(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162648
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】光検出装置、補正方法、並びにプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 25/47 20230101AFI20241114BHJP
【FI】
H04N25/47
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078373
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121131
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 孝
(74)【代理人】
【氏名又は名称】稲本 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100168686
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 勇介
(72)【発明者】
【氏名】仁科 有貴
(72)【発明者】
【氏名】松浦 幸治
(72)【発明者】
【氏名】衣川 洋史
【テーマコード(参考)】
5C024
【Fターム(参考)】
5C024CY26
5C024GX03
5C024GX18
5C024GY31
5C024GZ38
5C024GZ42
5C024HX29
5C024HX32
5C024HX48
(57)【要約】
【課題】階調信号及びイベント信号の干渉の影響を低減する。
【解決手段】入射光の輝度の同一方向の変化をイベントとして検出し、当該検出したイベントに基づくイベントデータを生成するイベントデータ生成部と、入射光の輝度に応じたデータである階調データを生成する階調データ生成部とを備える複数の画素が2次元行列状に配置される画素アレイ部と、階調データの生成及びイベントの検出の期間の重複により発生する干渉の強度を特定する干渉強度特定部と、干渉強度特定部により特定された干渉の強度に応じたイベントデータの補正を行う補正部とを備える。本技術は、例えば階調信号及びイベント信号を取得する光検出装置に適用できる。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光の輝度の同一方向の変化をイベントとして検出し、当該検出したイベントに基づくイベントデータを生成するイベントデータ生成部と、入射光の輝度に応じたデータである階調データを生成する階調データ生成部とを備える複数の画素が2次元行列状に配置される画素アレイ部と、
前記階調データの生成及び前記イベントの検出の期間の重複により発生する干渉の強度を特定する干渉強度特定部と、
前記干渉強度特定部により特定された前記干渉の強度に応じた前記イベントデータの補正を行う補正部と
を備える光検出装置。
【請求項2】
前記画素アレイ部は、遮光された領域を有し、
前記干渉強度特定部は、前記遮光された領域に位置する前記イベントデータ生成部において検出されたイベント数をカウントし、カウントしたイベント数に応じて前記干渉の強度を特定する
請求項1に記載の光検出装置。
【請求項3】
前記干渉強度特定部は、
前記画素アレイ部の干渉の強度を特定する注目行におけるイベントをカウントした第1のイベント数を取得し、
前記注目行の上側に位置し、前記干渉がない非干渉行における第2のイベント数を取得し、
前記注目行の下側に位置し、前記干渉がない非干渉行における第3のイベント数を取得し、
前記第1のイベント数と、前記第2のイベント数と前記第3のイベント数のうちの大きい方のイベント数とを用いた所定の条件に該当するか否かを判定することで前記干渉の強度を特定する
請求項1に記載の光検出装置。
【請求項4】
前記階調データの生成と前記イベントの検出の期間の重複が予測される行である重複予測行を検出したことを表す干渉発生フラグを取得し、
前記非干渉行は、前記干渉発生フラグが立っていない行である
請求項3に記載の光検出装置。
【請求項5】
フレームを特定する情報と、前記画素アレイ部の干渉の強度を特定する注目行と、前記干渉の強度が関連付けられたテーブルを有し、
前記干渉強度特定部は、前記テーブルを参照し、前記注目行の前記干渉の強度を特定する
請求項1に記載の光検出装置。
【請求項6】
前記干渉強度特定部により、前記干渉の強度は弱いと特定された場合、前記補正部は、補正を行わない
請求項1に記載の光検出装置。
【請求項7】
前記干渉強度特定部により、前記干渉の強度は強いと特定された場合、前記補正部は、補正対象とされている注目画素にはイベントは発生していないとのイベントデータに補正する
請求項1に記載の光検出装置。
【請求項8】
前記干渉強度特定部により、前記干渉の強度は強いと特定された場合、前記補正部は、
補正対象とされている注目画素の上側に位置し、前記干渉がない非干渉行における前記注目画素の真上に位置する画素の第1のイベントと、前記注目画素の下側に位置し、前記干渉がない非干渉行における前記注目画素の真下に位置する画素の第2のイベントとを取得し、
前記第1のイベントと前記第2のイベントが一致している場合、前記注目画素のイベントを、前記第1のイベントが発生しているとのイベントデータに補正し、
前記第1のイベントと前記第2のイベントが一致していない場合、前記注目画素にイベントは発生していないとのイベントデータに補正する
請求項1に記載の光検出装置。
【請求項9】
前記干渉強度特定部により、前記干渉の強度は強いと特定された場合、前記補正部は、
補正対象とされている注目画素の上側に位置し、前記干渉がない非干渉行における前記注目画素の真上または斜め上方向に位置する画素の第1のイベントと、前記注目画素の下側に位置し、前記干渉がない非干渉行における前記注目画素の真下または斜め下方向に位置する画素の第2のイベントとを取得し、
前記第1のイベントと前記第2のイベントが一致している場合、前記注目画素のイベントを、前記第1のイベントが発生しているとのイベントデータに補正し、
前記第1のイベントと前記第2のイベントが一致していない場合、前記注目画素にイベントは発生していないとのイベントデータに補正する
請求項1に記載の光検出装置。
【請求項10】
前記干渉強度特定部により、前記干渉の強度は中と特定された場合、前記補正部は、
補正対象とされている注目画素の上側に位置し、前記干渉がない非干渉行における前記注目画素の真上または斜め上方向に位置する画素と、前記注目画素の下側に位置し、前記干渉がない非干渉行における前記注目画素の真下または斜め下方向に位置する画素を、探索画素とし、
前記注目画素のイベントと、複数の前記探索画素のイベントの少なくとも1つの画素のイベントが、一致している場合、前記注目画素のイベントのイベントデータを維持し、
前記注目画素のイベントと一致するイベントが、複数の前記探索画素のいずれにおいても発生していない場合、前記注目画素にイベントは発生していないとのイベントデータに補正する
請求項1に記載の光検出装置。
【請求項11】
前記干渉強度特定部は、前記干渉の強度を連続値で出力し、
前記補正部は、
前記連続値を補正率に変換し、
乱数を生成し、
前記乱数が前記補正率以下である場合、処理対象とされている注目画素のイベントデータを補正し、
前記乱数が前記補正率以下ではない場合、処理対象とされている注目画素のイベントデータを維持する
請求項1に記載の光検出装置。
【請求項12】
前記補正部の入力と出力は、同じビット数のイベントデータであり、
入力された前記イベントデータを補正した場合、補正後のイベントデータを出力する
請求項1に記載の光検出装置。
【請求項13】
前記補正部は、入力された前記イベントデータに、補正後のイベントデータを付加して出力する
請求項1に記載の光検出装置。
【請求項14】
入射光の輝度の同一方向の変化をイベントとして検出し、当該検出したイベントに基づくイベントデータを生成するイベントデータ生成部と、入射光の輝度に応じたデータである階調データを生成する階調データ生成部とを備える複数の画素が2次元行列状に配置される画素アレイ部を備える光検出装置が、
前記階調データの生成及び前記イベントの検出の期間の重複により発生する干渉の強度を特定し、
特定された前記干渉の強度に応じた前記イベントデータの補正を行う
補正方法。
【請求項15】
入射光の輝度の同一方向の変化をイベントとして検出し、当該検出したイベントに基づくイベントデータを生成するイベントデータ生成部と、入射光の輝度に応じたデータである階調データを生成する階調データ生成部とを備える複数の画素が2次元行列状に配置される画素アレイ部を備える光検出装置を制御するコンピュータに、
前記階調データの生成及び前記イベントの検出の期間の重複により発生する干渉の強度を特定し、
特定された前記干渉の強度に応じた前記イベントデータの補正を行う
処理を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は光検出装置、補正方法、並びにプログラムに関し、例えば、イベント検出の精度を向上させた光検出装置、補正方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、EVS(Event Based Vision Sensor)などとして知られるように、受光量の変化を表すイベント信号を画素ごとに検出するセンサ装置がある。この種のセンサ装置では、イベントが検出された画素の階調信号(受光量の強度を表す信号)を取得できるように、イベント信号検出用の画素と、階調信号検出用の画素とが混載されたものがある(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来技術では、階調信号の生成とイベントの検出の処理が時間的に重なるため、制御信号等による干渉を生じる可能性があった。干渉が生じると、イベント信号に誤差が生じてしまう可能性があった。干渉による影響を低減し、イベント信号の精度を向上させることが望まれている。
【0005】
本技術は、このような状況に鑑みてなされたものであり、イベント信号の精度を向上させることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術の一側面の光検出装置は、入射光の輝度の同一方向の変化をイベントとして検出し、当該検出したイベントに基づくイベントデータを生成するイベントデータ生成部と、入射光の輝度に応じたデータである階調データを生成する階調データ生成部とを備える複数の画素が2次元行列状に配置される画素アレイ部と、前記階調データの生成及び前記イベントの検出の期間の重複により発生する干渉の強度を特定する干渉強度特定部と、前記干渉強度特定部により特定された前記干渉の強度に応じた前記イベントデータの補正を行う補正部とを備える光検出装置である。
【0007】
本技術の一側面の補正方法は、入射光の輝度の同一方向の変化をイベントとして検出し、当該検出したイベントに基づくイベントデータを生成するイベントデータ生成部と、入射光の輝度に応じたデータである階調データを生成する階調データ生成部とを備える複数の画素が2次元行列状に配置される画素アレイ部を備える光検出装置が、前記階調データの生成及び前記イベントの検出の期間の重複により発生する干渉の強度を特定し、特定された前記干渉の強度に応じた前記イベントデータの補正を行う補正方法である。
【0008】
本技術の一側面のプログラムは、入射光の輝度の同一方向の変化をイベントとして検出し、当該検出したイベントに基づくイベントデータを生成するイベントデータ生成部と、入射光の輝度に応じたデータである階調データを生成する階調データ生成部とを備える複数の画素が2次元行列状に配置される画素アレイ部を備える光検出装置を制御するコンピュータに、前記階調データの生成及び前記イベントの検出の期間の重複により発生する干渉の強度を特定し、特定された前記干渉の強度に応じた前記イベントデータの補正を行う処理を実行させるためのプログラムである。
【0009】
本技術の一側面の光検出装置、補正方法、並びにプログラムにおいては、入射光の輝度の同一方向の変化をイベントとして検出し、当該検出したイベントに基づくイベントデータを生成するイベントデータ生成部と、入射光の輝度に応じたデータである階調データを生成する階調データ生成部とが備えられた複数の画素が2次元行列状に配置される画素アレイ部が備えられる。階調データの生成及びイベントの検出の期間の重複により発生する干渉の強度が特定され、特定された干渉の強度に応じたイベントデータの補正が行われる。
【0010】
なお、光検出装置は、独立した装置であっても良いし、1つの装置を構成している内部ブロックであっても良い。
【0011】
なお、プログラムは、伝送媒体を介して伝送することにより、または、記録媒体に記録して、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の一実施の形態に係る光検出装置の構成例を示す図である。
【
図5】イベント信号生成部の構成例を示す図である。
【
図6】イベント信号生成部の構成例を示す回路図である。
【
図7】イベント信号生成部の構成例を示す回路図である。
【
図8】階調信号及びイベント信号の生成の一例を示す図である。
【
図11】重複行検出処理の処理手順の一例を示す図である。
【
図16】補正前と補正後のイベントデータについて説明するための図である。
【
図17】補正前と補正後のイベントデータについて説明するための図である。
【
図18】イベントデータの補正に係わる処理について説明するためのフローチャートである。
【
図19】第1の干渉強度特定処理について説明するためのフローチャートである。
【
図20】HOPB領域について説明するための図である。
【
図21】干渉強度の特定に係わる条件について説明するための図である。
【
図22】第2の干渉強度特定処理について説明するためのフローチャートである。
【
図23】干渉強度の特定に係わる条件について説明するための図である。
【
図24】第3の干渉強度特定処理について説明するためのフローチャートである。
【
図25】干渉強度LUT621の一例を示す図である。
【
図26】第1のイベントデータ補正処理について説明するためのフローチャートである。
【
図27】ノイズイベントの除去について説明するための図である。
【
図28】第1の補正ルールについて説明するための図である。
【
図29】第2の補正ルールについて説明するための図である。
【
図30】第3の補正ルールについて説明するための図である。
【
図31】第2のイベントデータ補正処理について説明するためのフローチャートである。
【
図32】干渉強度と補正率との関係を示す図である。
【
図34】車両制御システムの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図35】車外情報検出部及び撮像部の設置位置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本技術を実施するための形態(以下、実施の形態という)について説明する。
【0014】
<光検出装置の構成>
図1は、本技術を適用した光検出装置の一実施の形態に係る構成を示す図である。
【0015】
光検出装置1は、画素アレイ部10と、アクセス制御回路20と、イベント信号出力回路30と、階調信号出力回路40と、タイミング制御部50と、イベント信号処理部60と、階調信号処理部70と、重複予測行検出部80とを備える。また、光検出装置1は、タイムスタンプ生成部90と、画像処理部2とを更に備える。
【0016】
画素アレイ部10は、複数の画素100が2次元行列状に配置されて構成されるものである。ここで、画素100は、入射光の輝度に応じた信号である階調信号を生成するものである。また、画素100は、上述の入射光の輝度の同一方向の変化をイベントとして検出し、当該検出したイベントに基づく信号であるイベント信号の生成を更に行う。この画素100は、入射光の光電変換を行う光電変換部を備え、光電変換の結果に基づいて上述の階調信号及びイベント信号を生成する。
【0017】
光電変換部には、例えば、フォトダイオードを使用することができる。それぞれの画素100には、信号線11,12及び21が配線される。画素100は、信号線21により伝達される制御信号に制御されて階調信号及びイベント信号を生成する。また、画素100は、信号線12を介して生成した階調信号を出力し、信号線11を介して生成したイベント信号を出力する。なお、信号線21は、2次元行列の形状の行毎に配置され、1行に配置された複数の画素100に共通に配線される。信号線11及び12は、2次元行列の形状の列毎に配置され、1列に配置された複数の画素100に共通に配線される。
【0018】
なお、
図2において後述するように、画素100は、階調信号を生成する階調信号生成部110及びイベント信号を生成するイベント信号生成部120を備える。また、画素アレイ部10において、同じ行に配置された複数の画素100は、階調信号を同時に生成する。この階調信号の生成は、タイミングをずらしながら行毎に順次行われる。
【0019】
アクセス制御回路20は、上述の画素100の制御信号を出力するものである。同図のアクセス制御回路20は、信号線12を介して画素アレイ部10の2次元行列の行毎に制御信号を出力する。
【0020】
イベント信号出力回路30は、画素アレイ部10から出力される画素100毎のイベント信号の処理を行い、処理後のイベント信号を出力するものである。イベント信号出力回路30の処理には、例えば、画素100から出力されるアナログのイベント信号をデジタルのデータ信号に変換する処理が該当する。
【0021】
階調信号出力回路40は、画素100により生成される階調信号の処理を行い、処理後の階調信号を出力するものである。同図の階調信号出力回路40は、画素アレイ部10の1行に配置された複数の画素100からの階調信号の処理を同時に行う。階調信号出力回路40の処理には、例えば、画素100から出力されるアナログの階調信号をデジタルの信号に変換する処理が該当する。
【0022】
イベント信号処理部60は、イベント信号出力回路30からのイベント信号を処理するものである。このイベント信号出力回路30は、例えば、イベント信号を所定の形式のデータに変換する処理を行う。イベント信号出力回路30は、処理後のイベント信号をイベントデータとして外部の装置に出力する。
【0023】
階調信号処理部70は、階調信号出力回路40からの階調信号を処理するものである。この階調信号処理部70は、例えば、階調信号を所定の形式のデータに変換する処理を行う。階調信号処理部70は、処理後の階調信号を階調データとして出力する。
【0024】
タイミング制御部50は、画素100等の制御を制御するものである。このタイミング制御部50は、画素100等の制御信号を生成して出力することにより、画素100等を制御する。この制御には、階調信号生成部110に階調信号を生成させる制御、イベント信号生成部120にイベントを検出させる制御及びイベント信号生成部120に検出したイベントに基づくイベント信号を生成させる制御が該当する。
【0025】
これらの制御に使用する制御信号は、アクセス制御回路20を介して画素アレイ部10の行毎の画素100に出力される。また、タイミング制御部50は、イベント信号処理部60及び階調信号処理部70の制御信号も生成する。生成された制御信号は、アクセス制御回路20、イベント信号処理部60、階調信号処理部70及び重複予測行検出部80に対して出力される。なお、タイミング制御部50及びアクセス制御回路20は、行制御部の一例である。
【0026】
タイムスタンプ生成部90は、タイムスタンプを生成し、イベント信号処理部60に供給するものである。
【0027】
重複予測行検出部80は、階調信号の生成及びイベントの検出の期間の重複が予測される行である重複予測行を検出するものである。上述のように画素100は、階調信号生成部110及びイベント信号生成部120を備え、階調信号及びイベント信号を個別に生成することができる。このため、階調信号の生成期間及びイベントの検出の期間が重複する場合がある。この際、階調信号の生成及びイベントの検出において干渉を生じる。
【0028】
これは、階調信号生成部110及びイベント信号生成部120が浮遊容量等により結合するため、階調信号生成部110及びイベント信号生成部120の一方の制御信号の変化が他方の信号レベルに影響を及ぼすことにより生じる。この干渉を生じると、階調信号やイベント信号に誤差を生じる。そこで、上述の重複予測行を検出し、干渉の影響の低減の用に供する。同図の、重複予測行検出部80は、検出した重複予測行に基づいて干渉の発生を示す干渉発生フラグを生成し、イベント信号処理部60に対して出力する。
【0029】
画像処理部2は、階調信号のデータである階調データの処理を行うものである。なお、イベント信号のデータであるイベントデータの処理を行うイベントデータ処理部を備える構成を採ることもできる。
【0030】
<画素の構成>
図2は、画素の構成例を示す図である。同図は、画素100の構成例を表すブロック図である。画素100は、階調信号生成部110と、イベント信号生成部120とを備える。階調信号生成部110は、アクセス制御回路20からの信号線21を介して供給される制御信号に基づいて階調信号を生成する。生成された階調信号は、信号線12を介して階調信号出力回路40に伝達される。イベント信号生成部120は、アクセス制御回路20からの信号線21を介して供給される制御信号に基づいてイベント信号を生成する。生成されたイベント信号は、信号線11を介してイベント信号出力回路30に伝達される。
【0031】
<階調信号生成部の構成>
図3は、階調信号生成部の構成例を示す図である。同図は、階調信号生成部110の構成例を表す回路である。階調信号生成部110は、光電変換部201と、電荷保持部203と、MOSトランジスタ211乃至214とを備える。MOSトランジスタ211乃至214には、nチャネルMOSトランジスタを使用することができる。画素100に接続される信号線21は、信号線TRG、信号線RSTおよび信号線SELを備える。画素100には、電源を供給する電源線Vddが配線される。
【0032】
光電変換部201のアノードは接地され、カソードはMOSトランジスタ211のソースに接続される。MOSトランジスタ211のドレインは、MOSトランジスタ212のソース、MOSトランジスタ213のゲートおよび電荷保持部203の一端に接続される。電荷保持部203の他の一端は、接地される。MOSトランジスタ213のドレインは電源線Vddに接続され、ソースはMOSトランジスタ214のドレインに接続される。MOSトランジスタ214のソースは信号線12に接続される。信号線TRG、RST及びSELは、それぞれMOSトランジスタ211、212及び214のゲートに接続される。
【0033】
光電変換部201は、入射光の光電変換を行う素子である。この光電変換部201は、光電変換により電荷を生成し、保持する。
【0034】
MOSトランジスタ211は、光電変換部201に保持された電荷を電荷保持部203に転送する。MOSトランジスタ211は、信号線TRGにより伝達される制御信号により制御される。
【0035】
電荷保持部203は、電荷を保持する素子である。この電荷保持部203は、半導体基板に形成された半導体領域により構成することができる。
【0036】
MOSトランジスタ212は、電荷保持部203をリセットするものである。このMOSトランジスタ212は、信号線RSTにより伝達される制御信号により制御される。
【0037】
MOSトランジスタ213は、電荷保持部203に保持された電荷に応じた階調信号を生成する素子である。生成された階調信号は、ソース端子に出力される。
【0038】
MOSトランジスタ214は、MOSトランジスタ213により生成された階調信号を信号線12に対して出力する素子である。このMOSトランジスタ214は、信号線SELにより伝達される制御信号により制御される。
【0039】
<階調信号の生成>
図4は、階調信号の生成の一例を示す図である。同図は、階調信号生成部110における階調信号の生成の一例を表すタイミング図である。同図において、「SEL」は、信号線SELにより伝達される選択信号を表す。「RST」は、信号線RSTにより伝達されるリセット信号を表す。「TRG」は、信号線TRGにより伝達される転送信号を表す。これらの制御信号における2値化された波形の値「1」の部分がMOSトランジスタを導通させる信号であるオン信号を表す。なお、同図の破線は、0Vのレベルを表す。同図に表したように、階調信号は、シャッタ501、露光502及び読出し503により生成される。なお、初期状態において、選択信号、リセット信号及び転送信号は、それぞれ値「0」、「1」及び「0」である。
【0040】
シャッタ501は、電子シャッタに相当する期間であり、リセット信号及び転送信号が値「1」となり、MOSトランジスタ211及び212が導通する。これにより、光電変換部201及び電荷保持部203の電荷が排出されリセットされる。
【0041】
露光502は、転送信号が値「0」となり、光電変換部201の光電変換により生成される電荷が光電変換部201に蓄積される期間である。
【0042】
読出し503は、選択信号が値「1」、リセット信号が値「0」になり、MOSトランジスタ111により生成される階調信号が信号線12に出力される読出しが行われる期間である。この期間に転送信号が値「1」になり、光電変換部201の電荷が電荷保持部203に転送される。MOSトランジスタ111は、電荷保持部203の電荷に応じた階調信号を生成し、信号線12に出力する。
【0043】
このように、シャッタ501、露光502及び読出し503の3つの期間により階調信号が生成され、階調信号生成部110から出力される。前述のように、階調信号の生成は行毎に行われる。この際、シャッタ501、露光502及び読出し503が行毎にタイミングをずらしながら順次適用される。この様子については、
図9において後述する。
【0044】
<イベント信号生成部の構成>
図5は、イベント信号生成部の構成例を示す図である。同図は、イベント信号生成部120の構成例を表すブロック図である。同図のイベント信号生成部120は、光電変換部130と、電流電圧変換回路140と、微分回路150と、輝度変化検出部160と、出力部170とを備える。
【0045】
光電変換部130は、光電変換部201と同様に、入射光の光電変換を行うものである。この光電変換部130は、フォトダイオードにより構成することができる。
【0046】
電流電圧変換回路140は、光電変換部130からの光電流を電圧信号に変換するものである。この変換の際、電流電圧変換回路140は、電圧信号の対数圧縮を行う。変換後の電圧信号は、微分回路150に対して出力される。電流電圧変換回路140の構成の詳細については後述する。
【0047】
微分回路150は、電流電圧変換回路140から出力される電圧信号の変化分を抽出するとともに抽出した変化分を積算して電圧信号の変化量に応じた信号を生成するものである。この信号は、入射光の輝度の変化に応じた信号に相当する。この信号を光信号と称する。微分回路150は、生成した光信号を信号線121を介して輝度変化検出部160に出力する。また、微分回路150は、アクセス制御回路20から制御信号が入力される。この制御信号は、上述の電圧信号の変化量を検出する回路をリセットする信号である。微分回路150の構成の詳細については後述する。
【0048】
輝度変化検出部160は、入射光の輝度変化を検出するものである。同図の輝度変化検出部160は、微分回路150から出力される光信号の変化を閾値に基づいて検出する。すなわち、光信号の変化が閾値を超える場合に光信号の変化をイベントとして検出する。ここで、光信号が増加する方向のイベントをオンイベント、光信号が減少する方向のイベントをオフイベントと称する。輝度変化検出部160は、アクセス制御回路20から供給されるオンイベント検出信号及びオフイベント検出信号の電圧を閾値としてオンイベント及びオフイベントをそれぞれ検出する。この検出結果は、出力部170に出力される。輝度変化検出部160の構成の詳細については後述する。
【0049】
出力部170は、アクセス制御回路20からの制御信号に基づいて輝度変化検出部160により検出されたオンイベント及びオフイベントをイベント信号として出力するものである。
【0050】
<イベント信号生成部の回路構成>
図6及び
図7は、イベント信号生成部の構成例を示す回路図である。
図6は電流電圧変換回路140及び微分回路150の構成例を表す回路図である。なお、同図には、光電変換部202を更に記載した。
図7は、輝度変化検出部160及び出力部170の構成例を表す回路図である。
【0051】
同図の電流電圧変換回路140は、MOSトランジスタ215乃至217を備える。同図においてVddは、電源を供給する電源線Vddを表す。Vb1は、バイアス電圧を供給する信号線Vb1を表す。MOSトランジスタ215及び217には、nチャネルMOSトランジスタを使用することができる。MOSトランジスタ216には、pチャネルMOSトランジスタを使用することができる。
【0052】
光電変換部202のアノードは接地され、カソードはMOSトランジスタ215のソースおよびMOSトランジスタ217のゲートに接続される。MOSトランジスタ215及びMOSトランジスタ216のソースは電源線Vddに接続され、MOSトランジスタ216のゲートは信号線Vb1に接続される。MOSトランジスタ217のソースは接地され、ドレインはMOSトランジスタ215のゲート、MOSトランジスタ216のドレインおよび電流電圧変換回路140の出力信号線に接続される。この出力信号線には、微分回路150のキャパシタの一端が接続される。
【0053】
MOSトランジスタ215は、光電変換部202に電流を供給するMOSトランジスタである。光電変換部202には、入射光に応じたシンク電流(光電流)が流れる。MOSトランジスタ215は、このシンク電流を供給する。この際、MOSトランジスタ215のゲートは、後述するMOSトランジスタ217の出力電圧により駆動され、光電変換部202のシンク電流に等しいソース電流を出力する。MOSトランジスタのゲートソース間電圧Vgsがソース電流に応じた電圧となるため、MOSトランジスタ215のソース電圧は、光電変換部202の電流に応じた電圧となる。これにより、光電変換部202の光電流が電圧信号に変換される。
【0054】
MOSトランジスタ217は、MOSトランジスタ215のソース電圧を増幅するMOSトランジスタである。また、MOSトランジスタ216は、MOSトランジスタ217の定電流負荷を構成する。MOSトランジスタ217のドレインには、増幅された電圧信号が出力される。この電圧信号は、微分回路150に出力されるとともに、MOSトランジスタ215のゲートに帰還される。MOSトランジスタ215のVgsが閾値電圧以下の場合には、Vgsの変化に対してソース電流は指数関数状に変化する。このため、MOSトランジスタ215のゲートに帰還されるMOSトランジスタ217の出力電圧は、MOSトランジスタ215のソース電流と等しい光電変換部202の光電流が対数圧縮された電圧信号となる。
【0055】
<微分回路の構成>
同図の微分回路150は、キャパシタ204及び205と、MOSトランジスタ218及び219と、定電流回路231とを備える。MOSトランジスタ218及び219にはpチャネルMOSトランジスタを使用することができる。
【0056】
前述のようにキャパシタ204の一端には電流電圧変換回路140の出力が接続され、キャパシタ204の他の一端は、MOSトランジスタ218のゲート、MOSトランジスタ219のドレインおよびキャパシタ205の一端に接続される。キャパシタ205の他の一端は、MOSトランジスタ218のドレイン、MOSトランジスタ219のドレイン、定電流回路231のシンク側端子及び信号線121に接続される。MOSトランジスタ218のソースは電源線Vddに接続され、MOSトランジスタ219のゲートは信号線AZに接続される。定電流回路231のシンク側端子は、接地される。
【0057】
キャパシタ204は、結合キャパシタに相当する。このキャパシタ204は、電流電圧変換回路140の出力電圧のうちの直流分を阻止し、交流分のみを通過させる。また、電流電圧変換回路140の出力電圧の変化に基づく電流がキャパシタ204を介してMOSトランジスタ218のゲートに供給される。電流電圧変換回路140の出力電圧の交流分は、光電流の変化分に相当する。
【0058】
MOSトランジスタ218及び定電流回路231は、反転増幅回路を構成する。MOSトランジスタ218のゲートにはキャパシタ204を介して電流電圧変換回路140出力電圧の変化分が入力され、MOSトランジスタ218により反転増幅されてドレインに出力される。このため、キャパシタ205には電流電圧変換回路140の出力電圧の変化に基づく電流が流れ、キャパシタ205が充放電される。すなわち、電流電圧変換回路140の出力電圧の変化分が積算(積分)される。信号線121には、電流電圧変換回路140が出力する電圧信号の変化量に応じた信号である光信号が出力される。
【0059】
MOSトランジスタ219は、微分回路150をリセットするものである。このMOSトランジスタ219を導通させることにより、キャパシタ205の両端が短絡される。積算された電流電圧変換回路140の出力電圧の変化分が放電されてリセットされる。このリセットにより、微分回路150の出力電圧は、例えば、電源線Vddと接地線との中点の電圧になる。このリセットは、信号線AZにより伝達されるAZ制御信号により制御される。以下、微分回路150のリセットをAZ動作と称する。
【0060】
<輝度変化検出部の構成>
図7において、輝度変化検出部160は、MOSトランジスタ220乃至223を備える。MOSトランジスタ220及び222には、pチャネルMOSトランジスタを使用することができる。MOSトランジスタ221及び223には、nチャネルMOSトランジスタを使用することができる。輝度変化検出部160には、アクセス制御回路20からの信号線ON及びOFFが接続される。信号線ONは、オンイベント検出信号を伝達する信号線である。信号線OFFは、オフイベント検出信号を伝達する信号線である。
【0061】
信号線121は、MOSトランジスタ220のゲート及びMOSトランジスタ222のゲートに接続される。MOSトランジスタ220のソースは電源線Vddに接続され、ドレインはMOSトランジスタ221のドレイン及び出力部170のMOSトランジスタ225のゲートに接続される。MOSトランジスタ221のゲートは信号線ONに接続され、ソースは接地される。MOSトランジスタ222のソースは電源線Vddに接続され、ドレインはMOSトランジスタ223のドレイン及び出力部170のMOSトランジスタ227のゲートに接続される。MOSトランジスタ223のゲートは信号線OFFに接続され、ソースは接地される。
【0062】
MOSトランジスタ220及び221の回路は、比較回路を構成する。この比較回路の出力は、MOSトランジスタ221のシンク側のドレイン電流とMOSトランジスタ220のソース側のドレイン電流との大小関係に応じて変化する。微分回路150の出力電圧がオンイベント検出信号の電圧に基づく閾値、具体的には、電源電圧Vddから当該閾値電圧を減算した電圧より低い場合、MOSトランジスタ220のソース電流の方がMOSトランジスタ221のシンク電流より小さくなる。
【0063】
このため、出力電圧は、Lレベルとなる。一方、微分回路150の出力電圧が閾値電圧(電源電圧Vddから閾値電圧を減算した電圧)より高くなると、MOSトランジスタ221のシンク電流の方がMOSトランジスタ220のソース電流より小さくなる。このため、出力電圧は、Hレベルに移行する。
【0064】
このように、MOSトランジスタ220及び221からなる比較回路は、微分回路150の出力電圧とオンイベント検出信号の閾値電圧とを比較し、入射光の輝度が上昇する方向の変化であるオンイベントを検出する。なお、オンイベント検出信号が閾値電圧より高い電圧、例えば、電源線Vddの電源電圧の時には、比較器の出力が常にLレベルになる。すなわちオンイベント検出信号として閾値電圧を印加することにより、オンイベントの検出を行うことができる。
【0065】
MOSトランジスタ222及び223の回路も比較回路を構成する。微分回路150の出力電圧がオフイベント検出信号の電圧に基づく閾値、具体的には、電源電圧Vddから当該閾値電圧を減算した電圧より低い場合、出力電圧は、Lレベルとなる。一方、微分回路150の出力電圧が閾値電圧(電源電圧Vddから閾値電圧を減算した電圧)より高くなると、出力電圧は、Hレベルに移行する。
【0066】
オフイベント検出信号の閾値をオンイベント検出信号の閾値より低い電圧にすることにより、MOSトランジスタ222及び223の比較回路は、入射光の輝度が下降する方向の変化であるオフイベントを検出する。なお、オフイベント検出信号が閾値電圧より低い電圧、例えば、接地電位の時には、比較器の出力が常にHレベルになる。すなわちオフイベント検出信号として閾値電圧を印加することにより、オフイベントの検出を行うことができる。
【0067】
<出力部の構成>
出力部170は、MOSトランジスタ224乃至227を備える。MOSトランジスタ224乃至227には、nチャネルMOSトランジスタを使用することができる。MOSトランジスタ224のドレインは信号線11の一方に接続され、MOSトランジスタ226のドレインには信号線11の他方に接続される。MOSトランジスタ224及び226のゲートは、信号線OUTに共通に接続される。MOSトランジスタ224のソースは、MOSトランジスタ225のドレインに接続され、MOSトランジスタ225のソースは接地される。MOSトランジスタ226のソースは、MOSトランジスタ227のドレインに接続され、MOSトランジスタ227のソースは接地される。
【0068】
信号線OUTにイベント読出し信号が入力されるとMOSトランジスタ224及び226が導通する。これにより、MOSトランジスタ225及び227のドレイン電圧が信号線11に出力される。MOSトランジスタ225及び227のゲートには、輝度変化検出部160のオンイベント検出信号及びオフイベント検出信号が印加されるため、信号線11にオンイベント信号及びオフイベント信号を含むイベント信号が出力される。
【0069】
このように、階調信号生成部110及びイベント信号生成部120において階調信号及びイベント信号がそれぞれ生成される。階調信号の生成の際には、タイミング制御部50は、階調信号を生成させる行のアドレス信号である階調用アドレス信号を生成し、アクセス制御回路20に出力する。
【0070】
アクセス制御回路20は、階調用アドレス信号に基づく行の画素100に選択信号、リセット信号及び転送信号を出力する。一方、イベント信号を生成する際には、タイミング制御部50は、オンイベント検出信号、オフイベント検出信号、AZ制御信号、出力信号及びイベント信号を読み出す際のアドレス信号であるEVS(Event-based Vision Sensor)用アドレス信号をアクセス制御回路20に出力する。アクセス制御回路20は、画素アレイ部10の全ての画素100にオンイベント検出信号、オフイベント検出信号、AZ制御信号を順次出力する。その後、出力信号を画素アレイ部10の行毎に順次出力し、イベント信号の出力(読出し)を行う。この様子を、
図8を参照して説明する。
【0071】
なお、
図2の画素100は、階調信号生成部110及びイベント信号生成部120が光電変換部をそれぞれ備える場合の例を表したものである。これに対し、階調信号生成部110及びイベント信号生成部120において1つの光電変換部を共有する形式に画素100を構成することもできる。
【0072】
<階調信号及びイベント信号の生成>
図8は、階調信号とイベント信号の生成の一例を示す図である。同図は、階調信号及びイベント信号の生成の一例を表すタイミング図である。同図の横軸は時間を表し、縦軸は行アドレスを表す。なお、同図は、画素アレイ部10の全ての行の階調信号を生成する期間であるフレーム期間の階調信号及び当該期間にイベント信号の生成を行う場合の例を表したものである。
【0073】
同図の矩形は
図4において説明したシャッタ501、露光502及び読出し503の期間を表す。同図に表したように、シャッタ501、露光502及び読出し503が行毎にタイミングをずらしながら順次実行され、1フレームの階調信号が生成される。このような階調信号の生成方法は、ローリングシャッタ方式と称される。
【0074】
同図の実線は、オンイベント検出(同図の「ON」)、オフイベント検出(同図の「OFF」)、AZ動作(同図の「AZ」)及びイベント信号出力(読出し、同図の「RD」)のタイミングを表す。同図に表したように、オンイベント検出、オフイベント検出及びAZ動作は、全ての行の画素100に対して同時に行われる。
【0075】
このため、階調信号を生成する行とオンイベント検出、オフイベント検出及びAZ動作が行われる行に重複を生じる。このような行の画素100においては、前述の干渉を生じる。そこで、階調信号の生成及びイベントの検出の期間(例えば、オンイベント検出及びオフイベント検出からAZ動作までの期間)の重複が予測される行である重複予測行を検出する。同図には、重複予測行500を記載した。
【0076】
<重複予測行検出部の構成>
図9は、重複予測行検出部の構成例を示す図である。同図は、重複予測行検出部80の構成例を表すブロック図である。同図の重複予測行検出部80は、重複行予測部81と、記憶部(♯1)82及び記憶部(♯2)83を備える。
【0077】
重複行予測部81は、タイミング制御部50からの制御信号に基づいて、重複予測行を検出するものである。重複行予測部81には、階調用アドレス信号、オンイベント検出信号、オフイベント検出信号、AZ制御信号、出力信号及びEVS用アドレス信号が入力される。重複行予測部81は、これらの制御信号から重複予測行を検出する。例えば、オンイベント検出信号、オフイベント検出信号及びAZ制御信号が入力される際の階調用アドレス信号から重複予測行を検出することができる。この場合には、階調信号及びイベント信号の何れかに干渉による誤差を生じることとなる。
【0078】
重複行予測部81は、階調用アドレス信号及びEVS用アドレス信号から重複予測行を検出することもできる。この場合は、イベント信号等を生成する前に重複予測行を検出することができるため、重複予測行の階調信号の生成やイベント信号の生成を回避することにより、干渉の影響を低減することができる。
【0079】
重複行予測部81は、オンイベント検出信号及びオフイベント検出信号と階調用アドレス信号から検出した重複予測行の情報を記憶部(♯1)82に保存する。重複行予測部81は、検出した重複予測行の情報に基づく干渉発生フラグを生成し、イベント信号処理部60に出力する。
【0080】
重複行予測部81は、AZ制御信号及び階調用アドレス信号から検出した重複予測行の情報を記憶部(♯2)83に保存する。AZ動作が干渉の影響を受ける場合には、次のフレーム期間のイベント信号に影響が出る。そこで、この場合の重複予測行の情報を記憶部(♯1)82とは異なる記憶部(♯2)83に保持させる。次のフレーム期間に移行した際に、重複行予測部81は、記憶部(♯2)83に保存した重複予測行の情報に基づく干渉発生フラグを生成し、イベント信号処理部60に出力する。
【0081】
<イベントデータ>
図10は、イベントデータの一例を示す図である。同図は、イベント信号処理部60が生成するイベントデータの一例を表す図である。同図は、1フレーム期間のイベントデータのフレーム510を表したものである。同図の「FS」は、フレームの開始を示すブロックである。「FE」は、フレームの終了を示すブロックである。「PH」は、パケットのヘッダを示すブロックである。「PF」は、パケットのフッダを示すブロックである。「EBD」は、埋込みデータを示すブロックである。「Event」は、行毎のイベント信号が保持されるブロックである。この「Event」は、「PH」及び「PF」の間に配置される。なお、同図の領域551は、重複予測行500に対応する行のデータの領域を表す。
【0082】
同図において領域551に対応する「Event」には、干渉の影響を受けたイベント信号が格納される。そこで、当該「Event」の「PH」に干渉発生フラグを付加する。同図の太線の矩形は、干渉発生フラグが付加された「PH」を表す。これにより、干渉の影響を受けたデータを識別することができる。当該イベントデータを使用する装置において識別されたデータを除去することができる。イベント信号処理部60は、例えば、重複予測行検出部80から出力される干渉発生フラグに基づく行の「PH」にマスク情報を付加する。なお、干渉発生フラグは、「PF」の側に配置することもできる。なお、干渉発生フラグは、重複予測行を示す情報の一例である。
【0083】
<重複行検出処理>
図11は、重複行検出処理の処理手順の一例を示す図である。まず、重複行予測部81は、フレーム期間の開始を表す垂直同期信号が入力されたかを判断する(ステップS100)。垂直同期信号が入力されない場合には(ステップS110,No)、重複行予測部81はステップS103の処理に移行する。一方、垂直同期信号が入力された場合には(ステップS100,Yes)、重複行予測部81は、記憶部(♯1)82を初期化する(ステップS101)。次に、重複行予測部81は、記憶部(♯2)の情報を記憶部(♯1)に転送し(ステップS102)、ステップS103の処理に移行する。ステップS103において、重複行予測部81は、記憶部(♯2)83を初期化する(ステップS103)。
【0084】
次に、重複行予測部81は、イベント検出中かを判断する(ステップS104)。イベント検出中の場合には(ステップS104,Yes)、重複行予測部81は、階調信号の生成する行を記憶部(♯1)82に保存し(ステップS105)、ステップS106の処理に移行する。一方、イベント検出中でない場合には(ステップS104,No)、重複行予測部81は、AZ動作中かを判断する(ステップS107)。AZ動作中でない場合には(ステップS107、No)、重複行予測部81は、ステップS106の処理に移行する。一方AZ動作中の場合には(ステップS107,Yes)、重複行予測部81は、階調信号の生成する行を記憶部(♯2)82に保存し(ステップS108)、ステップS106の処理に移行する。
【0085】
ステップS106において、重複行予測部81は、イベント信号読出し中かを判断する(ステップS106)。イベント信号読出し中でない場合には(ステップS106,No)、重複行予測部81は、処理を終了する。一方、イベント信号読出し中の場合には(ステップS106、Yes)、重複行予測部81は、記憶部(♯1)82に行のデータが保存されているかを判断する(ステップS109)。記憶部(♯1)82に行のデータが保存されていない場合には(ステップS109,No)、重複行予測部81は、処理を終了する。
【0086】
一方、記憶部(♯1)82に行のデータが保存されている場合には(ステップS109,Yes)、重複行予測部81は、干渉発生フラグをイベント信号処理部60に出力する(ステップS110)。次に、イベント信号処理部60は、干渉情報を出力データに付加する(ステップS111)。
【0087】
このように、光検出装置1は、階調信号の生成及びイベントの検出の期間の重複が予測される行である重複予測行を検出し、当該行のイベント信号を含むイベントデータに干渉の発生を示す情報を付加する。これにより、干渉の影響を受けたイベント信号の使用を回避することができ、干渉の影響を低減することができる。
【0088】
<補正に係わる構成>
上記した処理により、干渉の影響を受けた可能性のあるイベントデータを検出し、干渉発生フラグを出力することができる。例えば、干渉発生フラグが出力されたイベントデータを補正することで、干渉の影響を低減し、イベントデータの精度を向上させることができる。
【0089】
干渉発生フラグが出力されたイベントデータを一律に補正することも考えられる。この場合、干渉強度が強いイベントデータと、干渉強度が弱いイベントデータとに対して同一の補正が行われることになる。干渉強度が強いイベントデータに対しては、補正が弱く、干渉強度が弱いイベントデータに対して補正が強く、適切に補正が行われない可能性がある。そこで、干渉強度に応じた補正が行われることで、適切な補正が行えるようにすることについて、説明を加える。
【0090】
図12は、干渉強度に応じた補正を行う補正部601の構成例を示す図である。
図12に示した補正部601は、イベントデータ取得部611、干渉補正部621、および干渉強度特定部613を含む構成とされている。
図12に示した補正部601は、センサ内、例えば光検出装置1(
図1)内に設けられる。補正部601は、イベント信号処理部60(
図1)内に設けたり、イベント信号処理部60の外部に設けられ、イベント信号処理部60からのイベントデータを処理する位置に設けられたりする構成とすることができる。
【0091】
補正部601のイベントデータ取得部611は、イベントデータを取得し、取得したイベントデータを、干渉補正部612と干渉強度特定部613に供給する。干渉補正部612は、干渉強度特定部613から供給される干渉強度に関する情報に基づき、イベントデータを補正し、補正したイベントデータを、例えば後段のアプリケーション602に出力する。
【0092】
図13は、干渉強度に応じた補正を行う補正部601の他の構成例を示す図である。補正部601は、アプリケーション(アプリケーションプロセッサ)602に設けられている構成としても良い。この場合、例えば、イベント信号処理部60(
図1)から出力されるイベントデータを取得し、処理するアプリケーション602内に干渉補正部612と干渉強度特定部613の両方またはどちらか一方が設けられる。
【0093】
図14は、干渉強度に応じた補正を行う補正部601のさらに他の構成例を示す図である。
図14に示した補正部601は、干渉補正部612にイベントデータと干渉発生フラグが入力される点が、
図13に示した補正部601と異なり、他の点は同様の構成である。
図14に示した補正部601が、例えば、光検出装置1(
図1)内に設けられているような場合、イベントデータ取得611を備える構成とすることもできる。
図14に示した補正部601は、センサ内に設けられていても良いし、センサ外のアプリケーションプロセッサ602内に設けられていても良い。
【0094】
図15は、干渉強度に応じた補正を行う補正部601のさらに他の構成例を示す図である。
図15に示した補正部601は、干渉補正部612にイベントデータと干渉発生フラグが入力される点は、
図14に示した補正部601と同様であるが、干渉強度LTU(Look Up Table)321を備える点で異なる。
【0095】
図15に示した補正部601は、センサ内に設けられていても良いし、センサ外のアプリケーションプロセッサ602内に設けられていても良い。干渉強度LUT621は、後述するように、1フレーム内の所定の行と干渉強度とが関連付けられたテーブルであり、干渉補正部612は、干渉強度LUT621を参照し、干渉強度に応じた補正を行う。
【0096】
干渉強度LUT621を設けた構成の場合、干渉発生フラグを入力しない構成としたり、干渉発生フラグを生成しない構成とし、干渉発生フラグの生成に係わる部分を省略したりした構成とすることもできる。換言すれば、干渉強度LUT621に、干渉発生フラグ、すなわち干渉が発生する画素に関する情報を含ませることができ、そのようにすることで、干渉発生フラグに関する処理や機能を省略することができる。
【0097】
<補正前と補正後のイベントデータについて>
図16を参照し、補正前のイベントデータと補正後のイベントデータについて説明を加える。
図16の上段は、補正前の所定の行におけるイベントデータの一例を示し、
図16の下段は、補正後の所定の行におけるイベントデータの一例を示す。
【0098】
図16において、1つの四角形は、1画素(1つのイベント信号生成部120)を表す。Pは、オンイベントのイベントデータであることを示し、イベントデータとしては“01”で表されるとする。Nは、オフイベントのイベントデータであることを示し、イベントデータとしては“10”で表されるとする。空欄は、イベント無しであることを示し、イベントデータとしては“00”で表されるとする。図の上部に示した1から20の番号は、説明のために付した番号である。
【0099】
画素1は、イベント無しであり、イベントデータは“00”である。画素2は、オンイベントあり、イベントデータは“01”である。画素3は、イベント無しであり、イベントデータは“00”である。画素4は、オフイベントあり、イベントデータは“10”である。画素5は、イベント無しであり、イベントデータは“00”である。画素6、画素7は、オンイベントあり、イベントデータは“01”である。
【0100】
画素8乃至11は、イベント無しであり、イベントデータは“00”である。画素12乃至14は、オフイベントあり、イベントデータは“10”である。画素15,16は、イベント無しであり、イベントデータは“00”である。画素17は、オンイベントあり、イベントデータは“01”である。画素18乃至20は、イベント無しであり、イベントデータは“00”である。
【0101】
このようなイベントデータを、補正部601が取得した場合、干渉補正部612は、詳細は後述するが、干渉強度に応じた補正を行うことで、
図16の下段に示したような補正後のイベントデータを出力する。補正によりイベントデータが置き換わった箇所について説明を加える。
【0102】
画素2、画素7、および画素17は、オンイベントのイベントデータであったが、補正によりイベント無しの“00”のデータに補正される。画素12、画素13は、オフイベントのイベントデータであったが、補正によりイベント無しの“00”のデータに補正される。このように、オンイベントまたはオフイベントが発生しているとされた画素に対して補正がなされることで、イベント無しの画素に補正される場合がある。
【0103】
画素9は、イベント無しのイベントデータであったが、補正によりオンイベントのイベントデータ“01”に補正される。画素10は、イベント無しのイベントデータであったが、補正によりオフイベントのイベントデータ“10”のデータに補正される。このように、イベント無しとして検出された画素に対して補正がなされることで、オンイベントまたはオフイベントが発生した画素に補正される場合がある。
【0104】
図16の下段に示したようなデータ列が、補正されたイベントデータとして、後段に出力される。この場合、1つの画素に対する補正前のイベントデータは、2ビットで表され、補正後のイベントデータも2ビットで表される例である。
図17に示すように、補正前の2ビットのイベントデータが、補正により4ビットのイベントデータに変換されて後段に出力されるようにしても良い。
【0105】
図17の上段は、
図16の上段に示した補正前のイベントデータと同一であり、干渉補正部612に入力される補正前のイベントデータを表す。画素1、画素3、画素5、画素8、画素11、画素15、画素16、画素18乃至20は、イベント無しのイベントデータであり、補正後もイベント無しのイベントデータである。
【0106】
これらの画素は、補正前後で同一のイベントデータであり、補正する必要の無いイベントデータとして扱われた画素、または補正した結果、同一のイベントデータとなった画素である。このような場合、補正前の2ビットのイベントデータ“00”に、補正後の2ビットのイベントデータ“00”が連結され、換言すれば、補正前のイベントデータを2回繰り返す4ビットのイベントデータ“0000”に変換され、この変換後のイベントデータが、補正されたイベントデータとして後段に出力される。
【0107】
画素4,画素14は、オフイベントのイベントデータであり、補正後もオフイベントのイベントデータである。これらの画素は、補正前後で同一のイベントデータであり、補正する必要の無いイベントデータとして扱われた画素、または補正した結果、同一のイベントデータとなった画素である。
【0108】
このような場合、補正前の2ビットのイベントデータ“10”に、補正後の2ビットのイベントデータ“10”が連結され、換言すれば、補正前のイベントデータを2回繰り返す4ビットのイベントデータ“1010”に変換され、この変換後のイベントデータが、補正されたイベントデータとして後段に出力される。
【0109】
画素6は、オンイベントのイベントデータであり、補正後もオンイベントのイベントデータである。この画素は、補正前後で同一のイベントデータであり、補正する必要の無いイベントデータとして扱われた画素、または補正した結果、同一のイベントデータとなった画素である。
【0110】
このような場合、補正前の2ビットのイベントデータ“01”に、補正後の2ビットのイベントデータ“01”が連結され、換言すれば、補正前のイベントデータを2回繰り返す4ビットのイベントデータ“0101”に変換され、この変換後のイベントデータが、補正されたイベントデータとして後段に出力される。
【0111】
画素2、画素7、画素17は、オンイベントのイベントデータであるが、補正後にはイベント無しのイベントデータに補正された画素である。このような場合、補正前の2ビットのイベントデータ“01”に、補正後の2ビットのイベントデータ“00”が連結され、4ビットのイベントデータ“0100”に変換され、この変換後のイベントデータが、補正されたイベントデータとして後段に出力される。
【0112】
画素12、画素13は、オフイベントのイベントデータであるが、補正後にはイベント無しのイベントデータに補正された画素である。このような場合、補正前の2ビットのイベントデータ“10”に、補正後の2ビットのイベントデータ“00”が連結され、4ビットのイベントデータ“1000”に変換され、この変換後のイベントデータが、補正されたイベントデータとして後段に出力される。
【0113】
画素9は、イベント無しのイベントデータであるが、補正後にはオンイベントのイベントデータに補正された画素である。このような場合、補正前の2ビットのイベントデータ“00”に、補正後の2ビットのイベントデータ“01”が連結され、4ビットのイベントデータ“0001”に変換され、この変換後のイベントデータが、補正されたイベントデータとして後段に出力される。
【0114】
画素10は、イベント無しのイベントデータであるが、補正後にはオフイベントのイベントデータに補正された画素である。このような場合、補正前の2ビットのイベントデータ“00”に、補正後の2ビットのイベントデータ“10”が連結され、4ビットのイベントデータ“0010”に変換され、この変換後のイベントデータが、補正されたイベントデータとして後段に出力される。
【0115】
図17の下段に示したようなデータ列が、補正されたイベントデータとして、後段に出力される。例えば、後段がアプリケーション602であるような場合、アプリケーション602は、補正後の4ビットのイベントデータを用いて処理を行うようにしても良いし、後半の2ビット(補正処理後に追加された2ビット)のイベントデータを用いて処理を行うようにしても良い。
【0116】
アプリケーション602は、補正後の4ビットのイベントデータを用いるようにした場合、前半の2ビット(補正前のイベントデータ)と後半の2ビット(補正後のイベントデータ)を比較し、同一の場合、すなわち補正が行われなかった場合と、異なる場合、すなわち補正が行われた場合とで、異なる処理を実行するように構成することもできる。
【0117】
<補正部の処理>
図18のフローチャートを参照し、補正部601の処理について説明を加える。ここでは、
図12に示した構成の場合の補正部601の処理を例に挙げて説明を続けるが、基本的な処理は、
図13乃至15のいずれに示した補正部601においても同様に行うことができる。
【0118】
ステップS201において、イベントデータ取得部611はイベントデータを取得する。
【0119】
ステップS202において、干渉強度特定部613は、干渉強度を特定する。ステップS202における処理については、
図19乃至25を参照して後述する。
【0120】
ステップS203において、干渉補正部612は、イベントデータに対して干渉強度に応じた補正を施し、補正後のイベントデータを生成する。ステップS203における処理については、
図26乃至32を参照して後述する。
【0121】
ステップS204において、補正後のイベントデータが、後段の処理部に対して出力される。
【0122】
<第1の干渉強度特定処理について>
図19のフローチャートを参照し、ステップS202における干渉強度特定処理について説明する。
図19に示したフローチャートに基づく処理は、
図20に示すように、オプティカルブラック(Optical Black)領域を有する画素アレイ部10を備える光検出装置1において行われる干渉強度特定処理(第1の干渉強度特定処理とする)である。
【0123】
ステップS221において、注目行のHOPB(Horizontal Optical black)領域のイベント数がカウントされる。
図20を参照し、HOPB領域について説明を加える。画素アレイ部10の画素領域は、実際に光を受光し光電変換によって生成された信号電荷を増幅してカラム信号処理回路に読み出す有効画素領域652(図中Visible領域)と、黒レベルの基準になる光学的黒を出力するためのHOPB領域651とを有する構成されている。
【0124】
図20では、垂直方向(図中縦方向)のオプティカルブラック領域が設けられている例を示し、その領域をHOPB領域651とする。オプティカルブラック領域は、水平方向にも設けられていても良い。
図20では、図中、左右にそれぞれHOPB領域651が設けられている例を示したが、左側のみ、または右側のみHOPB領域651が設けられている構成とすることもできる。
【0125】
ステップS221(
図19)においては、HOPB領域651内の注目行において発生しているイベントがカウントされる。HOPB領域651は、遮光された領域であり、照度の変化がなく、イベントが発生しないことが期待されている領域である。干渉が発生しているような場合、このような領域においてもイベントが発生する可能性がある。干渉が強く発生していると、HOPB領域651内で発生するイベント数も多くなる。このことを利用し、干渉強度が検出される。
【0126】
ステップS221においては、干渉強度を測定したい行(注目行)のHOPB領域651内で発生しているイベントがカウントされる。ステップS222において、カウントされたイベント数が、干渉強度に変換される。例えば、
図21に示すようなテーブルが備えられ、そのテーブルが参照されて、イベント数から干渉強度に変換される。
【0127】
図21を参照するに、テーブル671は、カウントしたイベント数と干渉強度が関連付けられたテーブルである。
図21に示したテーブル671は、例えば、HOPB領域651の1行におけるイベントデータ数が500である場合を示す。これは一例であり、HOPB領域651におけるイベントデータ数が500以外の数値に設定されていても良いし、以下に説明する各数値が、以下に示す値以外であってももちろん良い。
【0128】
カウントしたイベント数が“10以下”である場合、干渉強度は、“弱”に変換される。カウントしたイベント数が“11以上、かつ100以下”である場合、干渉強度は、“中”に変換される。カウントしたイベント数が“101以上”である場合、干渉強度は、“強”に変換される。
【0129】
なおテーブル671を設け、参照することでイベント数から干渉強度に変換される構成以外の構成、例えば所定の演算式を用いてイベント数から干渉強度が算出されるような構成であっても良い。
【0130】
イベント数は、オンイベントとオフイベントを別々にカウントするようにしても良いし、オンイベントとオフイベントを区別せずにまとめてカウントするようにしても良い。
【0131】
オンイベントとオフイベントを別々にカウントし、オンイベントの干渉強度とオフイベントの干渉強度を別々に推定するようにしても良いし、オンイベントとオフイベントを区別せずにまとめてカウントし、それらをまとめてカウントされたカウント値を用いて干渉強度が推定されるようにしても良い。
【0132】
干渉強度として、ここでは、強、中、弱の3つに分類される場合、換言すれば離散的に分類される例を示したが、例えば干渉強度=0.8といった連続値として推定され、出力されるようにしても良い。
【0133】
ステップS223において、ステップS222においてイベント数から変換された干渉強度が、干渉強度特定部613から干渉補正部612に対して出力される。
【0134】
このように、画素アレイ部10に、遮光された領域が設けられているような場合、この遮光された領域内から得られるイベントデータを用いて、干渉強度が特定されるように干渉強度特定部613を構成することができる。
【0135】
<第2の干渉強度特定処理について>
図22のフローチャートを参照し、ステップS202における干渉強度特定処理(第2の干渉強度特定処理とする)について説明する。
【0136】
図19を参照して説明した第1の干渉強度特定処理は、画素アレイ部10のHOPB領域651を用いてイベント数をカウントして干渉強度を特定する処理を例に挙げて説明した。
図22を参照して説明する第2の干渉強度特定処理は、画素アレイ部10の有効画素領域652(
図20)を用いてイベント数をカウントして干渉強度を特定する処理を例に挙げて説明する。
【0137】
ステップS241において、有効画素領域652内の注目行で発生しているイベント数がカウントされる。カウントされたイベント数の値を、値aとする。
【0138】
ステップS242において、注目行の上下の非干渉行のイベント数の値が大きい方が取得される。取得された値を、値bとする。ステップS242においては、有効画素領域652内の注目行よりも上側にあり、干渉が発生していないと判断されている行から得られたイベント数と、有効画素領域652内の注目行よりも下側にあり、干渉が発生していないと判断されている行から得られたイベント数が、それぞれ取得され、比較され、大きい値の方が値bとして取得される。
【0139】
なおここでは、注目行の上下の非干渉行のイベント数の値が大きい方が取得され、大きい値の方が用いられる場合を例に挙げて説明を続けるが、他の値が用いられるようにしても良い。例えば、注目行の上下の非干渉行のイベント数の平均値が算出され、その平均値が用いられるようにしても良い。
【0140】
注目行の上下の非干渉行のイベント数が用いられる場合を例に挙げて説明するが、注目行の上側の非干渉行のイベント数、または、注目行の下側の非干渉行のイベント数のどちらか一方が用いられるように構成することもできる。
【0141】
有効画素領域652においては、通常のイベントも存在するため、換言すれば、HOPB領域651と異なり、干渉が発生していない正常な状態において発生しているイベントも存在するため、HOPB領域651と同じくイベント数をカウントするだけでは、干渉の強度を推定することはできない。そこで、注目行のイベント数を、注目行の上下の非干渉行のイベント数、換言すれば、正常にイベントを検出している行におけるイベント数と比較することで、注目行の干渉強度を特定する。注目行のイベント数が、非干渉行のイベント数と比較して、どれだけ多いかにより干渉強度が推定される。
【0142】
このような比較を行うために、ステップS242において、注目行の上下の非干渉行のイベント数の値が大きい方の値bが取得される。上下の行が非干渉行であるか否かは、例えば干渉発生フラグを用いて判定することができる。例えば、注目行よりも上に位置し、干渉発生フラグが立っていない行を、上の非干渉行とし、注目行よりも下に位置し、干渉発生フラグが立っていない行を、下の非干渉行として処理が行われる。
【0143】
非干渉行は、干渉発生フラグが立ってない行となるため、必ずしも注目行に隣接する行となるとは限らない。例えば、注目行のすぐ上の行に干渉発生フラグがたっている場合、その行を避け、さらに上の行に干渉発生フラグが立っていないかが判定され、干渉発生フラグが立っていたらさらに上の行に干渉発生フラグが立っているか否かが判定されるといった処理が、干渉発生フラグが立っていないと判定される行になるまで繰り返される。
【0144】
ステップS243において、値aと値bを比較することで、干渉強度が特定される。例えば、
図23に示した条件を設け、その条件に合う干渉強度に特定されるようにすることができる。
図23に示した条件は、1行のイベントデータ数が1920の場合における条件の一例を示す。1行のイベントデータ数は、1920に限定される記載ではなく、1920以外のイベントデータ数であっても良い。またイベントデータ数に応じた条件が適宜設定される。
図23に示した条件における数値、例えば、1.5,10,200といった数値は、一例であり、限定を示す記載ではなく、適宜イベントデータ数などに応じた適切な値を設定することができる。
【0145】
図23を参照するに、条件として“値a≦1.5×値b+10”という条件に当てはまる場合、干渉強度は“弱”と推定される。条件として“値a≧1.5×値b+200”という条件に当てはまる場合、干渉強度は“強”と推定される。条件として“上記2条件を満たさない”という条件に当てはまる場合、干渉強度は“中”と推定される。
【0146】
イベント数は、オンイベントとオフイベントを別々にカウントするようにしても良いし、オンイベントとオフイベントを区別せずにまとめてカウントするようにしても良い。
【0147】
オンイベントとオフイベントを別々にカウントし、オンイベントの干渉強度とオフイベントの干渉強度を別々に推定するようにしても良いし、オンイベントとオフイベントを区別せずにまとめてカウントし、そのまとめてカウントされたカウント数を用いて干渉強度が推定されるようにしても良い。
【0148】
干渉強度として、ここでは、強、中、弱の3つに分類される場合、換言すれば離散的に分類される例を示したが、例えば干渉強度=0.8といった連続値として推定され、出力されるようにしても良い。この場合、上記した条件を変更、例えば値aと値bを代入する所定の演算式により干渉強度が求められるようにすることができる。
【0149】
このように、画素アレイ部10の有効画素領域652内から得られるイベントデータを用いて、干渉強度が特定されるように構成することができる。
【0150】
<第3の干渉強度特定処理について>
図24のフローチャートを参照し、ステップS202における干渉強度特定処理(第3の干渉強度特定処理とする)について説明する。
【0151】
第3の干渉強度特定処理は、
図15に示したように補正部601が干渉強度LUT621を備える構成の場合に行われる。ステップS261において、イベントのタイムスタンプと注目行がセットされる。タイムスタンプは、フレーム番号と同等に扱うことができる情報であり、フレームを特定するための情報(どの時点で取得されたフレームであるかを特定するための情報)である。ステップS261においては、処理対象とするフレームと、そのフレームにおいて干渉強度を特定する行(注目行)が設定される。
【0152】
ステップS262において、タイムスタンプと注目行に対応する干渉強度が、干渉強度LUT621から取得される。
図25は、干渉強度LUT621の一例を示す図である。干渉強度LUT621は、タイムスタンプ、注目行、干渉強度が関連付けられたテーブルである。
【0153】
干渉強度LUT621は、タイムスタンプ、注目行、干渉強度が関連付けられたテーブルである。
図25に示した干渉強度LUT621においては、例えば、タイムスタンプとして“00000000”、注目行として“0”、干渉強度として“弱”が関連付けられ、タイムスタンプとして“00000000”、注目行として“1”、干渉強度として“中”が関連付けられている。また
図25に示した干渉強度LUT621においては、例えば、タイムスタンプとして“00000015”、注目行として“100”、干渉強度として“強”が関連付けられている。
【0154】
このような干渉強度LUT621は、例えば、干渉強度がどのように推移するかのパターンが得られる場合に作成され、補正部601に備えられる。干渉の出やすいフレームや、出やすい行などは、デバイスに依存する可能性があり、デバイスにより、同じようなパターンがあるよう場合に、干渉強度LUT621を作成することができる。
【0155】
干渉強度の推移に周期性がある場合、1周期分のLUTが干渉強度LUT621に格納されていれば良い。干渉強度LUT621は、干渉発生フラグを取得することで学習し、更新されるような仕組みを設けても良い。
【0156】
干渉強度LUT621のテーブルは、オンイベントとオフイベントの2種類のイベントに対して、それぞれのテーブルが設けられている構成とすることができる。オンイベントとオフイベントを区別せずにまとめたテーブルとして設けられているようにすることもできる。
【0157】
干渉強度として、ここでは、強、中、弱の3つに分類される場合、換言すれば離散的に分類される例を示したが、例えば干渉強度=0.8といった連続値として推定され、連続値の値が干渉強度LUT621に記載されているようにしても良い。
【0158】
ステップS262においては、ステップS261において処理対象のフレームとして設定されたタイムスタンプと注目行に対応する干渉強度が、干渉強度LUT621から読み出される。ステップS263において、干渉強度LUT621から読み出された干渉強度が、干渉強度LUT621から干渉補正部612に対して出力される。
【0159】
このように、干渉強度の出方に特定のパターンがあるような場合、干渉強度LUT621を予め作成し、その干渉強度LUT621が参照されて、干渉強度が特定されるように構成することができる。
【0160】
図18のフローチャートに戻り、ステップS202において、干渉強度特定処理が実行される。干渉強度特定処理は上記した第1乃至第3の干渉強度特定処理のうちのいずれか1つが実行、または組み合わせて実行されることで行われる。干渉強度特定処理が実行されることで、干渉強度が特定されると、ステップS203において、イベントデータの補正処理が実行される。
【0161】
<第1のイベントデータの補正処理>
ステップS203において実行されるイベントデータの補正処理について説明を加える。
図26は、第1のイベントデータの補正処理について説明するためのフローチャートである。
【0162】
ステップS301において、干渉補正部612は、イベントデータ取得部611から出力される注目行(処理対象とされた行)のイベントデータを取得する。ステップS302において、干渉補正部612は、干渉強度特定部613により特定された注目行の干渉強度を取得する。
【0163】
ここでは、干渉強度特定部613において、干渉強度として、弱、中、強の3種類の干渉強度が特定され、干渉補正部612に出力される場合を例に挙げて説明を続ける。干渉強度により、イベントデータの補正方法が切り替えられる。ステップS303において、干渉補正部612は、干渉強度は弱であるか否かを判定する。
【0164】
ステップS303において、干渉強度は、弱であると判定された場合、ステップS304に処理は進められる。干渉強度が弱である場合、干渉による誤イベントの発生数は少ないとし、何も補正処理を行わず(ステップS304)、入力されたイベントデータが後段の処理部に出力される。なお、
図17を参照して説明したように、補正前の2ビットのデータを、4ビットのデータに変換して出力する場合、ステップS304においては、補正前の2ビットのデータを繰り返し、4ビットのデータとして出力する処理が実行される。
【0165】
一方、ステップS303において、干渉強度は弱ではないと判定された場合、処理は、ステップS305に進められる。ステップS305において、干渉強度は中であるか否かが判定される。ステップS305において、干渉強度は中であると判定された場合、ステップS306に処理は進められる。ステップS306において、ノイズイベントの除去が行われる。
【0166】
ステップS306において実行されるノイズイベントの除去について、
図27を参照して説明する。干渉強度が中の場合、通常イベントは保持され、干渉による誤イベントがノイズ的に付与されているとし、そのようなノイズイベントは除去するための処理が実行される。
【0167】
図27のAの左図は、補正前の画素(イベント信号生成部120を含む画素)の配置と、イベント信号生成部120において発生したイベントのイベントデータを表した図である。
図27のAに示した画素120-1乃至120-7のうち、干渉強度が中と判定された注目行内に位置し、補正対象とされた画素を、画素120-4とする。
【0168】
注目画素の画素120-4の上側にあり、非干渉行にある画素を、画素120-1乃至120-3とする。画素120-1は、注目画素120-4の左上側に位置し、画素120-2は、注目画素120-4の真上側に位置し、画素120-3は、注目画素120-4の右上側に位置している。なお、
図27のAでは、注目画素120-4の隣接する行内に、画素120-1乃至120-3が位置しているように図示しているが、非干渉行が隣接していない場合には、数行離れた位置にある非干渉行内に、画素120-1乃至120-3が位置している場合もある。
【0169】
注目画素の画素120-4の下側にあり、非干渉行にある画素を、画素120-5乃至120-7とする。画素120-5は、注目画素120-4の左下側に位置し、画素120-6は、注目画素120-4の真下側に位置し、画素120-7は、注目画素120-4の右下側に位置している。なお、
図27のAでは、注目画素120-4の隣接する行内に、画素120-5乃至120-7が位置しているように図示しているが、非干渉行が隣接していない場合には、数行離れた位置にある非干渉行内に、画素120-5乃至120-7が位置している場合もある。
【0170】
以下、このような画素配置を例に挙げて説明を続ける。またここでは、イベントが発生している画素に斜線を付して図示し、注目画素120-4は、オンイベントまたはオフイベントが発生している画素であるとして説明を続ける。
図27のAに示した例では、画素120-1も、オンイベントまたはオフイベントが発生している画素であるとし、斜線を付して図示している。ここでは、画素120-1に付したような密度が濃い斜線を付した画素は、オンイベントが発生している画素とし、画素120-4に付したような密度が薄い斜線を付した画素は、オフイベントが発生している画素とする。
【0171】
干渉行における注目画素120-4の上側に位置する非干渉行内のx方向における±1画素の画素120-1乃至120-3と、注目画素120-4の下側に位置する非干渉行内のx方向における±1画素の画素120-5乃至120-7の計6画素が、探索対象の画素として設定される。この探索対象の画素に設定された6画素に、注目画素120-4のイベントと同じ極性のイベントが存在していない場合、孤立点として判断し、ノイズイベントとして削除対象とされる。
【0172】
図27のAに示した例では、オフイベントの注目画素120-4に対して、探索画素120-1乃至120-3,120-5乃至120-7の6画素には、オフイベントは発生していない。この場合、探索対象の画素に、注目画素120-4と同じ極性(オフイベント)のイベントはないと判定され、孤立点として処理される。
図27のAの右図に示したように、オフイベントが検出された注目画素120-4は、イベントが発生していない画素120-4に補正される。
【0173】
このように注目画素のイベントデータが、複数(この場合6個)の探索画素のいずれのイベントデータとも一致しない場合、注目画素のイベントデータは、イベント無しのデータに補正される。
【0174】
図27のBを参照する。
図27のBの左図は、補正前の画素配置におけるイベントの発生例を示す。
図27のBの左図に示した例では、注目画素120-4にはオフイベントが発生し、探索対象の画素120-1にはオンイベントが発生し、探索対象の画素120-7にはオフイベントが発生している。
【0175】
図27のBに示したイベントの発生状況の場合、注目画素120-4にはオフイベントが発生し、探索対象の画素である画素120-7でもオフイベントが発生している状況である。この場合、探索対象の画素に、注目画素120-4と同じ極性(オフイベント)のイベントがあると判定され、通常イベントとして保持される。
図27のBの右図に示したように、オフイベントが検出された注目画素120-4は、そのままオフイベントが発生している画素120-4として扱われる。
【0176】
このように、注目画素のイベントデータが、複数(この場合6個)の探索画素の少なくとも1つの探索画素のイベントデータと一致する場合、注目画素のイベントデータは、そのまま維持される。
【0177】
ここでは、探索対象となる画素は6画素である場合を例に挙げて説明したが、6画素より少ない画素、または6画素より多い画素が、探索対象の画素として設定されるようにしても良い。
【0178】
このように、干渉強度が中の場合には、孤立点が除去される補正が実行される。
【0179】
図26のフローチャートを参照した説明に戻り、ステップS305において、干渉強度は中ではないと判定された場合、すなわちこの場合、干渉強度は強であると判定された場合、処理は、ステップS307に進められる。ステップS307において、全イベントデータに対して補正が実行される。干渉強度が強の場合、干渉による誤イベントが多く発生している可能性があるため、注目行の全イベントデータに対して補正が行われる。
【0180】
ステップS307において実行される全イベントデータに対する補正について、
図28乃至
図30を参照して説明する。
図28乃至
図30において、上段は補正前の画素配置とイベント発生例を示し、下段は補正後の画素配置とイベント発生例を示す。画素配置は、
図27に示した場合と同じく、補正対象とされている画素は、注目画素120-4であり、その周りに位置する画素120-1乃至120-7(画素120-4を除く)の6画素のイベント発生の状況に応じて、注目画素120-4のイベントデータが補正される。
【0181】
図28を参照して説明する干渉強度が強の場合の補正ルールを、補正ルール1とする。補正ルール1は、マスクをする補正であり、注目画素のイベントを削除する補正である。
【0182】
注目画素120-4においては、オフイベントが発生している場合を例に挙げて説明する。
図28のAの上段に示した補正前において、注目画素120-4の真上と真下に位置する探索画素の画素120-2と画素120-6では、共にオンイベントが発生している。
図28のAの下段に示したように、補正ルール1においては注目画素のイベントは削除されるため、注目画素120-4は、イベントが削除され、イベントが発生していないイベントデータに補正され、出力される。
【0183】
図28のBの上段に示した補正前において、注目画素120-4の真上と右下に位置する探索画素の画素120-2と画素120-7では、共にオンイベントが発生している。
図28のBの下段に示したように、補正ルール1においては注目画素のイベントは削除されるため、注目画素120-4は、イベントが削除され、イベントが発生していないイベントデータに補正され、出力される。
【0184】
図28のCの上段に示した補正前において、注目画素120-4の真上に位置する探索画素の画素120-2では、オンイベントが発生している。
図28のCの下段に示したように、補正ルール1においては注目画素のイベントは削除されるため、注目画素120-4は、イベントが削除され、イベントが発生していないイベントデータに補正され、出力される。
【0185】
図28のDの上段に示した補正前において、注目画素120-4の真上に位置する探索画素の画素120-2では、オンイベントが発生し、注目画素120-4の真下に位置する探索画素の画素120-6では、オフイベントが発生している。
図28のDの下段に示したように、補正ルール1においては注目画素のイベントは削除されるため、注目画素120-4は、イベントが削除され、イベントが発生していないイベントデータに補正され、出力される。
【0186】
図29を参照し、干渉強度が強の場合の補正ルール2について説明を加える。補正ルール2は、注目画素120-4の上下の非干渉行に位置し、注目画素120-4の真上と真下に位置する探索画素に発生しているイベントが一致する場合、注目画素120-4のイベントデータを上書きし、一致しない場合、注目画素のイベントを削除するルールである。
【0187】
図29のA乃至Dの上段に示した例は、補正前の画素配置とイベントの発生例を示し、
図28のA乃至Dの上段に示した例と同様の例を示している。
【0188】
図29のAの上段を参照するに、補正前において、注目画素120-4の真上と真下に位置する探索画素の画素120-2と画素120-6では、共にオンイベントが発生している。このように、注目画素120-4の上下に位置する画素のイベントが一致する場合、その一致しているイベントに注目画素120-4のイベントが書き換えられる。よって、
図29のAの下段に示したように、注目画素120-4は、オフイベントであったが、そのオフイベントが、上下の画素で発生しているオンイベントに書き換えられ、出力される。
【0189】
図29のBの上段に示した補正前において、注目画素120-4の真上と右下に位置する探索画素の画素120-2と画素120-7では、共にオンイベントが発生しているが、注目画素120-4の真下に位置する探索画素の画素120-6ではイベントは発生していない。このような場合、補正ルール2に基づき補正が行われると、注目画素120-4の上下に位置する画素のイベントが一致してないため、
図29のBの下段に示したように、注目画素120-4のイベントは削除され、イベント無しに書き換えられ、出力される。
【0190】
図29のCの上段に示した補正前において、注目画素120-4の真上に位置する探索画素の画素120-2では、オンイベントが発生しているが、注目画素120-4の真下に位置する探索画素の画素120-6ではイベントは発生していない。このような場合、補正ルール2に基づき補正が行われると、注目画素120-4の上下に位置する画素のイベントが一致してないため、
図29のCの下段に示したように、注目画素120-4のイベントは削除され、イベント無しに書き換えられ、出力される。
【0191】
図29のDの上段に示した補正前において、注目画素120-4の真上に位置する探索画素の画素120-2では、オンイベントが発生し、注目画素120-4の真下に位置する探索画素の画素120-6では、オフイベントが発生している。このような場合、補正ルール2に基づき補正が行われると、注目画素120-4の上下に位置する画素のイベントが一致してないため、
図29のDの下段に示したように、注目画素120-4のイベントは削除され、イベント無しに書き換えられ、出力される。
【0192】
図30を参照し、干渉強度が強の場合の補正ルール3について説明を加える。補正ルール3は、注目画素120-4の上下の非干渉行に位置し、注目画素120-4の真上と真下の探索画素に発生しているイベントが一致する場合、および注目画素120-4の真上と真下の探索画素に発生しているイベントが一致していなくても、真上または真下の画素の代わりに、斜め方向の探索画素に発生しているイベントが一致する場合、注目画素120-4のイベントデータを上書きし、一致しない場合、注目画素のイベントを削除するルールである。
【0193】
図30のA乃至Dの上段に示した例は、補正前の画素配置とイベントの発生例を示し、
図28のA乃至Dの上段に示した例と同様の例を示している。
【0194】
図30のAの上段を参照するに、補正前において、注目画素120-4の真上と真下に位置する探索画素の画素120-2と画素120-6では、共にオンイベントが発生している。このように、注目画素120-4の上下に位置する画素のイベントが一致する場合、その一致しているイベントに注目画素120-4のイベントが書き換えられる。よって、
図30のAの下段に示したように、注目画素120-4は、オフイベントであるが、そのオフイベントが、上下の画素で発生しているオンイベントに書き換えられ、出力される。
【0195】
図30のBの上段に示した補正前において、注目画素120-4の真上と右下に位置する探索画素の画素120-2と画素120-7では、共にオンイベントが発生しているが、注目画素120-4の真下に位置する探索画素の画素120-6ではイベントが発生していない。このような場合、補正ルール3に基づき補正が行われると、注目画素120-4の上下に位置する画素のイベントが一致してないが、注目画素120-4の上に位置する画素と斜め下に位置する画素とのイベントがオンイベントで一致しているため、
図30のBの下段に示したように、注目画素120-4のイベントはオフイベントからオンイベントに補正され、出力される。
【0196】
図30のCの上段に示した補正前において、注目画素120-4の真上に位置する探索画素の画素120-2は、オンイベントが発生しているが、注目画素120-4の真下に位置する探索画素の画素120-6ではイベントが発生していない。このような場合、補正ルール3に基づき補正が行われると、注目画素120-4の上下に位置する画素のイベントが一致せず、斜め方向に位置する画素のイベントとも一致していないため、
図30のCの下段に示したように、注目画素120-4のイベントは削除され、イベント無しに書き換えられ、出力される。
【0197】
図30のDの上段に示した補正前において、注目画素120-4の真上に位置する探索画素の画素120-2には、オンイベントが発生し、注目画素120-4の真下に位置する探索画素の画素120-6には、オフイベントが発生している。このような場合、補正ルール3に基づき補正が行われると、注目画素120-4の上下に位置する画素のイベントが一致せず、斜め方向に位置する画素のイベントとも一致していないため、
図30のDの下段に示したように、注目画素120-4のイベントは削除され、イベント無しに書き換えられ、出力される。
【0198】
干渉強度が強の場合、補正ルール1乃至3のいずれかが適用されて、注目画素のイベントデータが補正される。補正ルール1乃至3は、組み合わせて用いられるように構成することもできる。
【0199】
上述した実施の形態において、非干渉行には、補正後の干渉行が含まれていてもよい。換言すれば、補正後の干渉行は、注目行の処理時に、非干渉行として扱われるようにしても良い。このような場合、干渉強度が中または弱であった干渉行であり、補正が終了している干渉行は、非干渉行として扱うが、干渉強度が強であった干渉行であり、補正が終了している干渉行は、非干渉行として扱わないようにしても良い。
【0200】
注目行から、所定の行数以上離れた位置に非干渉行があるような場合には、注目行に近い補正後の干渉行が、非干渉行として扱われて、上記した補正の処理などが実行されるようにしても良い。
【0201】
<第2のイベントデータの補正処理>
ステップS203において実行されるイベントデータの補正処理について説明を加える。
図31は、第2のイベントデータの補正処理について説明するためのフローチャートである。第2のイベントデータの補正処理は、干渉強度が連続値で出される場合の補正処理である。
【0202】
ステップS321において、干渉補正部612は、イベントデータ取得部611から出力される注目行(処理対象とされた行)のイベントデータを取得する。ステップS322において、干渉補正部612は、干渉強度特定部613で特定された注目行の干渉強度を取得する。ここで取得される干渉強度は、連続値であり、例えば、0.8といった値である。
【0203】
ステップS323において、干渉強度が補正率に変換される。例えば、
図32に示したグラフに基づき、干渉強度が補正率に変換される。
図32に示したグラフにおいて、横軸は干渉強度を示し、縦軸は補正率を示す。横軸に示したs0とs1は、それぞれ制御パラメータを表す。
図32に示したグラフに基づき、干渉強度が補正率に変換される場合、干渉強度が0からs0の場合、補正率は“0”に変換され、干渉強度がs1以上の場合、補正率は“1”に変換される。干渉強度がs0からs1の場合、補正率は干渉強度の値に応じた一次関数で表される値に変換される。
【0204】
図31に示したフローチャートに戻り、ステップS324において、注目行中の補正対象とする画素、例えば、
図28乃至
図30を参照して説明した場合における注目画素120-4に該当する画素が設定される。
【0205】
ステップS325において、[0.0,1.0]の一様乱数が生成される。ステップS326において、生成された乱数と変換された補正率とが比較され、乱数の値は、補正率以下であるか否かが判定される。補正率に応じて処理するイベントデータ数を制御、例えば補正率が小さい場合には、補正するイベントデータ数を減らし、補正率が大きい場合には補正するイベントデータ数を増やすといった制御を行うために、このような判定が行われる。
【0206】
ステップS326において、乱数の値は、補正率以下であると判定された場合、ステップS327に処理は進められる。ステップS327においては、注目画素が補正される。
【0207】
ステップS326において、乱数の値は、補正率以下であると判定されるのは、第1のイベントデータ補正処理においては干渉強度が強または中と判定された場合に該当する。よって、ステップS327において実行される注目画素の補正は、ステップS306,S307(
図26)で実行される処理を適用することができる。
【0208】
一方、ステップS326において、乱数の値は、補正率以下ではないと判定された場合、ステップS328に処理は進められる。ステップS328においては、注目画素に対する補正処理は行われずに、注目画素のイベントデータが出力される。
【0209】
ステップS326において、乱数の値は、補正率以下ではないと判定されるのは、第1のイベントデータ補正処理においては干渉強度が弱と判定された場合に該当する。よって、ステップS328において実行される補正は、ステップS304(
図26)で実行される処理、すなわちこの場合、補正処理を行わないという処理を適用することができる。
【0210】
ステップS327またはステップS328における処理が終了されると、処理はステップS329に進められる。ステップS329において、1行分の画素を処理したか否かが判定される。ステップS328において、注目行内のうちまだ処理していない画素があると判定された場合、ステップS324に処理が戻され、注目行内の未処理の画素を処理対象としたステップS324以下の処理が繰り返される。
【0211】
一方、ステップS329において注目行の全ての画素を処理したと判定された場合、
図31に示したフローチャートの処理は終了され、ステップS204(
図18)に処理は進められる。
【0212】
ステップS204において、注目行の補正後のイベントデータが後段の処理部に出力される。
【0213】
このように、干渉強度に応じてイベントデータの補正が行われる。干渉強度に応じた補正が行われることで、適切な補正を行うことができ、イベントデータの精度を高めることができる。
【0214】
<補正部における入出力応答について>
補正部601における入出力応答について説明を加える。補正部601に入力されるイベントデータを変化させ、補正部601から出力されるイベントデータを観察することで、本技術を適用した補正部601であるか、適用していない補正部601であるかを判別することができる。
【0215】
干渉を受けていないイベントデータを用意し、この干渉を受けてないイベントデータに対して、干渉発生フラグを付与する。干渉発生フラグを付与した行に、誤イベントを付与する。この付与される誤イベントは、オンイベントであっても良いし、オフイベントであっても良い。
【0216】
誤イベントが付与されたイベントデータを、補正部601の入力とし、補正部601の出力を観察する。このとき、誤イベントの付与率を、0乃至100%の間で変化させ、変化させた毎に出力を観察する。換言すれば、干渉強度を弱(無し)から強までの間で変化させ、変化させた毎に出力を観察する。
【0217】
上述したように、本技術を適用した補正部601により補正がなされる場合、誤イベントの付与率を0乃至100%の間で変化させた場合、誤イベントの付与率に応じた補正がなされ、換言すれば、干渉強度に応じて補正が施されるため、出力されるイベントデータは、付与率毎に異なる。具体的には、誤イベントの付与率が低いほど、元のイベントデータが保持された出力となる。
【0218】
仮に補正部601が干渉強度に応じた補正を行うのではなく、一律に補正を行うような場合、誤イベントの付与率が変わっても、出力されるイベントデータに変化はなく、同じになる。
【0219】
本技術を適用した補正部601と、本技術を適用していない補正部とでは、このように、出力結果が異なる。本技術を適用していた補正部601によれば、適切な補正が行われることは、このような確認方法によっても確認することができる。
【0220】
<記録媒体について>
上述した一連の処理は、ハードウエアにより実行することもできるし、ソフトウエアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウエアにより実行する場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、コンピュータにインストールされる。ここで、コンピュータには、専用のハードウエアに組み込まれているコンピュータや、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどが含まれる。
【0221】
図33は、上述した一連の処理をプログラムにより実行するコンピュータのハードウエアの構成例を示すブロック図である。コンピュータにおいて、CPU(Central Processing Unit)2001、ROM(Read Only Memory)2002、RAM(Random Access Memory)2003は、バス2004により相互に接続されている。バス2004には、さらに、入出力インタフェース2005が接続されている。入出力インタフェース2005には、入力部2006、出力部2007、記憶部2008、通信部2009、及びドライブ2010が接続されている。
【0222】
入力部2006は、キーボード、マウス、マイクロフォンなどよりなる。出力部2007は、ディスプレイ、スピーカなどよりなる。記憶部2008は、ハードディスクや不揮発性のメモリなどよりなる。通信部2009は、ネットワークインタフェースなどよりなる。ドライブ2010は、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、又は半導体メモリなどのリムーバブルメディア2011を駆動する。
【0223】
以上のように構成されるコンピュータでは、CPU2001が、例えば、記憶部2008に記憶されているプログラムを、入出力インタフェース2005及びバス2004を介して、RAM2003にロードして実行することにより、上述した一連の処理が行われる。
【0224】
コンピュータ(CPU2001)が実行するプログラムは、例えば、パッケージメディア等としてのリムーバブルメディア2011に記録して提供することができる。また、プログラムは、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線または無線の伝送媒体を介して提供することができる。
【0225】
コンピュータでは、プログラムは、リムーバブルメディア2011をドライブ2010に装着することにより、入出力インタフェース2005を介して、記憶部2008にインストールすることができる。また、プログラムは、有線または無線の伝送媒体を介して、通信部2009で受信し、記憶部2008にインストールすることができる。その他、プログラムは、ROM2002や記憶部2008に、あらかじめインストールしておくことができる。
【0226】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
【0227】
<移動体への応用例>
本開示に係る技術(本技術)は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット等のいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0228】
図34は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
【0229】
車両制御システム12000は、通信ネットワーク12001を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。
図34に示した例では、車両制御システム12000は、駆動系制御ユニット12010、ボディ系制御ユニット12020、車外情報検出ユニット12030、車内情報検出ユニット12040、及び統合制御ユニット12050を備える。また、統合制御ユニット12050の機能構成として、マイクロコンピュータ12051、音声画像出力部12052、及び車載ネットワークI/F(Interface)12053が図示されている。
【0230】
駆動系制御ユニット12010は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット12010は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。
【0231】
ボディ系制御ユニット12020は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット12020は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット12020には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット12020は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0232】
車外情報検出ユニット12030は、車両制御システム12000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット12030には、撮像部12031が接続される。車外情報検出ユニット12030は、撮像部12031に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像を受信する。車外情報検出ユニット12030は、受信した画像に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。
【0233】
撮像部12031は、光を受光し、その光の受光量に応じた電気信号を出力する光センサである。撮像部12031は、電気信号を画像として出力することもできるし、測距の情報として出力することもできる。また、撮像部12031が受光する光は、可視光であっても良いし、赤外線等の非可視光であっても良い。
【0234】
車内情報検出ユニット12040は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット12040には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部12041が接続される。運転者状態検出部12041は、例えば運転者を撮像するカメラを含み、車内情報検出ユニット12040は、運転者状態検出部12041から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。
【0235】
マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット12010に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行うことができる。
【0236】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0237】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で取得される車外の情報に基づいて、ボディ系制御ユニット12030に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で検知した先行車又は対向車の位置に応じてヘッドランプを制御し、ハイビームをロービームに切り替える等の防眩を図ることを目的とした協調制御を行うことができる。
【0238】
音声画像出力部12052は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。
図34の例では、出力装置として、オーディオスピーカ12061、表示部12062及びインストルメントパネル12063が例示されている。表示部12062は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0239】
図35は、撮像部12031の設置位置の例を示す図である。
【0240】
図35では、撮像部12031として、撮像部12101、12102、12103、12104、12105を有する。
【0241】
撮像部12101、12102、12103、12104、12105は、例えば、車両12100のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部等の位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部12101及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として車両12100の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部12102、12103は、主として車両12100の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部12104は、主として車両12100の後方の画像を取得する。車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0242】
なお、
図35には、撮像部12101ないし12104の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲12111は、フロントノーズに設けられた撮像部12101の撮像範囲を示し、撮像範囲12112,12113は、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部12102,12103の撮像範囲を示し、撮像範囲12114は、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部12104の撮像範囲を示す。例えば、撮像部12101ないし12104で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両12100を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0243】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、距離情報を取得する機能を有していてもよい。例えば、撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、複数の撮像素子からなるステレオカメラであってもよいし、位相差検出用の画素を有する撮像素子であってもよい。
【0244】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を基に、撮像範囲12111ないし12114内における各立体物までの距離と、この距離の時間的変化(車両12100に対する相対速度)を求めることにより、特に車両12100の進行路上にある最も近い立体物で、車両12100と略同じ方向に所定の速度(例えば、0km/h以上)で走行する立体物を先行車として抽出することができる。さらに、マイクロコンピュータ12051は、先行車の手前に予め確保すべき車間距離を設定し、自動ブレーキ制御(追従停止制御も含む)や自動加速制御(追従発進制御も含む)等を行うことができる。このように運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0245】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を元に、立体物に関する立体物データを、2輪車、普通車両、大型車両、歩行者、電柱等その他の立体物に分類して抽出し、障害物の自動回避に用いることができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両12100の周辺の障害物を、車両12100のドライバが視認可能な障害物と視認困難な障害物とに識別する。そして、マイクロコンピュータ12051は、各障害物との衝突の危険度を示す衝突リスクを判断し、衝突リスクが設定値以上で衝突可能性がある状況であるときには、オーディオスピーカ12061や表示部12062を介してドライバに警報を出力することや、駆動系制御ユニット12010を介して強制減速や回避操舵を行うことで、衝突回避のための運転支援を行うことができる。
【0246】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、赤外線を検出する赤外線カメラであってもよい。例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在するか否かを判定することで歩行者を認識することができる。かかる歩行者の認識は、例えば赤外線カメラとしての撮像部12101ないし12104の撮像画像における特徴点を抽出する手順と、物体の輪郭を示す一連の特徴点にパターンマッチング処理を行って歩行者か否かを判別する手順によって行われる。マイクロコンピュータ12051が、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在すると判定し、歩行者を認識すると、音声画像出力部12052は、当該認識された歩行者に強調のための方形輪郭線を重畳表示するように、表示部12062を制御する。また、音声画像出力部12052は、歩行者を示すアイコン等を所望の位置に表示するように表示部12062を制御してもよい。
【0247】
本明細書において、システムとは、複数の装置により構成される装置全体を表すものである。
【0248】
なお、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があってもよい。
【0249】
なお、本技術の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0250】
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1)
入射光の輝度の同一方向の変化をイベントとして検出し、当該検出したイベントに基づくイベントデータを生成するイベントデータ生成部と、入射光の輝度に応じたデータである階調データを生成する階調データ生成部とを備える複数の画素が2次元行列状に配置される画素アレイ部と、
前記階調データの生成及び前記イベントの検出の期間の重複により発生する干渉の強度を特定する干渉強度特定部と、
前記干渉強度特定部により特定された前記干渉の強度に応じた前記イベントデータの補正を行う補正部と
を備える光検出装置。
(2)
前記画素アレイ部は、遮光された領域を有し、
前記干渉強度特定部は、前記遮光された領域に位置する前記イベントデータ生成部において検出されたイベント数をカウントし、カウントしたイベント数に応じて前記干渉の強度を特定する
前記(1)に記載の光検出装置。
(3)
前記干渉強度特定部は、
前記画素アレイ部の干渉の強度を特定する注目行におけるイベントをカウントした第1のイベント数を取得し、
前記注目行の上側に位置し、前記干渉がない非干渉行における第2のイベント数を取得し、
前記注目行の下側に位置し、前記干渉がない非干渉行における第3のイベント数を取得し、
前記第1のイベント数と、前記第2のイベント数と前記第3のイベント数のうちの大きい方のイベント数とを用いた所定の条件に該当するか否かを判定することで前記干渉の強度を特定する
前記(1)に記載の光検出装置。
(4)
前記階調データの生成と前記イベントの検出の期間の重複が予測される行である重複予測行を検出したことを表す干渉発生フラグを取得し、
前記非干渉行は、前記干渉発生フラグが立っていない行である
前記(3)に記載の光検出装置。
(5)
フレームを特定する情報と、前記画素アレイ部の干渉の強度を特定する注目行と、前記干渉の強度が関連付けられたテーブルを有し、
前記干渉強度特定部は、前記テーブルを参照し、前記注目行の前記干渉の強度を特定する
前記(1)に記載の光検出装置。
(6)
前記干渉強度特定部により、前記干渉の強度は弱いと特定された場合、前記補正部は、補正を行わない
前記(1)乃至(5)のいずれかに記載の光検出装置。
(7)
前記干渉強度特定部により、前記干渉の強度は強いと特定された場合、前記補正部は、補正対象とされている注目画素にはイベントは発生していないとのイベントデータに補正する
前記(1)乃至(6)のいずれかに記載の光検出装置。
(8)
前記干渉強度特定部により、前記干渉の強度は強いと特定された場合、前記補正部は、
補正対象とされている注目画素の上側に位置し、前記干渉がない非干渉行における前記注目画素の真上に位置する画素の第1のイベントと、前記注目画素の下側に位置し、前記干渉がない非干渉行における前記注目画素の真下に位置する画素の第2のイベントとを取得し、
前記第1のイベントと前記第2のイベントが一致している場合、前記注目画素のイベントを、前記第1のイベントが発生しているとのイベントデータに補正し、
前記第1のイベントと前記第2のイベントが一致していない場合、前記注目画素にイベントは発生していないとのイベントデータに補正する
前記(1)乃至(6)のいずれかに記載の光検出装置。
(9)
前記干渉強度特定部により、前記干渉の強度は強いと特定された場合、前記補正部は、
補正対象とされている注目画素の上側に位置し、前記干渉がない非干渉行における前記注目画素の真上または斜め上方向に位置する画素の第1のイベントと、前記注目画素の下側に位置し、前記干渉がない非干渉行における前記注目画素の真下または斜め下方向に位置する画素の第2のイベントとを取得し、
前記第1のイベントと前記第2のイベントが一致している場合、前記注目画素のイベントを、前記第1のイベントが発生しているとのイベントデータに補正し、
前記第1のイベントと前記第2のイベントが一致していない場合、前記注目画素にイベントは発生していないとのイベントデータに補正する
前記(1)乃至(6)のいずれかに記載の光検出装置。
(10)
前記干渉強度特定部により、前記干渉の強度は中と特定された場合、前記補正部は、
補正対象とされている注目画素の上側に位置し、前記干渉がない非干渉行における前記注目画素の真上または斜め上方向に位置する画素と、前記注目画素の下側に位置し、前記干渉がない非干渉行における前記注目画素の真下または斜め下方向に位置する画素を、探索画素とし、
前記注目画素のイベントと、複数の前記探索画素のイベントの少なくとも1つの画素のイベントが、一致している場合、前記注目画素のイベントのイベントデータを維持し、
前記注目画素のイベントと一致するイベントが、複数の前記探索画素のいずれにおいても発生していない場合、前記注目画素にイベントは発生していないとのイベントデータに補正する
前記(1)乃至(9)のいずれかに記載の光検出装置。
(11)
前記干渉強度特定部は、前記干渉の強度を連続値で出力し、
前記補正部は、
前記連続値を補正率に変換し、
乱数を生成し、
前記乱数が前記補正率以下である場合、処理対象とされている注目画素のイベントデータを補正し、
前記乱数が前記補正率以下ではない場合、処理対象とされている注目画素のイベントデータを維持する
前記(1)乃至(9)のいずれかに記載の光検出装置。
(12)
前記補正部の入力と出力は、同じビット数のイベントデータであり、
入力された前記イベントデータを補正した場合、補正後のイベントデータを出力する
前記(1)乃至(11)のいずれかに記載の光検出装置。
(13)
前記補正部は、入力された前記イベントデータに、補正後のイベントデータを付加して出力する
前記(1)乃至(11)のいずれかに記載の光検出装置。
(14)
入射光の輝度の同一方向の変化をイベントとして検出し、当該検出したイベントに基づくイベントデータを生成するイベントデータ生成部と、入射光の輝度に応じたデータである階調データを生成する階調データ生成部とを備える複数の画素が2次元行列状に配置される画素アレイ部を備える光検出装置が、
前記階調データの生成及び前記イベントの検出の期間の重複により発生する干渉の強度を特定し、
特定された前記干渉の強度に応じた前記イベントデータの補正を行う
補正方法。
(15)
入射光の輝度の同一方向の変化をイベントとして検出し、当該検出したイベントに基づくイベントデータを生成するイベントデータ生成部と、入射光の輝度に応じたデータである階調データを生成する階調データ生成部とを備える複数の画素が2次元行列状に配置される画素アレイ部を備える光検出装置を制御するコンピュータに、
前記階調データの生成及び前記イベントの検出の期間の重複により発生する干渉の強度を特定し、
特定された前記干渉の強度に応じた前記イベントデータの補正を行う
処理を実行させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0251】
1 光検出装置, 10 画素アレイ部, 11 信号線, 12 信号線, 13 画素, 14 画素, 15 画素, 16 画素, 17 画素, 18 画素, 20 アクセス制御回路, 21 信号線, 30 イベント信号出力回路, 40 階調信号出力回路, 50 タイミング制御部, 60 イベント信号処理部, 70 階調信号処理部, 80 重複予測行検出部, 81 重複行予測部, 90 タイムスタンプ生成部, 100 画素, 110 階調信号生成部, 111 MOSトランジスタ, 120 イベント信号生成部, 121 信号線, 130 光電変換部, 140 電流電圧変換回路, 150 微分回路, 160 輝度変化検出部, 170 出力部, 201 光電変換部, 202 光電変換部, 203 電荷保持部, 204 キャパシタ, 205 キャパシタ, 231 定電流回路, 500 重複予測行, 501 シャッタ, 502 露光, 503 読出し, 510 フレーム, 551 領域, 601 補正部, 602 アプリケーションプロセッサ, 612 干渉補正部, 613 干渉強度特定部, 621 干渉補正部, 651 HOPB領域, 652 有効画素領域, 671 テーブル