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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162693
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】プロセッサパッケージ
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/26 20060101AFI20241114BHJP
   H10N 10/10 20230101ALI20241114BHJP
【FI】
G06F1/26 303
H10N10/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078496
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】三木 淳司
(72)【発明者】
【氏名】山路 敏
【テーマコード(参考)】
5B011
【Fターム(参考)】
5B011DA12
5B011DA13
5B011EA08
5B011JB10
(57)【要約】
【課題】プロセッサの発熱量の変動に合わせて熱電対から安定した電力を生成する。
【解決手段】プロセッサパッケージは、プロセッサと冷却プレートとの間に配置され、プロセッサと冷却プレートとの温度差で熱発電する複数の第1熱電対素子を含む熱電対チップを有する。熱電対チップは、第1熱電対素子対を並列接続または直列接続する複数のスイッチと、複数の第1熱電対素子対のそれぞれを並列接続するか直列接続するかを示す複数の接続パターンテーブルと、パターンテーブルのいずれかをプロセッサの負荷率に応じて選択し、選択した接続パターンテーブルにしたがって複数のスイッチを制御し、複数の第1熱電対素子対のそれぞれを並列接続または直列接続するスイッチ制御回路と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサと、
前記プロセッサを冷却する冷却プレートと、
前記プロセッサと前記冷却プレートとの間に配置され、前記プロセッサと前記冷却プレートとの温度差で熱発電する複数の第1熱電対素子を含む熱電対チップと、を有し、
前記熱電対チップは、
互いに隣接する前記第1熱電対素子にそれぞれ対応して設けられ、隣接する前記第1熱電対素子である第1熱電対素子対を並列接続または直列接続する複数のスイッチと、
複数の前記第1熱電対素子対のそれぞれを並列接続するか直列接続するかを示す複数の接続パターンテーブルと、
前記接続パターンテーブルのいずれかを前記プロセッサの負荷率に応じて選択し、選択した接続パターンテーブルにしたがって前記複数のスイッチを制御し、複数の前記第1熱電対素子対のそれぞれを並列接続または直列接続するスイッチ制御回路と、
を有するプロセッサパッケージ。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記負荷率に応じて発熱量が変化する第1領域と、発熱量がほぼ一定の第2領域とを含み、
高い前記負荷率に対応する前記接続パターンテーブルは、前記第1領域に対向する複数の前記第1熱電対素子対を並列接続する数が、前記第1領域に対向する複数の前記第1熱電対素子対を直列接続する数より多く設定され、
低い前記負荷率に対応する前記接続パターンテーブルは、前記第1領域に対向する複数の前記第1熱電対素子対を並列接続する数が、前記第1領域に対向する複数の前記第1熱電対素子対を直列接続する数より少なく設定される
請求項1に記載のプロセッサパッケージ。
【請求項3】
前記第1領域は、コアを含む
請求項2に記載のプロセッサパッケージ。
【請求項4】
前記熱電対チップは、前記スイッチ制御回路を動作させる電圧を生成する複数の第2熱電対素子を含み、
互いに隣接する前記第2熱電対素子のそれぞれは、並列接続または直列接続されている
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のプロセッサパッケージ。
【請求項5】
前記熱電対チップにより発電された電力は、前記プロセッサパッケージ内に搭載される部品または前記プロセッサパッケージとともに基板に搭載される部品を動作させる電源の補助に使用される
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のプロセッサパッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセッサパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の熱電素子と蓄電回路とを有し、使用者の腕に装着される電子時計において、複数の熱電素子の接続を温度差に応じて並列または直列に切り替えることで、蓄電効率を向上させる手法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
複数の熱電変換素子と複数の熱電変換素子に接続される電力変換器とを有し、排気ガスの熱を電気に変換する熱電発電システムにおいて、排気ガスの温度に応じて複数の熱電変換素子の配列を直列または並列に調整する手法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-037322号公報
【特許文献2】特開2005-176408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近時、コンピュータシステムでは、処理性能を向上させるためにCPU(Central Processing Unit)等の多数のプロセッサを並列に動作させるようになってきており、消費電力および発熱量が増大している。これに伴い、プロセッサを冷却する冷却機構も大規模になってきており、冷却機構の消費電力も増大している。例えば、プロセッサから発生した熱を熱電対により電力に変換してコンピュータシステム内で使用することで、発熱量の増大と消費電力の増大とを抑制することが可能になる。
【0006】
しかしながら、この種のコンピュータシステムでは、処理状況に応じて各プロセッサの負荷が随時変動し、負荷の変動に応じて各プロセッサの発熱量が変動する。例えば、プロセッサの負荷の変動を発熱量の変動として温度センサ等により検出する場合、負荷の変動より遅れて発熱量の変動が検出されるため、プロセッサの発熱量の変動に合わせて熱電対から安定した電力を生成することは困難である。
【0007】
1つの側面では、本発明は、プロセッサの発熱量の変動に合わせて熱電対チップから安定した電力を生成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一つの観点によれば、プロセッサパッケージは、プロセッサと、前記プロセッサを冷却する冷却プレートと、前記プロセッサと前記冷却プレートとの間に配置され、前記プロセッサと前記冷却プレートとの温度差で熱発電する複数の第1熱電対素子を含む熱電対チップと、を有し、前記熱電対チップは、互いに隣接する前記第1熱電対素子にそれぞれ対応して設けられ、隣接する前記第1熱電対素子である第1熱電対素子対を並列接続または直列接続する複数のスイッチと、複数の前記第1熱電対素子対のそれぞれを並列接続するか直列接続するかを示す複数の接続パターンテーブルと、前記接続パターンテーブルのいずれかを前記プロセッサの負荷率に応じて選択し、選択した接続パターンテーブルにしたがって前記複数のスイッチを制御し、複数の前記第1熱電対素子対のそれぞれを並列接続または直列接続するスイッチ制御回路と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
プロセッサの発熱量の変動に合わせて熱電対チップから安定した電力を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態におけるCPUパッケージの一例を示す分解斜視図である。
図2図1の熱電対チップの一例を示すブロック図である。
図3図2の熱電対アレイのスイッチの制御の例を示す説明図である。
図4】別の実施形態におけるCPUパッケージと、CPUパッケージが搭載されるシステムとの一例を示すブロック図である。
図5図4の熱電対チップの一例を示すブロック図である。
図6図4のCPUのレイアウトの一例と、図5のメイン熱電対アレイのスイッチの動作の一例とを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施形態が説明される。
【0012】
図1は、一実施形態におけるCPUパッケージの一例を示す。CPUパッケージは、プロセッサパッケージの一例である。図1に示すCPUパッケージ100は、CPU10および冷却プレート20と、CPU10と冷却プレート20との間に配置された熱電対チップ30とを有する。CPU10は、プロセッサの一例である。CPU10は、パッケージ基板40に搭載されている。熱電対チップ30は、例えば、グリスを介してCPU10に貼り付けられている。
【0013】
冷却プレート20は、熱電対チップ30上に密着した状態で載置され、熱電対チップ30を介してCPU10から伝達される熱を吸収する。例えば、冷却プレート20は、冷却水等の冷却媒体を循環させる冷却パイプが内蔵されてもよい。あるいは、冷却プレート20は、放熱フィンを有してもよい。
【0014】
熱電対チップ30は、CPU10と冷却プレート20との温度差で熱発電する複数の熱電対素子が搭載された熱電対アレイ31とスイッチ制御回路32とを有する。スイッチ制御回路32は、外部から受けるCPU10の負荷率を示す情報(以下、CPU負荷率)に基づいて、熱電対アレイ31内の複数の熱電対素子対のうち、並列に接続する熱電対素子対の数と直列に接続する熱電対素子対の数とを変更する制御を実施する。CPU負荷率は、CPU10の温度を間接的に示す。熱電対素子対の並列接続および直列接続の例は、図3で説明される。
【0015】
図2は、図1の熱電対チップ30の一例を示す。熱電対アレイ31は、複数の熱電対素子TCと複数のスイッチSWとを有し、熱電対素子TCとスイッチSWとが交互に接続された複数の熱電対素子列TCRを有する。各熱電対素子TCは、P型の熱電効果物質を含む熱電効果素子部PとN型の熱電効果物質を含む熱電効果素子部Nとを有する。熱電対素子TCは、第1熱電対素子の一例である。
【0016】
各熱電対列TCRにおいて、両端を除く熱電対素子TCの熱電効果素子部Pおよび熱電効果素子部Nは、両側に配置されるスイッチSWにそれぞれ接続される。すなわち、スイッチSWは、互いに隣接する熱電対素子TCに対応して設けられる。このため、各スイッチSWは、4つの接続端子を有する。スイッチSWを挟んで両側に配置される2つの熱電対素子TCは、第1熱電対素子対の一例である。
【0017】
図2の最も下側に配置される熱電対列TCRの左端の熱電対素子TCの熱電効果素子部Pは、外部端子POUTに接続される。図2の最も下側に配置される熱電対列TCRを除く熱電対列TCRの左端の熱電対素子TCの熱電効果素子部Pは、1つ下に配置される熱電対列TCRの右端の熱電対素子TCの熱電効果素子部Nに接続される。図2の最も上側に配置される熱電対列TCRの右端の熱電対素子TCの熱電効果素子部Nは、外部端子NOUTに接続される。
【0018】
例えば、外部端子POUT、NOUTは、図示しない蓄電ユニットに接続され、熱電対アレイ31により発電された電力を蓄電ユニットに蓄電する。そして、蓄電ユニットに蓄電された電力は、スイッチ制御回路32を動作させる電力またはCPUパッケージ100内の所定の部品を動作させる電源の補助または回路を動作させる電源の補助に使用されてもよい。あるいは、蓄電ユニットに蓄電された電力は、CPUパッケージ100とともにシステム基板に搭載される部品を動作させる電源の補助に使用されてもよい。
【0019】
CPU10から発生する熱を利用して生成される電力をCPUパッケージ100内で使用することで、CPUパッケージ100の外部から供給される電力量を低減することができる。また、CPU10から発生する熱を利用して電力を生成することで、冷却プレート20の温度上昇を軽減できるため、CPU10の冷却効率を向上することができる。これにより、CPUパッケージ100のエネルギー利用率を向上することができる。
【0020】
各スイッチSWは、スイッチ制御回路32から出力されるスイッチ制御信号SCNTに基づいて、両側に配置される一対の熱電対素子TC(以下、熱電対素子対TCとも称する)を直列または並列に接続する。ここで、並列に接続とは、熱電対素子対TCの熱電効果素子部Pを互いに接続し、熱電対素子対TCの熱電効果素子部Nを互いに接続することである。直列に接続とは、熱電対素子対TCの一方の熱電効果素子部Pを熱電対素子対TCの他方の熱電効果素子部Nに接続することである。
【0021】
スイッチ制御回路32は、プロファイル記憶部33を有し、CPU負荷率に基づいて、プロファイル記憶部33に保持された複数のプロファイルのいずれかを選択する。各プロファイルは、CPU10の負荷率とCPU10の温度(発熱量)との評価に基づいて予め作成され、熱電対アレイ31内の全てのスイッチSWの接続状態を並列または直列に切り替える情報を含んでいる。
【0022】
例えば、プロファイルは、熱電対アレイ31内のスイッチSWの数(スイッチ制御信号SCNTの数)と等しいビット数を有するテーブルに記憶される。プロファイル記憶部33に保持された複数のプロファイルの各々は、接続パターンテーブルの一例である。
【0023】
例えば、CPU負荷率を示す情報を2ビットで受信する場合、スイッチ制御回路32は、最大で4通りのCPU負荷率を認識することができ、4つのプロファイルのいずれかを選択することができる。スイッチ制御回路32は、選択したプロファイルに基づいて、熱電対アレイ31の複数のスイッチSWの各々を制御する複数のスイッチ制御信号SCNTを生成する。例えば、スイッチ制御信号SCNTのビット値0は、スイッチSWの両側に位置する熱電対素子TCを並列に接続することを示し、スイッチ制御信号SCNTのビット値1は、スイッチSWの両側に位置する熱電対素子TCを直列に接続することを示す。
【0024】
図3は、図2の熱電対アレイ31のスイッチSWの制御の例を示す。説明の簡単化のため、図3では、熱電対アレイ31の一部のみが示される。図3の右側は、熱電対素子TCの接続のイメージを示す。
【0025】
図2のスイッチ制御回路32は、CPU負荷率に対応するプロファイルの1つを選択する。そして、スイッチ制御回路32は、選択したプロファイルに含まれる複数のビット値に対応する論理レベルを有する複数のスイッチ制御信号SCNTを複数のスイッチSWにそれぞれ出力する。
【0026】
各スイッチSWは、ロウレベルLのスイッチ制御信号SCNTを受けたとき、対応する熱電対素子対TCを並列に接続し、ハイレベルHのスイッチ制御信号SCNTを受けたとき、対応する熱電対素子対TCを直列に接続する。スイッチ制御回路32は、CPU10の温度が高いほど(CPU負荷率が高いほど)、熱電対素子対TCを並列接続するスイッチSWの数を増やす。
【0027】
CPU10の温度が高いほど、CPU10と冷却プレート20との温度差が大きくなり、各熱電対素子TCの発電量が大きくなり、熱電対アレイ31が生成する電圧値が高くなる。このため、熱電対素子TCの並列数を増やして電流容量を大きくすることで、生成される電圧値を低くすることができ、目的の電圧値を得ることができる。
【0028】
一方、スイッチ制御回路32は、CPU10の温度が低いほど(CPU負荷率が低いほど)、熱電対素子対TCを直列接続するスイッチSWの数を増やす。CPU10の温度が低いほど、CPU10と冷却プレート20との温度差が小さくなり、各熱電対素子TCの発電量が小さくなり、熱電対アレイ31が生成する電圧値が低くなる。このため、熱電対素子TCの直列数を増やして電流容量を小さくすることで、生成される電圧値を高くすることができ、目的の電圧値を得ることができる。
【0029】
図3では、スイッチ制御回路32は、4通りのCPU負荷率に応じて4つのプロファイルのいずれかを選択してスイッチSWを制御する。しかしながら、スイッチ制御回路32が選択するプロファイルの数は、4つに限定されない。
【0030】
この実施形態では、熱電対チップ30は、CPU10の温度を間接的に示すCPU負荷率に基づいてプロファイルを選択し、熱電対アレイ31内の熱電対素子対TCの直並列の接続数を制御する。CPU負荷率は、CPU10の動作状態をリアルタイムに示す。これにより、例えば、CPU10の温度を温度センサにより検出してスイッチSWを制御する場合に比べて、CPU10の発熱量の変化をスイッチSWの制御に即時に反映させることができる。
【0031】
そして、CPU負荷率とCPU10の温度(発熱量)との関係の評価に基づいて予め作成された複数のプロファイルのいずれかを選択することで、複数のスイッチSWの動作状態を計算することなく決定することができる。この結果、熱電対アレイ31の出力端子POUT、NOUTから出力される出力電圧をCPU10の温度変化に合わせて安定して生成することができ、必要な電流量を得ることができる。
【0032】
これに対して、CPU10の温度の上昇より遅れて熱電対素子対TCの並列接続数が増加される場合、並列接続数が増加される前に熱電対アレイ31から出力される電圧値が規定値より高くなることを抑止するために、電荷が捨てられる場合がある。また、CPU10の温度の下降より遅れて熱電対素子対TCの直列接続数が増加される場合、直列接続数が増加される前に熱電対アレイ31から出力される電圧値が低下し、規定値より低くなるおそれがある。
【0033】
以上、この実施形態では、CPU10から発生する熱を利用して生成される電力をCPUパッケージ100内で使用することで、CPUパッケージ100の外部から供給される電力量を低減することができ、CPU10の冷却効率を向上することができる。これにより、CPUパッケージ100のエネルギー利用率を向上させることができる。
【0034】
CPU10の動作状態をリアルタイムに示すCPU負荷率に基づいてプロファイルを選択し、熱電対素子対TCの直並列の接続数を制御することで、CPU10の発熱量の変化をスイッチSWの制御に即時に反映させることができる。これにより、CPU10の発熱量の変動に合わせて熱電対アレイ31から安定した電力を生成することができる。また、熱電対アレイ31が生成した電力を再利用することで、CPUパッケージ100の電力性能を向上することができる。
【0035】
図4は、別の実施形態におけるCPUパッケージと、CPUパッケージが搭載されるシステムとの一例を示す。図1から図3に示した要素と同じ要素については、詳細な説明は省略する。図4に示すシステム200は、システム基板40Aに搭載された2つのCPUパッケージ100A、制御チップ50A、蓄電ユニット60A、電源ユニット70Aおよび冷却パイプCPを有する。
【0036】
CPUパッケージ100Aは、図1のCPUパッケージ100と同様に、CPU10Aおよび冷却プレート20Aと、CPU10Aと冷却プレート20Aとの間に配置された熱電対チップ30Aとを有する。CPU10Aは、プロセッサの一例である。CPU10Aは、図1のCPU10と同様の機能を有する。CPU10A、熱電対チップ30Aおよび冷却プレート20Aの積層構造は、図1と同様である。すなわち、熱電対チップ30Aは、例えば、グリスを介してCPU10Aに貼り付けられ、冷却プレート20Aは、熱電対チップ30A上に密着した状態で載置される。
【0037】
各CPU10Aは、自己のCPU負荷率を示すCPU負荷率信号LINF(LINF1、LINF2)を制御チップ50Aに出力する。制御チップ50Aは、CPU負荷率信号LINF以外にも、各CPU10Aの圧、周波数等の動作状況を示す信号を受信する。制御チップ50Aは、各CPU10Aから受信するCPU負荷率信号LINFを監視し、CPU負荷率信号LINF(LINF1、LINF2)をCPU負荷率モニタ信号LMON(LMON1、LMON2)として、対応する熱電対チップ30Aに出力する。
【0038】
なお、図4では、制御チップ50Aで受信するCPU負荷率信号LINFを利用して、CPU負荷率モニタ信号LMONを、対応する熱電対チップ30Aに出力している。しかしながら、熱電対チップ30Aは、CPU負荷率モニタ信号LMONの代わりに、対応するCPU10AからCPU負荷率信号LINFを直接受信してもよい。
【0039】
例えば、2つの冷却プレート20Aは、冷却パイプCPを介して相互に接続され、冷却パイプCP内を流れる冷却水等の冷却媒体により冷却される。蓄電ユニット60Aは、各熱電対チップ30Aの出力端子POUT、NOUTから出力される出力電圧VOUT(VOUT1、VOUT2)に基づいて電力を蓄電する。蓄電ユニット60Aに蓄電された電力は、電源ユニット70Aに供給され、システム基板40Aに搭載されるチップまたは部品等を動作させる電力に使用される。なお、蓄電ユニット60Aおよび電源ユニット70Aは、システム基板40Aの外部に配置されてもよい。
【0040】
図5は、図4の熱電対チップ30Aの一例を示す。熱電対チップ30Aは、メイン熱電対アレイ31a、サブ熱電対アレイ31b、スイッチ制御回路32Aおよび定電圧生成回路34Aを有する。
【0041】
メイン熱電対アレイ31aは、図2の熱電対アレイ31と同一または同様の構成および機能を有する。サブ熱電対アレイ31bは、スイッチ制御回路32A用の電源電圧V1を生成するために設けられる。サブ熱電対アレイ31bは、発電規模が小さいことを除き、図2の熱電対アレイ31と同様の構成および機能を有する。但し、サブ熱電対アレイ31bのスイッチSWが切り替えられることはなく、熱電対素子対TCの接続状態(並列接続または直列接続)は固定である。メイン熱電対アレイ31aに含まれる熱電対素子TCは、第1熱電対素子の一例である。サブ熱電対アレイ31bに含まれる熱電対素子TCは、第2熱電対素子の一例である。
【0042】
サブ熱電対アレイ31bが発電した電力は、外部端子POUTb、NOUTbを介して定電圧生成回路34Aに出力される。定電圧生成回路34Aは、外部端子POUTb、NOUTbを介してサブ熱電対アレイ31bから受信する電力に基づいて電圧値が一定の電源電圧V1を生成し、生成した電源電圧V1をスイッチ制御回路32Aに出力する。
【0043】
なお、スイッチ制御回路32Aの動作電圧は、メイン熱電対アレイ31aから供給されてもよく、図4の電源ユニット70Aから供給されてもよい。この場合、熱電対チップ30Aは、サブ熱電対アレイ31bおよび定電圧生成回路34Aを持たなくてもよい。
【0044】
スイッチ制御回路32Aは、プロファイル記憶部33Aを有し、CPU負荷率モニタ信号LMONに基づいて、プロファイル記憶部33Aに保持された3つのプロファイル1、プロファイル2、プロファイル3のいずれかを選択する。図5に示す例では、3つのプロファイルがプロファイル記憶部33Aに記憶されるが、プロファイルの数は、複数であれば3つに限定されない。プロファイル記憶部33Aに記憶されたプロファイル1、プロファイル2、プロファイル3の各々は、接続パターンテーブルの一例である。
【0045】
スイッチ制御回路32Aは、CPU負荷率モニタ信号LMONが示すCPU負荷率に対応して選択したプロファイルに基づいてスイッチ制御信号SCNTを生成し、メイン熱電対アレイ31a内のスイッチSW(図3)の接続状態を並列または直列に切り替える。これにより、図3と同様に、各スイッチSWの両側に位置する熱電対素子TCは、CPU負荷率に応じて並列接続または直列接続される。
【0046】
図6は、図4のCPU10Aのレイアウトの一例と、図5のメイン熱電対アレイ31aのスイッチSWの動作の一例とを示す。例えば、CPU10Aは、4つのコアと2つのキャッシュとを有する。コアおよびキャッシュの領域は、CPU負荷率の上昇により温度が上昇する。また、コアおよびキャッシュの領域の発熱量は、CPU10Aの他の領域の発熱量よりも大きい。コアおよびキャッシュの領域は、CPU負荷率に応じて発熱量が変化する第1領域の一例である。コアおよびキャッシュの領域を除く領域は、発熱量がほぼ一定の第2領域の一例である。
【0047】
図6に示すCPU10Aにおいて、斜線で示す領域Aは、メイン熱電対アレイ31aと対向せず、発熱量がほぼ一定の領域であり、サブ熱電対アレイ31b、定電圧生成回路34Aおよびスイッチ制御回路32Aと対向する領域である。サブ熱電対アレイ31bをCPU10Aにおいて発熱量がほぼ一定の領域Aに対向して配置することで、サブ熱電対アレイ31bに設けられる熱電対素子対TCの接続状態(並列接続または直列接続)を固定にすることができる。これにより、サブ熱電対アレイ31bに設けられる熱電対素子対の並列接続と直列接続との切り替えをスイッチ制御回路32Aにより制御することなく、安定した電源電圧V1を生成することができる。
【0048】
なお、図6では簡単化のため、CPU負荷率が3通りであるとし、3つのプロファイルを使用してスイッチSWを制御する例が示されるが、プロファイルの数は、3より多いほうが好ましい。プロファイルの数が多いほど、CPU負荷率が変動する場合にも、メイン熱電対アレイ31aにより目的の電圧値を安定して生成することができる。
【0049】
図6において、メイン熱電対アレイ31aに示す"1"または"0"を付した矩形は、スイッチSWを示す。実際には、各スイッチSWの両側には、熱電対素子TCが配置される。"1"は、スイッチSWがハイレベルHのスイッチ制御信号SCNTを受け、スイッチSWの両側の一対の熱電対素子TCが直列に接続されることを示す(直列接続)。"0"は、スイッチSWがロウレベルLのスイッチ制御信号SCNTを受け、スイッチSWの両側の一対の熱電対素子TCを並列に接続することを示す(並列接続)。メイン熱電対アレイ31aにおいて、太枠で示すスイッチSWの領域は、CPU10Aのコアまたはキャッシュに対応する領域をそれぞれ示す。
【0050】
例えば、図5に示した熱電対チップ30Aのスイッチ制御回路32Aは、CPU負荷率モニタ信号LMONにより示されるCPU負荷率が20%の場合、プロファイル1を選択する。そして、スイッチ制御回路32Aは、全てのスイッチSWを直列に接続するスイッチ制御信号SCNTをメイン熱電対アレイ31aに出力する。
【0051】
スイッチ制御回路32Aは、CPU負荷率モニタ信号LMONにより示されるCPU負荷率が50%の場合、プロファイル2を選択する。そして、スイッチ制御回路32Aは、コアおよびキャッシュに対向して配置されるスイッチSWの半分を並列に接続するスイッチ制御信号SCNTをメイン熱電対アレイ31aに出力する。
【0052】
スイッチ制御回路32Aは、CPU負荷率モニタ信号LMONにより示されるCPU負荷率が100%の場合、プロファイル3を選択する。そして、スイッチ制御回路32Aは、コアおよびキャッシュに対向して配置される全てのスイッチSWを並列に接続するスイッチ制御信号SCNTをメイン熱電対アレイ31aに出力する。
【0053】
プロファイル記憶部33Aにおいて、低いCPU負荷率に対応するプロファイル1は、コアおよびキャッシュに対向する複数の熱電対素子対TCを並列に接続する数が、コアおよびキャッシュに対向する複数の熱電対素子対TCを直列に接続する数より少なく設定される。プロファイル記憶部33Aにおいて、中程度のCPU負荷率に対応するプロファイル2は、コアおよびキャッシュに対向する複数の熱電対素子対TCを並列に接続する数が、コアおよびキャッシュに対向する複数の熱電対素子対TCを直列に接続する数とほぼ同じに設定される。
【0054】
プロファイル記憶部33Aにおいて、高いCPU負荷率に対応するプロファイル3は、コアおよびキャッシュに対向する複数の熱電対素子対TCを並列に接続する数が、コアおよびキャッシュに対向する複数の熱電対素子対TCを直列に接続する数より多く設定される。
【0055】
このように、図6では、CPU負荷率の変動により発熱量が変化する領域に対向する熱電対素子対TCの直列接続数(並列接続数)を、CPU負荷率に応じて変更することができる。この結果、発熱量がほぼ一定の領域に対向する熱電対素子対TCも含めて直列接続数(並列接続数)をCPU負荷率に応じて変更する場合に比べて、CPU負荷率の変化に合わせて、より安定した電圧を生成することができる。
【0056】
なお、プロファイルが3つの場合、例えば、CPU負荷率が30%未満の場合、プロファイル1が使用され、CPU負荷率が30%より大きく70%未満の場合、プロファイル2が使用され、CPU負荷率が70%以上の場合、プロファイル3が使用されてもよい。また、10個のプロファイルを使用して、CPU負荷率を10%ずつ区切って熱電対素子対TCの直列接続数(並列接続数)を切り替えてもよい。
【0057】
さらに、コアおよびキャッシュの領域を除く発熱量がほぼ一定の領域は、スイッチSWの制御入力をハイレベルHに固定してもよい。これにより、スイッチ制御回路32Aからメイン熱電対アレイ31aへのスイッチ制御信号SCNTの配線数を削減することができ、スイッチSWの制御に使用する電力を削減することができる。
【0058】
以上、この実施形態においても上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。例えば、CPU負荷率に基づいてプロファイルを選択し、熱電対素子対TCの直並列の接続数を制御することで、CPU10Aの発熱量の変化をスイッチSWの制御に即時に反映させることができる。これにより、CPU10Aの発熱量の変動に合わせてメイン熱電対アレイ31aから安定した電力を生成することができる。また、メイン熱電対アレイ31aが生成した電力を再利用することで、CPUパッケージ100Aの電力性能を向上することができる。
【0059】
さらに、この実施形態では、CPU負荷率の変動により発熱量が変化する領域に対向する熱電対素子対TCの直列接続数(並列接続数)を、CPU負荷率に応じて変更することができる。この結果、発熱量がほぼ一定の領域に対向する熱電対素子対TCも含めて直列接続数(並列接続数)をCPU負荷率に応じて変更する場合に比べて、CPU負荷率の変化に合わせて、より安定した電圧を生成することができる。
【0060】
サブ熱電対アレイ31bを使用して、スイッチ制御回路32Aに供給する電源電圧V1を生成することができる。この際、サブ熱電対アレイ31bを発熱量がほぼ一定の領域Aに対向して配置することで、熱電対素子対TCの接続状態(並列接続または直列接続)を固定にすることができる。これにより、サブ熱電対アレイ31bに設けられる熱電対素子対の並列接続と直列接続との切り替えをスイッチ制御回路32Aにより制御することなく、安定した電源電圧V1を生成することができる。
【0061】
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点および利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲がその精神および権利範囲を逸脱しない範囲で前述のような実施形態の特徴点および利点にまで及ぶことを意図するものである。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良および変更に容易に想到できるはずである。したがって、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物および均等物に拠ることも可能である。
【符号の説明】
【0062】
10、10A CPU
20、20A 冷却プレート
30、30A 熱電対チップ
31 熱電対アレイ
31a メイン熱電対アレイ
31b サブ熱電対アレイ
32、32A スイッチ制御回路
33、33A プロファイル記憶部
34A 定電圧生成回路
40 パッケージ基板
40A システム基板
50A 制御チップ
60A 蓄電ユニット
70A 電源ユニット
100、100A CPUパッケージ
200 システム
CP 冷却パイプ
LINF、LINF1、LINF2 CPU負荷率信号
LMON、LMON1、LMON2 CPU負荷率モニタ信号
N 熱電効果素子部
NOUT、NOUTb 外部端子
P 熱電効果素子部
POUT、POUTb 外部端子
SCNT スイッチ制御信号
SW スイッチ
TC 熱電対素子
TCR 熱電対素子列
V1 電源電圧
VOUT、VOUT1、VOUT2 出力電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6