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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162695
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】研削装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20241114BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20241114BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20241114BHJP
   B24B 49/10 20060101ALI20241114BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20241114BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20241114BHJP
   B23Q 17/24 20060101ALI20241114BHJP
   B23Q 17/20 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
H01L21/304 631
B24B41/06 L
B24B7/04 A
B24B49/10
B24B49/12
B23Q17/00 A
B23Q17/24 Z
B23Q17/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078499
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江藤 敬明
【テーマコード(参考)】
3C029
3C034
3C043
5F057
【Fターム(参考)】
3C029BB06
3C029BB10
3C029EE01
3C029EE20
3C034AA08
3C034BB93
3C034CA13
3C034CA22
3C034DD18
3C043BA03
3C043BA16
3C043CC04
3C043DD02
3C043DD05
3C043DD06
5F057AA03
5F057AA19
5F057BA15
5F057BB03
5F057CA14
5F057DA11
5F057FA46
5F057GB02
5F057GB13
(57)【要約】
【課題】チャックテーブルの保持面の良否を短時間で簡単に判断することができる研削装置を提供すること。
【解決手段】保持面12によってウェーハWを保持するチャックテーブル10と、ウェーハWを研削砥石25bで研削する研削機構20と、を備える研削装置1は、保持面12の高さを測定する高さ測定器50と、該高さ測定器50を水平方向に移動させる水平移動機構60と、高さ測定器50で測定した保持面12の中心から外周に至る複数の測定点での測定値が許容範囲内であるか否かによって該保持面12の良否を判断する良否判断部70とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持面によってウェーハを保持するチャックテーブルと、該ウェーハを研削砥石で研削する研削機構と、を備える研削装置であって、
該保持面の高さを測定する高さ測定器と、
該高さ測定器を水平方向に移動させる水平移動機構と、
該高さ測定器で測定した該保持面の中心から外周に至る複数の測定点での測定値が許容範囲内であるか否かによって該保持面の良否を判断する良否判断部と、
を備えることを特徴とする研削装置。
【請求項2】
該高さ測定器は、非接触で該保持面の高さを測定する非接触測定器であって、
該保持面に向かって超音波を発信する発信部と、
該保持面で反射した反射波を受信する受信部と、
該受信部と該保持面との距離を算出する高さ算出部と、
を備えることを特徴とする請求項1記載の研削装置。
【請求項3】
該高さ測定器は、非接触で該保持面の高さを測定する非接触測定器であって、
該保持面に向かって光を投光する投光部と、
該保持面で反射した反射光を受光する受光部と、
該受光部と該保持面との距離を算出する高さ算出部と、
を備えることを特徴とする請求項1記載の研削装置。
【請求項4】
該非接触測定器は、ウェーハの厚みを測定可能であることを特徴とする請求項2または3記載の研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャックテーブルの保持面に保持されたウェーハを研削砥石によって研削する研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体デバイスの製造工程においては、円板状の半導体ウェーハ(以下、単に「ウェーハ」と称する)の表面が格子状に形成されたストリート(分割予定ライン)によって複数のデバイス領域に区画され、各デバイス領域にICやLSIなどのデバイスがそれぞれ形成される。そして、このように多数のデバイスが形成されたウェーハをストリートに沿って分割することによって、複数のチップが製造される。
【0003】
ところで、近年の電子機器の薄型化や小型化などの要求に応えるため、ウェーハを分割する前に該ウェーハの裏面を研削装置によって研削することによって、ウェーハを所定の厚みまで薄化することが行われている。ここで、研削装置においては、チャックテーブルの保持面に保持されたウェーハが、回転する研削砥石によって研削されるが、研削中のウェーハの面焼けを防ぐとともに、あやめ形状の研削痕がウェーハの研削面に形成されるのを防ぐため、特許文献1,2などには、チャックテーブルの上面をテーブル研削砥石によって研削して該チャックテーブルに円錐状の保持面を形成することが提案され、既に実用に供されている。
【0004】
ところが、上述のようにチャックテーブルの保持面を円錐状に形成すると、該保持面に保持されるウェーハの厚みが厚い場合(例えば、仕上げ厚みが100μm以上の場合)には、該ウェーハが保持面の円錐状の形状に倣うことができず、保持面の円錐面の頂点付近で保持面とウェーハの中心部下面との間に隙間が発生するため、ウェーハの中心部が研削され過ぎて薄くなるという問題がある。
【0005】
そこで、特許文献3には、チャックテーブルの保持面の中心部に円形の平坦部を形成する提案がなされている。したがって、チャックテーブルには、ウェーハの仕上げ厚みによって、保持面の中心部に平坦部が形成されたものと、形成されていないもの(円錐状の保持面を有するもの)とがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-072971号公報
【特許文献2】特開2020-175472号公報
【特許文献3】特開2017-127936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、保持面の中心部に平坦部が形成されたチャックテーブルにおいて、保持面の平坦部とその周囲の斜面(円錐面)との境は、僅かな角度で形成されているため、作業者がチャックテーブルの保持面の中心部に平坦部が形成されているか否かを目視で判断することは困難である。
【0008】
そこで、従来、ウェーハをチャックテーブルの保持面に保持して研削し、該ウェーハの面内厚みを測定することによって、チャックテーブルの保持面の中心部に平坦部があるか否かを判断するようにしている。このため、ウェーハの仕上げ厚みに対してチャックテーブルの保持面の良否を判断するのに手間と時間を要するという問題があった。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、ウェーハの仕上げ厚みに対するチャックテーブルの保持面の良否を短時間で簡単に判断することができる研削装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明は、保持面によってウェーハを保持するチャックテーブルと、該ウェーハを研削砥石で研削する研削機構と、を備える研削装置であって、該保持面の高さを測定する高さ測定器と、該高さ測定器を水平方向に移動させる水平移動機構と、該高さ測定器で測定した該保持面の中心から外周に至る複数の測定点での測定値が許容範囲内であるか否かによって該保持面の良否を判断する良否判断部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高さ測定器によって測定したチャックテーブルの保持面の中心から外周に至る複数の測定点での測定値が許容範囲内であるか否かによって該保持面の良否を判断するようにしたため、ウェーハの仕上げ厚みに対するチャックテーブルの保持面の良否を短時間で簡単に判断することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る研削装置の一部を破断して示す斜視図である。
図2】(a)は保持面の中心部に平坦部が形成されたチャックテーブルの側断面図、(b)は保持面の中心部に平坦部が形成されていないチャックテーブルの側断面図である。
図3】中心部に平坦部が形成されたチャックテーブルの保持面の良否を判断する基準となる高さの径方向特性を示す図である。
図4】(a)は中心部に平坦部が形成されたチャックテーブルの保持面の高さの径方向分布の正常時の特性を示す図、(b)は異常時の特性を示す図である。
図5】中心部に平坦部が形成されていないチャックテーブルの保持面の良否を判断する基準となる高さの径方向特性を示す図である。
図6】(a)は中心部に平坦部が形成されていないチャックテーブルの保持面の高さの径方向分布の正常時の特性を示す図、(b)は異常時の特性を示す図である。
図7】本発明に係る研削装置におけるチャックテーブルの保持面の良否を判断する手順を示すフローチャートである。
図8】超音波高さ測定器の要部側断面図である。
図9】別形態に係る超音波高さ測定器の要部側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0014】
[研削装置の構成]
先ず、本発明に係る研削装置の構成について説明すると、図1に示す研削装置1は、被加工物である円板状のウェーハWを研削加工するものであって、次の構成要素を備えている。なお、以下の説明においては、図1に示す矢印方向をそれぞれX軸方向(左右方向)、Y軸方向(前後方向)、Z軸方向(上下方向)とする。
【0015】
すなわち、研削装置1は、ウェーハWを円形の保持面12によって保持するチャックテーブル10と、該チャックテーブル10に保持されたウェーハWを研削加工する研削機構20と、該研削機構20の研削砥石25bとウェーハWとの接触部(研削部)に研削水を供給する研削水供給ユニット30と、研削機構20をチャックテーブル10の保持面12に対して垂直方向(Z軸方向)に上下動させる垂直移動機構40と、チャックテーブル10の保持面12の高さを測定する高さ測定器50と、該高さ測定器50を水平方向に移動させる水平移動機構60と、チャックテーブル10の保持面12の良否を判断する良否判断部70を主要な構成要素として備えている。
【0016】
ここで、ウェーハWは、単結晶のシリコン母材で構成されており、図1に示す状態において下方を向いている表面には、複数の不図示のデバイスが形成されており、これらのデバイスは、ウェーハWの表面に貼着された保護テープTによって保護されている。そして、ウェーハWは、その表面(図1においては下面)が保護テープTを介してチャックテーブル10の保持面12に吸引保持され、裏面(図1においては上面)が研削水供給ユニット30から研削水の供給を受けながら研削機構20の研削砥石25bによって研削される。
【0017】
次に、研削装置1の主要な構成要素であるチャックテーブル10、研削機構20、研削水供給ユニット30、垂直移動機構40、高さ測定器50、水平移動機構60及び良否判断部70の構成についてそれぞれ説明する。
【0018】
(チャックテーブル)
研削装置1に装着可能なチャックテーブル10には、図2(a)に示すチャックテーブル10Aと、図2(b)に示すチャックテーブル10Bの2種類がある。
【0019】
すなわち、図2(a)に示すチャックテーブル10Aと図2(b)に示すチャックテーブル10Bの各上部中央には、多孔質の円板状のポーラス部材11A,11Bがそれぞれ組み込まれており、これらのポーラス部材11A,11Bの上面が円錐状の保持面12A,12Bをそれぞれ構成している。そして、図2(a)に示すチャックテーブル10Aは、保持面12Aの中心部に円形の平坦部12aが形成されたものであって、保持面12Aの平坦部12aを除く部分は、中心を頂点として径方向外方に向かって斜め下方に傾斜する円錐面を構成している。
【0020】
これに対して、図2(b)に示すチャックテーブル10Bは、保持面12Bの中心部に平坦部が形成されていないものであって、その保持面12Bは、中心から径方向外方に向かって斜め下方に傾斜する円錐面を構成している。なお、チャックテーブル10Aとチャックテーブル10Bの各ポーラス部材11A,11Bは、真空ポンプやエジェクタなどの不図示の吸引源に選択的に接続される。また、チャックテーブル10(10A,10B)は、不図示の回転機構によって垂直な中心軸回りに所定の速度で回転駆動される。
【0021】
ここで、本実施の形態に係る研削装置1は、図1に示すように、Y軸方向(前後方向)に長い矩形ボックス状のベース2を備えており、このベース2の上面に開口するY軸方向に長い矩形の開口部2aには、チャックテーブル10が臨んでいる。そして、ベース2の上面の開口部2aのチャックテーブル10の周囲は、矩形プレート状のカバー3によって覆われており、開口部2aのカバー3の前後(-Y方向と+Y方向)の部分は、カバー3と共に移動して伸縮する蛇腹状の伸縮カバー4,5によってそれぞれ覆われている。
【0022】
ところで、図示しないが、ベース2内には、チャックテーブル10を保持面12に対して水平方向(Y軸方向)に移動させる水平移動機構が設けられており、この水平移動機構は、例えば、公知のボールネジ機構などによって構成されているため、これについての説明は省略する。
【0023】
(研削機構)
研削機構20は、チャックテーブル10に保持されたウェーハWの裏面(上面)を研削加工するものであって、ホルダ21に固定されたスピンドルモータ22と、該スピンドルモータ22によって回転駆動される垂直なスピンドル23と、該スピンドル23の下端に取り付けられた円板状のマウント24と、該マウント24の下面に着脱可能に装着された研削ホイール25とを備えている。ここで、研削ホイール25は、円板状の基台25aと、該基台25aの下面に円環状に取り付けられた複数の研削砥石25bによって構成されている。なお、複数の研削砥石25bは、円弧状ブロックによって構成されており、これらの研削砥石25bは、周方向に等角度ピッチで配置されている。
【0024】
(研削水供給ユニット)
研削水供給ユニット30は、図1に示すように、研削水供給源31から配管32を経て研削水を研削砥石25bとウェーハWとの接触部(研削部)に向けて供給するものであって、配管32には、電磁開閉式の開閉バルブVが設けられている。なお、研削機構20のスピンドルモータ22とスピンドル23、マウント24及び研削ホイール25の各中心には、不図示の供給路が垂直に貫設されており、この供給路の一端(上端)に配管32が接続されている。そして、不図示の供給路の他端(下端)は、研削ホイール25の研削砥石25bの中心部に開口している。
【0025】
(垂直移動機構)
垂直移動機構40は、研削機構20をチャックテーブル10の保持面12に対して垂直な方向(Z軸方向)に沿って昇降動させるものであって、図1に示すように、ベース2の上面の+Y軸方向端部(後端部)上に垂直に立設された矩形ボックス状のコラム6の-Y軸方向端面(前面)に配置されている。この垂直移動機構40は、研削機構20のホルダ21の背面に取り付けられた矩形プレート状の昇降板41を、ホルダ21及び該ホルダ21に保持されたスピンドル23と研削ホイール25と共に左右一対のガイドレール42に沿ってZ軸方向に昇降動させるものである。ここで、左右一対のガイドレール42は、コラム6の前面に垂直且つ互いに平行に配設されている。
【0026】
また、左右一対のガイドレール42の間には、回転可能なボールネジ43がZ軸方向(上下方向)に沿って垂直に立設されており、該ボールネジ43の上端は、駆動源である正逆転可能なサーボモータ44に連結されている。ここで、サーボモータ44は、コラム6の上面に取り付けられた矩形プレート状のブラケット45を介して縦置き状態で取り付けられている。また、ボールネジ43の下端は、コラム6に回転可能に支持されており、このボールネジ43には、昇降板41の背面に後方(+Y軸方向)に向かって水平に突設された不図示のナット部材が螺合している。
【0027】
したがって、サーボモータ44を駆動してボールネジ43を正逆転させれば、このボールネジ43に螺合する不図示のナット部材が取り付けられた昇降板41が研削機構20と共にZ軸に沿って上下動する。
【0028】
(高さ測定器)
高さ測定器50は、チャックテーブル10の保持面12の高さを測定するものであって、本実施形態では、保持面12の高さを光学的に非接触で測定する非接触センサが用いられている。ここで、非接触センサは、保持面12の上方に配置され、測定対象であるチャックテーブル10の保持面12に向けて光を投光する投光部と、保持面12で反射した反射光を受光する受光部とを備える。そして、高さ測定器50は、三角測量法を利用して非接触センサと保持面12との距離を算出し、算出した距離から保持面12の高さを求める高さ算出部(何れも不図示)を備えている。なお、高さ測定器50を用いてウェーハWの厚みを測定する場合がある。そのときは、保持面12の高さを測定して記憶しておき、研削加工中にウェーハWの上面高さを測定して、記憶している保持面12の高さとウェーハの上面高さとの差をウェーハWの厚みとして算出する。
【0029】
なお、高さ測定器50は、研削加工中のウェーハWのみの厚みを非接触で光学的に測定するための厚み測定器を用いてもよい。つまり、非接触センサの投光部は、ウェーハWを透過する波長を有する光(近赤外光)を投光する。受光部は、ウェーハWの上面で反射した反射光とウェーハWの下面で反射した反射光とを受光して分光干渉を利用して、反射光の光路差でウェーハWの厚みを非接触で測定する。保持面12の高さを測定する際には、保持面12で反射した反射光と、非接触センサの投光部の下方に配置した基準板の上面で反射した反射光とを受光して保持面12の高さを測定する。なお、高さ測定器50は、保持面12に測定子を接触させて保持面12の高さを測定するハイトゲージであってもよい。
【0030】
(水平移動機構)
水平移動機構60は、非接触センサによって構成された高さ測定器50を、チャックテーブル10の保持面12の上方において、保持面12と平行な水平方向に移動させる機構であって、図1に示すように、ベース2上のチャックテーブル10の近傍に垂直に起立する円筒状の支軸61を備えている。そして、支軸61の内部には、駆動源である電動モータ62と、該電動モータ62の回転数や回転角度、回転方向を検出するエンコーダ63が収容されており、電動モータ62から上方へと延びる垂直な回転軸(モータ出力軸)64の上端からはアーム65が水平に延びており、該アーム65の先端に高さ測定器50が取り付けられている。
【0031】
したがって、電動モータ62を起動して回転軸64を所定の方向に回転させれば、該回転軸64に取り付けられた水平なアーム65が回転軸64を中心としてチャックテーブル10の保持面12の上方を水平に旋回し、該アーム65の先端に取り付けられた高さ測定器50によってチャックテーブル10の保持面12の高さが径方向に沿って測定される。ここで、アーム65の長さは、先端に取り付けられた高さ測定器50の中心がチャックテーブル10の保持面12の中心を通る値に設定されているため、前述のように、アーム65をチャックテーブル10の上方において回転軸64を中心とし水平旋回させると、その先端に取り付けられた高さ測定器50がチャックテーブル10の保持面12の上方を該保持面12の中心から外周に向かって移動し、該高さ測定器50によって保持面12の高さが該保持面12の中心から外周までの任意の位置において測定される。
【0032】
(良否判断部)
良否判断部70は、図2(a)に示すチャックテーブル10Aの保持面12A(中心部に平坦部12aが形成されたもの)と、図2(b)に示すチャックテーブル10Bの保持面12B(中心部に平坦部が設けられていない円錐状のもの)が、高さ測定器50で測定した各保持面12A,12Bの中心から外周に至る複数の測定点での測定値が許容範囲内にあるか否かによって各保持面12A,12Bの良否を判断するものであって、高さ測定器50に電気的に接続されている。この良否判断部70は、制御プログラムにしたがって演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)71と、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などのメモリ72などを備えているが、その具体的な作用については後述する。
【0033】
[チャックテーブルの保持面の良否判断]
チャックテーブル10には、中心部に平坦部12aが形成された図2(a)に示すチャックテーブル10Aと、中心部に平坦部が形成されていない図2(b)に示すチャックテーブル10Bの2種類がある。ここで、中心部に平坦部12aが形成された図2(a)に示すチャックテーブル10Aは、仕上げ厚みが100μm以上の比較的厚いウェーハWを保持するために使用され、中心部に平坦部が形成されていない図2(b)に示すチャックテーブル10Bは、仕上げ厚みが100μm未満の薄いウェーハWを保持するために使用される。
【0034】
ここで、中心部に平坦部12aが形成された図2(a)に示すチャックテーブル10Aについては、基準となる正常なもの(理想的なもの)の保持面の高さが、中心から外周に至る半径方向の複数(本実施形態では、34点(図3参照))の測定点において測定され、各測定値を結んだ図3に示す折れ線A1-Aがチャックテーブル10Aの保持面12Aの良否の判断基準として使用される。なお、この折れ線A1-Aにおける水平な直線A1は、保持面12Aの中心部に形成された平坦部12aの高さを示している。
【0035】
また、中央部に平坦部が形成されていない図2(b)に示すチャックテーブル10Bについは、基準となる正常なもの(理想的なもの)の保持面12Bの高さが、中心から外周に至る半径方向の複数(本実施形態では、34点(図5参照))の測定点において測定され、各測定値を結んだ図5に示す直線Bがチャックテーブル10Bの保持面12Bの良否の判断基準として使用される。
【0036】
而して、中央部に平坦部12aが形成された図2(a)に示すチャックテーブル10Aの保持面12Aの良否の判断についは、図3に示す折れ線A1-Aにて示す理想的な保持面12Aの特性に対して、図4に破線にて示すように、上下に所定の幅を持たせた許容範囲を設定し、図2(b)に示すチャックテーブル10Bの保持面12Bの良否の判断についても、図5に示す直線Bにて示す理想的な保持面の特性に対して、図6に破線にて示すように、上下に所定の幅を持たせた許容範囲を設定する。
【0037】
そして、図1に示す研削装置1には、中心部に平坦部12aが形成された図2(a)に示すチャックテーブル10Aが装着されているものとの認識において、該チャックテーブル10Aの保持面12Aの良否の判断は、次のようになされる。
【0038】
すなわち、研削装置1に装着されたものと想定されるチャックテーブル10Aの保持面12Aの高さを高さ測定器50によって中心から外周部まで測定した結果が、図4(a)に示す折れ線A1’-A’にて示すように、破線にて示す許容範囲に入っている場合には、チャックテーブル10Aの保持面12Aは正常であり、研削装置1には、中心部に平坦部12aが形成された図2(a)に示すチャックテーブル10Aが装着されているものと判断される。
【0039】
これに対して、研削装置1に装着されたものと想定されるチャックテーブル10Aの保持面12Aの高さを高さ測定器50によって中心から外周部まで測定した結果が、図4(b)に示す直線A”にて示すように、破線にて示す許容範囲に入っていない場合には、チャックテーブル10Aの保持面12Aは異常であり、研削装置1には、中央部に平坦部が形成されていない図2(b)に示すチャックテーブル10Bが装着されているものと判断される。
【0040】
他方、図1に示す研削装置1には、中央部に平坦部が形成されていない図2(b)に示すチャックテーブル10Bが装着されているものとの認識において、該チャックテーブル10Bの保持面12Bの良否の判断は、次のようになされる。
【0041】
すなわち、研削装置1に装着されたものと想定されるチャックテーブル10Bの保持面12Bの高さを高さ測定器50によって中心から外周部まで測定した結果が、図6(a)に示す直線B’にて示すように、破線にて示す許容範囲に入っている場合には、チャックテーブル10Bの保持面12Bは正常であり、研削装置1には、中心部に平坦部が形成されていない図2(b)に示すチャックテーブル10Bが装着されているものと判断される。
【0042】
これに対して、研削装置1に装着されたものと想定されチャックテーブル10Bの保持面12Bの高さを高さ測定器50によって中心から外周部まで測定した結果が、図6(b)に示す折れ線B1”-B”にて示すように、破線にて示す許容範囲に入っていない場合には、チャックテーブル10Bの保持面12Bは異常であり、研削装置1には、中央部に平坦部12aが形成された図2(a)に示すチャックテーブル10Aが装着されているものと判断される。
【0043】
因みに、研削装置1には、保持面12Bの中心部に平坦部が形成されていない図2(b)に示すチャックテーブル10Bが装着されているにも拘わらず、保持面12Aの中心部に平坦部12aが形成されている図2(a)に示すチャックテーブル10Aが装着されているものと誤って判断された場合には、ウェーハWの研削加工後にチャックテーブル10Bの保持面12Bを洗浄砥石で洗浄する際に、保持面12Bを洗浄砥石によって余計に削ってしまうという不具合が発生するが、本実施形態においては、このような不具合が発生することがない。
【0044】
以上のチャックテーブル10A,10Bの保持面12A,12Bの良否の判断方法を図7に示すフローチャートにしたがって説明すると、以下のようになる。
【0045】
すなわち、先ず、初期設定がなされ、チャックテーブル10A,10Bの保持面12A,12Bの高さを測定する回数nが0に設定されるとともに(n=0)、測定回数(測定点)の最大値nmaxがN(本実施形態では、N=34)に設定される(図7のステップS1)。
【0046】
次に、図1に示す水平移動機構60によって高さ測定器50がチャックテーブル10A,10Bの保持面12A,12Bの中心へと移動する(ステップS2)。すなわち、図1に示す水平移動機構60の電動モータ62が起動されて回転軸64が所定角度だけ回転すると、該回転軸64の上端に取り付けられたアーム65とその先端に取り付けられた高さ測定器50が回転軸64を中心として同角度だけ回転し、高さ測定器50がチャックテーブル10A,10Bの保持面12A,12Bの中心へと移動する。
【0047】
上述のように、高さ測定器50がチャックテーブル10A,10Bの保持面12A,12Bの中心へと移動すると、該高さ測定器50によって保持面12A,12Bの中心の高さが測定され(ステップS3)、測定回数nがカウントされて測定回数nが2(n=2)に設定される(ステップS4)。その後、高さ測定器50によって測定されたチャックテーブル10A,10Bの保持面12A,12Bの中心の高さが図4または図6に破線にて示す許容値の範囲内にあるか否かが判定される(ステップS5)。この判定の結果、高さ測定器50によって測定されたチャックテーブル10A,10Bの保持面12A,12Bの中心の高さが許容値の範囲内にある場合(ステップS5:Yes)には、高さ測定回数nが初期設定(ステップS1)された最大回数N(本実施形態では、N=34)に達したか否かが判定される(ステップS6)。
【0048】
チャックテーブル10A,10Bの保持面12A,12Bの中心における高さが測定された時点(n=1)では、高さ測定回数nは、最大回数N(=34)に達していないため(ステップS6:No)、図1に示す水平移動機構60によって高さ測定器50が保持面12A,12Bの水平方向に所定距離だけ水平移動し(ステップS7)、ステップS3~S6の処理が、測定回数nが最大回数N(=34)に達するまで繰り返される。そして、高さ測定器50によって測定されたチャックテーブル10A,10Bの保持面12A,12Bの高さが許容範囲内にある状態が全ての測定点(34の測定点)において満足されると(ステップS6:Yes)、すなわち、チャックテーブル10A,10Bの保持面12A,12Bの高さを高さ測定器50によって中心から外周部まで測定した結果が、図4(a)に折れ線A1’-A’にて示すように許容範囲内にある場合、或いは図6(a)に示す直線B’にて示すように許容範囲内にある場合には、チャックテーブル10A,10Bの保持面12A,12Bは正常であるものと判断され(ステップS8)、一連の判断処理を終了する(ステップS10)。
【0049】
他方、高さ測定器50によって測定されたチャックテーブル10A,10Bの保持面12A,12Bの高さが図4(b)に示す直線A”、或いは図6(b)に折れ線B1”-B”にて示すように許容範囲から外れると(ステップS5:No)、その時点でチャックテーブル10A,10Bの保持面12A,12Bは異常であるものと判断され(ステップS9)、判断処理が終了する(ステップS10)。
【0050】
以上の説明で明らかなように、本実施形態によれば、高さ測定器50によって測定したチャックテーブル10A,10Bの保持面12A,12Bの中心から外周に至る複数の測定点での測定値が許容範囲内であるか否かによって該保持面12A,12Bの良否を判断するようにしたため、ウェーハWの仕上げ厚みに対するチャックテーブル(保持面12Aの中心部に平坦部12aが形成された図2(a)に示すチャックテーブル10A、或いは、保持面12Bの中心部に平坦部が形成されていない図2(b)に示すチャックテーブル10B)の保持面12A,12Bの良否を短時間で簡単に判断することができるという効果が得られる。
【0051】
[研削装置の作用]
次に、図1に示す研削装置1の作用、すなわち、研削装置1によるウェーハWの研削方法について説明する。なお、以下においては、便宜上、図2(a)に示すチャックテーブル10Aと図2(b)に示すチャックテーブル10Bを総称してチャックテーブル10とし、それらの保持面12A,12Bを保持面12として説明する。
【0052】
研削装置1によってウェーハWを研削加工するには、ウェーハWがその表面(図1においては、下面)に貼着された保護テープTを下にしてチャックテーブル10の保持面12上に載置される。すると、不図示の吸引源によってチャックテーブル10のポーラス部材11が真空引きされる。すると、ポーラス部材11に負圧が発生し、この負圧に引かれてウェーハWがチャックテーブル10の保持面12上に吸引保持される。
【0053】
上述のように、ウェーハWがチャックテーブル10の保持面12上に吸引保持されると、ベース2内に配置された不図示の水平移動機能によってチャックテーブル10がこれに保持されたウェーハWと共に研削機構20の研削ホイール25に向かって+Y軸方向(後方)へと水平移動する。この状態から、研削機構20のスピンドルモータ22が起動されて研削ホイール25(研削砥石25b)が所定の速度で回転駆動されるとともに、不図示の回転機構によってチャックテーブル10とこれに保持されたウェーハWが所定の速度で回転駆動される。
【0054】
次に、上記状態から垂直移動機構40によって研削ホイール25(研削砥石25b)が下方(-Z軸方向)に下降し、研削砥石25bがウェーハWの上面(裏面)に接触し、ウェーハWの研削加工が行われる。このとき、研削水供給ユニット30の開閉バルブVが開けられ、研削水供給源31から研削水が配管32と研削機構20のスピンドルモータ22、スピンドル23などの軸中心に形成された不図示の供給路を通って研削砥石25bとウェーハWとの接触部に供給され、この研削水による洗浄によって研削屑が除去されるとともに、研削砥石25bとウェーハWとの接触部が冷却される。なお、研削水には、純水が好適に用いられる。
【0055】
また、ウェーハWの研削加工中には、高さ測定器50によってウェーハWの厚みがリアルタイムに測定され、研削加工されているウェーハWの厚みが所定の厚みに達すると、垂直移動機構40によって研削砥石25bが上昇してウェーハWから離間し、1枚のウェーハWに対する一連の研削加工が終了する。
【0056】
ところで、以上の実施形態では、チャックテーブル10の保持面12の高さを非接触で光学的に測定する高さ測定器50を用いたが、超音波によってチャックテーブル10の保持面12の高さを測定する超音波高さ測定器を用いてもよい。ここで、超音波高さ測定器の例を図8図9にそれぞれ示す。
【0057】
図8に示す超音波高さ測定器80は、内部にクランク状に屈曲する流体路81が形成された本体82と、該本体82にその先端が流体路81に臨むよう垂直に取り付けられた超音波ヘッド83を備えている。また、本体82の流体路81には、配管84が接続されており、この配管84は2つの分岐管84a,84bに分岐している。そして、これらの分岐管84a,84bは、エア供給源85と水供給源86にそれぞれ接続されており、各分岐管84a,84bには、電磁開閉式の開閉バルブV1,V2がそれぞれ設けられている。なお、図示しないが、超音波ヘッド83には、超音波を発信する発信部と、チャックテーブル10の保持面12で反射した超音波を受信する受信部が設けられている。
【0058】
また、超音波ヘッド83には、チャックテーブル10の保持面12の良否を判断する良否判断部70が電気的に接続されており、この良否判断部には、超音波ヘッド83から送信される測定データに基づいてチャックテーブル10の保持面12の高さを算出する高さ算出部73と、算出した高さデータや良否判断の基準となる基準データなどを記憶するメモリ72、制御プログラムにしたがって演算処理を行うCPU71などが備えられている。
【0059】
而して、以上のように構成された超音波高さ測定器80においては、一方の開閉バルブV1が閉じられた状態で、他方の開閉バルブV2が開けられると、水供給源86から水(本実施形態では、純水)が84bから配管84を通って本体82の流体路81へと供給され、流体路81からチャックテーブル10の保持面12に供給して該保持面12と超音波ヘッド83との間に流体層87が形成される。この状態から、超音波ヘッド83の発信部から超音波がチャックテーブル10の保持面12に向けて出射されると、この超音波は、保持面12で反射して超音波ヘッド83へと戻って受信部によって受信される。すると、超音波が発信されてから受信されるまでの時間に基づいてチャックテーブル10の保持面12の高さが良否判断部70の高さ算出部73によって算出され、この算出された保持面12の高さに基づいて該保持面12の良否がCPU71によって前述のように判断される。
【0060】
図9に示す超音波高さ測定器80は、本体82に形成された流体路81にエア供給源85からエアを供給し、流体路81からチャックテーブル10の保持面12に向かってエアを噴射しながら、図8に示す超音波高さ測定器80と同様に、チャックテーブル10の保持面12の高さを超音波によって測定するものであって、その基本構成は図8に示す超音波高さ測定器80のそれと同じである。したがって、図9においては、図8に示したものと同じ要素には同一符号を付しており、それらについての再度の説明は省略する。なお、本体82の流体路81にエアを供給するには、一方の開閉バルブV2を閉じた状態で、他方の開閉バルブV1を開く。すると、エア供給源85からのエアが分岐管84aと配管84を経て本体82の流体路81へと供給され、該保持面12と超音波ヘッド83との間に空気層が形成され、水が無い保持面12で超音波を反射させ、保持面12の高さを測定する。なお、保持面12を吸引源に連通させることで保持面12から水を吸引して除去し水が無い保持面12にしてもよい。また、超音波ヘッド83の近傍にエアノズルを配置し保持面12の水を吹き飛ばしてもよい。
【0061】
ところで、図8及び図9に示す超音波高さ測定器80によって、研削加工中のウェーハWの厚みをリイルタイムに測定することができる。
【0062】
なお、超音波高さ測定器80によるウェーハWの厚み測定においては、超音波ヘッド83の受信部は、保持面12に保持されたウェーハWの上面から内部に進入し、ウェーハWの下面で第1の反射回数で反射し、ウェーハWの上面から進出した第1の反射波と、第1の反射回数とは異なる回数で反射し、ウェーハWの上面から進出した第2の反射波とを受信して、第1の反射波と第2の反射波とを受信した時間を基にウェーハWの厚みを測定する。つまり、ウェーハWのみの厚みを測定する超音波厚み測定器を超音波高さ測定器80としても利用する。
【0063】
その他、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0064】
1:研削装置、2:ベース、3:カバー、4,5:伸縮カバー、6:コラム、
10(10A,10B):チャックテーブル、11(11A,11B):ポーラス部材、12(12A,12B):保持面、12a:保持面の平坦部、20:研削機構、
21:ホルダ、22:スピンドルモータ、23:スピンドル、24:マウント、
25:研削ホイール、25a:基台、25b:研削砥石、30:研削水供給ユニット、
31:研削水供給源、32:配管、40:垂直移動機構、41:昇降板、
42:ガイドレール、43:ボールネジ、44:サーボモータ、45:ブラケット、
50:高さ測定器、60:水平移動機構、61:支軸、62:電動モータ、
63:エンコーダ、64:回転軸、65:アーム、70:良否判断部、71:CPU、
72:メモリ、73:高さ算出部、80:超音波高さ測定器、81:流体路、
82:本体、83:超音波ヘッド、84:配管、84a,84b:分岐管、
85:エア供給源、86:水供給源、87:流体層、T:保護テープ、
V,V1,V2:開閉バルブ、W:ウェーハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9