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特開2024-162701単体で超大容量の固体重合物リチウムイオン電池及びその製造方法
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  • 特開-単体で超大容量の固体重合物リチウムイオン電池及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162701
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】単体で超大容量の固体重合物リチウムイオン電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20241114BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241114BHJP
   H01M 50/54 20210101ALI20241114BHJP
   H01M 50/463 20210101ALI20241114BHJP
   H01M 50/449 20210101ALI20241114BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20241114BHJP
   H01M 50/618 20210101ALI20241114BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20241114BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/052
H01M50/54
H01M50/463 B
H01M50/449
H01M50/403 D
H01M50/618
H01M50/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078511
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】523174745
【氏名又は名称】株式会社アンパワー
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】朝日 正雄
【テーマコード(参考)】
5H011
5H021
5H023
5H029
5H043
【Fターム(参考)】
5H011AA03
5H011AA09
5H011FF06
5H021BB12
5H021CC04
5H021CC19
5H021HH06
5H021HH10
5H023AA03
5H023AS05
5H023BB05
5H023BB07
5H023BB10
5H029AJ03
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AL07
5H029BJ04
5H029BJ12
5H029CJ13
5H029CJ14
5H029CJ28
5H029DJ04
5H029DJ05
5H029HJ00
5H029HJ15
5H043AA19
5H043BA19
5H043CA08
5H043CA13
5H043EA06
5H043EA32
5H043EA33
5H043LA21E
5H043LA23E
5H043LA33E
(57)【要約】
【課題】容量が大きい、単体で超大容量の固体重合物リチウムイオン電池及びその製造方法を提供する。
【解決手段】固体重合物リチウムイオン電池100は、交互に積層された正極板20及び負極板30と、隣接して積層された正極板20と負極板30とを仕切るためのセパレータ40とを含み、正極板20及び負極板30のうちの少なくとも一方は複数であり、正極板20は総正極タブ50に並列接続され、負極板30は総負極タブに並列接続されている。正極板20にはサブ正極タブ21が設けられ、少なくとも一部のサブ正極タブ21は金属ストリップ70を介して総正極タブ50に直列接続され、負極板30にはサブ負極タブが設けられ、少なくとも一部のサブ負極タブは金属ストリップ70を介して総負極タブに直列接続される。これにより、固体重合物リチウムイオン電池100の容量を向上させた。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交互に積層された正極板及び負極板と、
隣接して積層された前記正極板と前記負極板とを仕切るためのセパレータとを含み、
前記正極板及び前記負極板のうちの少なくとも一方は複数であり、前記正極板は総正極タブに並列接続され、前記負極板は総負極タブに並列接続され、
前記セパレータは、隣接して積層された前記正極板と前記負極板との間に設けられる複数の仕切部、及び隣接して設けられた前記仕切部を接続するための接続部を含み、2つの前記仕切部及び1つの前記接続部により囲まれることで前記正極板又は前記負極板を収容するための1つの仕切室が形成され、前記正極板を収容するためのすべての前記仕切室の向きはいずれも同じであり且つ第1側に位置し、前記負極板を収容するためのすべての前記仕切室の向きはいずれも同じであり且つ第2側に位置し、前記総正極タブは前記第1側に設けられ、前記総負極タブは前記第2側に設けられ、
前記正極板にはサブ正極タブが設けられ、少なくとも一部の前記サブ正極タブは金属ストリップを介して前記総正極タブに直列接続され、前記負極板にはサブ負極タブが設けられ、少なくとも一部の前記サブ負極タブは金属ストリップを介して前記総負極タブに直列接続される、
単体で超大容量の固体重合物リチウムイオン電池。
【請求項2】
前記セパレータは、ベースフィルムと前記ベースフィルムに塗布される絶縁層とからなる、請求項1に記載の固体重合物リチウムイオン電池。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の固体重合物リチウムイオン電池の製造方法であって、
前記正極板と前記負極板とを交互に積層し、隣接して積層された前記正極板と前記負極板とを仕切るためのセパレータを前記正極板と前記負極板との間に取付けて、前記正極板を前記総正極タブに並列接続させて、前記負極板を前記総負極タブに並列接続させて、セルを得るステップと、
前記セルの外面を膜封止するステップと、
前記膜封止されたセル内を真空排気するステップと、
前記真空排気されたセル内に真空注液するステップと、
前記真空注液されたセルを化成するステップと、
前記化成されたセルをエージングし、容量グレーディングするステップと、を含む、
固体重合物リチウムイオン電池の製造方法。
【請求項4】
前記真空注液は、前記セルを水平面に対して傾斜して置いた状態で行われ、前記傾斜の角度は、5~45度である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記真空注液は、真空環境で行われ、前記真空環境の真空度は、-0.05~-0.1MPaである、請求項3に記載の製造方法。
【請求項6】
前記真空注液のステップは、注液の操作の後に静置することをさらに含み、前記静置は、前記セルの一方の主面を上向きにして水平面に対して1~10度の傾斜角度で5~20h置き、その後、前記セルの他方の主面を上向きにして水平面に対して1~10度の傾斜角度で5~20h置く、請求項3に記載の製造方法。
【請求項7】
前記静置は、前記セルの両主面が挟まれた条件で行われる、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記化成のステップ及び前記エージングのステップは、前記セルの両主面が挟まれた条件で行われる、請求項3に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池の技術分野に関し、具体的には、単体で超大容量の固体重合物リチウムイオン電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、比亜迪社製のリン酸鉄リチウムイオン電池は、その単体の容量が一般的に260Ah以下のものしか製造できていない。国際上、容量が最も大きなものは、日産製の40Ahの電池である。これ以上の容量を持つ電池は、まだ量産化されていない。
【0003】
従来技術において、より大きな容量を備える電池が必要な場合には、現在、一般的に以下のいくつかの方法がある。
【0004】
1つ目の方法は、小容量の電池を並列接続して1つの電池モジュールとすることで大容量化を実現することである。このような方法で作られた大容量電池では、並列接続された小容量の電池の間で互いに放電し、電池の充電能力に影響を与え、また、電池が並列接続された後、電池管理システムによって各電池の品質問題をモニタリングすることができず、たとえそのうち1個の電池が壊れていても検出できないため、小容量の電池を並列接続して大容量の電池を作る方法は、科学的な方法ではない。
【0005】
2つ目の方法は、硬質ケース包装で電池のサイズを拡大して電池単体の大容量化を実現することである。このような構造の電池の正負極は、一般的に鉛蓄電池の作り方を踏襲し、正極及び負極は、金属の極柱で引き出される。この作り方の1つの欠点として、極柱を任意に設計できず、ケース自身のサイズにより制限されるため、容量が500Ah以上になると、極柱が発熱し、電池の性能及び安全性に影響を与えることである。もう1つの欠点として、硬質ケースで作られた大容量電池では、防爆弁が設けられているが、通常、電池の安全性の問題が秒レベルで発生し、防爆弁が効果的に機能をするとは限らず、安全上の問題が発生する恐れがある。
【0006】
3つ目の方法は、重合物構造で作ること、即ち、外装材としてアルミニウムプラスチック複合フィルムを用いることである。現在、一般的なメーカでは、容量を50Ah以下にすることしかできていない。メーカによっては、サイズを拡大して容量を大きくしているが、長さ及び幅の寸法を拡大するだけで、厚さは一般的に20mmまでにすることしかできず、これにより、電池の容量が制限され、実際には電池容量を500Ahを超えるようにすることは難しい。
【0007】
以上の従来技術において、電池の容量は、様々な要因に制限されるため、高い容量を得ることは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、容量が大きい、単体で超大容量の固体重合物リチウムイオン電池及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る単体で超大容量の固体重合物リチウムイオン電池は、交互に積層された正極板及び負極板と、隣接して積層された前記正極板と前記負極板とを仕切るためのセパレータとを含み、前記正極板及び前記負極板のうちの少なくとも一方は複数であり、前記正極板は総正極タブに並列接続され、前記負極板は総負極タブに並列接続され、前記セパレータは、隣接して積層された前記正極板と前記負極板との間に設けられる複数の仕切部、及び隣接して設けられた前記仕切部を接続するための接続部を含み、2つの前記仕切部及び1つの前記接続部により囲まれることで前記正極板又は前記負極板を収容するための1つの仕切室が形成され、前記正極板を収容するためのすべての前記仕切室の向きはいずれも同じであり且つ第1側に位置し、前記負極板を収容するためのすべての前記仕切室の向きはいずれも同じであり且つ第2側に位置し、前記総正極タブは前記第1側に設けられ、前記総負極タブは前記第2側に設けられ、前記正極板にはサブ正極タブが設けられ、少なくとも一部の前記サブ正極タブは金属ストリップを介して前記総正極タブに直列接続され、前記負極板にはサブ負極タブが設けられ、少なくとも一部の前記サブ負極タブは金属ストリップを介して前記総負極タブに直列接続される。
【0010】
前記セパレータは、ベースフィルムと前記ベースフィルムに塗布される絶縁層とからなる。
【0011】
本発明に係る単体で超大容量の固体重合物リチウムイオン電池の製造方法は、前記正極板と前記負極板とを交互に積層し、隣接して積層された前記正極板と前記負極板とを仕切るためのセパレータを前記正極板と前記負極板との間に取付けて、前記正極板を前記総正極タブに並列接続させて、前記負極板を前記総負極タブに並列接続させて、セルを得るステップと、前記セルの外面を膜封止するステップと、前記膜封止されたセル内を真空排気するステップと、前記真空排気されたセル内に真空注液するステップと、前記真空注液されたセルを化成するステップと、前記化成されたセルをエージングし、容量グレーディングするステップと、を含む。
【0012】
前記真空注液は、前記セルを水平面に対して傾斜して置いた状態で行われ、前記傾斜の角度は、5~45度である。
【0013】
前記真空注液は、真空環境で行われ、前記真空環境の真空度は、-0.05~-0.1MPaである。
【0014】
前記真空注液のステップは、注液の操作の後に静置することをさらに含み、前記静置は、前記セルの一方の主面を上向きにして水平面に対して1~10度の傾斜角度で5~20h置き、その後、前記セルの他方の主面を上向きにして水平面に対して1~10度の傾斜角度で5~20h置く。
【0015】
前記静置は、前記セルの両主面が挟まれた条件で行われる。
【0016】
前記化成のステップ及び前記エージングのステップは、前記セルの両主面が挟まれた条件で行われる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数の正極板と負極板とを積層することにより、複数の電池モジュールを形成し、単体での超大容量化を実現することができる。使用時には、直列接続して使用することで、電池群の電圧を向上させることができ、給電のニーズを満たすことができる。
【0018】
本発明の上記目的、特徴及び利点をより明らかにするために、以下、好ましい実施例を例として挙げて、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明の実施例の技術案をより明瞭に説明するために、以下、実施例に使用される必要な図面を簡単に説明する。以下の図面は、本発明のいくつかの実施例を例示するにすぎないため、本発明の範囲に対する限定と見なされるべきではなく、当業者にとって、創造的な労力を払わずにこれらの図面に基づいて他の関連図面を得ることもできると理解すべきである。
図1】本発明の一実施例による固体重合物リチウムイオン電池の構造の模式図を示す。
図2】本発明の他の一実施例による固体重合物リチウムイオン電池の構造の模式図を示す。
図3】本発明のさらなる一実施例による固体重合物リチウムイオン電池の構造の模式図を示す。
図4】本発明の別の実施例による固体重合物リチウムイオン電池の構造の模式図を示す。
図5】本発明の別の実施例による正極板の構造の模式図を示す。
図6】本発明の別の実施例による負極板の構造の模式図を示す。
図7】本発明の別の実施例によるセパレータの構造の模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の理解のために、以下、図面を参照して単体で超大容量の固体重合物リチウムイオン電池についてより包括的に説明する。図面は好ましい実施例を示している。ただし、本発明は、多くの異なる形態で実現することができ、本明細書に説明された実施例に限定されない。一方、これらの実施例を提供する目的は、本発明の開示内容をより明瞭、かつ、包括的にすることである。
【0021】
本開示の様々な実施例において使用される用語は、特定の実施例を説明する目的で使用されることにすぎず、本開示の様々な実施例を制限するためではない。ここで使用される場合に、単数形は、文脈上特に明瞭に指定されない限り、複数の形も含むことを意図している。特に限定されない限り、ここで使用される、技術的用語及び科学的用語を含むすべての用語は、本開示の様々な実施例が属する分野の当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。上記用語(例えば一般的に使用される辞書で記載される用語)は、本開示の様々な実施例において明瞭に限定されない限り、関連技術分野における文脈上の意味と同じ意味を有するものとして解釈され、理想的な意味又は正式すぎる意味を有するものとして解釈されない。
【0022】
本発明の説明において、「縦方向」、「横方向」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「鉛直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」などの用語により示される方位又は位置関係は、図面に基づいて示される方位又は位置関係であり、本発明を説明しやすく、かつ、説明を簡略化するためのものにすぎず、かかる装置又は要素が特定の方位を有し、特定の方位で構成して操作しなければならないことを明示する、又は、暗示するものではないため、本発明を制限するためのものと解釈されないと理解すべきである。
【0023】
本明細書の説明において、「1つの実施例」、「いくつかの実施例」、「例」、「具体例」、又は「いくつかの例」などの参照用語は、この実施例又は例を参照して説明された具体的な特徴、構造、材料、又は、特性が本発明の少なくとも1つの実施例又は例に含まれることを意味する。本明細書では、上記用語の模式的な表現は、必ずしも同じ実施例又は例を指すわけではない。また、説明された具体的な特徴、構造、材料、又は、特性は、任意の1つ又は複数の実施例又は例において、適切な形態で組み合わされてもよい。
【0024】
説明すべきことは、本発明の説明において、特に規定や限定がない限り、「取付け」、「繋がり」、「接続」という用語は、広義に理解されるべきであり、例えば機械的な接続又は電気的な接続であってもよく、2つの要素の内部の連通であってもよく、直接的な繋がりであってもよく、中間媒体を介する間接的な繋がりであってもよく、当業者にとって、具体的な状況に応じて上記用語の具体的な意味を理解することができる。
【0025】
本開示の様々な実施例において使用される表現(例えば「第1」、「第2」など)は、様々な実施例における様々な構成要素を修飾することができるが、該当する構成要素を制限しない。例えば、上記表現は、かかる要素の順番及び/又は重要性を制限しない。上記表現は、1つの要素を他の要素と区別するために使用されることにすぎない。例えば、第1のユーザ装置と第2のユーザ装置とは、両方がいずれもユーザ装置であるが、異なるユーザ装置を示す。例えば、本開示の様々な実施例の範囲を逸脱しない限り、第1の要素は、第2の要素と呼ばれてもよく、同様に、第2の要素は、第1の要素と呼ばれてもよい。
【0026】
注意すべきことは、1つの構成要素を別の構成要素に「接続」すると記述されている場合には、第1の構成要素を第2の構成要素に直接接続してもよく、第1の構成要素と第2の構成要素との間に第3の構成要素を「接続」してもよい。一方、1つの構成要素を別の構成要素に「直接接続」する場合、第1の構成要素と第2の構成要素との間に第3の構成要素が存在しないと理解されることができる。
【0027】
なお、本発明の要素又は構成要素の前の不定冠詞である「一種」又は「1つ」は、要素又は構成要素の数(即ち、現す回数)について制限しない。そのため、「1つ」又は「一種」は、1つである、又は、少なくとも1つを含むと解読されるべきであり、単数形の要素又は構成要素は、その数が明らかに単数形を指す場合以外、複数形も含む。
【0028】
図1図2図3、及び、図4を参照する。本発明の実施例による単体で超大容量の固体重合物リチウムイオン電池100は、セパレータ40と、交互に積層された正極板20及び負極板30とを含み、正極板20と負極板30とのうちの少なくとも一方は、複数であり、正極板20は、総正極タブ50に並列接続されており、負極板30は、総負極タブ60に並列接続されている。これにより、固体重合物リチウムイオン電池100の容量を向上させた。セパレータ40は、隣接して積層された正極板20と負極板30とを仕切るために用いられる。
【0029】
上記実施例では、単体で超大容量の固体重合物リチウムイオン電池100では、正極板20と負極板30とが複数積層されて、複数の電池モジュールが形成されている。使用時に、そのうちのいくつかの正極板20及び負極板30のペアを直列接続してもよく、これにより、固体重合物リチウムイオン電池100の電圧を向上させた。
【0030】
ここで、「積層」とは、層構造を有する複数のもの(例えばフィルムなど)が一方を他方の表面に貼り合わせるようにラミネートする方法を指すと理解されてもよい。A、B、C、Dの順に重ねて設けることを例にすると、Aの1つの表面にBを設け、Bの表面にCを設け、Cの表面にDを設けることを指し、即ち、ある方向(例えば上から下へ)に沿って、A、B、C、Dを順に並べることを指す。
【0031】
上記した「交互に」配列することは、A-Bのように配列するのではなく、例えば、隣接するAの間に1つのBを介在してA-B-A-B-A-・・・のように配列したり、隣接するAの間に2つのBを介在してA-B-B-A-B-B-Aのように配列したり、3つのBを介在して配列したり、複数のAを介在して配列したりするなどのことを指し、ここで、A、Bは、正極板20と負極板30とを表す。本発明において、交互に配列することの比較的好ましい実施の形態は、A-B-A-B-A-・・・である。
【0032】
図7を参照する。1つの好ましい形態では、上記セパレータ40は、隣接して積層された正極板20と負極板30との間に設けられるための複数の仕切部42と、隣接して設けられた仕切部42を接続するための接続部41とを含んでもよく、2つの仕切部42と1つの接続部41とにより囲まれることで正極板20、負極板30を収容するための1つの仕切室43が形成される。
【0033】
各仕切室43は、1つの正極板20又は1つの負極板30を収容するために用いられると理解できる。隣接する位置にある仕切室43は、共通の仕切部42を有する。
【0034】
ここで、仕切室43は、後述するサブ正極タブ21とサブ負極タブ31を設けるための開口を1つ有する。隣接して設けられた仕切室43の開口の向きは逆であることが好ましい。想象しやすいように、複数の仕切室43のこのような配置は、繋がった「己」字型(又は「Z」字型と称する)を構成し、収容される正極板20と負極板30とが交互に積層されるため、正極板20が収容されるすべての仕切室43(正極仕切室43とする)の向きは、すべて同じであり、且つ、第1側に位置する。負極板30が収容されるすべての仕切室43(負極仕切室43とする)は、すべて同じであり、且つ、第2側に位置する。これにより、総正極タブ50を第1側に設けて、総負極タブ60を第2側に設けることを容易にし、総正極タブ50と総負極タブ60とが外部接続用リード線に接続された際の誤接触に起因する電池の短絡を回避する。
【0035】
上記セパレータ40は、1つのシート状のものが折り曲げて形成されてもよい。具体的には、このシート状のセパレータ40は、ベースフィルムと、このベースフィルムに塗布される絶縁層とから構成されてもよい。絶縁層は、電池の安全性及び信頼性を高めることができる。ここで、絶縁層の材料は、PVDF、PAAに代表される高分子接着剤やセラミック粉末(例えばAl、SiO)による塗材であってもよい。絶縁層の厚さは、0.001~0.03mmである。
【0036】
図5を参照する。正極板20と総正極タブ50との並列接続によるマウントを実現するために、正極板20には、サブ正極タブ21が設けられてもよい。即ち、各正極板20には、少なくとも1つのサブ正極タブ21が設けられている。サブ正極タブ21の数及びサイズは、必要に応じて設定される。
【0037】
ここで、サブ正極タブ21は、正極板20の1つの辺又は2つの辺に設けられる。
【0038】
図6を参照する。負極板30と総負極タブ60との並列接続によるマウントを実現するために、負極板30には、サブ負極タブ31が設けられてもよい。即ち、各負極板30には、少なくとも1つのサブ負極タブ31が設けられている。サブ負極タブ31の数及びサイズは、必要に応じて設定される。
【0039】
ここで、サブ負極タブ31は、負極板30の1つの辺又は2つの辺に設けられる。
【0040】
マウントする時に、すべてのサブ正極タブ21は、総正極タブ50に直接接続されてもよく、すべてのサブ負極タブ31は、総負極タブ60に直接接続されてもよい。図2及び図4を参照する。別の実施の形態として、サブ正極タブ21は、すべてではなく、その一部が金属ストリップ70(例えば、アルミニウムストリップ)に溶接されてから総正極タブ50に接続されてもよい。サブ負極タブ31は、すべてではなく、その一部が金属ストリップ70(例えば、銅ストリップ)に溶接されてから総負極タブ60に接続されてもよい。
【0041】
上記した「正極板20と負極板30とのうちの少なくとも一方は、複数である」ことについて、1つの具体的な実施の形態として、正極板20は20層以上であり、例えば111層である。負極板30の層数は20層以上であり、例えば110層である。正極板20の材質はアルミニウムストリップであってもよく、負極板30の材質は銅ストリップであってもよい。
【0042】
上記総正極タブ50、総負極タブ60は、その幅が100mm以上であり、その厚さが0.08mm以上であってもよい。総正極タブ50の材質は、アルミニウムストリップであってもよく、総負極タブ60の材質は、銅ストリップ、ニッケルストリップ、ニッケルメッキ銅ストリップ、又は、銀メッキ銅ストリップであってもよい。
【0043】
本発明に開示された固体重合物リチウムイオン電池の製造方法は、
正極板20と負極板30とを交互に積層し、正極板20と負極板30との間に隣接して積層された正極板20と負極板30とを仕切るためのセパレータ40を取付けて、正極板20を総正極タブ50に並列接続させて、負極板30を総負極タブ60に並列接続させて、セルを得るステップと、
セルの外面を膜封止するステップと、
膜封止されたセル内を真空排気するステップと、
真空排気されたセル内に真空注液するステップと、
真空注液されたセルを化成するステップと、
化成充電されたセルをエージングし、容量グレーディングするステップと、を含む。
【0044】
上記セルを得るステップにおいて、総正極タブ50又は総負極タブ60の位置は、電池容量の大きさに応じて、片側に1つの小タブ、片側に2つ又は2つ以上の小タブ、片側に1つの大タブ又は両側のそれぞれに1つずつの大タブの順に選択されてもよい。柔軟なタブ構造により、様々な電池容量へのニーズに適応できる。これにより、電池が通常の放電電流で使用される場合には、タブが発熱することなく、電池の正常な性能を確保する。
【0045】
サブ正極タブ21と総正極タブ50とを直接又は間接に溶接し、かつ、サブ負極タブ31と総負極タブ60とを直接又は間接に溶接する際に、極板の層数が多すぎることに起因してタブが引っ張られすぎること(特に電池が膨張した後、タブが引っ張られて破断すること)を回避するために、複数のサブ正極タブ21とサブ負極タブ31とを揃えた後、タブを並べてS型に折りたたんで、引っ張られた際に伸ばせる領域を確保できる。
【0046】
上記膜封止とは、フィルム状の物を用いてセルの外面を封止することであり、操作方法として、予めプレス型で2つのシェルをプレス加工し、合体してセルを装着した後、まず、上部を封止し、そして底部を封止し、最後に側部を封止することである。この膜封止に用いられるフィルム状の物は、アルミニウムプラスチックフィルムを含むが、これに限定されない。膜封止の操作の後、乾燥の操作をさらに含む。
【0047】
参考として、膜封止用のパウチの深さは5~10mmであり、パウチの辺のR角は5~20であり、延長された封止領域の距離dは5~20mmであってもよく、このようなパウチは組み立てることでベアセルを係止し、位置決めることができ、そして、封止領域を延長することにより、封止部を平らにする効果を奏することができるため、電池の厚さをより厚くすることができ、体積を三次元方向において増加し、電池の容量をより大きくすることができる。
【0048】
上記真空注液のステップにおいて、真空注液は、電池に電解液を注入する工程である。電解液が電池に加えられて一度に吸収されセルが膨張して壊れることを回避するために、注液の操作は、セルを水平面に対して傾斜して置いた状態で行われ、この傾斜の角度は、5~45度である。
【0049】
真空注液は、真空環境で行われることが好ましく、上記真空環境の真空度は、-0.05~-0.1MPaである。
【0050】
真空注液の操作後に静置することが好ましく、ここで、静置することは以下の利点がある。小容量の電池は、縦置き又は横置きで電池を静置するのが一般的である。大容量の電池は、電池の長さ及び幅がいずれも大きいため、縦置きされれば、底部の電解液が電池の頂部に浸透しにくく、横置きされれば、注入した電解液が封止されていない開口部から流出しやすく、その後の封止領域を汚染する。そのため、本発明は、電池をやや傾斜する平面に置き、そして、一定時間後に裏返して処理を施すことにより、封止されていない領域を汚染することなく、電解液の内部への浸透時間を大幅に短縮できた。
【0051】
ここで開示された静置は、具体的には、まず、セルの一方の主面を上向きにして水平面に対して1~10度の傾斜角度で5~20h置き、そして、セルの他方の主面を上向きにして水平面に対して1~10度の傾斜角度で5~20h置く。
【0052】
ここで、静置は、セルの両主面が挟まれた条件で行われる。挟むことで、電池が膨張して破損することを防止することができる。
【0053】
上記真空排気のステップの目的は、以下のとおりである。容量の小さい電池は注液の後にしばらく静置され、その後、通常、直接充電されることになるが、電池の体積が比較的大きい場合、電池内部に残留したガスにより極板とセパレータとの間に気相界面が存在し、充電の時にリチウムイオンが失われ、性能に影響し、さらに安全問題を引き起こすおそれがある。そこで、まず、セルに対して一度真空排気処理を行い、極板とセパレータとの間に固相及び液相のみが存在することを確保し、イオンが円滑に伝導することを確保する。真空排気は、プレパッケージングとも呼ばれる。
【0054】
同様に、化成のステップ及びエージングのステップは、セルの両主面が挟まれた条件で行われることにより、電池内部の緩み又は位置ずれを予防することができる。
【0055】
セルの両主面を挟むために、公知の任意のクランプ装置を採用してもよい。
【0056】
<実施例1>
500Ahの大容量電池の製造方法は、具体的に以下のとおりである。
【0057】
ステップ1において、総正極タブ50と総負極タブ60とを選択する。電池の最大出力電流を1Cとして、即ち、500Aとして計算する。総正極タブ50は、アルミニウムストリップを採用し、その幅a1を280mmとし、その厚さt1を0.4mmとする。総負極タブ60は、銅ストリップを採用し、その幅a2を280mmとし、その厚さt2を0.3mmとする。アルミニウムストリップの電気伝導性能(電流密度)を6A/mmとし、銅ストリップの電気伝導性能(電流密度)を8A/mmとすると、総正極タブ50に流せる電流は、280×0.4×6=672Aであり、総負極タブ60に流せる電流は、280×0.3×8=672Aであり、電池の総正極タブ50及び総負極タブ60は、過電流の要求に合致する。
【0058】
ステップ2において、電池のサイズを選択する。工場の設備加工能力に応じて、電池は、その長さbが430mmに設定され、その幅aが800mmに設定される。周辺の封止領域を除くと、正極板20は、その長さb3が374mmであり、その幅a3が754mmであり、サブ正極タブ21の幅a4が280mmである。正極活物質としてリン酸鉄リチウムを採用すると、その比容量が137mAh/gであり、活物質含有量93%、圧縮密度2.1g/cm、集電体アルミニウム箔の厚さ0.016mmを選択し、片面塗布の面密度を135g/mとすると、各正極板20の厚さが0.145mmであり、かつ、各層の容量が9.7Ahであると算出でき、500Ahに達成するには、実際の設計で6%の余裕を持つ530Ahに達成するために、55層の正極板20が必要であり、本実施例において、正極板20が外側にあるため、56層の正極板20が必要である。負極板30は、その長さb5が380mmであり、その幅a5が760mmであり、サブ負極タブ31の幅a6が280mmである。負極活物質として人造黒鉛を採用すると、その比容量が330mAh/gであり、活物質含有量93%、圧縮密度1.5g/cm、集電体銅箔の厚さ0.012mmを選択し、片面塗布の面密度を64g/mとすると、各層の負極板30の厚さが0.097mmであると算出でき、正極板20に合わせて55層の負極板30を使用する。
【0059】
ステップ3において、本実施例において、セパレータ40は、その厚さが0.032mmであり、その表面が接着剤(例えば、PVDF、PAAなど)、セラミック粉末(例えば、Al、SiO)、又は、混在する接着剤とセラミック粉末を塗布して処理され、処理後の合計の厚さは、0.038mmである。
【0060】
ステップ4において、電池を組み立てる。セパレータ40によって56層の正極板20と55層の負極板30とを仕切って厚さが17.6mmであるベアセルを形成し、すべての正極板20と総正極タブ50とを溶接し、すべての負極板30と総負極タブ60とを溶接し、そして、深さc1が10mmであるパウチにプレスされた2枚のアルミニウムプラスチックフィルムを使用し、溶接されたベアセルを封入した後にヒートシール、真空注液、化成、エッジトリミングなどの工程を経て、最終的に、厚さtが20.5mmであり、幅aが800mm(エッジが折れていない)であり、かつ、長さbが450mmである、単体で超大容量の固体重合物リチウムイオン電池100が得られる。
【0061】
<実施例2>
1000Ahの大容量電池の製造は、具体的に以下のとおりである。
【0062】
ステップ1において、総正極タブ50と総負極タブ60とを選択する。電池の最大出力電流を1Cとして、即ち、1000Aとして計算する。総正極タブ50は、アルミニウムストリップを採用し、その幅をa1が280mmとし、その厚さt1を0.4mmとする。総負極タブ60は、銅ストリップを採用し、その幅a2を280mmとし、その厚さt2を0.3mmとする。アルミニウムストリップの電気伝導性能(電流密度)を6A/mmとし、銅ストリップの電気伝導性能(電流密度)を8A/mmとすると、総正極タブ50に流せる電流は、280×0.4×6=672Aであり、総負極タブ60に流せる電流は、280×0.3×8=672Aであり、過電流の要求に合致するために、電池の総正極タブ50及び総負極タブ60はいずれも2つが必要である。
【0063】
ステップ2において、電池のサイズを選択する。工場の設備加工能力に応じて、電池は、その長さbが430mmに設定され、その幅aが800mmに設定される。周辺の封止領域を除くと、正極板20は、その長さb3が374mmであり、その幅a3が754mmであり、サブ正極タブ21の幅a4が280mmである。正極活物質としてリン酸鉄リチウムを採用すると、その比容量が137mAh/gであり、活物質含有量93%、圧縮密度2.1g/cm、集電体アルミニウム箔の厚さ0.016mmを選択し、片面塗布の面密度を135g/mとすると、各正極板20の厚さが0.145mmであり、かつ、各層の容量が9.7Ahであると算出でき、1000Ahに達成するには、実際の設計で6%の余裕を持つ1060Ahに達成するために、110層の正極板20が必要であり、本実施例において、正極板20が外側にあるため、111層の正極板20が必要である。負極板30は、その長さb5が380mmであり、その幅a5が760mmであり、サブ負極タブ31の幅a6が280mmである。負極活物質として人造黒鉛を採用すると、その比容量が330mAh/gであり、活物質含有量93%、圧縮密度1.5g/cm、集電体銅箔の厚さ0.012mmを選択し、片面塗布の面密度を64g/mとすると、各層の負極板30の厚さが0.097mmであると算出でき、正極板20に合わせて110層の負極板30を使用する。
【0064】
ステップ3において、本実施例において、セパレータ40は、その厚さが0.032mmであり、その表面が接着剤(例えば、PVDF、PAAなど)、セラミック粉末(例えば、Al、SiO)、又は、混在する接着剤とセラミック粉末を塗布して処理され、処理後の合計の厚さは、0.038mmである。
【0065】
ステップ4において、電池を組み立てる。本実施例に使用される極板の層数が多いため、電池を2つのベアセルにする必要があり、各ベアセルは、56層の正極板20、55層の負極板30を使用し、セパレータ40によって正極板20と負極板30とを仕切ってベアセルを形成する。各ベアセルの各層の正極板20のタブ及び各層の負極板30のタブを、それぞれアルミニウムストリップ及び銅ストリップに溶接してから、2つのベアセルを積層し、さらに、各ベアセル上のアルミニウムストリップ及び銅ストリップを、それぞれ総正極タブ50及び総負極タブ60に溶接し、溶接されたセルの厚さは35.2mmであり、そして、深さc1が10mmであるパウチにプレスされた2枚のアルミニウムプラスチックフィルムを使用し、溶接されたベアセルを封入した後にヒートシール、真空注液、化成、エッジトリミングなどの工程を経て、最終的に、厚さtが40.5mmであり、幅aが800mm(エッジが折れていない)であり、かつ、長さbが570mmである単体で超大容量の固体重合物リチウムイオン電池100が得られる。
【0066】
上記に記載されていない点は、従来の技術を適用できる。
【0067】
以上、構造を表現する用語が多く使用されたが、他の用語が使用される可能性を排除しない。これらの用語は、単に本発明の本質を説明して解釈しやすくするために用いられ、これらを任意の付加的な制限として解釈することは本発明の精神に反する。
【0068】
以上は、本発明の具体的な実施の形態に過ぎず、本発明の保護範囲はこれに限定されず、任意の当業者が本発明の開示した技術範囲内で容易に想到できる変化や置換は、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。よって、本発明の保護範囲は、特許請求の保護範囲に準ずるべきである。
【符号の説明】
【0069】
100 固体重合物リチウムイオン電池
20 正極板
21 サブ正極タブ
30 負極板
31 サブ負極タブ
40 セパレータ
41 接続部
42 仕切部
43 仕切室
50 総正極タブ
60 総負極タブ
70 金属ストリップ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7