(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162683
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】フィルム付き紙容器及び包装物
(51)【国際特許分類】
B65D 85/36 20060101AFI20241114BHJP
B65D 5/00 20060101ALI20241114BHJP
B65D 85/50 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B65D85/36 100
B65D5/00 Z
B65D85/50 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078484
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 順二
(72)【発明者】
【氏名】辻 和政
【テーマコード(参考)】
3E035
3E060
3E096
【Fターム(参考)】
3E035AA20
3E035AB05
3E035BA08
3E035BB08
3E035BC01
3E035BC02
3E035BD04
3E035CA08
3E060AA01
3E060BC04
3E060DA23
3E060EA13
3E096AA03
3E096BA28
3E096CA02
3E096CA06
3E096DA03
3E096DA17
3E096DA18
3E096EA01X
3E096EA02X
3E096FA08
3E096FA10
3E096FA20
3E096GA02
3E096GA05
(57)【要約】
【課題】フィルム付き紙容器において内容物の保護性を確保する。
【解決手段】フィルム付き紙容器1は、開口2Aを通じて内容物を出し入れ可能な収容空間を囲む複数の壁面部21X,21Y,22L,22Rが直線状の辺で囲まれた平面状をなすとともに複数の壁面部21X,21Y,22L,22Rが多面体形状をなし、開口2Aの周囲の辺を除く三本以上の辺の端部どうしが接した複数の頂点27L,27Rを有する紙製の容器本体2と、容器本体2に内装されたフィルム3と、を備え、容器本体2において複数の頂点のうち少なくとも一つの頂点を含む隅部28L,28R以外の非隅部に対して、フィルム3のうち隅部28L,28Rに対向した一部以外の他部が密着した状態で内装された密着部30と、容器本体2の隅部28L,28Rにおいて収容空間の内側を向いた面に対してフィルム3の一部が離間した状態で内装された非密着部31と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を通じて内容物を出し入れ可能な収容空間を囲む複数の壁面部のそれぞれが直線状の辺で囲まれた平面状をなすとともに前記複数の壁面部が突き合わせられた多面体形状をなし、前記開口の周囲を囲繞する前記辺を除く三本以上の前記辺の端部どうしが接した複数の頂点を有する紙製の容器本体と、前記容器本体に内装された耐水性のフィルムと、を備えたフィルム付き紙容器であって、
前記容器本体において前記複数の頂点のうち少なくとも一つの頂点を含む隅部以外の非隅部に対して、前記フィルムのうち前記隅部に対向した一部以外の他部が密着した状態で内装された密着部と、
前記容器本体の前記隅部において前記収容空間で内容物が収容される空間側である内側を向いた面に対して前記フィルムの前記一部が離間した状態で内装された非密着部と、を備えた
ことを特徴とするフィルム付き紙容器。
【請求項2】
前記複数の壁面部は、前記開口に対向する位置に矩形状の底面部を含み、
前記容器本体の前記隅部は、前記底面部の四隅に位置する四つの前記頂点のそれぞれを含む所定の四領域に設けられた
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルム付き紙容器。
【請求項3】
前記複数の壁面部は、互いに略垂直をなす一対の第一壁面部と、前記一対の第一壁面部のそれぞれに接した一対の第二壁面部と、前記一対の第二壁面部のそれぞれに対して前記開口と反対側に連設された一対の第三壁面部とを含み、
前記一対の第一壁面部は、前記開口に対して第一角度で傾斜した姿勢で設けられており、
前記一対の第二壁面部は、前記開口に対して前記第一角度よりも大きい第二角度で傾斜した姿勢で設けられており、
前記一対の第三壁面部は、前記開口と平行に延在する仮想平面に対して前記第二角度よりも小さい第三角度で傾斜した姿勢で設けられた
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルム付き紙容器。
【請求項4】
前記フィルムが真空成形、圧空成形又は真空圧空成形により前記容器本体に内装されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルム付き紙容器。
【請求項5】
前記非密着部は、前記容器本体の前記隅部と前記フィルムの前記一部とに挟まれた間隙をなす部位である隙間部を有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルム付き紙容器。
【請求項6】
前記容器本体の前記隅部をなす前記頂点で前記端部どうしが接する前記三本以上の前記辺のうち少なくとも一辺に沿う領域に、前記容器本体の内側と外側とを連通しない押し込み罫線が設けられている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルム付き紙容器。
【請求項7】
前記フィルムは、少なくとも三層以上の複数層で構成されており、
前記複数層のうち前記容器本体に向かい合う層が前記容器本体からの分離が容易なイージーピール層をなす
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルム付き紙容器。
【請求項8】
前記フィルムは、少なくとも三層以上の複数層で構成されており、
前記複数層のうち中間層にバリア性を有するバリア層が設けられている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルム付き紙容器。
【請求項9】
前記複数の壁面部において前記開口の周囲を囲繞する各前記辺から外側へ向かって延出したフランジ部が設けられており、
前記フランジ部は、前記容器本体の前記隅部以外の前記非隅部に含まれる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルム付き紙容器。
【請求項10】
前記容器本体には、前記フランジ部と、前記容器本体のうち前記フランジ部を除く主部とが別体で設けられている
ことを特徴とする請求項9に記載のフィルム付き紙容器。
【請求項11】
請求項1又は2に記載のフィルム付き紙容器と、
前記フィルム付き紙容器の前記収容空間内に前記内容物が収容された状態で、前記開口を閉塞した蓋体と、を備えた
ことを特徴とする包装物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙製の容器形状に成形された容器本体の内面にフィルムを設けたフィルム付き紙容器及びフィルム付き紙容器に内容物を収容した包装物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品等の内容物を収納する容器として、紙製の容器本体に対して内面に樹脂製のフィルムが積層されたフィルム付き紙容器(以下、単に「容器」ともいう)が知られている。このような容器の一例を示す特許文献1には、底壁部と底壁部から折り立てられた姿勢をなす複数の側壁部とで成形された多面体形状をなす容器本体の内面に対してフィルム全体の密着した容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように容器本体に対してフィルム全体が密着した状態で内装された特許文献1の容器では、容器本体に対してフィルムが角張った形状で密着している。そのため、容器に収容された内容物が容器本体に対して角張った形状でフィルムが密着している箇所に突き当たった際には、内容物の損傷を招くおそれがある。
よって、フィルム付き紙容器に収容される内容物の保護性を確保するうえで改善の余地がある。
【0005】
本件は、上記の課題に鑑みて創案されたものであり、内容物の保護性を確保することを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用及び効果であって、従来の技術では得られない作用及び効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで開示のフィルム付き紙容器は、以下に記す(1)~(10)の構成を備えている。また、ここで開示の包装物は、以下に記す(11)の構成を備えている。
(1)
開口を通じて内容物を出し入れ可能な収容空間を囲む複数の壁面部のそれぞれが直線状の辺で囲まれた平面状をなすとともに前記複数の壁面部が突き合わせられた多面体形状をなし、前記開口の周囲を囲繞する前記辺を除く三本以上の前記辺の端部どうしが接した複数の頂点を有する紙製の容器本体と、前記容器本体に内装された耐水性のフィルムと、を備えたフィルム付き紙容器であって、
前記容器本体において前記複数の頂点のうち少なくとも一つの頂点を含む隅部以外の非隅部に対して、前記フィルムのうち前記隅部に対向した一部以外の他部が密着した状態で内装された密着部と、
前記容器本体の前記一部において前記収容空間で内容物が収容される空間側である内側を向いた面に対して前記フィルムの前記一部が離間した状態で内装された非密着部と、を備えた
ことを特徴とするフィルム付き紙容器。
【0007】
(2)
前記複数の壁面部は、前記開口に対向する位置に矩形状の底面部を含み、
前記容器本体の前記隅部は、前記底面部の四隅に位置する四つの前記頂点のそれぞれを含む所定の四領域に設けられた
ことを特徴とする(1)に記載のフィルム付き紙容器。
【0008】
(3)
前記複数の壁面部は、互いに略垂直をなす一対の第一壁面部と、前記一対の第一壁面部のそれぞれに接した一対の第二壁面部と、前記一対の第二壁面部のそれぞれに対して前記開口と反対側に連設された一対の第三壁面部とを含み、
前記一対の第一壁面部は、前記開口に対して第一角度で傾斜した姿勢で設けられており、
前記一対の第二壁面部は、前記開口に対して前記第一角度よりも大きい第二角度で傾斜した姿勢で設けられており、
前記一対の第三壁面部は、前記開口と平行に延在する仮想平面に対して前記第二角度よりも小さい第三角度で傾斜した姿勢で設けられた
ことを特徴とする(1)又は(2)に記載のフィルム付き紙容器。
【0009】
(4)
前記フィルムが真空成形、圧空成形又は真空圧空成形により前記容器本体に内装されている
ことを特徴とする(1)~(3)の何れか一つに記載のフィルム付き紙容器。
(5)
前記非密着部は、前記容器本体の前記隅部と前記フィルムの前記一部とに挟まれた間隙をなす部位である隙間部を有する
ことを特徴とする(1)~(4)の何れか一つに記載のフィルム付き紙容器。
(6)
前記容器本体の前記隅部をなす前記頂点で前記端部どうしが接する前記三本以上の前記辺のうち少なくとも一辺に沿う領域に、前記容器本体の内側と外側とを連通しない押し込み罫線が設けられている
ことを特徴とする(1)~(5)の何れか一つに記載のフィルム付き紙容器。
【0010】
(7)
前記フィルムは、少なくとも三層以上の複数層で構成されており、
前記複数層のうち前記容器本体に向かい合う層が前記容器本体からの分離が容易なイージーピール層をなす
ことを特徴とする(1)~(6)の何れか一つに記載のフィルム付き紙容器。
(8)
前記フィルムは、少なくとも三層以上の複数層で構成されており、
前記複数層のうち中間層にバリア性を有するバリア層が設けられている
ことを特徴とるす(1)~(7)の何れか一つに記載のフィルム付き紙容器。
【0011】
(9)
前記複数の壁面部において前記開口の周囲を囲繞する各前記辺から外側へ向かって延出したフランジ部が設けられており、
前記フランジ部は、前記容器本体の前記隅部以外の前記非隅部に含まれる
ことを特徴とする(1)~(8)の何れか一つに記載のフィルム付き紙容器。
(10)
前記容器本体には、前記フランジ部と、前記容器本体のうち前記フランジ部を除く主部とが別体で設けられている
ことを特徴とする(9)に記載のフィルム付き紙容器。
【0012】
(11)
(1)~(10)の何れか一つに記載のフィルム付き紙容器と、
前記フィルム付き紙容器の前記収容空間内に前記内容物が収容された状態で、前記開口を閉塞した蓋体と、を備えた
ことを特徴とする包装物。
【発明の効果】
【0013】
本件によれば、内容物の保護性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態のフィルム付き紙容器の斜視図である。
【
図2】
図1において一点鎖線で示す囲み部分の拡大図である。
【
図3】
図2の容器をX-X線から視た断面図である。
【
図4】フィルム付き紙容器の変形例を説明する斜視図である。
【
図5】
図4のフィルム付き紙容器を白抜き矢印Aから視た側面図である。
【
図6】
図5のフィルム付き紙容器を白抜き矢印Bから視た底面図である。
【
図7】
図6のフィルム付き紙容器をY-Y線から視た模式的断面図である。
【
図8】
図5のフィルム付き紙容器をZ-Z線から視た模式的断面図である。
【
図9】変形例に係るフィルム付き紙容器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、フィルム付き紙容器を実施するための形態を説明する。
本実施形態では、フィルム付き紙容器が水平面に載置された姿勢を例示する。
説明に用いる方向は、次のように定義する。鉛直方向のうち重力の作用方向を下方(図面では「D」と記す)とし、下方の反対方向を上方(図面では「U」と記す)とする。水平方向は、前方(図面では「F」と記す),後方(図面では「B」と記す),左方(図面では「L」と記す)及び右方(図面では「R」と記す)の四方向に沿う方向である。前方と後方とは互いに反対を向く方向であり、左方と右方とは互いに反対を向く方向であり、前後方向と左右方向とは互いに直交(交差)する。
さらに、フィルム付き紙容器の収容空間で内容物が収容される空間側を内側とし、内側の反対側を外側とする。
【0016】
[1.構成]
図1~
図3を参照して、本実施形態に係るフィルム付き紙容器1(以下、単に「容器1」とも言う)の構成を説明する。
容器1は、紙製の容器本体2に対してフィルム3が内装された包装容器である。容器1には、開口2Aを通じて内容物を出し入れ可能な収容空間が設けられている。容器1は、内容物として食品を収容する食品用包装容器を例に挙げることができ、食品としては略直角二等辺三角形状の二底面を有する三角柱状に成形されたサンドイッチを例に挙げることができる。
【0017】
容器1の形状やプロポーションは、容器1に収容する内容物の形状や性状等に応じて適宜に設定可能である。
内容物として上記のサンドイッチを想定した容器1は、互いに向かい合う一対の壁面部22L,22Rがサンドイッチの形状に対応した直角二等辺三角形状をなす三角柱状の容器として形成される。
【0018】
容器1は、収容空間内に内容物が収容された状態で、例えば容器1の収容空間内の空気を不活性ガスに置換した状態で、開口2Aが蓋体5で閉塞される。
蓋体5は、収容空間内の密閉するためのリッド部材であり、例えばフィルムシートで形成される。上記のように開口2Aが閉塞された状態をなす容器1は、ガス置換包装で内容物を収容した包装物である。
【0019】
容器本体2は、複数の壁面部21X,21Y,22L,22Rが突き合わせられて三角柱状(多面体形状)に成形されたものである。各壁面部21X,21Y,22L,22Rは、容器1の収容空間を囲む部位であり、直線状の辺で囲まれた平面状をなす。本実施形態では、壁面部21X,21Y,22L,22Rのうち、互いに向かい合う一対の壁面部22L,22Rは同一形状の直角二等辺三角形状をなす。
【0020】
壁面部21X,21Yは、壁面部22L,22Rの間で壁面部22L,22Rに対して交差する向きに配置されている。壁面部21X,21Yは、同一形状の長方形状をなし、互いの一辺で突き合わせられ、一方が他方に対して略90°(略垂直)の角度をなす。なお、「略90°」とは、一方が他方に対して90°であることだけでなく、一方が他方に対しておよそ90°の角度をなすことを含む。90°に近い角度の具体例として、80°以上、100°以下の角度範囲内であることを挙げることができる。
【0021】
容器本体2において、互いに隣接して配置された壁面部21X,21Y,22L,22Rのうち互いに隣接して配置された境界に沿って辺23,24R,24L,25R、25Lが延在している。
図1の例では、壁面部21Xの一方の短辺と壁面部21Yの一方の短辺とが突き合わせられた境界に沿って辺23(
図1中、壁面部22Lに隠れた辺23の一部を二点鎖線で示す)が延在している。また、壁面部22L,22Rで直角二等辺三角形の二等辺(底辺以外の辺)にあたる各辺に対して壁面部21X,21Yの各長辺が突き合わせられた境界に沿って四辺24R,24L,25R及び25Lが延在している。
【0022】
各壁面部21X,21Y,22L,22Rにおいて他の壁面部に突き合わせていない辺26X,26Y,26L,26Rで容器1の開口2Aが囲繞される。
壁面部21X,21Y,22L,22Rにおいて開口2Aの周囲を囲繞する各辺26X,26Y,26L,26Rから外側へ向かってフランジ部26が延出している。フランジ部26は、蓋体5を貼合するための貼合面をなす。
【0023】
容器本体2は、一例として、一枚の紙製シートを所定の折り目で折り曲げて成形されたものが挙げられる。一枚の紙製シートでは、壁面部21X,21Y,22L,22Rのうち隣接して配置されたもの同士の一部が折目を介して接続されている。
例えば、容器本体2を成形するための一枚の紙製シートとして、壁面部21X及び21Yに対応するシートどうしが折目を介して接続されるとともに、壁面部21Xに対応するシートに対して壁面部22L,22Rに対応するシートが折目を介して接続されたものを例に挙げることができる。この場合、壁面部21Xに対応するシートに対して壁面部21Y,22L,22Rに対応するシートがそれぞれ折り立てられ、且つ、壁面部21Yに対応するシートの端縁に対し、壁面部22L,22Rに対応するシートの端縁が突き合わせられて、三角柱状に成形される。
【0024】
なお、上記の一枚の紙製シートから成形された容器本体2では、壁面部21Xに対して壁面部21Y,22L,22Rが折目で折り立てられ、壁面部21Xと壁面部21Y,22L,22Rとの折目に沿って、辺23,24R,24Lが形成される。一方、壁面部21Yに対して壁面部22L,壁面部22Rが突き合わせられ(又は、近接され)た境界に沿って辺25R,25Lが形成される。本明細書で用いる「辺」は、折り立てられたシートの折目と、シートどうしが突き合わせられた端縁とを含むものである。
【0025】
以下の説明では、
図1に示すように、二つの壁面部21X,21Yの一方が下方に配置され、他方が後方に配置された姿勢を前提とし、一方の壁面部21Xを「下壁面部21X」とも言い、他方の壁面部21Yを「後壁面部21Y」とも言う。下壁面部21X及び後壁面部21Yに対して左右に設けられた壁面部22L,22Rを「側壁面部22L,22R」とも言う。
容器本体2は、二つ(複数)の頂点27L,27Rを有する。
頂点27L,27Rは、開口2Aの周囲を囲繞する各辺26X,26Y,26L,26Rを除く三本以上の辺24R,24L,25R,25Lの端部どうしが接した点である。
具体的には、二つの頂点27L,27Rのうち一方の頂点27Lは、辺24Lの後端部と辺25Lの下端部と辺23の左端部とが接した点である。二つの頂点27L,27Rのうち他方の頂点27Rは、辺24Rの後端部と辺25Rの下端部と辺23の右端部とが接した点である。
【0026】
フィルム3は、容器本体2の内面側の全域をフィルムシートで被覆(内装)したフィルム層であり、容器本体2の容器形状を維持する機能をはじめ、容器本体2の内面に耐水性や耐熱性,バリア性といった機能を付与する機能層である。
容器本体2の内面に積層されたフィルムシートが例えば公知の真空吸引(「真空成形」とも言う)により吸着(密着)されることで、フィルム3が容器本体2に内装される。なお、容器本体2の内面に積層されたフィルムシートを容器本体2に密着(内装)する方法としては、上記の真空吸引に限らず、圧空成形や真空圧空成形など公知の手法が適用されてよい。
【0027】
従来のフィルム付き紙容器では、フィルム全体が容器本体に密着している。
これに対し、本実施形態の容器1では、フィルム3全体が容器本体2に密着しているのではなく、フィルム3の一部が容器本体2の頂点27L,27Rを含む隅部28L,28Rに対して離間した状態で、フィルム3が容器本体2に内装されている。
【0028】
具体的には、容器1には、下記の密着部と非密着部とが設けられている。
密着部(後述
図3中の符号30)は、容器本体2のうち頂点27L,27Rを含む隅部28L,28R以外の非隅部(少なくとも一つの頂点を含む隅部以外の非隅部)に対し、隅部28L,28Rに対向した一部以外の他部が密着した状態で、フィルム3が内装された部分である。
非密着部(後述
図3中の符号31)は、容器本体2のうち頂点27L,27Rを含む隅部28L,28Rに対し、フィルム3のうち隅部28L,28Rに対向した一部が離間した状態で、フィルム3が内装された部分である。
【0029】
ここで、隅部28L,28Rとは、収容空間の内側において開口2A側からみて開口2Aとは反対側(収容空間の奥側)で左右両側の角に位置する所定領域である。
隅部28Lには、壁面部21Xと壁面部21Yの境界に沿う領域うち左端の一部と、壁面部21Xと壁面部22Lの境界に沿う領域うち後端の一部と、壁面部21Yと壁面部22Lの境界に沿う領域うち下端の一部とが含まれる。
【0030】
隅部28Rには、壁面部21Xと壁面部21Yの境界に沿う領域うち右端の一部と、壁面部21Xと壁面部22Rの境界に沿う領域うち後端の一部と、壁面部21Yと壁面部22Rの境界に沿う領域うち下端の一部とが含まれる。
この所定領域に対して内側に対向する部位が、フィルム3のうち頂点27L,27Rに対向した一部である。すなわち、フィルム3のうち頂点27L,27Rに対向した一部とは、上記の隅部28L,28Rに対向する部位である。
【0031】
隅部28L,28R以外の非隅部とは、容器本体2のうち、隅部28L,28R(すなわち所定領域)を除く部分である。具体的に言えば、壁面部21X,21Y,22L,22Rにおいて上記の所定領域を除く非所定領域とフランジ部26とが、隅部28L,28R以外の非隅部である。
フィルム3のうち頂点27L,27Rに対向した一部以外の他部は、フィルム3において上記の隅部28L,28R以外の非隅部に対向する部位である。
【0032】
図2は、
図1において一点鎖線で示す円で囲まれた部分、すなわち、頂点27Rを含む隅部28Rにおいて非密着部の設けられた部分の拡大図である。また、
図3は、
図2をX―X線から視た断面図である。なお、
図3中では密着部に符号30を付し、非密着部に符号31を付す。
図2及び
図3に示すように、非密着部31(
図3)では、容器本体2のうち隅部28Rをなす部分で内側を向いた面(以下「隅面部」という)29に対し、フィルム3において隅面部29に対向した面部3Aが離間した状態をなす。なお、隅面部29は、頂点27Rと頂点27Rに隣接した壁面部21X,21Y,22Rの一部領域とにおいて内側を向いた面である。
隅部28Rの隅面部29は角張った形状をなす。一方、隅面部29に対して離間したフィルム3の面部3Aは、丸みを帯びた角形状をなす。
【0033】
図3に示すように、隅部28Rの隅面部29とフィルム3の面部3Aとの間には隙間部4が形成されている。隙間部4は、非密着部31において互いに離間した容器本体2の一部とフィルム3の一部とに挟まれた間隙をなす部位である。
隙間部4には、真空吸引(あるいは、圧空成形又は真空圧空成形)で吸引されずに残った空気が存在している。
なお、左側の頂点27Lを含む隅部28Lにおいて非密着部の設けられた部分は、上記の頂点27Rを含む隅部28Rにおいて非密着部31の設けられた部分と同様に構成されており、その詳細な図示及び説明を省略する。
【0034】
上記のように、本実施形態の容器本体2では、下壁面部21Xとこれに隣接した後壁面部21Yとは折目を介して接続されており、下壁面部21Xに対して後壁面部21Yが折り立てられている。
これら下壁面部21X及び後壁面部21Yの境界(隣接して配置された壁面部どうしの境界)には、辺23に沿って押し込み罫線23K(
図1参照)が設けられている。なお、
図1において押し込み罫線23Kの一部を二点鎖線で示す。
【0035】
押し込み罫線23Kは、下壁面部21X及び後壁面部21Yの境界が折り曲げ易くなるように、紙製シートを押圧して形成されており、容器本体2の内側と外側とを連通しない折線である。押し込み罫線23Kは、下壁面部21X及び後壁面部21Yの境界をなす辺23に沿う領域に延設されている。
押し込み罫線23Kは、容器本体2の内側と外側とを連通しないため、真空吸引(容器1の製造過程)の際にフィルム3を吸着しにくくする構造と言える。すなわち、隅部28L,28Rをなす頂点27L,27Rで接する三辺のうち一辺である辺23に沿う領域に、容器本体2の内側と外側とを連通しない押し込み罫線23Kが設けられている。押し込み罫線23Kの設けられた辺23の部分は、吸引性が抑えられているため、頂点27Lに接する辺23の左端部と頂点27Rに接する辺23の左端部とのそれぞれで、フィルム3を容器本体2にあえて密着させにくくすることができる。
【0036】
下壁面部21Xと各側壁面部22L,22Rとの境界をなす辺24R,24Lに沿ってミシン目24M(
図1中、辺24Rに沿うミシン目24Mを破線で示す)が設けられている。ミシン目24Mは、下壁面部21Xと各側壁面部22L,22Rとの境界をなす辺24R,24Lに沿う領域に断続的に形成され、容器本体2の内側と外側とを連通する貫通孔が前後方向に沿って断続的に設けられた貫通構造である。
後壁面部21Yと各側壁面部22L,22Rとの境界をなす辺25R及び25Lに沿って、切込み25Sが設けられている。切込み25Sは、後壁面部21Yと各側壁面部22L,22Rとの境界をなす辺25R,25Lに沿って連続的に形成され、容器本体2の内側と外側とを連通する隙間構造である。切込み25Sは、後壁面部21Yと各側壁面部22L,22Rとの境界で、突き合わせられた辺どうしの間に生じたものである。
【0037】
ミシン目24Mや切込み25Sは、容器本体2の内側と外側とを連通するため、真空吸引の際に吸引しやすい構造と言える。
ミシン目24Mや切込み25Sの設けられた辺24R,24L,25R及び25Lの部分は、吸引性が確保されているため、フィルム3を容器本体2に対して確実に密着させることができる。
【0038】
容器本体2の内面にフィルム3を内装する製法は、公知の金型を用いた手法を適用できる。
金型は、容器本体2の外面形状に沿う窪みが凹設されたメス型と、容器本体2に対しフィルム3を押し込むための突出部が凸設されたオス型とを含んで構成される。この金型のうちオス型に非密着部を形成するための構造を設けることが好ましい。具体的には、オス型では、フィルム3のうち隅部28L,28Rに対向する領域を押し込むため突出部の寸法を小さくする(又は突出部を設けない)。これにより、オス型は、フィルム3のうち隅部28L,28Rに対向する領域を押し込みにくくなる。
【0039】
なお、金型を用いた製法の一例は以下の通りである。
まず、メス型に容器本体2に用いる紙製シートが装填される。
次に、紙製シートの上面にフィルム3に用いるフィルムシートが積層される。
それから、フィルムシートが延伸しやすいように、公知の加熱手段でフィルムシートを加熱する。
そして、オス型で紙製シートに対してフィルムシートを押し込みつつ、真空吸引が行われる。
【0040】
[2.材料]
次に、容器本体2の材料と、フィルム3の材料とについて述べる。
容器本体2の材料としては、一般的に用いられている紙であればとくに限定されず、植物由来のパルプを主成分とする紙であることが好ましく、木材パルプを主成分とする紙であることがより好ましい。
具体的には、クラフト紙,上質紙,板紙(白板紙),紙器用原紙,ミルクカートン原紙,カップ原紙,ライナ紙,塗工紙,片艶紙,グラシン紙,グラファン紙等が挙げられる。これらのなかでもクラフト紙,上質紙,板紙(白板紙),紙器用原紙,カップ原紙,片艶紙が好ましい。剛性の面から、板紙(白板紙)の中では高級板紙,特殊板紙,カップ原紙,クラフト紙がより好ましい。クラフト紙は、晒クラフト紙,未晒クラフト紙及び片艶晒クラフト紙が挙げられ、印刷適性や衛生面から、晒クラフト紙及び片艶晒クラフト紙が好ましい。
【0041】
また、ライナと中芯とライナの三層で構成された段ボールを使用しても良く、特に容器本体2の強度と成形加工性の両立の観点から、段ボールの厚みの小さいマイクロフルートが好ましい。紙の坪量は、好ましくは200~800g/m2であり、より好ましくは200~700g/m2であり、さらに好ましくは200~500g/m2であり、よりさらに好ましくは300~500g/m2である。紙の密度や、段ボールに用いるライナ及び中芯の密度は、成形加工性の観点から、好ましくは0.5~1.2g/cm3であり、より好ましくは0.6~1.0g/cm3であり、さらに好ましくは0.7~0.9g/cm3であり、よりさらに好ましくは0.8~0.9g/cm3である。
【0042】
紙や、段ボールの厚さは、好ましくは200~1000μmであり、より好ましくは250~1000μmであり、さらに好ましくは300~700μmであり、よりさらに好ましくは340~500μmである。紙には、種々の添加剤が含有されてよく、内添サイズ剤としては、ロジン系,アルキルケテンダイマー系,アルケニル無水コハク酸系,スチレン-アクリル系,高級脂肪酸系,石油樹脂系等が挙げられる。内添サイズ剤以外に、公知のその他の内添剤を添加してもよい。内添剤としては、填料,紙力増強剤,歩留り向上剤,pH調整剤,濾水性向上剤,耐水化剤,柔軟剤,帯電防止剤,消泡剤,スライムコントロール剤,染料・顔料等が挙げられる。
【0043】
填料としては、二酸化チタン,カオリン,タルク,炭酸カルシウム等が挙げられる。紙の抄紙においては、公知の湿式抄紙機を適宜選択して使用することができる。抄紙機としては、長網抄紙機,ギャップフォーマー型抄紙機,円網式抄紙機,短網式抄紙機等が挙げられる。抄紙機によって形成された紙層は、たとえば、フェルトにて搬送し、ドライヤーで乾燥させることが好ましい。ドライヤー乾燥前にプレドライヤーとして、多段式シリンダードライヤーを使用してもよい。また、前記のようにして得られた紙に、カレンダーによる表面処理を施して厚さやプロファイルの均一化を図ってもよい。カレンダー処理としては公知のカレンダー処理機を適宜選択して使用することができる。なお、容器本体2に用いる材料は上記に限らず種々の紙製資材を用いることができる。
【0044】
フィルム3に用いるフィルムシートには、付与する機能に応じた性質を有するシート材が用いられる。例えば、容器本体2にフィルム3を密着する際にフィルム3が伸長することを加味した延伸性や、バリア性,耐水性,耐熱性,熱融着性などの機能をもつプラスチックシートがフィルムシートに採用される。
【0045】
フィルムシートは、少なくとも三層以上の複数層で構成されることが好ましく、この場合、複数層のうち容器本体2の内面に接する層が、容器本体2からの分離が容易なイージーピール層をなすことが好ましい。このフィルムシートは、延伸性やバリア性を含む樹脂積層体であることが好ましい。樹脂積層体は、中間層にバリア性を有するバリア層を含み、容器本体2の内面に接する層は、容器本体2にヒートシールされる必要があるため、熱可塑性樹脂からなる層を含むことがより好ましい。すなわち、樹脂積層体は、中間層にバリア層を含み、容器本体2の内面に接する層に熱可塑性樹脂からなる層を含むフィルムであることがより好ましい。この熱可塑性樹脂からなる層が、上記のイージーピール層をなす。
【0046】
前記バリア層は、樹脂に限られず、金属箔等でもよいが、紙基材層の印刷面を視認できるようにし、意匠性を高める観点から、樹脂から構成されることが好ましく、透明の樹脂から構成されることがより好ましい。バリア層を構成する樹脂としては、ポリアミド系樹脂,ポリビニルアルコール,エチレン-ビニルアルコール共重合体及びポリ塩化ビニリデン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つが好ましく、ポリアミド系樹脂,ポリビニルアルコール及びエチレン-ビニルアルコール共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1つがより好ましい。ポリアミド系樹脂としては、芳香族ポリアミドが好ましく、ポリアミドMXD6がより好ましい。
【0047】
樹脂積層体の容器本体2の内面に接する層を構成する樹脂としては、ポリエチレン,ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂,ナイロン6等の脂肪族ポリアミド系樹脂,ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂が挙げられる。収容空間の内側を向いた層は、例えばポリプロピレン(PP)樹脂、具体的には、ホモポリプロピレン,ランダムポリプピレン共重合体,ブロックポリプロピレン共重合体であり、特に、ランダムポリプロピレン共重合体を用いるのが好ましい。
【0048】
ポリアミド系樹脂としては、ナイロン6,ナイロン66,ナイロン69,ナイロン610,ナイロン612,ナイロン11,ナイロン12などの脂肪族ポリアミド重合体,ナイロン6-66(ナイロン6とナイロン66の共重合体を表す。以下同様に表記する),ナイロン6-10,ナイロン6-12,ナイロン6-69,ナイロン6-610,ナイロン66-69などの脂肪族ポリアミド共重合体を例示することができる。なかでも、脂肪族ポリアミド共重合体が好ましく、特にナイロン6-66,ナイロン6-10又はナイロン6-12が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、二種以上混合して用いてもよい。
【0049】
ポリエステル系樹脂としては、ポリ(エチレンテレフタレート),ポリ(ブチレンテレフタレート),ポリ(エチレンテレフタレート/イソフタレート),ポリ(エチレングリコール/シクロへキサンジメタノール/テレフタレート)などが代表格としてあげられる。更にこれらの重合体に共重合成分としてエチレングリコール,ブチレングリコール,シクロヘキサンジメタノール,ネオペンチルグリコール,ペンタンジオールなどのジオール類,あるいはイソフタール類,ベンゾフェノンジカルボン酸,ジフェニルスルホンジカルボン酸,ジフェニルメタンジカルボン酸,プロピレンビス(フェニルカルボン酸),ジフェニルオキサイドジカルボン酸,シュウ酸,マレイン酸,マロン酸,コハク酸,グルタル酸,アジピン酸,ピメリン酸,スベリン酸,アゼライン酸,サバチン酸,ジエチルコハク酸などのジカルボン酸を含有せしめたものが使用できる。
【0050】
ポリオレフィン系樹脂としては、たとえば、直鎖状低密度ポリエチレン,低密度ポリエチレン,中密度ポリエチレン,高密度ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂,ポリプロピレンなどのポリプロピレン系樹脂,プロピレン-エチレン共重合体,エチレン-酢酸ビニル共重合体,アイオノマー樹脂,エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体,エチレン-(メタ)アクリル酸-不飽和カルボン酸エステル共重合体などの各種共重合体が挙げられる。好ましくは、ポリエチレン系樹脂であり、特に好ましくは、直鎖状低密度ポリエチレンである。これらは単独で用いてもよいし、二種以上混合して用いてもよい。フィルム3に用いるフィルムシートは、上記の構成の他、種々を組み合わせた多層構成としてもよい。
【0051】
また、フィルム3に用いるフィルムシートは、環境負荷低減の観点から、ポリ乳酸(PLA),ポリグリコール酸(PGA),ポリブチレンサクシネート(PBS)等の生分解性樹脂を用いることも好ましい。フィルム3の厚さは、好ましくは10~300μmであり、より好ましくは15~250μmであり、より好ましくは20~200μmであり、さらに好ましくは30~150μmである。フィルム3に用いるフィルムシートは、それぞれドライラミネート法により積層してもよいが、同時に溶融押出しする、共押出し法により形成したフィルムが好ましい。
【0052】
[3.作用及び効果]
本実施形態のフィルム付き紙容器1は上述の構成を備えるため、下記のような作用及び効果を得ることができる。
(1)非密着部31(
図3参照)では、頂点27Lを含む隅部28Lと頂点27Rを含む隅部28Rとのそれぞれにおいて、容器本体2の各隅部28L,28Rに対向したフィルム3の面部3Aは、隅部28L,28Rの隅面部29(容器本体2)に密着しておらず、浮いた状態で内装される。そのため、容器1に収容された内容物が容器本体2の隅部28L,28Rに対向するフィルム3の面部3Aに突き当たったとしても、容器本体2から離間したフィルム3が内容物と容器本体2との間で緩衝作用を果たし、内容物の破損を抑制することができる。よって、内容物の保護性を確保することができる。
【0053】
例えば、直角二等辺三角形状の二底面を有する三角柱状に成形されたサンドイッチが内容物として容器1に収容された場合には、サンドイッチにおいて直角二等辺三角形の直角部分にあたる部分が辺23の延在する領域に対向する姿勢でサンドイッチは容器1に収容される。
容器本体の頂点を含む領域(隅部)に対してフィルムが角張った形状で密着する従来技術では、容器本体の隅部に対して角張った形状でフィルムが密着している箇所にサンドイッチの一部が突き当たった際には、サンドイッチの一部がつぶれるおそれがあった。
これに対し、本実施形態の容器1によれば、隅部28L,28Rに対して離間したフィルム3が緩衝作用を果たすので、サンドイッチの一部が容器本体2の隅部28L,28Rに対向するフィルム3の面部3Aに突き当たった際、上記の緩衝作用によりサンドイッチの一部がつぶれにくくなる。このようにして、容器1に内容物として収容されるサンドイッチの保護性を確保することができる。
【0054】
また、本実施形態の容器1によれば、隅部28L,28Rに対して離間したフィルム3が丸みを帯びた角形状をなす。この形状は、内容物が粒状物や糸状物である場合に、内容物の取り出しやすさ(取り出し性)の確保に寄与する。容器本体の隅部に対してフィルムが角張った形状で密着する従来技術では、内容物が粒状物や糸状物である場合には、隅部に内容物が詰まりやすいため、内容物が取り出しきれずに残存するおそれがある。
これに対し、本実施形態の容器1によれば、隅部28L,28Rに対して離間したフィルム3が丸みを帯びた角形状をなすため、隅部28L,28Rに粒状物や糸状物の内容物が詰まりにくく、取り残しが抑制される。よって、本実施形態の容器1によれば内容物の取り出し性を確保することもできる。
【0055】
(2)本実施形態の容器1によれば、隅部28L,28Rの隅面部29とフィルム3の面部3Aと間に挟まれた隙間部4が緩衝作用を果たすので、より確実に内容物の保護性を確保することができる。
(3)非密着部31(
図3参照)が設けられた頂点27L,27Rに接する辺23には、容器本体2の内外を連通しない押し込み罫線23Kが設けられているため、非密着部におけるフィルム3の容器本体2への吸着を抑えつつ、容器本体2の成形性を確保することができる。
【0056】
(4)フィルム3をなす複数層のうち容器本体2に向かい合う層がイージーピール層をなすため、容器本体2からフィルム3を容易に分離することができる。容器1の使用後にリサイクル目的で容器本体2からフィルム3を容易に分離できるので、リサイクル性が向上する。
(5)フィルム3をなす複数層のうち中間層にバリア層が設けられているため、内容物として食品を収容した際、食品の劣化を防止することができる。
(6)容器1の収容空間内に内容物を収容した状態で、開口2Aを蓋体5で閉塞した包装物では、収容した内容物が収容空間からこぼれることを防いだり、外部から異物の混入を防いだりすることができる。また、容器1の収容空間内に内容物を収容した状態であって収容空間内の空気を不活性ガスに置換した状態で、開口2Aを蓋体5で閉塞した包装物では、収容した食品の品質保持期間(賞味期限)を延長することができる。
かかる包装物は、柔なフィルム3でサンドイッチの角の破損を抑制する一方で、剛な容器本体2で外側の保護性を確保しうる包装物と言える。
【0057】
[4.変形例]
上述の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、適宜組み合わせることもできる。
【0058】
図4は、フィルム付き紙容器の変形例を説明する斜視図である。
図5は、
図4のフィルム付き紙容器の変形例を白抜き矢印Aから視た側面図であり、
図6は、
図5のフィルム付き紙容器の変形例を白抜き矢印Bから視た底面図である。
図4に示すフィルム付き紙容器1′は、紙製の容器本体2′に対してフィルム3が内装された包装容器であり、容器本体2′に底面部50が設けられるとともに、壁面部の一部が面取りされた形状をなす点が
図1~
図3に示すフィルム付き紙容器1と異なっている。以下では、上述したフィルム付き紙容器1との差異に専ら着目して、フィルム付き紙容器1′の構成を説明する。
【0059】
容器本体2′には、複数の壁面部として、開口2A′に対向して設けられた矩形状の底面部50と壁面部61~63とが含まれている。容器本体2′は、底面部50と壁面部61~63が突き合せられて多面体形状に成形されたものである。
図4の底面部50は、対向する一対の長辺(一対の第一辺)51X,51Yと、長辺51X,51Yとは別の一対の短辺(一対の第二辺)51L,51Rとを有する長方形状に形成されている。
【0060】
複数の壁面部61~63のうち、一対の第一壁面部61は、一対の長辺51X,51Yから延設されており、互いに略垂直(略90°)をなす姿勢で底面部50に対して折り立てられている。すなわち、一対の第一壁面部61は、
図5に示すように、第二方向D2から視た側面視で略L字状(略垂直)の壁面をなす。なお、一対の第一壁面部61のうち一方は容器本体2′の後面側に設けられており、一対の第一壁面部61のうち他方は容器本体2′の下面側に設けられている。「略垂直」とは、一方が他方に対して垂直であることだけでなく、一方が他方に対しておよそ垂直であることを含む。「およそ垂直に近い角度」の具体例として、80°以上、100°以下の角度範囲を挙げることができる。
また、
図6に示すように、一対の第一壁面部61は、底面部50を挟んで対称に設けられている。
【0061】
一対の第二壁面部62は、一対の第一壁面部61に対して接するように配置されている。詳しくは、一対の第二壁面部62の一方は一対の第一壁面部21に対して左右方向の一側(例えば
図4の右側)に配置され、他方は左右方向の他側(例えば
図4の左側)に配置されている。
一対の第三壁面部63は、一対の第二壁面部62のそれぞれに対して開口2A′と反対側に連設されている。一対の第三壁面部63のそれぞれは、一対の第二壁面部62において開口2A′と反対側の端縁に沿う領域に設けられた折目64を介して第二壁面部62に接続されている。
すなわち、一対の第二壁面部62は、一対の第三壁面部63のそれぞれに対して、開口2Aの手前側に配置された面部である。一対の第三壁面部63は、一対の第二壁面部62のそれぞれに対して、開口2A′の手前側とは反対側(すなわち底面部50側)に配置された面部である。
【0062】
図5に示すように、第二壁面部62は、側面視で開口2A′から底面部50へ向かって幅が狭くなる等脚台形形状をなす。また、第三壁面部63は、第二方向D2から視た側面視で開口2A′から底面部50へ向かって幅が狭くなる等脚台形形状をなす。
【0063】
第二壁面部62及び第三壁面部63において、開口2A′側の端縁を台形の下底、底面部50側の端縁を台形の上底に見立てた場合、第二壁面部62及び第三壁面部63のそれぞれは下底よりも上底の寸法が短く、第二壁面部62の上底と第三壁面部63の下底との寸法が同一である。また、第二壁面部62及び第三壁面部63を台形に見立てた場合の高さ寸法は、第二壁面部62が第三壁面部63よりも大きい。
すなわち、第二壁面部62が第三壁面部63よりも大きい。
一対の第二壁面部62及び一対の第三壁面部63は、
図6に示すように、底面部50を挟んで左右方向の両側で対称に設けられている。
【0064】
また、一対の第一壁面部61のそれぞれと一対の第二壁面部62及び一対の第三壁面部63との境界に沿って延在する辺65L,65R,66L,66Rのそれぞれは、折目64の位置で屈曲した線状をなす。言い換えれば、辺65L,65R,66L,66Rのそれぞれは、
図6に示すように、折目64の位置から底面側へ延びた第一直線部分55(
図6中のみ符号55を付す)と折目64の位置から開口2A′側へ延びた第二直線部分56(
図6中のみ符号56を付す)とを含む。
【0065】
この容器本体2′は、
図4~
図6に示すように、一対の第三壁面部63の箇所で面取りされた四角錐台形状をなし、八つの頂点57A,57B,57C,57D,57E,57F,57G,57H(
図6参照)を有する。頂点57A~57Dは底面部50の四隅に位置している。頂点57E~57Hは、辺65L,65R,66L,66Rのそれぞれにおける第一直線部分55の端部と第二直線部分56の端部と折目64の端部との接した点である。
容器本体2′の隅部は、これらの頂点57A~57Hのうち、底面部50の四隅に位置した四つの頂点57A~57Dのそれぞれを含む所定の四領域に設けられている。
【0066】
容器本体2′において非密着部は、容器本体2′のうち頂点57A~57Dのそれぞれを含む所定の四領域に設けられた隅部58A~58Dに対し、フィルム3のうち隅部58A~58Dが離間した状態で、フィルム3が内装された部分である。ここで、フィルム3のうち隅部58A~58Dとは、頂点57A~57Dのそれぞれを含む所定の四領域に対して内側に対向する四部位である。
容器本体2′において密着部は、容器本体2′のうち頂点57A~57Dを含む隅部以外の非隅部に対し、フィルム3のうち頂点57A~57Dに対向した一部以外の他部が密着した状態で、フィルム3が内装された部分である。
【0067】
上記の容器本体2′では、容器本体2′に対するフィルム3の密着不良の抑制性やサンドイッチの収容性(収容しやすさや、収容された状態の安定性など)を確保する観点から、一対の第一壁面部61と,一対の第二壁面部62と、一対の第三壁面部63とのそれぞれの傾斜角度に関して、以下に述べる各角度θ1~θ3が設定されている。
【0068】
なお、上記のサンドイッチとは、薄くスライスされた二枚以上の食パンで任意の具材を挟んだ食品である。具体的に言えば、平面視で略正方形状をなす二枚以上の食パンで具を挟み、対角線に沿って切断することで、略直角二等辺三角形状の二底面を有する三角柱状のサンドイッチが作成される。このサンドイッチにおいて三側面のうち、切断面に沿う面を「端面」と称し、三側面に交差する二面の一方を「上面」、他方を「下面」と称する。このサンドイッチは、端面が開口2A′側に位置し、上面及び下面が一対の第二壁面部62及び一対の第三壁面部63に向かい合う姿勢で容器1′に収容される。
【0069】
図7に示すように、一対の第一壁面部61は、開口2A′に対して第一角度θ1で傾斜した姿勢で設けられている。上述したように一対の第一壁面部61どうしが略垂直をなすため、第一角度θ1は「一対の第一壁面部61どうしが互いになす角度÷2」の角度として表すことができる。また、上記のように、サンドイッチは、端面が開口2A′側に位置する姿勢で容器1に収容されるので、第一角度θ1は、サンドイッチにおける略直角二等辺三角形の二等辺と斜辺とがなす角度に対応するものとも言える。第一角度θ1の好ましい具体例として、45°を挙げることができる。
【0070】
図8に示すように、一対の第二壁面部62は、開口2Aに対して第二角度θ2で傾斜した姿勢で設けられている。第二角度θ2は、第一角度θ1よりも大きい角度である。第二角度θ2は、サンドイッチの収容性を確保する観点から、第一角度θ1よりも大きい適宜の角度に設定される。具体的には、第二角度θ2は、サンドイッチにおける端面と上面(又は下面)とがなす角度に対応するものであり、例えば略垂直である。ここで、「略垂直」とは、上記と同様に、一方が他方に対して垂直であることだけでなく、一方が他方に対しておよそ90°の角度をなすことを含む。略垂直の具体例として、75°以上、90°以下の角度範囲内であることを挙げることができる。第二角度θ2の具体例として、80°を挙げることができる。
【0071】
また、
図8に示すように、一対の第三壁面部63は、収容空間の内部において開口2A′と平行に延在する仮想平面2B(
図8中二点鎖線で示す)に対して第三角度θ3で傾斜した姿勢で設けられている。第三角度θ3は、第二角度θ2よりも小さい角度である。第三角度θ3は、容器本体2′に対するフィルム3の密着不良を抑制する観点から設定されている。すなわち、第三壁面部63が第二角度θ2よりも小さい第三角度θ3で傾斜した姿勢で設けられていることで、収容空間の奥側(底面部50側)でフィルム3の密着不良を抑制しやすい面(領域)が形成される。
【0072】
第三角度θ3は、好ましくは第一角度θ1よりも大きい角度に設定される。第三角度θ3の具体例として、60°を挙げることができる。第三角度θ3が小さすぎると、容器本体2′の外形がサンドイッチの外形と対応しにくくなり、サンドイッチの収容性が損なわれるおそれがある。また、第三角度θ3が小さすぎると、第二壁面部62と第三壁面部63との傾きの差が大きくなりすぎてしまい第二壁面部62と第三壁面部63との境界におけるフィルム3の密着不良を招くおそれがある。そのため、容器本体2′に対するフィルム3の密着不良の抑制とサンドイッチの収容性確保とを両立する観点から、第三角度θ3は、第二角度θ2よりも小さい角度であり、且つ、第一角度θ1よりも大きい角度に設定されることが好ましいと言える。また、第三角度θ3を第一角度θ1よりも大きい角度に設定することで、容器本体2′の容積を確保しやすくなる。
【0073】
図4~
図8に示すフィルム付き紙容器1′では、容器本体2′の隅部58A~58Dが底面部50の四隅に位置した四つの頂点57A~57Dのそれぞれを含む所定の四領域に設けられるので、矩形状の底面部50の四隅に非密着部31′が形成される。そのため、容器1′に収容された内容物が容器本体2′の底面部50に対向するフィルム3の面部に突き当たったとしても、底面部50の四隅で容器本体2′から離間したフィルム3が内容物と容器本体2′との間で緩衝作用を果たし、内容物の破損を抑制することができる。
また、一対の第一壁面部61と,一対の第二壁面部62と、一対の第三壁面部63とのそれぞれが、上記の第一角度θ1,第二角度θ2,第三角度θ3の各条件を満足することで、開口2Aの手前側とは反対側(収容空間の奥側)でフィルム3の密着不良を抑制しやすい面を確保することができる。すなわち、非密着部以外の密着部では、フィルム3の内装時にフィルム3の密着不良を抑制することができる。
【0074】
なお、非密着部は、少なくとも一つの頂点を含む隅部に設けられていればよい。例えば、
図1~
図3に示す容器1において、容器本体2の頂点27L又は27Rだけを含む隅部に非密着部31が設けられていてもよい。あるいは、
図4~
図6に示す容器本体2′の八つの頂点57A~57Hのそれぞれを含む八つの隅部に非密着部が設けられていてもよい。いずれの場合も、上述と同様な内容物の保護性を確保する効果を得ることができる。
【0075】
非密着部及び密着部は、押し込み罫線(吸引しにくい構造)や、ミシン目あるいは切込み(吸引しやすい構造)を用いて形成されたものに限らず、容器1,1′の製造工程で真空吸引性(圧空成形性、真空圧空成形性)を調節することによって形成されてもよい。製造工程で真空吸引(圧空成形、真空圧空成形)を調節し、非密着部や密着部が形成された容器1,1′では、例えば、非密着部の設けられた隅部をなす頂点で接する三辺のうち一辺に沿う領域に対してミシン目が形成されていた場合であってもこのミシン目からの吸引性を抑えることによって、当該頂点を含む隅部に非密着部を設けることができる。また、密着部をなす非隅部に押し込み罫線のみが設けられている場合(すなわち、容器本体2,2′側に吸引性を高める構造が設けられていない場合)であっても、製造工程において非隅部での吸引性を高めることによって密着部を設けることができる。
隙間部4には空気に替えて、任意の緩衝材が充填されていてもよい。緩衝材の例としては、例えばスポンジや粒状物等が挙げられる。
【0076】
容器本体2,2′の形状は、複数の壁面部がそれぞれ平面状をなすとともに前記複数の壁面部が複数の角部で突き合わせられた多面体形状であれば、
図1の三角柱状や、
図4の壁面部の一部が面取りされた形状に限らず、どのような形状であってもよい。
【0077】
容器本体2,2′は、一枚の紙製シートを折り曲げて形成されたものに限らず、複数枚の紙製シートを組み合わせて形成されたものであってもよい。例えば、
図9は、
図1に示すフィルム付き紙容器1の変形例の斜視図であって、既述の構成要素には共通の符号を付与して説明を省略する。
図9に示すように、このフィルム付き紙容器90の容器本体91は、容器本体91のうちフランジ部92をなす第一ブランクシートと、容器本体91のうちフランジ部92を除く主部93をなす第二ブランクシートとを組み合わせて形成される。
【0078】
すなわち、容器本体91には、フランジ部92と、フランジ部92を除く主部93とが別体で設けられている。この場合、フランジ部92においてシート片どうしの突き合せ部分をなくすことができるので、フランジ部92が段差のない平坦面で形成されたものとなる。そのため、フランジ部92へのフィルム密着性が向上する。また、フランジ部92に蓋体5を貼合する際の装着性が向上する。
また、包装物は、容器1の収容空間内に内容物が収容された状態で収容空間内の空気を不活性ガスに置換せずに、開口2Aを閉塞したものであってもよい。
【符号の説明】
【0079】
1,1′ フィルム付き紙容器
2,2′ 容器本体
2A,2A′ 開口
3 フィルム
3A 面部
4 隙間部
5 蓋体
21X,21Y 壁面部
22L,22R 壁面部
23 辺
23K 罫線
24R,24L 辺
24M ミシン目
25R,25L 辺
25S 切込み
26 フランジ部
26X,26Y 辺
26A,26B 辺
27L,27R 頂点
28L,28R 隅部
29 隅面部
30 密着部
31 非密着部
50 底面部
51X,51Y 辺
51L,51R 辺
55 第一直線部分
56 第二直線部分
57A~57H 頂点
61 第一壁面部(一対の第一壁面部)
62 第二壁面部(一対の第二壁面部)
63 第三壁面部(一対の第三壁面部)
64 折目
65L,65R 辺
66L,66R 辺
2B 仮想平面
90 フィルム付き紙容器
91 容器本体
92 フランジ部
93 主部