(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162692
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】データ通信システム及びスレーブ装置
(51)【国際特許分類】
H04L 12/43 20060101AFI20241114BHJP
H04L 7/00 20060101ALI20241114BHJP
G06F 13/42 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
H04L12/43
H04L7/00 930
G06F13/42 350Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078495
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原山 国広
【テーマコード(参考)】
5K031
5K047
【Fターム(参考)】
5K031CA08
5K031DA01
5K031DA16
5K047BB13
5K047CC06
5K047DD03
5K047GG03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】マスター装置に接続されるスレーブ装置の数に拘わらず、高速通信するデータ通信システム及びスレーブ装置を提供する。
【解決手段】データ通信システム100において、マスター装置10は、カスケード接続されている第1~第Nのスレーブ装置20_1~20_Nに夫々対応した第1~第Nの書込データ片を含む書込データ信号と共にクロック信号を第1のスレーブ装置に送信する。スレーブ装置の各々は、送信されたクロック信号を受けて増幅し、次段のスレーブ装置に送信するバッファ及び情報データ片を読み出す情報取得回路を含む。スレーブ装置は、書込データ信号に含まれる第1~第Nの書込データ片の系列を入力されたクロック信号のタイミングでシフトしつつ取り込むと共に、夫々の情報取得回路から読み出した読出データ片の系列を含む読出データ信号をクロック信号群のタイミングでシフトしつつ第1のスレーブ装置を介してマスター装置に送信する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスター装置と、前記マスター装置に接続されている第1のスレーブ装置と、前記第1のスレーブ装置にカスケード接続されている第2~第N(Nは2以上の整数)のスレーブ装置と、を含むデータ通信システムであって、
前記マスター装置及び前記第1~第Nのスレーブ装置における互いに隣接する装置間がクロック信号を伝送する為の配線、書込データ信号を伝送する為の配線、及び読出データ信号を伝送する為の配線の少なくとも3系統の配線で接続されていることを特徴とするデータ通信システム。
【請求項2】
前記クロック信号は、前記マスター装置から前記第1~第Nのスレーブ装置に順次送信され、前記第1~第Nのスレーブ装置の各々において前記書込データ信号及び前記読出データ信号の送信又は受信のタイミングを担い、
前記マスター装置は、前記第1~第Nのスレーブ装置に夫々取り込ませる第1~第Nの書込データ片の系列を含む信号を前記書込データ信号として所定周期内に前記第1のスレーブ装置に送信する書込動作を行い、
前記第1~第Nのスレーブ装置は、前段の装置から受信した前記クロック信号に基づき、前記前段の装置から受信した前記書込データ信号から、自身に対応する書込データ片を内部へ取込み、それを省いた書込データ片の系列を含む信号を前記書込データ信号として後段の装置に送信するとともに、
前記後段の装置から受信した前記読出データ信号に、自身の内部で取得した読出データ片を加えた読出データ片の系列を含む信号を前記読出データ信号として前記前段の装置へ送信し、
更に前記マスター装置は、前記第1~第Nのスレーブ装置の各々で取得した前記第1~第Nの読出データ片の系列を含む前記読出データ信号を前記所定周期内に前記第1のスレーブ装置から受信する読出動作を行うことを特徴とする請求項1に記載のデータ通信システム。
【請求項3】
前記マスター装置が前記第1のスレーブ装置へ送信する前記書込データ信号は、前記第1~第Nのスレーブ装置に夫々取り込まれる前記第1~第Nの書込データ片を第N~第1の書込データ片の順に並べた信号であり、
前記マスター装置が前記第1のスレーブ装置から受信する前記読出データ信号は、前記第1~第Nのスレーブ装置で夫々取得された前記第1~第Nの読出データ片を第1~第Nの読出データ片の順に並べた信号であることを特徴とする請求項2に記載のデータ通信システム。
【請求項4】
前記マスター装置は、前記所定周期内において、前記書込動作及び前記読出動作のうちの一方の動作が完了してから他方の動作を行うように前記第1~第Nのスレーブ装置を制御することを特徴とする請求項2に記載のデータ通信システム。
【請求項5】
前記マスター装置は、
前記書込データ信号及び前記読出データ信号のうちで前記所定周期内において先に伝送される方の信号の先頭部に識別コードを付加することを特徴とする請求項4に記載のデータ通信システム。
【請求項6】
前記識別コードは、前記第1~第Nのスレーブ装置のカスケードの段数を示すデータとされ、
前記第1~第Nのスレーブ装置の各々は、前記前段の装置から受信した前記識別コードにて示される前記カスケードの段数を示すデータから1段分のデータを差し引いた新たなカスケードの段数を示す識別コードを後段の装置に送信することを特徴とする請求項5に記載のデータ通信システム。
【請求項7】
前記マスター装置は、前記書込データ信号の送信及び前記読出データ信号の受信が行われない通信停止期間中は前記クロック信号の送信を停止することを特徴とする請求項2に記載のデータ通信システム。
【請求項8】
カスケード接続されている前記第1~第Nのスレーブ装置の各々は、
前記前段の装置から送信された前記クロック信号を受信する第1の入力端子と、
前記第1の入力端子で受けた前記クロック信号を内部伝送して前記後段の装置へ送信する第1の出力端子と、
前記前段の装置から送信された前記書込データ信号を受信する第2の入力端子と、
前記第2の入力端子で受信した前記書込データ信号を、前記第1の入力端子で受信した前記クロック信号のタイミングで前記後段の装置へ送信する第2の出力端子と、
前記後段の装置から送信された前記読出データ信号を受信する第3の入力端子と、
前記第3の入力端子で受信した前記読出データ信号を、前記第1の入力端子で受信した前記クロック信号のタイミングで前記前段の装置へ送信する第3の出力端子と、を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のデータ通信システム。
【請求項9】
前記第1~第Nのスレーブ装置のうちで前記カスケード接続の段数が最大となる第Nのスレーブ装置は、前記第1の出力端子及び前記第2の出力端子はオープン状態とされ、前記第3の入力端子は所定の固定レベルが供給されることを特徴とする請求項8に記載のデータ通信システム。
【請求項10】
前記マスター装置及び前記第1~第Nのスレーブ装置における互いに隣接する装置間には、前記書込動作又は前記読出動作を指示するチップセレクト信号を伝送する配線が接続されていることを特徴とする請求項2に記載のデータ通信システム。
【請求項11】
前記マスター装置及び前記第1~第Nのスレーブ装置間の通信が、シリアルペリフェラルインタフェース規格に基づくシリアル信号の形態で行われることを特徴とする請求項1に記載のデータ通信システム。
【請求項12】
第1~第Nのスレーブ装置の各々は同一構成からなり、夫々が独立した第1~Nの半導体チップに形成されていることを特徴とする請求項1に記載のデータ通信システム。
【請求項13】
前記マスター装置及び前記第1~Nのスレーブ装置が表面に並置されており、前記3系統の配線が形成されている第1の導電層を有する基板を含むことを特徴とする請求項1に記載のデータ通信システム。
【請求項14】
書込データ信号を受ける為の第1の入力端子と、
読出データ信号を受ける為の第2の入力端子と、
クロック信号を受ける為の第3の入力端子と、
第1~第3の出力端子と、
前記第1の入力端子で受けた前記書込データ信号を、前記第3の入力端子で受けた前記クロック信号のタイミングで前記第1の出力端子から出力する書込データ送受信回路と、
前記第2の入力端子で受けた前記読出データ信号を、前記第3の入力端子で受けた前記クロック信号のタイミングで前記第2の出力端子から出力する読出データ送受信回路と、を含み、
前記第3の入力端子で受けた前記クロック信号は内部伝送されて前記第3の出力端子から出力されることを特徴とするスレーブ装置。
【請求項15】
前記書込データ送受信回路は、所定周期内に、前記第1の入力端子で受けた前記書込データ信号に含まれる少なくとも1の書込データ片からなる書込データ片の系列中から自身に対応した書込データ片を内部に取込み、それを省いた書込データの系列を含む書込データ信号を、前記第3の入力端子で受けた前記クロック信号のタイミングで前記第1の出力端子から出力する書込動作を行い、
前記読出データ送受信回路は、前記周期内に、前記第2の入力端子で受けた前記読出データ信号に自身の内部で取得した情報データ片を読出データ片として含ませた読出データ信号を、前記第3の入力端子で受けた前記クロック信号のタイミングで前記第2の出力端子から出力する読出動作を行うことを特徴とする請求項14に記載のスレーブ装置。
【請求項16】
前記所定周期内において、前記書込動作及び前記読出動作のうちの一方の動作が完了してから他方の動作に切り替えるように前記書込データ送受信回路及び前記読出データ送受信回路を制御する制御回路を含むことを特徴とする請求項15に記載のスレーブ装置。
【請求項17】
前記書込データ信号及び前記読出データ信号のうちで前記所定周期内において先に伝送される方の信号の先頭部に識別コードが付加されていることを特徴とする請求項16に記載のスレーブ装置。
【請求項18】
前記情報データ片を取得する情報取得回路と、
前記自身に対応した書込データ片を保持する第1のレジスタと、
前記情報データ片を前記読出データ片として保持する第2のレジスタと、
前記第1のレジスタに保持されている前記書込データ片に基づき負荷を駆動する駆動信号を出力する駆動回路と、
前記第1及び第2のレジスタ、前記駆動回路、前記書込データ送受信回路及び前記読出データ送受信回路を制御する制御回路と、を有することを特徴とする請求項15に記載のスレーブ装置。
【請求項19】
前記書込動作又は前記読出動作を指示するチップセレクト信号を受け、前記チップセレクト信号が前記書込動作を示す場合に前記書込データ送受信回路が前記書込動作を行う一方、前記チップセレクト信号が前記読出動作を示す場合には前記読出データ送受信回路が前記読出動作を行うことを特徴とする請求項15に記載のスレーブ装置。
【請求項20】
前記第3の入力端子で受けた前記クロック信号を増幅して前記第3の出力端子から出力するバッファを含むことを特徴とする請求項14に記載のスレーブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスター装置及び複数のスレーブ装置間でデータ通信を行うデータ通信システム及びスレーブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)やレーザダイオード(Laser Diode:LD)等の発光素子を、画素や液晶表示パネルのバックライトとして使用する表示装置が製品化されている。
【0003】
また、上記したLEDやLD等からなる複数の照明ユニット(スレーブ装置)を1つのコントローラ(マスター装置)で個別に制御できるようにした照明装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。かかる照明装置では、コントローラ及び複数の照明ユニット間が通信ケーブルを介してデイジーチェーン状に接続されている。コントローラは、各照明ユニット毎に点灯色や明るさ指定する照明データ片(パケット)の系列を、1の照明ユニットに送信する。各照明ユニットは、通信回路を備えており、照明データ片の系列を受信すると、当該照明データ片の系列中から自身に対応した照明データを抽出し、その照明データに基づき発光素子の制御を行う。
【0004】
また、このような通信システムとして、シリアルバス規格の一種であり、以下の4系統の信号線を用いてマスター装置及び複数のスレーブ装置間の通信を行うSPI(シリアルペリフェラルインタフェース)を採用したものが知られている。
【0005】
CLK :シリアルクロック
MISO:マスターインスレーブアウト
MOSI:マスターアウトスレーブイン
CS :チップセレクト
また、SPIには、マスター装置及び複数のスレーブ装置間を、夫々に設けた上記4系統の信号線各々の入力又は出力を担う4系統の端子を介してデイジーチェーン接続するデイジーチェーン方式が示されている。
【0006】
図1において、マスター装置(MCU)には複数のスレーブ装置(SLV)がカスケード接続されている。
【0007】
マスター装置は、出力端子CS、出力端子CLK、出力端子MOSI、及び入力端子MISOを有する。スレーブ装置の各々は、入力端子CS、入力端子CLK、入力端子MOSI及び出力端子MISOを有する。
【0008】
ここで、マスター装置の出力端子CSと、スレーブ装置各々の入力端子CSとが単一の配線を介して接続されており、マスター装置の出力端子CLKと、スレーブ装置各々の入力端子CLKとが単一の配線を介して接続されている。
【0009】
また、カスケード接続されているスレーブ装置のうちの第1段目に接続されているスレーブ装置の入力端子MOSIと、マスター装置の出力端子MOSIとが接続されている。また、カスケード接続されているスレーブ装置のうちの最後段に接続されているスレーブ装置の出力端子MISOと、マスター装置の入力端子MISOとが接続されている。
【0010】
更に、互いに接続されている一対のスレーブ装置間において、前段のスレーブ装置の出力端子MISOと後段のスレーブ装置の入力端子MOSIとが接続されている。
【0011】
ここで、マスター装置は、チップセレクト信号を自身の出力端子CSからスレーブ装置各々の入力端子CSに供給すると共に、シリアルクロック信号を自身の出力端子CLKからスレーブ装置の各々の入力端子CLKに供給する。
【0012】
マスター装置は、スレーブ装置の各々に対応したデータ片の系列を自身の出力端子MOSIから第1のスレーブ装置の入力端子MOSIに送信する。この際、第1~最後段のスレーブ装置の各々は、入力端子MOSI端子でデータ片の系列を受けると、そこから自身に対応したデータ片を取り込み、そのデータ片に従った動作状態に設定される。更に、この際、スレーブ装置の各々は、受信したデータ片の系列を自身の出力端子MISO端子から次段のスレーブ装置の入力端子MOSIに送信する。これにより、第1~最後段のスレーブ装置の順に、各スレーブ装置には、自身の状態を設定する為のデータ片が供給される。
【0013】
また、スレーブ装置の各々は、自身が取得した例えばセンサデータ等をシリアル信号化したものを自身の出力端子MISO端子を介して次段のスレーブ装置の入力端子MOSI端子に送信する。これにより、スレーブ装置の各々が取得したセンサデータ片の系列からなるシリアル信号が最後段のスレーブ装置の入力端子MOSIに供給される。この際、最後段のスレーブ装置は、入力端子MOSI端子で受けたシリアル信号中に自身が取得したセンサデータ片を付加したものを、自身の出力端子MISOからマスター装置に供給する。これにより、マスター装置は、第1~最後段のスレーブ装置が夫々取得したセンサデータを収集することができる。
【0014】
上記したSPIのデイジーチェーンモードによれば、スレーブ装置の数に拘わらず、4系統の配線を介して、複数のスレーブ装置の制御、及び各スレーブ装置からのデータ取得を行うことかできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上記したSPIのデイジーチェーンモードに沿った構成では、スレーブ装置の数が増えると、その分だけシリアルクロック信号(CLK)を伝送する単一の配線に接続される負荷容量が大きくなり、シリアルクロック信号に波形鈍りが生じる。よって、高速通信を実現する為にはマスター装置に接続するスレーブ装置の数に制限が生じるという問題があった。
【0017】
そこで、本願発明では、マスター装置に接続されるスレーブ装置の数に拘わらず、高速通信が可能となるデータ通信システム及びスレーブ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係る通信システムは、マスター装置と、前記マスター装置に接続されている第1のスレーブ装置と、前記第1のスレーブ装置にカスケード接続されている第2~第N(Nは2以上の整数)のスレーブ装置と、を含むデータ通信システムであって、前記マスター装置及び前記第1~第Nのスレーブ装置における互いに隣接する装置間がクロック信号を伝送する為の配線、書込データ信号を伝送する為の配線、及び読出データ信号を伝送する為の配線の少なくとも3系統の配線で接続されている。
【0019】
本発明に係るスレーブ装置は、書込データ信号を受ける為の第1の入力端子と、読出データ信号を受ける為の第2の入力端子と、クロック信号を受ける為の第3の入力端子と、第1~第3の出力端子と、前記第1の入力端子で受けた前記書込データ信号から自身に対応した書込データ片を取り込むと共に、前記書込データ信号から前記自身に対応した書込データ片を省いた新たな書込データ信号を前記第1の出力端子から出力する書込データ送受信回路と、前記第2の入力端子で受けた前記読出データ信号に、自身から読み出した読出データ片を付加した新たな読出データ信号を前記第2の出力端子から出力する読出データ送受信回路と、を含み、前記第3の入力端子で受けた前記クロック信号は内部伝送されて前記第3の出力端子から出力される。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るデータ通信システムでは、マスター装置が、カスケード接続されている第1~第N(Nは2以上の整数)のスレーブ装置に夫々対応した第1~第Nの書込データ片を含む書込データ信号と共にクロック信号を第1のスレーブ装置に送信する。第1~第Nのスレーブ装置の各々は、送信されたクロック信号を受け、これを内部伝送して次段のスレーブ装置に送信する。第1~第Nのスレーブ装置の各々は、書込データ信号に含まれる第1~第Nの書込データ片の系列を自身が受けたクロック信号のタイミングでシフトしつつ取り込むと共に、自身から読み出した読出データ片の系列を含む読出データ信号を自身が受けたクロック信号のタイミングでシフトしつつ第1のスレーブ装置を介してマスター装置に送信する。
【0021】
かかるデータ通信システムによれば、クロック信号を伝送する配線に接続される負荷は単一のスレーブ装置だけとなるので、カスケード接続されるスレーブ装置の段数に拘わらず、クロック信号の波形鈍りを所定未満に抑えることが可能となる。
【0022】
尚、このデータ通信システムによると、マスター装置から出力されたクロック信号、つまり第1のスレーブ装置が受けるクロック信号に対して、最後段の第Nのスレーブ装置が受けるクロック信号は遅延する。
【0023】
しかしながら、本データ通信システムでは、マスター装置及び第1~第Nのスレーブ装置間の通信は、マスター装置から出力されたクロック信号に応じたマスター装置及び第1のスレーブ装置間の通信と、互いに隣接するスレーブ装置間における一方のスレーブ装置から出力されたクロック信号に応じた通信と、によって成り立っている。
【0024】
よって、マスター装置から出力されたクロック信号に対して、最後段の第Nのスレーブ装置が受けるクロック信号に、スレーブ装置のカスケード段数に対応した遅延が生じていてもクロック信号に同期した通信を行うことができる。
【0025】
従って、本発明によれば、マスター装置に接続されるスレーブ装置の段数に拘わらず、高速通信を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】従来のSPIディジーチェーン方式による接続形態を示すブロック図である。
【
図2】本発明に係るデータ通信システムとしての一例を示すデータ通信システム100の構成を示すブロック図である。
【
図3】データ通信システム100における通信フォーマット及びタイミングの仕様の一例を示すタイムチャートである。
【
図4】データ通信システム100における通信フォーマット及びタイミングの仕様の他の一例を示すタイムチャートである。
【
図5】
図4の仕様に沿ってマスター装置10及びスレーブ装置20_1~20_Nの各々間で伝送される信号フォーマットを示すタイムチャートである。
【
図6】スレーブ装置20_1~20_N各々の構成の一例を示すブロック図である。
【
図7】カウントデコーダCD1(CD2)の内部構成を示すブロック図である。
【
図8】本発明に係るデータ通信システムの他の一例としてのデータ通信システム200の構成を示すブロック図である。
【
図9】
図4の仕様に沿ってマスター装置10A及びスレーブ装置20A_1~20A_Nの各々間で伝送される信号フォーマットを示すタイムチャートである。
【
図10】スレーブ装置20A_1~20A_Nの構成の一例を示すブロック図である。
【
図11】マスター装置10Aを含む半導体チップC10、スレーブ装置20A_1~20A_Nを夫々個別に含む半導体チップC20_1~20_Nが実装されている基板50を上面側から眺めた上面図である。
【
図12】半導体チップC10及びC20_1~20_Nが実装されており、基板内に電極層EDを有する基板50Aを側面側から眺めた側面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0027】
図2は、本発明に係るデータ通信システムとしての一例を示すデータ通信システム100の構成を示すブロック図である。
【0028】
データ通信システム100は、SPI(シリアルペリフェラルインタフェース)規格に基づくシリアル信号の形態で通信を行うマスター装置(MST)10及びスレーブ装置(SLV)20_1~20_N(Nは2以上の整数)を有する。
【0029】
マスター装置10は、MISO(マスターインスレーブアウト)を担う入力端子MISOと、MOSI(マスターアウトスレーブイン)を担う出力端子MOSIと、シリアルクロック信号を送出する出力端子CLKと、を含む。
【0030】
マスター装置10は、スレーブ装置20_1~20_Nの各々に個別に書き込ませる、夫々が例えば8ビットの書込データ片の系列をシリアル信号の形態で表す書込データ信号SI[1]を出力端子MOSIからスレーブ装置20_1に送信する。また、マスター装置10は、スレーブ装置20_1~20_Nの各々から個別に読み出された、夫々が例えば8ビットの読出データ片の系列をシリアル信号の形態で表す読出データ信号SO[1]を入力端子MISOで受ける。更に、マスター装置10は、シリアルクロック信号としてのクロック信号CLK[1]を出力端子CLKからスレーブ装置20_1に送信する。
【0031】
スレーブ装置20_1~20_Nの各々は、上記した書込データ信号に含まれる自身に対応した書込データ片に基づく状態に設定されて動作し、且つ上記した読出データ片となるデータ片の取得機能を有する機能回路を備えている。
【0032】
スレーブ装置20_1~20_Nは、マスター装置10に対して、
図2に示すような第1~第Nの順に直列の形態で接続、つまりカスケード接続されている。
【0033】
スレーブ装置20_1~20_Nの各々は、クロック信号CLKを受ける入力端子CLK、及びこの入力端子CLKで受けたクロック信号CLKをバッファを介して次段のスレーブ装置の入力端子CLKに供給する出力端子CLKOを有する。尚、第N段(最後段)目のスレーブ装置20_Nの出力端子CLKOは解放状態となる。
【0034】
また、スレーブ装置20_1~20_Nの各々は、前段の装置から送出された読出データ信号SOを受ける為の入力端子SDI、及び、自身の読出データ片を含む読出データ信号SOを出力する為の出力端子MISOを有する。尚、第N段目のスレーブ装置20_Nの入力端子SDIは論理レベル0又は1の固定状態となる。
【0035】
ここで、スレーブ装置20_1~20_Nのうちで第1段(初段)のスレーブ装置20_1を除くスレーブ装置の各々は、自身の出力端子MISOから出力した読出データ信号SOを前段のスレーブ装置の入力端子SDIに供給する。尚、第1段のスレーブ装置20_1は、自身の出力端子MISOから出力した読出データ信号SO[1]をマスター装置10の入力端子MISOに供給する。
【0036】
更に、スレーブ装置20_1~20_Nの各々は、書込データ信号SIを受ける為の入力端子MOSI、及び自身の書込データ片を省いた書込データ信号SIを次段のスレーブ装置の入力端子MOSIに出力する為の出力端子SDOを有する。尚、第N段目のスレーブ装置20_Nの出力端子SDOは解放状態となる。ここで、第1段目のスレーブ装置20_1は、マスター装置10から送出された書込データ信号SI[1]を自身の入力端子MOSIで受ける。
【0037】
よって、
図2に示すようにカスケード接続されているスレーブ装置20_1~20_Nのうちのk(kは2以上の整数)番目のスレーブ装置20_kは、前段のスレーブ装置20_(k-1)から出力された書込データ信号SI[k]を入力端子MOSIで受け、これを上記した入力端子CLKで受けたクロック信号CLK[k]のタイミングで取り込む。そして、スレーブ装置20_kは、書込データ信号SI[k]から自身の書込データ片を省いた書込データ信号SI[k+1]をクロック信号CLK[k]のタイミングで、出力端子SDOから次段のスレーブ装置20_(k+1)に出力する。また、スレーブ装置20_kは、上記したクロック信号CLK[k]をバッファを介して、クロック信号CLK[k+1]として出力端子CLKOから次段のスレーブ装置20_(k+1)に出力する。
【0038】
更に、k番目のスレーブ装置20_kは、次段のスレーブ装置20_(k+1)から出力された読出データ信号SO[k+1]を入力端子SDIで受け、これをクロック信号CLK[k]のタイミングで取り込む。そして、k番目のスレーブ装置20_kは、自身から読み出された読出データ片を読出データ信号SO[k+1]に付加した読出データ信号SO[k]を出力端子MISOから前段のスレーブ装置20_(k-1)に出力する。
【0039】
図3は、データ通信システム100における通信フォーマット及びタイミングの仕様の一例を示すタイムチャートである。
【0040】
図3に示す一例では、マスター装置10とスレーブ装置20_1~20_Nとの間の通信は、所定周期のフレーム毎に行われる。
【0041】
すなわち、マスター装置10は、各フレーム毎に、スレーブ装置20_1~20_Nの各々に個別に書き込ませる、夫々が例えば8ビットからなる第1~第Nの書込データ片を、
第N、第(N-1)、第(N-2)、・・・、第3、第2、第1
なる順に並べた書込データ片の系列を含む書込データ信号SI[1]を出力端子MOSIからスレーブ装置20_1に出力する。
【0042】
これにより、例えば第Nの書込データ片が、スレーブ装置20_1からスレーブ装置20_Nに向けてシフトしつつ第N段目のスレーブ装置20_Nに到達し、各スレーブ装置20に取り込まれる。すなわち、第k(kは、1、2、3、・・・、N)の書込データ片の各々が、スレーブ装置20_1からスレーブ装置20_Nに向けてシフトしつつ第k段目のスレーブ装置20_kの各々に到達し、当該スレーブ装置20_kが自身に対応した第kの書込データ片を取り込む。
【0043】
更に、
図3に示す一例では、所定周期のフレーム毎に、スレーブ装置20_1~20_Nの各々から読み出された、夫々が例えば4ビットからなる第1~第Nの読出データ片を、
第1、第2、第3、・・・、第(N-2)、第(N-1)、第N
なる順に並べた読出データ片の系列を含む読出データ信号SO[1]をスレーブ装置20_1が供給開始時点(
図3に示すt0、t1、t2)にてマスター装置10に出力する。マスター装置10は、当該読出データ信号SO[1]を入力端子MISOで受ける。
【0044】
このように、データ通信システム100によれば、マスター装置10が、スレーブ装置20_1~20_Nへの書込データ信号の送信と、スレーブ装置20_1~20_Nから読み出された読出データ信号の受信と、を同時に行うことが可能となる。
【0045】
尚、マスター装置10は、スレーブ装置20_1~20_Nとの間で通信を実施していない期間中は、
図3に示すように、スレーブ装置20_1へのクロック信号CLKの供給を停止しても良い。ただし、マスター装置10は、スレーブ装置20_1~20_Nとの間で通信を開始する場合には、
図3に示すように通信を開始する時点t0よりも手前の時点からクロック信号CLKの供給を開始する。
【0046】
また、書込データ片及び読出データ片各々のビット数は仕様に沿って適宜個別に設定することが可能である。
【0047】
また、
図3に示す一例では、所定周期のフレーム毎に、そのフレーム内でマスター装置10が出力する第N~第1の書込データ片の系列と、スレーブ装置20_1~20_Nが出力する第1~第Nの読出データ片の系列とが同一のタイミングで開始されている。しかしながら、両者の出力開始タイミングは、必ずしも同一である必要はなく、夫々独立したタイミングで出力を開始させても良い。
【0048】
図4は、かかる点に鑑みて為された、データ通信システム100の通信フォーマット及びタイミングの仕様の他の一例を示すタイムチャートである。
【0049】
図4に示す一例では、
図3と同様に、マスター装置10とスレーブ装置20_1~20_Nとの間の通信は、所定周期のフレーム毎に行われる。
【0050】
この際、マスター装置10は、各フレーム毎に、
図3に示すものと同様な第N~第1の書込データ片の系列からなる書込データ信号SI[1]を出力端子MOSIからスレーブ装置20_1に出力する。更に、スレーブ装置20_1は、各フレーム毎に、
図3に示すものと同様な第1~第Nの読出データ片の系列からなる読出データ信号SO[1]をマスター装置10に出力する。マスター装置10は、当該読出データ信号SO[1]を入力端子MISOで受ける。
【0051】
ただし、
図4に示す一例では、各フレーム内において、第N~第1の書込データ片が夫々スレーブ装置20_1~20_Nの各々に書き込み完了した時点(tr0、tr1)で、スレーブ装置20_1が第1~第Nの読出データ片の系列の出力を開始している。
【0052】
つまり、
図4に示す仕様では、マスター装置10は、各フレーム内において、スレーブ装置20_1~20_Nに対して、第N~第1の書込データ片の書込みが完了してから、第1~第Nの読出データ片の読み出しを行うように制御する。尚、マスター装置10は、各フレーム内において、スレーブ装置20_1~20_Nに対して、第1~第Nの読出データ片の読み出しが完了してから、第N~第1の書込データ片の書込み動作に移行するようにしても良い。要するに、マスター装置10は、各フレーム内において、スレーブ装置20_1~20_Nに対して、上記した読出動作及び書込動作のうちの一方が完了してから他方を実行するように制御しても良い。
【0053】
図5は、
図4の仕様に沿ってマスター装置10及びスレーブ装置20_1~20_Nの各々間で伝送される、所定周期のフレーム内での信号フォーマットを示すタイムチャートである。
【0054】
尚、スレーブ装置20_1~20_Nの各々は、クロック信号CLKが論理レベル1を維持している状態から論理レベル0に遷移した時点を書込データ片の書き込み開始タイミングとする。
【0055】
先ず、マスター装置10は、スレーブ装置20_N~20_1の各々に個別に書き込む書込データd(N)、d(N-1)、・・・、d(3)、d(2)及びd(1)の系列の先頭に、識別コードHDを付加したものを書込データ信号SI[1]として、第1段目のスレーブ装置20_1に出力する。尚、マスター装置10は、当該マスター装置10に接続されているスレーブ装置のカスケード数である「N」を示す識別コードHDを、
図5に示すように書込データ信号SI[1]の先頭に付加する。
【0056】
スレーブ装置20_1~20_Nの各々は、前段の装置から受信した書込データ信号SIの先頭の識別コードHDに示されるカスケード数を取り込む。ここで、スレーブ装置20_1~20_Nの各々は、マスター装置10がクロック信号CLKの供給を開始した時点から、そのクロックパルス数が、識別コードHDで示されるカスケード数に、書込データ片のビット数(例えば8ビット)を乗算した数と等しくなった時点をデータ書込み完了タイミングとする。スレーブ装置20_1~20_Nの各々は、当該データ書込み完了タイミングで、前段の装置から受信した書込データ信号SIを取り込むことで、当該書込データ信号SIに含まれる書込データ片の系列中から自身に対応した書込データ片のみを取り込む。
【0057】
そして、スレーブ装置20_1~20_Nの各々は、前段の装置から受信した書込データ信号SI中から自身に対応した書込データ片を省いた書込データ片の系列を得て、その先頭部に新たな識別コードHDを付加した書込データ信号SIを次段のスレーブ装置20に出力する。つまり、スレーブ装置20_1~20_Nの各々は、前段の装置から受信した書込データ信号SIに含まれる識別コードHDにて示されるカスケード数から1を減算した新たなカスケード数を示す識別コードHDを、自身に対応した書込データ片を省いた書込データ片の系列の先頭に付加するのである。
【0058】
ここで、スレーブ装置20_1~20_Nに対して、全ての書込データd(N)、d(N-1)、・・・、d(3)、d(2)及びd(1)の書込みが完了すると、スレーブ装置20_1~20_Nの各々は、自身が取得したデータ片を夫々読出データ片として読み出す。例えば、スレーブ装置20_1は、自身が取得したデータ片を読出データb(1)として読出し、スレーブ装置20_2は、自身が取得したデータ片を読出データb(2)として読出し、スレーブ装置20_Nは、自身が取得したデータ片を読出データb(N)として読出す。
【0059】
そして、スレーブ装置20_k(kは、1、2、3、・・・、N)は、次段のスレーブ装置20_(k+1)から受けた読出データ信号SO[k+1]に含まれる読出データ片の系列の先頭に自身の読出データb(k)を付加した読出データ信号SO[k]を、クロック信号CLK[k]のタイミングで前段の装置に出力するという読出動作を開始する。
【0060】
これにより、第1段目のスレーブ装置20_1は、スレーブ装置20_1~20_Nが夫々個別に取得したデータ片である読出データb(1)~b(N)の系列を含む読出データ信号SO[1]をマスター装置10に出力する。
【0061】
マスター装置10は、かかる読出データ信号SO[1]をクロック信号CLK[1]のタイミングで取り込むことで、スレーブ装置20_1~20_Nが夫々個別に取得したデータ片を取得する。
【0062】
この際、スレーブ装置20_1~20_Nの各々は、上記したデータ書込み完了時点から、クロック信号CLKのクロックパルス数が、書込み時に取得したカスケード数に読出データ片のビット数を乗算した数と等しくなった時点で、読出データ信号SOの出力動作を停止する。これにより、第1段(初段)のスレーブ装置20_1が、第2~第N段(最後段)のスレーブ装置20_2~20_N各々の読出データb2~b(N)の全てをマスター装置10に出力し終えた時点で自動的にその出力動作が停止する。
【0063】
このように、
図5に示す動作では、書込データ信号SIの先頭にカスケード数を示す識別コードHDを付加し、このカスケード数によって自身のデータ書込みタイミングを取得している。
【0064】
これにより、SPI規格で示されているチップセレクト信号CSを用いることなく、スレーブ装置20_2~20_Nの各々を個別に動作させることができるので、当該チップセレクト信号CSが不要となる分だけ、データ通信システム全体の面積を縮小化することが可能となる。
【0065】
尚、
図5では、スレーブ装置20_1~20_Nに対して、書込データ信号SIの書込みが完了してから、読出データ信号SOの読み出しを行う場合を例にとってその信号フォーマットを示しているが、読出データ信号SOの読み出しが完了してから、書込データ信号SIの書込みに移行する場合にも同様に適用可能である。この際、読出データ信号SOに含まれる読出データの系列の先頭にカスケード数を示す識別コードHDを付加する。要するに、各フレーム内において、書込動作及び読出動作を連続して実行するにあたり、最初に実行する方のデータ系列の先頭に、スレーブ装置20_1~20_Nのカスケード数を示す識別コードHDを付加すれば良いのである。
【0066】
また、スレーブ装置20_1~20_Nは、夫々が同一の回路構成を有する。
【0067】
図6は、スレーブ装置20_1~20_N各々の構成の一例を示すブロック図である。
【0068】
スレーブ装置20_1~20_Nの各々は、例えば液晶ディスプレイのLED(Light Emitting Diode)バックライトや、照明用LED等の負荷を駆動するドライバに含まれる電流出力回路として機能する駆動回路30を含む。
【0069】
駆動回路30は、マスター装置10から出力された、駆動電流の電流値及びその出力タイミングを指定する書込データ片に基づき、出力端子OPGに外付けされている上記負荷を駆動する駆動電流を有する駆動信号を生成し、当該出力端子OPGから出力する。また、駆動回路30は、当該ドライバ内の温度、出力電圧又は電流等を検知し、その検知した値を例えば8ビットのデジタル値で表すセンサデータ(情報データ)を得る情報取得回路としてのセンサSEを含む。この際、駆動回路30は、センサSEが検知したセンサデータを読み出す。
【0070】
また、スレーブ装置20_1~20_Nの各々は、書込データ信号SIを入力する為の入力端子MOSI、書込データ信号SIを出力する為の出力端子SDO、読出データ信号SOを入力する為の入力端子SDI、読出データ信号SOを出力する為の出力端子MISO、クロック信号CLKを入力する為の入力端子CLK、及びクロック信号CLKを出力する為の出力端子CLKOを有する。
【0071】
更に、スレーブ装置20_1~20_Nの各々は、書込データ送受信回路21、制御回路(CNT)22、レジスタ23及び24、読出データ送受信回路25及びバッファ26を含む。
【0072】
書込データ送受信回路21は、カスケード数(CN)取得部DET、カウントデコーダCD1及び減算回路SSを含む。更に、書込データ送受信回路21は、入力端子MOSIに入力された書込データ信号SIを、入力端子CLKで受けたクロック信号CLKのタイミングで取り込むシフトレジスタSF1を有する。
【0073】
カスケード数取得部DETは、シフトレジスタSF1に取り込まれた書込データ信号SI中から識別コードHDを検出し、当該識別コードHDにて示されるカスケード数をカスケード数cnとして、カウントデコーダCD1、減算回路SS及び読出データ送受信回路25に供給する。更に、カスケード数取得部DETは、当該識別コードHDを検出した場合にカウントイネーブル信号ce1をカウントデコーダCD1に供給する。
【0074】
図7は、カウントデコーダCD1の内部構成を示すブロック図である。
【0075】
カウントデコーダCD1は、クロックカウンタ101、比較回路102、103、及びチップ数カウンタ104を含む。
【0076】
クロックカウンタ101は、カウントイネーブル信号ce1に応じて、カウント値をゼロに初期化してからクロック信号CLKのクロックパルス数のカウントを開始し、そのカウント値を比較回路102に供給する。比較回路102は、書込データ片のビット数を示す固定のデータビット数Wdnを受け、このデータビット数Wdnにて示される書込データ片のビット数と、クロックカウンタ101から供給されたカウント値と、が一致しているか否かを判定する。この際、比較回路102は、両者が一致したと判定した場合に単一のパルスからなる一致信号をチップ数カウンタ104に供給する。チップ数カウンタ104は、当該一致信号によるパルスの数を計数し、そのカウント値を残カスケード数cnzとして比較回路103に供給する。比較回路103は、かかる残カスケード数cnzと、識別コードHDにて示されるカスケード数cnと、が一致しているか否かを判定し、両者が一致していると判定した場合に、完了信号fnを出力する。
【0077】
かかる構成により、カウントデコーダCD1は、書込データ信号SI中から識別コードHDを検出すると、クロック信号CLKのクロックパルスの数をカウントする。そして、カウントデコーダCD1は、そのカウント値が、識別コードHDにて示されるカスケード数cnにデータビット数Wdnにて示される書込データ片のビット数を乗算した結果と一致した場合に、完了信号fnを出力する。
【0078】
そして、カウントデコーダCD1は、上記した完了信号fnをシフトレジスタSF1及び制御回路22に供給する。
【0079】
減算回路SSは、カスケード数取得部DETから供給されたカスケード数cnから「1」を差し引いたものを新たなカスケード数として示す識別コードHDを生成し、これをシフトレジスタSF1に供給する。
【0080】
シフトレジスタSF1は、入力端子MOSIに入力された書込データ信号SIに含まれる書込データ片の系列を、クロック信号CLKに同期したタイミングで1ビットずつシフトしつつ取り込む。そして、シフトレジスタSF1は、取り込んだ書込データ片の系列の先頭に、上記した減算回路SSから供給された識別コードHDを付加したものを、シリアル形態の新たな書込データ信号SIとして、出力端子SDOから出力する。また、シフトレジスタSF1は、取り込んだシリアル形態の各書込データ片をパラレル信号の形態に変換して順次、レジスタ23に出力する。尚、シフトレジスタSF1は、完了信号fnに応じて、自身に取り込まれたデータを初期化(例えば全ビットを論理レベル1に設定)する。これにより、入力端子MOSIに入力された書込データ信号SIに含まれる書込データ片の系列中から自身の書込データ片のみが省かれた書込データ片の系列を含む新たな書込データ信号SIが出力端子SDOから出力される。
【0081】
制御回路22は、完了信号fnに応じて書込指令信号wtをレジスタ23に供給すると共に、カウントイネーブル信号ce2を読出データ送受信回路25に供給する。また、制御回路22は、駆動回路30を制御する各種の制御信号を駆動回路30に供給する。
【0082】
レジスタ23は、シフトレジスタSF1から出力された書込データ片の各々のうちで、書込指令信号wtのタイミングで出力された書込データ片のみを保持し、これを駆動回路30に供給する。これにより、駆動回路30は、レジスタ23から供給された書込データ片に従った電流値を有する駆動電流を生成し、これを、当該書込データ片にて指定されている出力タイミングで、出力端子OPGに外付けされている上記負荷に出力する。
【0083】
レジスタ24は、センサSEが検知したセンサデータ片を保持し、これを読出データ送受信回路25に供給する。
【0084】
読出データ送受信回路25は、カウントデコーダCD2及びシフトレジスタSF2を含む。
【0085】
カウントデコーダCD2は、カウントデコーダCD1と同一の内部構成、つまり
図7に示す構成を有する。この際、カウントデコーダCD2は、カウントイネーブル信号ce1に代えてカウントイネーブル信号ce2を制御回路22から受けると共に、データビット数Wdnに代えて、読出データ片のビット数を示すデータビット数Rdnを受ける。更に、カウントデコーダCD2は、完了信号fnに代えて完了信号stpをシフトレジスタSF2に供給する。
【0086】
これにより、カウントデコーダCD2は、カウントイネーブル信号ce2に応じて、クロック信号CLKのクロックパルス数をカウントし、そのカウント値が識別コードHDにて示されるカスケード数cnにデータビット数Rdnにて示される読出データ片のビット数を乗算した結果と一致した場合に、完了信号stpをシフトレジスタSF2に供給する。
【0087】
シフトレジスタSF2は、レジスタ24から供給されたセンサデータ片を、自身の読出データ片として取り込む。そして、引き続きシフトレジスタSF2は、この自身の読出データ片をクロック信号CLKに同期したタイミングで1ビットずつシフトしてシリアル形態で出力しつつ、入力端子SDIに入力された読出データ信号SOに含まれる読出データ片の系列をクロック信号CLKに同期したタイミングで1ビットずつシフトしつつシリアル形態で取り込む。これにより、シフトレジスタSF2は、自身の読出データ片に続いて、入力端子SDIに入力された読出データ信号SOに含まれる読出データ片の系列を示すシリアル信号を、読出データ信号SOとして出力端子MISOから出力する。
【0088】
シフトレジスタSF2は、カウントデコーダCD2から完了信号stpを受けた場合には、取り込まれた内容をリセットし、そのシフト動作を停止する。
【0089】
バッファ26は、入力端子CLKで受けたクロック信号CLKを増幅したクロック信号CLKを出力端子CLKOから出力する。
【0090】
尚、書込データ送受信回路21及び読出データ送受信回路25は、夫々FIFO(First-In First Out)メモリ等で構成されていても良い。
データ通信システム200は、データ通信システム100のマスター装置10及びスレーブ装置20_1~20_Nに代えて、マスター装置10A及びスレーブ装置20A_1~20A_Nを採用したものである。
尚、マスター装置10A及びスレーブ装置20A_1~20A_Nは、マスター装置10及びスレーブ装置20_1~20_Nに、チップセレクト信号CSを用いた書込及び読出制御機能を付加したものである。
スレーブ装置20A_1~20A_Nの各々は、受信したチップセレクト信号CSが例えば論理レベル0を示す場合には、前述したように、書込データd(1)~d(N)の系列を1ビットずつシフトしつつ取り込み、書込データd(1)~d(N)の系列中から自身に対応した書込データ片のみを書込むという書込動作を行う。尚、この際、スレーブ装置20A_1~20A_Nの各々は、書込データd(1)~d(N)の系列中から自身に対応した書込データ片を省いた書込データ片の系列を次段のスレーブ装置20Aに出力する。
一方、受信したチップセレクト信号CSが例えば論理レベル0を示す場合には、スレーブ装置20A_1~20A_Nの各々は、次段のスレーブ装置20Aから受信した読出データ片の系列に、自身から読み出した読出データ片を付加した読出データ片の系列を前段の装置に出力するという読出動作を行う。
そして、マスター装置10Aは、クロック信号CLK[1]、及び書込データd(N)~d(1)の系列からなる書込データ信号SI[1]を出力する。この際、クロック信号CLK[1]は、スレーブ装置20A_1~20A_(N-1)に夫々含まれており且つ各スレーブ装置間でカスケード接続されているバッファを経て、クロック信号CLK[2]~CLK[N]としてスレーブ装置20A_2~20A_Nに伝搬してゆく。
これにより、スレーブ装置20A_k(kは、1、2、3,・・・・、N)は、クロック信号CLK[k]のタイミングで書込データ信号SI[k]を1ビットずつシフトしつつ取り込み、書込データ信号SI[k+1]として次段のスレーブ装置20A_(k+1)に出力する。
マスター装置10Aは、上記したようにチップセレクト信号CS[1]を論理レベル0から1に遷移させた後、クロック信号CLK[1]をスレーブ装置20A_1に出力する。
そして、スレーブ装置20A_kは、次段のスレーブ装置20A_(k+1)から受けた読出データ信号SO[k+1]に含まれる読出データ片の系列の先頭に自身の読出データb(k)を付加した読出データ信号SO[k]を、クロック信号CLK[k]のタイミングで前段の装置に出力するという読出動作を開始する。
この際、マスター装置10Aは、第1段目のスレーブ装置20A_1から出力された読出データ信号SO[1]をクロック信号CLK[1]のタイミングで取り込むことで、スレーブ装置20A_1~20A_Nが夫々個別に取得したデータ片、つまり読出データb(1)~b(N)を取得する。
また、スレーブ装置20A_1~20A_Nの各々は、スレーブ装置20_1~20_Nと同様に、入力端子MOSI、出力端子SDO、入力端子SDI、出力端子MISO、入力端子CLK、及び出力端子CLKOを有する。更に、スレーブ装置20A_1~20A_Nの各々は、チップセレクト信号CSを入力する為の入力端子CS、及びチップセレクト信号CSを出力する為の出力端子CSOを有する。
シフトレジスタSF1Aは、入力端子CSで受けたチップセレクト信号CSが例えば論理レベル0を示す場合にイネーブル状態に設定される一方、チップセレクト信号CSが論理レベル1を示す場合にはディスエーブル状態になる。
シフトレジスタSF1Aは、イネーブル状態に設定されている場合に、入力端子MOSIに入力された書込データ信号SIに含まれる書込データ片の系列をクロック信号CLKに同期したタイミングで1ビットずつシフトしつつ取り込む。そして、シフトレジスタSF1Aは、取り込んだ順に各書込データ片を表すシリアルビットの系列を書込データ信号SIとして出力端子SDOから出力する。尚、シフトレジスタSF1Aは、取り込んだシリアルビットの系列を書込データ片毎にパラレル信号の形態に変換して順次、レジスタ23に出力する。
制御回路22Aは、チップセレクト信号CSが論理レベル0から1に遷移する立ち上りエッジのタイミングで書込指令信号wtをレジスタ23に供給すると共に、読出指令信号rdを読出データ送受信回路25Aに供給する。また、制御回路22Aは、駆動回路30を制御する各種の制御信号を駆動回路30に供給する。
レジスタ23は シフトレジスタSF1Aから出力された書込データ片の各々のうちで書込指令信号wtのタイミングで出力された書込データ片のみを保持し、これを駆動回路30に供給する。これにより、駆動回路30は、レジスタ23から供給された書込データ片に従った電流値を有する駆動電流を生成し、これを、当該書込データ片にて指定されている出力タイミングで、出力端子OPGに外付けされている例えば液晶ディスプレイのLEDバックライトや、照明用LED等の負荷に出力する。
シフトレジスタSF2Aは、上記したチップセレクト信号CSが例えば論理レベル1を示す場合にイネーブル状態に設定される一方、チップセレクト信号CSが論理レベル0を示す場合にはディスエーブル状態になる。
シフトレジスタSF2Aは、イネーブル状態に設定されている場合に、制御回路22Aから供給されたに応じて、レジスタ24に保持されている読出データ片を取り込む。
そして、シフトレジスタSF2Aは、この取り込んだ読出データ片をクロック信号CLKに同期したタイミングで1ビットずつシフトして出力しつつ、入力端子SDIに入力された読出データ信号SOに含まれる読出データ片の系列をクロック信号CLKに同期したタイミングで1ビットずつシフトしつつ取り込み、取り込んだ順に出力する。これにより、シフトレジスタSF2Aは、自身の読出データ片に続いて、入力端子SDIに入力された読出データ信号SOに含まれる読出データ片の系列を示すシリアル信号を、読出データ信号SOとして出力端子MISOから出力する。
このように、基板50の表面SFに一列に並置されている半導体チップC10、C20_1~C20_Nにおいて、互いに隣接するもの同士が3本の配線で接続されている。
よって、半導体チップC10、C20_1~C20_N間を接続する配線が交叉することは無いので、全ての配線を、基板50の表面SFに形成されている単一の導電層のみに設けることが可能となる。したがって、基板50として多層基板を採用する必要がないので、製品コストの削減を図ることが可能となる。尚、基板50として多層基板を採用する場合でも、半導体チップC10及びC20_1~C20_Nの各々間の接続を1つの導電層だけで行えるので、製造の手間を省くことが可能となる。
以上、詳述したように、本発明に係るデータ通信システム(100、200)は、マスター装置(10、10A)と、このマスター装置に接続されている第1のスレーブ装置(20_1、20A_1)及び第1のスレーブ装置にカスケード接続されている第2~第N(Nは2以上の整数)のスレーブ装置(20_2~20_N、20A_2~20A_N)と、を有する。この際、マスター装置及び第1のスレーブ装置間、並びに第1~第Nのスレーブ装置における互いに隣接するスレーブ装置間が、クロック信号(CLK[1]~[N])、書込データ信号(SI[1]~[N])、及び読出データ信号(SO[1]~[N])を夫々個別に伝送する為の3系統の配線(L1~L3)で接続されている。
マスター装置(10、10A)は、クロック信号(CLK)を生成しこれを前記第1のスレーブ装置(20_1、20A_1)に送信すると共に、第1~第Nのスレーブ装置に夫々対応した第1~第Nの書込データ片を含む書込データ信号(SI)をクロック信号のタイミングで第1のスレーブ装置に送信する。第1~第Nのスレーブ装置(20_1~20_N、20A_1~20A_N)の各々は、前段から送信されたクロック信号を受け、これを内部伝送したクロック信号を次段のスレーブ装置に送信するバッファ(26)と、情報データ片(例えばセンサデータ)を取得しこれを読出データ片として読み出す情報取得回路(SE)と、を含む。ここで、第1~第Nのスレーブ装置は、書込データ信号に含まれる第1~第Nの書込データ片の系列[d(1)~d(N)]を、夫々の前段の装置から供給されたクロック信号のタイミングでシフトしつつ取り込むと共に、夫々の情報取得回路から読み出された読出データ片の系列[b(1)~b(N)]を含む読出データ信号を、上記したクロック信号のタイミングでシフトしつつ第1のスレーブ装置からマスター装置に送信する。
よって、かかるデータ通信システムによれば、クロック信号を伝送する配線に接続される負荷は単一のスレーブ装置だけとなるので、カスケード接続されるスレーブ装置の段数に拘わらず、クロック信号の波形鈍りを所定未満に抑えることが可能となる。
ところで、このデータ通信システムによると、マスター装置から出力されたクロック信号、つまり第1のスレーブ装置が受けるクロック信号に対して、最後段の第Nのスレーブ装置が受けるクロック信号は遅延する。
しかしながら、本データ通信システムによるマスター装置及び第1~第Nのスレーブ装置間の通信は、マスター装置が出力したクロック信号に同期させたマスター装置及び第1のスレーブ装置間の通信と、互いに隣接するスレーブ装置間における一方のスレーブ装置が出力したクロック信号に同期させた通信と、によって成り立っている。
よって、マスター装置から出力されたクロック信号に対して、最後段の第Nのスレーブ装置が受けるクロック信号にスレーブ装置のカスケード段数に対応した遅延が生じていても、クロック信号に同期した通信を行うことができる。