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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162665
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】建設機械制御方法、建設機械
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/00 20060101AFI20241114BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20241114BHJP
   B66C 13/20 20060101ALI20241114BHJP
   F02D 29/00 20060101ALN20241114BHJP
   F02D 29/04 20060101ALN20241114BHJP
【FI】
F15B11/00 E
E02F9/20 Z
B66C13/20
F02D29/00 B
F02D29/04 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078404
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100141298
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 文典
(72)【発明者】
【氏名】寺田 稜
(72)【発明者】
【氏名】宇澤 亮太
【テーマコード(参考)】
2D003
3F204
3G093
3H089
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB06
2D003BA05
2D003BA06
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB03
2D003DB04
3F204AA04
3F204BA02
3F204CA07
3F204GA01
3G093AA08
3G093AB02
3G093BA04
3G093CA07
3G093DA01
3G093DA02
3G093DB21
3G093DB22
3G093DB27
3G093EB07
3H089AA07
3H089AA83
3H089BB28
3H089BB30
3H089CC08
3H089DA03
3H089DA07
3H089DA13
3H089DB43
3H089EE36
3H089FF03
3H089FF10
3H089GG02
3H089JJ08
(57)【要約】
【課題】油圧装置におけるエネルギーロスを低減しつつエンジンのラグダウンを抑制すること。
【解決手段】回転数検出部74は、エンジン41の回転数を検出する。トルク補正装置55は、油圧レギュレータ52の制限トルクを補正する。圧力検出部73は、前記エンジン41における過給圧を検出する。操作部61~63は、油圧アクチュエータ54a~54cに対応して設けられ、前記油圧アクチュエータ54a~54cの動作を指示する操作を受け付ける。制御装置8は、前記圧力検出部73の検出過給圧が基準圧力を下回る状況下で前記操作部61~63への操作が行われたときに、前記回転数検出部74による検出回転数に応じて補正値を導出する(S2)。前記制御装置8は、既定値を超える前記補正値が導出されてから解除条件が成立するまでの期間に前記補正値に応じて前記制限トルクを補正する動作を前記トルク補正装置55に実行させる(S4)。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械を制御する建設機械制御方法であって、
前記建設機械が、
エンジンと、
前記エンジンの排気ガスのエネルギーを用いて前記エンジンに圧縮空気を供給する過給機と、
前記エンジンの回転数を検出する回転数検出部と、
前記エンジンにより駆動される油圧ポンプと、
前記油圧ポンプにより駆動される1つ以上の油圧アクチュエータと、
前記油圧ポンプの容量を調節することにより前記油圧ポンプの出力トルクを制限トルク以下に調節する油圧レギュレータと、
前記油圧レギュレータの前記制限トルクを補正するトルク補正装置と、
前記圧縮空気の過給圧を検出する圧力検出部と、
前記油圧アクチュエータに対応して設けられ、前記油圧アクチュエータの動作を指示する操作を受け付ける1つ以上の操作部と、を備える場合に、
制御装置が、前記圧力検出部の検出過給圧が基準圧力を下回る状況下で前記操作部への操作が行われたときに、前記回転数検出部による検出回転数に応じて補正値を導出することと、
前記制御装置が、既定値を超える前記補正値が導出されてから解除条件が成立するまでの期間に前記補正値に応じて前記制限トルクを補正する動作を前記トルク補正装置に実行させることと、を含む、建設機械制御方法。
【請求項2】
前記建設機械が、複数の前記油圧アクチュエータと複数の前記操作部とを備える場合に、
前記制御装置は、前記回転数検出部による前記検出回転数と複数の前記操作部への操作内容とに応じて前記補正値を導出する、請求項1に記載の建設機械制御方法。
【請求項3】
前記建設機械が、
ブームを起伏させる第1油圧アクチュエータと前記ブームから垂下され吊荷が吊るされる吊りロープの巻き取りおよび繰り出しを行う第2油圧アクチュエータとを含む複数の前記油圧アクチュエータと、
前記ブームの角度を検出するブーム角度検出部と、
前記吊りロープに加わる吊荷重を検出する吊荷重検出部と、を備えるクレーンである場合に、
前記制御装置は、前記回転数検出部による前記検出回転数と複数の前記操作部への操作内容と前記ブーム角度検出部の検出角度と前記吊荷重検出部の検出荷重とに応じて前記補正値を導出する、請求項2に記載の建設機械制御方法。
【請求項4】
前記制御装置が、前記解除条件が成立したときに前記制限トルクの補正を漸減する処理を前記トルク補正装置に実行させること、をさらに含む、請求項1または請求項2に記載の建設機械制御方法。
【請求項5】
エンジンと、
前記エンジンの排気ガスのエネルギーを用いて前記エンジンに圧縮空気を供給する過給機と、
前記エンジンの回転数を検出する回転数検出部と、
前記エンジンにより駆動される油圧ポンプと、
前記油圧ポンプにより駆動される1つ以上の油圧アクチュエータと、
前記油圧ポンプの容量を調節することにより前記油圧ポンプの出力トルクを制限トルク以下に調節する油圧レギュレータと、
前記油圧レギュレータの前記制限トルクを補正するトルク補正装置と、
前記圧縮空気の過給圧を検出する圧力検出部と、
前記油圧アクチュエータに対応して設けられ、前記油圧アクチュエータの動作を指示する操作を受け付ける1つ以上の操作部と、
請求項1または請求項2に記載の建設機械制御方法を実現する制御装置と、を備える建設機械。
【請求項6】
建設機械を制御する建設機械制御方法であって、
前記建設機械が、
エンジンと、
前記エンジンの排気ガスのエネルギーを用いて前記エンジンに圧縮空気を供給する過給機と、
前記エンジンにより駆動される油圧ポンプと、
前記油圧ポンプにより駆動される複数の油圧アクチュエータと、
前記油圧ポンプの容量を調節することにより前記油圧ポンプの出力トルクを制限トルク以下に調節する油圧レギュレータと、
前記油圧レギュレータの前記制限トルクを補正するトルク補正装置と、
前記圧縮空気の過給圧を検出する圧力検出部と、
前記複数の油圧アクチュエータに対応して設けられ、前記複数の油圧アクチュエータ各々の動作を指示する操作を受け付ける複数の操作部と、を備える場合に、
制御装置が、前記複数の操作部への操作が行われており、かつ、前記圧力検出部の検出過給圧が基準圧力を下回るときに、前記複数の操作部への操作内容に応じて補正値を導出することと、
前記制御装置が、既定値を超える前記補正値が導出されてから解除条件が成立するまでの期間に前記補正値に応じて前記制限トルクを補正する動作を前記トルク補正装置に実行させることと、を含む、建設機械制御方法。
【請求項7】
前記建設機械が、
ブームを起伏させる第1油圧アクチュエータと前記ブームから垂下され吊荷が吊るされる吊りロープの巻き取りおよび繰り出しを行う第2油圧アクチュエータとを含む複数の前記油圧アクチュエータと、
前記ブームの角度を検出するブーム角度検出部と、
前記吊りロープに加わる吊荷重を検出する吊荷重検出部と、を備えるクレーンである場合に、
前記制御装置は、複数の前記操作部への操作内容と前記ブーム角度検出部の検出角度と前記吊荷重検出部の検出荷重とに応じて前記補正値を導出する、請求項6に記載の建設機械制御方法。
【請求項8】
エンジンと、
前記エンジンの排気ガスのエネルギーを用いて前記エンジンに圧縮空気を供給する過給機と、
前記エンジンにより駆動される油圧ポンプと、
前記油圧ポンプにより駆動される複数の油圧アクチュエータと、
前記油圧ポンプの容量を調節することにより前記油圧ポンプの出力トルクを制限トルク以下に調節する油圧レギュレータと、
前記油圧レギュレータの前記制限トルクを補正するトルク補正装置と、
前記圧縮空気の過給圧を検出する圧力検出部と、
前記複数の油圧アクチュエータに対応して設けられ、前記複数の油圧アクチュエータ各々の動作を指示する操作を受け付ける複数の操作部と、
請求項6に記載の建設機械制御方法を実現する制御装置と、を備える建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧装置におけるエネルギーロスを低減しつつエンジンのラグダウンを抑制する建設機械制御方法および建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
クレーンなどの建設機械において、エンジンが油圧ポンプを駆動し、前記油圧ポンプが複数の油圧アクチュエータへ作動油を供給する。前記油圧ポンプにおいて急峻な負荷変動が発生すると、前記エンジンの回転数が一時的に低下するラグダウンが発生する。
【0003】
前記ラグダウンが発生すると、ガバナが前記エンジンの回転数のフィードバック制御によって前記エンジンへの燃料供給量を増やし、前記エンジンにおいて燃料過多が生じやすい。
【0004】
前記エンジンにおける前記燃料過多は、黒煙の排出および燃費の悪化を招く。さらに前記燃料過多がDPF(Diesel Particulate Filter)の溶損を招くおそれもある。
【0005】
そこで、前記油圧ポンプにおいて急峻な負荷変動が発生したときに、前記エンジンのラグダウンを抑制することが望まれる。
【0006】
例えば、前記エンジンへ供給される空気の過給圧が第1の所定値以下になってから第2の所定値へ上昇するまでの間に、前記油圧ポンプのトルクの制限値を基準トルクより小さい一定の値に維持することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000-161302号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前記建設機械において、前記油圧ポンプの制限トルクを下げることは、油圧装置におけるエネルギーロスの増大を招く。そのため、前記油圧装置におけるエネルギーロスを低減するためには、前記油圧ポンプの制限トルクを下げる制御は、必要最小限にすることが望ましい。
【0009】
一方、前記過給圧が低下したときの前記エンジンにおける前記燃料過多の程度および発生し易さは、各種の状況に応じて異なる。
【0010】
本発明の目的は、油圧装置におけるエネルギーロスを低減しつつエンジンのラグダウンを抑制するための建設機械制御方法および建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一の局面に係る第1建設機械制御方法は、建設機械を制御する方法である。前記第1建設機械制御方法は、前記建設機械が、エンジンと、過給機と、回転数検出部と、油圧ポンプと、1つ以上の油圧アクチュエータと、油圧レギュレータと、トルク補正装置と、圧力検出部と、1つ以上の操作部と、を備える場合に適用される。前記過給機は、前記エンジンの排気ガスのエネルギーを用いて前記エンジンに圧縮空気を供給する。前記回転数検出部は、前記エンジンの回転数を検出する。前記油圧ポンプは、前記エンジンにより駆動される。前記油圧アクチュエータは、前記油圧ポンプにより駆動される。前記油圧レギュレータは、前記油圧ポンプの容量を調節することにより前記油圧ポンプの出力トルクを制限トルク以下に調節する。前記トルク補正装置は、前記油圧レギュレータの前記制限トルクを補正する。前記圧力検出部は、前記圧縮空気の過給圧を検出する。前記操作部は、前記油圧アクチュエータに対応して設けられ、前記油圧アクチュエータの動作を指示する操作を受け付ける。前記第1建設機械制御方法は、制御装置が、前記圧力検出部の検出過給圧が基準圧力を下回る状況下で前記操作部への操作が行われたときに、前記回転数検出部による検出回転数に応じて補正値を導出することを含む。さらに前記第1建設機械制御方法は、前記制御装置が、既定値を超える前記補正値が導出されてから解除条件が成立するまでの期間に前記補正値に応じて前記制限トルクを補正する動作を前記トルク補正装置に実行させることを含む。
【0012】
本発明の他の局面に係る第1建設機械は、前記エンジンと、前記過給機と、前記回転数検出部と、前記油圧ポンプと、前記油圧アクチュエータと、1つ以上の前記油圧レギュレータと、前記トルク補正装置と、前記圧力検出部と、1つ以上の前記操作部と、前記第1建設機械制御方法を実現する前記制御装置と、を備える。
【0013】
本発明の他の局面に係る第2建設機械制御方法は、建設機械を制御する方法である。前記第2建設機械制御方法は、前記建設機械が、前記エンジンと、前記過給機と、前記油圧ポンプと、複数の前記油圧アクチュエータと、前記油圧レギュレータと、前記トルク補正装置と、前記圧力検出部と、複数の前記操作部と、を備える場合に適用される。前記第2建設機械制御方法は、制御装置が、前記複数の操作部への操作が行われており、かつ、前記圧力検出部の検出過給圧が基準圧力を下回るときに、前記複数の操作部への操作内容に応じて補正値を導出することを含む。さらに前記第2建設機械制御方法は、前記制御装置が、既定値を超える前記補正値が導出されてから解除条件が成立するまでの期間に前記補正値に応じて前記制限トルクを補正する動作を前記トルク補正装置に実行させることを含む。
【0014】
本発明の他の局面に係る第2建設機械は、前記エンジンと、前記過給機と、前記油圧ポンプと、前記油圧アクチュエータと、複数の前記油圧レギュレータと、前記トルク補正装置と、前記圧力検出部と、複数の前記操作部と、前記第2建設機械制御方法を実現する前記制御装置と、を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、油圧装置におけるエネルギーロスを低減しつつエンジンのラグダウンを抑制するための建設機械制御方法および建設機械を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、第1実施形態に係るクレーンの構成図である。
図2図2は、第1実施形態に係るクレーンにおける制御関連機器の構成を表すブロック図である。
図3図3は、第1実施形態に係るクレーンにおける制御装置の構成を表すブロック図である。
図4図4は、第1実施形態に係るクレーンにおける制限トルク制御の手順の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、第1実施形態に係るクレーンにおける検出過給圧と、トルク制御弁の制御電流と、油圧ポンプの制限トルクおよび出力トルクと、の変化の第1例を示すタイムチャートである。
図6図6は、第1実施形態に係るクレーンにおける検出過給圧と、トルク制御弁の制御電流と、油圧ポンプの制限トルクおよび出力トルクと、の変化の第2例を示すタイムチャートである。
図7図7は、第2実施形態に係るクレーンにおける制御関連機器の構成を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0018】
[第1実施形態:クレーン10の構成]
本発明の第1実施形態に係るクレーン10は、建設機械の一例である。クレーン10は、吊り荷9を吊り上げつつ移動させる作業機械である。以下、クレーン10が移動式クレーンである場合の例について説明する。
【0019】
図1に示されるように、クレーン10は、下部走行体11、上部旋回体12、キャブ13、ガントリ15、ウインチ装置16、カウンターウェイト17、ブーム21、フック30、起伏ロープ31および吊りロープ32などを備える。ウインチ装置16は、第1ウインチ装置161および第2ウインチ装置162を含む。
【0020】
ガントリ15は、上部旋回体12から起立する状態で上部旋回体12に固定されている。カウンターウェイト17は、上部旋回体12に連結され、上部旋回体12の後方に張り出している。
【0021】
下部走行体11は、上部旋回体12を旋回可能に支持する台座部分である。上部旋回体12は、下部走行体11の上部に、下部走行体11に対し旋回可能に設けられている。下部走行体11は、下部基体の一例である。
【0022】
キャブ13は、操縦室である。キャブ13は、上部旋回体12の前部に連結されている。上部旋回体12は、キャブ13、ガントリ15、ウインチ装置16およびカウンターウェイト17とともに一体に旋回する旋回部120を構成している。
【0023】
図1に示されるクレーン10は移動式クレーンである。そのため、下部走行体11は、走行装置14を備える。走行装置14は、下部走行体11に連結されている。
【0024】
図1は、走行装置14がクローラー式の装置である例を示す。なお、走行装置14がホイール式走行装置である場合もある。
【0025】
ブーム21は、その根元部が上部旋回体12に連結されている。ブーム21は、上部旋回体12と連結された前記根元部を中心にして起伏可能である。
【0026】
ブーム21は、吊り荷9を吊り下げる吊りロープ32を支持する。吊りロープ32は、ブーム21の先端部から垂下され、フック30を吊り下げる。吊り荷9は、フック30に吊される。即ち、吊り荷9は、フック30を介して吊りロープ32に吊るされる。
【0027】
起伏ロープ31は、ブーム21の先端部に設けられたブームポイントアイドラーシーブ22に掛けられている。吊りロープ32は、ガントリ15の先端部に設けられたガントリシーブ23に掛けられている。
【0028】
第1ウインチ装置161は、起伏ロープ31を介してブーム21を支える。また、第2ウインチ装置162は、吊りロープ32を介してフック30を支える。
【0029】
第1ウインチ装置161は、起伏ロープ31の巻き取り、および、繰り出しを行うことにより、ブーム21の仰角を変更する。即ち、ブーム21は、第1ウインチ装置161および起伏ロープ31によって仰角を変更可能に駆動される。
【0030】
第2ウインチ装置162は、吊りロープ32の巻き取り、および、繰り出しを行うことにより、フック30を昇降させる。
【0031】
カウンターウェイト17は、ブーム21、フック30および吊り荷9の荷重とのバランスをとる。
【0032】
図2に示されるように、クレーン10は、動力装置4と、油圧装置5と、操作装置6と、状態検出装置7と、制御装置8と、を備える。さらにクレーン10は、表示装置6xを備える。
【0033】
[動力装置4]
動力装置4は、エンジン41を含む。エンジン41は、ディーゼルエンジンである。動力装置4は、ガバナ42、DPF43および過給機44なども含む。
【0034】
ガバナ42は、エンジン41への燃料の供給量を調節することにより、エンジン41の回転数を調節する。
【0035】
DPF43は、エンジン41の排気ガス中の微粒子を捕集するフィルターである。エンジン41の負荷を増大させる再生処理が行われることにより、DPF43に蓄積された前記微粒子が燃焼する。
【0036】
過給機44は、エンジン41の排気ガスのエネルギーを用いてエンジン41に圧縮空気を供給する。例えば、過給機44は、エンジン41の排気ガスのエネルギーによって回転する排気タービンを含む。
【0037】
[油圧装置5]
油圧装置5は、エンジン41によって駆動される。油圧装置5は、複数の油圧ポンプ51と、複数の油圧レギュレータ52と、複数の制御弁53と、複数の油圧アクチュエータ54と、を含む。
【0038】
複数の油圧ポンプ51は、エンジン41によって駆動される。複数の油圧ポンプ51は、それぞれ対応する複数の油圧アクチュエータ54へ作動油を供給する。本実施形態において、複数の油圧ポンプ51は、第1ポンプ51a、第2ポンプ51bおよび第3ポンプ51cを含む。
【0039】
本実施形態において、複数の油圧レギュレータ52は、それぞれ第1ポンプ51a、第2ポンプ51bおよび第3ポンプ51cに対応する第1レギュレータ52a、第2レギュレータ52bおよび第3レギュレータ52cを含む。
【0040】
油圧レギュレータ52各々は、対応する油圧ポンプ51各々の容量を調節することにより油圧ポンプ51各々の出力トルクを制限トルク以下に調節する。油圧レギュレータ52各々は、対応する油圧ポンプ51各々の傾転角を調節することにより油圧ポンプ51各々の容量を調節する。
【0041】
油圧レギュレータ52各々は、油圧ポンプ51各々の吐出圧力と前記制限トルクに対応する制限圧力との差に応じて油圧ポンプ51各々の傾転角を調節する。例えば、前記制限圧力は、油圧レギュレータ52各々が備えるバネによって付与される。
【0042】
油圧レギュレータ52各々は、油圧ポンプ51各々の吐出圧力が前記制限圧力を超えないように対応する油圧ポンプ51各々の吐出油量を制限する。これにより、油圧ポンプ51各々の出力トルクが前記制限トルク以下に調節される。
【0043】
複数の制御弁53各々は、複数の油圧アクチュエータ54各々に対応して設けられた油圧制御弁である。制御弁53各々は、制御装置8から供給される弁制御信号に従って油圧アクチュエータ54各々への作動油の供給量を調節する。
【0044】
複数の油圧ポンプ51は、それぞれ対応する複数の制御弁53を通じて複数の油圧アクチュエータ54へ作動油を供給する。即ち、複数の油圧アクチュエータ54は、複数の油圧ポンプ51によって駆動される。
【0045】
複数の油圧アクチュエータ54は、第1ポンプ51aに対応する旋回アクチュエータ54aと、第2ポンプ51bに対応する起伏アクチュエータ54bと、第3ポンプ51cに対応する吊りアクチュエータ54cとを含む。
【0046】
旋回アクチュエータ54aは、上部旋回体12を回転させる油圧モーターである。起伏アクチュエータ54bは、第1ウインチ装置161を駆動する油圧モーターである。吊りアクチュエータ54cは、第2ウインチ装置162を駆動する油圧モーターである。
【0047】
起伏アクチュエータ54bは、ブーム21を起伏させる第1油圧アクチュエータの一例である。吊りアクチュエータ54cは、吊りロープ32の巻き取りおよび繰り出しを行う第2油圧アクチュエータの一例である。
【0048】
[状態検出装置7]
状態検出装置7は、クレーン10が備える各種の機器の状態を検出する。
【0049】
制御装置8は、状態検出装置7および操作装置6などの他の機器と車載ネットワーク100を通じて通信可能である。車載ネットワーク100は、例えばCAN(Controller Area Network)などである。
【0050】
状態検出装置7の検出結果は、車載ネットワーク100を通じて制御装置8へ伝送される。制御装置8から出力される制御信号は、車載ネットワーク100を通じて制御対象の機器へ伝送される。
【0051】
状態検出装置7は、荷重計71、ブーム角度計72、過給圧センサー73および回転数センサー74などを含む。
【0052】
荷重計71は、吊りロープ32に加わる吊荷重を検出する。ブーム角度計72は、ブーム21の角度、即ち、ブーム21の仰角を検出する。荷重計71は、吊荷重検出部の一例である。ブーム角度計72は、ブーム角度検出部の一例である。
【0053】
過給圧センサー73は、エンジン41における過給圧を検出する圧力センサーである。前記過給圧は、過給機44からエンジン41へ供給される前記圧縮空気の圧力である。
【0054】
過給圧センサー73は、前記圧縮空気の供給路の圧力と大気圧との差圧を前記過給圧として検出する。過給圧センサー73は、圧力検出部の一例である。
【0055】
回転数センサー74は、エンジン41の回転数を検出する。回転数センサー74は、回転数検出部の一例である。
【0056】
[操作装置6、表示装置6x]
操作装置6は、操縦者の操作を受け付ける装置である。表示装置6xは情報を表示する装置である。
【0057】
例えば、表示装置6xは、液晶表示ユニットなどのパネル表示装置を含む。操作装置6および表示装置6xなどのヒューマンインターフェースのための装置は、キャブ13内に設けられている。
【0058】
操作装置6は、油圧装置5における複数の油圧アクチュエータ54に対応して設けられた複数の操作部61,62,63を含む。複数の操作部61,62,63各々は、複数の油圧アクチュエータ54各々の動作を指示する操作を受け付ける。
【0059】
具体的には、操作装置6は、旋回アクチュエータ54aに対応する旋回操作部61と、起伏アクチュエータ54bに対応する起伏操作部62と、吊りアクチュエータ54cに対応する吊り操作部63と、を含む。
【0060】
旋回操作部61、起伏操作部62および吊り操作部63は、それぞれ旋回アクチュエータ54a、起伏アクチュエータ54bおよび吊りアクチュエータ54cの動作を指示する操作を受け付ける。
【0061】
旋回操作部61、起伏操作部62および吊り操作部63は、対応するアクチュエータの動作方向および動作速度を指示する操作を受け付ける操作レバーである。
【0062】
さらに操作装置6は、アクセル操作部64と操作検出装置60とを含む。アクセル操作部64は、エンジン41の回転数の増減を指示する操作を受け付ける。例えば、アクセル操作部64は、ダイヤル式の操作部である。
【0063】
操作検出装置60は、複数の操作部61~64に対する操作を検出し、検出された操作の内容を表す操作信号を車載ネットワーク100を通じて制御装置8へ出力する。
【0064】
ガバナ42は、アクセル操作部64に対する操作の内容を表す前記操作信号に応じてエンジン41への燃料供給量を調節する。
【0065】
[制御装置8]
制御装置8は、油圧装置5に関する操作の内容を表す前記操作信号に応じて複数の制御弁53を制御する。油圧装置5に関する操作は、旋回操作部61、起伏操作部62および吊り操作部63の各々に対する操作を含む。
【0066】
図3に示されるように、制御装置8は、MPU(Micro Processing Unit)801、RAM(Random Access Memory)802、不揮発性メモリー803および通信インターフェイス804などを備える。なお、RAM802および不揮発性メモリー803は、コンピューター読み取り可能な記憶装置である。
【0067】
MPU801は、予め不揮発性メモリー803に記憶されたプログラムを実行することにより、各種のデータ処理および制御を実行するプロセッサーの一例である。
【0068】
RAM802は、MPU801によって実行される前記プログラムおよびMPU801が導出もしくは参照するデータを一時記憶する揮発性のメモリーである。
【0069】
不揮発性メモリー803は、MPU801によって実行される前記プログラムおよびMPU801が参照するデータを予め記憶する。例えば、不揮発性メモリー803がEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)またはフラッシュメモリーなどであることが考えられる。
【0070】
通信インターフェイス804は、車載ネットワーク100を通じて状態検出装置7などの他の機器と通信する装置である。MPU801は、通信インターフェイス804を通じて状態検出装置7の検出結果を取得する。さらに、MPU801は、通信インターフェイス804を通じて他の機器へ制御信号を出力する。
【0071】
MPU801が予め定められた制御プログラムを実行することにより、制御装置8は、各種のデータ処理および制御を実行する。
【0072】
制御装置8は、車載ネットワーク100を通じて状態検出装置7の検出結果および操作装置6への操作内容を表す前記操作信号を取得する処理を実行する。
【0073】
さらに制御装置8は、旋回操作部61、起伏操作部62および吊り操作部63に対応する前記操作信号に応じて旋回アクチュエータ54a、起伏アクチュエータ54bおよび吊りアクチュエータ54cに対応する複数の制御弁53を制御する。
【0074】
さらに制御装置8は、状態検出装置7の検出結果および各種の制御状況を表す情報を表示装置6xに出力する。
【0075】
複数の油圧ポンプ51の一部または全部において急峻な負荷変動が発生すると、ガバナ42による燃料供給の調節が負荷変動に十分に追従できない事態が生じる場合がある。この場合、エンジン41の回転数が一時的に低下するラグダウンが発生する。
【0076】
前記ラグダウンが発生すると、ガバナ42がエンジン41の回転数のフィードバック制御によってエンジン41への燃料供給量を増やし、エンジン41において燃料過多が生じやすい。
【0077】
エンジン41における前記燃料過多は、黒煙の排出および燃費の悪化を招く。さらに前記燃料過多がDPF43の溶損を招くおそれもある。
【0078】
そこで、複数の油圧ポンプ51の一部または全部において急峻な負荷変動が発生したときに、エンジン41のラグダウンを抑制することが望まれる。
【0079】
例えば、前記過給圧の低下に応じて複数の油圧ポンプ51の一部または全部の出力トルクの制限値を下げることが考えられる。これにより、エンジン41のラグダウンが抑制される。
【0080】
[トルク制御弁55]
本実施形態において、油圧装置5は、1つ以上のトルク制御弁55をさらに備える(図2参照)。
【0081】
トルク制御弁55は、複数の油圧レギュレータ52の一部または全部へ補正油圧を付与することが可能な電磁比例弁である。トルク制御弁55は、パイロット圧を圧力源として前記補正油圧を出力する。
【0082】
トルク制御弁55は、制御装置8から供給される制御電流A1のレベルに応じて前記補正油圧を増減させる。図2に示される例において、油圧装置5は、2つのトルク制御弁55を備える。
【0083】
2つのトルク制御弁55は、第2ポンプ51bおよび第2レギュレータ52bに対応する第1トルク制御弁55bと、第3ポンプ51cおよび第3レギュレータ52cに対応する第2トルク制御弁55cと、を含む。
【0084】
トルク制御弁55各々が対応する油圧レギュレータ52各々へ前記補正油圧を付与しているときに、油圧レギュレータ52各々は、対応する油圧ポンプ51各々の吐出圧力および前記補正油圧の合計圧力と前記制限圧力との差に応じて油圧ポンプ51各々の傾転角を調節する。
【0085】
即ち、油圧レギュレータ52各々は、前記補正油圧に応じて対応する油圧ポンプ51各々の容量を低減する。その結果、油圧ポンプ51各々の前記制限トルクが前記補正油圧に応じて低減する。
【0086】
以上に示されるように、トルク制御弁55各々は、制御電流A1のレベルに応じて対応する油圧レギュレータ52各々の前記制限トルクを補正する。トルク制御弁55各々は、トルク補正装置の一例である。
【0087】
トルク制御弁55各々が前記補正油圧を出力することにより、対応する油圧ポンプ51各々の前記制限トルクを下げることが可能である。トルク制御弁55各々が前記過給圧の低下に応じて制御されることにより、エンジン41のラグダウンが抑制される。
【0088】
ところで、クレーンにおいて、油圧ポンプ51各々の前記制限トルクを下げることは、油圧装置5におけるエネルギーロスの増大を招く。そのため、油圧装置5におけるエネルギーロスを低減するためには、油圧ポンプ51各々の前記制限トルクを下げる制御は、必要最小限にすることが望ましい。
【0089】
一方、前記過給圧が低下したときのエンジン41における前記燃料過多の程度および発生し易さは、各種の状況に応じて異なる。
【0090】
クレーン10において、制御装置8は、後述する制限トルク制御を実行する(図4参照)。これにより、油圧装置5におけるエネルギーロスを低減しつつエンジン41のラグダウンを抑制することが可能になる。
【0091】
[制限トルク制御]
以下、図4に示されるフローチャートを参照しつつ、前記制限トルク制御の手順の一例について説明する。
【0092】
前記制限トルク制御は、クレーン10を制御するクレーン制御方法を実現する処理の一例である。制御装置8は、エンジン41が始動したときに前記制限トルク制御を開始する。制御装置8は、前記クレーン制御方法を実現する装置の一例である。前記クレーン制御方法は、建設機械を制御する建設機械制御方法の一例である。
【0093】
以下の説明において、S1,S2,…は、前記制限トルク制御における複数の工程の識別符号を表す。前記制限トルク制御において、まずは工程S1の処理が実行される。
【0094】
<工程S1>
工程S1において、制御装置8は、予め定められた補正条件が成立するか否かを判別する。
【0095】
例えば、前記補正条件は、過給圧センサー73の検出過給圧P1が第1基準圧力PS1を下回る状況下で油圧装置5に関する操作部61~63への操作が行われたという条件である(図5,6参照)。第1基準圧力PS1は、予め設定される。
【0096】
前記補正条件が、過給圧センサー73の検出過給圧P1が第1基準圧力PS1を下回る状況下で操作部61~63のうちの複数に並行して操作が行われたという条件であってもよい。
【0097】
図5,6は、前記制限トルク制御が実行される場合における検出過給圧P1と、トルク制御弁55の制御電流A1と、油圧ポンプ51の制限トルクTL1と、油圧ポンプ51の出力トルクT1と、の変化の第1例および第2例を示す。図5,6において、第1時点TM1は、前記補正条件が成立した時点である。
【0098】
制御装置8は、前記補正条件が成立するまで前記補正条件の判別を繰り返す。制御装置8は、前記補正条件が成立したときに工程S2の処理を実行する。
【0099】
<工程S2>
工程S2において、制御装置8は、第2ポンプ51bおよび第3ポンプ51c各々についての前記制限トルクの補正の程度を表す補正値を導出する。本実施形態において、前記補正値は、トルク制御弁55の制御電流A1の値である。
【0100】
本実施形態において、制御装置8は、第1トルク制御弁55bおよび第2トルク制御弁55c各々に対応する前記補正値を個別に導出する。換言すれば、制御装置8は、第2ポンプ51bおよび第3ポンプ51c各々に対応する前記補正値を個別に導出する。
【0101】
例えば、制御装置8は、第1導出処理、第2導出処理、第3導出処理、第4導出処理、第5導出処理または第6導出処理のいずれかによって前記補正値を導出する。
【0102】
前記第1導出処理は、回転数センサー74による検出回転数に応じて前記補正値を導出する処理である。
【0103】
例えば、前記第1導出処理は、前記検出回転数を予め定められた数式またはルックアップテーブルに適用することにより前記補正値を導出する処理である。前記第1導出処理において、エンジン41のトルク特性における最大トルクの発生回転数と前記検出回転数との差が大きいほど、より大きな前記補正値が導出されることが考えられる。
【0104】
ここで、油圧装置5に関する複数の操作部61~63のうち並行して操作された操作部の数のことを並行操作数と称する。
【0105】
前記第2導出処理は、前記並行操作数に応じて前記補正値を導出する処理である。前記第2導出処理において、前記並行操作数が多いほど、より大きな前記補正値が導出されることが考えられる。
【0106】
前記第3導出処理は、複数の操作部61~63に対する操作方向に応じて前記補正値を導出する処理である。例えば、複数の操作部61~63に対する操作方向の複数の組み合わせと複数の候補値との対応関係を表す導出ルールが予め設定される。この場合、前記第3導出処理は、前記導出ルールに従って前記複数の候補値の中から前記補正値を選択する処理である。
【0107】
一般に、起伏アクチュエータ54bの負荷は、起伏アクチュエータ54bがブーム21を起立させる方向へ動作するときの方が、起伏アクチュエータ54bがブーム21を傾倒させる方向へ動作するときよりも大きい。
【0108】
例えば、前記第3導出処理において、起伏操作部62に対する起立操作が行われたときに起伏操作部62に対する傾倒操作が行われたときよりもより大きな前記補正値が導出される。
【0109】
前記起立操作は、起伏アクチュエータ54bにブーム21を起立させる動作を指示する操作である。前記傾倒操作は、起伏アクチュエータ54bにブーム21を傾倒させる動作を指示する操作である。
【0110】
同様に、吊りアクチュエータ54cの負荷は、吊りアクチュエータ54cが吊りロープ32を巻き取る方向へ動作するときの方が、吊りアクチュエータ54cが吊りロープ32を繰り出す方向へ動作するときよりも大きい。
【0111】
例えば、前記第3導出処理において、吊り操作部63に対する巻き取り操作が行われたときに吊り操作部63に対する繰り出し操作が行われたときよりもより大きな前記補正値が導出される。
【0112】
前記巻き取り操作は、吊りアクチュエータ54cに吊りロープ32の巻き取り動作を指示する操作である。前記繰り出し操作は、吊りアクチュエータ54cに吊りロープ32の繰り出し動作を指示する操作である。
【0113】
前記第4導出処理は、複数の操作部61~63に対する操作内容とブーム角度計72の検出角度と荷重計71の検出荷重とに応じて前記補正値を導出する処理である。
【0114】
例えば、前記第4導出処理は、ブーム角度計72の検出角度と荷重計71の検出荷重とに基づいてブーム21に作用するトルクを導出する処理を含む。さらに前記第4導出処理は、前記複数の候補値から前記導出ルールに従って1つの補正基準値を選択する処理を含む。
【0115】
さらに前記第4導出処理は、選択された前記補正基準値をブーム21に作用するトルクで補正することにより前記補正値を導出する処理を含む。
【0116】
前記第5導出処理は、回転数センサー74の検出回転数と、複数の操作部61~63に対する操作内容と、ブーム角度計72の検出角度と、荷重計71の検出荷重と、に応じて前記補正値を導出する処理である。前記並行操作数および前記操作方向は、複数の操作部61~63に対する操作内容の一例である。
【0117】
例えば、前記第5導出処理は、ブーム角度計72の検出角度と荷重計71の検出荷重とに基づいてブーム21に作用するトルクを導出する処理を含む。さらに前記第5導出処理は、前記複数の候補値から前記導出ルールに従って1つの補正基準値を選択する処理を含む。
【0118】
さらに前記第5導出処理は、エンジン41の最大トルクの発生回転数と前記検出回転数との差と、ブーム21に作用するトルクと、に応じて補正係数を導出する処理を含む。さらに前記第5導出処理は、選択された前記補正基準値を前記補正係数によって補正することにより前記補正値を導出する処理を含む。
【0119】
前記第6導出処理は、複数の操作部61~63に対する操作内容と、ブーム角度計72の検出角度と、荷重計71の検出荷重と、に応じて前記補正値を導出する処理である。例えば、前記第6導出処理は、前記第5導出処理から回転数センサー74の検出回転数に関する処理が除かれた処理である。
【0120】
以上に示される前記補正値の導出方法は、あくまで一例であり、前記補正値が他の方法で導出されてもよい。
【0121】
制御装置8は、工程S2の処理を実行した後、工程S3の処理を実行する。
【0122】
<工程S3>
工程S3において、制御装置8は、導出された前記補正値が予め定められた有意値以上であるか否かに応じて次の処理を判定する。
【0123】
制御装置8は、導出された前記補正値が前記有意値未満である場合に、工程S1から始まる処理を繰り返す。
【0124】
一方、制御装置8は、導出された前記補正値が前記有意値以上である場合に、工程S4の処理を実行する。なお、工程S3の処理が省略されてもよい。
【0125】
<工程S4>
工程S4において、制御装置8は、前記補正値に相当する制御電流A1を対象のトルク制御弁55へ出力する。これにより、制御装置8は、第2ポンプ51bおよび第3ポンプ51cの一方または両方の制限トルクTL1を制御電流A1に応じて補正する動作をトルク制御弁55に実行させる(図5,6参照)。
【0126】
図5,6において、下限電流AS1は、制御電流A1の下限値である。下限電流AS1が制御電流A1としてトルク制御弁55へ出力されている場合、トルク制御弁55は励磁されず、制限トルクTL1の補正は行われない。
【0127】
図5,6において、補正電流AS2は、前記補正値に相当する制御電流A1である。図5は、補正電流AS2が比較的大きい場合の例を示し、図6は、補正電流AS2が比較的小さい場合の例を示す。
【0128】
図5,6において、基準制限トルクTL11は、トルク制御弁55によるトルク補正が行われないときの制限トルクTL1である。図5,6において、補正制限トルクTL12は、トルク制御弁55によって補正された制限トルクTL1である。
【0129】
図5,6に示されるように、制限トルクTL1の補正は、前記補正条件が成立する第1時点TM1から開始される。また、制限トルクTL1の補正量DT1は、回転数センサー74による前記検出回転数または油圧装置5に関する複数の操作部61~63への操作内容などに応じて異なる。
【0130】
制御装置8は、工程S4の処理を実行した後、工程S5の処理を実行する。
【0131】
<工程S5>
工程S5において、制御装置8は、予め定められた解除条件が成立するか否かを判別する。図5,6において、第2時点TM2は、前記解除条件が成立した時点である。
【0132】
例えば、前記解除条件は、過給圧センサー73の検出過給圧P1が第2基準圧力PS2以上であるという圧力条件を含む(図5,6参照)。
【0133】
図5,6に示される例では、第2基準圧力PS2が第1基準圧力PS1よりも高いが、第2基準圧力PS2が第1基準圧力PS1と同じであってもよい。なお、前記圧力条件が、検出過給圧P1が予め定められた変化パターンで上昇したという条件を含んでもよい。
【0134】
また、前記解除条件が、回転数センサー74による前記検出回転数に関する回転数条件を含んでもよい。例えば、前記回転数条件は、前記検出回転数が予め定められた変化パターンで上昇したという条件である。
【0135】
制御装置8は、前記解除条件が成立するまで工程S5の処理を繰り返す。制御装置8は、前記解除条件が成立したときに工程S6の処理を実行する。
【0136】
<工程S6>
工程S6において、制御装置8は、補正漸減処理を実行する。前記補正漸減処理は、制限トルクTL1の補正を漸減する処理である。
【0137】
制御装置8は、前記補正漸減処理において、制御電流A1を補正電流AS2から下限電流AS1まで漸減させる(図5,6参照)。
【0138】
制御装置8は、工程S6の処理を実行した後、工程S1から始まる処理を繰り返す。
【0139】
以上に示されるように、制御装置8は、前記補正条件が成立したときに状況に応じて異なる前記補正値を導出する(工程S1~S2)。
【0140】
さらに制御装置8は、前記有意値を超える前記補正値が導出されてから前記解除条件が成立するまでの期間に、前記補正値に応じて制限トルクTL1を補正する動作をトルク制御弁55b,55cに実行させる(工程S3~S5)。前記有意値は、既定値の一例である。
【0141】
制御装置8が工程S1~S5の処理を実行することにより、エンジン41の前記過給圧が低下したときにエンジン41のラグダウンが抑制される。
【0142】
また、前記過給圧が低下したときのエンジン41における燃料過多の程度および発生し易さの状況に応じた値が前記補正値として導出される。その結果、油圧装置5におけるエネルギーロスを低減しつつエンジン41のラグダウンを抑制することが可能である。
【0143】
[第2実施形態:クレーン10Aの構成]
次に、図7を参照しつつ、本発明の第2実施形態に係るクレーン10Aについて説明する。クレーン10Aは、建設機械の一例である。
【0144】
以下、クレーン10Aにおけるクレーン10と異なる点について説明する。クレーン10Aは、クレーン10から第2トルク制御弁55cが除かれた構成を備える。
【0145】
クレーン10Aにおいて、第1トルク制御弁55bは、下限電流AS1を超える制御電流A1を供給されたときに、第2レギュレータ52bおよび第3レギュレータ52cの両方に前記補正油圧を出力する。
【0146】
本実施形態において、制御装置8は、第2ポンプ51bおよび第3ポンプ51cに共通の前記補正値を導出する。
【0147】
例えば、制御装置8は、前記第1導出処理、前記第2導出処理、前記第3導出処理、前記第4導出処理または前記第5導出処理によって前記補正値を導出する。クレーン10Aが採用される場合も、クレーン10が採用される場合と同様の効果が得られる。
【0148】
[応用例]
クレーン10またはクレーン10Aにおける前記制限トルク制御が、クレーン以外の建設機械に適用されてもよい。例えば、前記制限トルク制御が、ディーゼルエンジンおよび油圧装置を備える油圧ショベルなどに適用されてもよい。
【符号の説明】
【0149】
4 :動力装置
5 :油圧装置
6 :操作装置
7 :状態検出装置
8 :制御装置
10,10A:クレーン(建設機械)
31 :起伏ロープ
32 :吊りロープ
41 :エンジン
42 :ガバナ
44 :過給機
51 :油圧ポンプ
52 :油圧レギュレータ
53 :制御弁
54 :油圧アクチュエータ
55 :トルク制御弁(トルク補正装置)
55b :第1トルク制御弁
55c :第2トルク制御弁
61 :旋回操作部
62 :起伏操作部
63 :吊り操作部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7