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  • 特開-変換装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162722
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
H02M7/12 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078555
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【弁理士】
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(72)【発明者】
【氏名】爲永 陽樹
【テーマコード(参考)】
5H006
【Fターム(参考)】
5H006AA02
5H006CA01
5H006CA07
5H006CB02
5H006CB08
5H006CC02
5H006DA04
5H006DB01
5H006DC02
5H006DC05
(57)【要約】
【課題】入力電流が制限値を超えないように安定して制御する。
【解決手段】変換装置1は、交流電力源10から入力される入力電流の波形を制御するスイッチ素子Q1,Q2を含む整流回路4と、入力電流を検出する電流計測部6と、交流電力源10から整流回路4に印加される入力電圧を検出する電圧計測部5と、入力電流の値を基にスイッチ素子Q1,Q2のスイッチング動作を制御する制御部7と、を備え、制御部7は、電圧計測部5によって検出された入力電圧の前回の半周期である前回期間の長さTを検出し、入力電圧の今回の半周期において、電流計測部6によって検出された入力電流の値iacを繰り返し取得しながら入力電流の二乗の積算値Σiac を計算し、積算値Σiac が、制限値ILMTの二乗と長さTとの積以上となったタイミングで、スイッチ素子のスイッチング動作を停止するように制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力源から入力された交流電力を直流電力に変換して出力する変換装置であって、
前記交流電力源から入力される入力電流の波形を制御するスイッチ素子を含む整流回路と、
前記入力電流を検出する電流計測部と、
前記交流電力源から前記整流回路に印加される入力電圧を検出する電圧計測部と、
前記入力電流の値を基に前記スイッチ素子のスイッチング動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記電圧計測部によって検出された前記入力電圧の前回の半周期である前回期間の長さTを検出し、
前記入力電圧の今回の半周期において、前記電流計測部によって検出された前記入力電流の値iacを繰り返し取得しながら前記入力電流の二乗の積算値Σiac を計算し、予め設定された制限値ILMTを基に、下記式(1);
【数1】

が成立したタイミングで、前記スイッチ素子のスイッチング動作を停止するように制御する、
変換装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記前回期間の長さTを、前記入力電圧における連続する2つのゼロクロス点の時間間隔によって検出する、
請求項1に記載の変換装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記スイッチ素子のスイッチング動作の停止を、前記入力電圧のゼロクロス点を2回検出するまで継続する、
請求項1又は2に記載の変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、交流電力を直流電力に変換する変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、交流電力源からの入力を基にバッテリを充電する充電装置が知られている(例えば、下記特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-136271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような従来の充電装置では、交流電力源から入力される電流の電流実効値を算出し、電流実効値が予め決められた判定値を超えていた場合、電流実効値を下げるように制御されている。このような制御においては、入力電流が制限値を超えないような安定した制御が望まれる。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題に鑑みて為されたものであり、入力電流が制限値を超えないように安定して制御することが可能な変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る変換装置は、交流電力源から入力された交流電力を直流電力に変換して出力する変換装置であって、交流電力源から入力される入力電流の波形を制御するスイッチ素子を含む整流回路と、入力電流を検出する電流計測部と、交流電力源から整流回路に印加される入力電圧を検出する電圧計測部と、入力電流の値を基にスイッチ素子のスイッチング動作を制御する制御部と、を備え、制御部は、電圧計測部によって検出された入力電圧の前回の半周期である前回期間の長さTを検出し、入力電圧の今回の半周期において、電流計測部によって検出された入力電流の値iacを繰り返し取得しながら入力電流の二乗の積算値Σiac を計算し、予め設定された制限値ILMTを基に、下記式(1);
【数1】

が成立したタイミングで、スイッチ素子のスイッチング動作を停止するように制御する。
【0007】
変換装置は、交流電力源から入力される入力電流を検出する電流計測部と、交流電力源から整流回路に印加される入力電圧を検出する電圧計測部とを備えており、制御部が、電流計測部が検出した入力電流の値を基に、整流回路に含まれるスイッチ素子のスイッチング動作を制御する。すなわち、制御部は、電圧計測部が検出した入力電圧の今回の半周期において、入力電流の値iacを繰り返し取得しながら二乗の積算値Σiac を計算し、その積算値Σiac が、制限値ILMTの二乗と入力電圧の前回の半周期の長さTとの積以上となったタイミングで、スイッチ素子のスイッチングを停止させる。これにより、入力電圧の半周期の間において、入力電流の実効値が制限値を超えそうなタイミングを制御部の制御周期で検出して即座に入力電流の上昇を抑制することができる。その結果、入力電流が制限値を超えないように安定して制御することが可能となる。
【0008】
変換装置においては、制御部は、前回期間の長さTを、入力電圧における連続する2つのゼロクロス点の時間間隔によって検出する、ことが好ましい。かかる構成を採れば、入力電圧の半周期の長さTを安定的にかつ正確に検出することができ、入力電流の実効値が制限値を超えそうなタイミングを正確に検出できる。その結果、入力電流の制限値を超えた上昇を確実に抑制することができる。
【0009】
また、変換装置においては、制御部は、スイッチ素子のスイッチング動作の停止を、入力電圧のゼロクロス点を2回検出するまで継続する、ことが好ましい。この場合、入力電流を入力電圧の今回の半周期の次の半周期まで抑制することができ、入力電流の制限値を超えた上昇を確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、入力電流が制限値を超えないように安定して制御することが可能な変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る変換装置1の構成を示す回路図である。
図2図2は、変換装置1に含まれる制御部7の機能構成を示すブロック図である。
図3図3は、変換装置1の制御部7によるスイッチング動作の制御の手順を示すフローチャートである。
図4図4は、変換装置1における、入力電圧、入力電流、積算値Σiac 、及び入力電流の実効値の時間変化を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る変換装置1の構成を示す回路図である。同図に示される変換装置1は、交流電力源から入力された交流電力を直流電力に変換してバッテリ(蓄電池)に向けて出力する電力変換システムである。変換装置1は、例えば車両に搭載される。変換装置1は、バッテリ2と、ACDCコンバータを構成する平滑回路3及び整流回路4と、電圧計測部5と、電流計測部6と、制御部7と、ドライブ回路8と、ECU(Electronic Control Unit)9と、コンデンサC2と、フィルタ回路を構成するコンデンサC3、コイルL2、及びコイルL3と、を備える。なお、変換装置1の構成は、図1に示す回路構成に限定されるものではなく、スイッチ素子を用いて力率改善を実現するPFC(Power Factor Correction)回路を含む構成であればよい。
【0014】
電圧計測部5は、交流電力源10の両端に接続され、交流電力源10から整流回路4に印加される入力電圧を検出し、検出した入力電圧の値(入力電圧値)を制御部7に出力する。電流計測部6は、交流電力源10の一端と整流回路4の一方の入力端11aとの間に接続され、交流電力源10から整流回路4に入力される入力電流を検出し、検出した入力電流の値(入力電流値)を制御部7に出力する。なお、電流計測部6は、コイルL2の後段に(コイルL2と整流回路4との間に)接続されてもよい。
【0015】
コイルL2の一端は、電流計測部6を介して交流電力源10の一端に接続され、コイルL2の他端は、整流回路4の一方の入力端11aに接続されている。コイルL3の一端は、交流電力源10の他端に接続され、コイルL3の他端は、整流回路4の他方の入力端11bに接続されている。コンデンサC3は、コイルL2の一端とコイルL3との一端との間に接続されている。交流電力源10から入力される交流電力は、コンデンサC3、コイルL2、及びコイルL3によって構成されるフィルタ回路を経由して整流回路4に入力される。
【0016】
整流回路4は、4個のダイオードD1,D2,D3,D4と、2個のスイッチ素子とを含むダイオードブリッジ回路であり、交流電力源10から入力される入力電流の波形を制御する回路である。整流回路4は、交流電力が入力される入力端11a,11bと、出力端12a,12bとをさらに有する。ダイオードD1のアノードは入力端11aに接続され、ダイオードD1のカソードは出力端12aに接続されている。ダイオードD2のアノードは出力端12bに接続され、ダイオードD2のカソードは入力端11aに接続されている。ダイオードD3のアノードは入力端11bに接続され、ダイオードD3のカソードは出力端12aに接続されている。ダイオードD4のアノードは出力端12bに接続され、ダイオードD4のカソードは入力端11bに接続されている。
【0017】
また、ダイオードD2にはスイッチ素子Q1が並列に接続されている。スイッチ素子Q1は、例えば、バイポーラトランジスタである。スイッチ素子Q1は、そのコレクタ端子がダイオードD2のカソードに接続され、そのエミッタ端子がダイオードD2のアノードに接続されている。また、ダイオードD4にはスイッチ素子Q2が並列に接続されている。スイッチ素子Q2は、例えば、バイポーラトランジスタである。スイッチ素子Q2は、そのコレクタ端子がダイオードD4のカソードに接続され、そのエミッタ端子がダイオードD4のアノードに接続されている。2つのスイッチ素子Q1,Q2は、それらのベースがドライブ回路8に接続され、ドライブ回路8から印加されるベース電圧に応じてオン/オフする(スイッチング動作する)。なお、本実施形態では2つのスイッチ素子を用いているが、4つのダイオードD1,D2,D3,D4の全てに対してスイッチ素子が並列に接続されてもよい。
【0018】
コンデンサC2は、整流回路4の2つの出力端12a,12bの間に接続されている。ただし、コンデンサC2は省かれていてもよい。
【0019】
バッテリ2の一端は、平滑回路3のコイルL1を介して整流回路4の一方の出力端12aに接続され、バッテリ2の他端は、整流回路4の他方の出力端12bに接続されている。バッテリ2の両端は、平滑回路3のコンデンサC1の両端に接続されている。整流回路4の2つの出力端12a,12bから出力される電圧は平滑回路3によって平滑化されてバッテリ2に入力される。
【0020】
ECU9は、車両等における各種の機能を制御する制御装置である。ECU9は、予め設定された、交流電力源10から入力される入力電流の実効値の制限値ILMTを制御部7に出力する。また、ECU9は、整流回路4からバッテリ2に入力する入力電流の指令値を制御部7に出力する。ただし、制御部7へ入力電流の指令値を出力するのは、ECU9には限定されず、充電スタンドなどの外部機器から出力してもよい。ドライブ回路8は、制御部7からの駆動信号に応じて、整流回路4の2つのスイッチ素子Q1,Q2をオン/オフさせるように、2つのスイッチ素子Q1,Q2にベース電圧を印加する。
【0021】
制御部7は、電圧計測部5から出力された入力電圧値及び電流計測部6から出力された入力電流値を基に、整流回路の2つのスイッチ素子Q1,Q2のオン/オフ(スイッチング動作)を制御する制御装置である。制御部7は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、マルチコアCPU、プログラマブルなデバイス(FPGA(Field Programmable Gate Array)、PLD(Programmable Logic Device等)を内蔵する回路である。制御部7においては、CPU等が、内蔵する記憶部に記憶されているプログラムを読み出して実行する。また、制御部7においては、CPU等が外部の記憶部からプログラムを読み出して実行してもよい。
【0022】
制御部7は、スイッチング動作を制御する。すなわち、制御部7は、入力電圧値を基に特定した入力電圧の波形が正側であるときは、次のように制御する。制御部7は、スイッチ素子Q1をオンさせ、スイッチ素子Q2をオフさせ、コイルL2にエネルギーを蓄積させる。その後、制御部7は、スイッチ素子Q1をオフさせ、スイッチ素子Q2をオンさせ、コイルL2に蓄積させたエネルギーをダイオードD1を介してコンデンサC2に蓄積させる。このような動作をデューティ比を調整しながら交互に繰り返すことにより、制御部7は、整流回路4から出力される電流波形を正弦波に近づけることができる。具体的には、スイッチ素子Q1のオン期間のデューティ比を大きくすることにより、出力電流値を大きくすることができ、スイッチ素子Q1のオン期間のデューティ比を小さくすることにより、出力電流値を小さくすることができる。
【0023】
また、制御部7は、入力電圧の波形が負側であるときは、次のように制御する。制御部7は、スイッチ素子Q1をオフさせ、スイッチ素子Q2をオンさせ、コイルL3にエネルギーを蓄積させる。その後、制御部7は、スイッチ素子Q1をオンさせ、スイッチ素子Q2をオフさせ、コイルL3に蓄積させたエネルギーをダイオードD3を介してコンデンサC2に蓄積させる。このような動作をデューティ比を調整しながら交互に繰り返すことにより、制御部7は、整流回路4から出力される電流波形を正弦波に近づけることができる。具体的には、スイッチ素子Q2のオン期間のデューティ比を大きくすることにより、出力電流値を大きくすることができ、スイッチ素子Q2のオン期間のデューティ比を小さくすることにより、出力電流値を小さくすることができる。
【0024】
なお、制御部7は、スイッチング動作の制御時に、スイッチ素子Q1,Q2を同時にオンあるいはオフさせてもよい。例えば、入力電圧の波形が正側あるいは負側であるとき、スイッチ素子Q1及びスイッチ素子Q2を同時にオンさせる期間と、スイッチ素子Q1及びスイッチ素子Q2を同時にオフさせる期間とを繰り返してもよい。
【0025】
ここで、図2を参照して、制御部7の機能の詳細について説明する。図2は、制御部7の機能構成を示すブロック図である。制御部7は、ゼロクロス検出部101、半周期検出部102、積算値算出部103、目標電流制御判定部104、及びデューティ算出部105を備える。
【0026】
ゼロクロス検出部101は、電圧計測部5から出力された入力電圧値を繰り返し取得し、入力電圧が0となるゼロクロス点のタイミングを検出する。ゼロクロス検出部101は、検出したゼロクロス点のタイミングを、その都度、半周期検出部102及び積算値算出部103に通知する。
【0027】
半周期検出部102は、ゼロクロス検出部101からゼロクロス点のタイミングを通知された際に、前回のゼロクロス点のタイミングと今回のゼロクロス点のタイミングとの間隔、すなわち、連続する2つのゼロクロス点の時間間隔を計測することにより、入力電圧における前回の半周期である前回期間の長さTを検出する。半周期検出部102は、前回期間の長さTを目標電流制御判定部104及びデューティ算出部105に通知する。
【0028】
積算値算出部103は、ゼロクロス検出部101から通知されたゼロクロス点のタイミング以降から次のゼロクロス点のタイミングまでの間(つまり、入力電圧の今回の半周期)において、所定の制御周期(例えば、CPUのサンプリング周波数で決まる周期)の間隔で繰り返し入力電流値iacを取得する。さらに、積算値算出部103は、入力電圧の今回の半周期において取得された入力電流値iacの二乗の積算値;
【数2】

を計算する。積算値算出部103は、計算した入力電流値iacの二乗の積算値を目標電流制御判定部104に通知する。
【0029】
目標電流制御判定部104は、ECU9から入力された入力電流の実効値の制限値ILMTと、半周期検出部102から通知された前回期間の長さTと、積算値算出部103から通知された入力電流値iacの二乗の積算値とを基に、目標電流制御の判定を実行する。すなわち、目標電流制御判定部104は、入力電流値iacの二乗の積算値と、制限値ILMTの二乗の値と前回期間の長さTとの積とを比較し、下記式(1);
【数3】

が成立するか否かを判定する。そして、目標電流制御判定部104は、上記式(1)が成立するタイミングをデューティ算出部105に通知する。これにより、入力電流値iacの実効値が入力電流の実効値の制限値ILMTを超えたタイミングを制御周期の間隔で判定することができる。
【0030】
なお、目標電流制御判定部104は、入力電流値iacの二乗の積算値を前回期間の長さTで除算した値の平方根と、制限値ILMTとを比較し、下記式(2);
【数4】

が成立するか否かを判定して、入力電流値iacの実効値が入力電流の実効値の制限値ILMTを超えたタイミングを判定してもよい。
【0031】
デューティ算出部105は、入力電圧の前回期間の長さT、ECU9から出力された入力電流の指令値等を基にスイッチ素子Q1,Q2のデューティ比を算出する。デューティ算出部105は、算出したデューティ比に基づいてスイッチ素子Q1,Q2をオン/オフさせるように駆動信号を生成し、生成した駆動信号をドライブ回路8に出力する。
【0032】
また、デューティ算出部105は、目標電流制御判定部104より、入力電流値iacの実効値が入力電流の実効値の制限値ILMTを超えたタイミングが通知された際には、そのタイミング以降、入力電圧のゼロクロス点を2回検出するまでの間では、入力電流の指令値を低下させるように(例えば、入力電流の指令値をゼロに設定するように)駆動信号を生成し、生成した駆動信号をドライブ回路8に出力する。具体的には、デューティ算出部105は、スイッチ素子Q1,Q2のオン期間のデューティ比をゼロに設定して、スイッチ素子Q1,Q2のスイッチング動作を停止するように駆動信号を生成する。
【0033】
次に、変換装置1の制御部7によるスイッチング動作の制御の手順について説明する。図3は、制御部7によるスイッチング動作の制御の手順を示すフローチャートである。このスイッチング動作の制御は、入力電圧のゼロクロス点が検出されたタイミングで繰り返し実行される。
【0034】
最初に、制御部7の半周期検出部102において、ゼロクロス点のタイミングが検出された際に、前回のゼロクロス点のタイミングと今回のゼロクロス点のタイミングの間隔を計測することにより、入力電圧の前回期間の長さTが検出される(ステップS101)。次に、制御部7において、入力電圧の今回の半周期における入力電流の制御処理が開始される(ステップS102)。
【0035】
すなわち、制御部7の積算値算出部103により、今回通知されたゼロクロス点のタイミング以降から次のゼロクロス点のタイミングまでの間(入力電圧の今回の半周期)において、所定の制御周期で入力電流値iacが繰り返し取得される(ステップS103)。そして、積算値算出部103により、電流値iacが取得される度に、入力電圧の今回の半周期で取得された電流値iacの二乗の積算値が計算される(ステップS104)。
【0036】
その後、制御部7の目標電流制御判定部104により、目標電流制御の判定が実行され、電流値iacの二乗の積算値が制限値ILMTの二乗と前回期間の長さTとの積以上に至っているか否かが判定される(ステップS105)。判定の結果、積算値が制限値ILMTと前回期間の長さTとの積以上に至っている場合(ステップS105;Yes)、デューティ算出部105により、入力電圧の次回の半周期が終わるまで、スイッチ素子Q1,Q2のスイッチング動作を停止するように制御される(ステップS106)。
【0037】
一方で、積算値が制限値ILMTと前回期間の長さTとの積以上に至っていない場合(ステップS105;No)、デューティ算出部105により、入力電流の指令値等を基にスイッチ素子Q1,Q2のスイッチング動作を継続するように制御される(ステップS107)。その後、半周期検出部102により、入力電圧の今回の半周期が終了したか否かが判定される(ステップS108)。判定の結果、今回の半周期が終了していない場合には(ステップS108;No)、処理がステップS103に戻され、目標電流制御の判定が繰り返される。一方で、今回の半周期が終了した場合には(ステップS108;Yes)、今回の半周期におけるスイッチング動作の制御が終了される。
【0038】
以上説明した変換装置1は、交流電力源10から入力される入力電流を検出する電流計測部6と、交流電力源10から整流回路4に印加される入力電圧を検出する電圧計測部5とを備えており、制御部7が、電流計測部6が検出した入力電流の値を基に、整流回路4に含まれるスイッチ素子Q1,Q2のスイッチング動作を制御する。すなわち、制御部7は、電圧計測部5が検出した入力電圧の今回の半周期において、入力電流の値iacを繰り返し取得しながら二乗の積算値Σiac を計算し、その積算値Σiac が、制限値ILMTの二乗と入力電圧の前回の半周期の長さTとの積以上となったタイミングで、スイッチ素子Q1,Q2のスイッチング動作を停止させる。これにより、入力電圧の半周期の間において、入力電流の実効値が制限値ILMTを超えそうなタイミングを制御部7の制御周期で検出して即座に入力電流の上昇を抑制することができる。その結果、入力電流が制限値を超えないように安定して制御することが可能となる。
【0039】
変換装置1においては、制御部7は、前回期間の長さTを、入力電圧における連続する2つのゼロクロス点の時間間隔によって検出している。かかる構成を採れば、入力電圧の半周期の長さTを安定的にかつ正確に検出することができ、入力電流の実効値が制限値ILMTを超えそうなタイミングを正確に検出できる。その結果、入力電流の制限値を超えた上昇を確実に抑制することができる。
【0040】
また、変換装置1においては、制御部7は、スイッチ素子Q1,Q2のスイッチング動作の停止を、入力電圧のゼロクロス点を2回検出するまで継続している。この場合、入力電流を入力電圧の今回の半周期の次の半周期まで抑制することができ、入力電流の制限値を超えた上昇を確実に抑制することができる。
【0041】
図4は、変換装置1における入力電圧、入力電流、積算値Σiac 、及び入力電流の実効値の時間変化を示すタイミングチャートである。変換装置1においては、入力電圧の半周期において、積算値Σiac が閾値ILMT×T以上となるタイミングが検出され、そのタイミングでスイッチ素子Q1,Q2のスイッチング動作が停止されることによって、入力電流がゼロに抑制される。この入力電流の抑制は、入力電圧の次回の半周期が終わるまで継続される。その結果、入力電流の実効値が、例えば、16Armsを超えないように確実に制御される。
【0042】
以上、本発明の種々の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
例えば、制御部7は、入力電圧の半周期を検出していたが、入力電圧の周期を検出してもよい。例えば、入力電圧の前々回のゼロクロス点と今回のゼロクロス点との時間間隔の半分を、入力電圧の前回期間の長さTとして検出してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…変換装置、2…バッテリ、3…平滑回路、4…整流回路、5…電圧計測部、6…電流計測部、7…制御部、8…ドライブ回路、9…ECU、10…交流電力源、iac…入力電流の値、Q1,Q2…スイッチ素子、101…ゼロクロス検出部、102…半周期検出部、103…積算値算出部、104…目標電流制御判定部、105…デューティ算出部。
図1
図2
図3
図4