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特開2024-162684紙容器、ブランクシート、フィルム付き紙容器及び包装物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162684
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】紙容器、ブランクシート、フィルム付き紙容器及び包装物
(51)【国際特許分類】
   B65D 5/20 20060101AFI20241114BHJP
   B65D 5/56 20060101ALI20241114BHJP
   B65D 85/50 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B65D5/20 Z ZBP
B65D5/56 A
B65D85/50 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078485
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 順二
(72)【発明者】
【氏名】辻 和政
【テーマコード(参考)】
3E035
3E060
【Fターム(参考)】
3E035AA20
3E035AB06
3E035BA02
3E035BB08
3E035BC01
3E035BC02
3E035BD02
3E035BD06
3E035CA04
3E060AA07
3E060AB16
3E060BA22
3E060BC02
3E060CF03
3E060CG10
3E060DA25
3E060EA13
(57)【要約】
【課題】紙容器においてフィルムの密着不良を抑制する。
【解決手段】所定平面に沿って延在する開口2Aを通じて内容物を出し入れ可能な収容空間をもち、収容空間を囲む複数の面部21~23が突き合わせられた多面体形状をなす紙容器2である。複数の面部21~23は、所定平面に対して第一角度で傾斜した姿勢で設けられるとともに互いに略垂直をなす一対の第一面部21と、一対の第一面部21のそれぞれに交差するとともに所定平面に対して第一角度よりも大きい第二角度で傾斜した姿勢で設けられた一対の第二面部22と、一対の第二面部22のそれぞれに対して開口2Aと反対側に連設されるとともに所定平面に対して第二角度よりも小さい第三角度で傾斜した姿勢で設けられた一対の第三面部23とを備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面に沿って延在する開口を通じて内容物を出し入れ可能な収容空間をもち、前記収容空間を囲むとともにそれぞれが平面状をなす複数の面部が突き合わせられた多面体形状をなす紙容器であって、
前記複数の面部は、互いに略垂直をなす一対の第一面部と、前記一対の第一面部のそれぞれに接した一対の第二面部と、前記一対の第二面部のそれぞれに対して前記開口と反対側に連設された一対の第三面部とを含み、
前記一対の第一面部は、前記開口に対して第一角度で傾斜した姿勢で設けられており、
前記一対の第二面部は、前記開口に対して前記第一角度よりも大きい第二角度で傾斜した姿勢で設けられており、
前記一対の第三面部は、前記収容空間の内部において前記開口と平行に延在する仮想平面に対して前記第二角度よりも小さい第三角度で傾斜した姿勢で設けられた
ことを特徴とする紙容器。
【請求項2】
前記第三角度は、前記第一角度よりも大きく設定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の紙容器。
【請求項3】
前記第二角度は、略垂直に設定されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の紙容器。
【請求項4】
前記複数の面部には、前記開口とは反対側に配設されるとともに前記開口と平行に延在し、且つ、前記一対の第一面部のそれぞれにおける前記開口とは反対側の端縁に接続されるとともに前記一対の第三面部のそれぞれにおける前記開口とは反対側の端縁に接続された底面部が含まれている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の紙容器。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の紙容器を成形するために用いる
ことを特徴とするブランクシート。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の紙容器と、
前記紙容器の少なくとも前記収容空間の内側を向いた面に内装されたフィルムと、を備えた
ことを特徴とするフィルム付き紙容器。
【請求項7】
請求項6に記載のフィルム付き紙容器と、
前記フィルム付き紙容器の前記収容空間内に前記内容物が収容された状態で、前記開口を閉塞した蓋体と、を備えた
ことを特徴とする包装物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムの内装対象である紙容器、紙容器を成形するために用いるブランクシート、紙容器の内面にフィルムを設けたフィルム付き紙容器及びフィルム付き紙容器に内容物を収容した包装物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品等の内容物を収納する容器として、紙製の容器本体(以下「紙容器」という)に対して内面に樹脂製のフィルムが積層されたフィルム付き紙容器(以下、単に「容器」ともいう)が知られている。このような容器の一例を示す特許文献1には、底壁部と底壁部から折り立てられた姿勢をなす複数の側壁部とで成形された多面体形状をなす紙容器の内面に対してフィルムが内装された容器が開示されている。フィルムの紙容器への内装は、真空圧空成形により吸引圧着されたものとされる。また、フィルムの紙容器への内装は、真空圧空成形に限られず、真空成形や圧空成形も可能とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-172339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように紙容器に対してフィルムを内装する際、フィルムは真空圧空成形、真空成形、又は、圧空成形により紙容器の開口側から反対側へ向かって引き込まれるか又は押し込まれる。そのため、紙容器の形状によっては、開口に対して手前側よりも奥側でフィルムの密着不良が生じやすい傾向がある。具体的に言えば、開口の延在する平面に対する角度が大きい急峻な傾斜面状に設けられた側壁部を有する形状の紙容器では、この側壁部において開口から離間した部位(いわば奥側の内壁面)でフィルムの密着不良を招くおそれがある。
よって、紙容器に対するフィルムの内装時にフィルムの密着不良を抑制するうえで改善の余地がある。
【0005】
本件は、上記の課題に鑑みて創案されたものであり、紙容器に対するフィルムの内装時にフィルムの密着不良を抑制することを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用及び効果であって、従来の技術では得られない作用及び効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで開示の紙容器は、以下に記す(1)~(4)の構成を備えている。また、ここで開示のブランクシートは、以下に記す(5)の構成を備えている。また、ここで開示のフィルム付き紙容器は、以下に記す(6)の構成を備えている。また、ここで開示の包装物は、以下に記す(7)の構成を備えている。
(1)
平面に沿って延在する開口を通じて内容物を出し入れ可能な収容空間をもち、前記収容空間を囲むとともにそれぞれが平面状をなす複数の面部が突き合わせられた多面体形状をなす紙容器であって、
前記複数の面部は、互いに略垂直をなす一対の第一面部と、前記一対の第一面部のそれぞれに接した一対の第二面部と、前記一対の第二面部のそれぞれに対して前記開口と反対側に連設された一対の第三面部とを含み、
前記一対の第一面部は、前記開口に対して第一角度で傾斜した姿勢で設けられており、
前記一対の第二面部は、前記開口に対して前記第一角度よりも大きい第二角度で傾斜した姿勢で設けられており、
前記一対の第三面部は、前記収容空間の内部において前記開口と平行に延在する仮想平面に対して前記第二角度よりも小さい第三角度で傾斜した姿勢で設けられた
ことを特徴とする紙容器。
【0007】
(2)
前記第三角度は、前記第一角度よりも大きく設定されている
ことを特徴とする(1)に記載の紙容器。
(3)
前記第二角度は、略垂直に設定されている
ことを特徴とする(1)又は(2)に記載の紙容器。
(4)
前記複数の面部には、前記開口とは反対側に配設されるとともに前記開口と平行に延在し、且つ、前記一対の第一面部のそれぞれにおける前記開口とは反対側の端縁に接続されるとともに前記一対の第三面部のそれぞれにおける前記開口とは反対側の端縁に接続された底面部が含まれている
ことを特徴とする(1)~(3)の何れか一つに記載の紙容器。
【0008】
(5)
(1)又は(2)に記載の紙容器を成形するために用いる
ことを特徴とするブランクシート。
(6)
(1)又は(2)に記載の紙容器と、
前記紙容器の少なくとも前記収容空間の内側を向いた面に内装されたフィルムと、を備えた
ことを特徴とするフィルム付き紙容器。
【0009】
(7)
(6)に記載のフィルム付き紙容器と、
前記フィルム付き紙容器の前記収容空間内に前記内容物が収容された状態で、前記開口を閉塞した蓋体と、を備えた
ことを特徴とする包装物。
【発明の効果】
【0010】
本件によれば、紙容器に内装されるフィルムの密着不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態のフィルム付き紙容器の斜視図である。
図2図1のフィルム付き紙容器を白抜き矢印Aから視た側面図である。
図3図2のフィルム付き紙容器を白抜き矢印Bから視た底面図である。
図4図3の容器をX-X線から視た模式的断面図である。
図5図2の容器をY-Y線から視た模式的断面図である。
図6図1のフィルム付き紙容器の容器本体に組み立てられるブランクシートの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、フィルム付き紙容器を実施するための形態を説明する。
本実施形態では、フィルム付き紙容器が水平面に載置された姿勢を例示する。また、フィルム付き紙容器の収容空間で内容物が収容される空間側を内側とし、内側の反対側を外側とする。
以下では、項目1において、図1図5を参照して本実施形態に係るフィルム付き紙容器1の構造を説明する。項目2では、フィルム付き紙容器1に用いる容器本体及びフィルムの材料について述べる。項目3では、容器本体を組み立てるためのブランクシートの構成例を説明する。項目4では、項目1、項目2及び項目3による作用効果を説明する。
【0013】
[1.構造]
図1に示すように、容器1は、紙製の容器本体2に対してフィルム3が内装された包装容器である。容器1には、平面に沿って延在する開口2Aを通じて内容物を出し入れ可能な収容空間が設けられている。
以下に述べる容器1の説明では、開口2Aの延在する面を基準として下記の三方向を定める。開口2Aの延在する面の法線方向を第一方向D1とし、所定平面において互いに交差する二方向のうち一方を第二方向D2とするとともに他方を第三方向D3とする。
【0014】
容器本体2は、容器1の本体部分であり、フィルム3により被覆される基材部(言わばフィルム3の内装対象)でもある。本明細書では、容器本体2にフィルム3を内装したもの「フィルム付き紙容器」と称している。「フィルム付き紙容器」からフィルム3を除いたものが容器本体2であり、容器本体2を「紙容器」とも言う。
【0015】
フィルム3は、容器本体2の内面側の全域をフィルムシートで被覆(内装)したフィルム層であり、容器本体2の容器形状を維持する機能をはじめ、容器本体2の内面に耐水性や耐熱性,バリア性といった機能を付与する機能層である。
容器本体2の内面に積層されたフィルムシートが例えば公知の真空吸引(真空成形とも言う)により吸着(密着)されることで、フィルム3が容器本体2に内装される。なお、容器本体2の内面に積層されたフィルムシートを容器本体2に密着(内装)する方法としては、上記の真空吸引に限らず、圧空成形や真空圧空成形など公知の手法が適用されてよい。
【0016】
容器本体2は、開口2Aに対向して設けられた底面部20と、開口2Aと底面部20との間に配置された複数の側面部21~23(複数の面部)とが突き合せられて多面体形状に成形されたものである。
開口2Aは、第一方向D1から見て第二方向D2に沿う短辺と第三方向D3に沿う長辺とを有する長方形状をなす。
底面部20は、容器1の収容空間において開口2Aとは反対側で開口2Aと平行な面(第二方向D2及び第三方向D3の延在する面)に配設された部位であり、第二方向D2に沿う長辺と第三方向D3に沿う短辺とを有する長方形状をなす。底面部20の第二方向D2及び第三方向D3の寸法は、開口2Aの第二方向D2及び第三方向D3の寸法よりも小さく設定されている。なお、図1中の側面部22に隠れた底面部20の一部を破線で示す。
【0017】
各側面部21~23は、容器1の収容空間において第一方向D1の軸周りの周囲を囲む部位であり、直線状の辺で囲まれた平面状をなす。
側面部21~23には、収容空間に対して第三方向D3の両側に設けられた一対の第一側面部21(一対の第一面部)と、収容空間に対して第二方向D2の両側に設けられた一対の第二側面部22(一対の第二面部)及び一対の第三側面部23(一対の第三面部)とが含まれている。
【0018】
一対の第一側面部21は、互いに略垂直をなす姿勢で配置されている。一対の第一側面部21において、第一方向D1の一端縁が開口2A側に設けられており、第一方向D1の他端縁が底面部20の長辺に接続されている。すなわち、一対の第一側面部21は、互いに略垂直をなすように底面部20に対して折り立てられており、図2に示すように、第二方向D2から視た側面視で略L字状(略垂直)の壁面をなす。なお、「略垂直」とは、一方が他方に対して垂直であることだけでなく、一方が他方に対しておよそ90°の角度をなすことを含む。略垂直の具体例として、80°以上、100°以下の角度範囲内であることを挙げることができる。
また、図3に示すように、一対の第一側面部21は、底面部20を挟んで第三方向D3の両側で対称に設けられている。
【0019】
一対の第二側面部22は、一対の第一側面部21に対して接するように配置されている。詳しくは、一対の第二側面部22の一方は一対の第一側面部21に対して第二方向D2の一側(例えば図1の右側)に配置され、他方は第二方向D2の他側(例えば図1の左側)に配置されている。
一対の第三側面部23は、一対の第二側面部22のそれぞれに対して開口2Aと反対側に連設されている。一対の第三側面部23のそれぞれは、一対の第二側面部22において開口2Aと反対側の端縁に沿う領域に設けられた折目24を介して第二側面部22に接続されている。
すなわち、一対の第二側面部22は、一対の第三側面部23のそれぞれに対して、開口2Aの手前側に配置された面部である。一対の第三側面部23は、一対の第二側面部22のそれぞれに対して、開口2Aの手前側とは反対側(すなわち底面部20側)に配置された面部である。
【0020】
図2に示すように、第二側面部22は、第二方向D2から視た側面視で開口2Aから底面部20へ向かって幅が狭くなる等脚台形形状をなす。また、第三側面部23は、第二方向D2から視た側面視で開口2Aから底面部20へ向かって幅が狭くなる等脚台形形状をなす。
【0021】
第二側面部22及び第三側面部23において、開口2A側の端縁を台形の下底、底面部20側の端縁を台形の上底に見立てた場合、第二側面部22及び第三側面部23のそれぞれは下底よりも上底の寸法が短く、第二側面部22の上底と第三側面部23の下底との寸法が同一である。また、第二側面部22及び第三側面部23を台形に見立てた場合の高さ寸法は、第二側面部22が第三側面部23よりも大きい。
すなわち、第二側面部22が第三側面部23よりも大きい。
一対の第二側面部22及び一対の第三側面部23は、図3に示すように、底面部20を挟んで第二方向D2の両側で対称に設けられている。
【0022】
上述した一対の第一側面部21、一対の第二側面部22及び一対の第三側面部23が突き合せられた容器本体2の形状は、内容物として略直角二等辺三角形状の二底面を有する三角柱状に成形されたサンドイッチの外形に対応するため、サンドイッチを収容する用途に好適なものと言える。なお、上記のサンドイッチとは、薄くスライスされた二枚以上の食パンで任意の具材を挟んだ食品である。具体的に言えば、平面視で略正方形状をなす二枚以上の食パンで具を挟み、対角線に沿って切断することで、略直角二等辺三角形状の二底面を有する三角柱状のサンドイッチが作成される。このサンドイッチにおいて三側面のうち、切断面に沿う面を「端面」と称し、三側面に交差する二面の一方を「上面」、他方を「下面」と称する。このサンドイッチは、端面が開口2A側に位置し、上面及び下面が一対の第二側面部22及び一対の第三側面部23に向かい合う姿勢で容器1に収容される。
【0023】
上記の容器本体2では、容器本体2に対するフィルム3の密着不良の抑制性やサンドイッチの収容性(収容しやすさや、収容された状態の安定性など)を確保する観点から、各面部21,22,23の傾斜角度に関して、以下の各角度θ1~θ3が設定されている。
図4に示すように、第一側面部21は、開口2Aに対して第一角度θ1で傾斜した姿勢で設けられている。上述したように、一対の第一側面部21どうしが略垂直をなすため、第一角度θ1は「一対の第一側面部21どうしが互いになす角度÷2」の角度として表すことができる。また、上記のように、サンドイッチは、端面が開口2A側に位置する姿勢で容器1に収容されるので、第一角度θ1は、サンドイッチにおける略直角二等辺三角形の二等辺と斜辺とがなす角度に対応するものとも言える。第一角度θ1の好ましい具体例として、45°を挙げることができる。
【0024】
図5に示すように、第二側面部22は、開口2Aに対して第二角度θ2で傾斜した姿勢で設けられている。第二角度θ2は、第一角度θ1よりも大きい角度である。第二角度θ2は、サンドイッチの収容性を確保する観点から、第一角度θ1よりも大きい適宜の角度に設定される。具体的には、第二角度θ2は、サンドイッチにおいて端面と上面(又は下面)とがなす角度に対応するものであり、例えば略垂直である。ここで、「略垂直」とは、上記と同様に、一方が他方に対して垂直であることだけでなく、一方が他方に対しておよそ90°の角度をなすことを含む。略垂直の具体例として、75°以上、90°以下の角度範囲内であることを挙げることができる。第二角度θ2の具体例として、80°を挙げることができる。
【0025】
また、図5に示すように、第三側面部23は、収容空間の内部において開口2Aと平行に延在する仮想平面2B(図5中二点鎖線で示す)に対して第三角度θ3で傾斜した姿勢で設けられている。第三角度θ3は、第二角度θ2よりも小さい角度である。第三角度θ3は、容器本体2に対するフィルム3の密着不良を抑制する観点から設定されている。すなわち、第三側面部23が第二角度θ2よりも小さい第三角度θ3で傾斜した姿勢で設けられていることで、収容空間の奥側(底面部20側)でフィルム3の密着不良を抑制しやすい面(領域)が形成される。
【0026】
第三角度θ3は、好ましくは第一角度θ1よりも大きい角度に設定される。第三角度θ3の具体例として、60°を挙げることができる。第三角度θ3が小さすぎると、容器本体2の外形がサンドイッチの外形と対応しにくくなり、サンドイッチの収容性が損なわれるおそれがある。また、第三角度θ3が小さすぎると、第二側面部22と第三側面部23との傾きの差が大きくなりすぎてしまい第二側面部22と第三側面部23との境界におけるフィルム3の密着不良を招くおそれがある。そのため、容器本体2に対するフィルム3の密着不良の抑制とサンドイッチの収容性確保とを両立する観点から、第三角度θ3は、第二角度θ2よりも小さい角度であり、且つ、第一角度θ1よりも大きい角度に設定されることが好ましいと言える。また、第三角度θ3を第一角度θ1よりも大きい角度に設定することで、容器本体2の容積を確保しやすくなる。
【0027】
そのほか、図1に示すように、容器本体2において、開口2Aの周囲にフランジ部26が設けられている。フランジ部26は、蓋体5を貼合するための貼合面をなす。蓋体5は収容空間内を密閉するリッド部材である。容器1は、収容空間内に内容物が収容された状態で、例えば容器1の収容空間内の空気を不活性ガスに置換した状態で、開口2Aが蓋体5で閉塞される。蓋体5は、例えばフィルムシートで形成される。上記のように開口2Aが閉塞された状態をなす容器1は、ガス置換包装で内容物を収容した包装物である。
【0028】
また、容器本体2では、フィルム3の吸引性確保の観点から、側面部21~23どうしの境界に沿って断続的なミシン目や連続的な切込み(スリット)が形成されることが好ましい。例えば、容器本体2では、第一側面部21と第二側面部22との境界に沿う領域と第一側面部21と第三側面部23との境界に沿う領域には切込みが形成され、また、底面部20と第一側面部21との境界、底面部20と第三側面部23との境界、及び、第二側面部22と第三側面部23との境界のそれぞれに沿う領域にミシン目が形成される。
【0029】
[2.材料]
次に、容器本体2の材料と、フィルム3の材料とについて述べる。
容器本体2の材料としては、一般的に用いられている紙であればとくに限定されず、植物由来のパルプを主成分とする紙であることが好ましく、木材パルプを主成分とする紙であることがより好ましい。
具体的には、クラフト紙,上質紙,板紙(白板紙),紙器用原紙,ミルクカートン原紙,カップ原紙,ライナ紙,塗工紙,片艶紙,グラシン紙,グラファン紙等が挙げられる。これらのなかでもクラフト紙,上質紙,板紙(白板紙),紙器用原紙,カップ原紙,片艶紙が好ましい。剛性の面から、板紙(白板紙)の中では高級板紙,特殊板紙,カップ原紙,クラフト紙がより好ましい。クラフト紙は、晒クラフト紙,未晒クラフト紙及び片艶晒クラフト紙が挙げられ、印刷適性や衛生面から、晒クラフト紙及び片艶晒クラフト紙が好ましい。
【0030】
また、ライナと中芯とライナの三層で構成された段ボールを使用しても良く、特に容器本体2の強度と成形加工性の両立の観点から、段ボールの厚みの小さいマイクロフルートが好ましい。紙の坪量は、好ましくは200~800g/m2であり、より好ましくは200~700g/m2であり、さらに好ましくは200~500g/m2であり、よりさらに好ましくは300~500g/m2である。紙の密度や、段ボールに用いるライナ及び中芯の密度は、成形加工性の観点から、好ましくは0.5~1.2g/cm3であり、より好ましくは0.6~1.0g/cm3であり、さらに好ましくは0.7~0.9g/cm3であり、よりさらに好ましくは0.8~0.9g/cm3である。
【0031】
紙や、段ボールの厚さは、好ましくは200~1000μmであり、より好ましくは250~1000μmであり、さらに好ましくは300~700μmであり、よりさらに好ましくは340~500μmである。紙には、種々の添加剤が含有されてよく、内添サイズ剤としては、ロジン系,アルキルケテンダイマー系,アルケニル無水コハク酸系,スチレン-アクリル系,高級脂肪酸系,石油樹脂系等が挙げられる。内添サイズ剤以外に、公知のその他の内添剤を添加してもよい。内添剤としては、填料,紙力増強剤,歩留り向上剤,pH調整剤,濾水性向上剤,耐水化剤,柔軟剤,帯電防止剤,消泡剤,スライムコントロール剤,染料・顔料等が挙げられる。
【0032】
填料としては、二酸化チタン,カオリン,タルク,炭酸カルシウム等が挙げられる。紙の抄紙においては、公知の湿式抄紙機を適宜選択して使用することができる。抄紙機としては、長網抄紙機,ギャップフォーマー型抄紙機,円網式抄紙機,短網式抄紙機等が挙げられる。抄紙機によって形成された紙層は、たとえば、フェルトにて搬送し、ドライヤーで乾燥させることが好ましい。ドライヤー乾燥前にプレドライヤーとして、多段式シリンダードライヤーを使用してもよい。また、前記のようにして得られた紙に、カレンダーによる表面処理を施して厚さやプロファイルの均一化を図ってもよい。カレンダー処理としては公知のカレンダー処理機を適宜選択して使用することができる。なお、容器本体2に用いる材料は上記に限らず種々の紙製資材を用いることができる。
【0033】
フィルム3に用いるフィルムシートには、付与する機能に応じた性質を有するシート材が用いられる。例えば、容器本体2にフィルム3を密着する際にフィルム3が伸長することを加味した延伸性や、バリア性,耐水性,耐熱性,熱融着性などの機能をもつプラスチックシートがフィルムシートに採用される。
【0034】
フィルムシートは、少なくとも三層以上の複数層で構成されることが好ましく、この場合、複数層のうち容器本体2の内面に接する層が、容器本体2からの分離が容易なイージーピール層をなすことが好ましい。このフィルムシートは、延伸性やバリア性を含む樹脂積層体であることが好ましい。樹脂積層体は、中間層にバリア性を有するバリア層を含み、容器本体2の内面に接する層は、容器本体2にヒートシールされる必要があるため、熱可塑性樹脂からなる層を含むことがより好ましい。すなわち、樹脂積層体は、中間層にバリア層を含み、容器本体2の内面に接する層に熱可塑性樹脂からなる層を含むフィルムであることがより好ましい。この熱可塑性樹脂からなる層が、上記のイージーピール層をなす。
【0035】
前記バリア層は、樹脂に限られず、金属箔等でもよいが、紙基材層の印刷面を視認できるようにし、意匠性を高める観点から、樹脂から構成されることが好ましく、透明の樹脂から構成されることがより好ましい。バリア層を構成する樹脂としては、ポリアミド系樹脂,ポリビニルアルコール,エチレン-ビニルアルコール共重合体及びポリ塩化ビニリデン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つが好ましく、ポリアミド系樹脂,ポリビニルアルコール及びエチレン-ビニルアルコール共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1つがより好ましい。ポリアミド系樹脂としては、芳香族ポリアミドが好ましく、ポリアミドMXD6がより好ましい。
【0036】
樹脂積層体の容器本体2の内面に接する層を構成する樹脂としては、ポリエチレン,ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂,ナイロン6等の脂肪族ポリアミド系樹脂,ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂が挙げられる。収容空間の内側を向いた層は、例えばポリプロピレン(PP)樹脂、具体的には、ホモポリプロピレン,ランダムポリプピレン共重合体,ブロックポリプロピレン共重合体であり、特に、ランダムポリプロピレン共重合体を用いるのが好ましい。
【0037】
ポリアミド系樹脂としては、ナイロン6,ナイロン66,ナイロン69,ナイロン610,ナイロン612,ナイロン11,ナイロン12などの脂肪族ポリアミド重合体,ナイロン6-66(ナイロン6とナイロン66の共重合体を表す。以下同様に表記する),ナイロン6-10,ナイロン6-12,ナイロン6-69,ナイロン6-610,ナイロン66-69などの脂肪族ポリアミド共重合体を例示することができる。なかでも、脂肪族ポリアミド共重合体が好ましく、特にナイロン6-66,ナイロン6-10又はナイロン6-12が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、二種以上混合して用いてもよい。
【0038】
ポリエステル系樹脂としては、ポリ(エチレンテレフタレート),ポリ(ブチレンテレフタレート),ポリ(エチレンテレフタレート/イソフタレート),ポリ(エチレングリコール/シクロへキサンジメタノール/テレフタレート)などが代表格としてあげられる。更にこれらの重合体に共重合成分としてエチレングリコール,ブチレングリコール,シクロヘキサンジメタノール,ネオペンチルグリコール,ペンタンジオールなどのジオール類,あるいはイソフタール類,ベンゾフェノンジカルボン酸,ジフェニルスルホンジカルボン酸,ジフェニルメタンジカルボン酸,プロピレンビス(フェニルカルボン酸),ジフェニルオキサイドジカルボン酸,シュウ酸,マレイン酸,マロン酸,コハク酸,グルタル酸,アジピン酸,ピメリン酸,スベリン酸,アゼライン酸,サバチン酸,ジエチルコハク酸などのジカルボン酸を含有せしめたものが使用できる。
【0039】
ポリオレフィン系樹脂としては、たとえば、直鎖状低密度ポリエチレン,低密度ポリエチレン,中密度ポリエチレン,高密度ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂,ポリプロピレンなどのポリプロピレン系樹脂,プロピレン-エチレン共重合体,エチレン-酢酸ビニル共重合体,アイオノマー樹脂,エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体,エチレン-(メタ)アクリル酸-不飽和カルボン酸エステル共重合体などの各種共重合体が挙げられる。好ましくは、ポリエチレン系樹脂であり、特に好ましくは、直鎖状低密度ポリエチレンである。これらは単独で用いてもよいし、二種以上混合して用いてもよい。フィルム3に用いるフィルムシートは、上記の構成の他、種々を組み合わせた多層構成としてもよい。
【0040】
また、フィルム3に用いるフィルムシートは、環境負荷低減の観点から、ポリ乳酸(PLA),ポリグリコール酸(PGA),ポリブチレンサクシネート(PBS)等の生分解性樹脂を用いることも好ましい。フィルム3の厚さは、好ましくは10~300μmであり、より好ましくは15~250μmであり、より好ましくは20~200μmであり、さらに好ましくは30~150μmである。フィルム3に用いるフィルムシートは、それぞれドライラミネート法により積層してもよいが、同時に溶融押出しする、共押出し法により形成したフィルムが好ましい。
【0041】
[3.ブランクシート]
図6を参照して、容器本体2を組み立てるためのブランクシート2′の構成を説明する。容器本体2は、一枚のブランクシート2′から組み立てられる。
図6に示すように、ブランクシート2′には、底面部20に対応する底面部シート20′と、底面部シート20′の一対の辺に接続されており一対の第一側面部21に対応する一対の第一側面部シート21′が設けられている。底面部シート20′の別の一対の辺には、一対の第三側面部23に対応する一対の第三側面部シート23′が接続されており、一対の第三側面部シート23′において底面部シート20′とは反対側の端縁に一対の第二側面部22に対応する一対の第二側面部シート22′が設けられている。
【0042】
一対の第一側面部シート21′と一対の第二側面部シート22′とにおいて、底面部シート20′とは反対側の端縁にはフランジ部26に対応するフランジ部シート26′が接続されている。
また、底面部シート20′と一対の第一側面部シート21′との境界,底面部シート20′と一対の第三側面部シート23′との境界,一対の第二側面部シート22′と一対の第三側面部シート23′との境界には、ミシン目が形成されている。
【0043】
[4.作用及び効果]
本実施形態においてフィルム付き紙容器1の容器本体2は、上述の構成を備えるため、下記のような作用及び効果を得ることができる。
(1)容器本体2では、収容空間を囲む複数の面部21~23のうち、一対の第一側面部21が開口2Aに対して第一角度θ1で傾斜した姿勢で設けられるとともに互いに略垂直をなす。また、一対の第二側面部22は開口2Aに対して第一角度θ1よりも大きい第二角度θ2で傾斜した姿勢で設けられている。一対の第二側面部22に対して開口2Aと反対側に連設された一対の第三側面部23は仮想平面2Bに対して第二角度θ2よりも小さい第三角度θ3で傾斜した姿勢で設けられている。そのため、開口2Aに対する角度が大きい急峻な傾斜面状に設けられた第二側面部22に対して開口2Aの手前側とは反対側(収容空間の奥側)でフィルム3の密着不良を抑制しやすい面を確保することができる。よって、フィルム3の内装時にフィルム3の密着不良を抑制することができるようになる。
【0044】
(2)第三角度θ3が第一角度θ1よりも大きく設定されているので、容器本体2の外形がサンドイッチの外形と対応したものとなりやすくなるとともに、第二側面部22と第三側面部23との傾きの差を抑制できる。そのため、容器本体2に対するフィルム3の密着不良の抑制とサンドイッチの収容性確保とを両立することができる。また、第三角度θ3が第一角度θ1よりも大きく設定されているので、容器本体2の容積を確保しやすくなる。
(3)第二角度θ2が略垂直であることでサンドイッチの収容性(収容しやすさや、収容された状態の安定性など)を確保することができる。
【0045】
(4)容器本体2は底面部20を有しており、底面部20に接続された第三側面部23により収容空間の奥側でフィルム3の密着不良を抑制しやすい面を確保することができる。そのため、底面部20を有するサンドイッチ用容器本体2(容器1)において、フィルム3の密着不良を抑制することができる。
(5)上述した容器本体2の内面にフィルム3が内装されたフィルム付き紙容器1では、フィルム3の密着不良が抑制されているので、フィルム付き紙容器1の不良発生が抑制される。
【0046】
(6)また、容器1の収容空間内に内容物を収容した状態で、開口2Aを蓋体5で閉塞した包装物では、収容した内容物が収容空間からこぼれることを防いだり、外部から異物の混入を防いだりすることができる。また、容器1の収容空間内に内容物を収容した状態であって収容空間内の空気を不活性ガスに置換した状態で、開口2Aを蓋体5で閉塞した包装物では、収容した食品の品質保持期間(賞味期限)を延長することができる。
かかる包装物は、柔なフィルム3でサンドイッチの角の破損を抑制する一方で、剛な容器本体2で外側の保護性を確保しうる包装物と言える。
(7)また、ブランクシート2′によれば、上記のように、フィルム3の密着不良を抑制しやすい面を確保した容器本体2を組み立てることができるので、フィルム3の内装時にフィルム3の密着不良を抑制できる容器本体2を製造することができる。
【0047】
[5.変形例]
上述の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、適宜組み合わせることもできる。
【0048】
容器本体2の形状は、一対の第一側面部21、一対の第二側面部22及び一対の第三側面部23のそれぞれが上記の第一角度θ1、第二角度θ2及び第三角度θ3の角度条件を満足するものであれば、図1に例示の三角柱状に限らず、どのような形状であってもよい。
また、容器本体2において、底面部の形状は矩形状に限らず任意の多角形状であってよい。或いは、容器本体2は、底面部の無い多面体形状であってもよい。
【0049】
容器本体2は、一枚の紙製シートを折り曲げて形成されたものに限らず、複数枚の紙製シートを組み合わせて形成されたものであってもよい。例えば、容器本体は、フランジ部(フランジ部をなすブランクシート)と、それ以外の部分(容器本体のうちフランジ部を除く部分なすブランクシート)とを組み合わせて形成されていてもよい。この場合、フランジ部においてシート片どうしの突き合せ部分をなくすことができるので、フランジ部が段差のない平坦面で形成されたものとなる。そのため、フランジ部へのフィルム密着性や、蓋体の装着性が向上する。
また、包装物は、容器1の収容空間内に内容物が収容された状態で収容空間内の空気を不活性ガスに置換せずに、開口2Aを閉塞したものであってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 フィルム付き紙容器
2 容器本体
2A 開口
2B 仮想平面
3 フィルム
5 蓋体
20 底面部
21 第一側面部(第一面部)
22 第二側面部(第二面部)
23 第三側面部(第三面部)
24 折目
26 フランジ部
2′ ブランクシート
20′ 底面部シート
21′ 第一側面部シート
22′ 第二側面部シート
23′ 第三側面部シート
26′ フランジ部シート
D1 第一方向
D2 第二方向
D3 第三方向
θ1 第一角度
θ2 第二角度
θ3 第三角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6