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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162639
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】複合シートおよび除湿剤
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20241114BHJP
   B01D 53/26 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B01D53/26 210
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078356
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】501270287
【氏名又は名称】帝人フロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】田垣内 良一
【テーマコード(参考)】
3E086
4D052
【Fターム(参考)】
3E086AA23
3E086AB01
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA15
3E086BA19
3E086BA43
3E086BB02
3E086BB71
3E086CA40
4D052AA09
4D052CA03
4D052GA04
4D052GB00
4D052HA13
4D052HA14
4D052HA27
4D052HA49
(57)【要約】
【課題】潮解性物質を内包するための複合シートであり、潮解性物質が有する本来の吸湿特性を損なうことなく、コンパクトであり、かつ吸湿作用時に生じた潮解液が外部に漏出し難い複合シートおよび除湿剤を提供する。
【解決手段】潮解性物質を内包するための複合シートであって、吸水繊維と熱接着性繊維を含む不織布に透湿防水フイルムを積層してなる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潮解性物質を内包するための複合シートであって、吸水繊維と熱接着性繊維を含む不織布に透湿防水フイルムを積層してなることを特徴とする複合シート。
【請求項2】
前記吸水繊維が、架橋ポリアクリル酸ナトリウム系繊維、またはアクリル繊維の表面を加水分解したアクリレート系繊維である、請求項1に記載の複合シート。
【請求項3】
前記透湿防水フイルムがポリオレフィン系樹脂からなる、請求項1に記載の複合シート。
【請求項4】
前記不織布の少なくとも片面に前記の吸水繊維を有しない不織布を積層してなる、請求項1に記載の複合シート。
【請求項5】
複合シートの厚さが0.1~2mmの範囲内である、請求項1に記載の複合シート。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の複合シートに潮解性物質を内包してなる除湿剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潮解性物質を内包するための複合シートであり、潮解性物質が有する本来の吸湿特性を損なうことなく、コンパクトであり、かつ吸湿作用時に生じた潮解液が外部に漏出し難い複合シートおよび除湿剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ZEBやZEHと呼ばれる建物の普及が求められている。ZEB、ZEHは、建物内で消費されるエネルギーと、建物で作られるエネルギーとの収支をゼロにすることを目指した建物であり、その達成のために建物内にある窓は断熱性の良い2重構造にし、壁には断熱性の高い材料が使用されている。また、建物内で快適に過ごすために全館空調型の設備が設置されている。
【0003】
かかる建物では、クローゼットなどの収納スペースや設置物と壁の隙間などに湿気が溜まりやすく、その対策として塩化カルシウム等の潮解性物質を用いた除湿剤や多孔を有する生石灰やシリカゲルなどを利用した除湿剤を用いることが知られている(例えば特許文献1)。
【0004】
多孔を有する生石灰やシリカゲルなどを利用した除湿剤は、単位重量当たりの吸湿容量が潮解性物質に比べて低く、厳しい低湿度環境が要求される精密部品製造現場や低温倉庫などには適しておらず、塩化マグネシウム、塩化リチウム、酢酸カリウムなどの潮解性物質を利用した除湿剤(乾燥剤)が広く一般的に利用されてきた。
【0005】
塩化カルシウムのような潮解性物質を除湿成分として使用する除湿剤は、吸湿に伴って生じた潮解液が除湿剤より外部に漏出し易く、周囲の物質を汚染するなどの問題があるため、透湿度が低い防水透湿フイルムを用いて外部への滲みだしを低減する方法や、潮解液を溜めるタンクを備えた除湿具を設置する方法などが提案されている。
【0006】
しかしながら、前者の場合は、潮解液が外部に漏出し難くなるものの、吸湿速度が遅くなり除湿効果が損なわれるという問題があり、後者の場合は、電子部品や精密機械などの工業製品の輸送時に湿気から防御するために用いる際などに、設置スペースが必要となり、利便性が悪いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3302716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、潮解性物質を内包するための複合シートであり、潮解性物質が有する本来の吸湿特性を損なうことなく、コンパクトであり、かつ吸湿作用時に生じた潮解液が外部に漏出し難い複合シートおよび除湿剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねることにより、本発明を完成するに至った。かくして、本発明によれば、以下の発明が提供される。
1.潮解性物質を内包するための複合シートであって、吸水繊維と熱接着性繊維を含む不織布に透湿防水フイルムを積層してなることを特徴とする複合シート。
2.前記吸水繊維が、架橋ポリアクリル酸ナトリウム系繊維、またはアクリル繊維の表面を加水分解したアクリレート系繊維である、上記1に記載の複合シート。
3.前記透湿防水フイルムがポリオレフィン系樹脂からなる、上記1または2に記載の複合シート。
4.前記不織布の少なくとも片面に前記の吸水繊維を有しない不織布を積層してなる、上記1~3のいずれかに記載の複合シート。
5.複合シートの厚さが0.1~2mmの範囲内である、上記1~4のいずれかに記載の複合シート。
6.上記1~5のいずれかに記載の複合シートに潮解性物質を内包してなる除湿剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、潮解性物質が内包するための複合シートであり、潮解性物質が有する本来の吸湿特性を損なうことなく、コンパクトであり、かつ吸湿作用時に生じた潮解液が外部に漏出し難い複合シートおよび除湿剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明は、潮解性物質を内包するための複合シートであって、吸水繊維と熱接着性繊維を含む不織布と、該不織布に積層してなる透湿防水フイルムとを含む。
【0012】
前記透湿防水フイルムは、熱可塑性樹脂組成物で形成されたものである。かかる熱可塑性樹脂組成物としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等の熱可塑性樹脂などが例示される。なかでも、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。これらの熱可塑性樹脂は、1種であってもよいし2種以上であってもよい。
【0013】
前記ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンなど)、ポリプロピレン、エチレンとα-オレフィンとの共重合体、プロピレンとα-オレフィンとの共重合体等が挙げられる。前記α-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン等の炭素数4~12のα-オレフィンが好ましい。
【0014】
前記透湿防水フイルムは、水蒸気等の気体を透過させる透湿性と、水等の液体を透過させない防水性を有するものであり、具体的には、気体を透過させ液体を透過させない程度の小孔が穿設されている。かかる小孔の平均孔径は0.01~1.0μmの範囲内であることが好ましい。
【0015】
前記透湿防水フイルムは、潮解性物質が有する本来の吸湿特性を損なわないために例えばJIS L-1099 A-1法により測定された透湿度が、1500g/m・24Hr以上であることが好ましく、より好ましくは2500~10000g/m・24Hrである。透湿度が1500g/m・24Hr未満の場合、吸湿速度が遅くなり十分な除湿効果が得られないおそれがある。
【0016】
前記透湿防水フイルムの厚さは、15~200μmが好ましく、より好ましくは30~150μmである。透湿防水フイルムが厚すぎると、取り扱い難くなるおそれがあり、薄すぎると、得られる透湿防水シートの強度が低下し複合シートの加工性が低下するおそれがある。
【0017】
前記熱可塑性樹脂組成物は、さらに本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、防カビ剤、発錆防止剤、滑剤、顔料、耐熱安定剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。これら各種添加剤をも含む場合、その含有量は前記熱可塑性樹脂組成物中、20重量%以下が好ましく、0.1~10重量%がより好ましい。
【0018】
また、より防水性を上げるために、撥水処理を加えてもよい。撥水処理の例としては、透湿防水フイルムに撥水剤を刷毛やローラーで塗布するコーティング法、撥水剤を噴霧塗布するスプレー法、撥水剤溶液に浸漬するディッピング法等が挙げられ、これらの何れの方法で行なってもよい。
【0019】
本発明に好適に用いられる吸水繊維は、繊維としての機能と高吸水性ポリマーの機能を併せ持つ吸水膨潤性を有する繊維であり、自重の20倍以上(より好ましくは40~100倍)の吸水特性を有することが好ましい。吸水量が20倍未満のときは、吸水量が少なく膨潤度合いも低下するため、外部への漏出を防ぐ効果が低くなるおそれがある。自重の20倍以上の吸水特性を有する吸水繊維としては、特に限定されないが、でんぷんグラフト系や、ポリアクリル酸系、ポリビニルアルコール系等のポリマーを架橋することによって得られる高吸水性ポリマーや、ポリアルキレンオキシド単位を含む熱可塑性吸水性ポリマーなどの高吸水性ポリマーから紡糸された吸水繊維などが例示される。特に、架橋ポリアクリル酸ナトリウム系繊維、またはアクリル繊維の表面を加水分解したアクリレート系繊維が好ましい。高吸水性ポリマーは自重の数百倍から約千倍までの水を吸収、保持できる。特に、アクリル酸の重合体はカルボキシル基を多数持つために非常に親水性が高く、さらに網目構造に架橋させナトリウム塩の形とすると高い吸水性を持つゲルとなり、優れた特性を示すことが知られている。
【0020】
前記吸水繊維は、繊維状であるため、複合シートを構成する不織布の内部に均一に配合配置させることができ、小孔が穿設された透湿防水フイルムから潮解液が漏れ出た際にその液体を吸収するだけではなく、膨潤することで、不織布内に存在する繊維間隙を塞ぎ、外部への潮解液の漏出を防ぐ効果が生じ、有用である。
【0021】
本発明において、熱接着性繊維としては、一成分からなる繊維でもよいが、熱接着時の寸法変形がしにくいことや、接触点の熱接着形状が繊維束状や塊状になりにくい点から、芯鞘型複合繊維または芯鞘型複合繊維が特に好ましい。特に、鞘部を構成する熱可塑性樹脂の融点および軟化点の少なくとも一方が芯部を構成する熱可塑性樹脂の融点および軟化点の少なくとも一方よりも30℃以上(より好ましくは30~200℃低い)低い芯鞘型複合短繊維が好ましい。融点の差が30℃よりも小さいと熱風などにより熱接着性繊維の熱接着性ポリマーを融解させるとき、芯部のポリマーの溶融が生じてしまい、不織布の繊維間隙が小さくなりすぎるおそれがある。このような繊維を用いることで不織布形成時に、芯部を構成する熱可塑性樹脂は融解させずに鞘部を構成する熱可塑性樹脂のみを融解させることができるため、不織布形成時に、規定の圧力下で熱処理することで厚みの調整が容易になるだけでなく、潮解性物質を内包した加工をする際にヒートシールにより容易に密閉することが可能になる。
【0022】
なお、熱接着性繊維を構成するポリマーは、融点をもつ結晶性ポリマーであっても、明確な融点をもたない非晶性ポリマーであってもよくなんら限定されないが、例えば、イソフタル酸やアジピン酸、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールを共重合したポリエチレンテレフタレート等のポリエステル類、ポリエチレンやポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合体、無水マレイン酸変性ポリエチレンなどのポリオレフィン類、ポリアミド6やポリアミド11等の脂肪族ポリアミド類などが例示される。
【0023】
前記熱接着性繊維は、その単繊維繊度0.1~20dtexであることが好ましく、1~8dtexがより好ましい。単繊維繊度が0.1dtex未満では、繊維本数が増え保水性は利点になるが、不織布厚みが大きくなりすぎるおそれがある。逆に20dtexを超えると、吸水繊維との接着点が減りすぎるため形態安定性が低下するおそれがある。
【0024】
本発明において、不織布には前記の吸水繊維と熱接着性繊維とが含まれる。その際、前記吸水繊維は不織布の重量対比15~80重量%(より好ましくは25~70重量%)含まれることが好ましい。吸水繊維の含有量が該範囲よりも小さいと、不織布の吸収量が低下し、また吸収に伴う吸水繊維の膨潤も部分的となり漏液が増す懸念が生じる。逆に、吸水繊維の含有量が該範囲より大きいと接着点が減少し不織布の形態安定性が損なわれるほか、複合シートとしての加工性が低下するなどのおそれが生じる。
【0025】
また、前記熱接着性繊維には、不織布の重量対比20~85重量%(より好ましくは30~75重量%)で不織布に含まれることが好ましい。前記熱接着性繊維の含有量が該範囲よりも小さいと、不織布の形態安定性が損なわれ、シート厚みを所定厚みにすることが困難となり、繊維間隙が大きくなりすぎ漏液が増すおそれがある。
【0026】
潮解物質を内包するシートとして、潮解物質の流出を防ぐために外周縁部を覆うことが想定されるが、熱接着性繊維が当該範囲にあると、熱圧着、超音波シール、高周波ウェルダー等を用いて、直接保冷体の外周部を接合被覆することができ、工程短縮、安価提供の意味で有用である。
【0027】
本発明において、前記不織布には、前記吸水性繊維と熱接着性繊維以外の他の繊維も使用することができる。その際、他の繊維の種類は特に限定されず、合成繊維、天然繊維、再生繊維などすべての有機系繊維を使用することができる。また、中空繊維、難燃繊維(アラミド繊維など)、消臭繊維、防カビ繊維等の機能性繊維を使用することにより、それぞれの機能を付与することもできる。これらの繊維は2種以上を混合して用いてもよい。また、不織布中には必要に応じて、例えば粉末あるいは粒状の難燃剤、消臭剤、抗菌剤、防カビ剤等の各種の添加剤を添加することもできる。
【0028】
前記不織布は、エアレイド、ニードルパンチ、サーマルボンド、ケミカルボンドなどによって製造される不織布があげられる。本発明では特にサーマルボンドが好ましい。特にサーマルボンド製法で作製された不織布は、その構造体の中に吸水繊維と熱接着繊維が均一に配置されかつ繊維間空隙を小さくし易く好ましい。
また、前記不織布の少なくとも片面に吸水繊維を含有しない不織布を設けて使用することもできる。
【0029】
当該複合シートは潮解物質の流出を防ぐため吸水性繊維と熱接着性繊維を含み、かつシート厚みを所定厚みにして繊維間隙を小さくすることで、漏液した液が不織布に接触した際に吸水繊維が膨潤して漏液を抑える効果が生じる。漏液量が多い場合不織布表面は吸水し濡れている場合がある。不織布の片面に吸水繊維を有しない不織布を積層配置すると、前記濡れ感を生じ難くなり有用である。
【0030】
なお、吸水繊維と熱接着繊維を有する不織布に、前記吸水繊維を有しない不織布を積層する方法は特に限定しないが、例えば予め前記吸水繊維を有しない不織布に熱接着繊維を含ませておくと、熱処理加工を施すことで優位に二つの不織布を接着させることができ有用である。
【0031】
本発明の複合シートは、吸水繊維と熱接着性繊維を含む不織布と、透湿防水フイルムとを含む。その際、不織布と透湿防水フイルムは、ロールで与えられた熱および圧力により融着されていることが好ましい。融着に用いるロールとしては、エンボスロールであってもよいし、フラットロールであってもよいが、シート表面が平滑かつ薄い厚みを保つ点で、フラットロールが好ましい。エンボスロールを用いると、シートは部分的に密度が異なることになるので、これが原因で漏液を防ぐ効果が低下するおそれがある。
【0032】
フラットロールを用いた場合でも、シート表面は平滑で均一な密度が得られるものの、熱融着処理により透湿フイルムの細孔径が変化し漏液しやすくなるが、本発明の不織布を積層した状態にすることで穿設された透湿防水フイルムから潮解液が漏れ出た際でもその液体を吸収し膨潤することで、不織布内の繊維間隙を小さくし、外部への潮解液の流出を防ぐ効果を得ることができる。
【0033】
前記透湿防水フイルムと前記不織布層とを融着させる際のロールの温度および加圧力(線圧)は、使用する透湿防水フイルムの材質、不織布の構成や目付け、生産速度に応じて適宜設定できる。例えば透湿防水フイルムがオレフィン系樹脂からなる場合、ロール温度は、好ましくは120~160℃、より好ましくは130~150℃である。ロールの加圧力は、例えば、10~60kN/mが好ましく、20~50kN/mがより好ましい。
【0034】
前記透湿防水フイルムと前記不織布層とを融着させて得られた複合シートの厚さは、0.1~2mmの範囲内であることが好ましい。前記複合シートの厚さが該範囲よりも小さいと、不織布内の繊維間隙が小さくなりすぎ透湿性が損なわれるおそれがあり、また包装用シートとして、外周縁部を熱圧着、超音波シール、高周波ウェルダー等を用いて接合する加工をする際に十分な接着が得られないおそれがある。一方、前記複合シートの厚さが該範囲よりも大きい場合、設定吸湿量が高くなり潮解液が漏れにくくなる反面、包装シートとしての加工性が低下するおそれがある。
【0035】
本発明の潮解性物質が内包するための複合シートは前記の構成を有するので、潮解性物質が有する本来の吸湿特性を損なうことなく、コンパクトであり、かつ吸湿作用時に生じた潮解液が外部に漏出し難いという効果を奏する。
【0036】
なお、本発明は潮解性物質を内包する目的の複合シートであるが、設定吸湿量を多くする目的で内包する潮解性物質を多くした場合などは、吸湿に伴って生じた潮解液の吸収量が増えるために前記厚みの範囲で前記不織布に含まれる吸水繊維の量を増やし対応する方法や、また潮解性物質と共に増粘性物質や親水性物質を合わせて内包し対応する方法などが挙げられる。
【0037】
このような物質の例としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸ナトリウム、デンプン、アルギン酸ソーダ、ポリアクリルアミド、天然ガム類等が挙げられる。
【0038】
次に、本発明の除湿剤は前記複合シートに潮解性物質を内包してなる除湿剤である。潮解性物質としては、塩化マグネシウム、塩化リチウム、酢酸カリウムなどが例示される。
かかる除湿剤は前記複合シートを用いているので、潮解性物質が有する本来の吸湿特性を損なうことなく、コンパクトであり、かつ吸湿作用時に生じた潮解液が外部に漏出し難いという優れた効果を有する。
【実施例0039】
以下に本発明の実施例及び比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例中の各測定項目は下記の方法で測定した。
【0040】
(1)厚さ
厚さはJIS L1085 A法により測定した。
【0041】
(2)吸水率
20℃、65%RHの恒温恒湿槽中に一晩(12時間以上)静置調湿した素材(原綿)を市販のティーバックの中入れ、開口部をシールする。素材が入ったティーバックごと水に30分間浸漬、その後水から取り出し10分間吊下げた後の重量と初期重量との比率で、吸水率(倍)を算出した。
吸水率(倍)=10分間吊下げた後の重量/初期重量
【0042】
(3)目付け
目付けはJIS L1085により測定した。
【0043】
(4)融点
DuPont社製 熱示差分析計990型を使用し、約3gのポリマーを2枚のカバーガラスに挟み、ピンセットで軽く押さえながら昇温20℃/分で測定し、融解ピークをもとめた。融解温度が明確に観測されない場合には、微量融点測定装置(柳本製作所製)を用い、ポリマーが軟化して流動を始めた温度(軟化点)を融点とした。
【0044】
(5)引張強度
試料幅を15mm、つかみ間隔100mm、引張速度を100mm/分にした上でJIS L1085により測定を行った。
【0045】
(6)引裂強度
JIS L1096シングルタング法により測定を行った。
【0046】
(7)加圧時透過水量
潮解性物質を内包した除湿剤が、吸湿に伴って生じた潮解液により包袋内が膨潤することを想定し、その漏液性を下記方法で評価した。試料の透湿フイルム面に中央部5mmΦの穴をあけ、その上から墨液(1/100希釈)をスポイドにて0.5cc滴下し、裏面から減圧ろ過器を用いて圧力0.038MPaにて吸引した際の、墨液の通過量を測定した。透過量が0.2cc以下の場合外部に漏出し難い優れた複合シートである。
【0047】
(8)単繊維繊度
JIS L1015 8.5.1 A法に記載の方法により測定した。
【0048】
[実施例1、2]
複合シートを、目付けおよび厚みが表1に示す値となるよう下記製造方法により作製した。
吸水繊維には、帝人フロンティア(株)製「ベルオアシス(登録商標)」(架橋ポリアクリル酸ナトリウム系繊維、吸水率(自重の50倍)、単繊維繊度10dtex、繊維長5mm)を用い、熱接着性繊維には鞘部に融点132℃のポリエチレン(以下PEと略す)、芯部に融点165℃のポリプロピレン(以下PPと略す)からなる芯鞘型の短繊維(芯部:鞘部(質量比)=50:50)を使用し、表1に記載の組成で繊維を混綿した後、カード機を用いて目付けが30g/mのウエブとしてネツトコンベア上に堆積させた。次に、得られたウエブの上に、厚さ70μm、透湿度1500g/m・24Hr以上の透湿防水フイルム(株式会社トクヤマ製「プロピレン系NFシート」;ポリエチレン含有ポリプロピレン樹脂製)を積層し、温度140℃、線圧20KN/mにて、熱圧接処理を施し複合シートを得た。得られた複合シートの性能評価の結果を表1に示す。
かかる複合シートは潮解性物質を内包して除湿剤として使用することが可能であり有用である。
【0049】
[実施例3、4、5]
実施例1、2で得られた複合シートは、不織布と透湿フイルムの2層になっているが、透湿フイルム面と異なる面側に、吸水繊維を含まない不織布として芯がポリエステル、鞘がポリエチレンのスパンボンド不織布(ユニチカ株式会社製「エルベス」)を積層した以外は、実施例1、2と同様にして、複合シートを得た。得られた複合シートの性能評価の結果を表1に示す。
【0050】
[比較例1、2]
比較例として、芯がポリエステル、鞘がポリエチレンの市販のスパンボンド不織布を透湿フイルムに積層したものを用いた。当該シートの諸性能を表1に示す。
【0051】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、潮解性物質を内包するための複合シートであり、潮解性物質が有する本来の吸湿特性を損なうことなく、コンパクトであり、かつ吸湿作用時に生じた潮解液が外部に漏出し難い複合シートおよび除湿剤が提供され、その工業的価値は極めて大である。