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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162679
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】産業車両の制動制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 9/18 20060101AFI20241114BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20241114BHJP
   F16D 55/00 20060101ALI20241114BHJP
   F16D 61/00 20060101ALI20241114BHJP
   H02K 7/104 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B60L9/18 J
B60L1/00 L
F16D55/00 B
F16D61/00
H02K7/104
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078475
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100192511
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 晃史
(72)【発明者】
【氏名】梅谷 英史
【テーマコード(参考)】
3J058
5H125
5H607
【Fターム(参考)】
3J058AB19
3J058BA09
3J058CC72
3J058CC77
3J058CD04
3J058FA11
5H125AA13
5H125AB01
5H125AC12
5H125BC25
5H125EE08
5H125EE13
5H125EE70
5H125FF01
5H607AA12
5H607BB01
5H607EE06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】遮断スイッチの操作時に制動部への電力供給が可能となり、制動部への電力供給が途絶えて生じる急制動を抑制できる産業車両の制動制御装置を提供する。
【解決手段】制動制御装置100は、バッテリ4とインバータ8との間に設けられ、主接点5aとコイル5dとを含み、バッテリ4からの電力供給に応じてコイル5dが主接点5aを駆動して導通状態と遮断状態とを切り替えるコンタクタ5と、コンタクタ5を遮断状態へと切り替えるようにバッテリ4からコイル5dへの電力供給を遮断可能な遮断スイッチ6と、モータ2の回転により回生可能な自己発電型の電磁式リターダ13と、を備える。電磁ブレーキ3には、コンタクタ5の導通状態において、コンタクタ5とインバータ8との間の回路部分9又は電磁式リターダ13から電力供給され、コンタクタ5の遮断状態において、電磁式リターダ13から電力供給される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用のモータと、電力供給によって前記モータの制動を解除する制動部と、前記モータに電力を供給する電源部と、前記モータと前記電源部との間の相互の電力供給を行うインバータと、を備える産業車両の前記制動部を制御する産業車両の制動制御装置であって、
前記電源部と前記インバータとの間に設けられ、主接点と前記主接点を駆動するコイルとを含み、前記電源部からの電力供給に応じて前記コイルが前記主接点を駆動して導通状態と遮断状態とを切り替えるスイッチ部と、
前記スイッチ部を前記遮断状態へと切り替えるように前記電源部から前記コイルへの電力供給を遮断可能な遮断スイッチと、
前記モータの回転により回生可能な自己発電型の電磁式リターダと、を備え、
前記制動部には、
前記スイッチ部の導通状態において、前記スイッチ部と前記インバータとの間の回路部分又は前記電磁式リターダから電力供給され、
前記スイッチ部の遮断状態において、前記電磁式リターダから電力供給される、産業車両の制動制御装置。
【請求項2】
前記電源部から前記コイルへの電力供給を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて前記電磁式リターダを制御する制御部と、を備え、
前記制御部には、
前記スイッチ部の導通状態において、前記スイッチ部と前記インバータとの間の回路部分又は前記電磁式リターダから電力供給され、
前記スイッチ部の遮断状態において、前記電磁式リターダから電力供給され、
前記制御部は、前記電源部から前記コイルへの電力供給の遮断を検知した場合に、前記電磁式リターダに回生させるように前記電磁式リターダを制御する、請求項1に記載の産業車両の制動制御装置。
【請求項3】
前記産業車両は、前記モータによって発生した駆動力が駆動系を介して駆動輪に伝達するように構成されており、
前記電磁式リターダは、前記モータの前記駆動系とは反対側に設けられている、請求項1又は2に記載の産業車両の制動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業車両の制動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非通電時に回転軸を制動し、通電時に回転軸の制動を解除する無励磁作動型の電磁ブレーキが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-83650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば無励磁作動型の電磁ブレーキを産業車両のパーキングブレーキとして使用する場合、電磁ブレーキへの電力供給がバッテリ等の電源のみで構成されていると、走行中の産業車両を緊急時に停止させるための遮断スイッチを操作した際に制動部への電力供給が途絶えてしまう。その結果として制動部が作動して生じる急制動に対する対策が検討されている。
【0005】
本発明は、遮断スイッチの操作時に制動部への電力供給が可能となり、制動部への電力供給が途絶えて生じる急制動を抑制することができる産業車両の制動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、走行用のモータと、電力供給によってモータの制動を解除する制動部と、モータに電力を供給する電源部と、モータと電源部との間の相互の電力供給を行うインバータと、を備える産業車両の制動部を制御する産業車両の制動制御装置であって、電源部とインバータとの間に設けられ、主接点と主接点を駆動するコイルとを含み、電源部からの電力供給に応じてコイルが主接点を駆動して導通状態と遮断状態とを切り替えるスイッチ部と、スイッチ部を遮断状態へと切り替えるように電源部からコイルへの電力供給を遮断可能な遮断スイッチと、モータの回転により回生可能な自己発電型の電磁式リターダと、を備え、制動部には、スイッチ部の導通状態において、スイッチ部とインバータとの間の回路部分又は電磁式リターダから電力供給され、スイッチ部の遮断状態において、電磁式リターダから電力供給される。
【0007】
本発明の一態様に係る産業車両の制動制御装置では、遮断スイッチが操作されて電源部からコイルへの電力供給が遮断されると、スイッチ部が遮断状態となる。このとき、制動部には、スイッチ部とインバータとの間の回路部分からは電力供給されなくなるが、電磁式リターダから電力供給されることができる。したがって、遮断スイッチの操作時に制動部への電力供給が可能となり、制動部への電力供給が途絶えて生じる急制動を抑制することができる。
【0008】
一実施形態において、産業車両の制動制御装置は、電源部からコイルへの電力供給を検出する検出部と、検出部の検出結果に基づいて電磁式リターダを制御する制御部と、を備え、制御部には、スイッチ部の導通状態において、スイッチ部とインバータとの間の回路部分又は電磁式リターダから電力供給され、スイッチ部の遮断状態において、電磁式リターダから電力供給され、制御部は、電源部からコイルへの電力供給の遮断を検知した場合に、電磁式リターダに回生させるように電磁式リターダを制御してもよい。この場合、検出部の検出結果に基づいて、電源部からコイルへの電力供給の遮断が検知されると、制御部によって電磁式リターダに回生させるように電磁式リターダが制御される。このように、電磁式リターダを制御する制御部を用いて、遮断スイッチの操作時に制動部への電力供給が可能となる。
【0009】
一実施形態において、産業車両は、モータによって発生した駆動力が駆動系を介して駆動輪に伝達するように構成されており、電磁式リターダは、モータの駆動系とは反対側に設けられていてもよい。この場合、モータと駆動系との間の構成を維持しつつ電磁式リターダを設けることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、遮断スイッチの操作時に制動部への電力供給が可能となり、制動部への電力供給が途絶えて生じる急制動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る産業車両の制動制御装置を備えた産業車両を例示する概略構成図である。
図2】一実施形態に係る産業車両の制動制御装置においてスイッチ部が導通状態である場合の回路構成を例示する概略ブロック図である。
図3】一実施形態に係る産業車両の制動制御装置においてスイッチ部が遮断状態である場合の回路構成を例示する概略ブロック図である。
図4】コントローラの処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0013】
図1は、一実施形態に係る産業車両の制動制御装置を備えた産業車両を例示する概略構成図である。図2は、一実施形態に係る産業車両の制動制御装置においてスイッチ部が導通状態である場合の回路構成を例示する概略ブロック図である。本実施形態に係る産業車両の制動制御装置100は、産業車両1の電磁ブレーキ(制動部)3を制御する制御装置である。産業車両の制動制御装置100が搭載される産業車両1としては、例えば、電動フォークリフトが挙げられる。
【0014】
図1及び図2に示されるように、産業車両1は、一例として、前輪1a、後輪1b、モータ2、電磁ブレーキ3、バッテリ(電源部)4、コンタクタ(スイッチ部)5、遮断スイッチ6、電流センサ(検出部)7、インバータ8、回路部分9、コントローラ(制御部)10、駆動系12、及び電磁式リターダ13を備えている。産業車両1は、モータ2によって発生した駆動力が駆動系12を介して駆動輪に伝達するように構成されている。コンタクタ5、遮断スイッチ6、電流センサ7、コントローラ10、及び電磁式リターダ13は、産業車両の制動制御装置100を構成している。
【0015】
前輪1aは、産業車両1の車体の前部に配置された車輪であり、モータ2によって駆動される駆動輪である。産業車両1が電動フォークリフトである場合、前輪1aは、産業車両1の車体においてマスト及びフォークを含む荷役装置が設けられている側の車輪に対応する。後輪1bは、産業車両1の車体の後部に配置された車輪であり、モータ2によって駆動されない非駆動輪である。前輪1a及び後輪1bは、例えば左右一対の車輪を有している。
【0016】
モータ2は、産業車両1の走行用のモータジェネレータである。モータ2は、例えば、三相交流回転電動機である。モータ2は、バッテリ4からの電力供給に応じて駆動力を発生させる。
【0017】
モータ2には、車速センサ2aが設けられている。車速センサ2aは、前輪1aの回転数を産業車両1の車速として直接的又は間接的に取得するセンサである。車速センサ2aは、モータ2の回転数を取得するモータ回転数センサとすることができる。車速センサ2aは、取得したモータ2の回転数に関する信号をコントローラ10に送信する。
【0018】
前輪1aとモータ2との間には、駆動系12が介在している。駆動系12は、産業車両1において前輪1aとモータ2との間の動力伝達経路を形成する。駆動系12は、例えば、減速用のギヤ及びシャフト等を内蔵する減速機12aを有する。モータ2は、減速機12aに取り付けられている。前輪1aは、駆動系12を介してモータ2によって駆動される。
【0019】
電磁ブレーキ3は、例えば、産業車両1の駐車時等にパーキングブレーキとして用いられる制動装置である。電磁ブレーキ3は、モータ2を制動可能に構成された無励磁作動型の電磁ブレーキである。電磁ブレーキ3は、電力供給によってモータ2の制動を解除する。電磁ブレーキ3は、電力が供給されなくなると、モータ2を制動する。そのため、例えば産業車両1の走行中に電磁ブレーキ3に電力が供給されなくなると、産業車両1が急制動され得る。
【0020】
電磁ブレーキ3は、駆動系12を基準としてモータ2側に設けられている。電磁ブレーキ3は、駆動系12を介さずにモータ2を制動可能である。ここでの電磁ブレーキ3は、モータ2の駆動系12とは反対側に設けられている。電磁ブレーキ3は、例えば、モータ2の駆動系12とは反対側の端部から突出するモータ2の軸を制動するように、モータ2の駆動系12とは反対側の端面に固定されている。
【0021】
電磁式リターダ13は、自己発電型の電磁式リターダである。自己発電型とは、制動対象の軸の回転(ここではモータ2の回転)により電磁式リターダ13が回生可能であることを意味する。電磁式リターダ13は、回生電力を外部に供給することができる。ここでの電磁式リターダ13は、AC/DCコンバータを含んでおり、交流電力である回生電力を直流電力に変換し、直流電力を外部に供給する。
【0022】
電磁式リターダ13は、公知の構成を用いることができ、例えば、コントローラ10からの作動信号が入力されると、内部のスイッチング素子がONされ、モータ2の軸と共に回転しない固定子に配置された電磁コイルとコンデンサとの共振回路が形成される。モータ2の軸と共に回転する金属製の回転部材に渦電流が発生し、この渦電流がジュール熱を発生することで、制動力が発生する。また、共振回路に3相交流電圧が生じ、内部のスイッチング素子の開閉制御により電磁式リターダ13が回生電力を出力可能となる。
【0023】
電磁式リターダ13は、駆動系12を基準としてモータ2側に設けられている。電磁式リターダ13は、駆動系12を介さずにモータ2を制動可能である。ここでの電磁式リターダ13は、モータ2の駆動系12とは反対側に設けられている。電磁式リターダ13は、例えば、電磁ブレーキ3の駆動系12とは反対側の端部から突出するモータ2の軸に金属製の回転部材が固定され、電磁ブレーキ3の駆動系12とは反対側の端面に固定子が固定されている。
【0024】
電磁式リターダ13は、モータ2の軸に固定された金属製の回転部材が所定の回転数閾値以上で回転する場合に、内部のスイッチング素子がONされるようにコントローラ10から作動信号が入力されてもよい。回転数閾値は、電磁ブレーキ3及びコントローラ10を作動可能な回生電力を出力可能な制動対象の軸の回転(ここではモータ2の回転)の回転数の閾値である。
【0025】
バッテリ4は、直流電力を出力する電源である。バッテリ4としては、例えば、鉛蓄電池、リチウムイオン電池等の二次電池が用いられる。バッテリ4は、モータ2に電力を供給する。バッテリ4の正極4aは、コンタクタ5の主接点5aの一端5bと、遮断スイッチ6の一端6aと、に接続されている。
【0026】
コンタクタ5は、バッテリ4とインバータ8との間に設けられたスイッチ部である。コンタクタ5は、例えば、産業車両1のメインスイッチ(例えばキースイッチ)の操作に応じて、主電源としてのバッテリ4の電気的な接続及び遮断を切り替える。コンタクタ5は、主接点5aと、主接点5aを駆動するコイル5dと、を含んで構成されている。コンタクタ5は、バッテリ4からコイル5dへの電力供給に応じて、コンタクタ5の導通状態と遮断状態とを切り替える。導通状態は、主接点5aが閉じることでバッテリ4とインバータ8とが電気的に接続された状態である。遮断状態は、主接点5aが開くことでバッテリ4とインバータ8とが電気的に遮断された状態である。
【0027】
主接点5aは、主電源としてのバッテリ4の電気的な接続及び遮断を切り替えるための可動の接点である。主接点5aの一端5bは、バッテリ4の正極4aに接続されている。主接点5aの他端5cは、コンタクタ5とインバータ8との間の回路部分9の第一端9aに接続されている。
【0028】
回路部分9は、産業車両の制動制御装置100を構成する回路の一部分であり、コンタクタ5とインバータ8とコントローラ10とを接続する。図2の例では、回路部分9は、第一端9aから第二端9bまで延びる配線9cと、配線9cから分岐すると共に第三端9dまで延びる配線9eと、を有する。
【0029】
コイル5dは、バッテリ4からの電力供給に応じて励磁又は消磁され、コンタクタ5の主接点5aを開閉するように駆動する。コイル5dの一端5eは、遮断スイッチ6の他端6bに接続されている。コイル5dの一端5eと遮断スイッチ6の他端6bとの間の一部分は、コントローラ10の内部を通過する態様であってもよい。コイル5dの他端5fは、バッテリ4の負極4b側(例えば産業車両1の車体アース部)に接続されている。コイル5dの他端5fとバッテリ4の負極4b側との間の一部分は、コントローラ10の内部を通過する態様であってもよい。
【0030】
遮断スイッチ6は、走行中の産業車両1を緊急時に停止させるために操作される。遮断スイッチ6は、例えば緊急停止ボタンである。遮断スイッチ6は、例えば、産業車両1の運転席において運転者が操作可能な位置に設置されている。遮断スイッチ6は、バッテリ4とコイル5dの一端5eとの間に設けられている。遮断スイッチ6は、操作されていない状態でバッテリ4とコイル5dとを電気的に接続する。遮断スイッチ6は、操作された状態で、バッテリ4とコイル5dとを電気的に遮断する。すなわち、遮断スイッチ6は、操作されることで、コンタクタ5を遮断状態へと切り替えるようにバッテリ4からコイル5dへの電力供給を遮断可能である。
【0031】
上述のような構成によれば、コンタクタ5では、遮断スイッチ6が操作されていない場合、コイル5dにバッテリ4から電力が供給されるため、コイル5dによって主接点5aが閉じるように駆動される。よって、コンタクタ5は、遮断スイッチ6が操作されていない場合に、バッテリ4とインバータ8とを電気的に接続する導通状態となる。一方、コンタクタ5では、遮断スイッチ6が操作された場合、バッテリ4からコイル5dへの電力が遮断されるため、コイル5dによって駆動されなくなった主接点5aが開く。よって、コンタクタ5は、遮断スイッチ6が操作された場合に、バッテリ4とインバータ8とを電気的に遮断する遮断状態となる。
【0032】
コイル5dの一端5eと遮断スイッチ6の他端6bとの間には、電流センサ7が設けられていてもよい。電流センサ7は、バッテリ4からコイル5dへの電力供給を検出する検出部である。電流センサ7は、例えば、コイル5dの一端5eと遮断スイッチ6の他端6bとの間においてコントローラ10の内部を通過する部分に設けられている。電流センサ7は、バッテリ4からコイル5dへ流れる電流を検出し、検出した電流情報をコントローラ10に送信する。
【0033】
インバータ8は、モータ2とバッテリ4との間の相互の電力の変換及び供給を行う。インバータ8は、バッテリ4からの直流電力をモータ2に供給する交流電力に変換する。インバータ8は、例えばIGBT等を含んで構成された公知の三相インバータである。インバータ8の直流側の正極8aは、回路部分9の配線9cの第二端9bに接続されている。インバータ8の直流側の負極8bは、バッテリ4の負極4b側(例えば車体アース部)に接続されている。インバータ8の交流側の端子8cは、モータ2に接続されている。なお、図2及び図3の破線L1~破線L11は、電流の流れを示しており、矢印の先端に向かって電流が流れることを意味している。図2の破線L1に示されるように、インバータ8には、遮断スイッチ6が操作されていない場合に、バッテリ4からコンタクタ5を介して直流電力が供給される。図2の破線L2に示されるように、インバータ8は、供給された直流電力を交流電力に変換してモータ2に出力する。この場合、モータ2からバッテリ4までの経路は、図2の破線L3~破線L5に示される経路となり、閉回路が形成される。
【0034】
なお、コンタクタ5とインバータ8との間(例えば配線9c上)には、DC/DCコンバータが介在していてもよい。DC/DCコンバータは、例えば、バッテリ4からインバータ8への直流電力の電圧を昇圧する。この場合、インバータ8は、DC/DCコンバータからの直流電力を交流電力に変換する。
【0035】
コントローラ10は、産業車両1の電磁ブレーキ3を制御する電子制御ユニットである。コントローラ10は、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]、CAN[Controller Area Network]通信回路等を有する。コントローラ10では、例えば、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。コントローラ10は、複数の電子制御ユニットから構成されていてもよい。
【0036】
コントローラ10の電源端子の正極10aは、回路部分9の配線9eの第三端9dに接続されている。コントローラ10の電源端子の負極10bは、バッテリ4の負極4b側(例えば車体アース部)に接続されている。コントローラ10は、図2の破線L6に示されるように、回路部分9の配線9eから正極10aに電力が供給されることにより作動する。コントローラ10の出力端子の正極10cは、電磁ブレーキ3の正極3aに接続されている。コントローラ10の出力端子の負極10dは、電磁ブレーキ3の負極3bに接続されている。図2の破線L7,破線L8に示されるように、コントローラ10は、正極10aに供給された電力の一部を電磁ブレーキ3に供給することができる。すなわち、電磁ブレーキ3及びコントローラ10には、コンタクタ5の導通状態において、コンタクタ5とインバータ8との間の回路部分9から電力供給される。
【0037】
図3は、一実施形態に係る産業車両の制動制御装置においてスイッチ部が遮断状態である場合の回路構成を例示する概略ブロック図である。図3には、遮断スイッチ6が操作されており、コンタクタ5が遮断状態へと切り替えられている状態の回路構成が例示されている。
【0038】
コントローラ10は、電流センサ7の検出結果に基づいて、バッテリ4からコイル5dへの電力供給の遮断を検知する。コントローラ10は、例えば、電流センサ7によって検出された電流情報に基づいて、遮断スイッチ6が操作されたことによりバッテリ4からコイル5dへ電流が流れなくなったことを検出した場合、バッテリ4からコイル5dへの電力供給の遮断を検知する。コントローラ10は、例えば、バッテリ4からコイル5dへの電流値が所定の遮断閾値以下となった場合に、バッテリ4からコイル5dへの電力供給の遮断を検知する。遮断閾値は、例えば0Aであってもよいし、0Aよりもわずかに大きい電流値であってもよい。
【0039】
コントローラ10は、バッテリ4からコイル5dへの電力供給の遮断を検知した場合に、電磁式リターダ13に回生させるように電磁式リターダ13を制御する。コントローラ10は、遮断スイッチ6が操作されたことによりバッテリ4からコイル5dへの電力供給の遮断を検知した場合、電磁式リターダ13の回生電力が所定の遮断時回生電力以上となるように電磁式リターダ13を制御してもよい。遮断時回生電力は、遮断スイッチ6が操作された場合に電磁式リターダ13に生じさせる回生電力である。遮断時回生電力は、コントローラ10及び電磁ブレーキ3の作動に要する電力よりも所定の余裕分だけ大きい電力の大きさとすることができる。所定の余裕分は、例えば回生電力の変動等が生じたとしても、コントローラ10及び電磁ブレーキ3の作動が途中で止まってしまわない程度の電力の余裕代である。
【0040】
コントローラ10は、バッテリ4からコイル5dへの電力供給の遮断を検知した場合に、モータ2の軸に固定された金属製の回転部材が所定の回転数閾値以上で回転しているとき、内部のスイッチング素子がONされるように電磁式リターダ13に作動信号を送信してもよい。これにより、電磁式リターダ13の回生電力が所定の遮断時回生電力以上となる。
【0041】
ちなみに、遮断スイッチ6が操作された場合、主接点5aが開いてコンタクタ5が遮断状態となるまでに、わずかな時間が存在する。このわずかな時間では、バッテリ4から電磁ブレーキ3及びコントローラ10への電力供給が継続している。そのため、このわずかな時間のうちに、コントローラ10は、電磁式リターダ13に回生制動させるように電磁式リターダ13を制御する作動信号を送信する。厳密には、コントローラ10と電磁式リターダ13との間のCAN通信回路の通信周期を考慮してもよい。例えば、コントローラ10は、バッテリ4からコイル5dへの電力供給の遮断を検知した場合に、CAN通信回路の通信周期に対して非同期に(次の通信周期まで待たずに)、電磁式リターダ13に回生制動させるように電磁式リターダ13を制御する作動信号を送信してもよい。コントローラ10は、バッテリ4からコイル5dへの電力供給の遮断を検知した場合に、当該電力供給の遮断を検知していない場合と比べて短い通信周期に変更して、電磁式リターダ13に回生制動させるように電磁式リターダ13を制御する作動信号を送信してもよい。或いは、コントローラ10に含まれるコンデンサ等の蓄電素子を大きくすることで、コンタクタ5が遮断状態となってからの所定時間、電磁式リターダ13に作動信号を送信できるようにしてもよい。
【0042】
電磁式リターダ13は、バッテリ4からコイル5dへの電力供給の遮断が検知された場合、コントローラ10からの作動信号に応じて回生し、電磁式リターダ13の回生電力をAC/DCコンバータで直流電力に変換する。AC/DCコンバータが直流電力に変換した回生電力は、図3の破線L9~破線L11に示されるように、電磁式リターダ13から電磁ブレーキ3及びコントローラ10に供給される。
【0043】
具体的には、電磁式リターダ13の出力端子の正極13aは、コントローラ10の正極10eに接続されている。コントローラ10は、図3の破線L9に示されるように、電磁式リターダ13の正極13aからコントローラ10の正極10eに電力が供給されることにより作動する。コントローラ10の負極10fは、電磁ブレーキ3の正極3aに接続されている。コントローラ10は、正極10eに供給された電力の一部を電磁ブレーキ3に供給することができる。電磁ブレーキ3は、図3の破線L10に示されるように、コントローラ10の負極10fから電磁ブレーキ3の正極3aに電力が供給されることにより作動する。すなわち、電磁ブレーキ3及びコントローラ10には、コンタクタ5の遮断状態において、電磁式リターダ13から電力供給される。
【0044】
電磁ブレーキ3の負極3bは、電磁式リターダ13の出力端子の負極13bに接続されている。電磁ブレーキ3から戻る直流電力は、図3の破線L11に示されるように、電磁ブレーキ3の負極3bから電磁式リターダ13の負極13bに戻る。このようにして、遮断スイッチ6が操作された場合、図3の破線L9~破線L11で示されるように、電磁式リターダ13、コントローラ10、及び電磁ブレーキ3が直列接続となる閉回路が形成されることとなる。
【0045】
図4は、コントローラの処理の一例を示すフローチャートである。図4に示されるフローチャートの処理は、例えば、産業車両1の走行中に所定の演算周期ごとに繰り返し実行される。
【0046】
S10において、産業車両の制動制御装置100のコントローラ10は、検出部である電流センサ7の検出結果の取得を行う。コントローラ10は、例えば、電流センサ7によって検出されたバッテリ4からコイル5dへ流れる電流の電流情報を取得する。
【0047】
S11において、コントローラ10は、モータ2の回転数の取得を行う。コントローラ10は、例えば、車速センサ2aによって検出されたモータ2の回転数を取得する。なお、ここでのコントローラ10は、モータ2の回転数を産業車両1の車速に代えて取得する。
【0048】
S12において、コントローラ10は、バッテリ4からコイル5dへの電力供給の遮断を検知したか否かの判定を行う。コントローラ10は、例えば、遮断スイッチ6が操作されたことによりバッテリ4からコイル5dへ電流が流れなくなったことを検出した場合、バッテリ4からコイル5dへの電力供給の遮断を検知する。
【0049】
コントローラ10がバッテリ4からコイル5dへの電力供給の遮断を検知しない場合(S12:NO)、コントローラ10は、S13において、電磁式リターダ13に回生させないように電磁式リターダ13を制御する。コントローラ10は、例えば、電磁式リターダ13の内部のスイッチング素子をONするための作動信号を電磁式リターダ13に送信しない。その後、コントローラ10は、図4の処理を終了する。
【0050】
一方、コントローラ10がバッテリ4からコイル5dへの電力供給の遮断を検知した場合(S12:YES)、コントローラ10は、S14において、モータ2の回転数が回転数閾値以上であるか否かの判定を行う。
【0051】
モータ2の回転数が回転数閾値以上ではない(回転数閾値未満である)と判定した場合(S14:NO)、コントローラ10は、上記S13の処理に移行する。その後、コントローラ10は、図4の処理を終了する。
【0052】
一方、モータ2の回転数が回転数閾値以上であると判定した場合(S14:YES)、コントローラ10は、S15において、電磁式リターダ13に回生させるように電磁式リターダ13を制御する。コントローラ10は、例えば、電磁式リターダ13の内部のスイッチング素子をONするための作動信号を電磁式リターダ13に送信することで、電磁式リターダ13に回生させる。その後、コントローラ10は、図4の処理を終了する。
【0053】
以上のように構成された産業車両の制動制御装置100によれば、遮断スイッチ6が操作されてバッテリ4からコイル5dへの電力供給が遮断されると、コンタクタ5が遮断状態となる。このとき、電磁ブレーキ3には、コンタクタ5とインバータ8との間の回路部分9からは電力供給されなくなるが、電磁式リターダ13から電力供給されることができる。したがって、遮断スイッチ6の操作時に電磁ブレーキ3への電力供給が可能となり、電磁ブレーキ3への電力供給が途絶えて生じる急制動を抑制することができる。
【0054】
産業車両の制動制御装置100は、バッテリ4からコイル5dへの電力供給を検出する電流センサ7と、電流センサ7の検出結果に基づいて電磁式リターダ13を制御するコントローラ10と、を備える。コントローラ10には、コンタクタ5の導通状態において、コンタクタ5とインバータ8との間の回路部分9又は電磁式リターダ13から電力供給される。コントローラ10には、コンタクタ5の遮断状態において、電磁式リターダ13から電力供給される。コントローラ10は、バッテリ4からコイル5dへの電力供給の遮断を検知した場合に、電磁式リターダ13に回生させるように電磁式リターダ13を制御する。これにより、電流センサ7の検出結果に基づいて、バッテリ4からコイル5dへの電力供給の遮断が検知されると、コントローラ10によって電磁式リターダ13に回生させるように電磁式リターダ13が制御される。このように、電磁式リターダ13を制御するコントローラ10を用いて、遮断スイッチ6の操作時に電磁ブレーキ3への電力供給が可能となる。
【0055】
産業車両の制動制御装置100では、産業車両1は、モータ2によって発生した駆動力が駆動系12を介して前輪1aに伝達するように構成されている。電磁式リターダ13は、モータ2の駆動系12とは反対側に設けられている。これにより、モータ2と駆動系12との間の構成を維持しつつ電磁式リターダ13を設けることができる。
【0056】
[変形例]
本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。
【0057】
上記実施形態では、電源部の一例として、鉛蓄電池、リチウムイオン電池等の二次電池であるバッテリ4を示したが、この例に限定されない。電源部は、例えば、電気二重層キャパシタ等であってもよい。電源部は、燃料電池を含んでもよい。電源部は、外部電源と蓄電池との組み合わせであってもよい。外部電源は、直流電源であってもよいし、AC/DCコンバータを介在させることで交流電源を用いてもよい。
【0058】
上記実施形態では、制動部の一例として電磁ブレーキ3を示したが、この例に限定されない。要は、電力供給によってモータ2の制動を解除でき、電力が供給されなくなるとモータ2を制動するものであれば、電磁ブレーキ3とは異なる別の制動装置であってもよい。
【0059】
上記実施形態では、バッテリ4からコイル5dへの電力供給を検出する検出部の一例として電流センサ7を示したが、この例に限定されない。例えば、検出部は、バッテリ4の正極4aとコイル5dの一端5eとの電位差を検出する電圧センサであってもよい。また、検出部は、必ずしも、電流センサ7のように、コイル5dの一端5eと遮断スイッチ6の他端6bとの間においてコントローラ10の内部を通過する部分に設けられていなくてもよい。
【0060】
上記実施形態では、スイッチ部の一例としてコンタクタ5(電磁接触器)を示したが、この例に限定されない。例えば、コンタクタ5にサーマルリレーを組み合わせた電磁開閉器(マグネットスイッチ)であってもよい。
【0061】
上記実施形態では、電磁ブレーキ3及び電磁式リターダ13は、モータ2の駆動系12とは反対側において、モータ2から見て、電磁ブレーキ3、電磁式リターダ13の順で設けられていたが、この例に限定されない。モータ2から見て、電磁式リターダ13、電磁ブレーキ3の順で設けられていてもよい。また、電磁ブレーキ3及び電磁式リターダ13は、モータ2の駆動系12とは反対側に設けられていたが、この例に限定されない。電磁ブレーキ3及び電磁式リターダ13の少なくとも何れか一方は、モータ2と駆動系12との間に設けられていてもよいし、駆動系12に設けられていてもよいし、駆動系12と前輪1aとの間に設けられていてもよい。
【0062】
上記実施形態では、電流センサ7及びコントローラ10を用いて電磁式リターダ13に回生させるように電磁式リターダ13を制御したが、電流センサ7及びコントローラ10は必須ではない。例えば、電磁式リターダ13が回生する回生電力が常に電磁ブレーキ3に供給されるように構成してもよい。
【0063】
上記実施形態では、電磁ブレーキ3及びコントローラ10には、コンタクタ5の導通状態において、コンタクタ5とインバータ8との間の回路部分9から電力供給されたが、電磁式リターダ13が回生する回生電力を、コンタクタ5の導通状態においても利用してもよい。この場合、コントローラ10がバッテリ4からコイル5dへの電力供給の遮断を検知しない場合(S12:NO)において、モータ2の回転数が回転数閾値以上であるときには、電磁ブレーキ3及びコントローラ10には、電磁式リターダ13の回生電力を用いて電力供給してもよい。なお、コントローラ10がバッテリ4からコイル5dへの電力供給の遮断を検知しない場合(S12:NO)において、モータ2の回転数が回転数閾値以上ではない(回転数閾値未満である)ときには、回生電力が不足し得るため、電磁ブレーキ3及びコントローラ10には、コンタクタ5とインバータ8との間の回路部分9から電力供給してもよい。
【0064】
上記実施形態では、コントローラ10は、S14において、モータ2の回転数が回転数閾値以上であるか否かの判定を行ったが、S14の判定は省略してもよい。この場合、例えば、コントローラ10がS15において電磁式リターダ13に回生させるように電磁式リターダ13を制御することで、電磁式リターダ13の回生電力が成り行きとなってもよい。
【0065】
なお、電磁式リターダ13は、制動対象の軸の回転数が一定の場合において、コントローラ10からの作動信号に応じて回生制動の強さが変更可能に構成されていてもよい。この場合、コントローラ10は、電磁式リターダ13の回生電力が所定の遮断時回生電力以上となるように電磁式リターダ13に作動信号を送信してもよい。
【0066】
上記実施形態では、インバータ8等を制御するコントローラ10が電磁式リターダ13を制御したが、別途、電磁式リターダ13用のコントローラを設けてもよい。
【0067】
上記実施形態では、産業車両の制動制御装置100が搭載される産業車両1として、電動フォークリフトを示したが、この例に限定されない。例えば、産業車両は、牽引車、搬送車等の他の産業車両であってもよい。電源部を電源とするモータを含み、電力供給によってモータの制動を解除できる制動部を含む産業車両であればよく、エンジンを併用可能な構成であってもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…産業車両、2…モータ、3…電磁ブレーキ(制動部)、4…バッテリ(電源部)、5…コンタクタ(スイッチ部)、5a…主接点、5d…コイル、6…遮断スイッチ、7…電流センサ(検出部)、8…インバータ、9…回路部分、10…コントローラ(制御部)、12…駆動系、13…電磁式リターダ、100…産業車両の制動制御装置。
図1
図2
図3
図4