(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162637
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】冷却装置
(51)【国際特許分類】
F01P 7/16 20060101AFI20241114BHJP
F01P 11/06 20060101ALI20241114BHJP
B01D 36/00 20060101ALI20241114BHJP
H02K 9/26 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
F01P7/16 501
F01P11/06 A
F01P7/16 503
B01D36/00
H02K9/26 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078353
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100187827
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 雅則
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 剛
【テーマコード(参考)】
4D116
5H609
【Fターム(参考)】
4D116BB01
4D116FF12B
4D116KK04
4D116KK06
4D116QA06C
4D116QA06D
4D116QA06E
4D116QA14C
4D116QA14D
4D116QA14E
4D116QA26C
4D116QA26D
4D116QA26E
4D116QC02B
4D116QC22A
4D116QC22B
4D116QC23
4D116RR05
4D116RR15
4D116UU20
4D116VV01
5H609BB03
5H609BB12
5H609QQ05
5H609SS03
(57)【要約】
【課題】フィルタの目詰まりを不具合を生じることなく速やかに解消することが可能な冷却装置を提供する。
【解決手段】液体である流体によって冷却される機器2が収容されるケース3と、ケース3に形成された、ケース3内に流体を供給する供給口10、および、ケース3内から流体を排出する排出口11にそれぞれ接続された循環路4と、排出口11に設けられる正転側フィルタ6と、循環路4に設けられるポンプ7と、ポンプ7の動作を制御する制御装置8と、を有し、ポンプ7の流体吐出方向を制御装置8によって切り替えることによって、排出口11から排出された流体を循環路4を経由して供給口10に送る正転モードと、排出口11からケース3内に流体を送り込む逆転モードとの間で切り替え可能とした構成とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体である流体によって冷却される機器が収容されるケースと、
前記ケースに形成された、当該ケース内に流体を供給する供給口、および、当該ケース内から流体を排出する排出口にそれぞれ接続された循環路と、
前記排出口に設けられる正転側フィルタと、
前記循環路に設けられるポンプと、
前記ポンプの動作を制御する制御装置と、
を有し、
前記ポンプの流体吐出方向を前記制御装置によって切り替えることによって、前記排出口から排出された流体を前記循環路を経由して前記供給口に送る正転モードと、前記排出口から前記ケース内に流体を送り込む逆転モードとの間で切り替え可能とした冷却装置。
【請求項2】
一端が前記ケース内の液面位置よりも低い位置に形成されたバイパス口に、他端が前記循環路の前記逆転モードにおいて前記ポンプの上流側となる位置にそれぞれ接続されたバイパス路をさらに有する請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記正転モードのときに閉弁状態、および、前記逆転モードのときに開弁状態となるように前記制御装置によって制御されるバルブが前記バイパス路に設けられている請求項2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記バイパス路の前記逆転モードにおいて前記バルブの下流側となる位置に副フィルタが設けられている請求項3に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記バイパス路の一部が前記循環路の最も高い位置よりもさらに高い位置を経由しており、かつ、前記バイパス路の流路断面積が前記循環路の流路断面積よりも小さい請求項2に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記ケース内が流体で満たされるようになっており、前記供給口に逆転側フィルタが設けられている請求項1に記載の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド車、外部充電または外部給電が可能なプラグインハイブリッド車などの車両に搭載されるモータなどの機器100を冷却するために、例えば
図12に示すように、機器100に液体である流体(
図12の構成ではオイル)を直接接触させて冷却する直接液冷方式の冷却装置101が採用されることがある。この冷却装置101は、冷却される機器100(
図12ではモータを例示)をケース102に収容し、ケース102の上部に形成された供給口103からオイルを供給して機器100(例えばステータのコイルエンド)に直接滴下するとともに、ケース102の下部に溜まったオイルをケース102の下部に形成された排出口104から排出している。排出口104には、オイル中の異物を捕獲するフィルタ105が設けられている。
【0003】
供給口103と排出口104は循環路106によって接続されている。循環路106には、オイルを一方向(
図12中の矢印rで示す方向)に吐出するポンプ107が設けられている。また、循環路106には、機器100との接触によって加熱されたオイルを冷却するためのラジエータ108が接続されている。
【0004】
この冷却装置101を長期間に亘って使用すると、機器100から出た異物がフィルタ105に堆積してオイルの流量が低下し、機器100の冷却が不十分となったり、ポンプ107の負荷が過大となったりすることで不具合が生じるおそれがある。そこで、例えば下記特許文献1に記載の構成においては、所定のオイルの流量を確保するためにオイルのバイパス流路を設けている。このバイパス流路は、フィルタの目詰まりによってオイル通路の圧力が所定値以上に上昇した際にリリーフ弁を開弁し、冷却装置内に導入されたオイルをフィルタの表面に沿って流して、その表面の異物をオイルによって除去する構成としている(特許文献1の段落0005~0013、
図1などを参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の構成によると、オイルをバイパス流路に流すことによってフィルタの濾過率は回復する反面、フィルタの表面の異物が下流側に直接流されるため、例えば
図12に示した構成に特許文献1に記載の構成を採用すると、ポンプに異物が入り込んで不具合を生じるおそれがある。
【0007】
そこで、この発明は、フィルタの目詰まりを不具合を生じることなく速やかに解消することが可能な冷却装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、この発明においては、
液体である流体によって冷却される機器が収容されるケースと、
前記ケースに形成された、当該ケース内に流体を供給する供給口、および、当該ケース内から流体を排出する排出口にそれぞれ接続された循環路と、
前記排出口に設けられる正転側フィルタと、
前記循環路に設けられるポンプと、
前記ポンプの動作を制御する制御装置と、
を有し、
前記ポンプの流体吐出方向を前記制御装置によって切り替えることによって、前記排出口から排出された流体を前記循環路を経由して前記供給口に送る正転モードと、前記排出口から前記ケース内に流体を送り込む逆転モードとの間で切り替え可能とした冷却装置を構成した。
【0009】
前記の構成においては、
一端が前記ケース内の液面位置よりも低い位置に形成されたバイパス口に、他端が前記循環路の前記逆転モードにおいて前記ポンプの上流側となる位置にそれぞれ接続されたバイパス路をさらに有する構成とすることができる。
【0010】
前記バイパス路を有する構成においては、
前記正転モードのときに閉弁状態、および、前記逆転モードのときに開弁状態となるように前記制御装置によって制御されるバルブが前記バイパス路に設けられている構成とすることができる。
【0011】
前記バルブを有する構成においては、
前記バイパス路の前記逆転モードにおいて前記バルブの下流側となる位置に副フィルタが設けられている構成とすることができる。
【0012】
また、前記バイパス路に前記バルブを設けた構成とするのに代えて、
前記バイパス路の一部が前記循環路の最も高い位置よりもさらに高い位置を経由しており、かつ、前記バイパス路の流路断面積が前記循環路の流路断面積よりも小さい構成とすることができる。
【0013】
また、前記バイパス路を設けた構成とするのに代えて、
前記ケース内が流体で満たされるようになっており、前記供給口に逆転側フィルタが設けられている構成とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明では、正転モードにおいて流体中の異物を正転側フィルタで捕獲してポンプに異物が到達するのを防止する一方で、逆転モードにおいてポンプの流体吐出方向を逆向きにすることで正転側フィルタで捕獲された異物を下流側に直接流すことなくその表面から離脱させる(表面から浮かせる)ことができる。このため、フィルタの目詰まりを不具合を生じることなく速やかに解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】この発明に係る冷却装置の第一実施形態を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示す冷却装置を車両に搭載した状態を示す模式図である。
【
図3】
図1に示す冷却装置の制御の一例を示すフロー図である。
【
図4】
図1に示す冷却装置の変形例を示すブロック図である。
【
図5】
図4に示す冷却装置の制御の一例を示すフロー図である。
【
図6】この発明に係る冷却装置の第二実施形態を示すブロック図である。
【
図7】
図6に示す冷却装置を車両に搭載した状態を示す模式図である。
【
図8】
図6に示す冷却装置の制御の一例を示すフロー図である。
【
図9】
図6に示す冷却装置の変形例を示すブロック図である。
【
図10】
図9に示す冷却装置の制御の一例を示すフロー図である。
【
図11】この発明に係る冷却装置の第三実施形態を示すブロック図であって、(a)はケース上部からオイルを供給する構成、(b)はケース下部からオイルを供給する構成である。
【
図12】従来技術に係る冷却装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明に係る冷却装置1の第一実施形態を図面に基づいて説明する。この冷却装置1は、
図1に示すように、モータなどの機器2(以下、単にモータと称し、機器2と同じ符号を付する。)にオイルを直接接触させて冷却する直接油冷方式の冷却装置1に適用される。この冷却装置1は、ケース3、循環路4、バイパス路5、正転側フィルタ6、ポンプ7、および、制御装置8を主要な構成要素とし、
図2に示すように車両9に搭載される。
【0017】
ケース3には、ロータとステータを有するモータ2が収容されている。ケース3の頂部にはケース3内にオイルを供給する供給口10が、ケース3の底部にはケース3内からオイルを排出する排出口11がそれぞれ形成されている。また、この冷却装置1の使用時におけるケース3内の液面位置よりも低い位置にはバイパス口12が形成されている。
【0018】
循環路4は、その一端側が供給口10に、他端側が排出口11にそれぞれ接続されて、ケース3の外部でループを構成している。この循環路4は、排出口11からバイパス路5との接続点までの第一循環路4aと、バイパス路5との接続点から供給口10までの第二循環路4bの2つの部分に区分できる。
【0019】
循環路4には、オイルの流量を検知するための流量センサ13が設けられている。また、循環路4には、モータ2との接触によって加熱されたオイルを冷却するためのラジエータ14が接続されている。流量センサ13およびラジエータ14の設置位置は
図1で示した位置から適宜変更することもできるが、後述する正転モードおよび逆転モードのいずれのモードにおいてもオイルが流れる第一循環路4aに設けるのが好ましい。
【0020】
バイパス路5は、その一端がバイパス口12に、その他端が循環路4の逆転モードにおいてポンプ7の上流側となる位置(第一循環路4aと第二循環路4bとの境界)にそれぞれ接続されている。バイパス路5の途中には、バルブ15が設けられている。このバルブ15は、正転モードのときに閉弁状態とされ、逆転モードのときに開弁状態とされる。
【0021】
正転側フィルタ6は、排出口11に設けられたメッシュ状の部材である。この正転側フィルタ6でモータ2から出た異物を捕獲することで、異物がポンプ7に入り込むことに起因するトラブルを防止している。
【0022】
ポンプ7は、循環路4に設けられている。このポンプ7は、オイルの吐出方向を切り替える機能を備えている。ポンプ7の設置位置は
図1に示した位置から適宜変更することもできるが、正転モードおよび逆転モードのいずれのモードにおいてもオイルが流れる第一循環路4aに設けられる。
【0023】
制御装置8は、流量センサ13、バルブ15、および、ポンプ7に接続されており、流量センサ13の検知結果に基づいてバルブ15の開閉制御と、ポンプ7の吐出方向の切り替え制御を行う。
【0024】
この冷却装置1は、正転モードと逆転モードを備えている。正転モードは、制御装置8によってバルブ15を閉弁状態としてバイパス路5にオイルが流れないようにした上でポンプ7を正転させ、排出口11から排出されたオイルを循環路4(第一循環路4aおよび第二循環路4b)を経由して供給口10に送るモード(
図1中の矢印r1で示すオイル流れを参照)である。正転モードでは、オイルは、供給口10からケース3内のモータ2に向けて滴下される。
【0025】
逆転モードは、制御装置8によってバルブ15を開弁状態とした上でポンプ7を逆転させ、バイパス口12から吸い込まれたケース3内のオイルをバイパス路5および第一循環路4aを経由して排出口11に送るモード(
図1中の矢印r2で示すオイル流れを参照)である。オイルを排出口11からケース3に送り込むことによって、正転側フィルタ6に溜まった異物がその表面から浮き上がり、正転側フィルタ6の詰まりが解消される。
【0026】
図1に示す冷却装置1の制御フロー図を
図3に示す。この冷却装置1は、通常はポンプ7が正転状態の正転モードで動作している(ステップS11)。この正転モードにおける一定のポンプ駆動状態で、流量センサ13で検知したオイルの流量が規定値以下、かつ、車両9が停止した状態(ステップS12のYES側)となったタイミングで、バルブ15を開いた上で(ステップS13)、ポンプ7を逆転して(ステップS14)逆転モードに切り替える。オイルの流量が規定値よりも多いとき、または、車両9が停止した状態ではないときは(ステップS12のNO側)、引き続いてポンプ7を正転モードで動作させる(ステップS11)。
【0027】
ポンプ7を逆転させてから一定時間が経過したら(ステップS15)、バルブ15を閉じた上で(ステップS16)、ポンプ7を正転状態に戻す(ステップS11)。ポンプ7を逆転させる「一定時間」は、正転側フィルタ6から浮き上がった異物がバイパス口12を通ってポンプ7に到達しない程度の短い時間(例えば数秒程度)とされ、ポンプ7の吐出能力やバイパス口12からポンプ7に至るまでのバイパス路5および循環路4中の油量を考慮して決定される。
【0028】
第一実施形態に係る冷却装置1は、ポンプ7のオイル吐出方向を切り替えることによって、排出口11から排出されたオイルを循環路4を経由して供給口10に送る正転モードと、排出口11からケース3内にオイルを送り込む逆転モードとの間で切り替え可能としたことにより、正転モードでの動作中に正転側フィルタ6で捕獲された異物をその表面から離脱させることができ、正転側フィルタ6の目詰まりを不具合を生じることなく速やかに解消することができる。
【0029】
また、第一実施形態に係る冷却装置1は、ケース3内の液面位置よりも低い位置にバイパス口12を形成し、このバイパス口12と循環路4の逆転モードにおいてポンプ7の上流側となる位置とをバイパス路5で接続したので、逆転モードにおいてポンプ7によるエアの吸い込みが生じにくくポンプ7が安定動作する。このため、正転側フィルタ6で捕獲された異物をその表面からスムーズに離脱させることができる。
【0030】
また、第一実施形態に係る冷却装置1は、バイパス路5に、正転モードのときに閉弁状態、および、逆転モードのときに開弁状態となるように制御装置8によって制御されるバルブ15を設けたので、正転モードにおいてオイルがバイパス路5を流れることに起因して、循環路4を流れるオイルの循環効率が低下するのを防止することができる。
【0031】
上記の冷却装置1においては、正転モードから逆転モードへの切り替えが行われたこと、すなわち、正転側フィルタ6に目詰まりが生じていることをアラート表示やアラート音によって使用者に通知して、メンテナンスを促すようにすることもできる。
【0032】
図1に示す冷却装置1の変形例を
図4に示す。この冷却装置1は、
図1に示した冷却装置1と基本的な構成は共通するが、逆転モードにおいてバルブ15の下流側となるバイパス路5に副フィルタ16が設けられている点で相違する。副フィルタ16は、正転側フィルタ6と同様、メッシュ状の部材である。この副フィルタ16は、逆転モードにおいて正転側フィルタ6から離脱した異物がバイパス路5側に流れてきたときに、その異物を捕獲する機能を有する。
【0033】
この変形例に係る冷却装置1の制御フロー図を
図5に示す。この冷却装置1は、通常はポンプ7が正転状態の正転モードで動作している(ステップS21)。この正転モードにおける一定のポンプ駆動状態で、流量センサ13で検知したオイルの流量が規定値以下、かつ、車両9が停止した状態(ステップS22のYES側)となったタイミングで、バルブ15を開いた上で(ステップS23)、ポンプ7を逆転して(ステップS24)逆転モードに切り替える。オイルの流量が規定値よりも多いとき、または、車両9が停止した状態ではないときは(ステップS22のNO側)、引き続いてポンプ7を正転モードで動作させる(ステップS21)。流量センサ13で検知したオイルの流量が規定値以上となったら(ステップS25)、バルブ15を閉じた上で(ステップS26)、ポンプ7を正転状態に戻す(ステップS21)。
【0034】
第一実施形態の変形例に係る冷却装置1は、逆転モードにおいて正転側フィルタ6から離脱した異物がバイパス路5に流れたとしても、その異物を副フィルタ16で捕獲することができる。このため、逆転モード中に異物がポンプ7に到達することに起因するトラブルを防止することができる。なお、
図5に示すフロー図においては、流量センサ13で検知したオイルの流量に基づいてポンプ7を正転状態に戻す制御(ステップS25、S26、S21)としたが、
図3で示したフロー図と同様に、ポンプ7を逆転させてから一定時間が経過したタイミングでポンプを正転状態に戻す制御(ステップS15、S16、S11)とすることもできる。
【0035】
また、第一実施形態の変形例に係る冷却装置1は、副フィルタ16をバイパス路5の逆転モードにおいてバルブ15の下流側となる位置に設けたので、正転モードにおいて異物の発生源であるモータ2と副フィルタ16がバルブ15で隔離されることになり、正転モードでのオイル流動時に、副フィルタ16に異物が付着するのを防止することができる。
【0036】
この発明に係る冷却装置1の第二実施形態を
図6に示す。この冷却装置1は、
図1に示した冷却装置1と基本的な構成は共通するが、バイパス路5の一部が循環路4の最も高い位置よりもさらに高い位置を経由しており、かつ、バイパス路5の流路断面積が循環路4の流路断面積よりも小さい点、および、バイパス路5にバルブ15が設けられていない点で相違する。この冷却装置1は、
図7に示すように車両9に搭載される。なお、以下においては、第一実施形態に係る冷却装置1と共通する説明は省略することがある。
【0037】
第二実施形態に係る冷却装置1の正転モードは、制御装置8によってポンプ7を正転させ、排出口11から排出されたオイルを循環路4(第一循環路4aおよび第二循環路4b)を経由して供給口10に送るモード(
図6中の矢印r1で示すオイル流れを参照)である。正転モードでは、オイルは、供給口10からケース3内のモータ2に向けて滴下される。
【0038】
逆転モードは、制御装置8によってポンプ7を逆転させ、バイパス口12から吸い込まれたケース3内のオイルをバイパス路5および第一循環路4aを経由して排出口11に送るモード(
図6中の矢印r2で示すオイル流れを参照)である。オイルを排出口11からケース3に送り込むことによって、正転側フィルタ6に溜まった異物がその表面から浮き上がり、正転側フィルタ6の詰まりが解消される。
【0039】
第二実施形態に係る冷却装置1の制御フローを
図8に示す。この冷却装置1は、通常はポンプ7が正転状態の正転モードで動作している(ステップS31)。この正転モードにおける一定のポンプ駆動状態で、流量センサ13で検知したオイルの流量が規定値以下、かつ、車両9が停止した状態(ステップS32のYES側)となったタイミングで、ポンプ7を逆転して(ステップS33)逆転モードに切り替える。オイルの流量が規定値よりも多いとき、または、車両9が停止した状態ではないときは(ステップS32のNO側)、引き続いてポンプ7を正転モードで動作させる(ステップS31)。ポンプ7を逆転させてから一定時間が経過したら(ステップS34)、ポンプ7を正転状態に戻す(ステップS31)。
【0040】
第二実施形態に係る冷却装置1は、バイパス路5の一部が循環路4の最も高い位置よりもさらに高い位置を経由しており、かつ、バイパス路5の流路断面積が循環路4の流路断面積よりも小さい構成としたので、バイパス路5の圧力損失が高く、バイパス路5にバルブ15を設けなくても、正転モードにおいてバイパス路5にオイルが流れるのを防止することができる。また、バルブ15を用いないことにより、冷却装置1の構成や制御を簡素化することができる。
【0041】
図6に示す冷却装置1の変形例を
図9に示す。この冷却装置1は、
図6に示した冷却装置1と基本的な構成は共通するが、バイパス路5に副フィルタ16が設けられている点で相違する。副フィルタ16は、正転側フィルタ6と同様、メッシュ状の部材である。この副フィルタ16は、逆転モードにおいて正転側フィルタ6から離脱した異物がバイパス路5側に流れてきたときに、その異物を捕獲する機能を有する。
【0042】
この変形例に係る冷却装置1の制御フロー図を
図10に示す。この冷却装置1は、通常はポンプ7が正転状態の正転モードで動作している(ステップS41)。この正転モードにおける一定のポンプ駆動状態で、流量センサ13で検知したオイルの流量が規定値以下、かつ、車両9が停止した状態(ステップS42のYES側)となったタイミングで、ポンプ7を逆転して(ステップS43)逆転モードに切り替える。オイルの流量が規定値よりも多いとき、または、車両9が停止した状態ではないときは(ステップS42のNO側)、引き続いてポンプ7を正転モードで動作させる(ステップS41)。流量センサ13で検知したオイルの流量が規定値以上となったら(ステップS44)、ポンプ7を正転状態に戻す(ステップS41)。
【0043】
第二実施形態の変形例に係る冷却装置1は、逆転モードにおいて正転側フィルタ6から離脱した異物がバイパス路5に流れたとしても、その異物を副フィルタ16で捕獲することができる。このため、逆転モード中に異物がポンプ7に到達することに起因するトラブルを防止することができる。
【0044】
この発明に係る冷却装置1の第三実施形態を
図11(a)(b)に示す。この冷却装置1は、ケース3、循環路4、正転側フィルタ6、ポンプ7、および、制御装置8を備えている点で
図1に示した冷却装置1と共通するが、オイルの供給口10側に逆転側フィルタ17を備えている点、ケース3内にオイルが満たされた状態で使用される点、および、バイパス路5が設けられていない点で相違する。
【0045】
図11(a)に示す冷却装置1は、オイルがケース3内を基本的に上から下に向かって流れるように構成されており、ケース3の頂部に供給口10が、底部に排出口11がそれぞれ形成されている。また、
図11(b)に示す冷却装置1は、オイルがケース3内を基本的に下から上に向かって流れるように構成されており、ケース3の底部に供給口10が、頂部に排出口11がそれぞれ形成されている。いずれの構成においても、排出口11に正転側フィルタ6が、供給口10に逆転側フィルタ17が設けられる。正転側フィルタ6および逆転側フィルタ17のいずれも、メッシュ状の部材である。
【0046】
この実施形態においては、ケース3にオイルが満たされた状態とされるため、このケース3に収容されるモータ2には、ロータとステータとの間にオイルが浸入するのを防止するためのセパレータ18がステータの表面全体を覆うように設けられる。
【0047】
第三実施形態に係る冷却装置1の正転モードにおいて、排出口11から排出されたオイルは、循環路4を経由し、供給口10からケース3に供給される(
図11(a)(b)中の矢印r1を参照)。このとき、モータ2から脱落した異物は正転側フィルタ6によって捕獲される。異物の捕獲に伴うオイル流量の低下が流量センサ13で検知されたら、制御装置8によってポンプ7が逆転モードに切り替えられる。逆転モードにおいて、供給口10から吸い込まれたオイルは、循環路4を経由し、排出口11からケース3に吐出される(
図11(a)(b)中の矢印r2を参照)。これにより、正転側フィルタ6に溜まった異物がその表面から浮き上がり、正転側フィルタ6の詰まりが解消される。
【0048】
第三実施形態に係る冷却装置1は、供給口10に逆転側フィルタ17を設けたので、逆転モードにおいて正転側フィルタ6の表面から浮き上がった異物は、逆転側フィルタ17によってケース3の外に出るのを阻止される。このため、この異物によってポンプ7にトラブルが生じるおそれはない。
【0049】
第三実施形態に係る冷却装置1は、ケース3をオイルで満たした状態としたので、逆転モードとしたときに循環路4にエアの吸い込みが生じない。このため、逆転モードの際も正転モードと同様に循環路4にオイルを流すことができ、冷却装置1の構成を簡素化することができる。なお、この構成においては、逆転モードとしたときにエアの吸い込みが生じない限りにおいて、ケース3の一部におけるエアの残留は許容される。
【0050】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0051】
1 冷却装置
2 機器(モータ)
3 ケース
4 循環路
4a 第一循環路
4b 第二循環路
5 バイパス路
6 正転側フィルタ
7 ポンプ
8 制御装置
9 車両
10 供給口
11 排出口
12 バイパス口
13 流量センサ
14 ラジエータ
15 バルブ
16 副フィルタ
17 逆転側フィルタ
18 セパレータ