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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162689
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】バルブユニット
(51)【国際特許分類】
   F25B 41/20 20210101AFI20241114BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20241114BHJP
   B60H 1/22 20060101ALI20241114BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
F25B41/20 Z
F25B1/00 101G
F25B1/00 304L
B60H1/22 651B
B60H1/22 651A
B60H1/32 624F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078491
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000133652
【氏名又は名称】株式会社テージーケー
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】弁理士法人インターブレイン
(72)【発明者】
【氏名】野田 圭俊
(72)【発明者】
【氏名】城之内 隆史
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA55
3L211DA26
(57)【要約】
【課題】ホットガスを利用する冷凍サイクルのコンパクト化に寄与するバルブユニットを提供する。
【解決手段】バルブユニット1は、熱交換器104の入口と連通する第1ポート14および分岐点p1を含む第1通路20と、熱交換器104の出口と連通する第2ポート16を含む第2通路22と、ホットガス用のバイパス通路を構成する第3通路24と、を有するブロック2を備える。第1弁137と第2弁130がブロック2に一体に組み付けられ、第1弁137が第3通路24の開度を調整し、第2弁130が第1通路20の開度を調整する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、
前記圧縮機が配置され、通常暖房運転時に冷媒が流れる冷媒循環通路と、
前記冷媒循環通路に配置され、内部を流れる冷媒の熱交換を行う熱交換器と、
前記冷媒循環通路における前記圧縮機と前記熱交換器との間に設けられた分岐点から分岐し、ホットガスを利用する特定暖房運転時に開放され、前記熱交換器をバイパスさせるよう冷媒を流すためのバイパス通路と、
前記バイパス通路に配置され、前記特定暖房運転時に開弁される第1弁と、
前記冷媒循環通路における前記分岐点と前記熱交換器との間に配置され、前記特定暖房運転時に開度が調整されることにより、前記熱交換器へ向けて流れる冷媒を制御する第2弁と、
を備える冷凍サイクルに適用されるバルブユニットであって、
前記熱交換器の入口と連通する第1ポートおよび前記分岐点を含む第1通路と、前記熱交換器の出口と連通する第2ポートを含む第2通路と、前記バイパス通路を構成する第3通路と、を有するブロックを備え、
前記第1弁と前記第2弁が前記ブロックに一体に組み付けられ、前記第1弁が前記第3通路の開度を調整し、前記第2弁が前記第1通路の開度を調整することを特徴とするバルブユニット。
【請求項2】
前記ブロックが、前記圧縮機の出口側につながる第3ポートと、前記圧縮機の入口側につながる第4ポートと、を有し、前記第1通路が前記第3ポートと前記第1ポートとを連通させる一方、前記第2通路が前記第2ポートと前記第4ポートとを連通させることを特徴とする請求項1に記載のバルブユニット。
【請求項3】
前記第3通路が前記第1通路と前記第2通路とを接続することを特徴とする請求項2に記載のバルブユニット。
【請求項4】
前記第3通路と前記第2通路との合流点と、前記第2ポートとの間に、前記第2通路を開閉する開閉弁を有し、
前記開閉弁は、前記通常暖房運転時に閉弁状態とされることを特徴とする請求項3に記載のバルブユニット。
【請求項5】
前記開閉弁が電磁弁であることを特徴とする請求項4に記載のバルブユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットガスを利用する冷凍サイクルに適用されるバルブユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電気自動車の普及に伴い、その空調システムの開発も進められている。電気自動車は内燃機関による熱源そのものがないため、冷房のみならず暖房にも冷媒を用いてサイクル運転を行うヒートポンプ式の冷暖房装置が採用されている(特許文献1参照)。このような冷暖房装置は、圧縮機、室外熱交換器、膨張装置、蒸発器、室内熱交換器等を含む冷凍サイクルを有し、暖房運転時と冷房運転時とで室外熱交換器の機能が切り替えられる。暖房運転時においては室外熱交換器が蒸発器として機能する。その際、冷凍サイクルを冷媒が循環する過程で室内熱交換器が凝縮器として機能し放熱することで、暖房機能が確保される。
【0003】
しかしながら、外気が極低温(例えば-20℃以下)になると、室外熱交換器での熱交換(吸熱)が困難となり、暖房機能を十分に発揮できなくなる可能性がある。その場合、PTCヒータ等の電気機器を別途追加することでも対処できるが、設備コストが嵩む。そこで、暖房運転において通常暖房モードのほかホットガス運転モードを取り入れることで、極低温に対処する冷凍サイクルも提案されている(特許文献2参照)。このような冷凍サイクルでは、ホットガス運転モードにおいて、圧縮機から吐出された冷媒をバイパス通路に導くことで室外熱交換器(室外蒸発器)を迂回させる。また、圧縮機から吐出された高温冷媒の一部を戻り通路を介してそのまま圧縮機の入口に戻す。それにより冷媒圧力を高め、冷凍サイクル全体の冷媒流量を大きくすることで暖房性能を向上できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-11578号公報
【特許文献2】特開2021-156567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような冷凍サイクルにおいては、運転モードに応じて冷媒通路を切り替えるために複数の制御弁が必要となる。ホットガス運転モードを実現するためには、バイパス通路や戻り通路への冷媒の流れを調整する制御弁も必要となる。このため、冷媒循環通路に配置される各種制御弁等のデバイスをできるだけコンパクトにまとめることで、車両における省スペースを図ることも重要となる。
【0006】
本発明の目的の一つは、ホットガスを利用する冷凍サイクルのコンパクト化に寄与するバルブユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、冷凍サイクルに適用されるバルブユニットである。この冷凍サイクルは、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、圧縮機が配置され、通常暖房運転時に冷媒が流れる冷媒循環通路と、冷媒循環通路に配置され、内部を流れる冷媒の熱交換を行う熱交換器と、冷媒循環通路における圧縮機と熱交換器との間に設けられた分岐点から分岐し、ホットガスを利用する特定暖房運転時に開放され、熱交換器をバイパスさせるよう冷媒を流すためのバイパス通路と、バイパス通路に配置され、特定暖房運転時に開弁される第1弁と、冷媒循環通路における分岐点と熱交換器との間に配置され、特定暖房運転時に開度が調整されることにより、熱交換器へ向けて流れる冷媒を制御する第2弁と、を備える。バルブユニットは、熱交換器の入口と連通する第1ポートおよび分岐点を含む第1通路と、熱交換器の出口と連通する第2ポートを含む第2通路と、バイパス通路を構成する第3通路と、を有するブロックを備える。第1弁と第2弁がブロックに一体に組み付けられ、第1弁が第3通路の開度を調整し、第2弁が第1通路の開度を調整する。
【0008】
この態様によると、バルブユニットがブロックを有し、特定暖房運転に特化して設けられる第1弁と第2弁とがそのブロックに一体に組み付けられる。このため、第1弁と第2弁とが独立して設けられる場合と比較して、冷凍サイクルの構造が簡素化される。ブロックを熱交換器に直接的に接続する、つまり第1ポートを熱交換器の入口に接続し、第2ポートを熱交換器の出口に接続することで、バルブユニットと熱交換器との間の配管を短くすることもできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ホットガスを利用する冷凍サイクルのコンパクト化に寄与するバルブユニットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る車両用冷暖房装置のシステム構成図である。
図2】冷暖房装置の動作を表す図である。
図3】冷暖房装置の動作を表す図である。
図4】バルブユニットおよびその周辺の構造を模式的に表す図である。
図5】比較例に係る冷暖房装置のシステム構成図である。
図6】第2実施形態に係る車両用冷暖房装置のシステム構成図である。
図7】冷暖房装置の動作を表す図である。
図8】冷暖房装置の動作を表す図である。
図9】バルブユニットおよびその周辺の構造を模式的に表す図である。
図10】変形例1に係る車両用冷暖房装置のシステム構成図である。
図11】バルブユニットおよびその周辺の構造を模式的に表す図である。
図12】変形例2に係る車両用冷暖房装置のシステム構成図である。
図13】バルブユニットおよびその周辺の構造を模式的に表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。また、以下の実施形態およびその変形例について、ほぼ同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0012】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る車両用冷暖房装置のシステム構成図である。
冷暖房装置100は、圧縮機102、補助凝縮器104、室外熱交換器106、蒸発器108、外部熱交換器110およびアキュムレータ112等を配管にて接続した冷凍サイクル(冷媒循環回路)を備える。冷暖房装置100は、HFO-1234yfなどの冷媒が冷凍サイクル内を状態変化しながら循環する過程で、その冷媒の熱を利用して車室内の空調を行うヒートポンプ式冷暖房装置として構成される。外部熱交換器110は、この冷凍サイクルと図示略の冷却液循環回路との間で熱交換を行うためのチラーとして機能する。冷却液循環回路は、図示略のバッテリの冷却に用いられる。
【0013】
圧縮機102、室外熱交換器106、外部熱交換器110およびアキュムレータ112は、車室外(エンジンルーム)に設けられている。室外熱交換器106に対向するようにファン107が配置されている。ファン107の駆動によりエンジンルームに外気を導入できる。室外熱交換器106は、その外気と冷媒との間で熱交換をさせる。一方、車室内には空気の熱交換が行われる室内空調ユニット114が設けられる。室内空調ユニット114を構成するダクトにおける空気の流れ方向上流側からブロワ116、蒸発器108、補助凝縮器104が配設されている。補助凝縮器104の上流側には、エアミックスドア118が回動自在に設けられ、補助凝縮器104を通過する風量と補助凝縮器104を迂回する風量との比率が調節される。
【0014】
冷暖房装置100は、冷房運転時と暖房運転時とで複数の冷媒循環通路を切り替えるように運転される。この冷凍サイクルは、補助凝縮器104と室外熱交換器106とが凝縮器として直列に動作可能に構成され、また、蒸発器108と室外熱交換器106とが蒸発器として切り替え可能に構成されている。本実施形態では、冷房運転として通常冷房運転又は特定冷房運転を設定でき、暖房運転として通常暖房運転又は特定暖房運転を設定できる。特定冷房運転は、通常冷房運転と並行して外部熱交換器110をチラーとして機能させる冷房運転モードである。特定暖房運転は、ホットガスを利用する運転モードである。この冷凍サイクルでは、冷房運転時に冷媒が循環する第1冷媒循環通路と、暖房運転時に冷媒が循環する第2冷媒循環通路が形成される。
【0015】
第1冷媒循環通路は、圧縮機102→補助凝縮器104→室外熱交換器106→蒸発器108→アキュムレータ112→圧縮機102のように冷媒が循環する通路である(図2(A)参照)。第2冷媒循環通路は、圧縮機102→補助凝縮器104→室外熱交換器106→アキュムレータ112→圧縮機102のように冷媒が循環する通路である(図3(A)参照)。第2冷媒循環通路は、蒸発器108を迂回する通路とされている。
【0016】
具体的には、圧縮機102の出口(吐出室)は第1通路121を介して補助凝縮器104の入口に接続され、補助凝縮器104の出口は第2通路122を介して室外熱交換器106の入口に接続されている。室外熱交換器106の出口は、第3通路123を介して蒸発器108の入口に接続され、蒸発器108の出口は第4通路124を介してアキュムレータ112の入口に接続されている。アキュムレータ112の出口は、第5通路125を介して圧縮機102の入口(吸入室)に接続されている。
【0017】
第1通路121に分岐点p1が設けられ、第2通路122に分岐点p2が設けられている。分岐点p2において第2通路122から分岐するようにバイパス通路126が設けられている。バイパス通路126は、アキュムレータ112の上流側に設けられた合流点p3にて第4通路124と接続する。また、分岐点p1において第1通路121から分岐するようにバイパス通路127が設けられている。バイパス通路127は、合流点p4にてバイパス通路126と接続する。バイパス通路126,127は、圧縮機102の出口側(吐出室)から吐出された冷媒の一部を、電動弁137にて減圧し、補助凝縮器104と室外熱交換器106を経由させることなく圧縮機102の入口側に戻すためのバイパス通路として機能する。
【0018】
第3通路123には上流側から分岐点p5,p6が設けられている。第4通路124には上流側から合流点p7,p8が設けられている。そして、分岐点p5と合流点p8とを接続し、蒸発器108および外部熱交換器110を迂回させるよう冷媒を流すためのバイパス通路128が設けられている。分岐点p6と合流点p7とを接続するバイパス通路129が設けられている。
【0019】
第1通路121、第2通路122、第3通路123、第4通路124および第5通路125により第1冷媒循環通路が形成される(図2(A)参照)。第1通路121、第2通路122、第3通路123(分岐点p5の上流側)、バイパス通路128、第4通路124(合流点p8の下流側)および第5通路125により第2冷媒循環通路が形成される(図3(A)参照)。
【0020】
第1通路121における分岐点p1の下流側には、モータ駆動の電動弁130が設けられている。電動弁130は、圧縮機102から補助凝縮器104へ向けて流れる冷媒の流量を調整可能な流量調整弁として機能する。第2通路122における分岐点p2の下流側には電動弁132が設けられている。電動弁132は、開閉弁および膨張弁として機能する。電動弁132は、大口径の弁(大口径弁)と小口径の弁(小口径弁)を有する複合弁(「大小口径弁」ともいう)である。第3通路123における分岐点p6の下流側には電動弁134が設けられている。バイパス通路129には電動弁136が設けられている。電動弁134,136は、それぞれ膨張弁として機能する。
【0021】
バイパス通路127には電動弁137が設けられている。電動弁137は膨張弁として機能し、バイパス通路127を流れる冷媒を減圧しつつ、冷媒の圧縮機102への戻り量を調整する。バイパス通路126には、バイパス通路127との合流点p4が設けられている。バイパス通路126における分岐点p2と合流点p4との間には、ソレノイド駆動の電磁弁138が設けられている。電磁弁138は、バイパス通路126を開閉する開閉弁として機能する。バイパス通路128には電磁弁140が設けられている。電磁弁140は、バイパス通路128を開閉する開閉弁として機能する。
【0022】
本実施形態では、電動弁130、電動弁137および電磁弁138が単一のブロックに組み付けられてバルブユニット1を構成する。電動弁137が「第1弁」として機能し、電動弁130が「第2弁」として機能する。バルブユニット1は、配管を介して補助凝縮器104に組み付けられる。バルブユニット1およびその周辺の詳細については後述する。
【0023】
圧縮機102は、ハウジング内にモータと圧縮機構を収容する電動圧縮機として構成される。圧縮機102は、その吸入室を介して吸入圧力Psの冷媒を導入し、これを圧縮して吐出圧力Pdの冷媒として吐出する。圧縮機102は、図示略のバッテリからの供給電流により駆動され、モータの回転数に応じて冷媒の吐出容量が変化する。なお、電動圧縮機そのものは公知であるため、その説明を省略する。
【0024】
補助凝縮器104は、室外熱交換器106とは別に冷媒を放熱させる室内凝縮器(室内熱交換器)として機能する。すなわち、圧縮機102から吐出された高温・高圧の冷媒が補助凝縮器104を通過する際に放熱する。
【0025】
室外熱交換器106は、冷房運転時に内部を通過する冷媒を放熱させる室外凝縮器として機能する一方、暖房運転時には内部を通過する冷媒を蒸発させる室外蒸発器として機能する。室外熱交換器106は、外気と冷媒との間で熱交換をさせる。
【0026】
蒸発器108は、内部を通過する冷媒を蒸発させる室内蒸発器として機能する。電動弁134の通過により減圧され低温・低圧となった冷媒は、蒸発器108を通過する際に蒸発する。室内空調ユニット114におけるダクトの上流側から導入された空気は、その蒸発潜熱によって冷却される。このとき冷却・除湿された空気は、エアミックスドア118の開度に応じて補助凝縮器104を通過するものと、補助凝縮器104を迂回するものとに振り分けられる。補助凝縮器104を通過する空気は、その通過過程で加熱される。補助凝縮器104を通過した空気と迂回した空気とが補助凝縮器104の下流側にて混合されて目標の温度に調整され、図示しない吹出口から車内に供給される。
【0027】
以上のように構成された冷暖房装置100は、制御部150により制御される。制御部150は、車両の乗員によりセットされた室温を実現するために各アクチュエータの制御量を演算し、各アクチュエータの駆動回路に制御信号を出力する。制御部150は、車室内外の温度、蒸発器108の吹き出し空気温度等、各種センサにて検出された所定の外部情報に基づいて各制御弁の制御量(開閉状態)や圧縮機102の駆動量等を決定し、それらを駆動させるための制御電流を供給する。
【0028】
図2および図3は、冷暖房装置100の動作を表す図である。図2(A)は通常冷房運転、図2(B)は特定冷房運転を示す。図3(A)は通常暖房運転、図3(B)は特定暖房運転を示す。図中の太線および矢印が冷媒の流れを示し、「×」は冷媒の流れが遮断されていることを示す(以下同様)。
【0029】
(通常冷房運転)
図2(A)に示すように、通常冷房運転時においては、電動弁130が全開状態、電動弁137が閉弁状態とされる。また、電動弁132の大口径弁が全開状態とされ、電磁弁138が閉弁状態とされる。さらに、電動弁136および電磁弁140が閉弁状態とされ、電動弁134が膨張弁として機能する微小開度状態とされる。その結果、第1冷媒循環通路が開放され、第2冷媒循環通路は遮断される。バイパス通路126,127,128,129も遮断される。圧縮機102から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、補助凝縮器104を通過し、室外熱交換器106を経ることで凝縮される。
【0030】
室外熱交換器106から導出された冷媒は、電動弁134で絞り膨張され、低温・低圧の霧状の冷媒となって蒸発器108に導入される。その冷媒が蒸発器108を通過する過程で蒸発し、車室内の空気を冷却する。蒸発器108から導出された冷媒は、アキュムレータ112にて気液分離され、その気相成分(ガス冷媒)が圧縮機102に戻される。
【0031】
(特定冷房運転)
図2(B)に示すように、特定冷房運転時においては、第1冷媒循環通路が開放された状態でさらに電動弁136が開弁され、バイパス通路129が開放される。電動弁136は微小開度状態とされ、膨張弁として機能する。それにより外部熱交換器110をチラーとして機能させ、バッテリを冷却することができる。なお、電動弁134を閉じることで蒸発器108への流れを遮断し、外部熱交換器110のみに冷媒を流してもよい。
【0032】
(通常暖房運転)
図3(A)に示すように、通常暖房運転時においては、電動弁130が全開状態とされ、電動弁137および電磁弁138は閉弁状態とされる。また、電動弁132の大口径弁が閉弁状態とされ、小口径弁が開弁される。一方、電磁弁140が開弁状態とされ、電動弁134および電動弁136は閉弁状態とされる。その結果、第2冷媒循環通路が開放され、第1冷媒循環通路は遮断される。バイパス通路126,127,129も遮断される。
【0033】
このため、冷媒は蒸発器108および外部熱交換器110を通過せず、これらは実質的に機能しなくなる。電動弁132が膨張弁(電動膨張弁)として機能し、室外熱交換器106のみが蒸発器として機能する。
【0034】
すなわち、圧縮機102から吐出された冷媒は、補助凝縮器104を経ることで凝縮される。その冷媒は、電動弁132で絞り膨張され、低温・低圧の霧状の冷媒となって室外熱交換器106に導入される。その冷媒が室外熱交換器106を通過する過程で蒸発し、外部から熱量を吸収する。室外熱交換器106から導出された冷媒は、アキュムレータ112にて気液分離され、その気相成分(ガス冷媒)が圧縮機102に戻される。このとき、エアミックスドア118が大きく開かれ、補助凝縮器104における熱交換により車室内が暖められる。
【0035】
なお、暖房運転時に電池冷却や除湿のために外部熱交換器110および蒸発器108に冷媒を流してもよい。具体的には、電磁弁140を閉じ、電動弁136および/または電動弁134を開くことで、室外熱交換器106に加えて外部熱交換器110および/または蒸発器108が蒸発器として機能するようにしてもよい。
【0036】
(特定暖房運転)
図3(B)に示すように、特定暖房運転時においては、電動弁132および電磁弁140が閉弁状態とされる一方、電動弁130、電磁弁138および電動弁137が開弁状態とされる。その結果、バイパス通路126,127が開放される。このとき、電動弁130と電動弁137の開度が所定比率に調整され、補助凝縮器104へ向けて流れる冷媒の流量と、補助凝縮器104を迂回する冷媒流量との割合が調整される。電動弁134および電動弁136は閉弁状態とされる。
【0037】
このため、圧縮機102から吐出された冷媒は、電動弁130で減圧され、高温ガスの状態で補助凝縮器104を通過することで熱交換された後(放熱した後)に室外熱交換器106を迂回し、アキュムレータ112を経て圧縮機102に戻る。このとき、エアミックスドア118が大きく開かれ、補助凝縮器104における熱交換により車室内が暖められる。さらに、圧縮機102から吐出された冷媒(いわゆるホットガス)の一部を電動弁137で減圧させた後に圧縮機102の吸入側に戻す回路(いわゆるバイパス回路)が併設されることで冷媒圧力が高められ、冷凍サイクル全体の冷媒流量が大きくなり、暖房性能が向上する。
【0038】
次に、バルブユニット1の構成について説明する。
図4は、バルブユニット1およびその周辺の構造を模式的に表す図である。図4(A)はバルブユニット1単体の構造を示し、図4(B)はバルブユニット1と補助凝縮器104との取付構造を示す。
【0039】
図4(A)に示すように、バルブユニット1は、複数の内部通路を有するブロック2に電動弁130,137および電磁弁138を組み付けて構成される。ブロック2は、これらの制御弁の共用のボディを構成し、本実施形態では直方体形状をなしている。ブロック2は、一側面に開口するポート10,11,12と、その反対側面に開口するポート14,16を有する。ブロック2は内部通路として、ポート10とポート14とを連通させる第1通路20と、ポート11とポート16とを連通させる第2通路22と、第1通路20と第2通路22とをつなぐ第3通路24と、ポート12とポート16とを連通させる第4通路26とを有する。
【0040】
電動弁130の弁部が第1通路20に配置され、電動弁137の弁部が第3通路24に配置され、電磁弁138の弁部が第2通路22に配置されている。分岐点p1,p2および合流点p4がブロック2の内部通路に設けられる。第1通路20と第3通路24との接続点に分岐点p1が設けられ、第2通路22と第4通路26との接続点に分岐点p2が設けられ、第3通路24と第2通路22との接続点に合流点p4が設けられる。
【0041】
図4(B)に示すように、圧縮機102の出口につながる配管30が、ポート10に接続される。アキュムレータ112の入口につながる配管31が、ポート11に接続される。室外熱交換器106の入口につながる配管32が、ポート12に接続される。補助凝縮器104の入口につながる配管34がポート14に接続される。補助凝縮器104の出口につながる配管36がポート16に接続される。ポート14が「第1ポート」として機能し、ポート16が「第2ポート」として機能する。ポート10が「第3ポート」として機能し、ポート11が「第4ポート」として機能する。
【0042】
以上に説明したように、本実施形態では、バルブユニット1がブロック2を有し、特定暖房運転に特化して設けられる電動弁130,137および電磁弁138が、そのブロック2に一体に組み付けられる。このため、これらの制御弁が独立して設けられる場合と比較して冷凍サイクルの構造が簡素となる。図示のように、補助凝縮器104の一側面に入口と出口を配置することで、バルブユニット1と補助凝縮器104との間の配管を短くすることもできるため、冷凍サイクルのコンパクト化に寄与する。
【0043】
図5は、比較例に係る冷暖房装置のシステム構成図である。
比較例の冷暖房装置101では、電動弁130,137および電磁弁138が独立に設けられているため、これらの制御弁のボディが個別に必要となり、制御弁ごとに配管を接続する必要がある。このため、本実施形態と比較して配管構成が複雑となる。言い換えれば、本実施形態によれば、比較例よりも配管構造を簡素にでき、配管数も少なくできるため、冷暖房装置100のコンパクト化を実現しやすい。
【0044】
また、本実施形態によれば、バルブユニット1を特定暖房運転に特化した独立したユニットとして構成することで、冷凍サイクルの仕様に応じてその設置有無を選択することができる。例えば、特定暖房運転が必要となる寒冷地仕様の車両に対し、バルブユニット1をオプションで設置することもできる。特定暖房運転が不要な車両に対してはバルブユニット1を省略してもよい。その場合、圧縮機102の出口と補助凝縮器104の入口とを配管で接続し、補助凝縮器104の出口と室外熱交換器106の入口とを配管で接続すればよい。バイパス通路126を形成する配管も不要となる。
【0045】
[第2実施形態]
図6は、第2実施形態に係る車両用冷暖房装置のシステム構成図である。
本実施形態は、冷暖房装置200が冷媒循環回路201と冷却液循環回路202を有し、いわゆる水冷方式の冷凍サイクルを採用する点で第1実施形態と異なる。冷却液循環回路202に配置されたヒータコア303(室内熱交換器)により暖房機能が発揮される。冷暖房装置200は、冷媒循環回路201と冷却液循環回路202との間で熱交換を行うための水-冷媒凝縮器304と水-冷媒蒸発器306を備える。
【0046】
冷媒循環回路201は、圧縮機102、水-冷媒凝縮器304、蒸発器108、水-冷媒蒸発器306およびアキュムレータ112等を配管にて接続して構成される。水-冷媒凝縮器304は「第1熱交換器」として機能し、水-冷媒蒸発器306は「第2熱交換器」として機能する。
【0047】
室内空調ユニット344には、ダクトにおける蒸発器108の下流側にヒータコア303が設けられている。ヒータコア303の上流側にエアミックスドア118が回動自在に設けられ、ヒータコア303を通過する風量とヒータコア303を迂回する風量との比率が調節される。
【0048】
圧縮機102の出口(吐出室)は第1通路321を介して水-冷媒凝縮器304の入口に接続され、水-冷媒凝縮器304の出口は第2通路322を介して蒸発器108の入口に接続されている。蒸発器108の出口は、第3通路323を介してアキュムレータ112の入口に接続されている。アキュムレータ112の出口は、第4通路324を介して圧縮機102の入口(吸入室)に接続されている。
【0049】
第1通路321に分岐点p1が設けられている。第2通路322には上流側から分岐点p2,p6が設けられている。第3通路323には上流側から合流点p7,p3が設けられている。分岐点p2と合流点p3とを接続するようにバイパス通路126が設けられている。分岐点p1において第1通路321から分岐するようにバイパス通路127が設けられている。バイパス通路127は、合流点p4にてバイパス通路126と接続する。バイパス通路126,127は、圧縮機102の出口側から吐出された冷媒を、蒸発器108や水-冷媒蒸発器306を経由させることなく圧縮機102の入口側に戻すための「戻り通路」として機能する。
【0050】
第1通路321における分岐点p1と水-冷媒凝縮器304との間に電動弁132が設けられている。バイパス通路126における合流点p4の上流側に電磁弁138が設けられている。バイパス通路127に電動弁137が設けられている。
【0051】
冷却液循環回路202は、ヒータコア303、水-冷媒凝縮器304、水-冷媒蒸発器306、放熱器354(ラジエータ)等を配管にて接続して構成される。クーラントが冷却液循環回路202を循環する過程で熱交換が行われる。クーラントは、例えばエチレングリコールやプロピレングリコールなどを主成分とする水溶液(冷却水)であってよい。放熱器354に対向するようにファン355が配置されている。ファン355の駆動によりエンジンルームに外気を導入し、放熱器354を流れるクーラントと外気との間で熱交換をさせる。
【0052】
冷却液循環回路202は、ヒータコア303が配置される第1通路360と、水-冷媒凝縮器304が配置される第2通路362と、水-冷媒蒸発器306が配置される第3通路364と、放熱器354が配置される第4通路366を有し、冷房運転時と暖房運転時とでこれらの通路の接続が切り替えられる。第2通路362の上流端に第1通路360、第3通路364および第4通路366との第1の接続点が設けられ、その第1の接続点に切替弁370が設けられている。また、第2通路362の下流端に第1通路360、第3通路364および第4通路366との第2の接続点が設けられ、その第2の接続点に切替弁372が設けられている。切替弁370,372は四方弁である。
【0053】
第3通路364における水-冷媒蒸発器306の下流側には、クーラントを循環させるためのポンプ374が設けられている。第2通路362における水-冷媒凝縮器304と切替弁372との間には、クーラントを循環させるためのポンプ376が設けられている。第3通路364における水-冷媒蒸発器306の下流側にはバッテリユニット380が設けられている。バッテリユニット380は、車両の電源であるバッテリと、バッテリ用熱交換器を含む。
【0054】
バッテリユニット380の上流側に分岐点p11が設けられ、下流側に合流点p12が設けられている。これら分岐点p11と合流点p12とを接続するようにバイパス通路382が設けられている。第3通路364における分岐点p11とバッテリユニット380との間に開閉弁384が設けられ、バイパス通路382には開閉弁386が設けられている。開閉弁384,386は、本実施形態では電磁弁であるが、いずれか一方又は双方を電動弁としてもよい。開閉弁384を閉じた状態で開閉弁386を開き、バイパス通路382を開放することにより、バッテリユニット380を迂回するようにクーラントを流すことができる。
【0055】
本実施形態では、電動弁132,137および電磁弁138が単一のブロックに組み付けられてバルブユニット205を構成する。電動弁137が「第1弁」として機能し、電動弁132が「第2弁」として機能する。バルブユニット205は、配管を介して水-冷媒凝縮器304に組み付けられる。バルブユニット205およびその周辺の詳細については後述する。
【0056】
図7および図8は、冷暖房装置200の動作を表す図である。図7(A)は冷房運転、図7(B)は通常暖房運転を示す。図8は特定暖房運転を示す。図中の太線および矢印が冷媒の流れを示し、「×」は冷媒の流れが遮断されていることを示す。
【0057】
(冷房運転)
図7(A)に示すように、冷房運転時には、冷媒循環回路201において電動弁132の大口径弁が全開状態、電動弁137および電磁弁138が閉弁状態とされる。また、電動弁134および電動弁136がそれぞれ膨張弁として機能する。このため、圧縮機102から吐出された冷媒は、水-冷媒凝縮器304を経ることで凝縮される。このとき、水-冷媒凝縮器304において熱交換が行われる。
【0058】
水-冷媒凝縮器304から導出された冷媒は、一方で電動弁134にて絞り膨張され、蒸発器108に導入される。その冷媒が蒸発器108を通過する過程で蒸発し、車室内の空気を冷却する。蒸発器108から導出された冷媒は、アキュムレータ112にて気液分離され、その気相成分が圧縮機102に戻される。
【0059】
水-冷媒凝縮器304から導出された冷媒は、他方で電動弁136にて絞り膨張され、水-冷媒蒸発器306に導入される。その冷媒が水-冷媒蒸発器306を通過する過程で蒸発する。このとき、水-冷媒蒸発器306において熱交換が行われ、水-冷媒蒸発器306を流れるクーラントが冷却される。水-冷媒蒸発器306から導出された冷媒は、アキュムレータ112にて気液分離され、その気相成分が圧縮機102に戻される。
【0060】
冷却液循環回路202においては、第1通路360と第3通路364とを接続して第1冷却液循環通路(二点鎖線)を形成し、第2通路362と第4通路366とを接続して第2冷却液循環通路(点線)を形成するよう、切替弁370,372が制御される。開閉弁384は開弁状態とされ、開閉弁386は閉弁状態とされる。ポンプ374を駆動することにより、クーラントが第1冷却液循環通路を循環する。このとき、水-冷媒蒸発器306を通過することで冷却されたクーラントは、バッテリユニット380に供給されることでバッテリを冷却する。バッテリユニット380を経たクーラントは、ヒータコア303を経由した後、再び水-冷媒蒸発器306へ導かれる。
【0061】
一方、ポンプ376を駆動することで、クーラントが第2冷却液循環通路を循環する。このとき、クーラントは、水-冷媒凝縮器304を通過する際に温められるが、放熱器354を経由することで放熱され、再び水-冷媒凝縮器304へ導かれる。すなわち、水-冷媒凝縮器304の凝縮熱は、放熱器354によって大気に排出される。
【0062】
(通常暖房運転)
図7(B)に示すように、通常暖房運転時には、冷媒循環回路201において各制御弁が冷房運転時と同様に作動する。一方、冷却液循環回路202においては、第1通路360と第2通路362とを接続して第3循環通路(二点鎖線)を形成し、第3通路364と第4通路366とを接続して第4循環通路(点線)を形成するよう、切替弁370,372が制御される。開閉弁384は閉弁状態とされ、開閉弁386は開弁状態とされる。
【0063】
ポンプ376を駆動することにより、クーラントが第3循環通路を循環する。このとき、クーラントは、水-冷媒凝縮器304を通過する際に温められ、ヒータコア303に供給される。それによりヒータコア303の温度が上昇し、車室内が暖められる。なお、図示の例では、除湿機能を担保するために電動弁134を開弁状態としているが、エアミックスドア118を開いているため暖房機能は発揮される。外気温が特に低い場合などには、電動弁134を閉じて蒸発器108を機能させないようにし、空気の温度低下を抑制して相対的に暖房性能を高めてもよい。
【0064】
一方、ポンプ374を駆動することにより、クーラントが第4循環通路を循環する。このクーラントは、水-冷媒蒸発器306を通過する際に冷却されるが、バッテリユニット380を迂回するため、バッテリが過度に冷却されることはない。クーラントは、放熱器354を通過する際に外気と熱交換して吸熱した後、再び水-冷媒蒸発器306に導かれる。なお、バッテリ温度が上昇した場合には、電磁弁384を開いてバッテリユニット380にクーラントを流してもよい。
【0065】
(特定暖房運転)
図8に示すように、特定暖房運転時においては、冷媒循環回路201において電動弁134,136が閉弁状態とされる。また、電磁弁138および電動弁137が開弁状態とされる。このため、バイパス通路126,127が開放される。さらに、電動弁132が微小開度に設定され、膨張弁として機能する。一方、冷却液循環回路202においては、ポンプ376が駆動されるが、ポンプ374は停止される。切替弁370,372は通常暖房運転と同様に作動する。第3循環通路(二点鎖線)には冷媒が流れるが、第4循環通路(点線)には冷媒は流れない。なお、図示の例では、電磁弁384,386がいずれも閉弁状態とされているが、ポンプ374が停止されることで冷媒の流れがないため、それらをオフ(ソレノイドへの通電オフ)にするだけでよい。
【0066】
このとき、圧縮機102から吐出された冷媒は、電動弁132にて減圧されて高温低圧となり、水-冷媒凝縮器304にて熱交換する。水-冷媒凝縮器304から導出された冷媒は、蒸発器108および水-冷媒蒸発器306を迂回し、バイパス通路126を経由してアキュムレータ112に導かれ、圧縮機102へ戻される。圧縮機102から吐出された高温冷媒(ホットガス)の一部がバイパス通路127およびバイパス通路126を介してそのまま圧縮機102の入口に戻されることで、水-冷媒凝縮器304における放熱性能を向上させる。電動弁137の開度が調整されることで、バイパス通路127を介したホットガスの戻り量が制御される。このとき、ホットガスにより水-冷媒凝縮器304における熱交換性能が高められるため、通常暖房(ヒートポンプ)では暖房できないような極低温下でも暖房機能を発揮することができる。
【0067】
次に、バルブユニット205の構成について説明する。
図9は、バルブユニット205およびその周辺の構造を模式的に表す図である。図9(A)はバルブユニット205単体の構造を示し、図9(B)はバルブユニット205と水-冷媒凝縮器304との取付構造を示す。
【0068】
図9(A)に示すように、バルブユニット205は、ブロック207に電動弁132,137および電磁弁138を組み付けて構成される。ブロック207は、一側面に開口するポート210,211,212と、その反対側面に開口するポート214,216を有する。ブロック207は内部通路として、ポート210とポート214とを連通させる第1通路220と、ポート211とポート216とを連通させる第2通路222と、第1通路220と第2通路222とをつなぐ第3通路224と、ポート212とポート216とを連通させる第4通路226を有する。
【0069】
電動弁132の弁部が第1通路220に配置され、電動弁137の弁部が第3通路224に配置され、電磁弁138の弁部が第2通路222に配置されている。電動弁132は、例えば特開2022-146574号公報に記載のような大口径弁と小口径弁とを共用のアクチュエータ(モータ)で駆動する複合弁である。大口径弁が第1通路220を開閉する開閉弁として機能し、大口径弁が閉じた状態で小口径弁が膨張弁として機能する。第1通路220と第3通路224との接続点に分岐点p1が設けられ、第2通路222と第4通路226との接続点に分岐点p2が設けられ、第3通路224と第2通路222との接続点に合流点p4が設けられる。
【0070】
図9(B)に示すように、圧縮機102の出口につながる配管230が、ポート210に接続される。アキュムレータ112の入口につながる配管231が、ポート211に接続される。蒸発器108の入口につながる配管232が、ポート212に接続される。水-冷媒凝縮器304の入口につながる配管234がポート214に接続される。水-冷媒凝縮器304の出口につながる配管236がポート216に接続される。ポート214が「第1ポート」として機能し、ポート216が「第2ポート」として機能する。ポート210が「第3ポート」として機能し、ポート211が「第4ポート」として機能する。
【0071】
本実施形態においても、バルブユニット205がブロック207を有し、特定暖房運転時に作動する電動弁132,137および電磁弁138が、そのブロック207に一体に組み付けられる。このため、これらの制御弁が独立して設けられる場合と比較して冷凍サイクルの構造が簡素となる。図示のように、水-冷媒凝縮器304の一側面に入口と出口を配置することで、バルブユニット205と水-冷媒凝縮器304との間の配管を短くすることもできるため、冷凍サイクルのコンパクト化に寄与する。
【0072】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0073】
[変形例]
図10は、変形例1に係る車両用冷暖房装置のシステム構成図である。
本変形例は、特定暖房運転に特化したバイパス通路126および電磁弁138を有していない点で第2実施形態と異なる。同図は特定暖房運転状態を示す。
【0074】
本変形例では、第2通路322におけるp6の上流側に合流点p22が設けられる。分岐点p1から分岐したバイパス通路327が、合流点p22にて第2通路322と接続している。バルブユニット255内に分岐点p1および合流点p22が設けられている。電動弁132と電動弁137が単一のブロックに組み付けられてバルブユニット255を構成する。電動弁137が「第1弁」として機能し、電動弁132が「第2弁」として機能する。バルブユニット255は、配管を介して水-冷媒凝縮器304に組み付けられる。
【0075】
特定暖房運転時においては、電動弁132と電動弁137とが所定の開度比率で開弁され、水-冷媒凝縮器304へ向けて流れる冷媒の流量と、水-冷媒凝縮器304を迂回する冷媒流量との割合が調整される。一方、電動弁136が全開状態とされる。このとき、電動弁136は膨張弁としては機能しない。バイパス通路327が開放されることで、圧縮機102から吐出された冷媒(ホットガス)の一部が高温のまま水-冷媒蒸発器306を通過してアキュムレータ112に戻される。このため、水-冷媒凝縮器304における熱交換性能が高められ、暖房性能が向上する。
【0076】
図11は、バルブユニット255およびその周辺の構造を模式的に表す図である。
バルブユニット255は、第2実施形態のバルブユニット205(図9参照)において第2通路222および電磁弁138を除き、第3通路224を第4通路226に接続したような構造を有する。
【0077】
すなわち、バルブユニット255のブロック257は、ポート210とポート214とを連通させる第1通路220と、ポート212とポート216とを連通させる第2通路252と、第1通路220と第2通路252とを接続する第3通路256を有する。電動弁132の弁部が第1通路220に配置され、電動弁137の弁部が第3通路256に配置される。第1通路220と第3通路256との接続点に分岐点p1が設けられ、第2通路252と第3通路256との接続点に合流点p4が設けられる。本変形例によれば、電磁弁138をなくすことでバルブユニット255を小さく構成でき、冷凍サイクルの構造をより簡素かつコンパクトにできる。
【0078】
図12は、変形例2に係る車両用冷暖房装置のシステム構成図である。
本変形例は、分岐点p1から分岐したバイパス通路427が、第3通路323における合流点p3に接続される点で変形例1と異なる。同図は特定暖房運転状態を示す。
バルブユニット265内に分岐点p1が設けられている。電動弁132と電動弁137が単一のブロックに組み付けられてバルブユニット265を構成する。バルブユニット265は、配管を介して水-冷媒凝縮器304に組み付けられる。
【0079】
特定暖房運転時においては変形例1と同様に、電動弁132と電動弁137とが所定の開度比率で開弁され、水-冷媒凝縮器304へ向けて流れる冷媒の流量と、水-冷媒凝縮器304を迂回する冷媒流量との割合が調整される。一方、電動弁136が全開状態とされる。このため、水-冷媒凝縮器304における熱交換性能が高められ、暖房性能が向上する。
【0080】
図13は、バルブユニット265およびその周辺の構造を模式的に表す図である。
バルブユニット265は、第2実施形態のバルブユニット205(図6参照)においてバイパス通路126における合流点p4の上流側部分と電磁弁138を除いたような構造を有する。
【0081】
バルブユニット265のブロック267は、ポート211と第1通路220とを連通させる第3通路266を有する。第3通路266は、第2通路252には接続されていない。第1通路220と第3通路266との接続点に分岐点p1が設けられる。このような構成を採用しても、電磁弁138をなくすことでバルブユニット265を小さく構成でき、冷凍サイクルの構造を簡素かつコンパクトにできる。
【0082】
[他の変形例]
上記実施形態および変形例では、電動弁132として特開2022-146574号公報に記載の電動弁を例示したが、特開2022-030466号公報に記載の電動弁その他の大小口径弁を採用してもよい。あるいは、膨張機能を有する回転式のボール弁等(例えば国際公開第2022/117641号に開示の構成など)を採用してもよい。ソレノイド駆動の電磁弁を採用してもよい。
【0083】
上記実施形態では、バイパス通路126を開閉する開閉弁を電磁弁138とする例を示したが、電動弁としてもよい。また、上記実施形態では、バイパス通路128を開閉する開閉弁を電磁弁140とする例を示したが、電動弁としてもよい。
【0084】
上記実施形態および変形例では、「第1弁」および「第2弁」を電動弁とする例を示したが、いずれか一方又は双方を電磁弁としてもよい。
【0085】
上記実施形態では、室外熱交換器106および水-冷媒凝縮器304の上流側に設けられる電動弁132を大小口径弁としたが、小口径弁を有しない大口径の電動膨張弁としてもよい。例えば特開2018-013140号公報に記載のような電動弁を採用してもよい。
【0086】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 バルブユニット、2 ブロック、10 ポート、11 ポート、12 ポート、14 ポート、16 ポート、20 第1通路、22 第2通路、24 第3通路、26 第4通路、100 冷暖房装置、102 圧縮機、104 補助凝縮器、106 室外熱交換器、108 蒸発器、110 外部熱交換器、112 アキュムレータ、126 バイパス通路、127 バイパス通路、128 バイパス通路、129 バイパス通路、130 電動弁、132 電動弁、134 電動弁、136 電動弁、137 電動弁、138 電磁弁、140 電磁弁、200 冷暖房装置、201 冷媒循環回路、202 冷却液循環回路、205 バルブユニット、207 ブロック、210 ポート、211 ポート、212 ポート、214 ポート、216 ポート、220 第1通路、222 第2通路、224 第3通路、226 第4通路、252 第2通路、255 バルブユニット、256 第3通路、257 ブロック、265 バルブユニット、266 第3通路、267 ブロック、303 ヒータコア、304 水-冷媒凝縮器、306 水-冷媒蒸発器、327 バイパス通路、354 放熱器、370 切替弁、372 切替弁、374 ポンプ、376 ポンプ、380 バッテリユニット、382 バイパス通路、384 開閉弁、386 開閉弁、427 バイパス通路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13