(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162719
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】円偏光板の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20241114BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20241114BHJP
B32B 37/14 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G02B5/30
B32B7/023
B32B37/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078549
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 悠太
(72)【発明者】
【氏名】有賀 草平
【テーマコード(参考)】
2H149
4F100
【Fターム(参考)】
2H149AA13
2H149AA18
2H149AB11
2H149BA02
2H149BA12
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2H149FA04X
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2H149FA15X
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2H149FA66
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2H149FD46
2H149FD47
2H149FD48
4F100AK02
4F100AK03
4F100AK41
4F100AK51
4F100AK52
4F100AR00A
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4F100YY00A
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4F100YY00C
4F100YY00D
(57)【要約】
【課題】ホール跡に起因する外観不良の発生を抑制できる円偏光板の製造方法を提供する。
【解決手段】円偏光板の製造方法は、工程Saと工程Sbと工程Scと工程Sdとを備える。工程Saでは、第1保護フィルム(11)、第1偏光子保護層(12)、偏光子(13)、及び貫通孔(14a)を有する第2保護フィルム(14)をこの順に備える偏光フィルム積層体(10)の巻回物を準備する。工程Sbでは、巻回物から偏光フィルム積層体(10)を繰り出しながら、偏光子(13)における貫通孔(14a)から露出した箇所を処理液に接触させることにより脱色して非偏光部を形成する。工程Scでは、偏光フィルム積層体(10)から第1保護フィルム(11)及び第2保護フィルム(14)をはく離する。工程Sdでは、第1偏光子保護層(12)の偏光子(13)側とは反対側に位相差層を積層する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1保護フィルム、第1偏光子保護層、偏光子、及び貫通孔を有する第2保護フィルムをこの順に備える偏光フィルム積層体の巻回物を準備する工程Saと、
前記巻回物から前記偏光フィルム積層体を繰り出しながら、前記偏光子における前記貫通孔から露出した箇所を処理液に接触させることにより脱色して非偏光部を形成する工程Sbと、
前記偏光フィルム積層体から前記第1保護フィルム及び前記第2保護フィルムをはく離する工程Scと、
前記第1偏光子保護層の前記偏光子側とは反対側に位相差層を積層する工程Sdと
を備える、円偏光板の製造方法。
【請求項2】
前記工程Scの後、前記偏光子の前記第2保護フィルムがはく離された面に第2偏光子保護層を積層する工程Seを更に備える、請求項1に記載の円偏光板の製造方法。
【請求項3】
前記第1保護フィルムの厚みが、50μm以下である、請求項1に記載の円偏光板の製造方法。
【請求項4】
前記工程Scにおいて前記第1保護フィルム及び前記第2保護フィルムがはく離された後の前記偏光フィルム積層体の厚みが、50μm以下である、請求項1に記載の円偏光板の製造方法。
【請求項5】
前記第1偏光子保護層と前記偏光子とが、接着剤により接着されている、請求項1に記載の円偏光板の製造方法。
【請求項6】
前記第1偏光子保護層の前記第1保護フィルム側の面の鉛筆硬度が、4B以上である、請求項1に記載の円偏光板の製造方法。
【請求項7】
前記第2保護フィルムの厚みが、20μm以上150μm以下である、請求項1に記載の円偏光板の製造方法。
【請求項8】
前記貫通孔の開口部の直径が、1mm以上10mm以下である、請求項1に記載の円偏光板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円偏光板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置や液晶表示装置等の画像表示装置では、偏光フィルムや位相差フィルム等の光学異方性フィルムを含む部材が用いられている。特に有機EL表示装置では、金属電極による外光反射によって視認性が低下しやすいため、この外光反射の防止を目的として偏光フィルムと位相差フィルムとを組み合わせた円偏光板が用いられている。
【0003】
また、画像表示装置の形状の多様化及び高機能化に対応するために、部分的に偏光性能を有する偏光板が求められている。そのような偏光板として、化学処理により非偏光部が形成された偏光子を有する偏光板が知られている。
【0004】
特許文献1には、非偏光部を有する偏光子の製造方法として、複数の貫通孔を有する表面保護層と偏光子とを積層した後、偏光子及び表面保護層を含む偏光フィルム積層体をロール状に巻き取り、その後、偏光子の露出箇所(表面保護層の貫通孔から露出した箇所)を脱色して非偏光部を形成する方法が提案されている。以下、偏光フィルム積層体の巻回物を、「偏光フィルム積層体ロール」と記載することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複数の貫通孔を有する表面保護層を含む積層体をロール状に巻き取ると、巻き締まりによって、積層体に打痕(表面保護層の貫通孔に起因するホール跡)が発生する場合がある。特許文献1に記載の技術には、偏光フィルム積層体ロールのホール跡に起因する外観不良の発生を抑制することについて、改善の余地が残されている。
【0007】
上記課題に鑑み、本発明は、ホール跡に起因する外観不良の発生を抑制できる円偏光板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
<本発明の態様>
本発明には、以下の態様が含まれる。
【0009】
[1]第1保護フィルム、第1偏光子保護層、偏光子、及び貫通孔を有する第2保護フィルムをこの順に備える偏光フィルム積層体の巻回物を準備する工程Saと、
前記巻回物から前記偏光フィルム積層体を繰り出しながら、前記偏光子における前記貫通孔から露出した箇所を処理液に接触させることにより脱色して非偏光部を形成する工程Sbと、
前記偏光フィルム積層体から前記第1保護フィルム及び前記第2保護フィルムをはく離する工程Scと、
前記第1偏光子保護層の前記偏光子側とは反対側に位相差層を積層する工程Sdと
を備える、円偏光板の製造方法。
【0010】
[2]前記工程Scの後、前記偏光子の前記第2保護フィルムがはく離された面に第2偏光子保護層を積層する工程Seを更に備える、前記[1]に記載の円偏光板の製造方法。
【0011】
[3]前記第1保護フィルムの厚みが、50μm以下である、前記[1]又は[2]に記載の円偏光板の製造方法。
【0012】
[4]前記工程Scにおいて前記第1保護フィルム及び前記第2保護フィルムがはく離された後の前記偏光フィルム積層体の厚みが、50μm以下である、前記[1]~[3]のいずれか一つに記載の円偏光板の製造方法。
【0013】
[5]前記第1偏光子保護層と前記偏光子とが、接着剤により接着されている、前記[1]~[4]のいずれか一つに記載の円偏光板の製造方法。
【0014】
[6]前記第1偏光子保護層の前記第1保護フィルム側の面の鉛筆硬度が、4B以上である、前記[1]~[5]のいずれか一つに記載の円偏光板の製造方法。
【0015】
[7]前記第2保護フィルムの厚みが、20μm以上150μm以下である、前記[1]~[6]のいずれか一つに記載の円偏光板の製造方法。
【0016】
[8]前記貫通孔の開口部の直径が、1mm以上10mm以下である、前記[1]~[7]のいずれか一つに記載の円偏光板の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ホール跡に起因する外観不良の発生を抑制できる円偏光板の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】偏光フィルム積層体ロールの一例を示す斜視図である。
【
図2】偏光フィルム積層体ロールの表層箇所の積層状態の一例を示す部分断面図である。
【
図3】非偏光部を形成する工程の一例を示す工程図である。
【
図4】非偏光部が形成された後の偏光フィルム積層体の一例を示す部分断面図である。
【
図5】第1保護フィルム及び第2保護フィルムがはく離された後の偏光フィルム積層体の一例を示す部分断面図である。
【
図6】第2偏光子保護層が積層された後の偏光フィルム積層体の一例を示す部分断面図である。
【
図7】本発明の製造方法により得られた円偏光板の一例を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本明細書中に記載された学術文献及び特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
【0020】
まず、本明細書中で使用される用語について説明する。「Cプレート」とは、厚み方向に屈折率異方性を有する位相差フィルム(位相差層)をいう。また、Cプレートのうち、厚み方向レターデーションが負の値を示す位相差フィルム(位相差層)を「ポジティブCプレート」といい、厚み方向レターデーションが正の値を示す位相差フィルム(位相差層)を「ネガティブCプレート」という。
【0021】
鉛筆硬度の値は、JIS K 5600-5-4の規定に準じ、荷重500gの条件で測定された値である。層状物(より具体的には、第1保護フィルム、第1偏光子保護層、偏光子、第2保護フィルム、位相差層、第2偏光子保護層等)の「厚み」の数値は、何ら規定していなければ、層状物を厚み方向に切断した断面を電子顕微鏡で観察し、断面画像から無作為に測定箇所を10箇所選択し、選択した10箇所の測定箇所の厚みを測定して得られた10個の測定値の算術平均値である。
【0022】
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。また、化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、何ら規定していなければ、重合体の繰り返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。また、アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。本明細書に例示の成分や官能基等は、特記しない限り、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
以下の説明において参照する図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の大きさ、個数、形状等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合がある。また、説明の都合上、後に説明する図面において、先に説明した図面と同一構成部分については、同一符号を付して、その説明を省略する場合がある。
【0024】
<円偏光板の製造方法>
本実施形態に係る円偏光板の製造方法は、工程Saと工程Sbと工程Scと工程Sdとを備える。工程Saでは、第1保護フィルム、第1偏光子保護層、偏光子、及び貫通孔を有する第2保護フィルムをこの順に備える偏光フィルム積層体の巻回物(偏光フィルム積層体ロール)を準備する。工程Sbでは、偏光フィルム積層体ロールから偏光フィルム積層体を繰り出しながら、偏光子における貫通孔から露出した箇所を処理液に接触させることにより脱色して非偏光部を形成する。工程Scでは、偏光フィルム積層体から第1保護フィルム及び第2保護フィルムをはく離する。工程Sdでは、第1偏光子保護層の偏光子側とは反対側に位相差層を積層する。
【0025】
また、本実施形態に係る円偏光板の製造方法は、工程Sa、工程Sb、工程Sc及び工程Sd以外の工程(他の工程)を更に備えていてもよい。他の工程としては、例えば、工程Scの後、偏光子の第2保護フィルムがはく離された面に第2偏光子保護層を積層する工程Seが挙げられる。
【0026】
以下、工程Saを「巻回物準備工程」と記載することがある。また、工程Sbを「非偏光部形成工程」と記載することがある。また、工程Scを「保護フィルムはく離工程」と記載することがある。また、工程Sdを「位相差層積層工程」と記載することがある。また、工程Seを「第2偏光子保護層積層工程」と記載することがある。
【0027】
以下、本実施形態に係る円偏光板の製造方法の一例が備える各工程について、適宜図面を参照しながら説明する。
【0028】
[巻回物準備工程]
巻回物準備工程について、
図1及び
図2を参照しながら説明する。
図1は、偏光フィルム積層体ロールの一例を示す斜視図である。
図2は、偏光フィルム積層体ロールの表層箇所の積層状態の一例を示す部分断面図である。
【0029】
巻回物準備工程は、偏光フィルム積層体ロールを準備する工程である。まず、偏光フィルム積層体ロールについて説明する。
図1に示す偏光フィルム積層体ロール100は、偏光フィルム積層体10の巻回物である。
図2に示すように、偏光フィルム積層体10は、第1保護フィルム11、第1偏光子保護層12、偏光子13、及び貫通孔14aを有する第2保護フィルム14をこの順に備える。第1偏光子保護層12と偏光子13との間には、接着剤層15が介在している。つまり、第1偏光子保護層12と偏光子13とは、接着剤により接着されている。第1偏光子保護層12と偏光子13とが接着剤により接着されると、第1偏光子保護層12と偏光子13との密着性が高まるため、偏光子13がより確実に保護される。なお、本実施形態では、第1偏光子保護層12と偏光子13とを接着剤により接着しているが、本発明は、これに限定されず、第1偏光子保護層12と偏光子13とが粘着剤により貼り合わせられていてもよい。
【0030】
図2に示すように、第2保護フィルム14は偏光子13に接しており、偏光子13の一部は、第2保護フィルム14の貫通孔14aから露出している。また、第1保護フィルム11は、第1偏光子保護層12にはく離可能に貼り合わせられている。同様に、第2保護フィルム14も、偏光子13にはく離可能に貼り合わせられている。
【0031】
偏光フィルム積層体10の幅方向の寸法は、例えば500mm以上2000mm以下であり、好ましくは1000mm以上1500mm以下である。偏光フィルム積層体10の長さは、例えば50m以上6000m以下であり、好ましくは150m以上4000m以下である。
【0032】
図1に示す例では、貫通孔14aが所定のパターンで複数設けられている。貫通孔14aの配置パターンは、目的に応じて適切に設定され得る。貫通孔14aの平面視形状は、非偏光部13a(
図4参照)に求められる形状に応じて適宜変更され得る。貫通孔14aの平面視形状としては、例えば、円形、楕円形、矩形等が挙げられ、円形が好ましい。なお、
図1に示す例では貫通孔14aが内側に配置されるように偏光フィルム積層体10が巻回されているが、本発明は、これに限定されず、貫通孔14aが外側に配置されるように偏光フィルム積層体10が巻回されてもよい。
【0033】
貫通孔14aの開口部の直径は、非偏光部13a(
図4参照)の大きさに応じて適宜変更され得る。貫通孔14aの開口部の直径は、例えば、0.5mm以上20mm以下であり、好ましくは1mm以上10mm以下である。
【0034】
図2に示す例では、最外周(1周目)の偏光フィルム積層体10の第2保護フィルム14に設けられた貫通孔14aの開口縁が、最外周の直下(2周目)に位置する偏光フィルム積層体10の第1保護フィルム11に接している。以下、1周目の偏光フィルム積層体の第2保護フィルムに設けられた貫通孔を、「1周目の貫通孔」と記載することがある。また、n周目(nは2以上の整数)の偏光フィルム積層体の第2保護フィルムに設けられた貫通孔を、「n周目の貫通孔」と記載することがある。
【0035】
偏光フィルム積層体10が巻回された状態では、貫通孔14aの開口縁の下方(内側方向)に過大な圧力が加えられる傾向がある。
図2に示す例では、1周目の貫通孔14aの開口縁の下方において、第1保護フィルム11を介して2周目の偏光フィルム積層体10が備える第1偏光子保護層12のX部に過大な圧力が加えられる傾向がある。その結果、2周目の偏光フィルム積層体10が備える第1偏光子保護層12に、後述するホール跡12b(
図5参照)が発生しやすくなる。同様に、n周目の貫通孔14aの開口縁の下方において、第1保護フィルム11を介してn+1周目の偏光フィルム積層体10が備える第1偏光子保護層12のX部に過大な圧力が加えられる傾向がある。その結果、n+1周目の偏光フィルム積層体10が備える第1偏光子保護層12に、ホール跡12bが発生しやすくなる。特に、貫通孔14aの開口部の直径が1mm以上10mm以下である場合、2周目以降の偏光フィルム積層体10が備える第1偏光子保護層12に、ホール跡12bが発生しやすくなる傾向がある。
【0036】
巻回物準備工程は、市販品の偏光フィルム積層体ロール100を準備する工程であってもよく、偏光フィルム積層体10を形成した後、得られた偏光フィルム積層体10を巻き取る工程を備えてもよい。偏光フィルム積層体10の形成方法は、特に限定されず、例えば特開2016-53645号公報や特開2022-182000号公報等に記載の公知の方法を採用できる。偏光フィルム積層体10を巻き取る工程では、巻取装置(不図示)を用いて、偏光フィルム積層体10を、例えば130N/1000mm幅以上の巻き取り張力で巻き取って、偏光フィルム積層体ロール100を得る。130N/1000mm幅以上の巻き取り張力で巻き取ることにより、偏光フィルム積層体10の巻きずれの発生を抑制できる。なお、130N/1000mm幅以上の巻き取り張力で偏光フィルム積層体10を巻き取ると、2周目以降の偏光フィルム積層体10が備える第1偏光子保護層12に、ホール跡12b(
図5参照)が発生しやすくなる。巻き締まりによる偏光フィルム積層体10の損傷を抑制するためには、250N/1000mm幅以下の巻き取り張力で偏光フィルム積層体10を巻き取ることが好ましい。
【0037】
次に、偏光フィルム積層体10が備える各層について詳述する。
【0038】
(第1保護フィルム11)
第1保護フィルム11は、例えば、基材(不図示)と粘着剤層(不図示)との積層体である。第1保護フィルム11が基材と粘着剤層とを有する場合、
図2に示す例では、第1保護フィルム11と第1偏光子保護層12とが、第1保護フィルム11の粘着剤層を介して貼り合わせられている。
【0039】
第1保護フィルム11の基材は、任意の適切なフィルムで形成される。当該フィルムの構成材料としては、非透過性の材料が挙げられ、具体的には、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリノルボルネン系樹脂等のポリシクロオレフィン系樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、これらの共重体樹脂等が挙げられる。なお、本明細書において、「非透過性の材料」とは、後述する非偏光部形成工程で使用される処理液が浸透しにくい材料であることを意味する。第1保護フィルム11の基材の硬度を高めるためには、当該基材の構成材料としては、ポリエステル系樹脂が好ましい。第1保護フィルム11の基材の厚みは、例えば10μm以上200μm以下であり、好ましくは20μm以上150μm以下である。
【0040】
第1保護フィルム11の粘着剤層は、任意の適切な粘着剤(感圧接着剤)から形成される。粘着剤としては、例えば、(メタ)アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤等が挙げられる。第1保護フィルム11の粘着剤層の厚みは、例えば1μm以上20μm以下であり、好ましくは2μm以上10μm以下である。
【0041】
偏光フィルム積層体10の巻回数を増やすことにより円偏光板の生産性を高めるためには、第1保護フィルム11の厚み(例えば、基材と粘着剤層との合計厚み)が、50μm以下であることが好ましく、40μm以下であることがより好ましい。また、第1偏光子保護層12の損傷を抑制するためには、第1保護フィルム11の厚み(例えば、基材と粘着剤層との合計厚み)が、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましい。なお、第1保護フィルム11の厚みが50μm以下である場合、後述するホール跡12b(
図5参照)が発生しやすくなる。
【0042】
(第2保護フィルム14)
第2保護フィルム14は、例えば、基材(不図示)と粘着剤層(不図示)との積層体である。第2保護フィルム14が基材と粘着剤層とを有する場合、
図2に示す例では、第2保護フィルム14と偏光子13とが、第2保護フィルム14の粘着剤層を介して貼り合わせられている。
【0043】
第2保護フィルム14の基材の構成材料としては、例えば、上述の第1保護フィルム11の基材の構成材料として列挙した材料が挙げられる。第2保護フィルム14の基材の厚みの好ましい範囲についても、上述した第1保護フィルム11の基材の厚みの好ましい範囲と同じである。第1保護フィルム11の基材の構成材料と、第2保護フィルム14の基材の構成材料とは、同一であっても互いに異なっていてもよい。また、第1保護フィルム11の基材の厚みと、第2保護フィルム14の基材の厚みとは、同一であっても互いに異なっていてもよい。
【0044】
第2保護フィルム14の粘着剤層を構成する粘着剤としては、例えば、上述の第1保護フィルム11の粘着剤層を構成する粘着剤として列挙したものが挙げられる。第2保護フィルム14の粘着剤層の厚みの好ましい範囲についても、上述した第1保護フィルム11の粘着剤層の厚みの好ましい範囲と同じである。第1保護フィルム11の粘着剤層を構成する粘着剤と、第2保護フィルム14の粘着剤層を構成する粘着剤とは、同一であっても互いに異なっていてもよい。また、第1保護フィルム11の粘着剤層の厚みと、第2保護フィルム14の粘着剤層の厚みとは、同一であっても互いに異なっていてもよい。
【0045】
また、第2保護フィルム14には、貫通孔14aが形成されている。貫通孔14aの形成方法としては、特に制限されず、例えば、機械加工、レーザー加工、化学反応によるエッチング加工等が挙げられる。
【0046】
偏光フィルム積層体10の巻回数を増やすことにより円偏光板の生産性を高めつつ、後述する非偏光部形成工程において非偏光部13a(
図4参照)を適切な大きさに形成するためには、第2保護フィルム14の厚み(例えば、基材と粘着剤層との合計厚み)が、20μm以上150μm以下であることが好ましく、25μm以上150μm以下であることがより好ましく、30μm以上150μm以下であることが更に好ましい。
【0047】
(偏光子13)
偏光子13は、例えば樹脂フィルムを備え、好ましくは、二色性物質を含むポリビニルアルコール系樹脂フィルムを備える。以下、ポリビニルアルコール系樹脂を、「PVA系樹脂」と記載することがある。また、偏光子13は、単層の樹脂フィルムであってもよく、二層以上の積層体であってもよい。
【0048】
二色性物質としては、例えば、ヨウ素、有機染料等が挙げられる。二色性物質は、単独で又は組み合わせて使用できる。好ましい二色性物質としては、ヨウ素が挙げられる。二色性物質としてヨウ素を用いると、後述する非偏光部形成工程において、偏光子13における貫通孔14aから露出した箇所を処理液に接触させることにより、偏光子13に含まれるヨウ素錯体を適切に還元できる。これにより、形成された非偏光部13a(
図4参照)に適切な特性(光透過率等)を付与できる。
【0049】
偏光子13が単層の樹脂フィルムから構成される場合、偏光子13の具体例としては、PVA系樹脂フィルムにヨウ素による染色処理及び延伸処理(代表的には、一軸延伸)が施されたものが挙げられる。上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系樹脂フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3倍以上7倍以下である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系樹脂フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。例えば、染色前にPVA系樹脂フィルムを水に浸漬して水洗することで、PVA系樹脂フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を除去しつつ、PVA系樹脂フィルムを膨潤させて染色ムラなどを防止することができる。
【0050】
偏光子13が二層以上の積層体である場合、偏光子13の具体例としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体が挙げられる。偏光子13が樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層との積層体である場合、PVA系樹脂層は、第2保護フィルム14側に配置される。
【0051】
二層以上の積層体からなる偏光子13は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得る工程と、当該積層体を延伸及び染色する工程とを経て作製され得る。延伸する際は、例えば、積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸する。得られた樹脂基材/PVA系樹脂層の積層体はそのまま用いてもよく、樹脂基材/PVA系樹脂層の積層体から樹脂基材をはく離し、当該はく離面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような偏光子の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報や特許第6470455号に記載されている。
【0052】
偏光子13の厚みは、好ましくは15μm以下、より好ましくは12μm以下、更に好ましくは10μm以下、特に好ましくは8μm以下である。また、偏光子13の厚みは、例えば1μm以上、好ましくは3μm以上である。
【0053】
偏光子13は、好ましくは、波長380nm以上780nm以下のいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光子13の単体透過率は、例えば41.5%以上46.0%以下であり、好ましくは43.0%以上46.0%以下であり、より好ましくは44.5%以上46.0%以下である。偏光子13の偏光度は、好ましくは97.0%以上であり、より好ましくは99.0%以上であり、更に好ましくは99.9%以上である。
【0054】
(第1偏光子保護層12)
第1偏光子保護層12は、偏光子13の保護層として使用できる任意の適切なフィルムから構成される。当該フィルムは、二層以上の積層体であってもよい。当該フィルムの構成材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリシクロオレフィン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、アセテート系樹脂、ウレタン系樹脂、(メタ)アクリルウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。
【0055】
偏光子13を確実に保護するためには、第1偏光子保護層12の第1保護フィルム11側の面12a(
図2参照)の鉛筆硬度が、4B以上であることが好ましく、3B以上であることがより好ましく、2B以上であることが更に好ましい。偏光フィルム積層体10の取り扱い性を高めるためには、第1偏光子保護層12の第1保護フィルム11側の面12aの鉛筆硬度が、H以下であることが好ましい。面12aの鉛筆硬度は、例えば、第1偏光子保護層12の構成材料の種類を変更することにより調整できる。面12aの鉛筆硬度を4B以上に調整するためには、第1偏光子保護層12の構成材料としては、ポリエチレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリノルボルネン系樹脂等のポリシクロオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、又はポリカーボネート系樹脂が好ましく、ポリノルボルネン系樹脂等のポリシクロオレフィン系樹脂がより好ましい。なお、面12aの鉛筆硬度が4B以上である場合、後述するホール跡12b(
図5参照)が発生しやすくなる。
【0056】
第1偏光子保護層12の厚みは、例えば300μm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは5μm以上80μm以下、更に好ましくは10μm以上60μm以下である。
【0057】
(接着剤層15)
接着剤層15を構成する接着剤としては、特に限定されず、熱硬化型接着剤や活性エネルギー線硬化型接着剤が挙げられ、生産性向上の観点から活性エネルギー線硬化型接着剤が好ましい。接着剤層15を構成する接着剤の具体例としては、エポキシ樹脂系接着剤、シリコーン樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリエーテル系接着剤等が挙げられる。
【0058】
接着剤層15の厚みは、例えば0.1μm以上3.0μm以下であり、好ましくは0.5μm以上2.8μm以下である。
【0059】
[非偏光部形成工程]
次に、非偏光部形成工程について、
図3及び
図4を参照しながら説明する。
図3は、非偏光部を形成する工程の一例を示す工程図である。
図4は、非偏光部が形成された後の偏光フィルム積層体の一例を示す部分断面図である。
【0060】
非偏光部形成工程では、
図3に示すように、偏光フィルム積層体ロール100から偏光フィルム積層体10を図中矢印方向に繰り出しながら、偏光子13における貫通孔14aから露出した箇所を処理液21に接触させることにより脱色して、非偏光部13a(
図4参照)を形成する。以下、偏光子13における貫通孔14aから露出した箇所を、単に「露出箇所」と記載することがある。
【0061】
処理液21としては、例えば塩基性溶液が挙げられる。露出箇所に処理液21を接触させる方法としては、特に限定されないが、例えば、
図3に示すように、偏光フィルム積層体10を、搬送しながら処理液21に浸漬する方法が挙げられる。なお、偏光フィルム積層体10を処理液21に浸漬した後、
図3に示すように、偏光フィルム積層体10を、搬送しながら洗浄液22(例えば、水、アルコール又はそれらの混合液)に浸漬して洗浄してもよい。
【0062】
偏光子13が二色性物質としてヨウ素を含む場合、露出箇所に塩基性溶液を接触させると、露出箇所のヨウ素含有率が低くなる。これにより、露出箇所を脱色でき、偏光子13に複数の非偏光部13aが形成される。
【0063】
非偏光部13a中の二色性物質(具体的には、ヨウ素等)の含有率は、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、更に好ましくは0.2重量%以下である。非偏光部13aの二色性物質の含有率がこのような範囲であれば、非偏光部13aに所望の透明性を十分に付与することができる。その結果、画像表示装置のカメラ部に非偏光部13aを対応させた場合に、明るさ及び色味の両方の観点から優れた撮影性能を実現することができる。一方、非偏光部13aの二色性物質の含有率の下限値は、通常、検出限界値以下である。なお、二色性物質としてヨウ素を用いる場合、ヨウ素含有率は、例えば、蛍光X線分析で測定したX線強度から、予め標準試料を用いて作成した検量線により求められる。
【0064】
偏光子13の非偏光部13a以外の部分における二色性物質の含有率と、非偏光部13aにおける二色性物質の含有率との差は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上である。含有率の差がこのような範囲であれば、透明性が高い非偏光部13aを形成することができる。
【0065】
非偏光部13aの光透過率(例えば、23℃における波長550nmの光で測定した光透過率)は、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、更に好ましくは75%以上、特に好ましくは90%以上である。このような光透過率であれば、非偏光部13aの透明性が高くなる。その結果、画像表示装置のカメラ部に非偏光部13aを対応させた場合に、明るさ及び色味の両方の観点から優れた撮影性能を実現することができる。
【0066】
塩基性溶液は、塩基性化合物と、塩基性化合物を分散及び/又は溶解する溶媒とを含む。塩基性化合物としては、任意の適切な塩基性化合物を用いることができる。塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸ナトリウム等の無機アルカリ金属塩;酢酸ナトリウム等の有機アルカリ金属塩;アンモニア等が挙げられる。これらの塩基性化合物は、単独で又は組み合わせて使用できる。好ましい塩基性化合物としては、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の水酸化物が挙げられる。より好ましい塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムが挙げられる。塩基性化合物がアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の水酸化物を含むと、ヨウ素錯体を効率良くイオン化でき、より容易に非偏光部13aを形成できる。
【0067】
塩基性溶液の溶媒としては、任意の適切な溶媒を用いることができる。溶媒としては、水;エタノール、メタノール等のアルコール;エーテル;ベンゼン;クロロホルム;及びこれらの混合溶媒が挙げられる。好ましい溶媒としては、水、アルコールが挙げられる。溶媒が水及び/又はアルコールを含むと、ヨウ素イオンを、偏光子13から溶媒へと円滑に移行でき、塩基性溶液の除去に伴ってヨウ素イオンを容易に除去できる。
【0068】
塩基性溶液中の塩基性化合物の濃度(規定度)は、例えば0.01N以上5N以下であり、好ましくは0.05N以上3N以下であり、より好ましくは0.1N以上2.5N以下である。塩基性化合物の濃度がこのような範囲であれば、露出箇所のヨウ素濃度を効率よく低減でき、かつ、当該露出箇所を除く偏光子13におけるヨウ素錯体のイオン化を抑制できる。
【0069】
非偏光部形成工程では、露出箇所に処理液21を接触させた後、偏光フィルム積層体10を後処理液23(例えば、酸性溶液)に浸漬してもよい。
図3に示す例では、露出箇所に処理液21を接触させた後、偏光フィルム積層体10を、搬送しながら洗浄液22に浸漬し、続いて後処理液23に浸漬する。なお、偏光フィルム積層体10を後処理液23に浸漬した後、
図3に示すように、偏光フィルム積層体10を、搬送しながら洗浄液24(例えば、水、アルコール又はそれらの混合液)に浸漬して洗浄してもよい。
【0070】
露出箇所に処理液21を接触させて非偏光部13aを形成すると、非偏光部13aにアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の金属塩が生成し得る。これら金属塩からは、水酸化物イオンが生成し得る。生成した水酸化物イオンは、非偏光部13aの周囲に存在する二色性物質(例えば、ヨウ素錯体)に作用(分解・還元)して、非偏光領域(低濃度領域)を広げ得る。アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の金属塩を低減させる後処理工程を実施すると、非偏光領域の拡大が抑制されるため、非偏光部13aの寸法変化を抑制できる。
【0071】
上記水酸化物イオンを生成し得る金属塩としては、代表的には、ホウ酸塩が挙げられる。ホウ酸塩は、例えば、上述した延伸処理に用いたホウ酸が塩基性溶液(代表的には、アルカリ金属の水酸化物及び/又はアルカリ土類金属の水酸化物の溶液)に中和されて生成し得る。
【0072】
非偏光部13aに後処理液23(代表的には、酸性溶液)を接触させると、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の金属塩を、後処理液23に移行でき、非偏光部13aにおけるアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の金属塩の含有率を低減させることができる。とりわけ、後処理液23が酸性溶液であると、非偏光部13aに残存するアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の水酸化物を中和して、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を化学的に除去し得る。
【0073】
後処理工程後の非偏光部13aにおけるアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の金属塩の含有率は、好ましくは3.6重量%以下、より好ましくは2.5重量%以下、更に好ましくは1.0重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。
【0074】
酸性溶液は、酸性化合物と、酸性化合物を分散及び/又は溶解する溶媒とを含む。酸性化合物としては、任意の適切な酸性化合物を用いることができる。酸性化合物としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、フッ化水素、ホウ酸等の無機酸;ギ酸、シュウ酸、クエン酸、酢酸、安息香酸等の有機酸等が挙げられる。酸性化合物は、単独で又は組み合わせて使用できる。好ましい酸性化合物としては無機酸が挙げられ、より好ましい酸性化合物としては塩酸、硫酸、硝酸が挙げられる。
【0075】
酸性溶液の溶媒としては、任意の適切な溶媒を用いることができる。溶媒としては、上述の塩基性溶液の溶媒として列挙したものが挙げられる。
【0076】
酸性溶液中の酸性化合物の濃度(規定度)は、例えば0.01N以上5N以下であり、好ましくは0.05N以上3N以下であり、より好ましくは0.1N以上2.5N以下である。
【0077】
図3に示す例では、偏光フィルム積層体10を洗浄液24に浸漬した後、例えば図示しない乾燥工程を経て、偏光フィルム積層体10を巻き取る。偏光フィルム積層体10を巻き取る際の巻き取り張力の好ましい範囲は、例えば、上述の巻回物準備工程において偏光フィルム積層体10を巻き取る際の巻き取り張力の好ましい範囲と同じである。なお、偏光フィルム積層体10を巻き取る際は、偏光フィルム積層体10から第1保護フィルム11及び第2保護フィルム14をはく離しながら巻き取ってもよい。つまり、
図3に示す偏光フィルム積層体10を巻き取る工程は、後述する保護フィルムはく離工程を兼ねてもよい。
【0078】
[保護フィルムはく離工程]
次に、保護フィルムはく離工程について説明する。保護フィルムはく離工程では、偏光フィルム積層体10から第1保護フィルム11及び第2保護フィルム14をはく離する。なお、以下の説明において、第1保護フィルム及び第2保護フィルムをはく離した後の偏光フィルム積層体を、「片面保護層付偏光板」と記載することがある。
【0079】
偏光フィルム積層体10から第1保護フィルム11及び第2保護フィルム14をはく離する方法は、特に限定されず、例えば、ロールトゥロール方式のはく離装置(不図示)を用いて、偏光フィルム積層体10を搬送しながら、偏光フィルム積層体10から第1保護フィルム11及び第2保護フィルム14をはく離する方法が挙げられる。保護フィルムはく離工程を実施することにより、
図5に示す片面保護層付偏光板30が得られる。片面保護層付偏光板30は、非偏光部13aを有する偏光子13と第1偏光子保護層12とが接着剤層15を介して積層されている。また、
図2の2周目以降の偏光フィルム積層体10から得られる片面保護層付偏光板30は、
図5に示すように、第1偏光子保護層12における上記X部(
図2参照)に相当する箇所に、ホール跡12bが形成されている。
【0080】
片面保護層付偏光板30の巻回数を増やすことにより円偏光板の生産性を高めるためには、片面保護層付偏光板30の厚みが、50μm以下であることが好ましく、40μm以下であることがより好ましい。また、片面保護層付偏光板30の取り扱い性を高めるためには、片面保護層付偏光板30の厚みが、10μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがより好ましい。なお、片面保護層付偏光板30の厚みが50μm以下である場合、画像表示装置を形成する際に、第1偏光子保護層12のホール跡12bが形成された面12aを偏光子13よりも視認側に配置すると、ホール跡12bが顕在化し、外観不良が発生しやすくなる傾向がある。後述するように、本実施形態で得られた円偏光板では、画像表示装置を形成する際に偏光子13がホール跡12bよりも視認側に配置される。よって、本実施形態では、片面保護層付偏光板30の厚みが50μm以下であっても、外観不良の発生を抑制できる。
【0081】
[第2偏光子保護層積層工程]
次に、第2偏光子保護層積層工程について、
図5及び
図6を参照しながら説明する。
図6は、第2偏光子保護層が積層された後の偏光フィルム積層体の一例を示す部分断面図である。第2偏光子保護層積層工程では、偏光子13の第2保護フィルム14がはく離された面13b(
図5参照)に第2偏光子保護層42を積層する。
図6に示す例では、面13bに接着剤層41を介して第2偏光子保護層42を積層している。なお、第2偏光子保護層積層工程では、面13bに粘着剤層(不図示)を介して第2偏光子保護層42を積層してもよい。
【0082】
面13bに接着剤層41を介して第2偏光子保護層42を積層する方法は、特に限定されず、例えば、ロールトゥロール方式の貼合装置(不図示)を用いて、片面保護層付偏光板30を搬送しながら、面13bに接着剤層41を介して第2偏光子保護層42を積層する(貼合する)方法が挙げられる。
【0083】
第2偏光子保護層42の構成材料としては、例えば、上述の第1偏光子保護層12の構成材料として列挙した材料が挙げられる。第2偏光子保護層42の厚みの好ましい範囲についても、上述した第1偏光子保護層12の厚みの好ましい範囲と同じである。第1偏光子保護層12の構成材料と、第2偏光子保護層42の構成材料とは、同一であっても互いに異なっていてもよい。また、第1偏光子保護層12の厚みと、第2偏光子保護層42の厚みとは、同一であっても互いに異なっていてもよい。
【0084】
接着剤層41を構成する接着剤としては、例えば、上述の接着剤層15を構成する接着剤として列挙した接着剤が挙げられる。接着剤層41の厚みの好ましい範囲についても、上述した接着剤層15の厚みの好ましい範囲と同じである。接着剤層15を構成する接着剤と、接着剤層41を構成する接着剤とは、同一であっても互いに異なっていてもよい。また、接着剤層15の厚みと、接着剤層41の厚みとは、同一であっても互いに異なっていてもよい。
【0085】
なお、第2偏光子保護層積層工程は、以下で説明する位相差層積層工程の前に実施しても後に実施してもよい。
【0086】
[位相差層積層工程]
次に、位相差層積層工程について、
図7を参照しながら説明する。
図7は、本実施形態の製造方法により得られた円偏光板の一例を示す部分断面図である。位相差層積層工程では、第1偏光子保護層12の偏光子13側とは反対側に位相差層を積層する。
図7に示す例では、第1偏光子保護層12の偏光子13側とは反対側の面12aに接着剤層51を介して第1位相差層52を貼合した後、第1位相差層52の接着剤層51側とは反対側の面52aに接着剤層53を介して第2位相差層54を貼合している。これにより、円偏光板200が得られる。なお、第1位相差層52と第2位相差層54とを接着剤層53を介して貼合した後、第1偏光子保護層12の偏光子13側とは反対側の面12aに、接着剤層51を介して第1位相差層52を貼合してもよい。
【0087】
位相差層積層工程における位相差層の積層方法は、第1偏光子保護層12の偏光子13側とは反対側に位相差層を積層する方法である限り、特に限定されない。位相差層の積層方法の具体例としては、第1偏光子保護層12の偏光子13側とは反対側に、特開2021-18354号公報に記載された積層方法により位相差層を積層する方法等が挙げられる。
【0088】
一方、
図7に示す例とは異なる積層方法として、第2偏光子保護層42の接着剤層41側とは反対側の面42a(
図6参照)に、位相差層を積層する方法も考えられる。しかしながら、第2偏光子保護層42の接着剤層41側とは反対側の面42aに位相差層を積層すると、得られた円偏光板を画像表示装置に用いた際、ホール跡12bが偏光子13よりも視認側に配置されるため、ホール跡12bが顕在化する。その結果、外観不良が発生しやすくなる。これに対し、本実施形態では、第1偏光子保護層12の偏光子13側とは反対側に位相差層(
図7の例では、第1位相差層52及び第2位相差層54)を積層するため、得られた円偏光板200を画像表示装置に用いた際、偏光子13がホール跡12bよりも視認側に配置される。その結果、外観上、ホール跡12bが目立たなくなるため、本実施形態によれば、ホール跡12bに起因する外観不良の発生を抑制できる。
【0089】
第1位相差層52としては、例えば液晶配向固化層が挙げられる。なお、「液晶配向固化層」とは、液晶化合物の配向固化層をいう。また、「配向固化層」とは、化合物が層内で所定の方向に配向し、その配向状態が固定されている層をいう。配向固化層に液晶化合物を用いることにより、得られる液晶配向固化層のnxとnyとの差を非液晶材料に比べて格段に大きくすることができるため、所望の面内位相差を得るための液晶配向固化層の厚みを格段に小さくすることができる。その結果、円偏光板の薄型化及び軽量化を実現することができる。なお、薄型の円偏光板を画像表示装置に用いる場合、第1偏光子保護層12のホール跡12bが形成された面12aを偏光子13よりも視認側に配置すると、ホール跡12bが顕在化し、外観不良が発生しやすくなる傾向がある。本実施形態で得られた円偏光板では、画像表示装置を形成する際に偏光子13がホール跡12bよりも視認側に配置される。よって、本実施形態によれば、薄型の円偏光板(位相差層が薄い円偏光板)であっても、外観不良の発生を抑制できる。
【0090】
第1位相差層52が液晶配向固化層である場合、液晶配向固化層としては、特に限定されず、例えば、特開2021-18354号公報に記載された液晶配向固化層等を使用できる。液晶配向固化層は、好ましくは1/4波長板として機能する液晶配向固化層である。第1位相差層52が1/4波長板として機能する液晶配向固化層である場合、第1位相差層52の厚みは、例えば0.2μm以上10μm以下であり、好ましくは0.5μm以上7μm以下である。
【0091】
第1位相差層52が1/4波長板として機能する液晶配向固化層である場合、第2位相差層54は、ポジティブCプレートであることが好ましい。このような構成の場合、斜め方向からの外光に対しても反射光を遮蔽可能な円偏光板を形成できる。第2位相差層54がポジティブCプレートである場合、第2位相差層54の厚みは、例えば0.2μm以上10μm以下であり、好ましくは0.5μm以上7μm以下である。
【0092】
また、第1位相差層52は、1/2波長板として機能する液晶配向固化層であってもよい。第1位相差層52が1/2波長板として機能する液晶配向固化層である場合、第1位相差層52の厚みは、例えば0.2μm以上10μm以下であり、好ましくは0.5μm以上7μm以下である。
【0093】
第1位相差層52が1/2波長板として機能する液晶配向固化層である場合、第2位相差層54は、1/4波長板として機能する液晶配向固化層であることが好ましい。この場合、1/2波長板の遅相軸方向と偏光子13の吸収軸方向とのなす角が75°±5°、1/4波長板の遅相軸方向と偏光子13の吸収軸方向とのなす角が15°±5°となるように配置することが好ましい。このような層構成の円偏光板は、可視光の広い波長範囲にわたって円偏光板として機能するため、反射光の色付きを低減できる。
【0094】
接着剤層51を構成する接着剤としては、例えば、上述の接着剤層15を構成する接着剤として列挙した接着剤が挙げられる。接着剤層51の厚みの好ましい範囲についても、上述した接着剤層15の厚みの好ましい範囲と同じである。接着剤層15を構成する接着剤と、接着剤層51を構成する接着剤とは、同一であっても互いに異なっていてもよい。また、接着剤層15の厚みと、接着剤層51の厚みとは、同一であっても互いに異なっていてもよい。
【0095】
接着剤層53を構成する接着剤としては、例えば、上述の接着剤層15を構成する接着剤として列挙した接着剤が挙げられる。接着剤層53の厚みの好ましい範囲についても、上述した接着剤層15の厚みの好ましい範囲と同じである。接着剤層15を構成する接着剤と、接着剤層53を構成する接着剤とは、同一であっても互いに異なっていてもよい。また、接着剤層15の厚みと、接着剤層53の厚みとは、同一であっても互いに異なっていてもよい。
【0096】
以上、位相差層積層工程について説明したが、本発明では、第1偏光子保護層の偏光子側とは反対側に位相差層(例えば、1/4波長板)を一層だけ積層してもよい。また、本発明では、第1偏光子保護層の偏光子側とは反対側に、粘着剤層を介して位相差層を積層してもよい。
【0097】
[本実施形態の効果が有効に発揮される条件]
上述したように、本実施形態に係る円偏光板の製造方法によれば、ホール跡に起因する外観不良の発生を抑制できる。本実施形態において、下記条件1を満たすことにより、本実施形態の効果がより有効に発揮される。また、本実施形態において、下記条件2を満たすことにより、本実施形態の効果が更に有効に発揮される。また、本実施形態において、下記条件3を満たすことにより、本実施形態の効果が特に有効に発揮される。
条件1:第1保護フィルムの厚みが50μm以下であり、かつ片面保護層付偏光板の厚みが50μm以下である。
条件2:上記条件1を満たし、かつ第1偏光子保護層の第1保護フィルム側の面の鉛筆硬度が4B以上である。
条件3:上記条件2を満たし、かつ第2保護フィルムの貫通孔の開口部の直径が1mm以上10mm以下である。
【0098】
以上、本実施形態に係る円偏光板の製造方法について説明したが、本発明に係る円偏光板の製造方法は、上記実施形態には限定されない。例えば、本発明に係る円偏光板の製造方法は、位相差層積層工程の後、位相差層の第1偏光子保護層側とは反対側に粘着剤層(以下、「外側粘着剤層」と記載する)を積層する工程を更に備えていてもよい。この外側粘着剤層を介して位相差層を画像表示セル(例えば、液晶セル、有機ELセル等)に貼り合わせることにより、画像表示装置が形成される。外側粘着剤層を構成する粘着剤は、特に限定されず、例えば、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体、変性ポリオレフィン、エポキシ系樹脂、フッ素系樹脂、天然ゴム、合成ゴム等のポリマーをベースポリマーとする透明な粘着剤を、適宜に選択して用いることができる。外側粘着剤層の厚みは、特に限定されないが、薄層性及び接着性を両立させる観点から、5μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0099】
また、本発明に係る円偏光板の製造方法は、外側粘着剤層の位相差層側とは反対側の主面に、はく離ライナーを仮着する工程を更に備えていてもよい。はく離ライナーは、例えば、位相差層を画像表示セルと貼り合わせるまでの間、外側粘着剤層の表面を保護する。はく離ライナーの構成材料としては、アクリル、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、ポリエステル等から形成されたプラスチックフィルムが好適に用いられる。はく離ライナーの厚みは、例えば、5μm以上200μm以下である。はく離ライナーの表面には、離型処理が施されていることが好ましい。離型処理に使用される離型剤の材料としては、シリコーン系材料、フッ素系材料、長鎖アルキル系材料、脂肪酸アミド系材料等が挙げられる。
【0100】
また、本発明に係る円偏光板の製造方法において、第2偏光子保護層積層工程は必須工程ではない。例えば、第2偏光子保護層の代わりに、粘着剤層及びはく離ライナーを偏光子上に順次積層してもよい。
【符号の説明】
【0101】
10 :偏光フィルム積層体
11 :第1保護フィルム
12 :第1偏光子保護層
13 :偏光子
13a :非偏光部
14 :第2保護フィルム
14a :貫通孔
21 :処理液
42 :第2偏光子保護層
52 :第1位相差層(位相差層)
54 :第2位相差層(位相差層)
200 :円偏光板