(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162645
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】ウェーハの処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20241114BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/78 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078368
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】滝田 友春
(72)【発明者】
【氏名】木内 逸人
【テーマコード(参考)】
5F063
5F131
【Fターム(参考)】
5F063AA05
5F063BA03
5F063CA01
5F063CA04
5F063EE21
5F063FF01
5F131AA02
5F131BA52
5F131CA09
5F131EA05
5F131EB03
5F131EB52
5F131EC33
5F131EC62
5F131EC65
(57)【要約】
【課題】円形凹部を有するウェーハの一面(裏面)に大きな隙間を生じさせずに粘着テープに代わるシートを配設できるとともに、経時的な隙間の拡大を抑制できる。
【解決手段】外周部に環状凸部を有するとともに該環状凸部に囲繞される領域に円形凹部が形成された一面を有するウェーハを、第1凹部を備える上チャンバーと、第2凹部を備える下チャンバーと、該第2凹部に配設され該ウェーハを保持する保持テーブルと、を備える熱圧着装置で処理する処理方法であって、該一面が上方に向いた該ウェーハを該保持テーブルで下方から保持し、シートを該第1凹部及び該第2凹部で挟み、該第1凹部及び該第2凹部を閉じ、該第1凹部を減圧するとともに、該第2凹部を減圧し、該第1凹部の圧力を上昇させ、該シートを該ウェーハの該一面に接触させることにより該シートを該環状凸部および該円形凹部に接触させ、該シートを加熱して該シートを該ウェーハの一面に熱圧着する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周部に環状凸部を有するとともに該環状凸部に囲繞される領域に円形凹部が形成された一面を有するウェーハを、第1減圧ユニットに連結され第1開口を有する第1凹部を備える上チャンバーと、第2減圧ユニットに連結され第2開口を有する第2凹部を備える下チャンバーと、該第2凹部に配設され該ウェーハを保持する保持テーブルと、を備え、該第1開口及び該第2開口を合わせることで該上チャンバー及び該下チャンバーを閉じられる熱圧着装置で処理する処理方法であって、
該一面が上方に向いた該ウェーハを該熱圧着装置の該保持テーブルで下方から保持する保持ステップと、
該ウェーハを収容できる開口部を中央に有する環状フレームと、該環状フレームの外周部に固定されたシートと、を有するフレームユニットの該シートを該開口部の内側において該第1凹部の該第1開口及び該第2凹部の該第2開口で挟み、該第1凹部及び該第2凹部を閉じる密閉ステップと、
該密閉ステップの後に、該第1凹部を該第1減圧ユニットで減圧するとともに、該第2凹部を該第2減圧ユニットで減圧する減圧ステップと、
該減圧ステップの後に、該第1凹部の圧力を上昇させ、該シートを該ウェーハの該一面に接触させることにより該シートを該環状凸部および該円形凹部に接触させる接触ステップと、
該接触ステップの後に、該シートを加熱して該シートを該ウェーハの該一面に熱圧着する熱圧着ステップと、を有することを特徴とするウェーハの処理方法。
【請求項2】
該熱圧着ステップの後に、該環状凸部を切除する分断溝を該ウェーハに形成する分断溝形成ステップと、
該分断溝形成ステップの後に、該環状凸部を該シートから除去する除去ステップと、を更に備えることを特徴とする請求項1記載のウェーハの処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外周部に環状凸部を有するとともに環状凸部に囲繞される領域に円形凹部が形成された一面を有するウェーハの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、パーソナルコンピュータ等の電子機器には、デバイスチップが搭載されている。デバイスチップは、通常、IC(Integrated Circuit)等のデバイスが表面側に複数個形成されたウェーハを裏面側から研削して薄化し、ウェーハをデバイス毎に分割して製造される。
【0003】
研削され薄化されたウェーハは、剛性が低下して割れやすい。そこで、ウェーハの裏面のうち複数のデバイスが形成されたデバイス形成領域に対応する領域を研削して円形凹部を形成するとともに、その周囲を環状凸部として残す。この環状凸部は、ウェーハが搬送等される間、薄化された円形凹部を補強する機能を発揮する(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、ウェーハを個々のチップに分割する際には環状凸部が分割の妨げとなるため、事前に環状凸部をウェーハから除去する必要がある。環状凸部を除去する際には、円形凹部と環状凸部を含むウェーハの裏面の全域に粘着テープを貼着し、粘着テープを介してウェーハを保持テーブルで保持する。保持テーブルは、ウェーハの円形凹部に対応する凸形状を有し、この凸形状に円形凹部が合わせられる。そして、保持テーブルで保持されたウェーハに環状の分断溝を形成し、環状凸部を除去する(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-173487号公報
【特許文献2】特開2011-61137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、粘着テープをウェーハの一面(裏面)に貼着する際、円形凹部と環状凸部との段差に起因して、円形凹部の外周部では粘着テープとウェーハの間に隙間が生じる。そして、この隙間と重なる領域ではウェーハが粘着テープに支持されないため、分断溝を形成するためにこの領域を加工すると、許容されない程度にチッピングが発生したりウェーハに割れが生じたりする。
【0007】
そのため、隙間と重ならない領域に分断溝を形成する必要がある。しかしながら、分断溝が形成される位置ではウェーハにデバイスを形成できないため、大きな隙間を避けて分断溝を形成するとウェーハの有効面積が低下してデバイスチップの生産性が低下するとの問題が生じる。
【0008】
また、ウェーハの一面(裏面)側に粘着テープが貼着される際には、最初に環状凸部に粘着テープが貼着され、その後に環状凸部の内側で粘着テープが引き延ばされ、大きな応力がかかる状態で粘着テープが円形凹部に貼着される。そのため、粘着テープがウェーハに貼着されてからの時間の経過に伴い、円形凹部の外周から粘着テープ及びウェーハの隙間が広がるとの問題がある。
【0009】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、円形凹部を有するウェーハの一面(裏面)に大きな隙間を生じさせずに粘着テープに代わるシートを配設できるとともに、経時的な隙間の拡大を抑制できるウェーハの処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、外周部に環状凸部を有するとともに該環状凸部に囲繞される領域に円形凹部が形成された一面を有するウェーハを、第1減圧ユニットに連結され第1開口を有する第1凹部を備える上チャンバーと、第2減圧ユニットに連結され第2開口を有する第2凹部を備える下チャンバーと、該第2凹部に配設され該ウェーハを保持する保持テーブルと、を備え、該第1開口及び該第2開口を合わせることで該上チャンバー及び該下チャンバーを閉じられる熱圧着装置で処理する処理方法であって、該一面が上方に向いた該ウェーハを該熱圧着装置の該保持テーブルで下方から保持する保持ステップと、該ウェーハを収容できる開口部を中央に有する環状フレームと、該環状フレームの外周部に固定されたシートと、を有するフレームユニットの該シートを該開口部の内側において該第1凹部の該第1開口及び該第2凹部の該第2開口で挟み、該第1凹部及び該第2凹部を閉じる密閉ステップと、該密閉ステップの後に、該第1凹部を該第1減圧ユニットで減圧するとともに、該第2凹部を該第2減圧ユニットで減圧する減圧ステップと、該減圧ステップの後に、該第1凹部の圧力を上昇させ、該シートを該ウェーハの該一面に接触させることにより該シートを該環状凸部および該円形凹部に接触させる接触ステップと、該接触ステップの後に、該シートを加熱して該シートを該ウェーハの該一面に熱圧着する熱圧着ステップと、を有することを特徴とするウェーハの処理方法が提供される。
【0011】
好ましくは、該熱圧着ステップの後に、該環状凸部を切除する分断溝を該ウェーハに形成する分断溝形成ステップと、該分断溝形成ステップの後に、該環状凸部を該シートから除去する除去ステップと、を更に備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様に係るウェーハの処理方法では、ウェーハの環状凸部及び円形凹部にシートを接触させ、シートを加熱してウェーハにシートを熱圧着する。シートは、ウェーハの環状凸部に接触しても環状凸部には貼り付かない。そのため、その後にシートが円形凹部に接触するまでの間、環状凸部の外側からもシートが円形凹部に引き込まれる。この場合、シートにかかる応力が分散され、局所的に大きな応力がかかることなくシートが円形凹部に接触する。その後に、シートをウェーハに熱圧着する。
【0013】
これにより、ウェーハとシートの間の隙間が極めて小さい状態でシートをウェーハに固定できるため、粘着テープをウェーハに固定する場合と比較し、この隙間を考慮してデバイスの形成領域を大きく縮小する必要がない。すなわち、ウェーハの有効面積を比較的大きく確保でき、デバイスチップの生産性を向上できる。また、ウェーハに熱圧着されたシートには大きな応力がかからないため、シート及びウェーハの隙間の時間の経過に伴った拡大も、極めて限定的となる。
【0014】
したがって、本発明の一態様により、円形凹部を有するウェーハの一面(裏面)に大きな隙間を生じさせずに粘着テープに代わるシートを配設できるとともに、経時的な隙間の拡大を抑制できるウェーハの処理方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1(A)は、ウェーハの裏面(一面)側を模式的に示す斜視図であり、
図1(B)は、ウェーハの表面側を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2(A)は、熱圧着装置を模式的に示す断面図であり、
図2(B)は、保持ステップにおける熱圧着装置を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3(A)は、密閉ステップにおける熱圧着装置を模式的に示す断面図であり、
図3(B)は、減圧ステップにおける熱圧着装置を模式的に示す断面図である。
【
図4】接触ステップにおける熱圧着装置を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5(A)は、ウェーハの環状凸部にシートが接触する様子を模式的に示す断面図であり、
図5(B)は、ウェーハの円形凹部にシートが接触する様子を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6(A)は、ウェーハの環状凸部に粘着テープが接触する様子を模式的に示す断面図であり、
図6(B)は、ウェーハの円形凹部に保護シートが接触する様子を模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7(A)は、シートがウェーハ及び環状フレームに一体化された状態を模式的に示す断面図であり、
図7(B)は、除去ステップにおいて環状凸部がウェーハから分離される様子を模式的に示す断面図である。
【
図8】分断溝形成ステップにおける切削装置を模式的に示す断面図である。
【
図9】ウェーハの処理方法の各ステップの流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。
図1(A)は、ウェーハの裏面(一面)側を模式的に示す斜視図であり、
図1(B)は、ウェーハの表面側を模式的に示す斜視図である。まず、本実施形態に係るウェーハの処理方法で処理されるウェーハについて説明する。
【0017】
ウェーハ11は、例えば、シリコン(Si)、炭化珪素(SiC)等の半導体材料で形成された円板状の単結晶基板である。但し、ウェーハ11の形状、構造、大きさ等に制限はない。
図1(B)に示すように、ウェーハ11の表面11a側には、格子状に複数の分割予定ライン19が設定されている。複数の分割予定ライン19によって区画された各領域には、ICやLSI等のデバイス21が形成されている。
【0018】
ウェーハ11の表面11aのうち複数のデバイス21が形成された領域を囲繞する外周部の領域は、外周余剰領域23と呼ばれる。また、ウェーハ11の表面11aのうち外周余剰領域23で囲まれ複数のデバイス21が形成された領域は、デバイス形成領域25と呼ばれる。
【0019】
複数のデバイス21が形成されたウェーハ11を裏面11b側から研削して薄化し、分割予定ライン19に沿ってウェーハ11を分割すると、それぞれデバイス21を備える複数の薄型デバイスチップが得られる。ウェーハ11の分割は、例えば、円環状の切削ブレードを備える切削装置により実施される。しかしながら、研削され薄化されたウェーハ11は剛性が低下して割れやすく、搬送等の取り扱いが容易でない。
【0020】
そこで、
図1(A)に示すように、ウェーハ11の裏面11bのうち複数のデバイス21が形成されたデバイス形成領域25に対応する領域を研削して円形凹部15を形成するとともに、その周囲を環状凸部13として残す。この環状凸部13は、ウェーハ11が搬送等される間、薄化された円形凹部15を補強する機能を発揮する。これにより、ウェーハ11の剛性が保たれ、反りや割れ等が生じにくくなり、取り扱いが容易となる。
【0021】
しかしながら、環状凸部13を裏面11b側に有するウェーハ11を切削装置でそのまま分割予定ライン19に沿って分割しようとしたとき、薄い円形凹部15を分割するようにウェーハ11に形成する分割溝では、厚い環状凸部13を切断できない。すなわち、環状凸部13は、ウェーハ11を個々のチップに分割する際には分割の妨げとなる。
【0022】
そのため、ウェーハ11を分割する前に環状凸部13をウェーハ11から除去する必要がある。本実施形態に係るウェーハの処理方法では、円形凹部15と環状凸部13を含むウェーハ11の一面(裏面11b)の全域にシートを熱圧着する。ウェーハ11は、シートを介して分割装置の保持テーブルで保持される。
【0023】
次に、ウェーハ11に熱圧着されるシートについて説明する。
図3(A)等には、シート27を模式的に示す断面図が含まれている。シート27は、ウェーハ11の外径よりも大きい径を有し、糊層を備えない。また、シート27は、熱可塑性を有するシートである。シート27の外周部は、金属製の環状フレーム39(
図7(A)、
図7(B)、
図8参照)に配設される。シート27は、例えば、ポリオレフィン系シート、ポリエステル系シート等の柔軟性を有する樹脂系シートであるが、シート27の材質はこれに限定されない。
【0024】
ここで、ポリオレフィン系シートは、アルケンをモノマーとして合成されるポリマーのシートである。シート27に使用されるポリオレフィン系シートは、例えば、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシート、または、ポリスチレンシート等の可視光に対して透明または半透明なシートである。
【0025】
また、ポリエステル系シートは、ジカルボン酸(2つのカルボキシル基を有する化合物)と、ジオール(2つのヒドロキシル基を有する化合物)と、をモノマーとして合成されるポリマーのシート27である。シート27に使用されるポリエステル系シートは、例えば、ポリエチレンテレフタレートシート、または、ポリエチレンナフタレートシート等の可視光に対して透明または半透明なシート27である。
【0026】
シート27は糊層(粘着剤層)を備えず、十分な粘着性を有しないため、ウェーハ11に貼着できない。シート27は熱可塑性を有し、所定の圧力を印加しながらウェーハ11と接合させた状態で融点近傍の温度まで加熱すると、部分的に溶融してウェーハ11に固定できる。すなわち、シート27は、ウェーハ11に熱圧着できる。
【0027】
また、
図7(A)、
図7(B)、
図8に示す通り、シート27の外周部は金属製の環状フレーム39に予め配設される。環状フレーム39は、ウェーハ11の径よりも大きい径の開口部(貫通孔)39aを備える。例えば、シート27は、予め環状フレーム39に熱圧着される。または、シート27は、接着剤等により予め環状フレーム39に貼着される。
【0028】
最終的にウェーハ11と、シート27と、環状フレーム39と、が一体化されるとフレームユニット41(
図7(A)、
図7(B)等参照)が形成される。フレームユニット41が形成されるとシート27を介してウェーハ11を扱えるため、ウェーハ11の取り扱いが容易となる。また、フレームユニット41の一部となっているウェーハ11を分割すると、形成された個々のデバイスチップがシート27に引き続き支持されるため、デバイスチップの取り扱いも容易となる。
【0029】
次に、本実施形態に係るウェーハの処理方法において、シート27をウェーハ11に熱圧着する熱圧着装置2について説明する。
図2(A)から
図4には、熱圧着装置2を模式的に示す断面図が含まれている。
【0030】
図2(A)は、熱圧着装置2の一例を模式的に示す断面図である。熱圧着装置2は、例えば、内部にウェーハ11を収容できる空間を有するチャンバー状のユニットであり、ウェーハ11の裏面11bにシート27を熱圧着する機能を有する。熱圧着装置2は、上方に開口した凹状の下チャンバー6と、下チャンバー6の上方に配設され下方に開口した凹状の上チャンバー4と、を有する。
【0031】
熱圧着装置2の上チャンバー4は、第1減圧ユニット20に連結され第1開口12を有する第1凹部8を備える。下チャンバー6は、第2減圧ユニット22に連結され第2開口14を有する第2凹部10を備える。第1減圧ユニット20及び第2減圧ユニット22は、例えば、ロータリーポンプ等の真空ポンプである。ただし、第1減圧ユニット20及び第2減圧ユニットはこれに限定されない。
【0032】
また、熱圧着装置2は、第2凹部10に配設されウェーハ11を保持する保持テーブル32を備える。そして、上チャンバー4の第1開口12及び下チャンバー6の第2開口14を合わせることで上チャンバー4及び下チャンバー6を閉じることができる。
【0033】
熱圧着装置2について、より詳細に説明する。上チャンバー4の第1開口12及び下チャンバー6の第2開口14は、ウェーハ11の径よりも大きい内径を有する。また、上チャンバー4の第1凹部8及び下チャンバー6の第2凹部10は、シート27の外周部に配設された環状フレーム39の内径よりも小さい外径を有する。
【0034】
例えば、上チャンバー4は昇降可能である。下チャンバー6の第2開口14と、上チャンバー4の第1開口12と、は同形状であり、第2開口14に第1開口12が重なるように上チャンバー4を下チャンバー6に下降させると、上チャンバー4及び下チャンバー6の内部に外部とは遮断された空間を形成できる。
【0035】
下チャンバー6には、ウェーハ11を支持するテーブル状の保持テーブル32が設けられている。保持テーブル32の上面は、ウェーハ11を支持し保持する平坦な保持面34である。保持テーブル32は、保持面34に通じた吸引路(不図示)と、吸引路に接続された吸引源(不図示)と、を備えてもよい。この場合、保持テーブル32の保持面34に載せられたウェーハ11に吸引路を通じて吸引源で生じた吸引力を作用させると、保持テーブル32でウェーハ11を吸引保持できる。
【0036】
保持テーブル32の高さは、ウェーハ11を保持面34に載せたとき、ウェーハ11の裏面11bと、下チャンバー6の第2開口14と、の高さが略同一となるように調整されている。または、保持テーブル32の高さは、ウェーハ11の裏面11bよりも下チャンバー6の第2開口14の方が高くなるように調整されている。
【0037】
上チャンバー4の天井または側壁には、排気部24が接続されている。排気部24は、一端が上チャンバー4の第1凹部8に接続され、他端が第1減圧ユニット20に接続された排気路である。排気部24の排気路には、上チャンバー4及び第1減圧ユニット20の接続状態を切り替える第1電磁弁28(例えば、ソレノイドバルブ)が設けられている。すなわち、第1電磁弁28を作動させると、上チャンバー4及び第1減圧ユニット20が接続された接続状態と、互いに切り離された分断状態と、を切り替えられる。
【0038】
下チャンバー6の底壁または側壁には、排気部26が接続されている。排気部26は、一端が下チャンバー6の第2凹部10に接続され、他端が第2減圧ユニット22に接続された排気路である。排気部26の排気路には、下チャンバー6及び第2減圧ユニット22の接続状態を切り替える第2電磁弁30(例えば、ソレノイドバルブ)が設けられている。すなわち、第2電磁弁30を作動させると、下チャンバー6及び第2減圧ユニット22が接続された接続状態と、互いに切り離された分断状態と、を切り替えられる。
【0039】
第1電磁弁28を作動させて第1減圧ユニット20及び上チャンバー4を接続すると、上チャンバー4の内部空間16を減圧できる。また、第2電磁弁30を作動させて第2減圧ユニット22及び下チャンバー6を接続すると、下チャンバー6の内部空間18を減圧できる。
【0040】
熱圧着装置2は、保持テーブル32に載せられたウェーハ11、及び、ウェーハ11に載せられたシート27を加熱する加熱ユニットを備える。例えば、保持テーブル32の内部には、加熱ユニットとして機能できるヒーター36が配設されている。ヒーター36は、例えば、電熱線である。ヒーター36を作動させると、ウェーハ11が加熱されるとともに、ウェーハ11を通じてシート27が加熱される。
【0041】
ただし、熱圧着装置2が備える加熱ユニットはこれに限定されない。例えば、上チャンバー4の第1凹部8には、上チャンバー4の内部空間16に熱風を供給する加熱ユニット(不図示)が設けられてもよい。加熱ユニットは、例えば、空気の流れを生じさせる送風機と、空気を加熱できるヒーターと、を備える。保持テーブル32にウェーハ11を載せ、ウェーハ11の上にシート27を配設し、加熱ユニットからシート27に熱風を供給すると、シート27を加熱できる。
【0042】
次に、熱圧着装置2を用いて実施する本実施形態に係るウェーハの処理方法について説明する。本実施形態に係るウェーハの処理方法は、例えば、ウェーハ11を分割してデバイスチップを形成するデバイスチップの製造方法の一部として実施される。
図9は、ウェーハの処理方法(デバイスチップの製造方法)の各ステップの流れを示すフローチャートである。以下、本実施形態に係るウェーハの処理方法について説明するが、以下の説明はデバイスチップの製造方法の各ステップの説明でもある。
【0043】
本実施形態に係るウェーハの処理方法では、まず、一面(裏面11b)が上方に向いたウェーハ11を熱圧着装置2の保持テーブル32で下方から保持する保持ステップS10を実施する。
図2(B)は、保持ステップS10における熱圧着装置2及びウェーハ11を模式的に示す断面図である。
【0044】
保持ステップS10では、ウェーハ11の表面11a側を下方に向け、保持テーブル32の上方にウェーハ11を移動させ、ウェーハ11の表面11aを保持テーブル32の保持面34に対面させる。そして、ウェーハ11を保持テーブル32の保持面34上に載せ、保持テーブル32の吸引源を作動させてウェーハ11を保持テーブル32で吸引保持する。このとき、シート27が熱圧着される面となる一面(裏面11b)が上方に露出される。
【0045】
次に、環状フレーム39に固定されたシート27を熱圧着装置2の上チャンバー4及び下チャンバー6で挟み、上チャンバー4の内部空間16と、下チャンバー6の内部空間18と、を密閉する密閉ステップS20を実施する。
図3(A)は、密閉ステップS20における熱圧着装置2を模式的に示す断面図である。
【0046】
密閉ステップS20では、ウェーハ11を収容できる開口部39aを中央に有する環状フレーム39(
図7(A)等参照)と、環状フレーム39の外周部に固定されたシート27と、を有するフレームユニット41(
図7(A)等参照)を下チャンバー6に載せる。このとき、下チャンバー6の第2開口14がシート27により塞がれる。なお、環状フレーム39と、第1開口12及び第2開口14と、が重ならないように環状フレーム39の位置が調整される。
【0047】
そして、上チャンバー4を下降させて、フレームユニット41のシート27を環状フレーム39の開口部39aの内側において第1凹部8の第1開口12及び第2凹部10の第2開口14で挟み、第1凹部8及び第2凹部10を閉じる。このとき、上チャンバー4の内部空間16は、シート27と、第1凹部8と、により密閉される。また、下チャンバー6の内部空間18は、シート27と、第2凹部10と、により密閉される。
【0048】
本実施形態に係るウェーハの処理方法では、密閉ステップS20の後に、第1凹部8を第1減圧ユニット20で減圧するとともに、第2凹部10を第2減圧ユニット22で減圧する減圧ステップS30を実施する。
図3(B)は、減圧ステップS30における熱圧着装置2を模式的に示す断面図である。
【0049】
減圧ステップS30では、第1電磁弁28を作動させて、第1減圧ユニット20及び上チャンバー4を接続する。すると、第1減圧ユニット20により上チャンバー4の第1凹部8の内部空間16が排気部24を通じて排気され、内部空間16が減圧される。また、減圧ステップS30では、第2電磁弁30を作動させて、第2減圧ユニット22及び下チャンバー6を接続する。すると、第2減圧ユニット22により下チャンバー6の第2凹部10の内部空間18が排気部26を通じて排気され、内部空間18が減圧される。
【0050】
本実施形態に係るウェーハの処理方法では、減圧ステップS30の後に、第1凹部8の圧力を上昇させ、シート27をウェーハ11の一面(裏面11b)に接触させることによりシート27を環状凸部13および円形凹部15に接触させる接触ステップS40を実施する。
図4は、接触ステップS40における熱圧着装置2を模式的に示す断面図である。
【0051】
接触ステップS40では、まず、第1減圧ユニット20による上チャンバー4の減圧を停止する。すなわち、第1電磁弁28を作動させて第1減圧ユニット20及び上チャンバー4の接続を解除する。このとき、第2電磁弁30は作動させずに、第2減圧ユニット22及び下チャンバー6の接続は維持しておく。
【0052】
この場合、上チャンバー4の内部空間16の圧力が徐々に上昇する。または、熱圧着装置2は、排気部24等を通じて上チャンバー4を外気に接続できてもよい。この場合、上チャンバー4を外気に接続すると、内部空間16に急速に空気が流入して上チャンバー4の内部空間16の圧力が急速に上昇する。
【0053】
上チャンバー4の内部空間16の圧力が下チャンバー6の内部空間18の圧力よりも高くなると、内部空間16及び内部空間18の間で両者を分離するシート27には下方に向いた力がかかる。すると、シート27がウェーハ11の一面(裏面11b)に向けて押圧され、ウェーハ11の一面(裏面11b)の形状に合うように変形する。
【0054】
接触ステップS40では、最初にシート27がウェーハ11の一面(裏面11b)の環状凸部13に接触する。または、接触ステップS40の開始時点ですでにシート27が環状凸部13に接触している。このとき、糊層を有し粘着力を有する粘着テープとは異なり、シート27は環状凸部13に貼り付かない。シート27は、環状凸部13に対して自由に滑り動くことができる。
【0055】
接触ステップS40が進行すると、シート27が環状凸部13の内側で円形凹部15に向けて食い込むように変形しつつシート27が円形凹部15に向けて進み、最終的にシート27が円形凹部15に接触する。シート27が環状凸部13及び円形凹部15を含むウェーハ11の一面(裏面11b)のうち主要な部分に接触したとき、接触ステップS40が完了する。
【0056】
接触ステップS40が完了したとき、シート27とウェーハ11の間には互いを固定するために十分な大きさの力が働いていない。そこで、シート27をウェーハ11に固定するために、接触ステップS40の後に、シート27を加熱してシート27をウェーハ11の一面(裏面11b)に熱圧着する熱圧着ステップS50を実施する。
【0057】
熱圧着ステップS50では、熱圧着装置2の加熱ユニットを作動させてシート27を加熱する。例えば、熱圧着装置2が加熱ユニットとしてヒーター36を有する場合、ヒーター36を作動させてウェーハ11とともにシート27を加熱する。
【0058】
第1凹部8の内部空間16と、第2凹部10の内部空間18と、の圧力差によりシート27がウェーハ11に向けて押圧されている状態でシート27がその融点近傍の温度にまで加熱されると、シート27がウェーハ11に熱圧着される。シート27を熱圧着した後は、加熱ユニット(ヒーター36)を停止させ、シート27の加熱を停止する。
【0059】
なお、熱圧着を実施する際にシート27は、好ましくは、その融点以下の温度に加熱される。加熱温度が融点を超えると、シート27が溶解してシートの形状を維持できなくなる場合があるためである。また、シート27は、好ましくは、その軟化点以上の温度に加熱される。加熱温度が軟化点に達していなければ熱圧着を適切に実施できないためである。すなわち、シート27は、その軟化点以上でかつその融点以下の温度に加熱されるのが好ましい。
【0060】
さらに、一部のシート27は、明確な軟化点を有しない場合もある。そこで、熱圧着を実施する際にシート27は、好ましくは、その融点よりも20℃低い温度以上でかつその融点以下の温度に加熱される。
【0061】
例えば、シート27として使用されるポリオレフィン系シートがポリエチレンシートである場合、加熱温度は120℃~140℃とされるのが好ましい。また、ポリオレフィン系シートがポリプロピレンシートである場合、加熱温度は160℃~180℃とされるのが好ましい。さらに、ポリオレフィン系シートがポリスチレンシートである場合、加熱温度は220℃~240℃とされるのが好ましい。
【0062】
さらに、例えば、シート27として使用されるポリエステル系シートがポリエチレンテレフタレートシートである場合、加熱温度は250℃~270℃とされる。また、該ポリエステル系シートがポリエチレンナフタレートシートである場合、加熱温度は160℃~180℃とされる。ただし、シート27の加熱温度はこれらに限定されない。
【0063】
加熱ユニットを停止させてシート27の加熱を停止し、第2電磁弁30を作動させて第2減圧ユニット22及び下チャンバー6の接続を解除し、下チャンバー6の内部空間18の圧力を大気圧に戻した後、上チャンバー4を上昇させる。すると、
図7(A)に示す通り、シート27と、ウェーハ11と、環状フレーム39と、が一体化されたフレームユニット41が得られる。
【0064】
従来、環状凸部13及び円形凹部15を一面(裏面11b)に有するウェーハ11に粘着性を有する粘着テープを貼着していたとき、粘着テープとウェーハ11の一面の間に比較的大きな隙間が生じていた。これに対して、本実施形態に係るウェーハの処理方法でシート27をウェーハ11に熱圧着した場合、シート27とウェーハ11の一面の間に生じる隙間は比較的小さくなる。この本実施形態に係るウェーハの処理方法が奏する効果の一つについて詳述する。
【0065】
図5(A)は、接触ステップS40において、シート27がウェーハ11の一面(裏面11b)の環状凸部13に接触している状態を模式的に示す断面図である。この時点においてシート27はウェーハ11に熱圧着されておらず固定されていない。ここで、シート27のうち環状凸部13及び円形凹部15を接続する段差17と重なる点29a,29bに着目する。
【0066】
接触ステップS40が進行すると、シート27が円形凹部15に向けて押圧されて変形する。
図5(B)は、接触ステップS40において、シート27がウェーハ11の一面(裏面11b)の円形凹部15に接触している状態を模式的に示す断面図である。この時点においてもシート27はウェーハ11に熱圧着されておらず、固定されていない。
【0067】
ここで、シート27が円形凹部15に接触するまでの間、環状凸部13の外側からもシート27が円形凹部15に向けて引き込まれる。そのため、
図5(B)に示す通りシート27の点29a,29bも移動する。すなわち、シート27の各点の大きな移動を伴いながらシート27が円形凹部15に接触する。そのため、シート27にかかる応力が分散され、円形凹部15の近傍で局所的に大きな応力がシート27にはかからない。
【0068】
そして、円形凹部15に向けて十分な量でシート27が引き込まれるため、シート27とウェーハ11の間の隙間31が極めて小さくなる。また、ウェーハ11に熱圧着されたシート27に大きな応力が残らないため、時間経過に伴うシート27のウェーハ11からの剥離は極めて限定的となる。
【0069】
比較のために、本実施形態に係るウェーハの処理方法とは異なり、従来の方法により粘着テープをウェーハ11に貼着する場合について検討する。
図6(A)は、粘着テープ33がウェーハ11の一面(裏面11b)の環状凸部13に接触している状態を模式的に示す断面図である。粘着テープ33がウェーハ11の環状凸部13に接触すると、粘着テープ33が環状凸部13に固定される。ここで、粘着テープ33のうち環状凸部13及び円形凹部15を接続する段差17と重なる点35a,35bに着目する。
【0070】
粘着テープ33は、円形凹部15に向けて押圧され、変形する。
図6(B)は、粘着テープ33がウェーハ11の一面(裏面11b)の円形凹部15に接触している状態を模式的に示す断面図である。この時点において、粘着テープ33はウェーハ11の円形凹部15に貼着され固定される。ここで、粘着テープ33が環状凸部13に固定されているため、粘着テープ33が円形凹部15に接触するまでの間、環状凸部13の外側から粘着テープ33が円形凹部15に引き込まれない。
【0071】
そのため、
図6(B)に示す通り粘着テープ33の点35a,35bは移動しない。すなわち、環状凸部13の内側の領域でのみ粘着テープ33の変形が生じ粘着テープ33が円形凹部15に貼着される。この過程において、粘着テープ33が局所的に大きく変形するため、粘着テープ33には局所的に大きな応力がかかる。大きな応力がかかる状態で粘着テープ33が円形凹部15に固定されると、時間の経過とともに粘着テープ33がウェーハ11から剥離しやすくなる。
【0072】
また、円形凹部15に向けて粘着テープ33が引き込まれないため、粘着テープ33とウェーハ11の間に大きな隙間37が形成される。後述の通り、環状凸部13をウェーハ11から切除する際に円形凹部15の外周部に切削ブレードを切り込ませることとなるが、隙間37と重なる部分では円形凹部15は十分に支持されないため、切削ブレードによる加工は不適である。
【0073】
そのため、環状凸部13を除去するに際し、円形凹部15の外周よりも大きく内側で切削ブレードをウェーハ11に切り込ませなければならない。この場合、切削ブレードが切り込む領域にはデバイス21(
図1(B)参照)を形成できないため、ウェーハ11の有効面積が低下しウェーハ11から製造されるデバイスチップの数が少なくなるため、デバイスチップの製造効率が低下する。
【0074】
これに対して、本実施形態に係るウェーハの処理方法によると、シート27とウェーハ
1の間に生じる隙間31が比較的小さくなる。そのため、円形凹部15のより外周に近い位置において切削ブレードでウェーハ11を切削できるため、ウェーハ11の有効面積を比較的大きく確保できる。すなわち、ウェーハ11から製造できるデバイスチップの数を増すことができ、デバイスチップの製造効率が高くなる。また、隙間31の経時的な拡大が生じにくいため、シート27をウェーハ11に熱圧着した後のフレームユニット41の保存性が良い。
【0075】
本実施形態に係るウェーハの処理方法では、熱圧着ステップS50の後に、環状凸部13を切除する分断溝をウェーハ11に形成する分断溝形成ステップS60を実施する。
図8は、分断溝形成ステップS60を実施する切削装置38を部分的に示す断面図である。
【0076】
ここで、切削装置38について説明する。切削装置38は、ウェーハ11(フレームユニット41)を保持するチャックテーブル40と、チャックテーブル40に保持されたウェーハ11を切削する切削ユニット58と、を備える。
【0077】
チャックテーブル40は、円形凹部15に収まる平面形状の上面を有する多孔質部材44と、多孔質部材44を収容して上方に露出させる枠体42と、を備える。枠体42は、主にウェーハ11の円形凹部15を支持する円形凸部48と、円形凸部48の外周に配置され主にウェーハ11の環状凸部13を支持する環状支持部50と、を含む。
【0078】
枠体42の円形凸部48は、多孔質部材44を収容する収容凹部を上面に有する。円形凸部48の上面の平面形状は、ウェーハ11の円形凹部15に収まる形状であり、円形凹部15より僅かに小さい形状となる。枠体42の環状支持部50は、ウェーハ11の環状凸部13の幅(内周と外周の距離)よりも大きい幅(内周と外周の距離)を有する。環状支持部50の上面と、円形凸部48の上面と、の高さの差は、ウェーハ11の円形凹部15と、環状凸部13と、の高さの差に相当する。
【0079】
枠体42の内部には、一端が多孔質部材44に接続され、他端がエジェクタ等の吸引源52に接続された吸引路54が形成されている。
図8では、説明の便宜のために吸引路54を線で表現している。
【0080】
ウェーハ11(フレームユニット41)をチャックテーブル40に載せ、吸引源52を作動させると、吸引路54及び多孔質部材44を通じてウェーハ11(特に円形凹部15の主要部)に負圧が作用する。すなわち、ウェーハ11がチャックテーブル40に吸引保持される。そして、枠体42の円形凸部48の上面がウェーハ11を吸引保持する保持面46となる。
【0081】
環状支持部50の上面は、スペーサー56が配されている。スペーサー56は、樹脂層等の弾性部材により形成されており、ウェーハ11の円形凹部15及び環状凸部13の高さの差のばらつきに対応して厚みが変化する。枠体42の内部に形成された吸引路54は分岐していてもよく、吸引路54の分岐路はスペーサー56に接続される。吸引源52を作動させると、吸引路54の分岐路及びスペーサー56を通じてウェーハ11(特に環状凸部13)にも負圧が作用する。この場合、ウェーハ11はより強固に吸引保持される。
【0082】
また、チャックテーブル40にはモーター等の回転駆動源(不図示)が連結されており、回転駆動源はチャックテーブル40を保持面46に概ね平行な回転軸の周りで回転させる。さらに、チャックテーブル40の周囲には、シート27を介してウェーハ11を支持する環状フレーム39を把持して固定する複数のクランプ(不図示)が設けられてもよい。
【0083】
チャックテーブル40の上方には、ウェーハ11を切削する切削ユニット58が配設されている。切削ユニット58は、チャックテーブル40の保持面46に概ね平行な方向に沿って配置された円筒状のスピンドル60を備える。スピンドル60の先端部(一端側)には、ウェーハ11を切削する環状の切削ブレード64が装着される。
【0084】
また、スピンドル60の基端部(他端側)はスピンドルハウジング62に回転可能に収容されている。スピンドルハウジング62にはモーター等の回転駆動源(不図示)が収容されており、スピンドル60の基端部にはこの回転駆動源(不図示)が連結されている。回転駆動源からスピンドル60を介して伝達される動力により、切削ブレード64が回転する。
【0085】
スピンドル60の先端に装着された切削ブレード64としては、例えばハブタイプの切削ブレード(ハブブレード)が用いられる。ハブブレードは、金属等でなる環状の基台と、基台の外周縁に沿って形成された環状の切刃66とが一体となって構成される。また、ハブタイプの切削ブレードの切刃66は、ダイヤモンド等でなる砥粒がニッケルめっき層等の結合材によって固定された電鋳砥石によって構成される。
【0086】
ただし、切削ブレード64として、ワッシャータイプの切削ブレード(ワッシャーブレード)を用いることもできる。ワッシャーブレードは、砥粒が金属、セラミックス、樹脂等でなる結合材によって固定された環状の切刃66によって構成される。いずれにせよ、切削ブレード64は、環状の切刃66によりウェーハ11を切削できる。
【0087】
切削ユニット58は図示しない移動ユニットに接続されており、切削ブレード64がウェーハ11を切り込む位置を調整できる。また、切削ユニット58は図示しない昇降ユニットに接続されており、環状の切刃66の下端の高さ位置を変更できる。
【0088】
切削装置38でウェーハ11を切削して環状凸部13を切除する際には、まず、フレームユニット41をチャックテーブル40に載せる。このとき、ウェーハ11の一面(裏面11b)側を保持面46に向け、保持面46の中心と、ウェーハ11の一面の中心と、が重なるようにウェーハ11の位置を調整する。その後、吸引源52を作動させ、シート27を介してチャックテーブル40でウェーハ11を吸引保持する。
【0089】
ウェーハ11の分断溝が形成される位置は、円形凹部15の中心を中心とする円形の領域に設定される。本実施形態に係るウェーハの処理方法によると、ウェーハ11とシート27の間の隙間31が十分に小さいため、分断溝が形成される領域を円形凹部15の比較的外側に設定できる。切削ユニット58を移動させることにより、切削ブレード64の切刃66は、分断溝が形成される領域の上方に位置付けられる。
【0090】
次に、スピンドルハウジング62の内部に設けられた回転駆動源を作動させて切削ブレード64の回転を開始し、切削ユニット58を下降させて切刃66をウェーハ11に切り込ませる。そして、切刃66の下端がシート27に到達する高さ位置まで切削ユニット58を下降させ、チャックテーブル40の回転を開始する。そして、チャックテーブル40が1回転以上するとウェーハ11に円形の分断溝が形成され、環状凸部13がウェーハ11から切り離される。
【0091】
なお、分断溝形成ステップS60はこれに限定されない。例えば、予めウェーハ11の外において切刃66の下端の高さがシート27の上面の高さよりも低くなるように切削ユニット58の高さを調整し、ウェーハ11の外周から切刃66を切り込ませる。すなわち、切削ユニット58及びチャックテーブル40を保持面46に平行な方向に向けて移動させ、分断溝が形成される領域に切刃66を切り込ませる。この状態で、チャックテーブル40を1回転させると、ウェーハ11に円形の分断溝が形成される。
【0092】
分断溝形成ステップS60の後に、ウェーハ11から切り離された環状凸部13をシート27から除去する除去ステップS70を実施する。
図7(B)には、除去ステップS70でシート27から除去される際の環状凸部13を模式的に示す断面図が含まれている。環状凸部13がウェーハ11から切り離された後、チャックテーブル40からフレームユニット41を搬出すると、ウェーハ11の円形凹部15であった部分と、環状凸部13と、がシート27上に残る。
【0093】
この状態で、環状凸部13を引き上げてシート27から引き剥がす。すると、環状凸部13が除去されたウェーハ11と、シート27と、環状フレーム39と、が一体化されたフレームユニット41が得られる。その後、分割予定ライン19(
図1(B)参照)に沿ってウェーハ11を分割すると、デバイス21を備える個々のデバイスチップが得られる。
【0094】
以上に説明する通り、本実施形態に係るウェーハの処理方法により、円形凹部15を有するウェーハ11の一面(裏面11b)に大きな隙間31を生じさせずに粘着テープ33に代わるシート27を配設できるとともに、経時的な隙間31の拡大を抑制できる。
【0095】
なお、上記実施形態では、分断溝形成ステップS60において、切削ブレード64が装着された切削装置38を使用してウェーハ11に分断溝を形成する場合について説明したが、本発明の一態様はこれに限定されない。すなわち、分断溝形成ステップS60では、ウェーハ11にレーザービームを照射してウェーハ11をレーザー加工できるレーザー加工装置(不図示)が使用されてもよい。
【0096】
例えば、ウェーハ11に吸収される波長成分を含むレーザービームをウェーハ11における分断溝の形成が予定された領域に照射し、ウェーハ11をアブレーション加工する。または、ウェーハ11を透過する波長成分を含むレーザービームをウェーハ11における分断溝の形成が予定された領域に集光し、当該領域に沿った改質層をウェーハ11に形成し、改質層を分断起点としてウェーハ11を分断する。この場合においても、本発明の一態様に係るウェーハの処理方法によると、ウェーハ11の円形凹部15の比較的外周に近い位置で分断溝を形成できる。
【0097】
その他、上述の実施形態及び変形例に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。上述の実施形態及び変形例を、適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0098】
11 ウェーハ
11a 表面
11b 裏面
13 環状凸部
15 円形凹部
17 段差
19 分割予定ライン
21 デバイス
23 外周余剰領域
25 デバイス形成領域
27 シート
29a,29b 点
31 隙間
33 粘着テープ
35a,35b 点
37 隙間
39 環状フレーム
39a 開口部
41 フレームユニット
2 熱圧着装置
4 上チャンバー
6 下チャンバー
8 第1凹部
10 第2凹部
12 第1開口
14 第2開口
16,18 内部空間
20 第1減圧ユニット
22 第2減圧ユニット
24,26 排気部
28 第1電磁弁
30 第2電磁弁
32 保持テーブル
34 保持面
36 ヒーター
38 切削装置
40 チャックテーブル
42 枠体
44 多孔質部材
46 保持面
48 円形凸部
50 環状支持部
52 吸引源
54 吸引路
56 スペーサー
58 切削ユニット
60 スピンドル
62 スピンドルハウジング
64 切削ブレード
66 切刃