(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162666
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】集積回路
(51)【国際特許分類】
G01L 9/00 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
G01L9/00 303T
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078406
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊東 祐一
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055AA40
2F055BB20
2F055CC60
2F055DD05
2F055EE12
2F055FF11
2F055GG33
2F055GG34
(57)【要約】
【課題】 ホイートストンブリッジの出力電圧の精度の悪化を抑制できる集積回路を提供する。
【解決手段】
集積回路は、ホイートストンブリッジと、バイアス電圧回路と、を備える集積回路であって、前記ホイートストンブリッジは、所定電圧が生じる高電位側の第1ノード及び第2ノードの間に接続された第1抵抗と、前記第2ノード及び低電位側の第3ノードの間に接続された第2抵抗と、前記第1ノード及び第4ノードの間に接続された第3抵抗と、前記第4ノード及び前記第3ノードの間に接続された第4抵抗と、を含み、前記バイアス電圧回路は、一端が前記第3ノードに接続された第5抵抗と、前記第5抵抗の他端が接続される反転入力端子と、前記所定電圧より低い基準電圧が印加される非反転入力端子と、前記第3ノードに接続される出力端子と、を有する第1演算増幅回路と、を含む集積回路。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイートストンブリッジと、バイアス電圧回路と、を備える集積回路であって、
前記ホイートストンブリッジは、
所定電圧が生じる高電位側の第1ノード及び第2ノードの間に接続された第1抵抗と、前記第2ノード及び低電位側の第3ノードの間に接続された第2抵抗と、前記第1ノード及び第4ノードの間に接続された第3抵抗と、前記第4ノード及び前記第3ノードの間に接続された第4抵抗と、を含み、
前記バイアス電圧回路は、
一端が前記第3ノードに接続された第5抵抗と、
前記第5抵抗の他端が接続される反転入力端子と、前記所定電圧より低い基準電圧が印加される非反転入力端子と、前記第3ノードに接続される出力端子と、を有する第1演算増幅回路と、
を含む集積回路。
【請求項2】
請求項1に記載の集積回路であって、
前記第1抵抗、前記第2抵抗、前記第3抵抗、及び前記第4抵抗の種類と、前記第5抵抗の種類とは同じである、
集積回路。
【請求項3】
請求項2に記載の集積回路であって、
前記第1抵抗、前記第2抵抗、前記第3抵抗、及び前記第4抵抗のそれぞれの抵抗値と、前記第5抵抗の抵抗値とは等しい、
集積回路。
【請求項4】
請求項1から3のうちの何れか一項に記載の集積回路であって、
前記バイアス電圧回路は、
前記所定電圧が印加された非反転入力端子と、前記第1ノードに接続された反転入力端子と、前記第3ノードに接続された出力端子とを、有する第2演算増幅回路、
を備える集積回路。
【請求項5】
請求項4に記載の集積回路であって、
前記バイアス電圧回路は、
一端に電源電圧が印加され、他端が前記第1ノードに接続された第6抵抗、
を備える集積回路。
【請求項6】
請求項5に記載の集積回路であって、
前記第1抵抗、前記第2抵抗、前記第3抵抗、及び前記第4抵抗の種類は、前記第6抵抗の種類と同じである、
集積回路。
【請求項7】
請求項5に記載の集積回路であって、
前記バイアス電圧回路は、
前記第6抵抗に流れる電流のうち一部の電流が流れるバイアス電流回路、
を備える集積回路。
【請求項8】
請求項1に記載の集積回路であって、
前記バイアス電圧回路は、
前記基準電圧のレベルを調整して出力する基準電圧回路、
を備える集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路として、4つのゲージ抵抗を含むホイートストンブリッジを用い、圧力を検出する回路がある(例えば、特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3584803号公報
【特許文献2】特許第2797880号公報
【特許文献3】特開平6-148015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ホイートストンブリッジを含む集積回路を長期間使用すると、ゲージ抵抗の抵抗値の変動等により、圧力を検出する感度が変動し、ホイートストンブリッジの出力電圧の精度が悪くなることがある。
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みてなされたものであって、ホイートストンブリッジの出力電圧の精度の悪化を抑制できる集積回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した課題を解決する本発明の態様は、ホイートストンブリッジと、バイアス電圧回路と、を備える集積回路であって、前記ホイートストンブリッジは、所定電圧が生じる高電位側の第1ノード及び第2ノードの間に接続された第1抵抗と、前記第2ノード及び低電位側の第3ノードの間に接続された第2抵抗と、前記第1ノード及び第4ノードの間に接続された第3抵抗と、前記第4ノード及び前記第3ノードの間に接続された第4抵抗と、を含み、前記バイアス電圧回路は、一端が前記第3ノードに接続された第5抵抗と、前記第5抵抗の他端が接続される反転入力端子と、前記所定電圧より低い基準電圧が印加される非反転入力端子と、前記第3ノードに接続される出力端子と、を有する第1演算増幅回路と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ホイートストンブリッジの出力電圧の精度の悪化を抑制できる集積回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一般的なホイートストンブリッジ11を含む回路300の一例を示す図である。
【
図2】一般的なホイートストンブリッジ11を含む回路310の一例を示す図である。
【
図4】ホイートストンブリッジ11の構造の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を説明する。各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。
【0010】
=====一般的なホイートストンブリッジ11を含む回路300の一例=====
図1は、一般的なホイートストンブリッジ11を含む回路300の一例を示す図である。回路300は、ホイートストンブリッジ11、抵抗30を含んで構成される。ホイートストンブリッジ11は、抵抗20~23を含んで構成される。具体的には、ホイートストンブリッジ11は、高電位側のノードNa及びノードNbの間に接続された抵抗20と、ノードNb及び低電位側のノードNcの間に接続された抵抗21と、ノードNa及びノードNdの間に接続された抵抗22と、ノードNd及びノードNcの間に接続された抵抗23と、を含む。ここで、ノードNb,Ndは、差電圧Vdiffを出力するためのノードであり、ノードNcは接地される。
【0011】
なお、抵抗20~23の抵抗値を抵抗値R1とし、抵抗20,22の間の配線を配線110aとし、抵抗20,21の間の配線を配線110bとし、抵抗21,23の間の配線を配線110cとし、抵抗22,23の間の配線を配線110dとする。また、ノードNa,Nb,Nc,Ndのそれぞれの電圧を、電圧Va,Vb,Vc,Vdとし、電圧Vb,Vdの差を、差電圧Vdiffとする。また、ノードNaを介してホイートストンブリッジ11に流れる電流を電流Iaとする。
【0012】
また、抵抗30は、ホイートストンブリッジ11に流れる電流Iaを制御する素子であり、一端に電源電圧Vddが印加され、他端がノードNaに接続される。抵抗30に流れる電流Iaは、ノードNaを介してホイートストンブリッジ11に流れる。
【0013】
例えば、回路300は、圧力センサの一部として用いられる。また、詳細は後述するが、ホイートストンブリッジ11は、ダイアフラム100(後述)の上に作成される。また、ホイートストンブリッジ11は、圧力によってダイアフラム100の形状が変化すると、抵抗20~23の抵抗値が変化することにより、圧力に応じた差電圧Vdiffを出力する。
【0014】
ところで、回路300を長期間使用すると、抵抗20~23の抵抗値に変動が生じる。この場合、ノードNaの電圧Vaは、ホイートストンブリッジ11の合成抵抗(すなわち、抵抗20~23の合成抵抗)Raと、抵抗30とにより、電源電圧Vddを分圧した電圧となるが、抵抗20~23の抵抗値が変動して合成抵抗Raが変動すると、電圧Vaが変動することとなる。例えば、抵抗20~23の抵抗値が10%減少したとすると、合成抵抗Raは、0.9×R1となる。したがって、抵抗30の抵抗値がR2だとすると、ノードNaの電圧Vaは、Vdd×R1/(R1+R2)から、Vdd×0.9×R1/(0.9×R1+R2)に変化する。ただし、配線110a~110dの寄生抵抗を無視する。
【0015】
この場合、ホイートストンブリッジ11に印加される電圧(Va-Vc)は、変化し、ホイートストンブリッジ11に同じ圧力が加えられたとしても、差電圧Vdiffには、抵抗20~23の抵抗値の変動の影響が現れてしまう。
【0016】
そのため、ノードNaの電圧Vaを所定電圧に維持し、電圧(Va-Vc)を一定にすることにより、抵抗20~23の抵抗値の変動の差電圧Vdiffに対する影響を低減することが考えられる。したがって、つぎに、抵抗20~23の抵抗値の変動に関わらず、ノードNaの電圧Vaを所定電圧に維持できる回路310について説明する。
【0017】
=====一般的なホイートストンブリッジ11を含む回路310の一例=====
図2は、一般的なホイートストンブリッジ11を含む回路310の一例を示す図である。回路310は、ホイートストンブリッジ11、抵抗30、演算増幅回路31、電流源32を含んで構成される。
【0018】
演算増幅回路31は、ホイートストンブリッジ11及び電流源32と共に、ノードNaの電圧Vaを基準電圧Vrefに維持する。演算増幅回路31は、基準電圧Vrefが印加された非反転入力端子と、ノードNaに接続された反転入力端子と、ノードNcに接続された出力端子とを有する。
【0019】
電流源32は、演算増幅回路31が飽和状態とならないよう制御する回路であり、電流源32には、抵抗30を介して流れる電流Igのうち一部の電流Ihが流れる。具体的には、電流源32が、ホイートストンブリッジ11に流れる電流Iaと、抵抗30からの電流Igとの差分となる電流Ihを流すと、演算増幅回路31は飽和状態とならず、ホイートストンブリッジ11には電流Iaが流れることとなる。
【0020】
ここで、回路310を長期間使用すると、回路300と同様に、抵抗20~23の抵抗値に変動が生じる。一方、演算増幅回路31がノードNaの電圧Vaを基準電圧Vrefと同じ電圧とするため、ノードNaの電圧Vaは、抵抗20~23の抵抗値の変動の影響を受けなくなる。
【0021】
また、ノードNcの電圧Vcは、ホイートストンブリッジ11の合成抵抗Raの抵抗値に応じて変動する可能性がある。しかしながら、回路310において、抵抗20~23の種類と、抵抗30の種類とを同じにし、両者の抵抗値も同じ抵抗値R1としているため、回路310は、抵抗20~23の抵抗値の変動と、抵抗30の抵抗値の変動が同一となり、電圧(Va-Vc)が一定となるよう設計されている。
【0022】
具体的には、抵抗20~23の抵抗値R1が変動し、合成抵抗Raが変動したとしても、抵抗30の抵抗値も、抵抗20~23の抵抗値と同様に変動すると、電流Iaは、抵抗20~23の抵抗値の変動に反比例するように変動する。結果として、合成抵抗Raが変動しても、ノードNcの電圧Vcはほぼ一定となり、電圧(Va-Vc)もほぼ一定となる。
【0023】
例えば、上述したように、抵抗20~23の抵抗値が10%減少し、0.9×R1となったとしても、抵抗30の抵抗値R2も抵抗値0.9×R1となり、電流Igが(1/0.9)倍となるため、電流Iaも、変動前の(1/0.9)倍となる。また、合成抵抗Raも0.9×R1となることから、ノードNcの電圧Vcはほぼ一定となり、電圧(Va-Vc)は、合成抵抗Raに電流Iaを乗算した電圧であるため、抵抗20~23の抵抗値の変動に関わらずほぼ一定となる。
【0024】
しかしながら、詳細は後述するが、ホイートストンブリッジ11の合成抵抗Raは、配線110a~110dの寄生抵抗を考慮すると、厳密には抵抗値R1より大きくなるため、合成抵抗Raの抵抗値の変動は、抵抗30の抵抗値の変動と同じとはならない。したがって、抵抗20~23の抵抗値の変動を、抵抗30の抵抗値の変動で補償することは難しくなり、抵抗20~23の抵抗値の変動により、合成抵抗Raが変動し、それに伴い、ノードNcの電圧Vcが変動し、電圧(Va-Vc)が影響を受けてしまう。
【0025】
そのため、抵抗20~23の抵抗値の変動による、ノードNcの電圧Vcへの影響を抑制することが必要となる。これを実現する集積回路10を、
図3を用いて以下で説明する。
【0026】
=====本実施形態=====
<<<集積回路10の構成>>>
図3は、本発明の一実施形態である集積回路10の構成を示す図である。集積回路10は、ホイートストンブリッジ11に加えられた圧力に応じて、差電圧Vdiffを出力する回路である。集積回路10は、ホイートストンブリッジ11、バイアス電圧回路12を含んで構成される。
【0027】
<<ホイートストンブリッジ11の構造>>
図4に示すように、ダイアフラム100は、例えばP型シリコン半導体基板である半導体基板上に形成される。便宜上、ここでは断面構造は省略するが、ダイアフラム100のおもて面側には、Nウェル領域が形成される。Nウェル領域の大部分に、抵抗20~23及び配線110a~110dとなるP型拡散領域(
図4の灰色に着色された箇所)が、Nウェル領域より浅い拡散領域として形成される。
【0028】
抵抗20~23及び配線110a~110dは、P型拡散領域の一部として形成され、配線110a~110dのそれぞれが形成される箇所をエリアA1~A4とする。抵抗20~23及び配線110a~110dの領域以外は、酸化膜120が形成されることにより、エリアA1~A4に分離される。なお、エリアA1~A4のそれぞれは、抵抗20~23を介して電気的に接続されている。また、抵抗20~23は、酸化膜120で分離されて幅が限定された拡散抵抗である。
【0029】
具体的には、Nウェル領域のおもて面では、エリアA1の配線110a及びエリアA2の配線110bが抵抗20を介して電気的に接続され、エリアA2の配線110b及びエリアA3の配線110cが抵抗21を介して電気的に接続される。また、エリアA3の配線110c及びエリアA4の配線110dは抵抗23を介して電気的に接続され、エリアA1の配線110a及びエリアA4の配線110dは抵抗22を介して電気的に接続される。
【0030】
また、抵抗20~23は、シート抵抗値をρsとし、長さをL、幅をWとすると、抵抗20~23の抵抗値は、抵抗値R1=ρs×L/Wとなる。本実施形態では、抵抗20~23は、レイアウト面積を小さくするため、蛇行パターンを形成するよう設計されるが、必ずしも蛇行パターンに限定されるものではなく、短冊形状で直列又は並列に接続して抵抗20~23を形成してもよい。
【0031】
また、端子Ta~Tdは、ノードNa~Ndのそれぞれに対応し、配線110a~110dのそれぞれのエリアA1~A4となるP型拡散領域に複数のコンタクト(不図示)を介して接続される。端子Ta~Tdは、ダイアフラム100上ではなく、ダイアフラム100を取り囲む周辺領域に形成される。なお、例えば、ノードNaから抵抗20に電流が流れる場合、配線110aに沿って拡散抵抗の一部を流れ、これにより、ノードNaから抵抗20への配線110aには点線で示すように寄生抵抗が生じる。また、ノードNa~Ndのそれぞれに接続された配線110a~110d及び抵抗20~23の他の組み合わせについても同様である。なお、抵抗20~23のそれぞれは、「第1抵抗」、「第2抵抗」、「第3抵抗」、及び「第4抵抗」のそれぞれに相当し、ノードNa~Ndのそれぞれは、「第1ノード」、「第2ノード」、「第3ノード」、及び「第4ノード」のそれぞれに相当する。
【0032】
<<バイアス電圧回路12>>
バイアス電圧回路12は、長期間の使用により抵抗20~23の抵抗値が変化したとしても、ホイートストンブリッジ11に、所定の電圧(Va-Vc)を印加するようにする回路である。バイアス電圧回路12は、抵抗30,33、演算増幅回路31,34、電流源32、基準電圧回路35を含んで構成される。抵抗30には、電源電圧VddとノードNaの電圧Vaとの電圧差と、抵抗30の抵抗値R1とに応じた電流Igが流れる。なお、抵抗30は、「第6抵抗」に相当し、演算増幅回路31は、「第2演算増幅回路」に相当し、基準電圧Vrefは、「所定電圧」に相当し、電流源32は、「バイアス電流回路」に相当し、電流Ihは、「第6抵抗に流れる電流のうち一部の電流」に相当する。
【0033】
なお、抵抗30の種類は、抵抗20~23の種類と同じP型拡散抵抗であり、同一半導体基板上に同一の製造工程で形成されたシート抵抗値ρsの拡散抵抗である。抵抗30の抵抗値も、抵抗20~23と同じ抵抗値R1である。これにより、上述したように、長期間の使用により抵抗20~23の抵抗値が変化したとしても、抵抗30の抵抗値も同様に変化するため、電圧Va,Vcの間の電圧(Va-Vc)の変化は低減される。
【0034】
また、集積回路10が2つの半導体チップから構成されてもよい。2つの半導体チップは、ダイアフラム100を含む圧力検出チップと、例えばASIC(application specific integrated circuit)のように信号処理を行う信号処理チップとからなる2チップで構成される。この場合、抵抗30と抵抗20~23は圧力検出チップに形成される。なお、演算増幅回路31,34、電流源32および基準電圧回路35は信号処理チップに形成される。
【0035】
抵抗33、演算増幅回路34、基準電圧回路35は、ノードNcの電圧Vcの電圧値を電圧Veに維持する回路である。具体的には、抵抗33は、一端がノードNcに接続される。演算増幅回路34は、抵抗33の他端が接続される反転入力端子と、基準電圧回路35からの電圧Veが印加される非反転入力端子と、ノードNcに接続される出力端子とを有する。これにより、抵抗33、演算増幅回路34、基準電圧回路35は、ノードNcの電圧Vcを電圧Veに維持する回路として動作する。また、抵抗33は、「第5抵抗」に相当し、演算増幅回路34は、「第1演算増幅回路」に相当する。
【0036】
なお、抵抗33の抵抗値は、抵抗20~23の抵抗値と同じ抵抗値としてもよいが、
図4の配線110a~110dに生じる寄生抵抗を加味した抵抗値とすることが望ましい。具体的には、抵抗33は、抵抗20~23と同じ蛇行パターンとなるよう酸化膜により電気的に分離されたP型拡散領域で構成される。また、
図5に示すように、抵抗33は、抵抗20~23と同じ、同一半導体基板上に同一の製造工程で形成されたシート抵抗値ρsのP型拡散抵抗で構成される。また、抵抗33の長さLは、配線110a~110dの寄生抵抗を加味して、抵抗20~23の長さLより2d分だけ長く、抵抗33の幅Wは、抵抗20~23の幅Wと同じである。したがって、抵抗20~23の抵抗値を、配線110a~110dに生じる寄生抵抗の抵抗値を加味して考えると、抵抗20~23の抵抗値と、抵抗33の抵抗値とは等しい。
【0037】
また、集積回路10が2つの半導体チップから構成されてもよい。2つの半導体チップは、ダイアフラム100を含む圧力検出チップと例えばASICのように信号処理を行う信号処理チップから構成されてもよい。この場合、抵抗33と抵抗20~23は圧力検出チップに形成される。なお、演算増幅回路31,34、電流源32および基準電圧回路35は信号処理チップに形成される。
【0038】
なお、電圧Va、Vcの間の電圧(Va-Vc)の変化を低減するため、上記では抵抗の種類についてP型拡散抵抗と表現したが、演算増幅回路31と演算増幅回路34を含む
図3に示す集積回路10において、抵抗30の種類と抵抗20~23の種類、抵抗33と抵抗20~23の種類は異なっても良い。ノードNaの電圧Vaは演算増幅回路31で基準電圧Vrefに制御される。ノードNcの電圧Vcは演算増幅回路34で基準電圧回路35の電圧Veに制御される。従って、ノードNa,Ncの間の電圧(Va-Vc)の変化が抑制できる。
【0039】
また、抵抗33の両端には、抵抗33から伸びた箇所に複数のコンタクトにより接続されたパッド130,131が設けられ、パッド130には、ノードNcが接続され、パッド131には、演算増幅回路34の反転入力端子が接続される。
【0040】
基準電圧回路35は、
図6に示すように、例えば、バンドギャップ電圧Vbgrに基づく電圧Veを出力する回路である。基準電圧回路35は、電圧Veのレベルを調整して出力し、バンドギャップリファレンス回路200、演算増幅回路201、可変抵抗202、抵抗203、EPROM204を含んで構成される。なお、電圧Veは、「基準電圧」に相当する。
【0041】
バンドギャップリファレンス回路(BGR)200は、電圧Vbgrを出力する。演算増幅回路201は、電圧Vbgrが印加される非反転入力端子と、電圧Veを可変抵抗202及び抵抗203で分圧した電圧が印加される反転入力端子と、電圧Veが出力される出力端子とを有する。
【0042】
また、可変抵抗202は、EPROM204からのビットdataに基づいて抵抗値が変化する抵抗である。また、可変抵抗202の抵抗値により電圧Veは変化するため、電圧Veは、EPROM204からのビットdataにより調整される。また、演算増幅回路31が動作する際の電圧Vcと等しい電圧Veを、基準電圧回路35が出力するよう、集積回路10の製造時、EPROM204には、ビットdataが書き込まれる。
【0043】
なお、基準電圧回路35として、バンドギャップリファレンス電圧を用いた回路を説明したが、これに限られるものではなく、電源電圧Vddを分圧する分圧回路を、例えばEPFOM204で制御される可変抵抗を用いて構成し、電圧Veを出力することとしてもよい。また、定電流源と、例えばEPROM204で制御される可変抵抗とを組み合わせ、出力電圧Veを出力することとしてもよい。
【0044】
<<<圧力に応じた差電圧Vdiffの変化>>>
ダイアフラム100は、圧力が加えられると、変形する。また、ホイートストンブリッジ11はダイアフラム100上に形成されるため、ダイアフラム100に圧力が加わると、抵抗20~23の形状が変化するため、抵抗20~23の抵抗値が変化し、ホイートストンブリッジ11は圧力に応じた差電圧Vdiffを出力する。
【0045】
最初に、ホイートストンブリッジ11に圧力が加えられていない場合について説明する。なお、抵抗20~23の抵抗値は抵抗値R1とする。そのため、ノードNa,Ncに電圧を印加した場合のホイートストンブリッジ11の合成抵抗Raの抵抗値は、抵抗値R1となる。そして、合成抵抗Raに電圧Va,Vcの差電圧(Va-Vc)が印加されるため、電流Iaは、以下の通りとなる。
【0046】
Ia=(Va-Vc)/R1 ・・・式(1)
【0047】
また、抵抗t20~23の抵抗値が抵抗値R1で同一であるため、ノードNaからの電流IaがノードNb,Ndを経由して分流される電流の電流値は、電流値Ia/2となる。
【0048】
この場合、電圧Vb,Vdは、以下の通りとなり、結果として差電圧Vdiffは0Vとなる。
Vb=R1×Ia/2+Vc ・・・式(2)
Vd=R1×Ia/2+Vc ・・・式(3)
Vdiff=Vd-Vb=0 ・・・式(4)
【0049】
一方、ホイートストンブリッジ11に圧力が加えられた場合、抵抗20~23のそれぞれの抵抗値は変化し、式(2)~(4)は成立せず、差電圧Vdiffは0Vとはならない。
【0050】
具体的には、抵抗20の抵抗値が抵抗値R1から抵抗値R1+r1になったとすると、電流Ia、電圧Vb,Vdは、以下の通りとなる。
Ia=(Va-Vc)/Ra ・・・式(5)
ただし、Ra=2R1×(2R1+r1)/(4R1+r1) ・・・式(6)
【0051】
Vb=R1×Ia0+Vc ・・・式(7)
ただし、電流Ia0は、ノードNbに流れる電流であり、
Ia0=Ra×Ia/(2R1+r1) ・・・式(8)
Vd=R1×Ia1+Vc ・・・式(9)
ただし、電流Ia1は、ノードNdに流れる電流であり、
Ia1=Ra×Ia/2R1 ・・・式(10)
【0052】
したがって、差電圧Vdiffは、以下の通りとなり、差電圧Vdiffは0Vとならない。
Vdiff=Vd-Vb
=Ia×R1×r1/(4R1+r1)
=(Va-Vc)×r1/2/(2R1+r1) ・・・式(11)
【0053】
<<<長期間の使用により抵抗20~23の抵抗値が変化した場合の集積回路10の動作>>>
以降、長期間の使用により、抵抗20~23の抵抗値が変化した場合の集積回路10の動作について、
図3を用いて説明する。
【0054】
例えば、抵抗20~23の抵抗値が抵抗値R1から10%減少し、抵抗値0.9×R1となったとする。この場合、上述した通り、抵抗30も抵抗20~23と同じ種類及び抵抗値となるよう設計されているため、抵抗30の抵抗値も同様に抵抗値0.9×R1となる。
【0055】
また、ノードNaの電圧Vaは、演算増幅回路31により、基準電圧Vrefに維持されているため、抵抗30にかかる電圧は、(Vdd-Vref)で変化しない。したがって、電流Igの電流値は、電流値(Vdd―Vref)/R1から、電流値(Vdd-Vref)/(0.9×R1)に変化する。
【0056】
そして、ホイートストンブリッジ11の合成抵抗Raの抵抗値は、抵抗値R1から、抵抗値(0.9×R1)に変化するが、電流Iaの電流値が電流値(Vdd-Vref)/(0.9×R1)に変化しているため、ホイートストンブリッジ11に印加される電圧(Va-Vc)は変化しない。また、電圧Vaが基準電圧Vrefで一定であり、電圧(Va-Vc)が変化しないので、ノードNcの電圧Vcも変化しない。ただし、電流源32が流す電流Ihを考慮しないものとする。
【0057】
しかしながら、ホイートストンブリッジ11の合成抵抗Raは、配線110a~110dの寄生抵抗を考慮すると、厳密には抵抗値R1より大きくなるため、合成抵抗Raの抵抗値の変動は、抵抗30の抵抗値の変動と同じとはならない。また、抵抗30を抵抗20~23の蛇行パターンとすることは、チップサイズなどのコストに影響を及ぼすため、現実的ではない。
【0058】
そのため、
図2を用いて説明したが、ノードNcの電圧Vcが抵抗20~23の抵抗値の変動により影響を受けてしまう。電圧(Va-Vc)が変化すると、上述の通り、ホイートストンブリッジ11のセンサ感度が変化してしまう。
【0059】
また、ホイートストンブリッジ11のセンサ感度の変化を抑制するためには、ノードNcの電圧Vcを変化させないよう制御することが必要である。これを実現するために、抵抗33、演算増幅回路34、基準電圧回路35からなる回路が動作し、ノードNcの電圧Vcを、当初の電圧Vcである電圧Veに維持し、電圧(Va-Vc)を所定の電圧に維持する。
【0060】
具体的には、抵抗33、演算増幅回路34、基準電圧回路35からなる回路は次のように動作する。電圧Vcが上昇し、電圧Veより高くなると、抵抗33に、
図1の矢印の向きに電流Ifが流れるかと思われる。しかしながら、演算増幅回路34の反転入力端子は、入力インピーダンスが理論上無限大であるため、電流Ifを流すことはない。したがって、演算増幅回路34は、電流Ifが流れなくなるよう、電圧Veに等しくなるまで電圧Vcを低下させる。
【0061】
逆に、電圧Vcが低下し、電圧Veより低くなると、抵抗33に、
図1の矢印の向きと反対に電流Ifが流れるかと思われるが、電圧Vcが上昇した場合と同様に、演算増幅回路34は、電流Ifが流れなくなるよう、電圧Veに等しくなるまで電圧Vcを上昇させる。
【0062】
したがって、集積回路10は、長期間の使用により抵抗20~23の抵抗値が変化したとしても、電圧(Va-Vc)を所定の電圧に維持することができ、ホイートストンブリッジ11の出力電圧の精度の悪化を抑制できる。
【0063】
===変形例===
以上、集積回路10が、ホイートストンブリッジ11、バイアス電圧回路12を備える際の動作について説明した。しかしながら、ノードNaに、例えば電源電圧Vdd等の所定の電圧が印加される場合、抵抗30、演算増幅回路31、電流源32は必要ない。
【0064】
これらの回路が存在しないとしても、抵抗33、演算増幅回路34、基準電圧回路35からなる回路が、ノードNcの電圧を所定の電圧Veに維持できれば、ノードNa,Nc間の電圧(Va-Vc)を一定にすることができる。これにより、ホイートストンブリッジ11の出力電圧の精度の悪化を抑制できる。
【0065】
===まとめ===
以上、本実施形態の集積回路10について説明した。集積回路10は、ホイートストンブリッジ11、バイアス電圧回路12を備える。ホイートストンブリッジ11は、抵抗20~23を含む。バイアス電圧回路12は、抵抗33、演算増幅回路34を含む。演算増幅回路34は、ノードNcの電圧Vcを電圧Veに維持し、ノードNa,Ncの間の電圧(Va-Vc)を一定に維持する。これにより、ホイートストンブリッジの出力電圧の精度の悪化を抑制できる。
【0066】
また、抵抗20~23の種類と、抵抗33の種類とが同じである場合、同一導電型拡散抵抗であり、同一半導体基板上に同一の製造工程で形成されたシート抵抗値ρsの拡散抵抗である。これにより、抵抗20~23の抵抗値及び抵抗33の抵抗値は、集積回路10を長期間使用しても、同じように変化する。したがって、ノードNa,Nc間の電圧(Va-Vc)を一定に維持する際に、抵抗33及び演算増幅回路34の動作が抑制される。また、抵抗20~23の種類と、抵抗33の種類とは異なっても良い。ノードNcの電圧Vcが基準電圧回路35の電圧Veに従い演算増幅回路34によって制御されることで、ノードNa,Ncの間の電圧(Va-Vc)の変化が抑制できる。
【0067】
また、抵抗20~23の抵抗値と、抵抗33の抵抗値とは等しい。これにより、ノードNa,Nc間の電圧(Va-Vc)を一定に維持する際の精度が向上する。
【0068】
また、バイアス電圧回路12は、演算増幅回路31を備える。これにより、ノードNaの電圧Vaを基準電圧Vrefに維持できる。したがって、ノードNa,Nc間の電圧(Va-Vc)を予め決めた電圧に維持できる。
【0069】
また、バイアス電圧回路12は、抵抗30を備える。これにより、ノードNaを介して流れる電流Iaを基準電圧Vrefの電圧値に応じて制御することができる。
【0070】
また、抵抗20~23の種類が、抵抗30の種類と同じである場合、同一導電型拡散抵抗であり、同一半導体基板上に同一の製造工程で形成されたシート抵抗値ρsの拡散抵抗である。これにより、集積回路10を長期間使用した際の抵抗20~23の抵抗値の変化率と、抵抗30の抵抗値の変化率は同様になり、ノードNa,Ncの間の電圧(Va-Vc)の変化が抑制される。また、抵抗20~23の種類と、抵抗30の種類とは異なっても良い。ノードNaの電圧Vaは基準電圧Vrefに従い演算増幅回路31によって制御される。さらに、ノードNcの電圧Vcは基準電圧回路35の電圧Veに従い演算増幅回路34によって制御されることで、ノードNa,Ncの間の電圧(Va-Vc)の変化が抑制できる。
【0071】
また、バイアス電圧回路12は、電流源32を備える。これにより、演算増幅回路31が飽和状態とならないように、ノードNcの電圧Vcを設定することができる。
【0072】
また、バイアス電圧回路12は、基準電圧回路35を備える。これにより、バイアス電圧回路12は、ノードNcの電圧Vcを所定の電圧に維持できる。
【0073】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0074】
10 集積回路
11 ホイートストンブリッジ
12 バイアス電圧回路
20~23,30,33,203 抵抗
31,34,201 演算増幅回路
32 電流源
35 基準電圧回路
100 ダイアフラム
110a~110d 配線
120 酸化膜
130,131 パッド
200 バンドギャップリファレンス回路
202 可変抵抗
204 EPROM