(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162700
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】配線基板
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
H05K1/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078509
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】児玉 博明
【テーマコード(参考)】
5E338
【Fターム(参考)】
5E338AA03
5E338AA16
5E338BB15
5E338BB63
5E338CC01
5E338CC06
5E338CD12
5E338EE11
(57)【要約】
【課題】線路導体同士の厚さを従来より均一にすることが可能な技術を開示する。
【解決手段】本開示の配線基板は、一又は複数の信号線用の線路導体が延びる第1の線路部と、前記第1の線路部より多い複数の信号線用の線路導体が並んで延びる第2の線路部と、前記第1及び第2の線路部のそれぞれの両側に配置され、前記第1及び第2の線路部より広範囲に亘って導体が広がるGND部と、が同じ導電層に含まれている配線基板であって、前記第1の線路部の両側で、前記GND部を貫通する複数の第1の貫通孔と、前記第2の線路部の両側で、前記GND部を貫通する複数の第2の貫通孔と、が備えられ、前記複数の第2の貫通孔の総開口面積より、前記複数の第1の貫通孔の総開口面積が広い。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一又は複数の信号線用の線路導体が延びる第1の線路部と、
前記第1の線路部より多い複数の信号線用の線路導体が並んで延びる第2の線路部と、
前記第1及び第2の線路部のそれぞれの両側に配置され、前記第1及び第2の線路部より広範囲に亘って導体が広がるGND部と、が同じ導電層に含まれている配線基板であって、
前記第1の線路部の両側で、前記GND部を貫通する複数の第1の貫通孔と、
前記第2の線路部の両側で、前記GND部を貫通する複数の第2の貫通孔と、が備えられ、
前記複数の第2の貫通孔の総開口面積より、前記複数の第1の貫通孔の総開口面積が広い。
【請求項2】
請求項1に記載の配線基板であって、
前記複数の第1の貫通孔の各開口面積と、前記複数の第2の貫通孔の各開口面積とは、略同一であり、
前記複数の第2の貫通孔の配置密度より、前記複数の第1の貫通孔の配置密度の方が高い。
【請求項3】
請求項1に記載の配線基板であって、
前記複数の第1の貫通孔及び前記複数の第2の貫通孔は、デガスホールである。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1の請求項に記載の配線基板であって、
前記第1の線路部及び前記第2の線路部の前記線路導体が積層される絶縁層は、23度での、5.8GHzにおける誘電正接が0.02以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の配線基板として、信号線用の複数の線路導体を含む導電層を備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-107860号公報(
図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の導電層の厚さは、均一にならないことがある。その結果、同じ導電層内の複数の線路導体の間で厚さの相違によりインピーダンスが相違し、それが問題になることがある。これに対し、本願は、線路導体同士の厚さを従来より均一にすることが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る配線基板の発明は、一又は複数の信号線用の線路導体が延びる第1の線路部と、前記第1の線路部より多い複数の信号線用の線路導体が並んで延びる第2の線路部と、前記第1及び第2の線路部のそれぞれの両側に配置され、前記第1及び第2の線路部より広範囲に亘って導体が広がるGND部と、が同じ導電層に含まれている配線基板であって、前記第1の線路部の両側で、前記GND部を貫通する複数の第1の貫通孔と、前記第2の線路部の両側で、前記GND部を貫通する複数の第2の貫通孔と、が備えられ、前記複数の第2の貫通孔の総開口面積より、前記複数の第1の貫通孔の総開口面積が広い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、
図1~
図7を参照して本開示の一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態の配線基板10は、コア基板11と、その表裏の両面に積層される第1と第2のビルドアップ層12A,12Bとを有する。
【0008】
コア基板11は、例えば、絶縁層11Kと、その表裏の両面に積層される導電層13とを備える。絶縁層11Kは、例えば、複数のプリプレグが積層される構造をなし、導電層13は、絶縁層11Kに積層される図示しない銅箔に電解メッキ膜が積層される構造をなしている。
【0009】
第1と第2のビルドアップ層12A,12Bは、複数の絶縁層15と複数の導電層20とが交互に積層される構造をなしている。複数の絶縁層15は、例えば、ビルドアップ基板用の絶縁フィルムであり、導電層20は、主として例えば、電解メッキ膜である。また、第1と第2のビルドアップ層12A,12Bの最外層には、ソルダーレジスト層17が積層されている。
【0010】
複数の導電層13,20には、電気回路がプリントされ、絶縁層11K,15を挟んで隣り合う導電層13,20同士の間には、電気回路同士を接続する複数のスルーホール導体14又は複数のビア導体21が形成されている。また、ソルダーレジスト層17には、導電層20の電気回路に含まれる複数のパッド16に対応して複数の開口部17Hが形成され、それら複数の開口部17Hに複数の半田バンプ18が設けられている。
【0011】
図2には、配線基板10の電気回路図の一部が示されている。同図に示されるように、例えば、第1のビルドアップ層12A側の最外の導電層20(以下、単に、「導電層20B」という。)に含まれる複数のパッド16の一部(例えば、8個)は、ビア導体21を介して導電層20Bの次に外側の導電層20(換言すれば、コア基板11から3層目の導電層。以下、単に、「導電層20A」という。)に含まれる複数の線路導体31に接続されている。これら複数の線路導体31は、例えば、全てがひとまとまりになって所定長、平行に延びてから所定複数本のグループと、残りの所定複数本のグループとに分かれてそれぞれ平行に延びている。具体的には、導電層20Aには、3本の線路導体31が平行に延びる第1線路部30Aと、5本の線路導体31が平行に延びる第2線路部30Bと、これら第1線路部30A及び第2線路部30Bとがまとまった8本の線路導体31からなる第3線路部30Cとが含まれている。これら第1~第3の線路部30A~30Cの複数の線路導体31は、何れも、線路幅及び線路導体31同士の間隔が同じなっている。また、導電層20Aに含まれる複数の線路導線31は信号線である。
【0012】
なお、第1~第3の線路部30A~30Cは、所定長(例えば、20mm)以上、延びていればよく、その先で分岐又は合流していてもよい。また、第1~第3の線路部30A~30Cの線路導体31の本数は、複数本でなくても、1本であってもよい。さらに、第1~第3の線路部30A~30Cの線路導体31の本数は、奇数、偶数を問わない。
【0013】
図3に導電層20Aの平面図が示されるように、第1~第3の線路部30A~30Cの両側には、第1~第3の線路部30A~30Cより広範囲に導体が広がるGND部32が配置されている。なお、
図3には、第1及び第2の線路部30A,30Bのみが示されている。
【0014】
ところで、従来の配線基板では、複数の線路導体同士の間で厚さが相異することがあった。具体的には、第1線路部30A及び第2線路部30Bを例に説明する。ここで、
図3の一点鎖線で示されるように、導電層20Aのうち、第1線路部30Aを中心とする所定幅(例えば、8mm)の領域を第1領域41とし、第2線路部30Bを中心とする同じ幅の領域を第2領域42とすると、GND部32の後述する複数の第1及び第2の貫通孔34,35を無視した場合には、GND部32が多い第1領域41の方が第2領域42に比べてメッキする面積が広い。また、導電層20がメッキ法によって形成される場合、メッキ液は、全体の濃度が略均一で単位体積当たりに析出するメッキ量は略同程度であるため、メッキする面積が広い第1領域ではメッキの厚さが薄くなり、第1領域に比べてメッキする面積が小さい第2領域ではメッキの厚さが厚くなる。これに対し、本実施形態では、第1領域41及び第2領域42の間でメッキの面積を略同じにするために、第1領域41及び第2領域42のGND部32に複数の第1及び第2の貫通孔34,35が設けられている。
【0015】
具体的には、第1及び第2の貫通孔34,35は、例えば、同一形状同一寸法の平面視円形で、第1領域41及び第2領域42に含まれるGND部32に配置されてGND部32を貫通している(
図1参照)。また、第1領域41に形成される複数の第1貫通孔34は、第2領域42に形成される複数の第2貫通孔35に比べて多く(即ち、配置密度が高く)、複数の第1貫通孔34の総開口面積が複数の第2貫通孔35の総開口面積より広くなっている。そして、第1領域41と第2領域42とのメッキの面積が略同じになるように、複数の第1及び第2の貫通孔34,35の数が調整されている。これにより、本実施形態では、
図1に示されるように、第1線路部30A及び第2線路部30Bの複数の線路導体31の厚さを略均一にすることができる。
【0016】
また、第3線路部30Cについても、第3線路部30Cを中心とする同じ幅の領域を図示しない第3領域とし、その第3領域に含まれるGND部32に図示しない第3貫通孔を設けて、第1領域41、第2領域42及び第3領域の間でメッキの面積を調整することで、全ての線路導体31の厚さを略均一にすることが可能になる。
【0017】
複数の第1及び第2の貫通孔34,35と第3貫通孔は、メッキの面積を調整する機能に加えて、デガスホールとしても機能する。ここで、上記2つの機能を有する複数の第1及び第2の貫通孔34,35と第3貫通孔は、第1領域41、第2領域42及び第3領域にのみ配置され、第1領域41、第2領域42及び第3領域以外のGND部32にはデガスホールとしてのみ機能する図示しない貫通孔が所定パターンで配置されている。なお、デガスホールとは、配線基板10の製造工程において、加熱の際に配線基板10の内部で発生するガスを外部に排出するためのガス抜き用の孔である。
【0018】
なお、複数の第1及び第2の貫通孔34,35は、円形に限らず、例えば、環状であってもよい。また、複数の第1及び第2の貫通孔34,35は、中心間の距離が等ピッチになるように配置されていればよく、
図3に示される配置パターンに限らず、どのような配置パターンであってもよい。本実施形態では、複数の第1及び第2貫通孔34,35が同一寸法で、複数の第1貫通孔34同士のピッチが複数の第2貫通孔35同士のピッチより狭い例を説明しているが、例えば、
図8に示されるように、第1及び第2の貫通孔34,35同士のピッチを同一にして、第1貫通孔34の大きさを第2貫通孔35に比べて大きくしてもよい。なお、複数の第3貫通孔についても同様である。
【0019】
本実施形態の配線基板10は、例えば、数GHz以上(例えば1~10GHz)の高周波信号が伝送される高速伝送基板であり、導電層20Aに含まれる複数の線路導体31は高速伝送用の信号線である。また、配線基板10では、導電層20Aの下面が当接する絶縁層15を含む全ての絶縁層15が、23度での5.8GHzにおける誘電正接が0.02以下、より好ましくは0.01以下になっている。これにより、導電層20Aの複数の線路導体31を流れる高周波信号の伝送損失が小さくなっている。
【0020】
本開示の配線基板10は、以下のように製造される。
(1)絶縁層11Kの両面に図示しない銅箔が積層されている銅張積層板11Zが用意される。そして、公知の製造方法(例えば、サブトラクティブ法)により、銅張積層板11Zの表裏の両面に導電層13が形成されると共に、絶縁層11Kにスルーホール導体14が形成される(
図4(A)参照)。これにより、コア基板11が形成される。
【0021】
(2)公知の製造方法(例えば、セミアティティブ法)により、コア基板11の表裏の両面に絶縁層15と導電層20とが交互に積層される。これら処理が繰り返され、
図4(B)に示されるように、コア基板11から3層目の絶縁層15までが積層される。
【0022】
(3)次いで、信号層である導電層20Aのシード層を形成するために、無電解メッキ処理により無電解メッキ膜23が形成される(
図5(A)参照)。
【0023】
(4)無電解メッキ膜23上に所定パターンのメッキレジスト25が積層され、メッキレジスト25の非形成部に線路導体31となる溝25AとGND部32となる溝25Bとが形成される(
図5(B)参照)。また、このとき、
図5(B)の一点鎖線にて示される第1領域41及び第2領域42に含まれる溝25B部分に、複数の第1及び第2の貫通孔34,35となる平面視円形の複数の支柱25Sが設けられる。
【0024】
(5)次いで、
図6(A)に示されるように、電解メッキ処理が行われる。このとき、本実施形態では、第1領域41及び第2領域42のメッキされる面積が略同じになるように複数の支柱25Sの配置密度が調整されているので、電解メッキ膜24全体が略均一な厚さで形成される。
【0025】
(6)
図6(B)に示されるように、メッキレジスト25の剥離とメッキレジスト25の下側の無電解メッキ膜23が剥離されて、厚さが均一な導電層20Aが得られる。これにより、複数の線路導体31間で厚さが均一になる。
【0026】
(7)上述した(2)の工程と同様に、絶縁層15と導電層20Bとが交互に積層されて、第1及び第2のビルドアップ層12A,12Bが得られる。
【0027】
(8)次いで、
図7(A)に示されるように、ソルダーレジスト層17が積層される。そして、ソルダーレジスト層17の所定箇所に、例えば、レーザ加工やフォトリソグラフィ処理等により、開口17Hが形成され、導電層20のうち開口17Hによりソルダーレジスト層17から露出した部分にパッド16が形成される(
図7(B)参照)。
【0028】
(9)パッド16上に、半田バンプ18が形成される(
図1参照)。以上により配線基板10が完成する。
【0029】
本実施形態の配線基板10の構造及びその製造方法に関する説明は以上である。次に配線基板10の作用効果について説明する。このように、本開示の配線基板10では、第1線路部30A及び第2線路部30Bの両側のGND部32に設けられる複数の第1貫通孔34の総開口面積を複数の第2貫通孔35の総開口面積より広くして、第1線路部30A周辺と第2線路部30B周辺とのメッキの面積の差を小さくすることができる。これにより、従来より第1線路部30A及び第2線路部30Bの複数の線路導体31の厚さを均一にすることができる。
【0030】
また、本実施形態では、複数の第1及び第2の貫通孔34,35の各開口面積を略同一として、複数の第1貫通孔34の配置密度を複数の第2貫通孔35の配置密度より高くするという簡易な構成で複数の線路導体31の厚さの均一化を実現することができる。しかも、これら第1及び第2の貫通孔34,35は、メッキ面積の調整機能に加えてデガスホールとしても機能し、配線基板10内のボイドの発生を抑制することができる。
【0031】
[他の実施形態]
(1)上記実施形態では、複数の導電層13,20のうち1つの導電層20Aのみに複数の線路導体31が含まれていたが、複数の導電層13,20に複数の線路導体31が含まれていてもよい。
【0032】
(2)上記実施形態では、第1ビルドアップ12Aのみに複数の線路導体31を備える例を説明したが、第2のビルドアップ層12Bに複数の線路導体31を備えていてもよい。また、配線基板10は、コア基板11の両側に第1及び第2のビルドアップ層12A,12Bを備えるものに限らず、コア基板11の片面にのみビルドアップ層を備えるものであってもよい。
【0033】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【符号の説明】
【0034】
10 配線基板
20,20A,20B 導電層
30A 第1線路部
30B 第2線路部
31 線路導体
32 GND部
34 第1貫通孔
35 第2貫通孔