコネクタ16が設置されている。伸縮機構23は、例えば牽引車11上に地面に対して垂直な高さ方向に伸縮するように設置され、リンク部材21mが被牽引車12内の後付けコネクタ16に固定される。また、リンク部材21k、関節部材22i、およびリンク部材21mが、地面に対して水平な状態になるように、伸縮機構23によりリンク部材21hの高さを調整して設置位置が決められる。
【0049】
リンク構造体20D内のいずれかの位置、例えば伸縮機構23に、コネクタ14が設置される。つまり、リンク構造体20Dの一部であるリンク部材k、関節部材22i、およびリンク部材mが、コネクタ14と後付けコネクタ16との間に挟まれて固定される。
【0050】
車載器111から送信されたCAN(Controller Area Network)信号、ブレーキ信号、およびウィンカーランプ信号等は、ケーブル15、コネクタ14、内部ケーブル24a、角度センサ30f、内部ケーブル24b、および後付けコネクタ16を介して被牽引車12で受信される。つまり、リンク構造体20Dは内部ケーブル24a、24bを用いて、車載器111と被牽引車12との間で、各種信号の送受信を中継する。
【0051】
このようにリンク構造体20Dを設置することで、角度センサ30fが、牽引車11から被牽引車12に送信される信号を用いて、精度良く角度の検出を行うことができる。例えば、車載器111からブレーキ信号が送信されたときには、角度センサ30fは牽引自動車10が停止していると判断して角度検出処理を停止し、牽引自動車10が停止する前に検出した角度を現在の角度として出力する。
【0052】
このように処理を行うことにより、牽引自動車10が停止しているときに車体の揺れ等によりリンク部材21kと21mとの間の角度に変化があったとしても、後述するように連結角が更新されず、検出ノイズを除去することができる。
【0053】
また角度センサ30fは、通信線、コネクタ14、およびケーブル15を介して、または無線通信を介して、連結角算出装置40に接続され、検出した角度の情報を、角度検出情報として連結角算出装置40に送信する。これらの構成により、牽引車11と被牽引車12との連結角に応じて変化する、関節部材22iに接続されたリンク部材21の角度の情報を、簡易な構成のリンク構造体20Dを用いて連結角算出装置40に提供することができる。また、車載器111から出力された各種信号を被牽引車12に送信するケーブルと、リンク構造体20Dとを一体化させることで、牽引自動車10の走行の妨げにならないようリンク構造体20Dを設置することができる。本実施形態では、リンク構造体20D内にケーブルを通すことで、これらを一体化させている。
【0054】
以下、上述したリンク構造体20A、20B、20C、20Dのいずれであるかを特定しない場合には、リンク構造体20と記載する。またリンク部材21a、21b、21c、21d、21e、21f、21g、21h、21i、21j、21k、21mのいずれであるかを特定しない場合には、リンク部材21と記載する。また関節部材22a、関節部材22b、関節部材22c、関節部材22d、関節部材22e、関節部材22f、関節部材22g、関節部材22h、関節部材22iのいずれであるかを特定しない場合には、関節部材22と記載する。また、角度センサ30a、30b、30c、30d、30e、30fのいずれであるかを特定しない場合には、角度センサ30と記載する。
【0055】
図1に戻り、連結角算出装置40は、CPU41と、出力部42とを有する。CPU41(制御部または処理部の一例)は、演算装置、メモリ、及び入出力部を備える汎用のコンピュータである。CPU41には、連結角算出装置の一部として機能させるためのコンピュータプログラム(連結角算出プログラム)がインストールされている。コンピュータプログラムを実行することにより、CPU41は、連結角算出装置が備える複数の情報処理回路(411、412)として機能する。
【0056】
その他、連結角算出プログラムは、HDD、SSD、USBメモリ、CD、DVD等のコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶できる。コンピュータ読取り可能な記録媒体は、例えば、非一時的な記録媒体である。連結角算出プログラムは、通信ネットワークを介して配信することもできる。
【0057】
なお、以下では、ソフトウェアによって連結角算出装置が備える複数の情報処理回路(411、412)を実現する例を示す。ただし、以下に示す各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、情報処理回路(411、412)を構成することも可能である。また、複数の情報処理回路(411、412)を個別のハードウェアにより構成してもよい。
【0058】
CPU41は、センサ情報取得部411と、連結角算出部412とを有する。センサ情報取得部411は、接続されたリンク構造体20内のすべての角度センサ30から、角度検出情報を取得する。連結角算出部412は、センサ情報取得部411が取得した角度検出情報を用いて順運動学を計算することで、牽引車11に対するコネクタ14の角度、つまり牽引車11と被牽引車12との連結角を算出する。連結角は、地面に対して水平な面内における角度である。
【0059】
出力部42は、連結角算出部412が算出した連結角の情報を、自動運転制御装置112または運転手が視認する表示装置(図示せず)に出力する。
【0060】
図6は、連結角算出装置40が実行する連結角の算出処理を示すフローチャートである。連結角算出装置40は、牽引自動車10が運転を開始すると(S1の「YES」)、接続された各角度センサ30から送信された角度検出情報を取得する(S2)。
【0061】
連結角算出装置40は、センサ情報取得部411が取得した角度検出情報を用いて順運動学を計算し、例えば運転開始時の牽引車11と被牽引車12との連結角に対する変化量を求めることで、現在の牽引車11と被牽引車12との連結角を算出する。連結角算出装置40は、算出した連結角の情報を、所定の装置、例えば自動運転制御装置112または運転手が視認する表示装置に出力する(S3)。
【0062】
ステップS1~S3の処理は、牽引自動車10の運転が終了するまで(S4の「NO」)所定時間間隔で繰り返し実行される。連結角算出装置40は、牽引自動車10の運転中に一時的に走行が停止したときには、停止直前に算出した連結角を、停止中の連結角として算出する。このように連結角を算出することで、牽引自動車10が停止しており連結角が変動しないときに、ケーブル15の揺らぎによって各角度センサの計測値が変動した場合にもこの計測値の変動が無視され、連結角の変動が誤検出されることを回避することができる。
【0063】
牽引自動車10の走行中に運転方向が左方向または右方向に変更すると、牽引車11と被牽引車12とがなす連結角が変化し、これに連動してリンク構造体20内の各リンク部材21の左右方向の向きも変化する。各リンク部材21の向きの変化後に各角度センサ30が検出した角度情報が連結角算出装置40に送信されると、連結角算出装置40は、取得した角度情報に基づいて変化後の連結角を算出し、自動運転制御装置112または表示装置に出力する。
【0064】
自動運転制御装置112は、取得した連結角の情報を車載器111による運転内容に反映させることができ、例えば、連結角が所定値よりも大きくなったときに、走行速度を下げるように制御する。また、運転手は、表示装置に表示された情報に基づいて連結角が所定値よりも大きくなったことを認識すると、走行速度を下げるように運転内容を変更する。このように出力された情報に基づいて運転内容を変更することで、安全に牽引自動車10の運転を行うことができる。
【0065】
牽引自動車10の走行が終了すると(S4の「YES」)、連結角の算出および出力処理も終了する。
【0066】
以上の実施形態によれば、連結車両を構成する2つの車両の連結角を、簡易な処理で精度良く検出することができる。
【0067】
上述した実施形態のリンク構造体20は、牽引自動車10に対して後付けで設置可能になるように構成してもよい。リンク構造体20を後付けで牽引自動車10に設置可能に構成することで、連結角の検出センサが設置されていない既存の牽引自動車に対しても、牽引車11側にリンク構造体20を設置するための設備を設けるのみで、簡易に取り付けることができる。
【0068】
また、上述した実施形態では、リンク構造体20がケーブル15に沿うように設置された場合について説明したが、リンク構造体20は、その両端部が牽引車11と被牽引車12とに固定され、本体が走行の妨げにならなければ、設置位置は限定されない。
【0069】
また、上述した実施形態では、リンク構造体20の端部が被牽引車12のコネクタ14に接続された場合について説明したが、走行の妨げとならず、走行中に被牽引車12内で変動しない箇所であれば,被牽引車12の中の他の所定位置に接続されても良い。リンク構造体20の端部を、走行中に被牽引車12内で変動しない位置に接続することで、精度良く、牽引車11と被牽引車12との連結角を検出することができる。
【0070】
また、上述した実施形態では、リンク構造体20が直列に繋がったシリアルリンク機構で構成された場合について説明したが、複数のリンク構造体が並列に繋がったパラレルリンク機構で構成してもよい。パラレルリンク機構で構成した場合には、例えば、「小菅一弘, 川俣 裕行, 福田 敏男, 小塚 敏紀, 水野 智夫 Stewart Platform型パラレルリンクマニビュレータのForward Kinematics計算アルゴリズム」に記載の順運動分析法により、変位センサを用いてリンク部材の位置を検出することで、牽引車11と被牽引車12との連結角を求めることができる。
【0071】
パラレルリンク機構のリンク構造体を用いることで、剛性が高く、高速かつ精密な動作が可能になる。
【0072】
いくつかの実施形態を説明したが、上記開示内容に基づいて実施形態の修正または変形をすることが可能である。上記実施形態のすべての構成要素、及び請求の範囲に記載されたすべての特徴は、それらが互いに矛盾しない限り、個々に抜き出して組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 連結角算出システム
10 牽引自動車
11 牽引車
12 被牽引車
13 連結部材
14 コネクタ
15 ケーブル
16 後付けコネクタ
20、20A、20B、20C、20D リンク構造体
21、21a、21b、21c、21d、21e、21f、21g、21h、21i、21j、21k、21m リンク部材
22、22a、22b、22c、22d、22e、22f、22g、22h、22i、関節部材
23 伸縮機構
24a、24b 内部ケーブル
30、30a、30b、30c、30d、30e、30f 角度センサ
40 連結角算出装置
41 CPU
42 出力部
411 センサ情報取得部
412 連結角算出部