IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-回生制御装置 図1
  • 特開-回生制御装置 図2
  • 特開-回生制御装置 図3
  • 特開-回生制御装置 図4
  • 特開-回生制御装置 図5
  • 特開-回生制御装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162691
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】回生制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/14 20160101AFI20241114BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20241114BHJP
   B60K 6/543 20071001ALI20241114BHJP
   B60W 10/18 20120101ALI20241114BHJP
   B60L 7/14 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B60W20/14
B60K6/48 ZHV
B60K6/543
B60W10/18 900
B60L7/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078494
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100122770
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】加藤 信英
【テーマコード(参考)】
3D202
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA08
3D202BB00
3D202BB15
3D202CC01
3D202CC04
3D202CC15
3D202CC16
3D202CC52
3D202DD01
3D202DD02
3D202DD05
3D202DD06
3D202DD07
3D202FF06
3D202FF12
3D202FF13
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125CB02
5H125DD18
5H125EE42
5H125EE44
5H125EE52
5H125EE53
5H125EE62
5H125EE66
(57)【要約】
【課題】車両の走行状況に加えて、運転者の好みに合わせた回生制動力(減速度)を発生させることができ、運転者の違和感をより低減することが可能な回生制御装置を提供する。
【解決手段】HEV-CU70は、減速時に、車両の走行状況に応じて設定される目標減速度に応じて回生量(回生制動力)を調節する回生制御部701と、回生時(回生制動時)に、運転者の運転状態に基づいて、減速度の過不足を判定する減速度過不足判定部702と、判定された減速度の過不足の程度に応じて目標減速度を増大又は減少した学習値を取得する目標減速度学習部703と、車両の走行状況が変化した後に、変化前の車両の走行状況において取得された目標減速度の学習値を反映する学習値反映部704とを有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動時にはトルクを発生するモータとして動作し、回生時には制動力を発生させるジェネレータとして動作するモータジェネレータと、
車両の走行状況を取得する走行状況取得手段と、
運転者の運転状態を取得する運転状態取得手段と、
前記車両の走行状態及び前記運転者の運転状態に基づいて、前記モータジェネレータの動作を制御するコントロールユニットと、を備え、
前記コントロールユニットは、
減速時に、前記車両の走行状況に基づいて設定される目標減速度に応じて回生量を調節する回生制御部と、
回生時に、前記運転者の運転状態に基づいて、減速度の過不足を判定する減速度過不足判定部と、
減速度が不足していると判定された場合には、減速度の不足の程度に応じて前記目標減速度を増大した学習値を取得し、減速度が過剰であると判定された場合には、減速度の過剰の程度に応じて前記目標減速度を減少した学習値を取得する目標減速度学習部と、
前記車両の走行状況が変化した後に、変化前の前記車両の走行状況において取得された前記目標減速度の学習値を反映する学習値反映部と、を有する
ことを特徴とする回生制御装置。
【請求項2】
前記学習値反映部は、登降坂路走行において前記目標減速度の学習値が取得された場合には、その後、勾配の程度の異なる登降坂路走行、平坦路走行、又は、停車状態が所定時間以上継続したときに、前記目標減速度の学習値を反映することを特徴とする請求項1に記載の回生制御装置。
【請求項3】
前記車両の走行状況は、少なくとも、前方車両の有無、ワインディング路か否か、路面勾配、及び、車速のうちのいずれか一つを含み、
前記学習値反映部は、取得された前記目標減速度の学習値を反映する場合に、前記車両の走行状況と目標減速度との関係を定めたマップにおける該当する格子点のデータを書き換えることを特徴とする請求項2に記載の回生制御装置。
【請求項4】
前記減速度過不足判定部は、取得された前記運転者のアクセル操作に基づいて、減速度が過剰であるか否か、及び、減速度の過剰の程度を判定することを特徴とする請求項3に記載の回生制御装置。
【請求項5】
前記減速度過不足判定部は、取得された前記運転者のブレーキ操作、及び、シフト操作に基づいて、減速度が不足しているか否か、及び、減速度の不足の程度を判定することを特徴とする請求項4に記載の回生制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータを発電機として動作させて制動力を発生させる回生制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジンと電動モータとを併用することで車両の燃料消費率(燃費)を効果的に向上させることができるハイブリッド自動車(HEV)やプラグイン・ハイブリッド自動車(PHV)が広く実用化されている。また、電動モータのみを動力源とし、排ガスを排出しない電気自動車(BEV)も実用化されている。
【0003】
エンジンと電動モータを動力源とするハイブリッド自動車や電動モータを動力源とする電気自動車等の電動車両では、例えば、車両の減速時に、電動モータを回生動作することによって制動力を得るとともに、車両の運動エネルギを電気エネルギとして回収する回生制御が行われる。
【0004】
ここで、特許文献1には、車両の様々な走行状況に応じて回生制動力を制御することができる車両の回生制動装置が開示されている。より具体的には、この回生制動装置は、惰行運転時に回生制動力の目標値を算出する際、基準となる回生制動力を算出し、更に、車間距離に応じた補正量と先行きの道路状況に応じた補正量をそれぞれ算出する。そして、このうち最大の補正量を基準回生制動力に加算して目標値を補正することで、実際の走行状況に応じて適切な回生制動力を発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-54203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、特許文献1に開示された回生制動装置によれば、実際の走行状況に応じて適切な回生制動力を発生させることができる。しかしながら、適切な回生制動力(減速度)は走行状況に加えて、運転者の好みによっても異なり得る。そのため、走行状況に応じて回生制動力を可変させたとしても、運転者によっては、回生制動力が不足していると感じたり、或は、過剰であると感じるおそれがある。すなわち、運転者が違和感を覚えるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、車両の走行状況に加えて、運転者の好みに合わせた回生制動力(減速度)を発生させることができ、運転者の違和感をより低減することが可能な回生制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る回生制御装置は、駆動時にはトルクを発生するモータとして動作し、回生時には制動力を発生させるジェネレータとして動作するモータジェネレータと、車両の走行状況を取得する走行状況取得手段と、運転者の運転状態を取得する運転状態取得手段と、車両の走行状態及び運転者の運転状態に基づいて、モータジェネレータの動作を制御するコントロールユニットとを備え、該コントロールユニットが、減速時に、車両の走行状況に基づいて設定される目標減速度に応じて回生量を調節する回生制御部と、回生時に、運転者の運転状態に基づいて、減速度の過不足を判定する減速度過不足判定部と、減速度が不足していると判定された場合には、減速度の不足の程度に応じて目標減速度を増大した学習値を取得し、減速度が過剰であると判定された場合には、減速度の過剰の程度に応じて目標減速度を減少した学習値を取得する目標減速度学習部と、車両の走行状況が変化した後に、変化前の車両の走行状況において取得された目標減速度の学習値を反映する学習値反映部とを有することを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係る回生制御装置によれば、減速時に、車両の走行状況に基づいて設定される目標減速度に応じて回生量が調節され、回生時に、運転者の運転状態に基づいて、減速度の過不足が判定され、減速度が不足していると判定された場合には、減速度の不足の程度に応じて目標減速度を増大した学習値が取得され、減速度が過剰であると判定された場合には、減速度の過剰の程度に応じて目標減速度を減少した学習値が取得される。すなわち、走行状況ごとに、運転者が感じているであろう減速度(回生制動力)の過不足が判定され、該過不足の程度に応じて増大又は減少された目標減速度(学習値)が取得される。そのため、走行状況ごとに、減速度(回生制動力)を運転者の好みに近づけること(合わせること)ができ、運転者の違和感を低減することができる。また、車両の走行状況が変化した後に、変化前の車両の走行状況において取得された目標減速度の学習値が反映されるため、学習値が取得された走行状況が終了する前に(すなわち走行の途中で)減速度(回生制動力)が変化することがなく、運転者が違和感を覚えることを防止できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車両の走行状況に加えて、運転者の好みに合わせた回生制動力(減速度)を発生させることができ、運転者の違和感をより低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る回生制御装置、及び、該回生制御装置が適用されたハイブリッド車の構成を示すブロック図である。
図2】走行状況と目標減速度との関係を定めたマップ(ルックアップテーブル)の例を示す図であり、(a)は直進路で前方車両が無い状況における路面勾配と車速と目標減速度との関係を定めたマップを示し、(b)はワインディング路で前方車両が無い状況における路面勾配と車速と目標減速度との関係を定めたマップを示し、(c)は直進路で前方車両が有る状況における路面勾配と車速と目標減速度との関係を定めたマップを示し、(d)はワインディング路で前方車両が有る状況における路面勾配と車速と目標減速度との関係を定めたマップを示す。
図3】実施形態に係る回生制御装置による学習値取得処理の処理手順を示すフローチャートである。
図4】実施形態に係る回生制御装置による学習値取得処理に含まれる減速度(回生制動力)不足判定処理の処理手順を示すフローチャートである。
図5】実施形態に係る回生制御装置による学習値取得処理に含まれる減速度(回生制動力)過剰判定処理の処理手順を示すフローチャートである。
図6】実施形態に係る回生制御装置による学習値反映(更新)処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、特に区別する必要がある場合を除いて、図中、同一又は相当部分には同一符号を用いることとする。また、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。なお、本実施形態では、本発明に係る回生制御装置をハイブリッド車(HEV)に適用した場合を例にして説明する。
【0013】
まず、図1を用いて、実施形態に係る回生制御装置の構成について説明する。図1は、回生制御装置、及び、該回生制御装置が適用されたハイブリッド車1の構成を示すブロック図である。
【0014】
エンジン10は、どのような形式のものでもよいが、例えば水平対向型の筒内噴射式4気筒ガソリンエンジンである。エンジン10では、エアクリーナ(図示省略)から吸入された空気が、吸気管に設けられた電子制御式のスロットルバルブにより絞られ、インテークマニホールドを通り、エンジン10に形成された各気筒に吸入される。ここで、エアクリーナから吸入された空気の量はエアフローメータ83により検出される。さらに、スロットルバルブには、該スロットルバルブの開度を検出するスロットル開度センサが配設されている。各気筒には、燃料を噴射するインジェクタが取り付けられている。また、各気筒には混合気に点火する点火プラグ、及び、該点火プラグに高電圧を印加するイグナイタ内蔵型コイルが取り付けられている。エンジン10の各気筒では、吸入された空気とインジェクタによって噴射された燃料との混合気が点火プラグにより点火されて燃焼する。燃焼後の排気ガスは排気管を通して排出される。
【0015】
上述したエアフローメータ83、スロットル開度センサに加え、エンジン10のカムシャフト近傍には、エンジン10の気筒判別を行うためのカム角センサが取り付けられている。また、エンジン10のクランク軸15近傍には、クランク軸15の回転位置(回転速度)を検出するクランク角センサ84が取り付けられている。これらのセンサは、後述するエンジンコントロールユニット(以下「ECU」という)71に接続されている。また、ECU71には、エンジン10の冷却水の温度を検出する水温センサ等の各種センサも接続されている。
【0016】
エンジン10のクランク軸15には、クラッチ機能とトルク増幅機能を持つトルクコンバータ20、及び、前後進切替機構30を介して、エンジン10からの駆動力を変換して出力する無段変速機50が接続されている。
【0017】
トルクコンバータ20は、主として、ポンプインペラ21、タービンランナ22、及び、ステータ23から構成されている。クランク軸15に接続されたポンプインペラ21がオイルの流れを生み出し、ポンプインペラ21に対向して配置されたタービンランナ22がオイルを介してエンジン10の動力を受けてタービン軸25を駆動する。両者の間に位置するステータ23は、タービンランナ22からの排出流(戻り)を整流し、ポンプインペラ21に還元することでトルク増幅作用を発生させる。
【0018】
また、トルクコンバータ20は、入力と出力とを直結状態にするロックアップクラッチ24を有している。トルクコンバータ20は、ロックアップクラッチ24が締結されていないとき(非ロックアップ状態のとき)はエンジン10の駆動力をトルク増幅して無段変速機50に伝達し、ロックアップクラッチ24が締結されているとき(ロックアップ時)はエンジン10の駆動力を無段変速機50に直接伝達する。トルクコンバータ20を構成するタービンランナ22の回転数(タービン回転数)は、タービン回転センサ87により検出される。検出されたタービン回転数は、後述するトランスミッションコントロールユニット(以下「TCU」という)74に出力される。
【0019】
前後進切替機構30は、駆動輪の正転と逆転(車両の前進と後進)とを切り替えるものである。前後進切替機構30は、主として、ダブルピニオン式の遊星歯車列31、前進クラッチ32及び後進ブレーキ33を備えている。前後進切替機構30では、前進クラッチ32、及び、後進ブレーキ33それぞれの状態を制御することにより、エンジン駆動力の伝達経路を切り替えることが可能に構成されている。
【0020】
より具体的には、Dレンジ(前進走行レンジ)が選択された場合には、前進クラッチ32を締結して後進ブレーキ33を解放することにより、タービン軸25の回転がそのまま後述するプライマリ軸51に伝達され、車両を前進走行させることが可能となる。また、Rレンジ(後進走行レンジ)が選択された場合には、前進クラッチ32を解放して後進ブレーキ33を締結することにより、遊星歯車列31を作動させてプライマリ軸51の回転方向を逆転させることができ、車両を後進走行させることが可能となる。
【0021】
なお、Nレンジ又はPレンジが選択された場合には、前進クラッチ32及び後進ブレーキ33を解放することにより、タービン軸25とプライマリ軸51とは切り離され(エンジン駆動力の伝達が遮断され)、前後進切替機構30はプライマリ軸51に動力を伝達しないニュートラル状態となる。
【0022】
前進クラッチ32及び後進ブレーキ33の動作(締結、解放)は、後述するTCU74によって制御される。
【0023】
無段変速機50は、前後進切替機構30を介してトルクコンバータ20のタービン軸25と接続されるプライマリ軸51と、該プライマリ軸51と平行に配設されたセカンダリ軸55とを有している。
【0024】
プライマリ軸51には、プライマリプーリ52が設けられている。プライマリプーリ52は、プライマリ軸51に接合された固定シーブ52aと、該固定シーブ52aに対向して、プライマリ軸51の軸方向に摺動自在に装着された可動シーブ52bとを有し、それぞれのシーブ52a,52bのコーン面間隔、すなわちプーリ溝幅を変更できるように構成されている。一方、セカンダリ軸55には、セカンダリプーリ53が設けられている。セカンダリプーリ53は、セカンダリ軸55に接合された固定シーブ53aと、該固定シーブ53aに対向して、セカンダリ軸55の軸方向に摺動自在に装着された可動シーブ53bとを有し、プーリ溝幅を変更できるように構成されている。
【0025】
プライマリプーリ52とセカンダリプーリ53との間には駆動力を伝達するチェーン54が巻き掛けられている。プライマリプーリ52及びセカンダリプーリ53の溝幅を変化させて、各プーリ52、53に対するチェーン54の巻き掛け径の比率(プーリ比)を変化させることにより、変速比が無段階に変更される。ここで、チェーン54のプライマリプーリ52に対する巻き掛け径をRpとし、セカンダリプーリ53に対する巻き掛け径をRsとすると、変速比iは、i=Rs/Rpで表される。よって、変速比iは、プライマリプーリ回転数Npをセカンダリプーリ回転数Nsで除算する(i=Np/Ns)ことにより求められる。
【0026】
ここで、プライマリプーリ52の可動シーブ52bの背面側には油圧室52cが形成されている。一方、セカンダリプーリ53の可動シーブ53bの背面側には油圧室53cが形成されている。プライマリプーリ52、セカンダリプーリ53それぞれの溝幅は、プライマリプーリ52の油圧室52cに導入されるプライマリ油圧と、セカンダリプーリ53の油圧室53cに導入されるセカンダリ油圧とを調節することにより設定・変更される。
【0027】
無段変速機50のプライマリ軸51の他端には、モータジェネレータ(電動モータ)40がトルク伝達可能に接続されている。モータジェネレータ40は、例えば、三相交流タイプの交流同期モータである。なお、本実施形態では、モータジェネレータ40として、回転子に永久磁石を用い、固定子にコイルを用いるタイプのものを採用した。モータジェネレータ40は、駆動時(力行時)にはトルク(駆動力)を発生するモータとして動作(すなわち、車両を駆動する駆動力源として動作)し、回生時には、運動エネルギを電気エネルギに変換して、制動力を発生させるジェネレータとして動作する。なお、モータジェネレータ40では、回転子にコイルを用い、固定子に永久磁石を用いてもよい。また、モータジェネレータ40として、交流同期モータに代えて、例えば、交流誘導モータや直流モータ等を用いてもよい。
【0028】
無段変速機50には、無段変速機50や、前後進切替機構30、出力クラッチ61、トランスファクラッチ64、モータジェネレータ40等に用いられるオイルを圧送するために機械式オイルポンプ35が設けられている。機械式オイルポンプ35は、オイルパンに貯留されているオイルを吸入し、昇圧して、無段変速機50や、前後進切替機構30、出力クラッチ61、トランスファクラッチ64、モータジェネレータ40等に圧送する。機械式オイルポンプ35としては、例えば、トロコイドポンプやベーンポンプなどが用いられる。機械式オイルポンプ35の駆動軸は、例えば、チェーン等を介して、タービン軸25及びプライマリ軸51それぞれとトルク伝達可能に接続されている。すなわち、機械式オイルポンプ35は、エンジン10及びモータジェネレータ40それぞれによって駆動可能に構成されている。
【0029】
また、無段変速機50には、例えば、エンジン10が停止された低速走行時等、機械式オイルポンプ35の回転(吐出圧)が低下するときに、必要とされる油圧を確保するため、電動オイルポンプ36を備えている。電動オイルポンプ36は、電動モータにより駆動され、オイルパンに貯留されているオイルを昇圧して吐出する。電動オイルポンプ36の駆動は、TCU74によって制御される。
【0030】
無段変速機50のセカンダリ軸55は、一対のギヤ(リダクションドライブギヤ、リダクションドリブンギヤ)からなるリダクションギヤ(セカンダリリダクションギヤ)59を介して、カウンタ軸60につながれており、無段変速機50で変換された駆動力は、リダクションギヤ59を介して、カウンタ軸60に伝達される。カウンタ軸60には、出力クラッチ61、及び、パーキング機構を構成するパーキングギヤ62が取り付けられている。パーキング機構は、Pレンジが選択されたときに、車輪が回転しないようにロックする。パーキング機構は、パーキングポールがパーキングギヤ62に噛み込むことによりパーキングギヤ62をロックして無段変速機50をパーキング状態にする。
【0031】
出力クラッチ61は、無段変速機50のセカンダリ軸55と駆動輪との間に設けられ、無段変速機50(エンジン10及びモータジェネレータ40)と駆動輪との間のトルク伝達を断続するものであり、例えば、停車中に、エンジン10でモータジェネレータ40を回して発電(Pレンジ発電)する際に、エンジン10やモータジェネレータ40と車輪側とを切り離すために、解放される。よって、出力クラッチ61は、それ以外のときは(例えば走行中は)締結される。なお、出力クラッチ61の制御(締結、解放)はTCU74によって行われる。
【0032】
カウンタ軸60は、一対のギヤ(カウンタドライブギヤ、カウンタドリブンギヤ)からなるカウンタギヤ63を介して、フロントドライブシャフト66につながれている。カウンタ軸60に伝達された駆動力は、カウンタギヤ63、及び、フロントドライブシャフト66を介してフロントデファレンシャル(以下「フロントデフ」ともいう)67に伝達される。フロントデフ67は、例えば、ベベルギヤ式の差動装置である。フロントデフ67からの駆動力は、左前輪ドライブシャフトを介して左前輪に伝達されるとともに、右前輪ドライブシャフトを介して右前輪に伝達される。
【0033】
一方、上述したカウンタ軸60上のカウンタギヤ63(カウンタドライブギヤ)の後段には、リヤデファレンシャル(以下「リヤデフ」ともいう)69に伝達される駆動力を調節するトランスファクラッチ64が介装されている。トランスファクラッチ64は、4輪の駆動状態(例えば前輪のスリップ状態等)やエンジントルクなどに応じて締結力(すなわち後輪へのトルク分配率)が制御される。よって、カウンタ軸60に伝達された駆動力は、トランスファクラッチ64の締結力に応じて分配され、後輪側にも伝達される。
【0034】
より具体的には、カウンタ軸60の後端は、一対のギヤ(トランスファドライブギヤ、トランスファドリブンギヤ)からなるトランスファギヤ65を介して、車両後方へ延在するプロペラシャフト68とつながれている。よって、カウンタ軸60に伝達され、トランスファクラッチ64によって調節(分配)された駆動力は、トランスファギヤ65(トランスファドリブンギヤ)から、プロペラシャフト68を介してリヤデフ69に伝達される。
【0035】
リヤデフ69には左後輪ドライブシャフト及び右後輪ドライブシャフトが接続されている。リヤデフ69からの駆動力は、左後輪ドライブシャフトを介して左後輪に伝達されるとともに、右後輪ドライブシャフトを介して右後輪に伝達される。
【0036】
上述したように構成されているため、ハイブリッド車1では、エンジン10とモータジェネレータ40の2つの動力で車輪(車両)を駆動することができる。また、モータジェネレータ40を用いて減速回生や発電を行うことができる。また、上述したように駆動力伝達系が構成されることにより、例えば、シフトレバー78がDレンジに操作された場合には、前進クラッチ32が係合され、エンジン駆動力(及びモータジェネレータ40の駆動力)が無段変速機50のプライマリ軸51に入力される。無段変速機50により変換された駆動力は、セカンダリ軸55から出力され、リダクションギヤ59、カウンタ軸60、カウンタギヤ63を介してフロントドライブシャフト66に伝達される。そして、フロントデフ67によって駆動力が左右に分配され、左右の前輪に伝達される。
【0037】
一方、カウンタ軸60に伝達された駆動力の一部は、トランスファクラッチ64、及び、トランスファギヤ65を介してプロペラシャフト68に伝達される。ここで、トランスファクラッチ64に所定のクラッチトルクが付与されると、そのクラッチトルクに応じて分配された駆動力がプロペラシャフト68に出力される。そして、リヤデフ69を介して駆動力が後輪にも伝達される。
【0038】
また、Rレンジが選択された場合には、前進クラッチ32が解放され、後進ブレーキ33が締結されることにより、プライマリ軸51の回転方向が逆転される。その後のトルクフローは、上述したDレンジの場合と同様である。また、Pレンジが選択された場合には、前進クラッチ32及び後進ブレーキ33が共に解放され、タービン軸25とプライマリ軸51とが切り離される(エンジン駆動力の伝達が遮断される)。
【0039】
車両の駆動力源であるエンジン10、モータジェネレータ40、及び、無段変速機50は、ハイブリッド車コントロールユニット(以下「HEV-CU」という)70、ECU71、パワーコントロールユニット(以下「PCU」という)72、TCU74、ビークルダイナミクスコントロールユニット(以下「VDCU」という)76、運転支援装置77等を有して構成される制御システムによって総合的に制御される。
【0040】
HEV-CU70、ECU71、PCU72、TCU74、VDCU76、運転支援装置77それぞれは、演算を行うマイクロプロセッサ、該マイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するEEPROM、演算結果などの各種データを記憶するRAM、その記憶内容が保持されるバックアップRAM、及び、入出力I/F等を有して構成されている。
【0041】
HEV-CU70、ECU71、PCU72、TCU74、VDCU76、運転支援装置77それぞれは、CAN(Controller Area Network)100を介して、相互に通信可能に接続されている。
【0042】
HEV-CU70には、例えば、アクセルペダルの踏み込み量すなわちアクセルペダル操作量を検出するアクセルペダルセンサ81、モータジェネレータ40の回転位置(回転数)を検出するレゾルバ82などを含む各種センサが接続されている。
【0043】
また、HEV-CU70は、CAN100を介して、ECU71から、例えば、エンジン回転数等の各種情報を受信する。同様に、HEV-CU70は、CAN100を介して、TCU74から、プライマリプーリ回転数、セカンダリプーリ回転数、シフトレバー78やパドルスイッチの操作情報(シフト情報)等を受信する。また、HEV-CU70は、CAN100を介して、VDCU76から、ブレーキスイッチ89やブレーキ液圧等の制動情報(ブレーキ操作情報)や、車輪速(車速)、路面の勾配情報、横加速度、操舵角等受信する。さらに、HEV-CU70は、CAN100を介して、運転支援措置77から、先行車両(前方車両)等の情報を受信する。なお、HEV-CU70は、例えば、カーナビゲーションシステムから、自車両が走行している道路(走行路)の道路情報(例えば、平坦路、降坂路、登坂路、ワインディング路など)を取得してもよい。
【0044】
HEV-CU70は、取得したこれらの各種情報に基づいて、エンジン10、モータジェネレータ40、及び、無段変速機50の駆動を総合的に制御する。HEV-CU70は、例えば、アクセルペダル操作量(運転者の要求駆動力)、エンジン回転数、モータ回転数、プライマリプーリ回転数、セカンダリプーリ回転数、車両の運転状態(車速や操舵角等)、高電圧バッテリ73の充電率(SOC)などの各種情報に基づいて、エンジン10の要求出力、モータジェネレータ40のトルク指令値、及び、無段変速機50の目標変速比を求める。すなわち、HEV-CU70は、車両の走行状態及び運転者の運転状態に基づいて、モータジェネレータ40の動作(力行/回生)を制御する(詳細は後述する)。そして、HEV-CU70は、求めた要求出力、トルク指令値、目標変速比などをCAN100を介して出力する。
【0045】
ECU71では、上述したカム角センサの出力から気筒が判別され、クランク角センサ84の出力によって検出されたクランク軸15の回転位置の変化からエンジン回転数が求められる。また、ECU71では、上述した各種センサから入力される検出信号に基づいて、吸入空気量、アクセルペダル操作量、混合気の空燃比、及び、水温等の各種情報が取得される。そして、ECU71は、取得したこれらの各種情報、及び、HEV-CU70からの要求出力に基づいて、燃料噴射量や点火時期、並びに、電子制御式スロットルバルブ等の各種デバイスを制御することによりエンジン10を制御する。
【0046】
また、ECU71は、例えば、エアフローメータ83により検出された吸入空気量やエンジン回転数等に基づいて、エンジン10のエンジントルク(出力トルク)を算出する。そして、ECU71は、CAN100を介して、エンジン回転数(回転速度)、エンジントルク等の情報をTCU74やHEV-CU70等に送信する。
【0047】
PCU72は、HEV-CU70からの上記トルク指令値に基づいて、インバータ72aを介して、モータジェネレータ40を駆動する。ここで、インバータ72aは、高電圧バッテリ73の直流電力を三相交流の電力に変換してモータジェネレータ40に供給する。一方、インバータ72aは、回生時などに、モータジェネレータ40で発電した交流電圧を直流電圧に変換して高電圧バッテリ73を充電する。
【0048】
運転支援装置77は、外部状況(例えば車両前方の走行状況)を認識して前方障害物に対する警報や自動制動(自動ブレーキ)を行う機能(自動制動機能/プリクラッシュブレーキ機能)を有している。運転支援装置77は、特許請求の範囲に記載の走行状況取得手段として機能する。
【0049】
より具体的には、運転支援装置77は、まず、例えば一対のカメラからなるステレオカメラ77aで撮像した画像を処理して外部の走行状況(例えば先行車両や障害物等)を認識する。次に、運転支援措置77は、認識結果(先行車両や障害物の情報)や車両の走行状況等に基づいて、検出した障害物等と接触する可能性を判定する。そして、運転支援装置77は、障害物等と接触する可能性があると判定した場合には、車両を制動(減速・停止)させるために、自動制動(自動ブレーキ)要求情報をCAN100を介してVDCU76、HEV-CU70、及び、ECU71に送信する。なお、運転支援装置77は、認識した走行状況から先行車両を検出し、先行車両に対して追従制御や警報制御を行うことにより運転者の運転操作を支援する機能なども有している。運転支援措置77は、検出した先行車両(前方車両)等の情報を、CAN100を介して、HEV-CU70等に送信する。
【0050】
VDCU76には、ブレーキペダルが踏まれているか否かを検出するブレーキスイッチ89や、ブレーキアクチュエータのマスタシリンダ圧力(ブレーキ液圧)を検出するブレーキ液圧センサ90が接続されている。また、VDCU76には、車両の各車輪の回転速度(車速)を検出する車輪速センサ91や、ピニオンシャフトの回転角を検出することにより、操舵輪である前輪の転舵角(すなわちステアリングホイールの操舵角)を検出する操舵角センサ94も接続されている。さらに、VDCU76には、車両に作用する前後方向の加速度を検出する前後加速度センサ92や、車両に作用する横方向の加速度を検出する横加速度センサ93等も接続されている。
【0051】
ここで、例えば、前後加速度センサ92を用いて検出した車両の前後加速度に0点学習値が加算された補正後加速度センサ値と、車速の微分値との差に基づいて、路面勾配を検出することができる。また、エンジン10の出力トルクから求められる駆動力と、車速の微分値から求められる車両の加速度と、予め設定されている車両重量とに基づいて、路面勾配を推定することもできる。ブレーキスイッチ89、ブレーキ液圧センサ90、車輪速センサ91、前後加速度センサ92、横加速度センサ93、操舵角センサ94は、特許請求の範囲に記載の運転状態取得手段として機能する。
【0052】
VDCU76は、ブレーキペダルの操作量(踏み込み量)に応じてブレーキアクチュエータを駆動して車両を制動するとともに、車両挙動を各種センサ(例えば車輪速センサ91、操舵角センサ94、横加速度センサ93、ヨーレートセンサ等)により検知し、自動加圧によるブレーキ制御とエンジン10等のトルク制御により、横滑りを抑制し、旋回時の車両安定性を確保する。また、VDCU76は、急制動や滑りやすい路面で制動した場合に生じる車輪ロックを防止し、各車輪のスリップ率を適正に保つことで、制動時の方向安定性と操舵性を確保するとともに、最適な制動力を得るアンチロックブレーキ機能(ABS機能)、及び、滑りやすい路面や過大な駆動力によって生ずる駆動輪の空転を抑えて、発進時や加速時の車両安定性と加速性を確保するトラクションコントロール機能(TCS機能)を兼ね備えている。
【0053】
VDCU76は、検出したブレーキスイッチ89やブレーキ液圧等の制動情報(ブレーキ操作情報)や、車輪速(車速)、路面の勾配情報、横加速度、操舵角等を、CAN100を介してTCU74、HEV-CU70、及び、ECU71等に送信する。一方、VDCU76は、CAN100を介して、上述した自動制動(自動ブレーキ)要求情報等を受信する。VDCU76は、自動制動要求情報を受信した場合には、自動的にブレーキアクチュエータを駆動して車両を制動する。
【0054】
TCU74には、プライマリプーリ52の回転数を検出するプライマリプーリ回転センサ85や、セカンダリプーリ53の回転数(車速に対応)を検出するセカンダリプーリ回転センサ86などが接続されている。また、TCU74には、タービン回転センサ87、出力クラッチ回転センサ88等も接続されている。
【0055】
また、TCU74は、CAN100を介して、ECU71からエンジントルク等の情報を受信し、HEV-CU70からモータトルクやアクセルペダル操作量等の情報を受信し、VDCU76から車速やブレーキ操作情報等を受信する。一方、TCU74は、CAN100を介して、プライマリプーリ回転数、セカンダリプーリ回転数、後述するシフトレバー78やパドルスイッチの操作状態(シフト情報)等をHEV-CU70やECU71等に送信する。
【0056】
TCU74は、取得したこれらの各種情報(車両の運転状態)、及び、HEV-CU70からの目標変速比に基づいて無段変速機50の変速比を無段階に変更する。
【0057】
その際に、TCU74は、バルブボディ75を構成するソレノイドバルブ(電磁弁)の駆動を制御することにより、プライマリプーリ52の油圧室52c及びセカンダリプーリ53の油圧室53cに供給する油圧を調節して、無段変速機50の変速比を変更する。
【0058】
またTCU74は、バルブボディ75を構成するリニアソレノイド及びコントロールバルブの駆動を制御することにより、前進クラッチ32又は後進ブレーキ33に供給/排出するオイル量(油圧)を調節して、前進クラッチ32又は後進ブレーキ33の締結/解放を行う。なお、オイルを前進クラッチ32側に供給(又は排出)するか、又は後進ブレーキ33側に供給(又は排出)するかは、シフトレバー78に連動して動くように構成されたマニュアルバルブによって切替えられる。
【0059】
ここで、例えば、車両のフロア(センターコンソール)等には、運転者による、無段変速機50の動作状態(レンジ)を択一的に切り替える操作を受付けるシフトレバー(セレクトレバー)78が設けられている。シフトレバー78には、該シフトレバー78と連動して動くように接続され、該シフトレバー78の選択位置を検出するレンジスイッチ79が取り付けられている。レンジスイッチ79は、TCU74に接続されており、検出されたシフトレバー78の選択位置が、TCU74に読み込まれる。シフトレバー78では、ドライブ「D」レンジ、マニュアル「M」レンジの他、パーキング「P」レンジ、リバース「R」レンジ、ニュートラル「N」レンジなどを選択的に切り替えることができる。なお、シフトレバー78に代えて、スイッチタイプのセレクト機構を用いてもよい。
【0060】
また、ステアリングホイール(図示省略)の後側には、プラス(+)パドルスイッチ及びマイナス(-)パドルスイッチが設けられている(以下、プラスパドルスイッチ及びマイナスパドルスイッチを総称して「パドルスイッチ」ということもある)。プラスパドルスイッチは手動でアップシフトする際に用いられ、マイナスパドルスイッチは手動でダウンシフトする際に用いられる。プラスパドルスイッチ及びマイナスパドルスイッチも、TCU74に接続されており、パドルスイッチから出力されたスイッチ信号はTCU74に読み込まれる。シフトレバー78、及び、パドルスイッチは、特許請求の範囲に記載の運転状態取得手段として機能する。
【0061】
ここで、無段変速機50は、シフトレバー78、及び、パドルスイッチを操作することにより選択的に切り替えることができる3つの変速モード、すなわち、自動変速モード、手動変速モード(以下「マニュアルモード」ともいう)、及び、一時的手動変速モード(以下「テンポラリマニュアルモード」ともいう)を備えている。より具体的には、自動変速モードは、シフトレバー78を「D」レンジに操作することにより選択され、予め設定された変速特性に従って自動的に変速するモードである。手動変速モードは、シフトレバー78を「M」レンジに操作することにより選択され、運転者の変速操作(パドルスイッチの操作)に応じて変速するモードである。また、テンポラリマニュアルモードは、自動変速モードが選択されている状態(すなわち「D」レンジが選択されている状態)において、運転者による変速操作(パドルスイッチの操作)が受付けられた場合に、所定の解除条件が成立するまで、一時的にマニュアルモードに移行するモードである。
【0062】
ここで、シフトレバー78が操作されてDレンジ(前進走行レンジ)が選択された場合には、マニュアルバルブが動き、前進クラッチ32の油圧室にオイルが供給されるとともに、後進ブレーキ33の油圧室からオイルが排出される。これにより、前進クラッチ32が締結状態、後進ブレーキ33が解放状態となり、車両は前進可能となる。一方、シフトレバー78が操作されてRレンジ(後進走行レンジ)が選択された場合には、マニュアルバルブが動き、後進ブレーキ33の油圧室にオイルが供給されるとともに、前進クラッチ32の油圧室からオイルが排出される。これにより、後進ブレーキ33が締結状態、前進クラッチ32が解放状態となり、車両は後進可能となる。
【0063】
なお、シフトレバー78が操作されてNレンジ又はPレンジが選択された場合には、前進クラッチ32の油圧室、及び後進ブレーキ33の油圧室それぞれからオイルが排出される。これにより、前進クラッチ32及び後進ブレーキ33それぞれが解放状態となり(エンジン駆動力の伝達が遮断され)、無段変速機50はニュートラル状態となる。
【0064】
また、TCU74は、上述したバルブボディ75を構成するリニアソレノイド及びコントロールバルブの駆動を制御することにより、出力クラッチ61に供給/排出するオイル量(油圧)を調節して、出力クラッチ61の締結、解放を制御する。
【0065】
さらに、TCU74は、上述したバルブボディ75を構成するソレノイドバルブの駆動を制御することにより、トランスファクラッチ64に供給する油圧を調節(すなわち締結力を調節)して、後輪へ伝達される駆動力の分配率を調節する。
【0066】
ここで、特に、HEV-CU70は、車両の走行状況に加えて、運転者の好みに合わせた回生制動力(減速度)を発生させることができ、運転者の違和感をより低減する機能を有している。そのため、HEV-CU70は、回生制御部701と、減速度過不足判定部702と、目標減速度学習部703と、学習値反映部704とを機能的に有している。HEV-CU70では、EEPROM等に記憶されているプログラムがマイクロプロセッサによって実行されることにより、回生制御部701、減速度過不足判定部702、目標減速度学習部703、及び、学習値反映部704それぞれの機能が実現される。HEV-CU70は、特許請求の範囲に記載のコントロールユニットとして機能する。
【0067】
回生制御部701は、例えば、減速時に、車両の走行状況に基づいて設定される目標減速度に応じて回生量(回生制動力)を調節する。ここで、車両の走行状況は、例えば、前方車両の有無、ワインディング路か否か、路面勾配、及び、車速を含む。なお、上述したように、前方車両の有無は運転支援装置77から取得され、ワインディング路か否かは操舵角や横加速度等の変化から判断され(又はカーナビゲーションシステムから取得してもよい)、路面勾配は前後加速度等から求められ、車速はVDCU76(車輪速センサ91)から取得される。
【0068】
ここで、目標減速度の設定の仕方について説明する。例えば、HEV-CU70のEEPROMには、走行状況(前方車両の有無、ワインディング路か否か、路面勾配、車速)と目標減速度との関係を定めたマップ(目標減速度マップ)が記憶されており、走行状況に基づいてこの目標減速度マップが検索されることにより目標減速度が求められる。
【0069】
ここで、目標減速度マップの例を図2(a)~(d)に示す。図2(a)は直進路で前方車両が無い状況における路面勾配と車速と目標減速度との関係を定めた目標減速度マップを示す。図2(b)はワインディング路で前方車両が無い状況における路面勾配と車速と目標減速度との関係を定めた目標減速度マップを示す。図2(c)は直進路で前方車両が有る状況における路面勾配と車速と目標減速度との関係を定めた目標減速度マップを示す。図2(d)はワインディング路で前方車両が有る状況における路面勾配と車速と目標減速度との関係を定めた目標減速度マップを示す。
【0070】
よって、直進路で前方車両が無い状況では、図2(a)の目標減速度マップが用いられ、ワインディング路で前方車両が無い状況では、図2(b)の目標減速度マップが用いられ、直進路で前方車両が有る状況では、図2(c)の目標減速度マップが用いられ、ワインディング路で前方車両が有る状況では、図2(d)の目標減速度マップが用いられる。
【0071】
図2(a)~(d)において、横軸は路面勾配(deg)であり、縦軸は車速(km/h)である。各目標減速度マップでは、路面勾配の程度(下り大、下り中、下り小、ゼロ(平坦)、上り小、上り中、上り大)と車速(高、中、低)との組み合わせ(格子点)毎に目標減速度度(m/s)が与えられている。各目標減速度マップでは、登坂を正、平坦を0、降坂を負として、路面の勾配が小さくなるほど減速度(回生制動力)が大きくなるように、また、車速が高くなるほど減速度(回生制動力)が大きくなるように設定されている。
【0072】
減速度過不足判定部702は、回生時(回生制動時)に(すなわち、目標減速度に応じて回生量(回生制動力)が制御されているときに)、運転者の運転状態(操作状態)に基づいて、減速度の過不足を判定する。
【0073】
より具体的には、減速度過不足判定部702は、取得された運転者のアクセル操作(開度)に基づいて、減速度(回生制動力)が過剰であるか否かを判定する。例えば、減速度過不足判定部702は、アクセル開度が所定値以上である場合には、減速度(回生制動力)が過剰であると運転者が感じていると判定する。
【0074】
一方、減速度過不足判定部702は、取得された運転者のブレーキ操作(踏込み)、及び、シフト(シフトダウン)操作に基づいて、減速度(回生制動力)が不足しているか否かを判定する。例えば、減速度過不足判定部702は、所定時間ブレーキペダルが踏まれており(操作されており)かつブレーキ液圧が所定値以上である場合、又は、手動によるダウンシフト操作が行われた場合に、減速度(回生制動力)が不足していると運転者が感じていると判定する。なお、減速度過不足判定部702による判定結果は、目標減速度学習部703に出力される。
【0075】
目標減速度学習部703は、減速度が不足していると判定された場合には、減速度(回生制動力)の不足の程度(例えば減速度の変化量やブレーキ液圧値等)に応じて(車両の走行状況に対応する)目標減速度を増大した学習値を取得する。
【0076】
一方、目標減速度学習部703は、減速度が過剰であると判定された場合には、減速度(回生制動力)の過剰の程度(例えばアクセル開度等)に応じて(車両の走行状況に対応する)目標減速度を減少した学習値を取得する。なお、目標減速度学習部703により取得された学習値(目標減速度を増大又は減少した値)は、学習値反映部704に出力される。
【0077】
学習値反映部704は、車両の走行状況が変化した後に、変化前の車両の走行状況において取得された目標減速度の学習値を反映する(使用を許可する)。
【0078】
例えば、学習値反映部704は、登降坂路走行において目標減速度の学習値が取得された場合には、その後、勾配の程度の異なる登降坂路走行、平坦路走行、又は、停車状態が所定時間以上継続したときに、目標減速度の学習値を反映する。
【0079】
学習値反映部704は、取得された目標減速度の学習値を反映する場合、例えばイグニッションスイッチがオフされたときに、EEPROM等に記憶されている車両の走行状況と目標減速度との関係を定めた目標減速度マップにおける該当する格子点のデータを書き換える(学習値を上書きする)。
【0080】
次に、図3図6を併せて参照しつつ、回生制御装置の動作について説明する。図3は、回生制御装置による学習値取得処理の処理手順を示すフローチャートである。図4は、学習値取得処理に含まれる減速度(回生制動力)不足判定処理の処理手順を示すフローチャートである。図5は、学習値取得処理に含まれる減速度(回生制動力)過剰判定処理の処理手順を示すフローチャートである。図6は、回生制御装置による学習値反映(更新)処理の処理手順を示すフローチャートである。本処理は、主としてHEV-CU70において、所定のタイミングで繰り返して実行される。
【0081】
まず、図3図5を併せて参照しつつ、回生制御装置による学習値取得処理について説明する。
【0082】
図3(学習値取得処理)のステップS102では、車両の走行状況(前方車両の有無、ワインディング路か否か、路面勾配、及び、車速)が取得される。
【0083】
続いて、ステップS104では、車両の走行状況に基づいて設定される(目標減速度マップが検索されて取得される)目標減速度に応じて回生量(回生制動力)が調節される。
【0084】
次に、ステップS106では、運転者の運転状態(操作状態)に基づいて、運転者が、減速度(回生制動力)が不足していると感じているか否かについての判断が行われる。より具体的には、図4に示される減速度(回生制動力)不足判定処理の処理手順に従って当該判断が行われる。
【0085】
図4(減速度(回生制動力)不足判定処理)のステップS200では、ブレーキスイッチ89がオンされたか否か(ブレーキペダルが踏まれたか否か)についての判断が行われる。ここで、ブレーキペダルがオンされていない場合には、ステップS208に処理が移行する。一方、ブレーキスイッチ89がオンされたときには、ステップS202に処理が移行する。
【0086】
ステップS202では、ブレーキスイッチ89がオンされてからの時間(オン時間)が所定時間内であるか否かについての判断が行われる。ここで、ブレーキスイッチ89がオンされてからの時間(オン時間)が所定時間内でない場合には、ステップS208に処理が移行する。一方、ブレーキスイッチ89がオンされてからの時間(オン時間)が所定時間内であるときには、ステップS204処理が移行する。
【0087】
ステップS204では、ブレーキ液圧が所定値(所定圧)以上であるか否かについての判断が行われる。ここで、ブレーキ液圧が所定値(所定圧)未満である場合には、ステップS208に処理が移行する。一方、ブレーキ液圧が所定値(所定圧)以上であるときには、ステップS206に処理が移行する。
【0088】
ステップS206では、減速度の変化量が所定値以上であるか否かについての判断が行われる。ここで、減速度の変化量が所定値未満である場合には、ステップS208に処理が移行する。一方、減速度の変化量が所定値以上であるときには、ステップS212において、運転者が減速度(回生制動力)の不足を感じていると判定され、その後、図3ステップS108に処理が移行する。
【0089】
ステップS208では、手動によるダウンシフト操作(シフトレバー操作又はマイナスパドルスイッチ操作)が行われたか否かについての判断が行われる。ここで、ダウンシフト操作が行われた場合には、ステップS210に処理が移行する。一方、ダウンシフト操作が行われていないときには、ステップS214において、運転者が減速度(回生制動力)の不足を感じていないと判定され、その後、図3のステップS110に処理が移行する。
【0090】
ステップS210では、減速度の変化量が所定値以上であるか否かについての判断が行われる。ここで、減速度の変化量が所定値未満である場合には、ステップS214において、運転者が減速度(回生制動力)の不足を感じていないと判定され、その後、図3のステップS110に処理が移行する。一方、減速度の変化量が所定値以上であるときには、ステップS212において、運転者が減速度(回生制動力)の不足を感じていると判定され、その後、図3のステップS108に処理が移行する。
【0091】
図3に戻り、説明を続ける。運転者が減速度(回生制動力)の不足を感じていると判定された場合、ステップS108では、減速度(回生制動力)の不足の程度(例えば、減速度の変化量やブレーキ液圧値等)に応じて、目標減速度が増大された学習値が取得される。その後、本処理から一旦抜ける。
【0092】
一方、運転者が減速度(回生制動力)の不足を感じていないと判定された場合、ステップS110では、運転者の運転状態(操作状態)に基づいて、運転者が、減速度(回生制動力)が過剰であると感じているか否かについての判断が行われる。より具体的には、図5に示される減速度(回生制動力)過剰判定処理の処理手順に従って当該判断が行われる。
【0093】
図5(減速度(回生制動力)過剰判定処理)のステップS300では、アクセル開度(アクセルペダルの踏み込み量)が所定値(所定開度)以上であるか否かについての判断が行われる。ここで、アクセル開度が所定値以上である場合には、ステップS302において、運転者が、減速度(回生制動力)が過剰であると感じていると判定され、その後、図3のステップS112に処理が移行する。一方、アクセル開度が所定値未満であるときには、ステップS304において、運転者が、減速度(回生制動力)が過剰であると感じていないと判定され、その後、図3のステップS114に処理が移行する。
【0094】
図3に戻り、説明を続ける。運転者が、減速度(回生制動力)が過剰であると感じていると判定された場合、ステップS112では、減速度(回生制動力)の過剰の程度(例えばアクセル開度等)に応じて、目標減速度が減少された学習値が取得される。その後、本処理から一旦抜ける。
【0095】
一方、運転者が、減速度(回生制動力)が過剰であると感じていないと判定された場合、ステップS114では、走行状況と目標減速度との関係を定めた目標減速度マップが保持される。その後、本処理から一旦抜ける。
【0096】
次に、図6を参照しつつ、回生制御装置による学習値反映(更新)処理について説明する。なお、ここでは、ある勾配の登降坂路(例えば「下り中」の降坂路)で目標減速度の学習値が取得された場合を例にして説明する。ステップS400では、走行している路面が勾配の程度の異なる登降坂路(例えば「下り中」の降坂路以外)であるか否かについての判断が行われる。ここで、走行している路面が勾配の程度の異なる登降坂路ではない場合には、ステップS404に処理が移行する。一方、走行している路面が勾配の程度の異なる登降坂路である場合には、ステップS402に処理が移行する。
【0097】
ステップS402では、勾配の程度の異なる登降坂路になってから所定時間以上経過したか否かについての判断が行われる。ここで、勾配の程度の異なる登降坂路になってから所定時間以上経過していない場合には、ステップS400に処理が移行し、上述したステップS400の処理が再度実行される。一方、勾配の程度の異なる登降坂路になってから所定時間以上経過したときには、ステップS412に処理が移行する。
【0098】
ステップS404では、走行している路面が平坦路であるか否かについての判断が行われる。ここで、走行している路面が平坦路ではない場合には、ステップS408に処理が移行する。一方、走行している路面が平坦路であるときには、ステップS406に処理が移行する。
【0099】
ステップS406では、平坦路になってから所定時間以上経過したか否かについての判断が行われる。ここで、平坦路になってから所定時間以上経過していない場合には、ステップS404に処理が移行し、上述したステップS404の処理が再度実行される。一方、平坦路になってから所定時間以上経過したときには、ステップS412に処理が移行する。
【0100】
ステップS408では、停車しているか否かについての判断が行われる。ここで、停車している場合には、ステップS410に処理が移行する。一方、停車していないときには、ステップS414に処理が移行する。
【0101】
ステップS410では、停車してから所定時間以上経過したか否かについての判断が行われる。ここで、停車してから所定時間以上経過していない場合には、ステップS408に処理が移行し、上述したステップS408の処理が再度実行される。一方、平坦路になってから所定時間以上経過したときには、ステップS412に処理が移行する。
【0102】
車両の走行状況が変化した場合、ステップS412では、変化前の車両の走行状況(このケースではある勾配の登降坂路(例えば「下り中」の降坂路))において取得された目標減速度の学習値が反映される(次のある勾配の登降坂路(例えば「下り中」の降坂路)での使用が許可される)。その後、ステップS414に処理が移行する。
【0103】
ステップS414では、イグニッションスイッチがオフされたか否かについての判断が行われる。ここで、イグニッションスイッチがオフされていない場合には、ステップS400に処理が移行し、上述したステップS400以降の処理が繰り返して実行される。一方、イグニッションスイッチがオフされたときには、ステップS416に処理が移行する。
【0104】
ステップS416では、EEPROMに記憶されている、車両の走行状況と目標減速度との関係を定めた目標減速度マップにおける該当する格子点のデータが書き換えられる(学習値が上書きされる)。その後、本処理から一旦抜ける。
【0105】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によれば、減速時に、車両の走行状況に基づいて設定される目標減速度に応じて回生量(回生制動力)が調節され、回生時(回生制動時)に、運転者の運転状態(操作状態)に基づいて、減速度の過不足が判定され、減速度が不足していると判定された場合には、減速度の不足の程度に応じて目標減速度を増大した学習値が取得され、減速度が過剰であると判定された場合には、減速度の過剰の程度に応じて目標減速度を減少した学習値が取得される。すなわち、走行状況ごとに、運転者が感じているであろう減速度(回生制動力)の過不足が判定され、該過不足の程度に応じて増大又は減少された目標減速度(学習値)が取得される。そのため、走行状況ごとに、減速度(回生制動力)を運転者の好みに近づけること(合わせること)ができ、運転者の違和感を低減することができる。また、車両の走行状況が変化した後に、変化前の車両の走行状況において取得された目標減速度の学習値が反映されるため、学習値が取得された走行状況が終了する前に(すなわち走行の途中で)減速度(回生制動力)がステップ状に変化することを防止でき、運転者が違和感を覚えることを防止できる。
【0106】
その結果、本実施形態によれば、車両の走行状況に加えて、運転者の好みに合わせた回生制動力(減速度)を発生させることができ、運転者の違和感をより低減することが可能となる。
【0107】
本実施形態によれば、例えば、登降坂路走行において目標減速度の学習値が取得された場合には、その後、勾配の程度の異なる登降坂路走行、平坦路走行、又は、停車状態が所定時間以上継続したときに、目標減速度の学習値が反映される。そのため、登降坂路で取得された目標減速度の学習値が、その登降坂路走行が終了した後に反映される。よって、その登降坂路(学習値を取得した登降坂路)走行の途中で減速度(回生量)がステップ状に変化することを防止でき、運転者に違和感を与えることを防止できる。
【0108】
本実施形態によれば、取得された目標減速度の学習値が反映される場合に、車両の走行状況(前方車両の有無、ワインディング路か否か、路面勾配、車速)と目標減速度との関係を定めた目標減速度マップにおける該当する格子点のデータが書き換えられる(学習値が上書きされる)。そのため、車両の走行状況毎に、すなわち、前方車両の有無、ワインディング路か否か、路面勾配、及び、車速毎に、目標減速度の学習値を反映(記憶)することができる。
【0109】
本実施形態によれば、取得された運転者のアクセル操作(開度)に基づいて、減速度(回生制動力)が過剰であるか否かが判定される。そのため、運転者が減速度(回生制動力)を過剰と感じているか否か、また、その過剰と感じている程度を的確に把握(判定)することができる。
【0110】
本実施形態によれば、取得された運転者のブレーキ操作(踏込み)、及び、シフトダウン操作に基づいて、減速度(回生制動力)が不足しているか否かが判定される。そのため、運転者が減速度(回生制動力)を不足と感じているか否か、また、その不足と感じている程度を的確に把握(判定)することができる。
【0111】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、本発明を1モータ式のパラレルハイブリッド車(HEV)に適用した場合を例にして説明したが、本発明は、他の形式(例えば、2モータ式やシリーズハイブリッド等)のハイブリッド車にも適用することができる。また、電気自動車(BEV)等にも適用することができる。
【0112】
上記実施形態では、HEV-CU70、ECU71、TCU74、VDCU76等をCAN100を介して相互に通信可能に接続する構成(システム構成)をしたが、システム構成は、上記実施形態の構成に限られることなく、例えば、エンジン10を制御するECU71と、無段変速機50を制御するTCU74とを一体のハードウェアで構成してもよい。
【0113】
上記実施形態では、走行状況の分類に、前方車両の有無、ワインディング路か否か、路面勾配、車速を用いたが、走行状況の分類は、上記実施形態には限られない。例えば、これらに代えて、又は加えて、一般道か高速道か、天候関連情報(外気温、雨滴、ワイパの作動など)、路面摩擦係数、車線幅などを用いてもよい。
【0114】
上記実施形態では、減速度(回生制動力)が不足しているか否かを、ブレーキスイッチ89、ブレーキ液圧、及び、減速度の変化を用いて判定したが、ブレーキスイッチ89のみを用いて判定してもよいし、ブレーキスイッチ89とブレーキ液圧を用いて判定してもよいし、ブレーキスイッチ89と減速度の変化を用いて判定してもよい。同様に、上記実施形態では、減速度(回生制動力)が不足しているか否かを、マイナスパドルスイッチの操作(ダウンシフト操作)と減速度の変化を用いて判定したが、マイナスパドルスイッチの操作(ダウンシフト操作)のみを用いて判定してもよい。
【0115】
上記実施形態では、減速度(回生制動力)が過剰であるか否かを、アクセル開度を用いて判定したが、アクセル開速度と減速度の変化とを用いて判定してもよいし、また、プラスパドルスイッチの操作(アップシフト操作)を用いて判定してもよい。
【0116】
上記実施形態では、勾配の程度が異なる状況が継続した場合に目標減速度の学習値が反映させる例を述べたが、勾配が大きく異なる、あるいは勾配の方向が異なる場合に反映させても良い。
【0117】
また、上記実施形態では、前方車両の有無を運転支援装置77(ステレオカメラ77a)で検出したが、例えば、レーダやレーザ等を利用したセンサを用いて検出してもよい。
【符号の説明】
【0118】
1 ハイブリッド車
10 エンジン
15 クランク軸
20 トルクコンバータ
21 ポンプインペラ
22 タービンランナ
23 ステータ
24 ロックアップクラッチ
25 タービン軸
30 前後進切替機構
31 遊星歯車列
32 前進クラッチ
33 後進ブレーキ
35 機械式オイルポンプ
36 電動オイルポンプ
40 モータジェネレータ
50 無段変速機
51 プライマリ軸
52 プライマリプーリ
53 セカンダリプーリ
54 チェーン
55 セカンダリ軸
59 リダクションギヤ(セカンダリリダクションギヤ)
60 カウンタ軸
61 出力クラッチ
62 パーキングギヤ
63 カウンタギヤ
64 トランスファクラッチ
65 トランスファギヤ
66 フロントドライブシャフト
67 フロントデファレンシャル
68 プロペラシャフト
69 リヤデファレンシャル
70 HEV-CU(コントロールユニット)
701 回生制御部
702 減速度過不足判定部
703 目標減速度学習部
704 学習値反映部
71 ECU
72 PCU
73 高電圧バッテリ
74 TCU
75 バルブボディ
76 VDCU
77 運転支援装置
78 シフトレバー
79 レンジスイッチ
81 アクセルペダルセンサ
82 レゾルバ
83 エアフローメータ
84 クランク角センサ
85 プライマリプーリ回転センサ
86 セカンダリプーリ回転センサ
87 タービン回転センサ
88 出力クラッチ回転センサ
89 ブレーキスイッチ
90 ブレーキ液圧センサ
91 車輪速センサ
92 前後加速度センサ
93 横加速度センサ
94 操舵角センサ
100 CAN
図1
図2
図3
図4
図5
図6