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特開2024-162664細胞の培養上清液を含む凍結乾燥用組成物
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  • 特開-細胞の培養上清液を含む凍結乾燥用組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162664
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】細胞の培養上清液を含む凍結乾燥用組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/07 20100101AFI20241114BHJP
   C12N 5/074 20100101ALI20241114BHJP
   C12N 5/077 20100101ALI20241114BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20241114BHJP
   A61K 35/51 20150101ALI20241114BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20241114BHJP
   A61K 8/98 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20241114BHJP
   A61L 27/38 20060101ALI20241114BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
C12N5/07
C12N5/074
C12N5/077
A23L33/10
A61K35/51
A61K35/28
A61K8/98
A61K9/19
A61K47/36
A61K47/26
A61P43/00 107
A61P37/04
A61L27/38 300
A61L27/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078402
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】520103296
【氏名又は名称】セルプロジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130845
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100201020
【弁理士】
【氏名又は名称】野中 信宏
(74)【代理人】
【識別番号】100140350
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 和宏
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100120846
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 雅也
(72)【発明者】
【氏名】佐俣 文平
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
4C076
4C081
4C083
4C087
【Fターム(参考)】
4B018LE03
4B018MD69
4B018ME14
4B018MF05
4B018MF06
4B065AA93X
4B065BB15
4B065BD09
4B065BD10
4B065BD35
4B065BD38
4B065CA41
4B065CA44
4B065CA50
4C076AA30
4C076CC07
4C076CC29
4C076DD67
4C076EE37
4C076FF01
4C076FF36
4C081AB00
4C081BA12
4C081CD082
4C081CD34
4C081DA11
4C083AA071
4C083AA072
4C083AD211
4C083AD212
4C083AD331
4C083AD332
4C083CC01
4C083CC02
4C083DD17
4C083EE11
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB44
4C087BB59
4C087BB64
4C087CA04
4C087MA44
4C087NA14
4C087ZB09
4C087ZB22
(57)【要約】
【課題】 凍結乾燥しても、気泡が発生せず、優れた製品形態を実現する、細胞の培養上清液を含む凍結乾燥用組成物を提供すること。
【解決手段】 細胞の培養上清液とトレハロースとヒアルロン酸塩とを含む、凍結乾燥用組成物。当該凍結乾燥用組成物を凍結乾燥させて得られた凍結乾燥物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞の培養上清液とトレハロースとヒアルロン酸塩とを含む、凍結乾燥用組成物。
【請求項2】
細胞が、幹細胞である、請求項1に記載の凍結乾燥用組成物。
【請求項3】
幹細胞が、臍帯組織由来幹細胞である、請求項2に記載の凍結乾燥用組成物。
【請求項4】
細胞の培養上清液が、細胞を培養する培養液の上清液であり、当該培養液が、グルコースを含む培地である、請求項1に記載の凍結乾燥用組成物。
【請求項5】
グルコースを含む培地におけるグルコースの含有量が、グルコースを含む培地における細胞の培養を終了する際の含有量として、当該培地に対して0.5~20g/Lである、請求項4に記載の凍結乾燥用組成物。
【請求項6】
グルコースを含む培地における培地が、基礎培地である、請求項4に記載の凍結乾燥用組成物。
【請求項7】
細胞が、グルコースを含む培地において培養される前に、洗浄されたものである、請求項4に記載の凍結乾燥用組成物。
【請求項8】
細胞が、組み換えタンパク質を含む培地において培養されたものである、請求項1に記載の凍結乾燥用組成物。
【請求項9】
細胞が、無血清培地において培養されたものである、請求項1に記載の凍結乾燥用組成物。
【請求項10】
細胞が、脂肪由来幹細胞用培地において培養されたものである、請求項1に記載の凍結乾燥用組成物。
【請求項11】
細胞が、間葉系幹細胞用培地において培養されたものである、請求項1に記載の凍結乾燥用組成物。
【請求項12】
細胞の培養上清液が、細胞を培養する培養液の上清液であり、細胞の培養上清液が、当該培養液をフィルターにて濾過して得られたものである、請求項1に記載の凍結乾燥用組成物。
【請求項13】
フィルターの濾過粒度が、0.1μm~1.0μmである、請求項12に記載の凍結乾燥用組成物。
【請求項14】
細胞の培養上清液が、エクソソームの濃縮液である、請求項1に記載の凍結乾燥用組成物。
【請求項15】
凍結乾燥用組成物に対するトレハロースの含有量が、1~10質量%であり、凍結乾燥用組成物に対するヒアルロン酸塩の含有量が、0.01~0.5質量%である、請求項1に記載の凍結乾燥用組成物。
【請求項16】
凍結乾燥用組成物に対するトレハロースの含有量が、5~10質量%であり、凍結乾燥用組成物に対するヒアルロン酸塩の含有量が、0.1~0.3質量%である、請求項15に記載の凍結乾燥用組成物。
【請求項17】
ヒアルロン酸塩がヒアルロン酸ナトリウムである、請求項1に記載の凍結乾燥用組成物。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1項に記載の凍結乾燥用組成物を凍結乾燥させて得られた凍結乾燥物。
【請求項19】
請求項18に記載の凍結乾燥物を含む、医薬組成物、化粧用組成物、又は食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞の培養上清液を含む凍結乾燥用組成物に関する。また、本発明は、細胞の培養上清液を含む凍結乾燥用組成物を凍結乾燥させて得られた凍結乾燥物に関する。
【背景技術】
【0002】
間葉系幹細胞は、骨髄や滑膜、脂肪、臍帯の中に存在する体性幹細胞であり、軟骨や骨、脂肪、神経細胞への分化能を有することが報告されている(非特許文献1)。成人の組織からも分離できることから、半月板や軟骨の損傷部の再生治療に用いられている(非特許文献2)。また、間葉系幹細胞は抗炎症作用や免疫調節等の作用も有することから、肝疾患や移植片対宿主病、自己免疫疾患など、既に様々な疾患に対して幅広く利用されていることが知られている。
【0003】
こうした中、細胞移植治療において生体内に移植されたこれらの間葉系幹細胞の働きには、間葉系細胞から分泌される種々のサイトカイン等の生理活性物質が大きく寄与していることが明らかにされてきた。
【0004】
間葉系幹細胞をインビトロで培養した際には、培養液中にこうした生理活性物質が放出されることになる。そこで、間葉系幹細胞の培養に使用した培養液を回収し、細胞から放出される物質を多く含むこの培養液を利用して、組織を再生すること等に成功した例が報告されている(非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5)。
【0005】
このように、間葉系幹細胞などの細胞の培養過程で生成される培養上清液は、エクソソームを始めとする幹細胞から分泌した成長因子や免疫調節因子(サイトカイン)など、細胞活性に重要な働きをする情報伝達物質を豊富に含んでおり、体内の損傷を受けた組織や細胞の機能回復に役立つと考えられている。培養上清液に豊富に含まれるエクソソーム・成長因子・サイトカインなどが周囲に存在している幹細胞に作用し、老化や損傷などによって機能が低下した箇所に細胞を集めることによって、組織再生や免疫力向上などの機能回復効果が期待されている。したがって、細胞の培養上清液を調製することが求められる。
【0006】
トレハロースは、添加剤として使用されることが知られており、例えば、特許文献1においては、治療用ペプチボディ組成物に安定化剤としてトレハロースを含めることが記載されており、特許文献2においては、非自己血漿又は血清を含む凍結乾燥組成物にトレハロースを含めることが記載されている。ヒアルロン酸も、添加剤として使用されることが知られており、例えば、特許文献1においては、治療用ペプチボディ組成物に安定化剤としてヒアルロン酸を含めることが記載されており、特許文献2においては、非自己血漿又は血清を含む凍結乾燥組成物に添加剤としてヒアルロン酸を含めることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2022-166219号公報
【特許文献2】特開2022-191232号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Colter, D. C., Sekiya, I. & Prockop, D. J. Identification of a subpopulation of rapidly self-renewing and multipotential adult stem cells in colonies of human marrow stromal cells. Proc Natl Acad Sci. 2001;98:7841-7845.
【非特許文献2】Sekiya I., Muneta T., Horie M. & Koga H. Arthroscopic Transplantation of Synovial Stem Cells Improves Clinical Outcomes in Knees With Cartilage Defects. Clin Orthop Relat Res. 2015;473:2316-26.
【非特許文献3】Osugi M., Katagiri, W., Yoshimi, R., Inukai, T., Hibi, H., Ueda M. Conditioned media from mesenchymal stem cells enhanced bone regeneration in rat calvarial bone defects. Tissue Engineering Part A.2012;18:1479-1489
【非特許文献4】Shohara, R., Yamamoto, A., Takikawa, S., Iwase, A., Hibi, H., Kikkawa, F., Ueda, M. Mesenchymal stromal cells of human umbilical cord Wharton's jelly accelerate wound healing by paracrine mechanisms. Cytotherapy,2012;14(10):1171-1181
【非特許文献5】Kawai, T., Katagiri, W., Osugi, M., Sugimura, Y., Hibi, H., Ueda, M. Secretomes from bone marrow-derived mesenchymal stromal cells enhance periodontal tissue regeneration. Cytotherapy,2015;17(4):369-381
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
細胞の培養上清液の凍結乾燥をしたところ、粉屑しか残らず、また容器間の見映えにも差があり、外観に統一性がなかった。そこで、細胞の培養上清液に対して賦形剤を加えるべく、細胞の培養上清液に対してトレハロースを加えて凍結乾燥をしたところ、成形後に気泡の発生が認められ、製品の外観の問題は解決しなかった。また、細胞の培養上清液に対してヒアルロン酸ナトリウムを加えて凍結乾燥したところ、スポンジ状の構造となる場合があり、成形時の安定性が乏しく、同様に、製品の外観の問題は解決しなかった。したがって、本発明は、凍結乾燥しても、気泡が発生せず、優れた製品形態を実現する、細胞の培養上清液を含む凍結乾燥用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意検討したところ、細胞の培養上清液とトレハロースとヒアルロン酸塩とを含む組成物は、凍結乾燥しても、気泡が発生せず、優れた製品形態を実現するため、凍結乾燥用組成物として優れていることを見出した。細胞の培養上清液に対してトレハロースとヒアルロン酸塩のいずれか一方を加えた組成物は、いずれも、凍結乾燥により、気泡が発生するものであったにもかかわらず、これらの両方を含む組成物が、凍結乾燥しても、気泡が発生せず、優れた製品形態を実現することは、全く意外なことである。なお、細胞の培養上清液に対してレハロースと別の添加剤であるマンニトールを加えて凍結乾燥をしたところ、外観の改善は見られず、逆に、更なる膨張が観察され、製品の外観はむしろ悪化した。このことに鑑みても、本発明者による知見は、きわめて意外なことである。
【0011】
すなわち、本発明は、以下を提供するものである。
[項1]
細胞の培養上清液とトレハロースとヒアルロン酸塩とを含む、凍結乾燥用組成物。
[項2]
細胞が、幹細胞である、項1に記載の凍結乾燥用組成物。
[項3]
幹細胞が、臍帯組織由来幹細胞である、項2に記載の凍結乾燥用組成物。
[項4]
細胞の培養上清液が、細胞を培養する培養液の上清液であり、当該培養液が、グルコースを含む培地である、項1に記載の凍結乾燥用組成物。
[項5]
グルコースを含む培地におけるグルコースの含有量が、グルコースを含む培地における細胞の培養を終了する際の含有量として、当該培地に対して0.5~20g/Lである、項4に記載の凍結乾燥用組成物。
[項6]
グルコースを含む培地における培地が、基礎培地である、項4に記載の凍結乾燥用組成物。
[項7]
細胞が、グルコースを含む培地において培養される前に、洗浄されたものである、項4に記載の凍結乾燥用組成物。
[項8]
細胞が、組み換えタンパク質を含む培地において培養されたものである、項1に記載の凍結乾燥用組成物。
[項9]
細胞が、無血清培地において培養されたものである、項1に記載の凍結乾燥用組成物。
[項10]
細胞が、脂肪由来幹細胞用培地において培養されたものである、項1に記載の凍結乾燥用組成物。
[項11]
細胞が、間葉系幹細胞用培地において培養されたものである、項1に記載の凍結乾燥用組成物。
[項12]
細胞の培養上清液が、細胞を培養する培養液の上清液であり、細胞の培養上清液が、当該培養液をフィルターにて濾過して得られたものである、項1に記載の凍結乾燥用組成物。
[項13]
フィルターの濾過粒度が、0.1μm~1.0μmである、項12に記載の凍結乾燥用組成物。
[項14]
細胞の培養上清液が、エクソソームの濃縮液である、項1に記載の凍結乾燥用組成物。
[項15]
凍結乾燥用組成物に対するトレハロースの含有量が、1~10質量%であり、凍結乾燥用組成物に対するヒアルロン酸塩の含有量が、0.01~0.5質量%である、項1に記載の凍結乾燥用組成物。
[項16]
凍結乾燥用組成物に対するトレハロースの含有量が、5~10質量%であり、凍結乾燥用組成物に対するヒアルロン酸塩の含有量が、0.1~0.3質量%である、項15に記載の凍結乾燥用組成物。
[項17]
ヒアルロン酸塩がヒアルロン酸ナトリウムである、項1に記載の凍結乾燥用組成物。
[項18]
項1~17のいずれか1項に記載の凍結乾燥用組成物を凍結乾燥させて得られた凍結乾燥物。
[項19]
項18に記載の凍結乾燥物を含む、医薬組成物、化粧用組成物、又は食品。
【発明の効果】
【0012】
本発明の凍結乾燥用組成物は、凍結乾燥しても、気泡が発生せず、優れた製品形態を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、試験例1において得られた培養上清液のみを凍結乾燥させて得られた凍結乾燥物の外観を示す写真である。
図2図2は、試験例1において得られた培養上清液にヒアルロン酸ナトリウムを加えて得られた、ヒアルロン酸ナトリウムを0.1質量%含む凍結乾燥用組成物を凍結乾燥して得られた凍結乾燥物の外観を示す写真である。
図3図3は、試験例1において得られた培養上清液にヒアルロン酸ナトリウムを加えて得られた、ヒアルロン酸ナトリウムを0.2質量%含む凍結乾燥用組成物を凍結乾燥して得られた凍結乾燥物の外観を示す写真である。
図4図4は、試験例1において得られた培養上清液にトレハロースと必要に応じてマンニトールを加えて得られた、トレハロースを5質量%含みマンニトールを0~30mg/ml含む凍結乾燥用組成物を凍結乾燥して得られた凍結乾燥物の外観を示す写真である。図4は、いずれも、トレハロースの含有量を5質量%としつつ、左から順にマンニトールの含有量を0mg/ml、10mg/ml、20mg/ml、30mg/mlとした場合の結果を示す。
図5図5は、試験例1において得られた培養上清液にトレハロースと必要に応じてマンニトールを加えて得られた、トレハロースを10質量%含みマンニトールを0~30mg/ml含む凍結乾燥用組成物を凍結乾燥して得られた凍結乾燥物の外観を示す写真である。図5は、いずれも、トレハロースの含有量を10質量%としつつ、左から順にマンニトールの含有量を0mg/ml、10mg/ml、20mg/ml、30mg/mlとした場合の結果を示す。
図6図6は、試験例1において得られた培養上清液にトレハロースとヒアルロン酸ナトリウムを加えて得られた、トレハロースを5質量%含みヒアルロン酸ナトリウムを0.2質量%含む凍結乾燥用組成物を凍結乾燥して得られた凍結乾燥物の外観を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、細胞の培養上清液とトレハロースとヒアルロン酸塩とを含む、凍結乾燥用組成物を提供する。
【0015】
トレハロースは、グルコースが1,1-グリコシド結合してできた二糖の一種であり、C122211の化学式で表される。トレハロースとしては、例えば、無水物のほか、二水和物が挙げられる。トレハロースの無水物のCAS登録番号は、99-20-7であり、トレハロースの二水和物のCAS登録番号は、6138-23-4である。
【0016】
本発明の凍結乾燥用組成物におけるトレハロースの含有量は、トレハロースの二水和物に換算した含有量として、好ましくは、凍結乾燥用組成物に対して、1~10質量%であり、更に好ましくは、凍結乾燥用組成物に対して、3~10質量%であり、更に好ましくは、凍結乾燥用組成物に対して、5~10質量%である。
【0017】
ヒアルロン酸塩は、ヒアルロン酸の塩である。ヒアルロン酸の塩としては、例えば、ヒアルロン酸ナトリウムのほか、ヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸カルシウム、ヒアルロン酸亜鉛、ヒアルロン酸アスコルビル、ヒアルロン酸アスコルビルプロピル、ヒアルロン酸プロピレングリコール、ヒアルロン酸ポリエチレングリコールエステル、ヒアルロン酸クロスポリマー、ヒアルロン酸ジメチルシラノール、ヒアルロン酸ヒドロキシプロピルトリモニウム、レチノイルヒアルロン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0018】
ヒアルロン酸は、直鎖状のグリコサミノグリカン(ムコ多糖)の一種であり、N-アセチルグルコサミンとD-グルクロン酸(GlcNAcβ1-4GlcAβ1-3)が直鎖上に連結しており、二糖単位が連結した構造をしている。本発明の凍結乾燥用組成物に含めるヒアルロン酸塩におけるヒアルロン酸の分子量は、例えば、400~200万であるが、好ましくは、1万~100万であり、より好ましくは、3万~80万であり、更に好ましくは、5万~70万である。ヒアルロン酸としては、例えば、鶏冠などの動物の組織から単離されたヒアルロン酸のほか、乳酸菌などの微生物が生産するヒアルロン酸などが挙げられる。
【0019】
本発明の凍結乾燥用組成物におけるヒアルロン酸塩の含有量は、好ましくは、凍結乾燥用組成物に対して、0.01~0.5質量%であり、更に好ましくは、凍結乾燥用組成物に対して、0.1~0.5質量%であり、更に好ましくは、凍結乾燥用組成物に対して、0.1~0.3質量%である。
【0020】
細胞の培養上清液における細胞は、好ましくは、幹細胞である。幹細胞は、好ましくは、臍帯組織由来幹細胞である。臍帯組織由来幹細胞には、間葉系幹細胞、造血幹細胞、神経堤幹細胞などが存在することが知られている。したがって、細胞の培養上清液における細胞は、好ましくは、間葉系幹細胞、造血幹細胞、または神経堤幹細胞であり、より好ましくは、間葉系幹細胞である。細胞の培養上清液における細胞は、好ましくは、動物の細胞である。動物としては、例えば、脊椎動物のほか、無脊椎動物が挙げられる。脊椎動物としては、例えば、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類などが挙げられる。哺乳類としては、例えば、マウス、ヒトなどが挙げられる。無脊椎動物としては、例えば、昆虫類、甲殻類、クモ類及び多足類などの節足動物のほか、軟体動物などが挙げられる。好ましい動物は、哺乳類であり、好ましい哺乳類は、ヒトである。
【0021】
細胞の培養上清液は、細胞を培養する培養液の上清液であるところ、当該培養液は、グルコースを含まない培地であってもよいが、好ましくは、当該培養液は、グルコースを含む培地である。グルコースは、分子式C12を持つ糖である。グルコースとしては、D-グルコースのほか、L-グルコースなどが挙げられる。グルコースを含む培地におけるグルコースの含有量は、グルコースを含む培地における細胞の培養を終了する際の含有量として、好ましくは、当該培地に対して0.5~20g/Lであり、より好ましくは、当該培地に対して0.5~9.0g/Lであり、更に好ましくは、当該培地に対して1.0~9.0g/Lであり、更に好ましくは、当該培地に対して3.0~8.0g/Lであり、更に好ましくは、当該培地に対して4.0~6.0g/Lであり、更に好ましくは、当該培地に対して4.5~6.0g/Lである。当該培養液が、グルコースを含まない培地であるか、グルコースを含む培地である場合には、当該培地におけるグルコースの含有量は、当該培地における細胞の培養を終了する際の含有量として、好ましくは、当該培地に対して0~20g/Lであり、より好ましくは、当該培地に対して0~10g/Lであり、更に好ましくは、当該培地に対して0~9.0g/Lであり、更に好ましくは、当該培地に対して0~8.0g/Lであり、更に好ましくは、当該培地に対して0~6.0g/Lであり、更に好ましくは、当該培地に対して0~4.5g/Lである。また、グルコースを含む培地における培地としては、例えば、基礎培地が挙げられる。細胞の培養上清液は、細胞を培養する培養液の上清液であるところ、当該培養液が、グルコースを含む培地である場合においては、細胞は、当該グルコースを含む培地において、好ましくは、1時間以上、より好ましくは、5時間以上、更に好ましくは、10時間以上、更に好ましくは、15時間以上、更に好ましくは、20時間以上、更に好ましくは、25時間以上、更に好ましくは、30時間以上、更に好ましくは、35時間以上、更に好ましくは、40時間以上、最も好ましくは、45時間以上、培養される。また、細胞は、当該グルコースを含む培地において、好ましくは、100時間以下、より好ましくは、90時間以下、更に好ましくは、80時間以下、更に好ましくは、70時間以下、更に好ましくは、60時間以下、更に好ましくは、50時間以下、培養される。細胞の培養上清液は、細胞を培養する培養液の上清液であるところ、当該培養液が、グルコースを含む培地である場合においては、グルコースを含む培地での細胞の培養を開始するにあたっては、好ましくは、1,000~10,000cells/cmの細胞密度で播種が行われ、より好ましくは、3,000~10,000cells/cmの細胞密度で播種が行われ、更に好ましくは、5,000~7,500cells/cmの細胞密度で播種が行われる。
【0022】
細胞の培養上清液における細胞は、好ましくは、グルコースを含む培地において培養される前に、洗浄されたものである。ここで、洗浄は、例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)などの緩衝液を用いて行われる。ここで、洗浄の回数は、例えば、1~5回であり、好ましくは、1~3回であり、より好ましくは、2回である。
【0023】
細胞の培養上清液における細胞は、例えば、組み換えタンパク質を含む培地において培養されたものである。細胞の培養上清液における細胞は、好ましくは、グルコースを含む培地において培養されたものであり、かつ、グルコースを含む培地において培養される前に、組み換えタンパク質を含む培地において培養されたものである。また、細胞の培養上清液における細胞は、好ましくは、グルコースを含む培地において培養されたものであり、かつ、グルコースを含む培地において培養される前に洗浄をされたものであり、かつ、当該洗浄の前に、組み換えタンパク質を含む培地において培養されたものである。組み換えタンパク質としては、例えば、FGF2、EGF、インスリンなどが挙げられる。組み換えタンパク質を含む培地は、例えば、無血清培地であってもよい。また、組み換えタンパク質を含む培地における培地としては、脂肪由来幹細胞用培地、間葉系幹細胞用培地などの幹細胞用培地などが挙げられる。組み換えタンパク質を含む培地は、添加剤を含むものであってもよく、ここで、添加剤としては、例えば、間葉系幹細胞用の添加剤などが挙げられ、間葉系幹細胞用の添加剤としては、例えば、ヒトなどの哺乳類などの動物の間葉系幹細胞用の基礎培養液添加剤などが挙げられる。また、ここで、添加剤は、好ましくは、アニマルフリーの添加剤である。アニマルフリーとは、動物因子由来成分を含まないことを意味し、以下の「アニマルフリー」も、同様の意味である。細胞の培養上清液における細胞は、組み換えタンパク質を含む培地において、好ましくは、0時間~336時間、より好ましくは、72時間~168時間、更に好ましくは、96時間~120時間、培養されたものである。ここで、培養される時間は、例えば、冷凍した細胞を培養する場合において、細胞を解凍してから培養される時間である。
【0024】
細胞の培養上清液における細胞は、例えば、無血清培地において培養されたものである。細胞の培養上清液における細胞は、好ましくは、グルコースを含む培地において培養されたものであり、かつ、グルコースを含む培地において培養される前に、無血清培地において培養されたものである。また、細胞の培養上清液における細胞は、好ましくは、グルコースを含む培地において培養されたものであり、かつ、グルコースを含む培地において培養される前に洗浄をされたものであり、かつ、当該洗浄の前に、無血清培地において培養されたものである。無血清培地は、例えば、組み換えタンパク質を含んでもよい。また、無血清培地における培地としては、脂肪由来幹細胞用培地、間葉系幹細胞用培地などの幹細胞用培地などが挙げられる。無血清培地は、添加剤を含むものであってもよく、ここで、添加剤としては、例えば、間葉系幹細胞用の添加剤などが挙げられ、間葉系幹細胞用の添加剤としては、例えば、ヒトなどの哺乳類などの動物の間葉系幹細胞用の基礎培養液添加剤などが挙げられる。また、ここで、添加剤は、好ましくは、アニマルフリーの添加剤である。細胞の培養上清液における細胞は、無血清培地において、好ましくは、0時間~336時間、より好ましくは、72時間~168時間、更に好ましくは、96時間~120時間、培養されたものである。ここで、培養される時間は、例えば、冷凍した細胞を培養する場合において、細胞を解凍してから培養される時間である。
【0025】
細胞の培養上清液における細胞は、例えば、脂肪由来幹細胞用培地、間葉系幹細胞用培地などの幹細胞用培地において培養されたものである。細胞の培養上清液における細胞は、好ましくは、グルコースを含む培地において培養されたものであり、かつ、グルコースを含む培地において培養される前に、脂肪由来幹細胞用培地、間葉系幹細胞用培地などの幹細胞用培地において培養されたものである。また、細胞の培養上清液における細胞は、好ましくは、グルコースを含む培地において培養されたものであり、かつ、グルコースを含む培地において培養される前に洗浄をされたものであり、かつ、当該洗浄の前に、脂肪由来幹細胞用培地、間葉系幹細胞用培地などの幹細胞用培地において培養されたものである。ここで、脂肪由来幹細胞用培地、間葉系幹細胞用培地などの幹細胞用培地は、例えば、無血清培地であってもよく、組み換えタンパク質を含んでもよく、組み換えタンパク質を含む無血清培地であってもよい。脂肪由来幹細胞用培地としては、例えば、ADSC-4培地のほかなどが挙げられる。間葉系幹細胞用培地としては、例えば、CiMS培地のほか、StemFit(登録商標)for Mesenchymal Stem Cell、R:STEMなどが挙げられる。脂肪由来幹細胞用培地、間葉系幹細胞用培地などの幹細胞用培地は、添加剤を含むものであってもよく、ここで、添加剤としては、例えば、間葉系幹細胞用の添加剤などが挙げられ、間葉系幹細胞用の添加剤としては、例えば、ヒトなどの哺乳類などの動物の間葉系幹細胞用の基礎培養液添加剤などが挙げられる。また、ここで、添加剤は、好ましくは、アニマルフリーの添加剤である。細胞の培養上清液における細胞は、脂肪由来幹細胞用培地、間葉系幹細胞用培地などの幹細胞用培地において、好ましくは、0時間~336時間、より好ましくは、72時間~168時間、更に好ましくは、96時間~120時間、培養されたものである。ここで、培養される時間は、例えば、冷凍した細胞を培養する場合において、細胞を解凍してから培養される時間である。
【0026】
細胞の培養上清液は、細胞を培養する培養液の上清液であるところ、好ましくは、細胞の培養上清液は、当該培養液をフィルターにて濾過して得られたものである。当該培養液をフィルターにて濾過して得られたものは、当該培養液をフィルターにて濾過して直ちに得られたものに限らず、当該培養液をフィルターにて濾過して直ちに得られたものに加工などをして得られたものを包含しうる。フィルターの濾過粒度は、好ましくは、0.1μm~1.0μmであり、より好ましくは、0.1μm~0.6μmであり、さらに好ましくは、0.1μm~0.3μmである。なお、細胞の培養上清液は、エクソソームの濃縮液でありうる。
【0027】
本発明の凍結乾燥用組成物における細胞の培養上清液の含有量は、好ましくは、凍結乾燥用組成物に対して、0.1~94.8質量%であり、より好ましくは、凍結乾燥用組成物に対して、50~94.8質量%であり、更に好ましくは、凍結乾燥用組成物に対して、90~94.8質量%である。
【0028】
本発明の凍結乾燥用組成物は、細胞の培養上清液とトレハロースとヒアルロン酸塩のほか、賦形剤、添加剤、緩衝剤、等張調節のための塩類、抗酸化剤、保存剤、薬剤安定剤などの他の物質を含んでもよい。賦形剤としては、例えば、水、精製水、アルコール、グリセリン、乳糖、デンプン、デキストリン、白糖、沈降シリカ、蜂蜜、コメデンプン、トラガントが挙げられる。本発明の凍結乾燥用組成物に含まれる細胞の培養上清液とトレハロースとヒアルロン酸塩以外の他の物質の含有量は、例えば、本発明の凍結乾燥用組成物に対して、0.1~50質量%である。
【0029】
本発明の凍結乾燥用組成物のpHは、好ましくは、5~11であり、より好ましくは、6~10であり、更に好ましくは、7~9である。
【0030】
本発明の凍結乾燥用組成物を凍結乾燥させることにより、凍結乾燥物を得ることができる。凍結乾燥は、例えば、機器としては、FDL1000(東京理科機械株式会社)などを用いて、例えば、-40~+40℃の温度において行われる。凍結乾燥においては、例えば、本発明の凍結乾燥用組成物を凍結した状態で高真空下に曝すことで、固体から気体への昇華によって水分が除去される。凍結乾燥は、例えば、無菌環境下にて行われる。本発明の凍結乾燥物は、例えば、医薬組成物や、化粧用組成物や、これらの有効成分や、健康食品などの食品などとして使用することができる。医薬組成物、化粧用組成物、又は食品が、本発明の凍結乾燥物を含む場合、本発明の凍結乾燥物の含有量は、例えば、医薬組成物や化粧用組成物や食品に対して、0.1%以上、0.5%以上、1%以上、2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、又は90%以上である。また、本発明の凍結乾燥物の含有量は、例えば、医薬組成物や化粧用組成物や食品に対して、99.9%以下、99%以下、95%以下、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、又は10%以下である。
【0031】
なお、本明細書の[項1]~[項22]などにおいて、「細胞が、幹細胞である」([項2])などのように、「Aが、Bである」とする場合において、「Aが、Bである」ことは、「A」が「B」のみであることのみを含意するものではなく、「A」が「B」を含み、かつ、その他の「Aに包含されるもの」を含むことも含意しうるものとする(ただし、Bが数値範囲である場合を除く。)。もっとも、「Aが、Bである」ことは、「A」が「B」のみであることを包含していることから、「Aが、Bである」という記載を根拠として「Aが、Bのみである」という記載に補正することは、本明細書に記載された事項の範囲にとどまるものである。
【実施例0032】
試験例1:
組み換えタンパク質を含むADSC-4培地(コージンバイオ社)でヒト臍帯組織由来幹細胞を増殖培養した。組み換えタンパク質を含むADSC-4培地は、脂肪由来幹細胞用無血清培地である。細胞がサブコンフルエントに達した段階で、TrypLE(商標)Selectにより細胞剥離を行って、継代操作を行い、継代操作の後は、3000cells/cmの細胞密度で再播種を行った。なお、TrypLE(商標)Selectは、細胞解離酵素である。3回目の継代操作後の増殖培養において、細胞がコンフルエントに達した段階で、既存培地であるADSC-4培地を取り除き、当該培地に含まれる組み換えタンパク質を取り除くために、細胞をPBSで2回洗浄した。その後、基礎培地にグルコースを加えて得られた、4.5g/L以上の濃度でグルコースを含有する培地に細胞を移し、48時間増殖培養した。増殖培養の際に細胞によって消費されるグルコースの量を考慮すると、48時間の増殖培養の終了の際の培地に含まれるグルコースの濃度は、0~4.5g/Lであると推察される。増殖培養後、細胞の上澄み液を回収して濾過粒度が0.22μmであるフィルターにて濾過を行い、培養上清液を得た。
【0033】
試験例2:
AFサプリメント(ニプロ社)を加えた、組み換えタンパク質を含むCiMS培地(ニプロ社)でヒト臍帯組織由来幹細胞を増殖培養した。AFサプリメントは、アニマルフリーのヒト間葉系幹細胞用の基礎培養液添加剤である。組み換えタンパク質を含むCiMS培地は、ヒト間葉系幹細胞用培地である。細胞がコンフルエントに達した段階で、既存培地であるCiMS培地を取り除き、当該培地に含まれる組み換えタンパク質を取り除くために、細胞をPBSで2回洗浄した。その後、基礎培地にグルコースを加えて得られた、4.5g/L以上の濃度でグルコースを含有する培地に細胞を移し、48時間増殖培養した。増殖培養の際に細胞によって消費されるグルコースの量を考慮すると、48時間の増殖培養の終了の際の培地に含まれるグルコースの濃度は、0~4.5g/Lであると推察される。増殖培養後、細胞の上澄み液を回収して濾過粒度が0.22μmであるフィルターにて濾過を行い、培養上清液を得た。
【0034】
試験例3:
試験例1で得られた培養上清液からエクソソームの濃縮液を得た。
【0035】
比較例1:
試験例1において得られた培養上清液のみを凍結乾燥した。凍結乾燥においては、機器としては、FDL1000(東京理科機械株式会社)を用いた。培養上清液を凍結乾燥させて得られた凍結乾燥物の外観を図1に示す。
図1に示すとおり、培養上清液の凍結乾燥時に凍結個体が持ち上がり、バイアル瓶中央に跡がついた。また、得られた凍結乾燥物は、加工後も粉末個体がばらばらとなり、外観上のばらつきが多く、クレームにつながるものであった。
【0036】
比較例2:
試験例1において得られた培養上清液にトレハロース(二水和物)を加えて、トレハロース(二水和物)を5質量%含む凍結乾燥用組成物を得て、得られた凍結乾燥用組成物を凍結乾燥した。凍結乾燥においては、機器としては、FDL1000(東京理科機械株式会社)を用いた。凍結乾燥用組成物を凍結乾燥させて得られた凍結乾燥物の外観を図4の最も左側の写真に示す。
図4の最も左側の写真に示すとおり、得られた凍結乾燥物においては、気泡の発生が認められた。
【0037】
比較例3:
試験例1において得られた培養上清液にヒアルロン酸ナトリウム(分子量:60万;由来:微生物)を加えて、ヒアルロン酸ナトリウム(分子量:60万;由来:微生物)を0.1質量%又は0.2質量%含む凍結乾燥用組成物を得て、得られた凍結乾燥用組成物を凍結乾燥した。凍結乾燥においては、機器としては、FDL1000(東京理科機械株式会社)を用いた。凍結乾燥用組成物を凍結乾燥させて得られた凍結乾燥物の外観を図2及び図3に示す。図2は、ヒアルロン酸ナトリウム(分子量:60万;由来:微生物)の含有量が0.1質量%である場合の結果を示し、図3は、ヒアルロン酸ナトリウム(分子量:60万;由来:微生物)の含有量が0.2質量%である場合の結果を示す。
図2及び図3に示すとおり、得られた凍結乾燥物は、気泡が発生して多数の穴構造が見られ、スポンジ状の構造となる場合があり、成形時の安定性が乏しいため、バイアル間で外観上のばらつきが発生し、クレームにつながるものであった。
【0038】
比較例4:
試験例1において得られた培養上清液にヒアルロン酸ナトリウム(分子量:60万;由来:微生物)を加えて、0.5質量%を超えてヒアルロン酸ナトリウム(分子量:60万;由来:微生物)を含む凍結乾燥用組成物を得て、機器としてFDL1000(東京理科機械株式会社)を用いて、得られた凍結乾燥用組成物の凍結乾燥を試みたが、得られた凍結乾燥用組成物は、粘性が高く、製品特性として扱いづらかった。
【0039】
比較例5:
試験例1において得られた培養上清液にトレハロース(二水和物)と必要に応じてマンニトールを加えて、トレハロース(二水和物)を5質量%含みマンニトールを0~30mg/ml含む凍結乾燥用組成物を得て、得られた凍結乾燥用組成物を凍結乾燥した。凍結乾燥においては、機器としては、FDL1000(東京理科機械株式会社)を用いた。凍結乾燥用組成物を凍結乾燥させて得られた凍結乾燥物の外観を図4に示す。図4は、いずれも、トレハロース(二水和物)の含有量を5質量%としつつ、左から順にマンニトールの含有量を0mg/ml、10mg/ml、20mg/ml、30mg/mlとした場合の結果を示す。なお、マンニトールの含有量は、凍結乾燥用組成物の総量(ml)に対するマンニトールの質量(mg)である。
図4に示すとおり、得られた凍結乾燥物においては、トレハロース(二水和物)を加えることによる大きな気泡の発生が観察された。他の賦形剤であるマンニトールを加えても外観の改善は見られず、逆に膨張が観察された。
【0040】
比較例6:
試験例1において得られた培養上清液にトレハロース(二水和物)と必要に応じてマンニトールを加えて、トレハロース(二水和物)を10質量%含みマンニトールを0~30mg/ml含む凍結乾燥用組成物を得て、得られた凍結乾燥用組成物を凍結乾燥した。凍結乾燥においては、機器としては、FDL1000(東京理科機械株式会社)を用いた。凍結乾燥用組成物を凍結乾燥させて得られた凍結乾燥物の外観を図5に示す。図5は、いずれも、トレハロース(二水和物)の含有量を10質量%としつつ、左から順にマンニトールの含有量を0mg/ml、10mg/ml、20mg/ml、30mg/mlとした場合の結果を示す。なお、マンニトールの含有量は、凍結乾燥用組成物の総量(ml)に対するマンニトールの質量(mg)である。
図5に示すとおり、得られた凍結乾燥物は、トレハロース(二水和物)を5質量%から10質量%に増やすと外観が綺麗になるが、波打ったり、瓶底でシュリンクして空間ができたりと、完璧な成形には至らなかった。
【0041】
実施例1:
試験例1において得られた培養上清液にトレハロース(二水和物)とヒアルロン酸ナトリウム(分子量:60万;由来:微生物)を加えて、トレハロース(二水和物)を5質量%含みヒアルロン酸ナトリウム(分子量:60万;由来:微生物)を0.2質量%含む凍結乾燥用組成物を得て、得られた凍結乾燥用組成物を凍結乾燥した。凍結乾燥においては、機器としては、FDL1000(東京理科機械株式会社)を用いた。凍結乾燥用組成物を凍結乾燥させて得られた凍結乾燥物の外観を図6に示す。なお、得られた凍結乾燥用組成物のpHは、8.5であった。
図6に示すとおり、得られた凍結乾燥物は、気泡が発生せず、凍結個体の持ち上がりもなく、バイアル間のばらつきもなく、クレームに値するものではなかった。
以上より、ヒトなどの臍帯組織由来幹細胞などの幹細胞などの細胞を、細胞剥離などを行う2~10回などの継代操作の後、それぞれ、1,000~10,000cells/cmの細胞密度などで再播種を行って組み換えタンパク質を含む培地で増殖培養させ、細胞の洗浄などをして培地に含まれる組み換えタンパク質を取り除くなどをしたうえで、増殖培養を終了する際の濃度として0.5~20g/Lの濃度などでグルコースなどを含む培地で増殖培養させ、得られた増殖培養液を濾過粒度が0.1μm~1.0μmであるフィルターなどにて濾過を行って得られた培養上清液は、トレハロース(二水和物)を添加しても、凍結乾燥後に気泡の発生が認められ、ヒアルロン酸ナトリウム(分子量:60万;由来:微生物)を添加しても、凍結乾燥後にスポンジ状の構造となる場合があり、成形時の安定性が乏しいにもかかわらず、全く意外なことに、1~10質量%などのトレハロース(二水和物)と0.01~0.5質量%などのヒアルロン酸ナトリウム(分子量:60万;由来:微生物)などのヒアルロン酸塩と上記の培養上清液を含む組成物は、凍結乾燥しても、気泡が発生せず、凍結個体の持ち上がりもなく、バイアル間のばらつきもなく、優れた製品形態を実現するため、凍結乾燥用組成物として優れていることが明らかとなった。また、5~10質量%などのトレハロース(二水和物)と0.1~0.3質量%などのヒアルロン酸ナトリウム(分子量:60万;由来:微生物)などのヒアルロン酸塩と上記の培養上清液を含む組成物は、凍結乾燥用組成物として特に優れていることが明らかとなった。レハロース(二水和物)とともに他の賦形剤であるマンニトールを用いても外観の改善は見られず、逆に膨張が観察されたことから、これらの知見は、きわめて意外なことである。
【0042】
実施例2:
試験例2において得られた培養上清液について、比較例1~6及び実施例1と同様の実験を行ったところ、同様の結果が認められた。
【0043】
実施例3:
試験例3において得られたエクソソームの濃縮液について、比較例1~6及び実施例1と同様の実験を行ったところ、同様の結果が認められた。

図1
図2
図3
図4
図5
図6