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特開2024-162716ヘッドユニット及びインクジェット記録装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162716
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】ヘッドユニット及びインクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241114BHJP
   B41J 2/21 20060101ALI20241114BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B41J2/01 307
B41J2/01 123
B41J2/21
B41J2/18
B41J2/01 303
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078544
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】但馬 裕基
(72)【発明者】
【氏名】戸田 恭輔
(72)【発明者】
【氏名】村岡 千秋
(72)【発明者】
【氏名】田丸 勇治
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EC11
2C056EC17
2C056EC35
2C056EC80
2C056EE10
2C056EE18
2C056FA03
2C056FA10
2C056FB02
2C056HA07
2C056HA42
2C056KB16
2C056KB26
2C056KB35
2C056KC02
(57)【要約】
【課題】カラーインク、白色インク及び反応液を用いた記録が可能なインクジェット記録装置のヘッドユニットにおいて、ヘッドユニットの小型化とヘッドの交換のしやすさを両立させる。
【解決手段】カラーインク及び白色インクの少なくともいずれかと反応する反応液を吐出するノズル列が形成された第1ヘッドと、カラーインクを吐出するノズル列及び白色インクを吐出するノズル列が形成された第2ヘッドと、を有し、第1ヘッド及び第2ヘッドは、ヘッドユニットにおける主走査方向の一方の端部である第1端部に最も近い位置に反応液のノズル列が位置し、他方の端部である第2端部に最も近い位置に白色インクのノズル列が位置するように、主走査方向に沿って並べて配置されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する複数のノズルからなるノズル列が形成された複数のヘッドを有し、記録媒体に対して主走査方向に往復移動しながら液体を吐出することで記録を行うインクジェット記録装置のヘッドユニットであって、
前記複数のヘッドは、
カラーインク及び白色インクの少なくともいずれかと反応する反応液を吐出するノズル列が形成された第1ヘッドと、
前記カラーインクを吐出するノズル列及び前記白色インクを吐出するノズル列が形成された第2ヘッドと、
を含み、
前記第1ヘッド及び前記第2ヘッドは、
前記ヘッドユニットにおける前記主走査方向の一方の端部である第1端部に最も近い位置に前記反応液のノズル列が位置し、他方の端部である第2端部に最も近い位置に前記白色インクのノズル列が位置するように、
前記主走査方向に沿って並べて配置されていることを特徴とするヘッドユニット。
【請求項2】
前記第1ヘッドには、前記白色インク用の反応液のノズル列と、前記カラーインク用の反応液のノズル列と、が形成されている請求項1に記載のヘッドユニット。
【請求項3】
前記第2ヘッドは、前記第1ヘッドに対し前記第2端部に近い側に配置され、
前記第1ヘッドにおいて、前記第1端部に最も近い位置に前記白色インク用の反応液のノズル列が形成され、
前記第2ヘッドにおいて、前記第2端部に最も近い位置に前記白色インクのノズル列が形成されている請求項2に記載のヘッドユニット。
【請求項4】
液体を吐出する複数のノズルからなるノズル列が形成された複数のヘッドを有し、記録媒体に対して主走査方向に往復移動しながら液体を吐出することで記録を行うインクジェット記録装置のヘッドユニットであって、
前記複数のヘッドは、
カラーインク及び白色インクの少なくともいずれかと反応する反応液を吐出するノズル列が形成された第1ヘッドと、
前記カラーインクを吐出するノズル列が形成された第2ヘッドと、
前記白色インクを吐出するノズル列が形成された第3ヘッドと、
を含み、
前記第1ヘッド、前記第2ヘッド及び前記第3ヘッドは、
前記ヘッドユニットにおける前記主走査方向の一方の端部である第1端部に最も近い位置に前記反応液のノズル列が位置し、他方の端部である第2端部に最も近い位置に前記白色インクのノズル列が位置するように、
前記主走査方向に沿って並べて配置されていることを特徴とするヘッドユニット。
【請求項5】
前記第1ヘッドには、前記白色インク用の反応液のノズル列と、前記カラーインク用の反応液のノズル列と、が形成されている請求項4に記載のヘッドユニット。
【請求項6】
前記第3ヘッドには、前記白色インクのノズル列と前記カラーインクのノズル列が形成され、
前記第3ヘッドにおいて、前記第2端部に最も近い位置に前記白色インクのノズル列が形成されている請求項5に記載のヘッドユニット。
【請求項7】
前記第3ヘッドには、さらにグレーのインクのノズル列が形成され、
前記第3ヘッドにおいて、前記グレーのインクのノズル列は、前記白色インクのノズル列に対し前記第1端部に近い側に、前記白色インクのノズル列に隣接して形成されている請求項6に記載のヘッドユニット。
【請求項8】
前記第2ヘッドは、前記第1ヘッドに対し前記第2端部に近い側に配置され、
前記第3ヘッドは、前記第2ヘッドに対し前記第2端部に近い側に配置され、
前記第1ヘッドにおいて、前記第1端部に最も近い位置に前記白色インク用の反応液のノズル列が形成され、
前記第3ヘッドにおいて、前記第2端部に最も近い位置に前記白色インクのノズル列が形成されている請求項6又は7に記載のヘッドユニット。
【請求項9】
液体を吐出する複数のノズルからなるノズル列が形成された複数のヘッドを有し、記録媒体に対して主走査方向に往復移動しながら液体を吐出することで記録を行うインクジェット記録装置のヘッドユニットであって、
前記複数のヘッドは、
カラーインク及び白色インクの少なくともいずれかと反応する反応液を吐出するノズル列及び白色インクを吐出するノズル列が形成された第1ヘッドと、
前記カラーインクを吐出するノズル列が形成された第2ヘッドと、
前記反応液を吐出するノズル列及び前記白色インクを吐出するノズル列が形成された第3ヘッドと、
を含み、
前記第1ヘッド、前記第2ヘッド及び前記第3ヘッドは、
前記ヘッドユニットにおける前記主走査方向の一方の端部である第1端部に最も近い位置に前記反応液のノズル列が位置し、他方の端部である第2端部に最も近い位置に前記反応液のノズル列が位置するように、
前記主走査方向に沿って並べて配置されていることを特徴とするヘッドユニット。
【請求項10】
前記第1ヘッドには、前記白色インク用の反応液のノズル列、前記カラーインク用の反応液のノズル列及び前記白色インクのノズル列が形成され、
前記第3ヘッドには、前記白色インク用の反応液のノズル列、前記カラーインク用の反応液のノズル列及び前記白色インクのノズル列が形成されている請求項9に記載のヘッドユニット。
【請求項11】
前記第1ヘッドには、前記白色インク用の反応液のノズル列、前記白色インクのノズル列及び前記カラーインク用の反応液のノズル列が、前記第1端部に最も近い側からこの順に形成されて、
前記第3ヘッドには、前記白色インク用の反応液のノズル列、前記白色インクのノズル列及び前記カラーインク用の反応液のノズル列が、前記第2端部に最も近い側からこの順に形成されている請求項10に記載のヘッドユニット。
【請求項12】
前記カラーインク、前記白色インク及び前記反応液の各々の液体について、
前記ノズルに液体を供給するとともに、前記ノズルから吐出されなかった液体を回収し、前記ノズルに再度、供給する循環装置を有する請求項1~7、9~11のいずれか1項に記載のヘッドユニット。
【請求項13】
前記循環装置には、前記インクジェット記録装置の装置本体に備わるタンクから前記液体が供給される請求項12に記載のヘッドユニット。
【請求項14】
請求項1~3のいずれか1項に記載のヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットを搭載するキャリッジと、
前記キャリッジを前記主走査方向に往復移動させる駆動手段と、
を有するインクジェット記録装置であって、
前記記録媒体における記録が行われる範囲のうち、前記主走査方向で前記第1端部に近い側の端部を第3端部、前記第2端部に近い側の端部を第4端部とし、
前記カラーインクのみを用いて記録を行う印刷モードにおいて、
前記駆動手段は、
前記第1端部に向かう方向へ前記キャリッジを移動させる場合、前記第2ヘッドの前記白色インクのノズル列に隣接するカラーインクのノズル列が前記第3端部を通過する位置まで移動させ、
前記第2端部に向かう方向へ前記キャリッジを移動させる場合、前記第2ヘッドの前記第1端部に最も近い位置にあるカラーインクのノズル列が前記第4端部を通過する位置まで移動させることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項15】
請求項1~3のいずれか1項に記載のヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットを搭載するキャリッジと、
前記キャリッジを前記主走査方向に往復移動させる駆動手段と、
を有するインクジェット記録装置であって、
前記記録媒体における記録が行われる範囲のうち、前記主走査方向で前記第1端部に近い側の端部を第3端部、前記第2端部に近い側の端部を第4端部とし、
前記カラーインク及び前記白色インクのみを用いて記録を行う印刷モードにおいて、
前記駆動手段は、
前記第1端部に向かう方向へ前記キャリッジを移動させる場合、前記第2ヘッドの前記白色インクのノズル列が前記第3端部を通過する位置まで移動させ、
前記第2端部に向かう方向へ前記キャリッジを移動させる場合、前記第2ヘッドの前記第1端部に最も近い位置にあるカラーインクのノズル列が前記第4端部を通過する位置まで移動させることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項16】
請求項3に記載のヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットを搭載するキャリッジと、
前記キャリッジを前記主走査方向に往復移動させる駆動手段と、
を有するインクジェット記録装置であって、
前記記録媒体における記録が行われる範囲のうち、前記主走査方向で前記第1端部に近い側の端部を第3端部、前記第2端部に近い側の端部を第4端部とし、
前記カラーインク及び前記カラーインク用の反応液のみを用いて記録を行う印刷モードにおいて、
前記駆動手段は、
前記第1端部に向かう方向へ前記キャリッジを移動させる場合、前記第2ヘッドの前記白色インクのノズル列に隣接するカラーインクのノズル列が前記第3端部を通過する位置まで移動させ、
前記第2端部に向かう方向へ前記キャリッジを移動させる場合、前記第1ヘッドの前記カラーインク用の反応液のノズル列が前記第4端部を通過する位置まで移動させることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項17】
請求項6又は7に記載のヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットを搭載するキャリッジと、
前記キャリッジを前記主走査方向に往復移動させる駆動手段と、
を有するインクジェット記録装置であって、
前記記録媒体における記録が行われる範囲のうち、前記主走査方向で前記第1端部に近い側の端部を第3端部、前記第2端部に近い側の端部を第4端部とし、
前記カラーインクのみを用いて記録を行う印刷モードにおいて、
前記駆動手段は、
前記第1端部に向かう方向へ前記キャリッジを移動させる場合、前記第3ヘッドの前記白色インクのノズル列に隣接するカラーインクのノズル列が前記第3端部を通過する位置まで移動させ、
前記第2端部に向かう方向へ前記キャリッジを移動させる場合、前記第2ヘッドの前記第1端部に最も近い位置にあるカラーインクのノズル列が前記第4端部を通過する位置まで移動させることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項18】
請求項4~7のいずれか1項に記載のヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットを搭載するキャリッジと、
前記キャリッジを前記主走査方向に往復移動させる駆動手段と、
を有するインクジェット記録装置であって、
前記記録媒体における記録が行われる範囲のうち、前記主走査方向で前記第1端部に近い側の端部を第3端部、前記第2端部に近い側の端部を第4端部とし、
前記カラーインク及び前記白色インクのみを用いて記録を行う印刷モードにおいて、
前記駆動手段は、
前記第1端部に向かう方向へ前記キャリッジを移動させる場合、前記第3ヘッドの前記白色インクのノズル列が前記第3端部を通過する位置まで移動させ、
前記第2端部に向かう方向へ前記キャリッジを移動させる場合、前記第2ヘッドの前記第1端部に最も近い位置にあるカラーインクのノズル列が前記第4端部を通過する位置まで移動させることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項19】
請求項8に記載のヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットを搭載するキャリッジと、
前記キャリッジを前記主走査方向に往復移動させる駆動手段と、
を有するインクジェット記録装置であって、
前記記録媒体における記録が行われる範囲のうち、前記主走査方向で前記第1端部に近い側の端部を第3端部、前記第2端部に近い側の端部を第4端部とし、
前記カラーインク及び前記カラーインク用の反応液のみを用いて記録を行う印刷モードにおいて、
前記駆動手段は、
前記第1端部に向かう方向へ前記キャリッジを移動させる場合、前記第3ヘッドの前記白色インクのノズル列に隣接するカラーインクのノズル列が前記第3端部を通過する位置まで移動させ、
前記第2端部に向かう方向へ前記キャリッジを移動させる場合、前記第1ヘッドの前記カラーインク用の反応液のノズル列が前記第4端部を通過する位置まで移動させることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項20】
請求項9~11のいずれか1項に記載のヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットを搭載するキャリッジと、
前記キャリッジを前記主走査方向に往復移動させる駆動手段と、
を有するインクジェット記録装置であって、
前記記録媒体における記録が行われる範囲のうち、前記主走査方向で前記第1端部に近い側の端部を第3端部、前記第2端部に近い側の端部を第4端部とし、
前記カラーインクのみを用いて記録を行う印刷モードにおいて、
前記駆動手段は、
前記第1端部に向かう方向へ前記キャリッジを移動させる場合、前記第2ヘッドの前記第2端部に最も近い位置にあるカラーインクのノズル列が前記第3端部を通過する位置まで移動させ、
前記第2端部に向かう方向へ前記キャリッジを移動させる場合、前記第2ヘッドの前
記第1端部に最も近い位置にあるカラーインクのノズル列が前記第4端部を通過する位置まで移動させることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項21】
請求項9~11のいずれか1項に記載のヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットを搭載するキャリッジと、
前記キャリッジを前記主走査方向に往復移動させる駆動手段と、
を有するインクジェット記録装置であって、
前記記録媒体における記録が行われる範囲のうち、前記主走査方向で前記第1端部に近い側の端部を第3端部、前記第2端部に近い側の端部を第4端部とし、
前記カラーインク及び前記白色インクのみを用いて記録を行う印刷モードにおいて、
前記駆動手段は、
前記第1端部に向かう方向へ前記キャリッジを移動させる場合、前記第3ヘッドの前記白色インクのノズル列が前記第3端部を通過する位置まで移動させ、
前記第2端部に向かう方向へ前記キャリッジを移動させる場合、前記第1ヘッドの前記白色インクのノズル列が前記第4端部を通過する位置まで移動させることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項22】
請求項11に記載のヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットを搭載するキャリッジと、
前記キャリッジを前記主走査方向に往復移動させる駆動手段と、
を有するインクジェット記録装置であって、
前記記録媒体における記録が行われる範囲のうち、前記主走査方向で前記第1端部に近い側の端部を第3端部、前記第2端部に近い側の端部を第4端部とし、
前記カラーインク及び前記カラーインク用の反応液のみを用いて記録を行う印刷モードにおいて、
前記駆動手段は、
前記第1端部に向かう方向へ前記キャリッジを移動させる場合、前記第3ヘッドの前記カラーインク用の反応液のノズル列が前記第3端部を通過する位置まで移動させ、
前記第2端部に向かう方向へ前記キャリッジを移動させる場合、前記第1ヘッドの前記カラーインク用の反応液のノズル列が前記第4端部を通過する位置まで移動させることを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドユニット及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のインクジェットプリンタ分野では、液体吐出ヘッド走査型の液体吐出装置においても、高画質な印刷物を出力するため、記録メディアの高品質化と合わせて、特殊なインクを使用できるようにインク循環型の液体吐出装置が求められている。そして、さらなる高画質を得るために、カラーインクに反応液を組み合わせる構成や、白色インクを追加する構成も考えられている。
【0003】
特許文献1には、紫外線硬化型のカラーインク、白色インク及びクリアインクを用いるインクジェットプリンタが記載されている。特許文献1のインクジェットヘッド部においては、カラーインクを吐出するノズル列と、白色インク及びクリアインクを吐出するノズル列とが、主走査方向に沿って並べて配置され、かつ副走査方向にずれて配置されている。主走査方向においてクリアインクのノズル列を両側から挟むようにカラーインクのノズル列が配置され、さらにカラーインクのノズル列を両側から挟むようにインクジェットヘッド部の主走査方向両端部に外線照射器が設けられる。これにより、紫外線照射器とクリアインクのノズルとの距離を確保し、紫外線照射器からの照射光の迷光によりクリアインクのノズルが目詰りすることを抑制している。また、特許文献2には、色インクを媒体上へ付着させてカラー画像を形成するプリント方法において、色インクに加えて、白色インクを用いることを特徴とするプリント方法が記載されている。また、インクを高粘度化する成分を含有する反応液をインク吐出前に記録媒体上に付与することにより、記録媒体に達したインクを直ちに定着させ、混色を抑制し高画質化するプリント方法が知られている。また、白色インクのヘッドと反応液のヘッドをそれぞれ単色ヘッドで構成し、その他のカラーインクのヘッドと組み合わせて主走査方向に並べたヘッドユニットの構成が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-185737号公報
【特許文献2】特開2004-25603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のインクジェットプリンタでは、カラーインクのヘッドと白色インク及びクリアインクのヘッドとが副走査方向にずれて配置されているため、ヘッドユニットが副走査方向に大型化することが課題となる。また、主走査方向でクリアインク及び白色インクのヘッドの両側にカラーインクのヘッドが配置されているため、クリアインクや白色インクを用いない印刷モードと、クリアインクや白色インクを用いる印刷モードとで、キャリッジの移動距離が変わらない。そのため、印刷モードの違いによる印刷のスループットに向上の余地がある。また、白色インクのヘッドと反応液のヘッドをそれぞれ単色ヘッドで構成し、その他のカラーインクのヘッドと組み合わせて主走査方向に並べた構成のヘッドユニットでは、ヘッドの交換はしやすいが、ヘッドユニットが主走査方向に大型化することが課題となる。
【0006】
本発明は、カラーインク、白色インク及び反応液を用いた記録が可能なインクジェット記録装置のヘッドユニットにおいて、ヘッドユニットの小型化とヘッドの交換のしやすさ
を両立させる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、液体を吐出する複数のノズルからなるノズル列が形成された複数のヘッドを有し、記録媒体に対して主走査方向に往復移動しながら液体を吐出することで記録を行うインクジェット記録装置のヘッドユニットであって、
前記複数のヘッドは、
カラーインク及び白色インクの少なくともいずれかと反応する反応液を吐出するノズル列が形成された第1ヘッドと、
前記カラーインクを吐出するノズル列及び前記白色インクを吐出するノズル列が形成された第2ヘッドと、
を含み、
前記第1ヘッド及び前記第2ヘッドは、
前記ヘッドユニットにおける前記主走査方向の一方の端部である第1端部に最も近い位置に前記反応液のノズル列が位置し、他方の端部である第2端部に最も近い位置に前記白色インクのノズル列が位置するように、
前記主走査方向に沿って並べて配置されていることを特徴とするヘッドユニットである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、カラーインク、白色インク及び反応液を用いた記録が可能なインクジェット記録装置のヘッドユニットにおいて、ヘッドユニットの小型化とヘッドの交換のしやすさを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例の液体吐出装置の概略構成図である。
図2】実施例の液体吐出ヘッドの分解斜視図及び実施例の液体吐出ヘッドの斜視図である。
図3】実施例1のヘッドユニットの模式図である。
図4】実施例1の印刷モードによるヘッドユニットの移動範囲を説明する模式図である。
図5】実施例1で印刷物の層構成を説明する模式図である。
図6】実施例2のヘッドユニットの模式図である。
図7】実施例3のヘッドユニットの模式図である。
図8】実施例3で印刷物を見る方向について説明する模式図である。
図9】実施例3で印刷物の層構成を説明する模式図である。
図10】実施例の吐出ユニットにおけるインク流れを示す図である。
図11】実施例の吐出ユニットの断面模式図である。
図12】液体吐出装置を説明する図である。
図13】液体吐出ヘッドの分解斜視図である。
図14】液体吐出ヘッドの縦断面及び吐出モジュールの拡大断面図である。
図15】循環ユニットの外観概略図である。
図16】循環経路を示す縦断面図である。
図17】循環経路を模式的に示すブロック図である。
図18】圧力調整手段の例を示す断面図である。
図19】循環ポンプの外観斜視図である。
図20図19(a)に示した循環ポンプのIX-IX線断面図である。
図21】液体吐出ヘッド内のインクの流れを説明する図である。
図22】吐出ユニットにおける循環経路を示した模式図である。
図23】開口プレート330を示した図である。
図24】吐出素子基板を示した図である。
図25】吐出ユニットのインク流れを示した断面図である。
図26】吐出口の近傍を示した断面図である。
図27】吐出口の近傍の比較例を示す断面図である。
図28】吐出素子基板の比較例を示した図である。
図29】液体吐出ヘッドの流路構成を示した図である。
図30】液体吐出装置の本体部と液体吐出ヘッドとの接続状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0011】
図1は、ヘッドユニット10を用いるインクジェット記録装置である液体吐出装置50(記録装置)の概略構成図である。実施例の液体吐出装置50は、ヘッドユニット10からインクを吐出して記録シートSに画像を記録するシリアルスキャン方式のインクジェット記録装置である。ヘッドユニット10はキャリッジ60に搭載され、キャリッジ60は、ガイド軸51に沿って矢印Xの主走査方向に移動する。キャリッジ60は液体吐出装置50に設けられた駆動手段であるキャリッジモータ105(図12参照)によって主走査方向Xに往復移動される。記録シートSは、搬送ローラ55、56、57、58によって、主走査方向と交差(本例の場合は、直交)する矢印Yの副走査方向に搬送される。
【0012】
ヘッドユニット10は、複数の液体吐出ヘッド1(例えば、第1ヘッド1a、第2ヘッド1b、第3ヘッド1c)からなり、複数の液体吐出ヘッド1は主走査方向に沿って並んで配置されている。複数の液体吐出ヘッド1には、循環ユニット54が搭載され、インク毎にインク循環が行われる。図1ではヘッドユニット10が3個の液体吐出ヘッド1を有する構成を例示しているが、これは例示的な図示であり、ヘッドユニット10が有する液体吐出ヘッド1の数はこれに限られない。
【0013】
また、液体吐出装置50には、インクの供給源であるインクタンク2及び外部ポンプ21が設けられており、インクタンク2に貯留されたインクは、外部ポンプ21の駆動力によってインク供給チューブ59を介して循環ユニット54に供給される。インク供給チューブ59は印刷に必要な電気配線や空気をヘッドユニット10やキャリッジ60へ供給する配管を含む。ヘッドユニット10は、反応液、白色インク、複数のカラーインクによる高画質フルカラー印刷が可能である。反応液は、インクを高粘度化する成分を含有し、インク吐出前に記録シートS上に付与することにより、記録シートSに達したインクを直ちに定着させ、混色を抑制し高画質化することができる。以下の説明では、反応液、白色インク、カラーインクを総称して単にインクと称することがある。記録シートSの搬送路から外れた位置にキャップ部材が配置され、記録動作を行わない場合には、ヘッドユニット10のフェイス面を覆う位置に相対的に移動し、吐出口の乾燥の防止や、充填や回復のための吸引動作を行う。
【0014】
図2(a)は、液体吐出ヘッド1の分解斜視図を示す。図2(b)は各部品を組付けた状態の斜視図、図2(c)は図2(b)のA矢視図を示す。液体吐出ヘッド1は、液体を吐出する吐出口331(図10図11参照)に液体を供給するとともに、吐出口331から吐出されなかった液体を回収し、吐出口331に再度、供給する循環装置である循環ユニット54を有する。循環ユニット54は各インクに対応するため、インクの種類に応じて搭載される数が決まる。実施例では、例えば4色の循環ユニット54a、54b、54c及び54dの構成とする。循環ユニット54a~54dはそれぞれヘッド筐体53に
接続される。
【0015】
ヘッド筐体53には液体吐出装置50からのインクを受け入れるためのジョイント面111があり、ジョイント面111には循環ユニット54a~54dそれぞれに連通しているジョイント111a、111b、111c、111dがある。液体吐出装置50に装着時に、ジョイント111a~111dそれぞれに液体吐出装置50側から各インクに対応した供給チューブ(不図示)が接続される。液体吐出装置50の装置本体に設けられたインクタンク2から供給チューブを介して供給された各インクは、ヘッド筐体53のジョイント111a~111dをそれぞれ経由し、循環ユニット54a~54dにそれぞれ供給される。
【0016】
ヘッド筐体53には液体吐出装置50の本体から電気信号を受け取る配線基板23(PWB)が設けられる。ヘッド筐体53の底面113には後述する吐出モジュール300(開口プレート330と記録素子基板340からなる。図10(a)参照)を搭載した支持部材213が接続されている。実施例では、図2(c)に示すようにヘッド筐体53の底面113には2つの吐出モジュール300a、300bが設けられる。吐出モジュール300には、液体を吐出する複数の吐出口(ノズル)331(図11参照)からなるノズル列332(図10参照)が形成されている。ノズル列332はY方向に延び、複数のノズル列332がX方向に並べて配列されている。ヘッドユニット10は、ノズル列332が形成された液体吐出ヘッド1を複数有し、記録媒体である記録シートSに対し主走査方向Xに沿って往復移動しながら液体を吐出することで記録を行う。吐出モジュール300、支持部材213、電気配線部材22(FPC)により吐出ユニット20が構成される。吐出ユニット20とヘッド筐体53により液体吐出ヘッド1が構成される。
【0017】
循環ユニット54a~54dに供給されたインクはヘッド筐体53を経由し、支持部材213に供給される。吐出モジュール300と支持部材213は接着剤によって接着される。吐出モジュール300は、厚さ0.5~1mmのシリコン基板と、シリコン基板の片面に設けられ、液体を吐出するためのエネルギー発生素子と、を備えている。図11(a)、図11(b)に示すように、実施例においてはエネルギー発生素子として複数の発熱抵抗素子36(ヒータ)を用いており、発熱抵抗素子36の各々に電力を供給する電気配線が成膜技術によりシリコン基板上に形成されている。シリコン基板には、発熱抵抗素子36に対応する複数の圧力室325とインクを吐出する複数の吐出口331とがフォトリソグラフィ技術により形成されている。シリコン基板の裏面には、複数の圧力室325にインクを供給する共通供給流路321と複数のプレート供給口311、及び圧力室325からインクを回収する共通回収流路322と複数のプレート回収口312が開口している。
【0018】
図10(a)、図10(b)を用いて吐出ユニット20のインク流れについて説明する。図10(a)は吐出ユニット20を支持部材213側からみた分解斜視図であり、図10(b)は記録素子基板340側からみた分解斜視図である。簡略化のため、接続基板及び電気基板は省略している。インク流れは1色分のみ説明するが、他の色も同様である。吐出ユニット20内のインク流路は、支持部材213と吐出モジュール300によって構成されている。さらに、吐出モジュール300は、開口プレート330と記録素子基板340によって構成されている。記録素子基板340の開口プレート330とは反対側の面に吐出口331が形成されたノズルプレート320が設けられる。記録素子基板340のノズルプレート320とは反対側の面に開口プレート330が接続される。開口プレート330の記録素子基板340とは反対側の面が支持部材213に接合される。これにより吐出モジュール300が支持部材213に固定されている。
【0019】
図10(a)、図10(b)に示す矢印R1、R2は、上述した支持部材213、開口
プレート330、記録素子基板340間のインク流れを示す。実線の矢印R1が記録素子基板340に供給されるインク流れを示し、破線の矢印R2が記録素子基板340から支持部材213側に回収されるインク流れを示す。開口プレート330にプレート供給口311及びプレート回収口312が設けられる。支持部材213には支持部材供給口211及び支持部材回収口212が設けられる。矢印R1で示す供給インク流れは支持部材供給口211及びプレート供給口311を通り、矢印R2で示す回収インク流れはプレート回収口312及び支持部材回収口212を通る。
【0020】
図11(a)はプレート供給口311部のY方向に垂直の断面による断面模式図を示し、図11(b)はプレート回収口312部のY方向に垂直の断面による断面模式図を示す。なお、インク流れについては各部材の一つの開口部を用いて説明するが、どの開口においてもインク流れは同様である。まず、ヘッド筐体53側から支持部材213の支持部材供給口211にインクが供給され、次に支持部材供給口211からプレート供給口311を介して記録素子基板340の共通供給流路321にインクが供給される。その後、共通供給流路321から供給接続流路323を介して圧力室325にインクが供給される。次に、回収の流れについて説明する。圧力室325に供給されたインクのうち、吐出口331から吐出されなかったインクは回収接続流路324を介して、共通回収流路322に流れる。そして、共通回収流路322から開口プレート330のプレート回収口312を介して支持部材213の支持部材回収口212に流れ、その後、ヘッド筐体53側に回収される。
【0021】
図11(a)や図11(b)に示すように、このような支持部材213と共通供給流路321及び共通回収流路322をつなぐインクの流れは、プレート供給口311及びプレート回収口312が存在する箇所で起こることになる。なお、それ以外のプレート供給口311やプレート回収口312が無い領域おいては、支持部材213において支持部材供給口211と支持部材回収口212を仕切るための領域となる。この領域は、吐出モジュール300と支持部材213を接着する場合は接着領域として使用されるため、支持部材213も開口を有しない。そのため、そのようなプレート開口や支持部材開口が無い領域においては、図11(c)に示すように、共通供給流路321及び共通回収流路322内のインクと、支持部材213やヘッド筐体53側のインクとの直接的な繋がりはなくなっている。
【0022】
インクの流れとしては、図11(a)のようなプレート供給口311が開口している箇所から支持部材213のインクが供給される。さらに供給接続流路323から圧力室325にインクが流れ、回収接続流路324を介して共通回収流路322に流れる。図11(a)断面のように、このとき共通回収流路322側にはプレート回収口312がない。そのため、一度、図11(c)に示すような開口プレート330に開口が存在しない領域をインクが流れ、図11(b)のようにプレート回収口312が存在する領域に達したときに、共通回収流路322へと流れるインクの流れが生じる。
【0023】
また、上述したように、共通供給流路321と共通回収流路322がそれぞれ別流路になっている。共通供給流路321には吐出口331へインクを供給する供給接続流路323があり、共通回収流路322には吐出口331からインクを回収する回収接続流路324がある。つまり供給接続流路323と回収接続流路324をつなぐ経路内に吐出口331があるため、吐出口331近傍の圧力室325には供給接続流路323側から回収接続流路324側へ流れるインク流れが発生する。このインク循環は、圧力室325内のインクを常にフレッシュな状態に保ち、インク蒸発による濃度変化や固着などの不具合を未然に防ぐことができる。
【0024】
(実施例1)
図3図4図5を用いて、実施例1について説明する。図3は、ヘッドユニット10を液体吐出装置50の上面(インクを吐出する側)からみた模式図である。ヘッドユニット10は、第1ヘッド1aと第2ヘッド1bからなり、第1ヘッド1aと第2ヘッド1bは主走査方向に並ぶように配置されている。ヘッドユニット10の主走査方向Xの一方の端部(+X方向側端部)を第1端部10a、他方の端部(-X方向側端部)を第2端部10bとする。第2ヘッド1bは、第1ヘッド1aに対し第2端部10bに近い側に配置されている。
【0025】
第1ヘッド1aは、カラーインク及び白色インクの少なくともいずれかと反応する反応液のノズル列332が形成されたヘッドである。実施例1では、第1ヘッド1aは、白色インク用反応液RCTWを吐出するノズル列332と、カラーインク用反応液RCTC1及びRCTC2を吐出するノズル列332と、が形成された反応液専用のヘッドである。第2ヘッド1bは、カラーインクを吐出するノズル列332と、白色インクを吐出するノズル列332と、が形成されたヘッドである。実施例1では、第2ヘッド1bは、黒K、淡シアンLC、シアンC、イエローY、淡マゼンタLM、マゼンタM、オレンジOR、グレーGY、白Wの各インクを吐出するノズル列332が形成されている。
【0026】
第1ヘッド1aにおいて、第1端部10aに最も近い位置に白色インク用反応液RCTWのノズル列332が形成されている。第2ヘッド1bにおいて、第2端部10bに最も近い位置に白色インクWのノズル列332が形成されている。
【0027】
第1ヘッド1a及び第2ヘッド1bは、ヘッドユニット10における第1端部10aに最も近い位置に反応液RCTのノズル列332が位置し、第2端部10bに最も近い位置に白色インクWのノズル列332が位置するように配置されている。実施例1では、第1ヘッド1aと第2ヘッド1bを主走査方向に並べた場合に、ヘッドユニット10は、両端に白色インク用反応液RCTWと白色インクWのノズル列332がそれぞれ配置されている。
【0028】
なお、第1ヘッド1aには、カラーインク用反応液RCTCのノズル列332のみ形成された構成でもよいし、白色インク用反応液RCTWのノズル列332のみ形成された構成でもよい。また、第1ヘッド1aにカラーインク用反応液RCTCのノズル列332及び白色インク用反応液RCTWのノズル列332が形成される場合、どちらが第1端部10aに最も近い位置に配置されてもよい。また、第2ヘッド1bにおけるカラーインクの種類及び並び順は上記の例に限られない。
【0029】
同系統のインク種を1つのヘッドにまとめてあり、かつ第1ヘッド1aと第2ヘッド1bを副走査方向Yで同じ位置に配置しているので、キャリッジ60が小型化できる。また、キャリッジ60の移動範囲が小さくなることで、液体吐出装置50が小型化できる。また、第1ヘッド1aは反応液専用のため、発熱抵抗素子36への影響が大きく寿命が短いが、メインのカラーインクの第2ヘッド1bと分かれているので、ヘッド交換が容易であるという利点がある。
【0030】
図4は、印刷モードによるヘッドユニット10の移動範囲を説明する模式図である。実施例1の液体吐出装置50は、複数の印刷モードのいずれかにより記録を行うことができる。複数の印刷モードには、第1モード~第4モードが含まれる。第1モードでは、カラーインク、白色インク、カラーインク用反応液及び白色インク用反応液を用いて記録を行う。第2モードでは、カラーインク及びカラーインク用反応液のみを用いて記録を行う。第3モードでは、カラーインク及び白色インクのみを用いて記録を行う。第4モードでは、カラーインクのみを用いて記録を行う。白色インクを用いる印刷モードは、透明な記録シートSに記録を行う場合等に用いられる。反応液を用いる印刷モードは、高画質な記録
を行いたい場合等に用いられる。
【0031】
図4(a)は第1モード、図4(b)は第2モード、図4(c)は第3モード、図4(d)は第4モードで印刷する場合のヘッドユニット10の移動範囲をそれぞれ示す。主走査方向で第1端部10aへ向かう方向を往方向(+X方向)、第2端部10bに向かう方向を復方向(-X方向)とする。記録シートSにおける記録が行われる記録範囲SRのうち、主走査方向で第1端部10aに近い側の端部を第3端部Sa、第2端部10bに近い側の端部を第4端部Sbとする。なお、図4(a)において記録シートSを示す破線は、図が煩雑になるのを避けるため図4(b)~図4(d)では省略した。
【0032】
図4(a)に示すように、第1モードでは、第1端部10aに向かう+X方向にキャリッジ60を移動させる場合、第2ヘッド1bの白色インクWのノズル列が第3端部Saを通過する位置まで移動させる。また、第2端部10bに向かう-X方向にキャリッジ60を移動させる場合、第1ヘッド1aの白色インク用反応液RCTWのノズル列が第4端部Sbを通過する位置まで移動させる。
【0033】
図4(b)に示すように、第2モードでは、第1端部10aに向かう+X方向にキャリッジ60を移動させる場合、第2ヘッド1bの白色インクWのノズル列に隣接するカラーインクのノズル列が第3端部Saを通過する位置まで移動させる。図4(b)の例ではこのカラーインクはグレーGYである。また、第2端部10bに向かう-X方向にキャリッジ60を移動させる場合、第1ヘッド1aのカラーインク用反応液RCTCのノズル列が第4端部Sbを通過する位置まで移動させる。
【0034】
図4(c)に示すように、第3モードでは、第1端部10aに向かう+X方向にキャリッジ60を移動させる場合、第2ヘッド1bの白色インクWのノズル列が第3端部Saを通過する位置まで移動させる。また、第2端部10bに向かう-X方向にキャリッジ60を移動させる場合、第2ヘッド1bの第1端部10aに最も近い位置にあるカラーインク(黒K)のノズル列が第4端部Sbを通過する位置まで移動させる。
【0035】
図4(d)に示すように、第4モードでは、第1端部10aに向かう+X方向にキャリッジ60を移動させる場合、第2ヘッド1bの白色インクWのノズル列に隣接するカラーインクのノズル列が第3端部Saを通過する位置まで移動させる。図4(d)の例ではこのカラーインクはグレーGYである。また、第2端部10bに向かう-X方向にキャリッジ60を移動させる場合、第2ヘッド1bの第1端部10aに最も近い位置にあるカラーインク(黒K)のノズル列が第4端部Sbを通過する位置まで移動させる。
【0036】
図4(b)に示すように、第2モードでは、第1モードと比較して、キャリッジ60の移動距離は、+X方向の移動時に白色インクWのノズル列の幅に相当する距離X1だけ短い。また、-X方向の移動時に白色インク用反応液RCTWのノズル列の幅に相当する距離X2だけ短い。
【0037】
図4(c)に示すように、第3モードでは、第1モードと比較して、キャリッジ60の移動距離は、-X方向の移動時に第1ヘッド1aの最も第1端部10aに近いノズル列と第2ヘッド1bの最も第1端部10aに近いノズル列との距離X3だけ短い。
【0038】
図4(d)に示すように、第4モードでは、第1モードと比較して、キャリッジ60の移動距離は、+X方向の移動時に白色インクWのノズル列の幅に相当する距離X1だけ短い。また、-X方向の移動時に第1ヘッド1aの最も第1端部10aに近いノズル列と第2ヘッド1bの最も第1端部10aに近いノズル列との距離X3だけ短い。
【0039】
したがって、第2モード、第3モード及び第4モードでは、第1モードと比較して、キャリッジ60の移動距離の短縮分だけ高速に印刷することが可能となり、スループットを向上させることができる。ユーザが使用する印刷モードの比率が、例えば、第1モード5%、第4モード95%とすると、第4モードにおけるスループットの向上はユーザの利便性の向上に大いに資することになる。
【0040】
図5は、透明な記録シートSに両面印刷する場合の層構成を示した模式図である。上述したように、透明な記録シートSに印刷する場合は下地を作るために白色インクWを用いる。図5(A)は、透明な記録シートSの上に、カラーインク31、白色インク30、カラーインク31の順に印刷する3層印字モードで印刷した場合の層構成を示す。図5(B)は、透明な記録シートSの上に、カラーインク31、白色インク30、黒インク32、白色インク30、カラーインク31の順に印刷する5層印字モードで印刷した場合の層構成を示す。3層印字モードは両面の画像が同じ場合に用いられ、5層印字モードは両面で画像が異なる場合に用いられる。
【0041】
反応液のような特殊なインクを確実に吐出させるために、記録シートSに印刷する直前に予備吐出をする場合がある。実施例1の液体吐出装置50では、記録シートSの通過範囲の-X方向側の端部を-X方向側に超えた位置において予備吐出を行う構成とする。実施例1のヘッドユニット10では+X方向側の端部に白色インク用反応液RCTWのノズル列332があるため、透明の記録シートSに両面印刷する3層印字モード及び5層印字モードでは、+X方向の移動時のみ記録が行われる片方向印字となる。白色インクWを使う場合やカラーインクをより高画質で印刷する場合は、反応液を先に打つことが望ましい。そのため、実施例1のように、予備吐出を行う位置が-X方向側端部にある場合、実施例1のようにヘッドユニット10の+X方向側端部に反応液のノズル列332が位置する配置が適している。逆に、予備吐出を行う位置が+X方向側端部にある場合、ヘッドユニット10の-X方向側端部に反応液のノズル列332が位置する配置が適している。実施例1は、インク循環構成を適用することで、より効果が大きく、また、ピエゾヘッドの循環構成にも適用できる。
【0042】
(実施例2)
図6を用いて、実施例2について説明する。図6は、ヘッドユニット10を液体吐出装置50の上面(インクを吐出する側)からみた模式図である。ヘッドユニット10は、第1ヘッド1aと第2ヘッド1bと第3ヘッド1cからなり、これらの複数のヘッドは主走査方向Xに並ぶように配置されている。第2ヘッド1bは、第1ヘッド1aに対し第2端部10bに近い側に配置されている。第3ヘッド1cは第2ヘッド1bに対し第2端部10bに近い側に配置されている。
【0043】
第1ヘッド1aは、カラーインク及び白色インクの少なくともいずれかと反応する反応液を吐出するノズル列332が形成されたヘッドである。実施例2では、第1ヘッド1aは、白色インク用反応液RCTW、カラーインク用反応液RCTC1及びRCTC2を吐出するノズル列332が形成された反応液専用のヘッドである。第2ヘッド1bは、カラーインクを吐出するノズル列332が形成されたヘッドである。実施例2では、第2ヘッド1bは、黒K、淡シアンLC、シアンC、イエローY、淡マゼンタLM、マゼンタMの各インクを吐出するノズル列332が形成されている。第3ヘッド1cは、白色インクのノズル列332とカラーインクのノズル列332が形成されたヘッドである。実施例2では、第3ヘッド1cは、オレンジOR、グレーGYのカラーインクと白色インクWの各インクを吐出するノズル列332が形成されている。
【0044】
第1ヘッド1a、第2ヘッド1b及び第3ヘッド1cは、ヘッドユニット10における第1端部10aに最も近い位置に反応液RCTのノズル列332が位置し、第2端部10
bに最も近い位置に白色インクWのノズル列332が位置するように配置されている。実施例2では、第1ヘッド1aにおいて、第1端部10aに最も近い位置に白色インク用反応液RCTWのノズル列332が形成されている。第3ヘッド1cにおいて、第2端部10bに最も近い位置に白色インクWのノズル列332が形成されている。また、第3ヘッド1cにおいて、グレーGYのノズル列332は、白色インクWのノズル列332に対し第1端部10aに近い側に、白色インクWのノズル列332に隣接して形成されている。これにより、第1ヘッド1a、第2ヘッド1b及び第3ヘッド1cを主走査方向Xに沿って並べた場合に、ヘッドユニット10は、主走査方向Xで両端に白色インク用反応液RCTWと白色インクWのノズル列332がそれぞれ配置されている。
【0045】
なお、第1ヘッド1aには、カラーインク用反応液RCTCのノズル列332のみ形成された構成でもよいし、白色インク用反応液RCTWのノズル列332のみ形成された構成でもよい。また、第1ヘッド1aにカラーインク用反応液RCTCのノズル列332及び白色インク用反応液RCTWのノズル列332が形成される場合、どちらが第1端部10aに最も近い位置に配置されてもよい。また、第2ヘッド1b及び第3ヘッド1cにおけるカラーインクの種類及び並び順は上記の例に限られない。また、第3ヘッド1cは、白色インクWを吐出するノズル列332のみが形成された構成でもよい。
【0046】
同系統のインク種を1つのヘッドにまとめてあり、かつ第1ヘッド1a、第2ヘッド1b及び第3ヘッド1cを副走査方向Yで同じ位置に配置している。そのため、キャリッジ60が小型化でき、キャリッジ60の移動範囲が小さくなることで、液体吐出装置50が小型化できる。
【0047】
また、白色インクWや反応液RCTは、他のカラーインクに比べて発熱抵抗素子36への影響が大きく、それらを搭載したヘッドは寿命が短い。しかしながら、反応液RCTだけを一つにまとめた第1ヘッド1aや、白色インクWを搭載した第3ヘッド1cが他のカラーインクを搭載した第2ヘッド1bから独立しているので、ヘッド交換が容易であるという利点がある。第3ヘッド1cにおいて白色インクWと組み合わせるカラーインクは、画質変化の観点から、画像形成に使用する頻度が低い特色(例えば、オレンジOR、グレーGY)が望ましい。また、ノズル列332間で混色が発生した場合でも、白色インクWの隣にグレーGYを配置しておくことで、白色インクWの色味の変化を抑えることができ、信頼性の観点から望ましい。また、ヘッド交換の頻度が高い第1ヘッド1aと第3ヘッド1cを共通化できるため、コストも抑えることができる。実施例2は、インク循環構成を適用することで、より効果が大きく、また、ピエゾヘッドの循環構成にも適用できる。
【0048】
また、実施例1と同様に、各印刷モードにおいて使用しないインクのノズル列332が記録範囲SRを通過しないようにキャリッジ60の移動範囲を制御することで、第2モード~第4モードにおいてスループットを向上できる。
【0049】
第1モードでは、第1端部10aに向かう+X方向にキャリッジ60を移動させる場合、第3ヘッド1cの白色インクWのノズル列が第3端部Saを通過する位置まで移動させる。また、第2端部10bに向かう-X方向にキャリッジ60を移動させる場合、第1ヘッド1aの白色インク用反応液RCTWのノズル列が第4端部Sbを通過する位置まで移動させる。
【0050】
第2モードでは、第1端部10aに向かう+X方向にキャリッジ60を移動させる場合、第3ヘッド1cの白色インクWのノズル列に隣接するカラーインク(グレーGY)のノズル列が第3端部Saを通過する位置まで移動させる。また、第2端部10bに向かう-X方向にキャリッジ60を移動させる場合、第1ヘッド1aのカラーインク用反応液RCTC1、RCTC2のノズル列が第4端部Sbを通過する位置まで移動させる。
【0051】
第3モードでは、第1端部10aに向かう+X方向にキャリッジ60を移動させる場合、第3ヘッド1cの白色インクWのノズル列が第3端部Saを通過する位置まで移動させる。また、第2端部10bに向かう-X方向にキャリッジ60を移動させる場合、第2ヘッド1bの第1端部10aに最も近い位置にあるカラーインク(黒K)のノズル列が第4端部Sbを通過する位置まで移動させる。
【0052】
第4モードでは、第1端部10aに向かう+X方向にキャリッジ60を移動させる場合、第3ヘッド1cの白色インクWのノズル列に隣接するカラーインク(グレーGY)のノズル列が第3端部Saを通過する位置まで移動させる。また、第2端部10bに向かう-X方向にキャリッジ60を移動させる場合、第2ヘッド1bの第1端部10aに最も近い位置にあるカラーインク(黒K)のノズル列が第4端部Sbを通過する位置まで移動させる。
【0053】
(実施例3)
図7図8図9を用いて実施例3について説明する。図7は、ヘッドユニット10を液体吐出装置50の上面(インクを吐出する側)からみた模式図である。ヘッドユニット10は、第1ヘッド1aと第2ヘッド1bと第3ヘッド1cからなり、これらの複数のヘッドは主走査方向Xに並ぶように配置されている。第2ヘッド1bは、第1ヘッド1aに対し第2端部10bに近い側に配置されている。第3ヘッド1cは第2ヘッド1bに対し第2端部10bに近い側に配置されている。
【0054】
第1ヘッド1aは、カラーインク及び白色インクの少なくともいずれかと反応する反応液を吐出するノズル列332及び白色インクを吐出するノズル列332が形成されたヘッドである。実施例3では、第1ヘッド1aは、白色インク用反応液RCTWと、白色インクWと、カラーインク用反応液RCTCを吐出するノズル列332が形成されている。第2ヘッド1bは、カラーインクを吐出するノズル列332が形成されたヘッドである。実施例3では、第2ヘッド1bは、黒K、淡シアンLC、シアンC、イエローY、淡マゼンタLM、マゼンタM、オレンジOR、グレーGYの各インクを吐出するノズル列332が形成されている。第3ヘッド1cは、カラーインク及び白色インクの少なくともいずれかと反応する反応液を吐出するノズル列332及び白色インクを吐出するノズル列332が形成されたヘッドである。実施例3では、第3ヘッド1cは、第1ヘッド1aと同様に、白色インク用反応液RCTWと、白色インクWと、カラーインク用反応液RCTCを吐出するノズル列332が形成されている。
【0055】
第1ヘッド1a、第2ヘッド1b及び第3ヘッド1cは、ヘッドユニット10における第1端部10aに最も近い位置に反応液RCTのノズル列332が位置し、第2端部10bに最も近い位置に反応液RCTのノズル列332が位置するように配置されている。実施例3では、第1ヘッド1aには、白色インク用反応液RCTWのノズル列332、白色インクWのノズル列332及びカラーインク用反応液RCTCのノズル列332が第1端部10aに最も近い側からこの順に形成されている。また、第3ヘッド1cには、白色インク用反応液RCTWのノズル列332、白色インクWのノズル列332及びカラーインク用反応液RCTCのノズル列332が第2端部10bに最も近い側からこの順に形成されている。これにより、第1ヘッド1aと第3ヘッド1cの色並び順は、白色インク用反応液RCTWと、カラーインク用反応液RCTCがそれぞれ主走査方向Xで両端に配置される。第1ヘッド1a、第2ヘッド1b及び第3ヘッド1cを主走査方向Xに沿って並べた場合に、第1ヘッド1a及び第3ヘッド1cのノズル列332は、第2ヘッド1bのカラーインク群を挟んで対称となるように配置されている。すなわち、主走査方向Xで両端には白色インク用反応液RCTWのノズル列332が配置され、その内側には白色インクWが配置され、さらにその内側にカラーインク用反応液RCTCが配置される。
【0056】
なお、第1ヘッド1a及び第3ヘッド1cにおける白色インクW、白色インク用反応液RCTW及びカラーインク用反応液RCTCの並び順は、ヘッドユニット10の主走査方向両端部に近い位置に反応液のノズル列332があれば上記の例に限られない。
【0057】
図8は、透明な記録シートSに画像形成された印刷物を、ガラス板G(例えば窓やショーケース)に貼り付けて、矢印の方向から見た場合を示す模式図である。図8(A)は、観察者から見てガラス板Gの手前に印刷物を貼り付けた場合を示し、図8(B)は、観察者から見てガラス板Gの向こう側に印刷物を貼り付けた場合を示し、例えばショーケースの内側に印刷物を貼り付ける場合である。
【0058】
図9は、図8(A)及び図8(B)で説明した印刷物の層構成を示す模式図である。上記のように、透明な記録シートSに印刷する場合は、下地を作るために白色インクを用いる。図9(A)は図8(A)の印刷物を示し、透明な記録シートSの上に、白色インク30、カラーインク31の順番で印刷される。図9(B)は図8(B)の印刷物を示し、透明な記録シートSの上に、カラーインク31、白色インク30の順番で印刷される。実施例3のヘッドユニット10を用いて、図9(A)の印刷物を印刷する場合は、往方向(+X方向)では、第1ヘッド1a、第2ヘッド1bの順で印字を行う。復方向(-X方向)では、第3ヘッド1c、第2ヘッド1bの順で印字を行う。そのため、双方向に対応でき、高速印刷が可能である。また、図9(B)の印刷物を印刷する場合は、往方向(+X方向)では、第1ヘッド1aのカラーインク用反応液RCTC、第2ヘッド1b、第3ヘッド1cの白色インク用反応液RCTWの順で印字を行う。復方向(-X方向)では、第3ヘッド1cの白色インクWの印字を行う。そのため、印刷速度は少し遅くなるが、対応は可能である。また、透明ではない記録シートSに印刷する場合は、白色インクを打たなくてもよく、ヘッドユニット10を用いて、双方向でカラーインク用反応液RCTCを先に印字することができるので、高速印刷が可能である。実施例3は、インク循環構成を適用することで、より効果が大きく、また、ピエゾヘッドの循環構成にも適用できる。
【0059】
また、実施例1と同様に、各印刷モードにおいて使用しないインクのノズル列332が記録範囲SRを通過しないようにキャリッジ60の移動範囲を制御することで、第2モード~第4モードにおいてスループットを向上できる。
【0060】
第1モードでは、第1端部10aに向かう+X方向にキャリッジ60を移動させる場合、第3ヘッド1cの白色インク用反応液RCTWのノズル列が第3端部Saを通過する位置まで移動させる。また、第2端部10bに向かう-X方向にキャリッジ60を移動させる場合、第1ヘッド1aの白色インク用反応液RCTWのノズル列が第4端部Sbを通過する位置まで移動させる。
【0061】
第2モードでは、第1端部10aに向かう+X方向にキャリッジ60を移動させる場合、第3ヘッド1cのカラーインク用反応液RCTCのノズル列が第3端部Saを通過する位置まで移動させる。また、第2端部10bに向かう-X方向にキャリッジ60を移動させる場合、第1ヘッド1aのカラーインク用反応液RCTCのノズル列が第4端部Sbを通過する位置まで移動させる。
【0062】
第3モードでは、第1端部10aに向かう+X方向にキャリッジ60を移動させる場合、第3ヘッド1cの白色インクWのノズル列が第3端部Saを通過する位置まで移動させる。また、第2端部10bに向かう-X方向にキャリッジ60を移動させる場合、第1ヘッド1aの白色インクWのノズル列が第4端部Sbを通過する位置まで移動させる。
【0063】
第4モードでは、第1端部10aに向かう+X方向にキャリッジ60を移動させる場合
、第2ヘッド1bの第2端部10bに最も近い位置にあるカラーインク(グレーGY)のノズル列が第3端部Saを通過する位置まで移動させる。また、第2端部10bに向かう-X方向にキャリッジ60を移動させる場合、第2ヘッド1bの第1端部10aに最も近い位置にあるカラーインク(黒K)のノズル列が第4端部Sbを通過する位置まで移動させる。
【0064】
以上の実施例によれば、ヘッドユニット10における複数の液体吐出ヘッド1の副走査方向の位置がずれていないため、ヘッドユニット10の副走査方向の大型化を抑制できる。また、反応液のノズル列332が形成された液体吐出ヘッドとカラーインクのノズル列332が形成された液体吐出ヘッドとを独立としているため、両者で交換サイクル(寿命)が異なる場合でも効率的に交換が可能である。特に実施例3では反応液及び白色インクのノズル列332が形成された液体吐出ヘッドとカラーインクのノズル列332が形成された液体吐出ヘッドとを独立としているため、より効率的な交換が可能である。また、白色インクや反応液を用いない印刷モードにおいてキャリッジ60の移動量を短縮してスループットを向上させることができる。また、透明シートに両面印刷する場合の3層印字及び5層印字において、反応液を先に打つことで高画質印刷が可能となる。また、白色インクの先打ちと後打ちの使い分けをしながら双方向印字で対応でき、高速印刷が可能となる。
【0065】
<液体吐出装置>
図1は、本発明を適用可能な液体吐出装置を説明するための図であり、液体吐出装置の液体吐出ヘッド及びその周辺の拡大図である。まず、本実施形態における液体吐出装置50の概略構成を、図1を参照しつつ説明する。図1は、液体吐出ヘッド1を用いる液体吐出装置を模式的に示す斜視図である。本実施形態の液体吐出装置50は、液体吐出ヘッド1を走査しつつ液体としてのインクを吐出して記録シートSへの記録を行うシリアル型のインクジェット記録装置を構成している。
【0066】
液体吐出ヘッド1は、キャリッジ60に搭載されている。キャリッジ60は、ガイド軸51に沿って主走査方向(X方向)に沿って往復移動する。記録シートSは、搬送ローラ55、56、57、58によって、主走査方向と交差(本例の場合は、直交)する副走査方向(Y方向)に搬送される。尚、以下で参照する各図において、Z方向は鉛直方向を示しており、X方向及びY方向によって規定されるX-Y平面と交差(本例の場合は、直交)している。液体吐出ヘッド1は、ユーザによって、キャリッジ60に対し取り外し及び取り付けが可能に構成されている。
【0067】
液体吐出ヘッド1は、循環ユニット54と、後述する吐出ユニット3(図13参照)とを含み構成されている。具体的な構成については後述するが、吐出ユニット3には、複数の吐出口と、各吐出口から液体を吐出するための吐出エネルギーを発するエネルギー発生素子(以下、吐出素子と称す)とが設けられている。
【0068】
また、液体吐出装置50には、インクの供給源であるインクタンク2及び外部ポンプ21が設けられており、インクタンク2に貯留されたインクは、外部ポンプ21の駆動力によってインク供給チューブ59を介して循環ユニット54に供給される。
【0069】
液体吐出装置50は、キャリッジ60に搭載された液体吐出ヘッド1が主走査方向へと移動しつつインクを吐出して記録を行う記録走査と、記録シートSを副走査方向へと搬送する搬送動作とを繰り返す。これにより、記録シートSに所定の画像を形成する。尚、本実施形態における液体吐出ヘッド1は、反応液、白色インク、複数のカラーインクを吐出可能としており、これらの液体によってフルカラー画像を記録することが可能である。なお、以下の説明では、反応液、白色インク、カラーインクを総称して単にインクと称する
ことがある。カラーインクには、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、淡シアン(LC)、淡マゼンタ(LM)、オレンジ(OR)、グレー(GY)等を含み得る。但し、液体吐出ヘッド1から吐出可能とするカラーインクはここに例示したインクに限定されず、また、ここに列挙したインクを全て含む必要もない。他の種類のインクを吐出するための液体吐出ヘッドにも本開示は適用可能である。すなわち、液体吐出ヘッドから吐出するインクの種類及びその数は限定されない。
【0070】
また、液体吐出装置50には記録シートSの搬送路からX方向に外れた位置に、液体吐出ヘッドの吐出口が形成された吐出口面を覆うことが可能なキャップ部材(不図示)が設けられている。キャップ部材は、非記録動作時において液体吐出ヘッド1の吐出口面を覆い、吐出口の乾燥防止や保護、吐出口からのインク吸引動作等に使用される。
【0071】
尚、図1に示すヘッドユニット10は、第1ヘッド1a、第2ヘッド1b及び第3ヘッド1cの3つの液体吐出ヘッド1を備える。そして、1つの液体吐出ヘッド1には4種類の液体(反応液、白色インク、カラーインク)に対応した4つの循環ユニット54が設けられる例を示している。しかしながら、ヘッドユニット10の構成はこれに限られず、吐出する液体の種類に応じた循環ユニット54が備えられていればよい。また、同種類の液体に対して複数の循環ユニット54が備えられていてもよい。即ち、液体吐出ヘッド1は、1つ以上の循環ユニットを備える構成とすることができる。4種類のインク全てを循環せず、少なくとも1つのインクのみ循環する構成でもよい。
【0072】
図12は、液体吐出装置50の制御系を示すブロック図である。CPU103は、ROM101に格納された処理手順等のプログラムに基づいて液体吐出装置50の各部の動作を制御する制御手段としての機能を果す。RAM102は、CPU103が処理を実行する際のワークエリア等として用いられる。CPU103は、液体吐出装置50の外部のホスト装置400からの画像データを受信してヘッドドライバ1Aを制御し、吐出ユニット3に設けられた吐出素子の駆動を制御する。また、CPU103は、液体吐出装置に設けられた種々のアクチュエータのドライバの制御も行う。例えば、CPU103は、キャリッジ60を移動させるためのキャリッジモータ105のモータドライバ105A、及び、記録シートSを搬送させるための搬送モータ104のモータドライバ104A等の制御を行う。さらに、CPU103は、後述の循環ポンプ500の駆動を行うポンプドライバ500A、及び、外部ポンプ21のポンプドライバ21A等の制御を行う。尚、図12では、ホスト装置400からの画像データを受信した処理を行う形態を示しているが、ホスト装置400からのデータに拠らずに液体吐出装置50で処理が行われてもよい。
【0073】
<液体吐出ヘッドの基本構成>
図13は、本実施形態の液体吐出ヘッド1の分解斜視図である。図14図13に示す液体吐出ヘッド1のIIIa-IIIa線による断面図である。図14(a)は液体吐出ヘッド1の全体的な縦断面図、図14(b)は図14(a)に示す吐出モジュールの拡大図である。以下、図13及び図14を中心に、図1を適宜参照しつつ、本実施形態における液体吐出ヘッド1の基本構成を説明する。
【0074】
図13に示すように、液体吐出ヘッド1は、循環ユニット54と、循環ユニット54から供給されたインクを記録シートSに吐出するための吐出ユニット3とを含み構成されている。本実施形態における液体吐出ヘッド1は、液体吐出装置50のキャリッジ60に設けられている不図示の位置決め手段及び電気的接点によってキャリッジ60に固定支持される。液体吐出ヘッド1は、キャリッジ60と共に図1に示す主走査方向(X方向)に移動しながらインクを吐出し、記録シートSへの記録を行う。
【0075】
インクの供給源となるインクタンク2に接続された外部ポンプ21には、インク供給チ
ューブ59が設けられている(図1参照)。このインク供給チューブ59の先端には、不図示の液体コネクタが設けられている。液体吐出装置50に液体吐出ヘッド1が搭載された際、液体吐出ヘッド1のヘッド筐体53に設けられた、液体の導入口である液体コネクタ挿入口53aに、インク供給チューブ59の先端に設けられた液体コネクタが気密接続される。これにより、インクタンク2から外部ポンプ21を経て液体吐出ヘッド1に至るインク供給路が形成される。本実施形態では、4種類のインクを用いるため、インクタンク2、外部ポンプ21、インク供給チューブ59、及び循環ユニット54が、それぞれのインクに対応して4組設けられており、各インクに対応した4本のインク供給路が独立して形成されている。このように、本実施形態の液体吐出装置50には、液体吐出ヘッド1の外部に設けられたインクタンク2からインクが供給されるインク供給系が備えられている。尚、本実施形態の液体吐出装置50には、液体吐出ヘッド1内のインクをインクタンク2に回収するようなインク回収系は備えられていない。従って、液体吐出ヘッド1には、インクタンク2のインク供給チューブ59を接続するための液体コネクタ挿入口53aは設けられているが、液体吐出ヘッド1のインクをインクタンク2に回収するためのチューブを接続させるコネクタ挿入口は設けられていない。尚、液体コネクタ挿入口53aは、インク毎に設けられている。
【0076】
図14に示すように、循環ユニット54は、ブラックインク用の循環ユニット54B、シアンインク用の循環ユニット54C、マゼンタインク用の循環ユニット54M、イエローインク用の循環ユニット54Yを有する。反応液、白色インク、他のカラーインクを循環させる循環ユニット54も略同様の構成を有しており、本実施形態において循環ユニット54の各々を特に区別しない場合には、色等を示す符号を省略することがある。
【0077】
図13及び図14(a)において、吐出ユニット3は、2つの吐出モジュール300、第1支持部材4、第2支持部材7、電気配線部材(電気配線テープ)5、及び電気コンタクト基板6を備える。図14(b)に示すように、吐出モジュール300は、厚さ0.5~1mmのシリコン基板310と、シリコン基板310の片面に設けられた複数の吐出素子15とを備えている。本実施形態における吐出素子15は、液体を吐出するための吐出エネルギーとして熱エネルギーを発生する電気熱変換素子(ヒータ)により構成されている。吐出素子15の各々には、シリコン基板310上に成膜技術によって形成された電気配線を介して電力が供給される。
【0078】
また、シリコン基板310の表面(図14(b)において下面)には、ノズルプレート320が形成されている。ノズルプレート320には、複数の吐出素子15に対応する複数の圧力室12と、インクを吐出する複数の吐出口13とがフォトリソグラフィ技術によってそれぞれ形成されている。さらに、シリコン基板310には、共通供給流路18と共通回収流路19とが形成されている。また、シリコン基板310には、共通供給流路18と各圧力室12とを連通する供給接続流路323と、共通回収流路19と各圧力室12とを連通する回収接続流路324が形成されている。本実施形態では、1つの吐出モジュール300が、2種類のインクの吐出を行うように構成されている。即ち、図14(a)に示す2つの吐出モジュール300のうち、図中の左側に位置する吐出モジュール300は、ブラックインクとシアンインクの吐出を行い、図中の右側に位置する吐出モジュール300は、マゼンタインクとイエローインクの吐出を行う。尚、この組み合わせは一例であり、インクの組み合わせはいずれであってもよい。1つの吐出モジュールが1種類のインクを吐出する構成でもよいし、3種類以上のインクを吐出する構成としてもよい。2つの吐出モジュール300が同じ種類数のインクを吐出するものでなくてもよい。1つの吐出モジュール300が備えられる構成としてもよいし、3つ以上の吐出モジュール300が備えらえる構成としてもよい。さらに、図14に示す例では、1色のインクに対して、Y方向に延在する2つの吐出口列が形成されている。各吐出口列を構成する複数の吐出口13の各々に対し、圧力室12、供給接続流路323及び回収接続流路324がそれぞれ形
成されている。
【0079】
シリコン基板310の裏面(図14(b)において上面)側には、後述するプレート供給口311及びプレート回収口312が形成されている(図22図23参照)。プレート供給口311は複数の共通供給流路18にインク供給流路48からインクを供給し、プレート回収口312は複数の共通回収流路19からインク回収流路49にインクを回収する。
【0080】
尚、ここでいうプレート供給口311及びプレート回収口312は、後述する順方向のインク循環時においてインクの供給及び回収を行う開口を指す。すなわち、順方向へのインク循環時にはプレート供給口311から共通供給流路18の各々にインクが供給されると共に、共通回収流路19の各々からプレート回収口312へとインクが回収される。一方、逆方向へインクを流すインク循環を行う場合もある。この場合には、上記で説明したプレート回収口312から共通回収流路19にインクが供給されると共に、共通供給流路18からプレート供給口311へとインクが回収されることになる。
【0081】
図14(a)に示すように、吐出モジュール300は、その裏面(図14(a)における上面)が、第1支持部材4の一方の面(図14(a)において下面)に接着固定されている。第1支持部材4には、その一方の面から他方の面(図14(a)において上面)に亘って貫通するインク供給流路48とインク回収流路49とが形成されている。インク供給流路48の一方の開口はシリコン基板310における前述のプレート供給口311に、インク回収流路49の一方の開口はシリコン基板310における前述のプレート回収口312に、それぞれ連通している。尚、インク供給流路48及びインク回収流路49は、インクの種類毎に独立して設けられている。
【0082】
また、第1支持部材4の一方の面(図14(a)における上面)には、吐出モジュール300を挿通させる開口7a(図13参照)を有する第2支持部材7が接着固定されている。第2支持部材7には、吐出モジュール300に対して電気的に接続される電気配線部材5が保持されている。電気配線部材5は、インクを吐出するための電気信号を吐出モジュール300に印加するための部材である。吐出モジュール300と電気配線部材5との電気接続部分は、封止材(不図示)により封止され、インクによる腐食や外的衝撃から保護されている。
【0083】
また、電気配線部材5の端部5a(図13参照)には、不図示の異方性導電フィルムを用いて電気コンタクト基板6が熱圧着され、電気配線部材5と電気コンタクト基板6とは電気的に接続されている。電気コンタクト基板6は、液体吐出装置50からの電気信号を受け取るための外部信号入力端子(不図示)を有している。
【0084】
さらに、第1支持部材4と循環ユニット54との間にはジョイント部材8(図14(a))が設けられている。ジョイント部材8には、供給口88と回収口89とがインクの種類毎に形成されている。供給口88及び回収口89は、第1支持部材4のインク供給流路48及びインク回収流路49と循環ユニット54に形成される流路とを連通させる。尚、図14(a)において、供給口88B及び回収口89Bはブラックインクに対応し、供給口88C及び回収口89Cはシアンインクに対応する。また、供給口88M及び回収口89Mはマゼンタインクに対応し、供給口88Y及び回収口89Yはイエローインクに対応している。
【0085】
尚、第1支持部材4のインク供給流路48及びインク回収流路49のそれぞれの一端部の開口は、シリコン基板310におけるプレート供給口311及びプレート回収口312に合わせた小さな開口面積を有している。これに対し、第1支持部材4のインク供給流路
48及びインク回収流路49のそれぞれの他端部の開口は、循環ユニット54の流路に合わせて形成されたジョイント部材8の大きな開口面積と同一の開口面積にまで拡大させた形状を有している。このような構成を採ることにより、各回収流路から集められたインクに対する流路抵抗の上昇を抑制することができる。但し、インク供給流路48及びインク回収流路49のそれぞれの一端部及び他端部の開口の形状は、上記の例に限定されない。
【0086】
上記構成を有する液体吐出ヘッド1において、循環ユニット54に供給されたインクは、ジョイント部材8の供給口88及び第1支持部材4のインク供給流路48を経て、吐出モジュール300のプレート供給口311から共通供給流路18に流入する。続いてインクは共通供給流路18から供給接続流路323を介して圧力室12に流入し、圧力室12内に流入したインクの一部は、吐出素子15の駆動によって吐出口13から吐出される。吐出されなかった残りのインクは、圧力室12から回収接続流路324、共通回収流路19を経てプレート回収口312から第1支持部材4のインク回収流路49に流入する。そして、インク回収流路49に流入したインクは、ジョイント部材8の回収口89を経て循環ユニット54へと流入し、回収される。
【0087】
<循環ユニットの構成要素>
図15は、本実施形態の液体吐出装置に適用される1種類のインクに対応する1つの循環ユニット54の外観概略図である。循環ユニット54は、循環ポンプ500の他に、フィルタ110、第1圧力調整手段120、第2圧力調整手段150、を有していることが好ましい。これらの構成要素は、図16及び図17に示すように各流路によって接続され、液体吐出ヘッド1内において、吐出モジュール300に対してインクの供給及び回収を行う循環経路を構成している。
【0088】
<液体吐出ヘッド内の循環経路>
図16は、液体吐出ヘッド1内に構成される1種類のインク(1色のインク)の循環経路を模式的に示す縦断面図である。循環経路をより明確に説明するため、図16における各構成(第1圧力調整手段120、第2圧力調整手段150、循環ポンプ500等)の相対位置は簡略化している。そのため各構成の相対位置は後述する図30の構成とは異なる。また、図17は、図16に示した循環経路を模式的に示すブロック図である。図16及び図17に示すように、第1圧力調整手段120は、第1バルブ室121及び第1圧力制御室122を備えている。第2圧力調整手段150は、第2バルブ室151及び第2圧力制御室152を備えている。第1圧力調整手段120は、第2圧力調整手段150よりも相対的に制御圧力が高くなるように構成されている。本実施形態では、この2つの第1圧力調整手段120、第2圧力調整手段150を用いることで、循環経路内において一定の圧力範囲での循環を実現している。また、第1圧力調整手段120と第2圧力調整手段150との圧力差に応じた流量で圧力室12(吐出素子15)をインクが流れるように構成されている。以下、図16及び図17を参照しつつ、液体吐出ヘッド1における循環経路及び循環経路内におけるインクの流れを説明する。尚、各図中の矢印はインクの流れる方向を示している。
【0089】
まず、液体吐出ヘッド1における各構成要素の接続状態を説明する。液体吐出ヘッド1の外部に設けられたインクタンク2(図17)に収容されたインクを液体吐出ヘッド1へ送る外部ポンプ21は、インク供給チューブ59(図1)を介して循環ユニット54と接続されている。循環ユニット54の上流側に位置するインク流路(流入流路)にはフィルタ110が設けられている。フィルタ110の下流側に位置するインク供給路(流入流路)は、第1圧力調整手段120の第1バルブ室121に接続されている。第1バルブ室121は、図16に示すバルブ190Aにより開閉可能な連通口191Aを介して第1圧力制御室122に連通している。尚、流入流路とは、液体吐出ヘッド1の外部に設けられたインクタンク2内の液体を、圧力室12に供給するために液体吐出ヘッド1に流入する流
路である。
【0090】
第1圧力制御室122は、供給流路130、バイパス流路160、及び循環ポンプ500のポンプ出口流路180に接続されている。供給流路130は、吐出モジュール300に設けられた前述のプレート供給口311を介して共通供給流路18に接続されている。また、バイパス流路160は、第2圧力調整手段150に設けられた第2バルブ室151に接続されている。第2バルブ室151は、図16に示すバルブ190Bによって開閉する連通口191Bを介して第2圧力制御室152に連通している。図16及び図17では、バイパス流路160の一端を第1圧力調整手段120の第1圧力制御室122に接続し、且つバイパス流路160の他端を第2圧力調整手段150の第2バルブ室151に接続した例を示している。これに対し、バイパス流路160の一端を供給流路130に接続し、バイパス流路の他端を第2バルブ室151に接続してもよい。
【0091】
第2圧力制御室152は、回収流路140に接続されている。回収流路140は、吐出モジュール300に設けられた前述のプレート回収口312を介して共通回収流路19に接続されている。さらに、第2圧力制御室152は、ポンプ入口流路170を介して循環ポンプ500に接続されている。尚、ポンプ入口流路170は流入口170aを介して第2圧力制御室に接続する。
【0092】
次に、上記構成を有する液体吐出ヘッド1におけるインクの流れについて説明する。図17に示すように、インクタンク2に収容されているインクは、液体吐出装置50に設けられた外部ポンプ21によって加圧され、正圧のインク流となって液体吐出ヘッド1の循環ユニット54に供給される。
【0093】
循環ユニット54に供給されたインクは、フィルタ110を通過することにより塵埃などの異物や気泡が除去された後、第1圧力調整手段120に設けられた第1バルブ室121に流入する。フィルタ110を通過する際の圧力損失によってインクの圧力は低下するが、この段階でのインクの圧力は正圧の状態にある。その後、第1バルブ室121に流入したインクは、バルブ190Aが開状態にあるとき、連通口191Aを通過して第1圧力制御室122に流入する。連通口191Aを通過する際の圧力損失によって、第1圧力制御室122に流入したインクは、正圧から負圧へと切り替わる。
【0094】
次に、循環経路内におけるインクの流れを説明する。循環ポンプ500は、その上流側となるポンプ入口流路170から吸引したインクを下流側となるポンプ出口流路180へとインクを送り出すように動作する。従って、循環ポンプ500が駆動されることにより、第1圧力制御室122に供給されたインクは、ポンプ出口流路180から送液されたインクと共に、供給流路130及びバイパス流路160に流入する。尚、詳細は後述するが、本実施形態では送液可能な循環ポンプ500として、ダイヤフラムに貼り付けた圧電素子を駆動源とする圧電ダイヤフラムポンプを用いている。圧電ダイヤフラムポンプは、圧電素子に駆動電圧を入力することでポンプ室内の容積を変化させ、圧力変動によって2つの逆止弁が交互に動くことにより送液を行うポンプである。
【0095】
供給流路130に流入したインクは、吐出モジュール300のプレート供給口311から共通供給流路18を介して圧力室12に流入し、その一部のインクは吐出素子15の駆動(発熱)によって吐出口13から吐出される。また、吐出に使用されなかった残りのインクは、圧力室12を流動し、共通回収流路19を通過した後、吐出モジュール300に接続されている回収流路140に流入する。回収流路140に流入したインクは、第2圧力調整手段150の第2圧力制御室152に流入する。
【0096】
一方、第1圧力制御室122からバイパス流路160に流入したインクは、第2バルブ
室151に流入した後、連通口191Bを通過して第2圧力制御室152に流入する。バイパス流路160を経由して第2圧力制御室152に流入したインクと回収流路140から回収されたインクとは、循環ポンプ500の駆動によってポンプ入口流路170を経て循環ポンプ500内に吸引される。そして、循環ポンプ500内に吸引されたインクは、ポンプ出口流路180へと送られ、第1圧力制御室122に再び流入する。以降では、第1圧力制御室122から供給流路130を介して吐出モジュール300を経て第2圧力制御室152に流入したインクと、バイパス流路160を介して第2圧力制御室152に流入したインクとが、循環ポンプ500に流入する。そして、循環ポンプ500から第1圧力制御室122に送られる。このようにして循環経路内でのインクの循環が行われることになる。
【0097】
以上のように、本実施形態では、循環ポンプ500によって、液体吐出ヘッド1内に形成した循環経路に沿って液体を循環させることが可能になる。このため、吐出モジュール300内でのインクの増粘や色材のインクの沈降成分の堆積を抑制することが可能となり、吐出モジュール300におけるインクの流動性および吐出口13における吐出特性を良好な状態に保つことが可能になる。
【0098】
また本実施形態における循環経路は、液体吐出ヘッド1内で完結する構成を採るため、液体吐出ヘッドの外部に設けられたインクタンク2と液体吐出ヘッド1との間でインクの循環を行う場合に比べ、循環経路長を大幅に短縮することができる。このため、インクの循環を小型な循環ポンプ500で行うことが可能になる。
【0099】
更に、液体吐出ヘッド1とインクタンク2との接続流路としては、インクを供給する流路のみを備える構成となっている。即ち、液体吐出ヘッド1からインクタンク2へとインクを回収するための流路を不要とする構成を採る。このため、インクタンク2と液体吐出ヘッド1との接続にはインク供給チューブ59のみを設ければよく、インク回収用のチューブを設ける必要はない。従って、液体吐出装置50の内部を、チューブの本数が削減された簡潔な構成とすることができ、液体吐出装置50全体の小型化を実現することができる。更にチューブの本数が削減されることにより、液体吐出ヘッド1の主走査に伴うインク供給チューブ59の揺動に起因するインクの圧力変動を軽減することが可能になる。また、液体吐出ヘッド1の主走査時におけるインク供給チューブ59の揺動は、キャリッジ60を駆動するキャリッジモータ105の駆動負荷となる。このため、チューブの本数削減によってキャリッジモータ105の駆動負荷が低減され、キャリッジモータ105等を含む主走査機構の簡略化を図ることが可能になる。更に、液体吐出ヘッドからインクタンクへのインクの回収が不要となるため、外部ポンプ21の小型化も可能となる。このように、本実施形態によれば、液体吐出装置50の小型化及びコスト低減を実現することができる。
【0100】
<圧力調整手段>
図18は、圧力調整手段の例を示す図である。図18を参照して、上述の液体吐出ヘッド1に内蔵される圧力調整手段(第1圧力調整手段120、第2圧力調整手段150)の構成及び作用を、より詳細に説明する。尚、第1圧力調整手段120と第2圧力調整手段150とは、実質的に同一の構成を有している。このため、以下では、第1圧力調整手段120を例に採り説明し、第2圧力調整手段150については、図18において第1圧力調整手段に対応する部分の符号を併記するにとどめる。第2圧力調整手段150の場合には、以下で説明する第1バルブ室121を第2バルブ室151と読み替え、第1圧力制御室122を第2圧力制御室152と読み替えることとする。
【0101】
第1圧力調整手段120は、円筒状の筐体125内に形成された第1バルブ室121と第1圧力制御室122とを有する。第1バルブ室121と第1圧力制御室122とは、円
筒状の筐体125内に設けられた隔壁123によって隔てられている。但し、第1バルブ室121は、隔壁123に形成された連通口191を介して第1圧力制御室122に連通している。第1バルブ室121には、連通口191における第1バルブ室121と第1圧力制御室122との連通及び遮断を切り替えるバルブ190が設けられている。バルブ190は、バルブばね200によって、連通口191に対向する位置に保持されており、バルブばね200の付勢力によって隔壁123と密接可能な構成を有している。バルブ190が隔壁123に密接することにより、連通口191におけるインクの流通は遮断される。尚、隔壁123との密接性を高めるため、バルブ190の隔壁123との接触部分は弾性部材によって形成されることが好ましい。また、バルブ190の中央部には連通口191に挿通されるバルブシャフト190aが突設されている。このバルブシャフト190aをバルブばね200の付勢力に抗して押圧することにより、バルブ190は隔壁123から離間し、連通口191におけるインクの流通が可能になる。以下、バルブ190によって連通口191におけるインクの流通が遮断される状態を「閉状態」、連通口191におけるインクの流通が可能な状態を「開状態」と称す。
【0102】
円筒状の筐体125の開口部は、可撓性部材230と圧力板210とにより閉塞されている。この可撓性部材230と、圧力板210と、筐体125の周壁と、隔壁123とにより、第1圧力制御室122が形成されている。圧力板210は、可撓性部材230の変位に伴って変位可能に構成されている。圧力板210及び可撓性部材230の材質は、特に限定されないが、例えば、圧力板210を樹脂成形部品で構成し、可撓性部材230を樹脂フィルムで構成することが可能である。この場合、圧力板210は可撓性部材230に熱溶着によって固定することができる。
【0103】
圧力板210と隔壁123との間には、圧力調整ばね220(付勢部材)が設けられている。圧力調整ばね220の付勢力によって、圧力板210及び可撓性部材230は、図18(a)に示すように、第1圧力制御室122の内容積が広がる方向に付勢されている。また、第1圧力制御室122内の圧力が減少すると、圧力板210及び可撓性部材230は、圧力調整ばね220の圧力に抗して、第1圧力制御室122の内容積が減少する方向に変位する。そして、第1圧力制御室122の内容積が一定量まで減少すると、圧力板210がバルブ190のバルブシャフト190aに当接する。その後、さらに第1圧力制御室122の内容積が減少すると、バルブばね200の付勢力に抗してバルブシャフト190aと共にバルブ190が移動し、隔壁123から離間する。これにより、連通口191が開状態(図18(b)の状態)となる。
【0104】
本実施形態では、連通口191が開状態となったときの第1バルブ室121の圧力を第1圧力制御室122の圧力よりも高くなるように、循環経路内における接続設定をする。これにより、連通口191が開状態となると、第1バルブ室121から第1圧力制御室122へとインクが流入する。このインク流入により、第1圧力制御室122の内容積が増加する方向へ可撓性部材230及び圧力板210が変位する。その結果、圧力板210がバルブ190のバルブシャフト190aから離間し、バルブ190はバルブばね200の付勢力によって隔壁123に密接し、連通口191は閉状態(図18(c)の状態)となる。
【0105】
このように、本実施形態における第1圧力調整手段120では、第1圧力制御室122内の圧力が一定圧力以下まで減少すると(例えば負圧が強くなると)、第1バルブ室121から連通口191を介してインクが流入する。これにより、第1圧力制御室122の圧力がそれ以上減少しないように構成されている。従って、第1圧力制御室122は一定範囲内の圧力に保たれるよう制御される。
【0106】
次に、第1圧力制御室122の圧力についてより詳細に説明する。前述のように第1圧
力制御室122の圧力に応じて可撓性部材230及び圧力板210が変位し、圧力板210がバルブシャフト190aに当接して連通口191が開状態となった状態(図18(b)の状態)を考える。このとき、圧力板210に働く力の関係は、次の式1によって表される。
P2×S2+F2+(P1-P2)×S1+F1=0・・・式1
さらに、式1をP2について整理すると、式2のようになる。
P2=-(F1+F2+P1×S1)/(S2-S1)・・・式2
P1:第1バルブ室121の圧力(ゲージ圧)
P2:第1圧力制御室122の圧力(ゲージ圧)
F1:バルブばね200のばね力
F2:圧力調整ばね220のばね力
S1:バルブ190の受圧面積
S2:圧力板210の受圧面積
【0107】
ここで、バルブばね200のばね力F1及び圧力調整ばね220のばね力F2は、バルブ190及び圧力板210を押す方向を正(図18において左方向)とする。また、第1バルブ室121の圧力P1及び第1圧力制御室122の圧力P2に関し、P1が、P1≧P2の関係となるように構成する。
【0108】
連通口191が開状態となるときの第1圧力制御室122の圧力P2は、式2によって決定され、連通口191が開状態となると、P1≧P2の関係に構成したことにより、第1バルブ室121から第1圧力制御室122へインクが流入する。その結果、第1圧力制御室122の圧力P2はそれ以上減少せず、P2は一定範囲内の圧力に保たれる。
【0109】
一方、図18(c)に示すように、圧力板210がバルブシャフト190aと非当接状態となり、連通口191が閉状態となったときの圧力板210に働く力の関係は、式3のようになる。
P3×S3+F3=0・・・式3
ここで、式3をP3について整理すると式4のようになる。
P3=-F3/S3・・・式4
F3:圧力板210とバルブシャフト190aとが非当接状態にあるときの圧力調整ばね220のばね力
P3:圧力板210とバルブシャフト190aとが非当接状態にあるときの第1圧力制御室122の圧力(ゲージ圧)
S3:圧力板210とバルブ190が非当接状態にあるときの圧力板210の受圧面積
【0110】
ここで図18(c)では、圧力板210及び可撓性部材230が変位可能な限界まで図左方向へ変位した状態を表している。圧力板210及び可撓性部材230が図18(c)の状態へと変位する間の変位量に応じて、第1圧力制御室122の圧力P3、圧力調整ばね220のばね力F3、圧力板210の受圧面積S3は変化する。具体的には、図18(c)よりも圧力板210及び可撓性部材230が図18において右方向にあるとき、圧力板210の受圧面積S3は小さくなり、圧力調整ばね220のばね力F3は大きくなる。その結果、式4の関係により第1圧力制御室122の圧力P3は小さくなる。従って、式2及び式4により、図18(b)の状態から図18(c)の状態になるまでの間に、第1圧力制御室122の圧力は徐々に上昇していく(つまり、負圧が弱くなり、正圧側に近づく値になる)。即ち、連通口191が開状態となっている状態から、圧力板210及び可撓性部材230が左方向に徐々に変位していき、最終的に第1圧力制御室122の内容積が変位可能な限界に達するまでの間に、第1圧力制御室の圧力は徐々に上昇していく。つまり、負圧が弱まっていくことになる。
【0111】
<循環ポンプ>
次に、図19及び図20を参照して、上述の液体吐出ヘッド1に内蔵される循環ポンプ500の構成及び作用を詳細に説明する。
【0112】
図19は、循環ポンプ500の外観斜視図である。図19(a)は循環ポンプ500の正面側を示す外観斜視図、図19(b)は循環ポンプ500の背面側を示す外観斜視図である。循環ポンプ500の外殻は、ポンプ筐体505と、ポンプ筐体505に固定されたカバー507とにより構成されている。ポンプ筐体505は、筐体部本体505aと、筐体部本体505aの外面に接着固定された流路接続部材505bとにより構成されている。筐体部本体505aと流路接続部材505bとの各々には、互いに連通する一対の貫通孔が異なる2つの位置に設けられている。一方の位置に設けられた一対の貫通孔はポンプ供給孔501を形成し、他方の位置に設けられた一対の貫通孔はポンプ排出孔502を形成している。ポンプ供給孔501は、第2圧力制御室152に接続されたポンプ入口流路170に接続され、ポンプ排出孔502は、第1圧力制御室122に接続されたポンプ出口流路180に接続されている。ポンプ供給孔501から供給されたインクは、後述のポンプ室503(図20参照)を通過してポンプ排出孔502から排出される。
【0113】
図20は、図19(a)に示した循環ポンプ500のIX-IX線断面図である。ポンプ筐体505の内面にはダイヤフラム506が接合されており、このダイヤフラム506とポンプ筐体505の内面に形成された凹部との間にポンプ室503が形成されている。ポンプ室503は、ポンプ筐体505に形成されたポンプ供給孔501及びポンプ排出孔502に連通している。また、ポンプ供給孔501の中間部分には、逆止弁504aが設けられ、ポンプ排出孔502の中間部分には、逆止弁504bが設けられている。具体的には、逆止弁504aは、その一部がポンプ供給孔501の中間部分に形成されている空間512aにおいて図中の左方へと移動し得るように配置されている。また、逆止弁504bは、その一部がポンプ排出孔502の中間部分に形成されている空間512bにおいて図中の右方へと移動し得るように配置されている。
【0114】
ダイヤフラム506が変位してポンプ室503の容積が増加することでポンプ室503が減圧されると、逆止弁504aは空間512a内のポンプ供給孔501の開口から離間する(つまり、図中の左方へと移動する)。逆止弁504aが空間512a内のポンプ供給孔501の開口から離間することで、ポンプ供給孔501におけるインクの流通を可能とする開状態となる。また、ダイヤフラム506が変位してポンプ室503の容積が減少することでポンプ室503が加圧されると、逆止弁504aはポンプ供給孔501の開口の周囲の壁面に密接する。この結果、ポンプ供給孔501におけるインクの流通を遮断する閉状態となる。
【0115】
一方、逆止弁504bは、ポンプ室503が減圧されると、ポンプ筐体505の開口の周囲の壁面に密接して、ポンプ排出孔502におけるインクの流通を遮断する閉状態となる。また、ポンプ室503が加圧されると、逆止弁504bは、ポンプ筐体505の開口から離間して空間512b側に移動し(つまり、図中の右方へと移動し)、ポンプ排出孔502におけるインクの流通を可能とする。
【0116】
尚、逆止弁504a、504bの各々の材質は、ポンプ室503内の圧力に応じて変形可能なものであればよく、例えば、EPDMやエラストマ等の弾性部材やポリプロピレン等のフィルムや薄板で形成することが可能である。但し、これらに限定されるものではない。
【0117】
前述のように、ポンプ室503はポンプ筐体505とダイヤフラム506との接合によって形成されている。従って、ダイヤフラム506が変形することによりポンプ室503
の圧力は変化する。例えば、ダイヤフラム506がポンプ筐体505側に変位して(図中、右側に変位して)ポンプ室503の容積が減少すると、ポンプ室503内の圧力は上昇する。これによりポンプ排出孔502に対向して配置した逆止弁504bが開状態となり、ポンプ室503のインクが排出される。このとき、ポンプ供給孔501に対向して配置された逆止弁504aは、ポンプ供給孔501の周囲の壁面に密接するためポンプ室503からポンプ供給孔501へのインクの逆流は抑制される。
【0118】
また逆に、ダイヤフラム506がポンプ室503が広がる方向に変位した場合にはポンプ室503の圧力は減少する。これにより、ポンプ供給孔501に対向して配置された逆止弁504aが開状態となり、ポンプ室503にインクが供給される。このとき、ポンプ排出孔502に配置された逆止弁504bは、ポンプ筐体505に形成された開口の周囲の壁面に密接して当該開口を閉塞する。このため、ポンプ排出孔502からポンプ室503へのインクの逆流は抑制される。
【0119】
このように循環ポンプ500では、ダイヤフラム506が変形し、ポンプ室503内の圧力を変化させることにより、インクの吸引と排出を行う。この際、ポンプ室503内に泡が混入すると、ダイヤフラム506が変位しても、泡の膨張・収縮によってポンプ室503内の圧力変化が小さくなり送液量が低下する。そこでポンプ室503を重力と平行に配置してポンプ室503に混入した泡をポンプ室503の上方に集まりやすくすると共に、ポンプ排出孔502をポンプ室503の中心よりも上方に配置する。これにより、ポンプ内の泡の排出性を向上させることが可能となり、流量の安定化を図ることができる。
【0120】
<液体吐出ヘッド内のインクの流れ>
図21は、液体吐出ヘッド内のインクの流れを説明する図である。図21を参照しつつ液体吐出ヘッド1内で行われるインクの循環について説明する。インク循環経路をより明確に説明するため、図21における各構成(第1圧力調整手段120、第2圧力調整手段150、循環ポンプ500等)の相対位置は簡略化している。そのため各構成の相対位置は後述する図30の構成とは異なる。図21(a)は吐出口13からインクを吐出して記録を行う記録動作を行っているときのインクの流れを模式的に示したものである。尚、図中の矢印はインクの流れを示している。本実施形態において、記録動作を行う際には外部ポンプ21及び循環ポンプ500の両方が駆動を開始する。尚、記録動作に関わらず、外部ポンプ21及び循環ポンプ500が駆動していてもよい。また、外部ポンプ21と循環ポンプ500との駆動は、連動して行われなくてもよく、別個に独立して駆動されてもよい。
【0121】
記録動作中は循環ポンプ500がONの状態(駆動状態)となっており、第1圧力制御室122から流出したインクは供給流路130及びバイパス流路160に流入する。供給流路130に流入したインクは、吐出モジュール300を通過した後、回収流路140に流入し、その後、第2圧力制御室152に供給される。なお、供給流路130は開口部250を介して第1圧力制御室122に接続し、バイパス流路160は開口部260を介して第1圧力制御室122に接続し、回収流路140は開口部240を介して第2圧力制御室152に接続する。
【0122】
一方、第1圧力制御室122からバイパス流路160に流入したインクは、第2バルブ室151を経て第2圧力制御室152に流入する。第2圧力制御室152に流入したインクは、ポンプ入口流路170、循環ポンプ500、及びポンプ出口流路180を通過した後、再び第1圧力制御室122に流入する。このとき、第1バルブ室121による制御圧力は、前述した式2の関係に基づいて、第1圧力制御室122の制御圧力よりも高く設定されている。従って、第1圧力制御室122内のインクは、第1バルブ室121に流れずに再度、供給流路130を介して吐出モジュール300に供給される。吐出モジュール3
00に流入したインクは、回収流路140、第2圧力制御室152、ポンプ入口流路170、循環ポンプ500、及びポンプ出口流路180を経て、再び第1圧力制御室122に流入する。以上により液体吐出ヘッド1内で完結するインク循環が行われる。
【0123】
以上のインク循環において、吐出モジュール300内のインクの循環量(流量)は第1圧力制御室122及び第2圧力制御室152の制御圧力の差圧によって決定される。そして、この差圧は、吐出モジュール300内の吐出口近傍のインクの増粘を抑制可能な循環量となるように設定される。また、記録によって消費された分のインクは、インクタンク2からフィルタ110、第1バルブ室121を介して第1圧力制御室122に供給される。消費されたインクが供給される仕組みを、詳細に説明する。記録によって消費されたインクの分だけ循環経路内からインクが減ることで、第1圧力制御室内の圧力が減少し、結果として第1圧力制御室122内のインクも減少する。第1圧力制御室122内のインクの減少に伴い、第1圧力制御室122の内容積が減少する。この第1圧力制御室122の内容積の減少により、連通口191Aが開状態となり、第1バルブ室121から第1圧力制御室122にインクが供給される。この供給されるインクには、第1バルブ室121から連通口191Aを通過する際に圧力損失が発生し、第1圧力制御室122に流入することで、正圧のインクは、負圧の状態に切り替わる。そして、第1圧力制御室122に第1バルブ室121からインクが流入することで、第1圧力制御室122内の圧力が上昇することで第1圧力制御室122の内容積が増加し、連通口191Aが閉状態となる。このように、インクの消費に応じて連通口191Aは、開状態と閉状態とを繰り返すことになる。また、インクが消費されない場合には、連通口191Aは、閉状態に維持される。
【0124】
図21(b)は、記録動作が終了し、循環ポンプ500がOFFの状態(停止状態)となった直後のインクの流れを模式的に示したものである。記録動作が終了し、循環ポンプ500がOFFとなった時点では、第1圧力制御室122の圧力及び第2圧力制御室152の圧力は、いずれも記録動作中の制御圧となっている。このため、第1圧力制御室122の圧力と第2圧力制御室152の圧力との差圧に応じて、図21(b)に示すようなインクの移動が生じる。具体的には第1圧力制御室122から供給流路130を介して吐出モジュール300に供給され、その後、回収流路140を経て第2圧力制御室152に至るインクの流れが引き続き発生する。また、第1圧力制御室122からバイパス流路160及び第2バルブ室151を経て第2圧力制御室152に至るインクの流れも引き続き発生する。
【0125】
これらのインクの流れによって第1圧力制御室122から第2圧力制御室152へ移動したインク量が、インクタンク2からフィルタ110及び第1バルブ室121を経て第1圧力制御室122に供給される。このため第1圧力制御室122内の内容量は一定に保たれる。前述した式2の関係から、第1圧力制御室122の内容量が一定の場合は、バルブばね200のばね力F1、圧力調整ばね220のばね力F2、バルブ190の受圧面積S1、圧力板210の受圧面積S2は一定に保たれる。このため、第1バルブ室121の圧力(ゲージ圧)P1の変化に応じて第1圧力制御室122の圧力が決定される。よって第1バルブ室121の圧力P1の変化がない場合には、第1圧力制御室122の圧力P2は記録動作中の制御圧と同じ圧力に保たれる。
【0126】
一方、第2圧力制御室152の圧力は、第1圧力制御室122からのインクの流入に伴う内容量の変化に応じて経時的に変化する。具体的には、図21(b)の状態から、図21(c)に示すように、連通口191Bが閉状態となって第2バルブ室151と第2圧力制御室152とが非連通状態となるまでの間は、式2に従って第2圧力制御室152の圧力は変化する。その後、圧力板210とバルブシャフト190aとが非当接状態となって連通口191Bが閉状態となる。そして、図21(d)に示すように、回収流路140から第2圧力制御室152へインクが流入する。このインク流入によって圧力板210及び
可撓性部材230が変位し、第2圧力制御室152の内容積が最大に達するまでの間は、式4に従って第2圧力制御室152の圧力は変化する。即ち上昇する。
【0127】
尚、図21(c)の状態になると、第1圧力制御室122からバイパス流路160及び第2バルブ室151を経て第2圧力制御室152に至るインクの流れは発生しない。従って、第1圧力制御室122内のインクが、供給流路130を介して吐出モジュール300に供給された後、回収流路140を経て第2圧力制御室152に至る流れのみが生じる。前述のように、第1圧力制御室122から第2圧力制御室152へのインクの移動は、第1圧力制御室122内の圧力と第2圧力制御室152内の圧力との差圧に応じて生じる。このため、第2圧力制御室152内の圧力が第1圧力制御室122内の圧力と等しくなるとインクの移動は停止する。
【0128】
また、第2圧力制御室152内の圧力が第1圧力制御室122内の圧力と等しくなる状態においては、第2圧力制御室152が、図21(d)に示す状態まで拡張する。図21(d)に示すように第2圧力制御室152が拡張した場合、第2圧力制御室152には、インクを貯留できる貯留部が形成される。尚、循環ポンプ500の停止から図21(d)の状態に移行するまでは、流路の形状及びサイズ並びにインクの性質に応じて変わり得るが、概ね1~2分程度の時間で移行する。貯留部にインクを貯留した図21(d)に示す状態から循環ポンプ500を駆動すると、貯留部のインクは循環ポンプ500によって第1圧力制御室122に供給される。これにより図21(e)に示すように第1圧力制御室122のインク量は増加し、可撓性部材230及び圧力板210は拡張方向へと変位する。そして、循環ポンプ500の駆動が引き続き行われると、図21(a)に示すように、循環経路内の状態が変化することになる。
【0129】
尚、上記説明においては、図21(a)は、記録動作時の例として説明したが、前述したように、記録動作を伴わずにインクの循環が行われてもよい。この場合であっても、循環ポンプ500の駆動及び停止に応じて、図21(a)~図21(e)に示すようなインクの流れが生じることになる。
【0130】
また上述したように、本実施形態では、第2圧力調整手段150における連通口191Bは、循環ポンプ500が駆動されてインクの循環が行われる場合に開状態になり、インクの循環が停止すると、閉状態になる例を用いるが、これに限られない。第2圧力調整手段150における連通口191Bは、循環ポンプ500が駆動されてインクの循環が行われている場合であっても、閉状態であるように制御圧力を設定してもよい。以下、バイパス流路160の役割と併せて具体的に説明する。
【0131】
第1圧力調整手段120と第2圧力調整手段150とを接続するバイパス流路160は、例えば循環経路内に生じた負圧が既定値よりも強まる場合に、その影響を吐出モジュール300に及ぼさないようにするために設けられている。また、バイパス流路160は、供給流路130及び回収流路140の両側から圧力室12にインクを供給するためにも設けられている。
【0132】
まず、負圧が既定値よりも強まる場合に、バイパス流路160を設けていることで、その影響を吐出モジュール300に及ぼさないようにする例を説明する。例えば、環境温度の変化によりインクの特性(例えば粘度)が変化することがある。インクの粘度が変化すると、循環経路内の圧力損失も変化する。例えば、インクの粘性が下がると、循環経路内の圧力損失分が減少する。この結果、一定の駆動量で駆動している循環ポンプ500の流量が増加し、吐出モジュール300を流れる流量が増えることになる。一方で、吐出モジュール300は、不図示の温度調整機構により一定温度に保たれるため、吐出モジュール300内のインクの粘度は、環境温度が変化しても一定に維持される。吐出モジュール3
00内のインクの粘度に変化がない一方で吐出モジュール300内を流れるインクの流量が増加する分、流抵抗により、吐出モジュール300における負圧が強まる。このようにして、吐出モジュール300における負圧が既定値よりも強まると、吐出口13のメニスカスが破壊され、外部の空気が循環経路内に引き込まれて、正常な吐出が行えなくなる虞がある。また、メニスカスが破壊されないとしても、圧力室12の負圧が所定よりも強まり、吐出に影響を及ぼす虞がある。
【0133】
このため、本実施形態では、バイパス流路160を循環経路内に形成している。バイパス流路160を設けることで、負圧が既定値よりも強まる場合には、バイパス流路160にもインクが流れるため、吐出モジュール300の圧力を一定に保つことができる。従って、例えば第2圧力調整手段150における連通口191Bは、循環ポンプ500を駆動中の場合であっても、閉状態を維持するような制御圧力で構成してもよい。そして、既定値よりも負圧が強まる場合に、第2圧力調整手段150における連通口191が開状態となるように、第2圧力調整手段における制御圧力を設定してもよい。つまり、環境変化などの粘度変化によるポンプの流量変化によってもメニスカスが崩壊しないか、または、所定の負圧が維持されるのであれば、循環ポンプ500が駆動している場合に、連通口191Bが閉状態であってもよい。
【0134】
次に、バイパス流路160が、供給流路130及び回収流路140の両側から圧力室12にインクを供給するために設けられている例を説明する。循環経路内の圧力変動は、吐出素子15による吐出動作によっても生じ得る。吐出動作に伴い、圧力室12にインクを引き込む力が生じるからである。
【0135】
以下、高いデューティの記録を続ける場合に、圧力室12に供給されるインクが、供給流路130側と回収流路140側との両側供給となる点を説明する。尚、デューティは、各種条件によって定義が変わり得るが、ここでは、1200dpi格子に4plのインク滴を1発記録した状態を100%として扱うものとする。高いデューティの記録とは、例えば100%のデューティで記録が行われるものとする。
【0136】
高いデューティの記録を続けると、圧力室12から回収流路140を通じて第2圧力制御室152内に流入するインク量が減る。一方で、循環ポンプ500は一定量でインクの流出を行うため、第2圧力制御室152内での流入と流出とのバランスが崩れ、第2圧力制御室152内のインクが減少し、第2圧力制御室152内の負圧が強くなり、第2圧力制御室152が縮小する。そして、第2圧力制御室152内の負圧が強くなることで、バイパス流路160を介して第2圧力制御室152へ流入するインクの流入量が増え、流出と流入とがバランスした状態で第2圧力制御室152が安定する。このように、結果的に、デューティに応じて第2圧力制御室152内の負圧は強くなっていく。また、上述したように、循環ポンプ500が駆動している場合に、連通口191Bが閉状態である構成においては、デューティに応じて連通口191Bが開状態となり、バイパス流路160から第2圧力制御室152にインクが流入することになる。
【0137】
そして、更に高いデューティの記録を続けると、圧力室12から回収流路140を通じて第2圧力制御室152に流入する量が減り、代わりに、バイパス流路160を経由して連通口191Bから第2圧力制御室152内に流入する量が増えていく。この状態が更に進むと、圧力室12から回収流路140を通じて第2圧力制御室152に流入するインク量が、ゼロになり、循環ポンプ500に流出するインクは全て連通口191Bから流入するインクとなる。この状態が更に進むと、今度は第2圧力制御室152から回収流路140を通じて圧力室12にインクが逆流する。この状態では、第2圧力制御室152から循環ポンプ500に流出するインクと圧力室12に流出するインクとが、バイパス流路160を通じて連通口191Bから第2圧力制御室152に流入することになる。この場合、
圧力室12には、供給流路130のインク及び回収流路140のインクが充填されて、吐出されることになる。
【0138】
尚、この記録デューティが高い場合に生じるインクの逆流は、バイパス流路160を設けていることで生じる現象である。また、上記では、インクの逆流に応じて第2圧力調整手段150における連通口191Bが開状態となる例を説明したが、第2圧力調整手段150における連通口191Bが開状態となっている状態においてインクの逆流が生じることもある。また、第2圧力調整手段150を設けない構成においても、バイパス流路160を設けていることで、上記のインクの逆流は発生し得るものである。
【0139】
<吐出ユニットの構成>
図22は、本実施形態の吐出ユニット3におけるインク1色分の循環経路を示した模式図である。図22(a)は、吐出ユニット3を第1支持部材4側から見た分解斜視図であり、図22(b)は、吐出ユニット3を吐出モジュール300側から見た分解斜視図である。尚、図中のIN、OUTで示した矢印はインクの流れを示しており、インクの流れは1色分のみ説明するが、他の色も同様の流れである。また、図22では第2支持部材7と電気配線部材5との記載を省略し、以下の吐出ユニット3の構成の説明においてもその省略している。また、図22(a)における第1支持部材4については、図14(a)のXI-XI線における断面を示している。吐出モジュール300は、記録素子基板340と開口プレート330とを備えている。図23は、開口プレート330を示した図であり、図24は、記録素子基板340を示した図である。
【0140】
吐出ユニット3には、循環ユニット54からジョイント部材8(図14参照)を介してインクが供給される。インクがジョイント部材8を通過した後から、ジョイント部材8に戻るまでのインクの経路について説明する。尚、以下の図面では、ジョイント部材8の記載を省略する。
【0141】
吐出モジュール300は、シリコン基板310である記録素子基板340と開口プレート330とを備えており、更に、ノズルプレート320を備えている。記録素子基板340と開口プレート330とノズルプレート320とは、各インクの流路が連通するように重なり接合されることで吐出モジュール300となり、第1支持部材4に支持される。吐出モジュール300が第1支持部材4に支持されることで、吐出ユニット3が形成される。記録素子基板340は、ノズルプレート320を備えており、ノズルプレート320は、複数の吐出口13が列を成した複数の吐出口列を備えており、吐出モジュール300内のインク流路を介して供給されたインクの一部を吐出口13から吐出する。吐出されなかったインクは、吐出モジュール300内のインク流路を介して回収される。
【0142】
図22及び図23に示すように、開口プレート330は、複数の配列されたプレート供給口311と複数の配列されたプレート回収口312とを備えている。図24及び図25に示すように、記録素子基板340は、複数の配列された供給接続流路323と、複数の配列された回収接続流路324とを備えている。更に記録素子基板340は、複数の供給接続流路323と連通する共通供給流路18と、複数の回収接続流路324と連通する共通回収流路19とを備えている。吐出ユニット3内のインク流路は、第1支持部材4に設けられたインク供給流路48やインク回収流路49(図14参照)と、吐出モジュール300に設けられた流路と、を連通させることで形成されている。支持部材供給口211は、インク供給流路48を形成している断面開口であり、支持部材回収口212は、インク回収流路49を形成している断面開口である。
【0143】
吐出ユニット3に供給されるインクは、循環ユニット54(図14(a)参照)側から第1支持部材4のインク供給流路48(図14(a)参照)に供給される。インク供給流
路48内の支持部材供給口211を経て流れたインクは、インク供給流路48(図14(a)参照)と開口プレート330のプレート供給口311とを介して記録素子基板340の共通供給流路18に供給され、供給接続流路323に入る。ここまでが供給側流路となる。その後、インクは、ノズルプレート320の圧力室12(図14(b)参照)を経て回収側流路の回収接続流路324へと流れる。圧力室12におけるインクの流れの詳細は後述する。
【0144】
回収側流路において、回収接続流路324に入ったインクは、共通回収流路19に流れる。その後、インクは、共通回収流路19から開口プレート330のプレート回収口312を介して第1支持部材4のインク回収流路49に流れ、支持部材回収口212を経て、循環ユニット54に回収される。
【0145】
開口プレート330におけるプレート供給口311やプレート回収口312が無い領域は、第1支持部材4において支持部材供給口211及び支持部材回収口212を仕切るための領域と対応している。また、当該領域は、第1支持部材4も開口を有しない。そのような領域は、吐出モジュール300と第1支持部材4とを接着する場合の接着領域として使用される。
【0146】
図23において開口プレート330は、X方向に配列された複数の開口の列が、Y方向に複数列設けられており、供給用(IN)の開口と回収用(OUT)の開口とが、X方向に半ピッチずれるように、Y方向に交互に配列されている。図24において記録素子基板340は、Y方向に配列された複数の供給接続流路323と連通する共通供給流路18と、Y方向に配列された複数の回収接続流路324と連通する共通回収流路19と、がX方向に交互に配列されている。共通供給流路18、共通回収流路19はインクの種類毎に分かれており、更に、各色の吐出口列の数に応じて共通供給流路18及び共通回収流路19の配置数が決まる。また、供給接続流路323及び回収接続流路324も吐出口13に対応した数だけ配置される。尚、必ずしも1対1対応していなくてもよく、複数の吐出口13に対して1つの供給接続流路323及び回収接続流路324が対応してもよい。
【0147】
このような開口プレート330と、記録素子基板340とが各インクの流路が連通するように重なり接合されることで吐出モジュール300となり、第1支持部材4に支持されることで、上記のような供給流路と回収流路とを備えたインク流路が形成される。
【0148】
図25(a)から図25(c)は、吐出ユニット3の異なる部分におけるインク流れを示した断面図である。図25(a)は、図22(a)のXIVa-XIVa線で示す断面であり、吐出ユニット3におけるインク供給流路48とプレート供給口311とが連通した部分の断面を示している。また、図25(b)は、図22(a)のXIVb-XIVb線で示す断面であり、吐出ユニット3におけるインク回収流路49とプレート回収口312とが連通した部分の断面を示している。また、図25(c)は、図22(a)のXIVc-XIVc線で示す断面であり、プレート供給口311とプレート回収口312とが第1支持部材4の流路と連通していない部分の断面を示している。
【0149】
インクを供給する供給流路では、図25(a)のように、第1支持部材4のインク供給流路48と開口プレート330のプレート供給口311とが重なり連通した部分からインクが供給される。また、インクを回収する回収流路では、図25(b)のように、第1支持部材4のインク回収流路49と開口プレート330のプレート回収口312とが重なり連通した部分からインクが回収される。また、図25(c)のように、吐出ユニット3では、部分的に開口プレート330に開口が設けられていない領域もある。そのような領域では、記録素子基板340と第1支持部材4間でのインクの供給や回収は成されない。図25(a)のようにプレート供給口311が設けられた領域でインクの供給が成され、図
25(b)のようにプレート回収口312が設けられた領域でインクの回収が成される。尚、本実施形態では、開口プレート330を用いた構成を例に説明したが、開口プレート330を用いない形態としてもよい。例えば、インク供給流路48及びインク回収流路49に対応した流路を第1支持部材4に形成し、第1支持部材4に記録素子基板340を接合する構成であってもよい。
【0150】
図26(a)、図26(b)は、吐出モジュール300における吐出口13の近傍を示した断面図であり、図27(a)、図27(b)は、比較例として共通供給流路18及び共通回収流路19をX方向に広げた構成の吐出モジュールを示した断面図である。尚、図26図27における共通供給流路18、共通回収流路19内に示した太矢印は、シリアル型の液体吐出装置50を用いる形態におけるインクの揺動を示すものである。共通供給流路18、供給接続流路323を経て圧力室12に供給されたインクは、吐出素子15が駆動されることで吐出口13から吐出される。吐出素子15が駆動されない場合は、インクは、圧力室12から回収流路である回収接続流路324を経て共通回収流路19へと回収される。
【0151】
シリアル型の液体吐出装置50を用いる形態において、このように循環するインクから吐出を行う場合、インクの吐出は、少なからず液体吐出ヘッド1の主走査によるインク流路内におけるインクの揺動の影響を受ける。具体的には、インク流路内のインクの揺動の影響は、インクの吐出量の違いや吐出方向のずれとなって現れることがある。図27のように、共通供給流路18と共通回収流路19とが、主走査方向であるX方向に幅広の断面形状を備えている場合、共通供給流路18、共通回収流路19内のインクは、主走査方向に慣性力を受け易くなりインクに大きな揺動が生じる。その結果、インクの揺動が吐出口13からのインクの吐出に影響を及ぼす虞がある。また、共通供給流路18及び共通回収流路19をX方向に広げてしまうと、色同士の距離を広げることとなり、印刷効率が落ちる可能性がある。
【0152】
そこで、本実施形態の共通供給流路18及び共通回収流路19は、図26に示す断面において共に、Y方向に延在しているが、主走査方向であるX方向に対して垂直であるZ方向にも延在する構成としている。このような構成とすることで、共通供給流路18及び共通回収流路19の主走査方向における各流路幅を小さくすることができる。共通供給流路18及び共通回収流路19の主走査方向における各流路幅を小さくすることで、主走査中における共通供給流路18及び共通回収流路19内のインクに作用する主走査方向と反対側に働く慣性力(図中黒太矢印)によるインクの揺動を少なくしている。これによって、インクの揺動によるインクの吐出への影響を抑制することができる。また、共通供給流路18及び共通回収流路19をZ方向に延在させることでの断面積を増やし、流路圧損を低減させている。
【0153】
上述の通り、共通供給流路18及び共通回収流路19の主走査方向における各流路幅を小さくすることで、主走査時の共通供給流路18及び共通回収流路19内のインクの揺動が少なくなるように構成されているが、揺動が無くなるわけではない。そこで、少なくなった揺動によってもなお生じ得るインク種類ごとの吐出に差が生じることを抑制すべく、本実施形態では、共通供給流路18と共通回収流路19とは、X方向に対して重なる位置に配置されるよう構成されている。
【0154】
前述した通り本実施形態では、供給接続流路323及び回収接続流路324は吐出口13に対応して設けられ、かつ供給接続流路323と回収接続流路324とは吐出口13を挟んでX方向に並んで配置される対応関係となっている。もし、共通供給流路18と共通回収流路19とがY方向において重ならない部分がある場合、X方向における供給接続流路323と回収接続流路324との対応関係が崩れることになる。その場合、圧力室12
におけるX方向へのインクの流れや吐出に影響を及ぼす可能性がある。そこにインクの揺動の影響が加わることで、更に、吐出口13毎のインクの吐出に影響を及ぼす虞がある。
【0155】
これに対し、実施例では、共通供給流路18と共通回収流路19とをY方向において重なる位置に配置している。そのため、吐出口13が配列されるY方向におけるどの位置においても、共通供給流路18と共通回収流路19とにおける主走査時のインク揺動がほぼ同等となる。その結果、圧力室12内で生じる共通供給流路18側と共通回収流路19側との圧力差が大きくばらつくことは無く、安定した吐出を行うことができる。
【0156】
また、インクを循環させる液体吐出ヘッドでは、液体吐出ヘッドへインクを供給する流路と回収する流路とが同じ流路で構成されているものもあるが、本実施形態においては、共通供給流路18と共通回収流路19とが別流路になっている。そして、供給接続流路323と圧力室12とが連通しており、圧力室12と回収接続流路324とが連通しており、圧力室12の吐出口13からインクが吐出される。つまり供給接続流路323と回収接続流路324とをつなぐ経路である圧力室12が、吐出口13を備えた構成となっている。そのため圧力室12には供給接続流路323側から回収接続流路324側へ流れるインク流れが発生しており、圧力室12内のインクは効率よく循環されている。圧力室12内のインクが効率よく循環されることで、吐出口13からのインクの蒸発による影響を受けやすい圧力室12のインクをフレッシュな状態に保つことができる。
【0157】
また、共通供給流路18及び共通回収流路19の2つ流路が、圧力室12と連通していることで、もし高流量で吐出を行うことが必要になった場合には、両方の流路からインクを供給することも可能となる。つまり、インクの供給と回収とを1流路だけで構成する構成と比べて、本実施形態における構成は、循環を効率的に行えるだけでなく、高流量の吐出にも対応することができるというメリットがある。
【0158】
また、共通供給流路18と共通回収流路19とは、X方向において近い位置に配置された方が、よりインクの揺動による影響が生じにくい。望ましくは、流路間が75μm~100μmで構成されているとよい。
【0159】
図28は、比較例としての記録素子基板340を示した図である。尚、図28では、供給接続流路323と回収接続流路324との記載を省略している。共通回収流路19には、圧力室12で吐出素子15による熱エネルギーを受けたインクが流れ込むため、共通供給流路18内のインクの温度に対して、比較的温度の高いインクが流れる。このとき、比較例では、図28の一点鎖線で囲んだα部のように、記録素子基板340のY方向における一部分において、共通回収流路19だけが存在している部分がある。言い換えると、共通供給流路18と共通回収流路19はY方向の少なくとも一部で重なっていない。この場合、その部分で局所的に温度が高まり、吐出モジュール300内に温度ムラが生じ、吐出に影響を与える可能性がある。
【0160】
共通供給流路18には、共通回収流路19に対して比較的低い温度のインクが流れている。そのため、共通供給流路18と共通回収流路19とが隣接していると、その近傍では、共通供給流路18と共通回収流路19とで一部の温度が相殺されることから、温度上昇が抑えられる。よって、共通供給流路18と共通回収流路19とは、Y方向の長さが略同じで、かつ、Y方向の略全域において互いに重なり合う位置に存在し、隣接していることが好ましい。
【0161】
図29(a)、図29(b)は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の3色のインクに対応した液体吐出ヘッド1の流路構成を示した図である。液体吐出ヘッド1には、図29(a)のようにインクの種類ごとに循環流路が設けられている。圧力室12
は、液体吐出ヘッド1の主走査方向であるX方向に沿って設けられている。また、図29(b)のように、共通供給流路18と共通回収流路19とは、吐出口13が配列された吐出口列に沿って設けられており、共通供給流路18と共通回収流路19とで吐出口列を挟むようにY方向に延在して設けられている。
【0162】
<本体部と液体吐出ヘッドとの接続>
図30は、本実施形態の液体吐出装置50の本体部に設けられたインクタンク2及び外部ポンプ21と液体吐出ヘッド1との接続状態、及び循環ポンプ500等の配置をより詳細に示す概略構成図である。本実施形態における液体吐出装置50は、液体吐出ヘッド1に不具合が発生した際に、液体吐出ヘッド1のみを簡単に交換できるような構成を備える。具体的には、外部ポンプ21に接続されているインク供給チューブ59と液体吐出ヘッド1との接続、離脱を簡単に行い得る液体接続部700を有している。これにより、液体吐出装置50に対し液体吐出ヘッド1のみを簡単に着脱することが可能になっている。
【0163】
液体接続部700は、図30に示すように、液体吐出ヘッド1のヘッド筐体53に突設された液体コネクタ挿入口53aと、この液体コネクタ挿入口53aを差し込むことが可能な円筒状の液体コネクタ59aとを有する。液体コネクタ挿入口53aは液体吐出ヘッド1内に形成されたインク供給流路(流入流路)に流体的に接続されており、前述のフィルタ110を介して第1圧力調整手段120に接続されている。また、液体コネクタ59aは、インクタンク2のインクを液体吐出ヘッド1に加圧供給する外部ポンプ21に接続されたインク供給チューブ59の先端に設けられている。
【0164】
上記のように図30に示す液体吐出ヘッド1は、液体接続部700によって、液体吐出ヘッド1の着脱及び交換作業を容易に行うことが可能となっている。但し、液体コネクタ挿入口53aと液体コネクタ59aとのシール性が低下した場合、外部ポンプ21によって加圧供給されたインクが液体接続部700から漏出する虞がある。液漏出したインクが循環ポンプ500等に付着した場合、電気系統に不具合が発生する可能性がある。そこで、本実施形態では、以下のように循環ポンプ等を配置している。
【0165】
<循環ポンプ等の配置>
図30に示すように、本実施形態では、液体接続部700から漏出したインクが循環ポンプ500に付着するのを避けるため、液体接続部700より重力方向上方に循環ポンプ500を配置している。つまり循環ポンプ500を、液体吐出ヘッド1の液体の導入口である液体コネクタ挿入口53aより重力方向における上方に配置している。さらに、循環ポンプ500が、液体接続部700を構成する部材と非接触となる位置に配置されている。これにより、液体接続部700からインクが漏出したとしても、インクは液体コネクタ59aの開口方向である水平方向または重力方向下方に流れていくため、重力方向上方にある循環ポンプ500にインクが到達するのを抑制することができる。また、循環ポンプ500を、液体接続部700から離れた位置に配置されているため、インクが部材を伝って循環ポンプ500に到達する可能性も低減される。
【0166】
また、循環ポンプ500と電気コンタクト基板6とをフレキシブル配線部材514を介して電気的に接続する電気接続部515を、液体接続部700より重力方向上方に設けている。このため、液体接続部700からインクによる電気的なトラブルを起こす可能性を低減することができる。
【0167】
また、本実施形態では、ヘッド筐体53の壁部53bが設けられているため、液体接続部700の開口59bからインクが噴出したとしても、そのインクを遮断し、循環ポンプ500や電気接続部515に到達する可能性を低減することができる。
【0168】
本実施形態の開示は、以下の構成及び方法を含む。
(構成1)
液体を吐出する複数のノズルからなるノズル列が形成された複数のヘッドを有し、記録媒体に対して主走査方向に往復移動しながら液体を吐出することで記録を行うインクジェット記録装置のヘッドユニットであって、
前記複数のヘッドは、
カラーインク及び白色インクの少なくともいずれかと反応する反応液を吐出するノズル列が形成された第1ヘッドと、
前記カラーインクを吐出するノズル列及び前記白色インクを吐出するノズル列が形成された第2ヘッドと、
を含み、
前記第1ヘッド及び前記第2ヘッドは、
前記ヘッドユニットにおける前記主走査方向の一方の端部である第1端部に最も近い位置に前記反応液のノズル列が位置し、他方の端部である第2端部に最も近い位置に前記白色インクのノズル列が位置するように、
前記主走査方向に沿って並べて配置されていることを特徴とするヘッドユニット。
(構成2)
前記第1ヘッドには、前記白色インク用の反応液のノズル列と、前記カラーインク用の反応液のノズル列と、が形成されている構成1に記載のヘッドユニット。
(構成3)
前記第2ヘッドは、前記第1ヘッドに対し前記第2端部に近い側に配置され、
前記第1ヘッドにおいて、前記第1端部に最も近い位置に前記白色インク用の反応液のノズル列が形成され、
前記第2ヘッドにおいて、前記第2端部に最も近い位置に前記白色インクのノズル列が形成されている構成2に記載のヘッドユニット。
(構成4)
液体を吐出する複数のノズルからなるノズル列が形成された複数のヘッドを有し、記録媒体に対して主走査方向に往復移動しながら液体を吐出することで記録を行うインクジェット記録装置のヘッドユニットであって、
前記複数のヘッドは、
カラーインク及び白色インクの少なくともいずれかと反応する反応液を吐出するノズル列が形成された第1ヘッドと、
前記カラーインクを吐出するノズル列が形成された第2ヘッドと、
前記白色インクを吐出するノズル列が形成された第3ヘッドと、
を含み、
前記第1ヘッド、前記第2ヘッド及び前記第3ヘッドは、
前記ヘッドユニットにおける前記主走査方向の一方の端部である第1端部に最も近い位置に前記反応液のノズル列が位置し、他方の端部である第2端部に最も近い位置に前記白色インクのノズル列が位置するように、
前記主走査方向に沿って並べて配置されていることを特徴とするヘッドユニット。
(構成5)
前記第1ヘッドには、前記白色インク用の反応液のノズル列と、前記カラーインク用の反応液のノズル列と、が形成されている構成4に記載のヘッドユニット。
(構成6)
前記第3ヘッドには、前記白色インクのノズル列と前記カラーインクのノズル列が形成され、
前記第3ヘッドにおいて、前記第2端部に最も近い位置に前記白色インクのノズル列が形成されている構成5に記載のヘッドユニット。
(構成7)
前記第3ヘッドには、さらにグレーのインクのノズル列が形成され、
前記第3ヘッドにおいて、前記グレーのインクのノズル列は、前記白色インクのノズル列に対し前記第1端部に近い側に、前記白色インクのノズル列に隣接して形成されている構成6に記載のヘッドユニット。
(構成8)
前記第2ヘッドは、前記第1ヘッドに対し前記第2端部に近い側に配置され、
前記第3ヘッドは、前記第2ヘッドに対し前記第2端部に近い側に配置され、
前記第1ヘッドにおいて、前記第1端部に最も近い位置に前記白色インク用の反応液のノズル列が形成され、
前記第3ヘッドにおいて、前記第2端部に最も近い位置に前記白色インクのノズル列が形成されている構成6又は7に記載のヘッドユニット。
(構成9)
液体を吐出する複数のノズルからなるノズル列が形成された複数のヘッドを有し、記録媒体に対して主走査方向に往復移動しながら液体を吐出することで記録を行うインクジェット記録装置のヘッドユニットであって、
前記複数のヘッドは、
カラーインク及び白色インクの少なくともいずれかと反応する反応液を吐出するノズル列及び白色インクを吐出するノズル列が形成された第1ヘッドと、
前記カラーインクを吐出するノズル列が形成された第2ヘッドと、
前記反応液を吐出するノズル列及び前記白色インクを吐出するノズル列が形成された第3ヘッドと、
を含み、
前記第1ヘッド、前記第2ヘッド及び前記第3ヘッドは、
前記ヘッドユニットにおける前記主走査方向の一方の端部である第1端部に最も近い位置に前記反応液のノズル列が位置し、他方の端部である第2端部に最も近い位置に前記反応液のノズル列が位置するように、
前記主走査方向に沿って並べて配置されていることを特徴とするヘッドユニット。
(構成10)
前記第1ヘッドには、前記白色インク用の反応液のノズル列、前記カラーインク用の反応液のノズル列及び前記白色インクのノズル列が形成され、
前記第3ヘッドには、前記白色インク用の反応液のノズル列、前記カラーインク用の反応液のノズル列及び前記白色インクのノズル列が形成されている構成9に記載のヘッドユニット。
(構成11)
前記第1ヘッドには、前記白色インク用の反応液のノズル列、前記白色インクのノズル列及び前記カラーインク用の反応液のノズル列が、前記第1端部に最も近い側からこの順に形成されて、
前記第3ヘッドには、前記白色インク用の反応液のノズル列、前記白色インクのノズル列及び前記カラーインク用の反応液のノズル列が、前記第2端部に最も近い側からこの順に形成されている構成10に記載のヘッドユニット。
(構成12)
前記カラーインク、前記白色インク及び前記反応液の各々の液体について、
前記ノズルに液体を供給するとともに、前記ノズルから吐出されなかった液体を回収し、前記ノズルに再度、供給する循環装置を有する構成1~11のいずれか1項に記載のヘッドユニット。
(構成13)
前記循環装置には、前記インクジェット記録装置の装置本体に備わるタンクから前記液体が供給される構成12に記載のヘッドユニット。
(構成14)
構成1~3のいずれか1項に記載のヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットを搭載するキャリッジと、
前記キャリッジを前記主走査方向に往復移動させる駆動手段と、
を有するインクジェット記録装置であって、
前記記録媒体における記録が行われる範囲のうち、前記主走査方向で前記第1端部に近い側の端部を第3端部、前記第2端部に近い側の端部を第4端部とし、
前記カラーインクのみを用いて記録を行う印刷モードにおいて、
前記駆動手段は、
前記第1端部に向かう方向へ前記キャリッジを移動させる場合、前記第2ヘッドの前記白色インクのノズル列に隣接するカラーインクのノズル列が前記第3端部を通過する位置まで移動させ、
前記第2端部に向かう方向へ前記キャリッジを移動させる場合、前記第2ヘッドの前記第1端部に最も近い位置にあるカラーインクのノズル列が前記第4端部を通過する位置まで移動させることを特徴とするインクジェット記録装置。
(構成15)
構成1~3のいずれか1項に記載のヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットを搭載するキャリッジと、
前記キャリッジを前記主走査方向に往復移動させる駆動手段と、
を有するインクジェット記録装置であって、
前記記録媒体における記録が行われる範囲のうち、前記主走査方向で前記第1端部に近い側の端部を第3端部、前記第2端部に近い側の端部を第4端部とし、
前記カラーインク及び前記白色インクのみを用いて記録を行う印刷モードにおいて、
前記駆動手段は、
前記第1端部に向かう方向へ前記キャリッジを移動させる場合、前記第2ヘッドの前記白色インクのノズル列が前記第3端部を通過する位置まで移動させ、
前記第2端部に向かう方向へ前記キャリッジを移動させる場合、前記第2ヘッドの前記第1端部に最も近い位置にあるカラーインクのノズル列が前記第4端部を通過する位置まで移動させることを特徴とするインクジェット記録装置。
(構成16)
構成3に記載のヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットを搭載するキャリッジと、
前記キャリッジを前記主走査方向に往復移動させる駆動手段と、
を有するインクジェット記録装置であって、
前記記録媒体における記録が行われる範囲のうち、前記主走査方向で前記第1端部に近い側の端部を第3端部、前記第2端部に近い側の端部を第4端部とし、
前記カラーインク及び前記カラーインク用の反応液のみを用いて記録を行う印刷モードにおいて、
前記駆動手段は、
前記第1端部に向かう方向へ前記キャリッジを移動させる場合、前記第2ヘッドの前記白色インクのノズル列に隣接するカラーインクのノズル列が前記第3端部を通過する位置まで移動させ、
前記第2端部に向かう方向へ前記キャリッジを移動させる場合、前記第1ヘッドの前記カラーインク用の反応液のノズル列が前記第4端部を通過する位置まで移動させることを特徴とするインクジェット記録装置。
(構成17)
構成6~8のいずれか1項に記載のヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットを搭載するキャリッジと、
前記キャリッジを前記主走査方向に往復移動させる駆動手段と、
を有するインクジェット記録装置であって、
前記記録媒体における記録が行われる範囲のうち、前記主走査方向で前記第1端部に近い側の端部を第3端部、前記第2端部に近い側の端部を第4端部とし、
前記カラーインクのみを用いて記録を行う印刷モードにおいて、
前記駆動手段は、
前記第1端部に向かう方向へ前記キャリッジを移動させる場合、前記第3ヘッドの前記白色インクのノズル列に隣接するカラーインクのノズル列が前記第3端部を通過する位置まで移動させ、
前記第2端部に向かう方向へ前記キャリッジを移動させる場合、前記第2ヘッドの前記第1端部に最も近い位置にあるカラーインクのノズル列が前記第4端部を通過する位置まで移動させることを特徴とするインクジェット記録装置。
(構成18)
構成4~8のいずれか1項に記載のヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットを搭載するキャリッジと、
前記キャリッジを前記主走査方向に往復移動させる駆動手段と、
を有するインクジェット記録装置であって、
前記記録媒体における記録が行われる範囲のうち、前記主走査方向で前記第1端部に近い側の端部を第3端部、前記第2端部に近い側の端部を第4端部とし、
前記カラーインク及び前記白色インクのみを用いて記録を行う印刷モードにおいて、
前記駆動手段は、
前記第1端部に向かう方向へ前記キャリッジを移動させる場合、前記第3ヘッドの前記白色インクのノズル列が前記第3端部を通過する位置まで移動させ、
前記第2端部に向かう方向へ前記キャリッジを移動させる場合、前記第2ヘッドの前記第1端部に最も近い位置にあるカラーインクのノズル列が前記第4端部を通過する位置まで移動させることを特徴とするインクジェット記録装置。
(構成19)
構成8に記載のヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットを搭載するキャリッジと、
前記キャリッジを前記主走査方向に往復移動させる駆動手段と、
を有するインクジェット記録装置であって、
前記記録媒体における記録が行われる範囲のうち、前記主走査方向で前記第1端部に近い側の端部を第3端部、前記第2端部に近い側の端部を第4端部とし、
前記カラーインク及び前記カラーインク用の反応液のみを用いて記録を行う印刷モードにおいて、
前記駆動手段は、
前記第1端部に向かう方向へ前記キャリッジを移動させる場合、前記第3ヘッドの前記白色インクのノズル列に隣接するカラーインクのノズル列が前記第3端部を通過する位置まで移動させ、
前記第2端部に向かう方向へ前記キャリッジを移動させる場合、前記第1ヘッドの前記カラーインク用の反応液のノズル列が前記第4端部を通過する位置まで移動させることを特徴とするインクジェット記録装置。
(構成20)
構成9~11のいずれか1項に記載のヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットを搭載するキャリッジと、
前記キャリッジを前記主走査方向に往復移動させる駆動手段と、
を有するインクジェット記録装置であって、
前記記録媒体における記録が行われる範囲のうち、前記主走査方向で前記第1端部に近い側の端部を第3端部、前記第2端部に近い側の端部を第4端部とし、
前記カラーインクのみを用いて記録を行う印刷モードにおいて、
前記駆動手段は、
前記第1端部に向かう方向へ前記キャリッジを移動させる場合、前記第2ヘッドの前記第2端部に最も近い位置にあるカラーインクのノズル列が前記第3端部を通過する位置まで移動させ、
前記第2端部に向かう方向へ前記キャリッジを移動させる場合、前記第2ヘッドの前
記第1端部に最も近い位置にあるカラーインクのノズル列が前記第4端部を通過する位置まで移動させることを特徴とするインクジェット記録装置。
(構成21)
構成9~11のいずれか1項に記載のヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットを搭載するキャリッジと、
前記キャリッジを前記主走査方向に往復移動させる駆動手段と、
を有するインクジェット記録装置であって、
前記記録媒体における記録が行われる範囲のうち、前記主走査方向で前記第1端部に近い側の端部を第3端部、前記第2端部に近い側の端部を第4端部とし、
前記カラーインク及び前記白色インクのみを用いて記録を行う印刷モードにおいて、
前記駆動手段は、
前記第1端部に向かう方向へ前記キャリッジを移動させる場合、前記第3ヘッドの前記白色インクのノズル列が前記第3端部を通過する位置まで移動させ、
前記第2端部に向かう方向へ前記キャリッジを移動させる場合、前記第1ヘッドの前記白色インクのノズル列が前記第4端部を通過する位置まで移動させることを特徴とするインクジェット記録装置。
(構成22)
構成11に記載のヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットを搭載するキャリッジと、
前記キャリッジを前記主走査方向に往復移動させる駆動手段と、
を有するインクジェット記録装置であって、
前記記録媒体における記録が行われる範囲のうち、前記主走査方向で前記第1端部に近い側の端部を第3端部、前記第2端部に近い側の端部を第4端部とし、
前記カラーインク及び前記カラーインク用の反応液のみを用いて記録を行う印刷モードにおいて、
前記駆動手段は、
前記第1端部に向かう方向へ前記キャリッジを移動させる場合、前記第3ヘッドの前記カラーインク用の反応液のノズル列が前記第3端部を通過する位置まで移動させ、
前記第2端部に向かう方向へ前記キャリッジを移動させる場合、前記第1ヘッドの前記カラーインク用の反応液のノズル列が前記第4端部を通過する位置まで移動させることを特徴とするインクジェット記録装置。
【符号の説明】
【0169】
10:ヘッドユニット、1:液体吐出ヘッド、1a:第1ヘッド、1b:第2ヘッド、1c:第3ヘッド、10a:第1端部、10b:第2端部、50:液体吐出装置、331:吐出口、332:ノズル列、S:記録シート
図1
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