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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162724
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】試料採取器具
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/04 20060101AFI20241114BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G01N1/04 H
G01N1/04 G
G01N1/04 W
G01N33/48 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078569
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】500272347
【氏名又は名称】DICプラスチック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】523033213
【氏名又は名称】アニコム損害保険株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】高橋 潤任
(72)【発明者】
【氏名】須崎 正士
(72)【発明者】
【氏名】菊地 久士
(72)【発明者】
【氏名】金子 和弘
(72)【発明者】
【氏名】古橋 剛
【テーマコード(参考)】
2G045
2G052
【Fターム(参考)】
2G045AA28
2G045CB21
2G045HA06
2G052AA28
2G052AB01
2G052AB11
2G052AB16
2G052AB27
2G052BA02
2G052BA19
2G052DA02
2G052DA12
2G052DA15
2G052DA22
2G052DA23
2G052GA28
2G052GA29
2G052JA02
2G052JA07
2G052JA08
2G052JA16
(57)【要約】
【課題】検査工程の更なる迅速化を可能とする試料採取器具を提供する。
【解決手段】容器11に対して着脱可能な蓋部材21は、基体部22と、基端部において、基体部に接続された軸部23と、軸部23の小径軸部23bに設けられ、生体と接触されることで、生体試料が付着可能な採取部24と、を備え、採取部24は、生体試料が付着可能な生体適合性のエラストマーで構成されている。採取部24は、小径軸部23bをエラストマーで被覆している被覆部24aと、被覆部24aと連続した、軸部23の先端より更に先の部分においてエラストマーで構成された弾性変位部24bと、を備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体部と、
基端部において、前記基体部に接続された軸部と、
前記軸部の先端部に設けられ、生体と接触されることで、生体試料が付着可能な採取部と、を備え、
前記採取部は、前記生体試料が付着可能な生体適合性のエラストマーで構成されている
試料採取器具。
【請求項2】
前記採取部は、
前記軸部の先端部を前記エラストマーで被覆している被覆部と、
前記被覆部と連続した、前記軸部の先端より更に先の部分において前記エラストマーで構成された弾性変位部と、を備えている
請求項1に記載の試料採取器具。
【請求項3】
前記エラストマーは、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、又はポリエステル系エラストマーである
請求項1に記載の試料採取器具。
【請求項4】
前記採取部は、静摩擦係数が0.5以上である
請求項1に記載の試料採取器具。
【請求項5】
前記採取部は、動摩擦係数が0.5以上である
請求項1に記載の試料採取器具。
【請求項6】
前記採取部の表面積は、250mm以上である
請求項1に記載の試料採取器具。
【請求項7】
前記軸部が前記採取部を挿入端として挿入される挿入口と、前記挿入口と連続し前記軸部を収容する収容部と、を備える容器を更に備え、
前記基体部は、前記挿入口を塞ぐ蓋部材を構成している
請求項1に記載の試料採取器具。
【請求項8】
前記基体部は、前記軸部が延びる方向とは反対方向に把持部を備える
請求項7に記載の試料採取器具。
【請求項9】
前記採取部は、口腔内細菌、皮膚常在菌、又は膣内細菌が採取可能である
請求項1に記載の試料採取器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料採取器具に関する。
【背景技術】
【0002】
生体から試料を採取する試料採取器具としては、例えば特許文献1に示すような試料採取用器具がある。特許文献1の試料採取用器具は、生体試料を採取する採取棒と、採取棒が着脱可能な管状スクイズ筒と、を備えている。管状スクイズ筒は、一端部において、採取棒が着脱可能に構成されていると共に、他端部において、排出孔が設けられている。排出孔は、着脱可能なキャップが取り付けられている。管状スクイズ筒は、緩衝液、安定剤、検査溶剤等の溶剤が収容されている。管状スクイズ筒は、生体試料を保持した採取棒が挿入されることで生体試料と溶剤とが混合される。そして、生体試料と溶剤とが混合された懸濁液は、キャップが外された後、排出孔から滴下されることで、試験管内に移し替えられる。そして、試験管は、遠心分離機等の理化学装置などに装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-43030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような試料採取器具で採取された試料の検査では、遠心分離機等の理化学装置を用いた検体の抽出工程のために、生体試料を試験管等の容器に移し替える作業等が必要となる。このような工程を含む検査工程全体では、工程の迅速化が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための試料採取器具は、基体部と、基端部において、前記基体部に接続された軸部と、前記軸部の先端部に設けられ、生体と接触されることで、生体試料が付着可能な採取部と、を備え、前記採取部は、前記生体試料が付着可能な生体適合性のエラストマーで構成されている。
【0006】
上記構成によれば、採取部は、生体適合性のエラストマーで構成されている。したがって、スワブと同様に、生体表面を摺動させることで、生体試料を採取することができる。そして、試料採取器具は、そのまま理化学装置に装着することができる。したがって、検査工程全体の簡素化や迅速化を実現することができる。
【0007】
上記試料採取器具において、前記採取部は、前記軸部の先端部を前記エラストマーで被覆している被覆部と、前記被覆部と連続した、前記軸部の先端より更に先の部分において前記エラストマーで構成された弾性変位部と、を備えているように構成してもよい。
【0008】
上記構成によれば、エラストマーで構成されている採取部は、先端側の弾性変位部が弾性変位することで、生体の表面に対する接触圧を和らげながら生体の表面を摺動する。これにより、採取部には、生体の表面に過度の負担をかけることなく生体試料を採取できる。
【0009】
上記試料採取器具において、前記エラストマーは、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、又はポリエステル系エラストマーで構成してもよい。上記構成によれば、生体適合性のエラストマーとして、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、又はポリエステル系エラストマー等の汎用性の高い樹脂材料を使用することができる。
【0010】
上記試料採取器具において、前記採取部は、静摩擦係数が0.5以上であることが好ましい。上記構成によれば、静摩擦係数を0.5以上とすることで、摺動開始時において、生体の表面に対して、過度の負荷を加えることなく、摺動させることができる。
【0011】
上記試料採取器具において、前記採取部は、動摩擦係数が0.5以上であることが好ましい。上記構成によれば、動摩擦係数を0.5以上とすることで、摺動途中においても、生体の表面に対して、過度の負荷を加えることなく、摺動させることができる。
【0012】
上記試料採取器具において、前記採取部の表面積は、250mm以上であることが好ましい。上記構成によれば、採取部の表面積を250mm以上とすることで、広範囲に亘って細菌を付着させることができる。
【0013】
上記試料採取器具において、前記軸部が前記採取部を挿入端として挿入される挿入口と、前記挿入口と連続し前記軸部を収容する収容部と、を備える容器を更に備え、前記基体部は、前記挿入口を塞ぐ蓋部材を構成していることが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、試料採取器具の使用の前後を問わず、採取部を備える蓋部材は、汎用性の高い容器と一体的に取り扱うことができる。したがって、試料採取器具において、出荷時から細菌の抽出工程に至るまでの利便性を向上することができる。
【0015】
上記試料採取器具において、前記基体部は、前記軸部が延びる方向とは反対方向に把持部を備えるように構成してもよい。上記構成によれば、蓋部材は、把持部を備えることで、容器に対する着脱作業を容易に行うことができる。また、試料採取時においても、把持部を摘まむことで、採取部を生体の表面に対して容易に摺動させることができる。
【0016】
上記試料採取器具において、前記採取部は、口腔内細菌、皮膚常在菌、又は膣内細菌が採取可能であることが好ましい。上記構成によれば、口腔内細菌、皮膚常在菌、又は膣内細菌が採取部に付着されることで検査可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、検査工程全体の更なる迅速化を可能とする試料採取器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施形態における、試料採取器具の斜視図である。
図2図2は、図1に示す試料採取器具の分解斜視図である。
図3図3は、図1に示す試料採取器具の3-3断面図である。
図4図4は、採取部で使用する樹脂の静摩擦係数と動摩擦係数を示す図である。
図5図5は、猫口腔内で採取された細菌とその量とに基づく主成分分析の結果を示す図である。
図6図6は、猫皮膚で採取された常在菌とその量とに基づく主成分分析の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明が適用された試料採取器具について図面を参照して説明する。
〔全体構成〕
図1図2及び図3に示すように、この試料採取器具1は、動物の口腔内細菌、皮膚常在菌等細菌を採取する器具である。本実施形態における試料採取器具1は、猫の口腔内細菌及び猫の皮膚常在菌を採取する器具である。試料採取器具1は、容器11と、蓋部材21と、を備えている。
【0020】
〔容器〕
容器11は、細長い有底筒形状を備えている。容器11は、液体としての緩衝液、安定剤、検査溶剤等の溶剤に対して耐性を有している。容器11は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ABS、アクリル樹脂等の合成樹脂による成形部品である。容器11は、一方の端部に底部12を備えているとともに、他方の端部に挿入口13を備えている。容器11は、内部に、挿入口13と連続する収容部14を備えている。容器11は、挿入口13に近い位置に、嵌合部15及びフランジ16を備えている。フランジ16は、外周面から外方に周状に突出している。嵌合部15は、挿入口13を構成する先端からフランジ16までの間に構成されている筒部である。嵌合部15は、外周面を螺旋状に周回するねじ用突部16aが設けられている。また、フランジ16の下側近傍からは、外周面に、上下方向に延びる容器凹凸部17を備えている。
【0021】
〔蓋部材〕
蓋部材21は、基体部22と、軸部23と、採取部24と、把持部25と、を備えている。基体部22は、嵌合部15に嵌合可能な凹形状を有している。基体部22は、上壁22aと、周壁22bと、を備えている。上壁22aは、外面に把持部25が設けられ、内面の中央部に軸部23が接続されている。周壁22bは、上壁22aの外周に立設された筒状形状を備えている。周壁22bの内周面は、ねじ用突部16aに係合する螺旋状に周回するねじ用凹溝21aを備えている(図3参照)。周壁22bの外周面は、上下方向に延びる蓋凹凸部26を備えている。基体部22、軸部23及び把持部25は、容器11と同様な合成樹脂で一体に成形された成形部品である。
【0022】
上壁22aの内面には、軸部23が立設されている。軸部23は、挿入口13に挿入可能な太さの大径軸部23aと、大径軸部23aよりも細い小径軸部23bと、を備えている。大径軸部23aは、内面の中央部に軸部23の基端が接続されている。小径軸部23bは、軸部23の先端部を構成する部分であって、大径軸部23aの先端より延びている。大径軸部23aと小径軸部23bとの境界には段差が構成されている。小径軸部23bには、採取部24が設けられている。すなわち、大径軸部23aの先端部に採取部24が配置される。
【0023】
採取部24は、基体部22、軸部23及び把持部25とは異なる合成樹脂が用いられている。採取部24は、生体適合性のエラストマーで構成されている。採取部24は、生体試料が付着可能な弾性を有している。生体適合性のエラストマーとしては、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等を挙げることができる。基体部22、軸部23及び把持部25と採取部24とは、例えば二色成形により設けられている。
【0024】
採取部24は、被覆部24aと、弾性変位部24bと、を備えている。被覆部24aは、小径軸部23bを被覆している部分であって、かつ小径軸部23bに対して一体的である。弾性変位部24bは、採取部24の中でも先端側に位置している。弾性変位部24bの位置までは、小径軸部23bは延びていない。弾性変位部24bは、生体の表面に接触したときに、その押圧力に従って弾性変位する。採取部24の直径は、大径軸部23aと同じ直径である。したがって、軸部23及び採取部24は、同じ直径の直線形状の軸部となる。採取部24の先端面は、円弧面で構成されており、生体の表面との当たりを和らげている。採取部24は、全体として生体試料が付着可能な弾性を有しつつ、弾性変位部24bにおいて、生体の表面に接触したとき、その押圧力で弾性変位する。
【0025】
把持部25は、上壁22aに対して軸部23とは反対方向に延びる、上壁22aの外面に立設された矩形片である。把持部25は、蓋部材21を回転する際の操作用のつまみである。蓋部材21は、利用者が把持部を摘まんで、一方向に回転することで、容器11から取り外すことができ、また、他方に回転することで、閉塞する方向に締め付けることができる。
【0026】
〔使用方法(作用)〕
以上のように構成された試料採取器具1は、容器11から蓋部材21を取り外す。そして、利用者は、把持部25を把持して、採取部24を生体の表面を摺動させる。例えば、利用者は、採取部24を生体の口腔内に挿入し摺動させる。また、利用者は、採取部24を生体の皮膚表面に押し当てて摺動させる。採取部24は、先端側の弾性変位部24bが折れ曲がるように弾性変位することで、生体の表面に対する接触圧を和らげながら生体の表面を摺動する。これにより、採取部24には、生体の表面に過度の負担をかけることなく、広範にわたって細菌が付着される。この後、蓋部材21は、採取部24を挿入端として、挿入口13から収容部14に収容される。そして、蓋部材21は、嵌合部15に締め付けられる。これにより、容器11は、蓋部材21によって密閉される。試料採取器具1は、容器11が蓋部材21で密閉された状態で、生体試料と溶剤とが混合される。
【0027】
一例として、試料採取器具1は、遠心分離機等の理化学装置に装着される。例えば、試料採取器具1は、遠心分離機の場合、円周上において、容器11の底部12が外周になり、把持部25が内周になるように配置される。なお、試料採取器具1の理化学装置への配置は、理化学装置の仕様に合わせて行われる。試料採取器具1は、理化学装置にそのまま装着することができ、試料採取から理化学装置に装着するまでの間に生体試料を試験管等の容器に移し替える作業等を不要にできる。例えば、試料採取器具1は、蓋部材21の蓋凹凸部26の部分や容器11の容器凹凸部17の部分で理化学装置の装着部に支持される。
【0028】
〔採取部の具体的構成〕
一例として、採取部24は、その直径φ1が4.5mmであり、先端から基端までの長さL1が20mmである。採取部24の表面積は、250mm以上であることが好ましい。このような表面積を有することで、検査に必要な生体試料を採取部24に付着させることができる。
【0029】
また、図4に示すように、採取部24で使用する生体適合性のエラストマーとして、次のような樹脂について、静摩擦係数と動摩擦係数と変位量を計測した。
樹脂1:スチレン系エラストマーの一例としてのスチレン50(デュロメータ硬さ50)
樹脂2:スチレン系エラストマーの一例としてのスチレン30(デュロメータ硬さ30)
樹脂3:ポリプロピレン(比較例)
樹脂4:オレフィン系エラストマーの一例としてのオレフィン50(デュロメータ硬さ50)
樹脂5:ポリエステル系エラストマーの一例としてのポリエステル50(デュロメータ硬さ50)
使用機器:摩擦摩耗試験機(トライボギアHHS-2000新東科学株式会社)
相手材:φ10mmの金属ボール
試験片:樹脂1~樹脂5の試験片(板材(板厚:2.0mm))
試験条件:一定荷重(1,000gf)
摺動距離:30mm
摺動速度:20mm/sec
摩擦係数の計測にあたっては、相手材の上に試験片を載置し、1,000gfの荷重を加えるためのおもりを載置した。そして、試験片を摺動速度20mm/secで30mm摺動させたときの静摩擦係数と動摩擦係数を測定した。また、変位量は、各樹脂1~5を台座に固定し、φ10mmの金属ボールを上記条件で押し付けた際の金属ボールの変位量である。
【0030】
エラストマーである樹脂1,2,4,5は、硬質樹脂である樹脂3よりも静摩擦係数、動摩擦係数の何れも高く、生体の表面に対しての摩擦も樹脂3よりも大きくなる。これにより、樹脂1,2,4,5により構成された採取部24は、生体の表面に対して、過度の負荷を加えることなく、摺動させることができる。そして、採取部24は、細菌等の生体試料を付着し易くできる。なお、このような作用効果を得るため、採取部24は、静摩擦係数が0.5以上であることが好ましい。また、動摩擦係数が0.5以上であることが好ましい。
【0031】
また、図5は、以上のような試料採取器具1を用いて、猫(一匹)の口腔内細菌叢より採取した口腔内細菌とその量とに基づく主成分分析の結果を示す。ここでは、試料採取器具1の採取部24に、樹脂1~5(図4参照)を使用した。また、スワブを使用して口腔内細菌を採取した。図5において、軸PC1~3は、主成分軸であり、1~3は、寄与度の高い順である。口腔内細菌叢では、採取部24を樹脂1~樹脂5の何れで構成しても、スワブと同様に細菌を採取することができる。特に、樹脂1,2は、スワブと類似特性を有することを確認できる。
【0032】
図6は、図5で使用した猫における猫皮膚常在菌とその量とに基づく主成分分析の結果を示す。ここでは、試料採取器具1の採取部24に、樹脂2~5(図4参照)を使用した。また、スワブを使用して口腔内細菌を採取した。図6において、軸PC1~3は、主成分軸であり、1~3は、寄与度の高い順である。皮膚常在菌叢では、樹脂2,4,5について、常在細菌を採取することができたが、樹脂3では常在細菌を採取することができなかった。また、樹脂2,4,5は、スワブと類似特性を有することを確認できる。
【0033】
図5及び図6によれば、少なくとも樹脂2,4,5で構成した採取部24は、猫の口腔内細菌であっても皮膚常在細菌であっても細菌を採取できることを確認できる。また、採取部24を樹脂3(ポリプロピレン)で構成したときには、口腔内細菌は採取できるが、皮膚常在細菌の採取は困難であることが確認できる。更に、樹脂2は、口腔内細菌であっても皮膚常在細菌であっても、スワブと同じように細菌を採取できることを確認できる。
【0034】
〔実施形態の効果〕
以上のような試料採取器具1は、以下のように列挙する効果を得ることができる。
(1)採取部24は、生体適合性のエラストマーで構成されている。したがって、採取部24は、スワブと同様に、生体表面を摺動させることで、生体表面の細菌を採取することができる。そして、試料採取器具1は、細菌を採取してから容器11に蓋部材21を締め付けた状態で、そのまま理化学装置に装着することができる。したがって、検査工程全体の簡素化や迅速化を実現することができる。
【0035】
(2)採取部24は、エラストマーで構成されているが、小径軸部23bに対して二色成形によって一体的に取り付けることができる。
(3)蓋部材21において、大径軸部23aと採取部24とは同一直径である。したがって、容器11に対する挿抜を円滑に行うことができる。すなわち、挿入口13を通じて軸部23及び採取部24を挿抜する際に、軸部23と採取部24との間に段差等が無いことで、挿入口13の縁に引っかかることを防ぐことができる。また、段差が生体の表面に対しても引っかかることを防ぐことができる。
【0036】
(4)エラストマーで構成されている採取部24は、先端側の弾性変位部24bが弾性変位することで、生体の表面に対する接触圧を和らげながら生体の表面を摺動する。これにより、採取部24には、生体の表面に過度の負担をかけることなく、採取部24の広い範囲で細菌を採取できる。
【0037】
(5)採取部24には、生体適合性のエラストマーとして、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、又はポリエステル系エラストマー等の汎用性の高い樹脂材料を使用することができる。
【0038】
(6)採取部24は、静摩擦係数を0.5以上とすることで、摺動開始時において、生体の表面に対して、過度の負荷を加えることなく、摺動させることができる。また、動摩擦係数を0.5以上とすることで、摺動途中においても、生体の表面に対して、過度の負荷を加えることなく、摺動させることができる。
【0039】
(7)採取部24は、表面積を250mm以上とすることで、採取部24の広範囲に亘って細菌を付着させることができる。すなわち、採取部24は、検査に必要な細菌を十分に採取できる。
【0040】
(8)試料採取器具1の使用の前後を問わず、採取部24を備える蓋部材21は、汎用性の高い容器11と一体的に取り扱うことができる。したがって、試料採取器具1において、出荷時から細菌の抽出工程に至るまでの利便性を向上することができる。
【0041】
(9)蓋部材21は、把持部25を備えることで、容器11に対する着脱作業を容易に行うことができる。また、細菌採取時においても、把持部25を摘まむことで、採取部24を生体の表面に対して容易に摺動させることができる。
【0042】
(10)採取部24は、口腔内細菌、皮膚常在菌等を採取することができる。
(11)容器11は、容器凹凸部17を備えているので、蓋部材21の開閉時に指等が容器11に対して滑りにくくなる。また、容器11は、理化学装置に装着されたときにも、装着部に対して滑りにくくなる。蓋部材21も、蓋凹凸部26を備えているので、蓋部材21の開閉時に指等が滑りにくくなる。また、蓋部材21は、理化学装置に装着されたときにも、装着部に対して滑りにくくなる。
【0043】
〔変形例〕
なお、試料採取器具1は、更に、以下のように適宜変更して実施することもできる。試料採取器具1は、上記実施の形態以外に、例えば以下に示される変形例、及び相互に矛盾しない少なくとも二つの変形例を組み合わせた形態としてもよい。
【0044】
・試料採取器具1は、生体としては、猫以外に、犬等の哺乳類に使用してもよいし、ヒトに使用してもよい。また、試料採取器具1は、口腔内細菌の採取の他に、膣内細菌の採取であってもよい。更に、鼻腔内細菌等の採取に使用してもよい。更に、細菌以外のウイルス、真菌、原虫等の採取に使用してもよい。
【0045】
・蓋部材21において、把持部25を省略する構成としてもよい。また、使用前は、容器と11と蓋部材21とを別々に取り扱い、蓋部材21で細菌を採取した後に、蓋部材21を容器11に締め付けるようにしてもよい。
【0046】
・採取部24の表面積は、250mm未満であってもよい。
・採取部24における動摩擦係数は0.5未満であってもよい。また、採取部24における静摩擦係数も0.5未満であってもよい。
【0047】
・生体適合性のエラストマーとしては、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、又はポリエステル系エラストマー以外に、シリコーンゴム、フッ素ゴム等であってもよい。また、加硫ゴム等であってもよい。
【0048】
・採取部24は、小径軸部23bの部分に二色成形によって設けられるものでなくてもよい。例えば、採取部は、軸部23の先端に取付溝を設けて、取付溝に採取部24を係合させて取り付けるように構成してもよい。小径軸部23bの表面は、凹凸を設けて、採取部24が小径軸部23bから抜けにくく構成してもよい。
【0049】
・軸部23は、上述のように、上壁22aの内面に成形によって一連に構成されていてもよいし、上壁22aと別部材として構成し、接着剤、溶着、係合等の手段で固定してもよい。
【0050】
・試料採取器具1としては、容器11を省略してもよい。また、容器11の蓋部材21としての機能を備えていなくてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…試料採取器具
11…容器
12…底部
13…挿入口
14…収容部
15…嵌合部
16…フランジ
16a…ねじ用突部
17…容器凹凸部
21…蓋部材
21a…ねじ用凹溝
22…基体部
22a…上壁
22b…周壁
23…軸部
23a…大径軸部
23b…小径軸部
24…採取部
24a…被覆部
24b…弾性変位部
25…把持部
26…蓋凹凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6