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特開2024-162725成形用積層樹脂シートおよびそれを用いた成形品
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  • 特開-成形用積層樹脂シートおよびそれを用いた成形品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162725
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】成形用積層樹脂シートおよびそれを用いた成形品
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20241114BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B32B27/36 102
B32B27/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078572
(22)【出願日】2023-05-11
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】597003516
【氏名又は名称】MGCフィルシート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(72)【発明者】
【氏名】高崎 雅登
(72)【発明者】
【氏名】川邊 聖人
(72)【発明者】
【氏名】平林 正樹
(72)【発明者】
【氏名】福永 泰隆
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK25A
4F100AK25C
4F100AK45B
4F100AK51C
4F100AT00
4F100BA03
4F100CA02C
4F100CA02H
4F100CA13C
4F100CA13H
4F100CA18C
4F100CA18H
4F100CC022
4F100CC02C
4F100EH462
4F100EH46C
4F100EJ542
4F100EJ54C
4F100GB48
4F100GB81
4F100JB14C
4F100JK12
4F100JK16
(57)【要約】
【課題】高硬度と耐擦傷性がありながら、密着性に優れ、易成形性を有する成形用積層樹脂シートを提供すること。
【解決手段】 上記課題は、高硬度樹脂を含む高硬度樹脂層と、前記高硬度樹脂層の一方の面側に配置されたポリカーボネート樹脂(a1)を含む基材層と、前記高硬度樹脂層のもう一方の面側に配置されたハードコート層と、を含む成形用積層樹脂シートであって、前記ハードコート層のマルテンス硬度が100~250(N/mm)、弾性変形割合が40~64%であり、前記ハードコート層は、(A)2~15官能の(メタ)アクリレートオリゴマー、(B)分子量200未満でかつ、25℃での粘度が15cps以下の1~2官能(メタ)アクリレートモノマー、(C)光重合開始剤、(D)表面改質剤、及び(E)色相改善剤を含むハードコーティング組成物からなり、前記(E)色相改善剤の含有量が、前記(A)成分及び前記(B)成分の合計100質量部に対して、0.002~0.020質量部である、前記成形用積層樹脂シートによって解決することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高硬度樹脂を含む高硬度樹脂層と、
前記高硬度樹脂層の一方の面側に配置されたポリカーボネート樹脂(a1)を含む基材層と、
前記高硬度樹脂層のもう一方の面側に配置されたハードコート層と、を含む成形用積層樹脂シートであって、
前記ハードコート層のマルテンス硬度が100~250(N/mm)、弾性変形割合が40~64%であり、
前記ハードコート層は、
(A)2~15官能の(メタ)アクリレートオリゴマー、
(B)分子量200未満でかつ、25℃での粘度が15cps以下の1~2官能(メタ)アクリレートモノマー、
(C)光重合開始剤、
(D)表面改質剤、及び
(E)色相改善剤
を含むハードコーティング組成物からなり、
前記(E)色相改善剤の含有量が、前記(A)成分及び前記(B)成分の合計100質量部に対して、0.002~0.020質量部である、前記成形用積層樹脂シート。
【請求項2】
JIS-K-7373に準拠して測定されたL*及びYIの値が、それぞれ、L*≧90、0≦YI≦1である、請求項1に記載の成形用積層樹脂シート。
【請求項3】
JIS-K-7373に準拠して測定されたa*及びb*の値が、それぞれ、-0.4≦a*≦0.1、-1≦b*≦0.5である、請求項1または2に記載の成形用積層樹脂シート。
【請求項4】
前記ポリカーボネート樹脂(a1)が、芳香族ポリカーボネート樹脂である、請求項1~3のいずれかに記載の成形用積層樹脂シート。
【請求項5】
前記芳香族ポリカーボネート樹脂が、下記式(3a):
【化1】
で表される構成単位を含む、請求項4に記載の成形用積層樹脂シート。
【請求項6】
前記ポリカーボネート樹脂(a1)の含有量が、前記基材層の全質量に対して75~100質量%である、請求項1~5のいずれかに記載の成形用積層樹脂シート。
【請求項7】
前記高硬度樹脂の含有量が、前記高硬度樹脂層の全質量に対して70~100質量%である、請求項1~6のいずれかに記載の成形用積層樹脂シート。
【請求項8】
前記基材層と前記高硬度樹脂層の合計厚みが0.5~3.5mmである、請求項1~7のいずれかに記載の成形用積層樹脂シート。
【請求項9】
前記基材層と前記高硬度樹脂層の合計厚みに占める前記基材層の厚みの割合が、75%~99%である、請求項1~8のいずれかに記載の成形用積層樹脂シート。
【請求項10】
前記ハードコート層の表面の鉛筆硬度が、2H以上である、請求項1~9のいずれかに記載の成形用積層樹脂シート。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の成形用積層樹脂シートを用いて成形された成形品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形用積層樹脂シートおよびそれを用いた成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
計器カバーなどの自動車内装品や家電、OA機器、パーソナルコンピュータ、小型携帯機器の筐体や、携帯電話端末等のタッチパネル型表示面等に樹脂成形体が用いられている。このような用途に使用される樹脂成形体は、成形用樹脂シートを成形して製造される。
【0003】
上述の用途に適する樹脂として、ポリカーボネート(PC)樹脂が注目されている。PC樹脂は、透明性、軽量性、耐衝撃性に優れるエンジニアリングプラスチック(エンプラ)として知られており、上述の用途に好適に適用されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ポリカーボネート樹脂の少なくとも一方の面に、ハードコート層が積層されてなることを特徴とする熱曲げ用ハードコート層付ポリカーボネート樹脂積層体に係る発明が記載されている。なお、特許文献1に記載の発明は、耐摩耗性、熱曲げ性、及び、熱曲げ後の密着性に優れた湾曲部材の製造方法が提供されている。
【0005】
しかし、特許文献1のようにポリカーボネート樹脂成形品は最表面の鉛筆硬度が十分でないため、硬い部材との接触によって傷が生じやすいことから、高い表面硬度が求められる小型携帯機器の筐体や、携帯電話端末等のタッチパネル型表示面等には適応できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2021/070632
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、高硬度と耐擦傷性がありながら、密着性に優れ、易成形性を有する成形用積層樹脂シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下の本発明により上記課題を解決することができることを見出した。即ち、本発明は以下通りである。
<1> 高硬度樹脂を含む高硬度樹脂層と、
前記高硬度樹脂層の一方の面側に配置されたポリカーボネート樹脂(a1)を含む基材層と、
前記高硬度樹脂層のもう一方の面側に配置されたハードコート層と、を含む成形用積層樹脂シートであって、
前記ハードコート層のマルテンス硬度が100~250(N/mm)、弾性変形割合が40~64%であり、
前記ハードコート層は、
(A)2~15官能の(メタ)アクリレートオリゴマー、
(B)分子量200未満でかつ、25℃での粘度が15cps以下の1~2官能(メタ)アクリレートモノマー、
(C)光重合開始剤、
(D)表面改質剤、及び
(E)色相改善剤
を含むハードコーティング組成物からなり、
前記(E)色相改善剤の含有量が、前記(A)成分及び前記(B)成分の合計100質量部に対して、0.002~0.020質量部である、前記成形用積層樹脂シートである。
<2> JIS-K-7373に準拠して測定されたL*及びYIの値が、それぞれ、L*≧90、0≦YI≦1である、上記<1>に記載の成形用積層樹脂シートである。
<3> JIS-K-7373に準拠して測定されたa*及びb*の値が、それぞれ、-0.4≦a*≦0.1、-1≦b*≦0.5である、上記<1>または<2>に記載の成形用積層樹脂シートである。
<4> 前記ポリカーボネート樹脂(a1)が、芳香族ポリカーボネート樹脂である、上記<1>~<3>のいずれかに記載の成形用積層樹脂シートである。
<5> 前記芳香族ポリカーボネート樹脂が、下記式(3a):
【化1】
で表される構成単位を含む、上記<4>に記載の成形用積層樹脂シートである。
<6> 前記ポリカーボネート樹脂(a1)の含有量が、前記基材層の全質量に対して75~100質量%である、上記<1>~<5>のいずれかに記載の成形用積層樹脂シートである。
<7> 前記高硬度樹脂の含有量が、前記高硬度樹脂層の全質量に対して70~100質量%である、上記<1>~<6>のいずれかに記載の成形用積層樹脂シートである。
<8> 前記基材層と前記高硬度樹脂層の合計厚みが0.5~3.5mmである、上記<1>~<7>のいずれかに記載の成形用積層樹脂シートである。
<9> 前記基材層と前記高硬度樹脂層の合計厚みに占める前記基材層の厚みの割合が、75%~99%である、上記<1>~<8>のいずれかに記載の成形用積層樹脂シートである。
<10> 前記ハードコート層の表面の鉛筆硬度が、2H以上である、上記<1>~<9>のいずれかに記載の成形用積層樹脂シートである。
<11> 上記<1>~<10>のいずれかに記載の成形用積層樹脂シートを用いて成形された成形品である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高硬度と耐擦傷性を有し、成形時に外観異常が生じにくく密着性に優れた成形用積層樹脂シートおよびそれを用いた樹脂成形品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例において成形用積層樹脂シートを熱プレス成形する際に使用したアルミ製熱プレス用金型の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について製造例や実施例等を例示して詳細に説明するが、本発明は例示される製造例や実施例等に限定されるものではなく、本発明の内容を大きく逸脱しない範囲であれば任意の方法に変更して行うこともできる。
【0012】
本発明の成形用積層樹脂シート(以下、単に「樹脂シート」とも称する)は、高硬度樹脂を含む高硬度樹脂層と、前記高硬度樹脂層の一方の面側に配置されたポリカーボネート樹脂(a1)を含む基材層と、前記高硬度樹脂層のもう一方の面側に配置されたハードコート層と、を含む。すなわち、基材層と、高硬度樹脂層と、ハードコート層とがこの順に配置される。基材層と高硬度樹脂層の間、高硬度樹脂層とハードコート層の間には、それぞれさらなる層が存在していてもよい。さらなる層としては、特に限定されるものではないが、接着剤層、プライマー層等が挙げられる。さらなる層は存在していなくてもよい。一実施形態によれば、基材層と、高硬度樹脂層と、ハードコート層とが互いに積層されている。すなわち、一実施形態によれば、成形用積層樹脂シートは、高硬度樹脂を含む高硬度樹脂層と、前記高硬度樹脂層の一方の面に積層されたポリカーボネート樹脂(a1)を含む基材層と、前記高硬度樹脂層のもう一方の面に積層されたハードコート層と、を有する。
【0013】
高硬度樹脂層およびハードコート層は、基材層の少なくとも一方の面側に設ければよく、他方の側の構成に特に制限はない。また、高硬度樹脂層を基材層の両側に設けてもよく、その場合、一方または両方の高硬度樹脂層上にハードコート層を設けることができる。高硬度樹脂層を基材層の両側に設ける場合には、2つの高硬度樹脂層で同じ高硬度樹脂を使用することが、反りの少ない安定した樹脂シートを得るために望ましい。
【0014】
本発明において、ハードコート層の弾性変形割合は、40~64%であり、好ましくは45~60%であり、より好ましくは48~57%である。これにより、十分な硬度を保ちつつ成形時にクラックの外観異常の発生を防止することができる。本発明において、ハードコート層の弾性変形割合は、Fischer製 HM2000 LTを使用して測定した値であり、具体的には後述する実施例に記載された方法で測定した値である。
【0015】
本発明において、ハードコート層のマルテンス硬度は、100~250N/mmであり、好ましくは120~220N/mmであり、より好ましくは140~200N/mmである。これにより、十分な硬度を保ちつつ成形時にクラックの外観異常の発生を防止することができる。本発明において、ハードコート層のマルテンス硬度は、Fischer製 HM2000 LTを使用して測定した値であり、具体的には後述する実施例に記載された方法で測定した値である。
【0016】
上述の成形用積層樹脂シートは、硬度が要求される曲げ形状を有する成形品の製造に好適に使用することができる。例えば、平面部と連続した曲げ部を有する構成部品を首尾よく製造することができるため、新規なデザインや機能を有する製品を提供することもできる。
【0017】
従来の樹脂シートでは、上記のような形状を有する成形品を製造しようとした場合、熱プレス成形、真空成形、圧空成形、TOM成形などの熱成形時にクラックが生じるなどの不具合が多く発生していた。そこで、熱成形時のクラック発生を抑制するために、ハードコートの硬さを低下させるなどの工夫をする必要があった。しかしながら、ハードコートの硬さを低下させた場合、熱成形性は向上するものの、ハードコートが軟らかいため傷が付きやすい、耐薬品性が低下するという新たな問題が生じていた。
【0018】
それに対して本発明によれば、上述したようにクラックの発生が抑制されるため、ハードコートの硬さを低下させることなく、熱形成可能な樹脂シートを提供することができる。本発明の成形用積層樹脂シートは、硬いハードコート層が表層に設けられているため、傷が付きにくく、耐薬品性も高い。このような特性を利用して、本発明の成形用積層樹脂シートは、パソコン、携帯電話などの表示面の構成部品、自動車外装用および内装用部材、携帯電話端末、パソコン、タブレット型PC、カーナビなどにおける曲面を有する筐体や前面板などに使用することが可能である。
【0019】
以下、本発明による樹脂シートの各構成部材について説明する。
<基材層>
基材層は、ポリカーボネート樹脂(a1)を含む。基材層は、他の樹脂、添加剤等をさらに含んでいてもよい。
【0020】
(ポリカーボネート樹脂(a1))
ポリカーボネート樹脂(a1)としては、分子主鎖中に炭酸エステル結合、即ち、-[O-R-OCO]-単位(ここで、Rは、脂肪族基、芳香族基、または脂肪族基と芳香族基の双方を含んでいてもよく、直鎖構造であっても分岐構造であってもよい)を含むものであれば特に限定されるものではないが、芳香族ポリカーボネート樹脂であることが好ましく、特に下記式(3a)の構成単位を含むポリカーボネート樹脂を使用することが好ましい。
【0021】
【化2】
【0022】
具体的には、ポリカーボネート樹脂(a1)として、芳香族ポリカーボネート樹脂(例えば、ユーピロンS-2000、ユーピロンS-1000、ユーピロンE-2000;三菱エンジニアリングプラスチックス社製)等が使用可能である。
このようなポリカーボネート樹脂を使用することで、耐衝撃性により優れた樹脂シートを得ることができる。
【0023】
近年、ポリカーボネート樹脂のガラス転移点を制御する目的で、下記一般式(3)で表されるような1価フェノールを末端停止剤として付加したポリカーボネート樹脂も使用されている。本発明においても、このように末端停止剤を付加したポリカーボネート樹脂を使用することができる。
【0024】
【化3】
【0025】
式中、Rは、炭素数8~36のアルキル基、または炭素数8~36のアルケニル基を表し;Rはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、または炭素数6~12のアリール基を表し;nは0~4の整数であり;ここで、前記置換基は、ハロゲン、炭素数1~20のアルキル基、または炭素数6~12のアリール基である。なお、本明細書において、「アルキル基」および「アルケニル基」は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、置換基を有していてもよい。
【0026】
一般式(3)で表される1価フェノールは、下記一般式(4)で表されるものであることが好ましい。
【0027】
【化4】
【0028】
式中、Rは、炭素数8~36のアルキル基または炭素数8~36のアルケニル基を表す。
【0029】
一般式(3)または一般式(4)におけるRの炭素数は、特定の数値範囲内であることがより好ましい。具体的には、Rの炭素数の上限値として36が好ましく、22がより好ましく、18が特に好ましい。また、Rの炭素数の下限値として、8が好ましく、12がより好ましい。
【0030】
一般式(3)または一般式(4)におけるRの炭素数の上限値が適当であると、1価フェノール(末端停止剤)の有機溶剤溶解性が高くなる傾向があり、ポリカーボネート樹脂製造時の生産性が高くなることから好ましい。
【0031】
一例として、Rの炭素数が36以下であれば、ポリカーボネート樹脂を製造するにあたって生産性が高く、経済性も良い。Rの炭素数が22以下であれば、1価フェノールは、特に有機溶剤溶解性に優れており、ポリカーボネート樹脂を製造するにあたって生産性を非常に高くすることができ、経済性も向上する。このような1価フェノールを使用したポリカーボネート樹脂としては、例えば、ユピゼータT-1380(三菱ガス化学製)等が挙げられる。
【0032】
一般式(3)または一般式(4)におけるRの炭素数の下限値が適当であると、ポリカーボネート樹脂のガラス転移点が高すぎるということにならず、好適な熱成形性を有することから好ましい。
【0033】
例えば、一般式(4)においてRが炭素数16のアルキル基である1価フェノールを末端停止剤として使用した場合、ガラス転移温度、溶融流動性、成形性、耐ドローダウン性等に優れたポリカーボネート樹脂を得ることができ、また、ポリカーボネート樹脂製造時の1価フェノールの溶剤溶解性にも優れるため、特に好ましい。
【0034】
一般式(3)または一般式(4)で示される1価フェノールの中でも、パラヒドロキシ安息香酸ヘキサデシルエステル、パラヒドロキシ安息香酸2-ヘキシルデシルエステルのいずれかもしくは両方を末端停止剤として使用することが特に好ましい。
【0035】
ポリカーボネート樹脂(a1)の重量平均分子量は、15,000~75,000であることが好ましく、20,000~70,000であることがより好ましく、20,000~65,000であることがさらに好ましい。ポリカーボネート樹脂(a1)の重量平均分子量が15,000以上であると、耐衝撃性が高くなりうることから好ましい。一方、重量平均分子量が75,000以下であると、基材層を少ない熱源で形成できる、成形条件が高温になった場合でも熱安定性が維持できることから好ましい。なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0036】
ポリカーボネート樹脂(a1)のTgは90~190℃であることが好ましく、100~170℃であることがより好ましく、110~150℃であることがさらに好ましい。なお、ポリカーボネート樹脂(a1)のTgは、ポリカーボネート樹脂(a1)の構成単位の種類および組合せ、重量平均分子量等を適宜調整することで制御することができる。また、本明細書において、ガラス転移点とは、示差走査熱量測定装置を用いて、試料10mg、昇温速度10℃/分で測定し、中点法で算出した温度である。
【0037】
基材層に含まれるポリカーボネート樹脂(a1)は、1種類であっても2種類以上であってもよい。
【0038】
基材層中のポリカーボネート樹脂(a1)の含有量は、基材層の全質量に対して、75~100質量%であることが好ましく、90~100質量%であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。ポリカーボネート樹脂の含有量が75質量%以上であると、耐衝撃性がより向上しうることから好ましい。
【0039】
(他の樹脂)
基材層中に含まれてもよい他の樹脂としては、特に制限されないが、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分として主にテレフタル酸を含んでいることが好ましく、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分を含んでいてもよい。
【0040】
例えば、主成分であるエチレングリコール80~60モル%に対して1,4-シクロヘキサンジメタノールを20~40モル%(合計100モル%)含むグリコール成分が重縮合してなるポリエステル樹脂(所謂「PETG」)が好ましい。
なお、他の樹脂は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
他の樹脂を含む場合の含有量は、基材層の全質量に対して、0~25質量%であることが好ましく、0~10質量%であることがより好ましく、0質量%であることが特に好ましい。
【0042】
(添加剤)
基材層中に含まれてもよい添加剤としては、樹脂シートにおいて通常使用されるものを使用することができる。具体的には、抗酸化剤、抗着色剤、抗帯電剤、離型剤、滑剤、染料、顔料、可塑剤、難燃剤、樹脂改質剤、相溶化剤、有機フィラーや無機フィラーのような強化材などが挙げられる。これらの添加剤は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
添加剤の量は、基材層の全質量に対して、0~10質量%であることが好ましく、0~7質量%であることがより好ましく、0~5質量%であることが特に好ましい。
【0044】
添加剤と樹脂を混合する方法は特に限定されず、全量コンパウンドする方法、マスターバッチをドライブレンドする方法、全量ドライブレンドする方法などを用いることができる。
【0045】
(基材層)
基材層の厚みは、0.3~3.5mmであることが好ましく、0.3~3.0mmであることがより好ましく、1.0~3.0mmであることがさらに好ましい。
【0046】
<高硬度樹脂層>
高硬度樹脂層は、高硬度樹脂を含む。その他、必要に応じて他の樹脂、添加剤等がさらに含まれていてもよい。なお、本明細書において、高硬度樹脂とは、基材となるポリカーボネート樹脂よりも硬度の高い樹脂であり、鉛筆硬度がHB以上、好ましくはHB~3H、より好ましくはH~3H、さらに好ましくは2H~3Hの樹脂を意味する。なお、高硬度樹脂層の鉛筆硬度は、JIS K 5600-5-4:1999に準拠した鉛筆ひっかき硬度試験にて評価した結果である。具体的には、高硬度樹脂層の表面に対して角度45度、荷重750gで次第に硬度を増して鉛筆を押し付け、きず跡を生じなかった最も硬い鉛筆の硬度を鉛筆硬度として評価した。
【0047】
[高硬度樹脂]
高硬度樹脂としては、特に制限されないが、樹脂(B1)~(B6)からなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0048】
(樹脂(B1))
樹脂(B1)は、一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と、一般式(2)で表される脂肪族ビニル構成単位(b)とを含む共重合体である。この際、前記樹脂(B1)は、他の構成単位をさらに有していてもよい。なお、本明細書において、(メタ)アクリルとは、メタクリルおよび/またはアクリルを示す。
【0049】
【化5】
【0050】
式中、Rは水素原子またはメチル基であり、好ましくはメチル基である。
また、Rは炭素数1~18のアルキル基であり、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~6のアルキル基であることがより好ましい。具体的にはメチル基、エチル基、ブチル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基、イソボルニル基などが挙げられる。これらのうち、Rは、メチル基、エチル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0051】
なお、Rがメチル基またはエチル基である場合、一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)は(メタ)アクリル酸エステル構成単位となり、Rがメチル基かつRがメチル基である場合、一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)はメタクリル酸メチル構成単位となる。
【0052】
一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)は、樹脂(B1)中に1種のみが含まれていても、2種以上が含まれていてもよい。
【0053】
【化6】
【0054】
式中、Rは水素原子またはメチル基であり、水素原子であることが好ましい。
は炭素数1~4の炭化水素基で置換されていてもよいシクロヘキシル基であり、置換基を有さないシクロヘキシル基であることが好ましい。
【0055】
が水素原子であり、Rがシクロヘキシル基である場合、一般式(2)で表される脂肪族ビニル構成単位(b)はビニルシクロヘキサン構成単位となる。
【0056】
一般式(2)で表される脂肪族ビニル構成単位(b)は、樹脂(B1)中に1種のみが含まれていても、2種以上が含まれていてもよい。
【0057】
本明細書中において、「炭化水素基」は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、置換基を有していてもよい。
【0058】
前記他の構成単位としては、特に制限されないが、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと芳香族ビニルモノマーとを重合した後に該芳香族ビニルモノマー由来の芳香族二重結合を水素化して樹脂(B1)を製造する過程において生じる、水素化されていない芳香族二重結合を含む芳香族ビニルモノマー由来の構成単位などが挙げられる。具体的な他の構成単位としては、スチレン構成単位が挙げられる。
他の構成単位は、樹脂(B1)中に1種のみが含まれていても、2種以上が含まれていてもよい。
【0059】
(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と脂肪族ビニル構成単位(b)との合計含有量は、樹脂(B1)の全構成単位に対して、好ましくは90~100モル%であり、より好ましくは95~100モル%であり、特に好ましくは98~100モル%である。
【0060】
一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)の含有量は、樹脂(B1)の全構成単位に対して、好ましくは65~80モル%であり、より好ましくは70~80モル%である。前記(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)の割合が65モル%以上であると、基材層との密着性や表面硬度に優れた樹脂層を得ることができることから好ましい。一方、前記(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)の割合が80モル%以下であると、樹脂シートの吸水による反りが発生しづらいことから好ましい。
【0061】
また、一般式(2)で表される脂肪族ビニル構成単位(b)の含有量は、樹脂(B1)の全構成単位に対して、好ましくは20~35モル%であり、より好ましくは20~30モル%である。脂肪族ビニル構成単位(b)の含有量が20モル%以上であると、高温高湿下でのそりを防ぐことができることから好ましい。一方、脂肪族ビニル構成単位(b)の含有量が35モル%以下であると、基材層との界面での剥離を防ぐことができることから好ましい。
【0062】
さらに、他の構成単位の含有量は、樹脂(B1)の全構成単位に対して、10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましく、2モル%以下であることが特に好ましい。
【0063】
なお、本明細書において、「共重合体」は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、および交互共重合体のいずれの構造であってもよい。
【0064】
樹脂(B1)の重量平均分子量は、特に制限はないが、強度および成型性の観点から、50,000~400,000であることが好ましく、70,000~300,000であることがより好ましい。
【0065】
樹脂(B1)のガラス転移点は、110~140℃であることが好ましく、110~135℃であることがより好ましく、110~130℃であることが特に好ましい。ガラス転移点が110℃以上であると、樹脂シートが熱環境あるいは湿熱環境において変形や割れを生じることが少ないことから好ましい。一方、140℃以下であると、鏡面ロールや賦形ロールによる連続式熱賦形、あるいは鏡面金型や賦形金型によるバッチ式熱賦形によって成形する場合に加工性に優れることから好ましい。
【0066】
具体的な樹脂(B1)としては、オプティマス7500、6000(三菱ガス化学製)が挙げられる。なお、上述した樹脂(B1)は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
高硬度樹脂として樹脂(B1)を使用する場合には、ポリカーボネート樹脂(a1)としてユピゼータT-1380(三菱ガス化学製)を使用することが好ましい。
【0068】
また、高硬度樹脂として、一般式(1)で表される構成単位(R、Rがともにメチル基;メタクリル酸メチル)を75モル%、一般式(2)で表される構成単位(Rが水素原子、Rがシクロヘキシル基;ビニルシクロヘキサン)を25モル%含む共重合体である樹脂(B1)を使用し、ポリカーボネート樹脂(a1)として式(3a)の構成単位を含むポリカーボネート樹脂を使用し、末端停止剤として一般式(4)で表される1価フェノール(Rの炭素数が8~22)を使用する態様が特に好ましい。
【0069】
樹脂(B1)の製造方法としては、特に限定されないが、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルモノマーと少なくとも1種の芳香族ビニルモノマーとを重合した後、該芳香族ビニルモノマー由来の芳香族二重結合を水素化して得られたものが好適である。
【0070】
前記芳香族ビニルモノマーとしては、特に制限されないが、スチレン、α-メチルスチレン、p-ヒドロキシスチレン、アルコキシスチレン、クロロスチレン、およびそれらの誘導体などが挙げられる。これらうち、芳香族ビニルモノマーはスチレンであることが好ましい。
【0071】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーと芳香族ビニルモノマーの重合には、公知の方法を用いることができるが、例えば、塊状重合法や溶液重合法などにより製造することができる。
塊状重合法は、上記モノマーおよび重合開始剤を含むモノマー組成物を完全混合槽に連続的に供給し、100~180℃で連続重合する方法などにより行われる。上記モノマー組成物は、必要に応じて連鎖移動剤を含んでいてもよい。
【0072】
前記重合開始剤としては、特に限定されないが、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、過酸化ベンゾイル、1,1-ジ(t-ヘキシルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、t-ヘキシルプロポキシイソプロピルモノカーボネート、t-アミルパーオキシノルマルオクトエート、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、ジ-t-ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0073】
前記連鎖移動剤としては、特に限定されないが、例えば、α-メチルスチレンダイマーが挙げられる。
【0074】
溶液重合法に用いられる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの炭化水素系溶媒;酢酸エチル、イソ酪酸メチルなどのエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒;メタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーと芳香族ビニルモノマーを重合した後の芳香族ビニルモノマー由来の芳香族二重結合を水素化する水素化反応に用いられる溶媒は、上記の重合溶媒と同じであっても異なっていてもよい。例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの炭化水素系溶媒、酢酸エチル、イソ酪酸メチルなどのエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、メタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶媒などが挙げられる。
【0076】
水素化の方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、水素圧力3~30MPa、反応温度60~250℃でバッチ式あるいは連続流通式で行うことができる。反応温度が60℃以上であると、反応時間がかかり過ぎることがないことから好ましい。一方、反応温度が250℃以下であると、分子鎖の切断やエステル部位の水素化等の副反応が起こらないまたはほとんど起こらないことから好ましい。
【0077】
水素化反応に用いられる触媒としては、例えば、ニッケル、パラジウム、白金、コバルト、ルテニウム、ロジウムなどの金属またはそれら金属の酸化物、塩もしくは錯体化合物を、カーボン、アルミナ、シリカ、シリカ・アルミナ、珪藻土などの多孔性担体に担持した固体触媒などが挙げられる。
【0078】
水素化反応により、芳香族ビニルモノマー由来の芳香族二重結合は、70%以上が水素化されることが好ましい。即ち、芳香族ビニルモノマー由来の構成単位中に含まれる芳香族二重結合の未水素化率は、30%未満であることが好ましく、10%未満であることがより好ましく、5%未満であることがさらに好ましい。未水素化率が30%未満であると、透明性に優れた樹脂を得ることができることから好ましい。なお、未水素化部分の構成単位は、樹脂(B1)における他の構成単位となりうる。
【0079】
(樹脂(B2))
樹脂(B2)は、(メタ)アクリル酸エステル構成単位を6~77質量%、スチレン構成単位を15~71質量%、および不飽和ジカルボン酸構成単位を8~23質量%含む共重合体である。この際、前記樹脂(B2)は、他の構成単位をさらに有していてもよい。
【0080】
前記樹脂(B2)における(メタ)アクリル酸エステル構成単位を構成する(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、特に制限されないが、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2エチルヘキシル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸2エチルヘキシル等が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル単量体はメタクリル酸メチルであることが好ましい。上述の(メタ)アクリル酸エステル単量体は、(メタ)アクリル酸エステル構成単位として単独で含まれていても、2種以上を組み合わせて含まれていてもよい。
【0081】
(メタ)アクリル酸エステル構成単位の含有量は、樹脂(B2)の全質量に対して、6~77質量%であり、20~70質量%であることが好ましい。
【0082】
前記樹脂(B2)におけるスチレン構成単位としては、特に限定されず、任意の公知のスチレン系単量体を用いることができる。前記スチレン系単量体としては、入手の容易性の観点から、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、t-ブチルスチレン等が挙げられる。これらのうち、相溶性の観点からスチレン系単量体はスチレンであることが好ましい。上述のスチレン系単量体は、スチレン構成単位として単独で含まれていても、2種以上を組み合わせて含まれていてもよい。
【0083】
スチレン構成単位の含有量は、樹脂(B2)の全質量に対して、15~71質量%であり、20~66質量%であることが好ましい。
【0084】
前記樹脂(B2)における不飽和ジカルボン酸構成単位を構成する不飽和ジカルボン酸無水物単量体としては、特に限定されないが、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット酸等の酸無水物が挙げられる。これらのうち、スチレン系単量体との相溶性の観点から、不飽和ジカルボン酸無水物単量体は無水マレイン酸であることが好ましい。上述の不飽和ジカルボン酸無水物単量体は、不飽和ジカルボン酸構成単位として単独で含まれていても、2種以上を組み合わせて含まれていてもよい。
【0085】
不飽和ジカルボン酸構成単位の含有量は、樹脂(B2)の全質量に対して、8~23質量%であり、10~23質量%であることが好ましい。
【0086】
前記樹脂(B2)における他の構成単位としては、例えば、N-フェニルマレイミドなどが挙げられる。
【0087】
他の構成単位の含有量は、樹脂(B2)の全構成単位に対して、10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましく、2モル%以下であることが特に好ましい。
【0088】
上述の(メタ)アクリル酸エステル構成単位、スチレン構成単位、および不飽和ジカルボン酸構成単位の合計含有量は、樹脂(B2)の全構成単位に対して、好ましくは90~100モル%であり、より好ましくは95~100モル%であり、特に好ましくは98~100モル%である。
【0089】
樹脂(B2)の重量平均分子量は、特に制限はないが、50,000~300,000であることが好ましく、80,000~200,000であることがより好ましい。
【0090】
樹脂(B2)のガラス転移点は、90~150℃であることが好ましく、100~150℃であることがより好ましく、115~150℃であることが特に好ましい。
【0091】
具体的な樹脂(B2)としては、レジスファイ R100、R200、R310(デンカ製)、デルペット980N(旭化成製)、hw55(ダイセル・エボニック製)等が挙げられる。なお、上述した樹脂(B2)は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0092】
高硬度樹脂として樹脂(B2)を使用する場合には、ポリカーボネート樹脂(a1)として式(3a)の構成単位を含むポリカーボネート樹脂を使用する態様が好ましい。さらには、末端停止剤として一般式(4)で表される1価フェノール(Rの炭素数が8~22)を使用する態様が特に好ましい。このようなポリカーボネート樹脂としては、ユピゼータT-1380(三菱ガス化学製)、ユーピロンE-2000(三菱エンジニアリングプラスチックス製)等が挙げられる。
【0093】
また、高硬度樹脂として、メタクリル酸メチル構成単位6~26質量%、スチレン構成単位55~21質量%、無水マレイン酸構成単位15~23質量%で構成される共重合体(R100またはR200;デンカ製)の樹脂(B2)を使用する場合には、ポリカーボネート樹脂(a1)としてユピゼータT-1380を使用する態様が好ましい。
【0094】
さらに、高硬度樹脂として、メタクリル酸メチル構成単位6質量%、スチレン構成単位71質量%、無水マレイン酸構成単位23質量%で構成される共重合体(R310;デンカ製)である樹脂(B2)を使用する場合には、ポリカーボネート樹脂(a1)としてユピゼータT-1380を使用する態様が特に好ましい。
【0095】
なお、樹脂(B2)の製造方法は、特に限定されないが、塊状重合法や溶液重合法が挙げられる。
【0096】
(樹脂(B3))
樹脂(B3)は、式(5)で表される構成単位(c)を含む重合体である。この際、前記重合体は、式(6)で表される構成単位(d)をさらに含むことが好ましい。また、前記重合体は、他の構成単位をさらに含んでいてもよい。
【0097】
【化7】
【0098】
式(5)で表される構成単位(c)の含有量は、樹脂(B3)の全構成単位に対して、50~100モル%であることが好ましく、60~100モル%であることがより好ましく、70~100モル%であることが特に好ましい。
【0099】
【化8】
【0100】
式(6)で表される構成単位(d)の含有量は、樹脂(B3)の全構成単位に対して、0~50モル%であることが好ましく、0~40モル%であることがより好ましく、0~30モル%であることが特に好ましい。
【0101】
他の構成単位の含有量は、樹脂(B3)の全構成単位に対して、10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましく、2モル%以下であることが特に好ましい。
【0102】
構成単位(c)と構成単位(d)の合計含有量は、樹脂(B3)の全構成単位に対して、90~100モル%であることが好ましく、95~100モル%であることがより好ましく、98~100モル%であることがさらに好ましい。
【0103】
樹脂(B3)の重量平均分子量は、15,000~75,000が好ましく、20,000~70,000がより好ましく、25,000~65,000が特に好ましい。
【0104】
樹脂(B3)のガラス転移点は、105~150℃であることが好ましく、110~140℃であることがより好ましく、110~135℃であることが特に好ましい。
【0105】
具体的な樹脂(B3)としては、ユーピロン KH3410UR、KH3520UR、KS3410UR(三菱エンジニアリングプラスチック社製)等が挙げられる。なお、上述した樹脂(B3)は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0106】
高硬度樹脂として樹脂(B3)を使用する場合には、ポリカーボネート樹脂(a1)として式(3a)の構成単位を含むポリカーボネート樹脂を使用する態様が好ましい。さらには、末端停止剤として一般式(4)で表される1価フェノール(Rの炭素数が8~22)を使用する態様が特に好ましい。このようなポリカーボネート樹脂としては、ユピゼータT-1380(三菱ガス化学製)が挙げられる。特に、樹脂(B3)としてユーピロンKS3410UR(三菱エンジニアリングプラスチックス製)を使用し、ポリカーボネート樹脂(a1)としてユピゼータT-1380(三菱ガス化学製)を使用することが好ましい。
【0107】
なお、高硬度樹脂として樹脂(B3)を使用する場合には、樹脂(B1)~(B6)以外の他の樹脂を含むことが好ましい。この際、前記樹脂(B1)~(B6)以外の他の樹脂としては、構成単位(c)を含まず構成単位(d)を含む樹脂が好ましく、構成単位(d)のみからなる樹脂がより好ましい。具体的には、芳香族ポリカーボネート樹脂(例えば、ユーピロンS-2000、ユーピロンS-1000、ユーピロンE-2000;三菱エンジニアリングプラスチックス社製)等が使用可能である。
【0108】
前記樹脂(B1)~(B6)以外の他の樹脂を含む場合、樹脂(B3)は、高硬度樹脂層に含まれる全樹脂に対して、好ましくは45質量%以上、より好ましくは55質量%以上の割合で含まれる。
【0109】
樹脂(B3)の製造方法は、特に限定されないが、モノマーとしてビスフェノールCを使用することを除いては、上述したポリカーボネート樹脂(a1)の製造方法と同様の方法で製造することができる。
【0110】
(樹脂(B4))
樹脂(B4)は、スチレン構成単位を5~20質量%、(メタ)アクリル酸エステル構成単位を60~90質量%、およびN-置換型マレイミド構成単位を5~20質量%含む共重合体である。なお、前記樹脂(B4)は、他の構成単位をさらに含んでいてもよい。
【0111】
前記樹脂(B4)におけるスチレン構成単位としては、特に限定されず、任意の公知のスチレン系単量体を用いることができる。前記スチレン系単量体としては、入手の容易性の観点から、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、t-ブチルスチレン等が挙げられる。これらのうち、相溶性の観点からスチレン系単量体はスチレンであることが好ましい。上述のスチレン系単量体は、スチレン構成単位として単独で含まれていても、2種以上を組み合わせて含まれていてもよい。
【0112】
スチレン構成単位の含有量は、樹脂(B4)の全質量に対して、5~20質量%であり、5~15質量%であることが好ましく、5~10質量%であることがより好ましい。
【0113】
前記樹脂(B4)における(メタ)アクリル酸エステル構成単位を構成する(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、特に制限されないが、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2エチルヘキシル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸2エチルヘキシル等が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル単量体はメタクリル酸メチルであることが好ましい。上述の(メタ)アクリル酸エステル単量体は、(メタ)アクリル酸エステル構成単位として単独で含まれていても、2種以上を組み合わせて含まれていてもよい。
【0114】
(メタ)アクリル酸エステル構成単位の含有量は、樹脂(B4)の全質量に対して、60~90質量%であり、70~90質量%であることが好ましく、80~90質量%であることがより好ましい。
【0115】
前記樹脂(B4)におけるN-置換型マレイミド構成単位としては、N-フェニルマレイミド、N-クロロフェニルマレイミド、N-メチルフェニルマレイミド、N-ナフチルマレイミド、N-ヒドロキシフェニルマレイミド、N-メトキシフェニルマレイミド、N-カルボキシフェニルマレイミド、N-ニトロフェニルマレイミド、N-トリブロモフェニルマレイミドなどのN-アリールマレイミド等に由来する構成単位が挙げられる。このうち、アクリル樹脂との相溶性の観点からN-フェニルマレイミドに由来する構成単位が好ましい。上述のN-置換型マレイミドに由来する構成単位は、N-置換型マレイミド構成単位として単独で含まれていても、2種以上を組み合わせて含まれていてもよい。
【0116】
N-置換型マレイミド構成単位の含有量は、樹脂(B4)の全質量に対して、5~20質量%であり、5~15質量%であることが好ましく、5~10質量%であることがより好ましい。
【0117】
前記他の構成単位としては、一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位と、一般式(2)で表される脂肪族ビニル構成単位等が挙げられる。この際、前記一般式(1)および前記一般式(2)は、上述した樹脂(B1)のものと同様である。
【0118】
他の構成単位の含有量は、樹脂(B4)の全構成単位に対して、10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましく、2モル%以下であることが特に好ましい。
【0119】
スチレン構成単位、(メタ)アクリル酸エステル構成単位、およびN-置換型マレイミド構成単位の合計含有量は、樹脂(B4)の全構成単位に対して、90~100モル%であることが好ましく、95~100モル%であることがより好ましく、98~100モル%であることがさらに好ましい。
【0120】
樹脂(B4)の重量平均分子量は、50,000~250,000であることが好ましく、100,000~200,000がより好ましい。
【0121】
樹脂(B4)のガラス転移点は、110~150℃であることが好ましく、115~140℃であることがより好ましく、115~135℃であることが特に好ましい。
【0122】
具体的な樹脂(B4)としては、デルペット PM120N(旭化成株式会社製)が挙げられる。なお、上述した樹脂(B4)は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0123】
高硬度樹脂として樹脂(B4)を使用する場合には、ポリカーボネート樹脂(a1)として式(3a)の構成単位を含むポリカーボネート樹脂を使用する態様が好ましい。さらには、末端停止剤として一般式(4)で表される1価フェノール(Rの炭素数が8~22)を使用する態様が特に好ましい。このようなポリカーボネート樹脂としては、ユピゼータT-1380(三菱ガス化学製)が挙げられる。特に、樹脂(B4)としてスチレン構成単位7質量%、(メタ)アクリル酸エステル構成単位86質量%、およびN-置換型マレイミド構成単位7質量%からなるデルペットPM-120Nを使用し、ポリカーボネート樹脂(a1)としてユピゼータT-1380を使用するのが好ましい。
【0124】
樹脂(B4)の製造方法は、特に限定されないが、溶液重合、塊状重合などによって製造することができる。
【0125】
(樹脂(B5))
樹脂(B5)は、式(7)で表される構成単位(e)を含む重合体である。この際、樹脂(B5)は、さらに他の構成単位を含んでいてもよい。
【0126】
【化9】
【0127】
式(7)で表される構成単位(e)の含有量は、樹脂(B5)の全構成単位に対して、80~100モル%であることが好ましく、90~100モル%であることがより好ましく、95~100モル%であることが特に好ましい。
【0128】
他の構成単位としては、例えば、式(5)で表される構成単位、式(6)で表される構成単位などが挙げられる。この際、前記式(5)および前記式(6)は、上述した樹脂(B3)のものと同様である。
【0129】
他の構成単位の含有量は、樹脂(B5)の全構成単位に対して、20モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることが特に好ましい。
【0130】
樹脂(B5)の重量平均分子量は、10,000~1,000,000であることが好ましく、15,000~50,000がより好ましい。
【0131】
樹脂(B5)のガラス転移点は、120~200℃であることが好ましく、130~190℃であることがより好ましく、140~190℃であることが特に好ましい。
【0132】
樹脂(B5)として、具体的には、ユピゼータ FPC0220(三菱ガス化学社製)が挙げられる。なお、上述した樹脂(B5)は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0133】
高硬度樹脂として樹脂(B5)を使用する場合には、ポリカーボネート樹脂(a1)として式(3a)の構成単位を含むポリカーボネート樹脂を使用する態様が好ましい。このようなポリカーボネート樹脂としては、ユーピロンE-2000(三菱エンジニアリングプラスチックス製)が挙げられる。特に、樹脂(B5)としてユピゼータFPC0220(三菱ガス化学製)を使用し、ポリカーボネート樹脂(a1)としてユーピロンE-2000(三菱エンジニアリングプラスチックス製)を使用することが好ましい。
【0134】
高硬度樹脂として樹脂(B5)を使用する場合には、樹脂(B1)~(B6)以外の他の樹脂を含むことが好ましい。この際、前記樹脂(B1)~(B6)以外の他の樹脂としては、構成単位(c)を含まず構成単位(d)を含む樹脂が好ましく、構成単位(d)からなる樹脂がより好ましい。具体的には、芳香族ポリカーボネート樹脂(例えば、ユーピロンS-2000、ユーピロンS-1000、ユーピロンE-2000;三菱エンジニアリングプラスチックス社製)等が使用可能である。
【0135】
前記樹脂(B1)~(B6)以外の他の樹脂を含む場合、樹脂(B5)は、高硬度樹脂層に含まれる全樹脂に対して、好ましくは45質量%以上、より好ましくは55質量%以上の割合で含まれる。
【0136】
樹脂(B5)の製造方法は、特に限定されないが、モノマーとしてビスフェノールAPを使用することを除き、上述したポリカーボネート樹脂(a1)の製造方法と同様の方法で製造することができる。
【0137】
(樹脂(B6))
樹脂(B6)は、スチレン構成単位を50~95質量%、不飽和ジカルボン酸構成単位を5~50質量%含む共重合体である。
【0138】
スチレン構成単位としては、樹脂(B4)で記載のスチレン系単量体を用いることができる。樹脂(B6)は、これらのスチレン構成単位を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0139】
スチレン構成単位の含有量は、樹脂(B6)の全質量に対して、50~95質量%であることが好ましく、60~90質量%であることがより好ましく、65~87質量%であることがさらに好ましい。
【0140】
不飽和ジカルボン酸構成単位を構成する不飽和ジカルボン酸無水物単量体としては、例えばマレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット酸等の酸無水物が挙げられる。これらのうち、スチレン系単量体との相溶性の観点から無水マレイン酸であることが好ましい。なお、上述の不飽和ジカルボン酸無水物単量体は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0141】
不飽和ジカルボン酸構成単位の含有量は、樹脂(B6)の全質量に対して、5~50質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましく、13~35質量%であることがさらに好ましい。
【0142】
樹脂(B6)は、上記構成単位以外の構成単位を含んでいてもよい。その他の構成単位としては、例えば、下記一般式(1)で表される構成単位、一般式(2)で表される構成単位などが挙げられる。
【0143】
【化10】
式中、RおよびRは上記と同様である。
【0144】
【化11】
式中、RおよびRは上記と同様である。
【0145】
その他の構成単位の含有量は、樹脂(B6)の全構成単位に対して、10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましく、2モル%以下であることがさらに好ましい。
【0146】
樹脂(B6)の重量平均分子量は、50,000~250,000であることが好ましく、50,000~100,000がより好ましい。
【0147】
樹脂(B6)のガラス転移点は、110~150℃であることが好ましく、120~150℃であることがより好ましく、130~150℃であることが特に好ましい。
【0148】
樹脂(B6)として、具体的には、XIBOND140、XIBOND160(ポリスコープ社製)が挙げられる。なお、上述した樹脂(B6)は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0149】
高硬度樹脂として樹脂(B6)を使用する場合には、ポリカーボネート樹脂(a1)として式(3a)の構成単位を含むポリカーボネート樹脂を使用する態様が好ましい。さらには、末端停止剤として一般式(4)で表される1価フェノール(Rの炭素数が8~22)を使用する態様が特に好ましい。このようなポリカーボネート樹脂としては、ユピゼータT-1380(三菱ガス化学製)が挙げられる。特に、樹脂(B6)としてスチレン構成単位78質量%、無水マレイン酸構成単位22質量%からなるXIBOND160とアクリル樹脂とのアロイを使用し、ポリカーボネート樹脂(a1)としてユピゼータT-1380を使用するのが好ましい。
【0150】
樹脂(B6)の製造方法は、特に限定されないが、溶液重合、塊状重合などによって製造することができる。
【0151】
上述の樹脂(B1)~(B6)からなる群から選択される少なくとも1つは、アロイとして含有されていてもよい。
【0152】
前記アロイとしては、特に制限されないが、2種の樹脂(B1)のアロイ、2種の樹脂(B2)のアロイ、2種の樹脂(B3)のアロイ、2種の樹脂(B4)のアロイ、2種の樹脂(B5)のアロイ、2種の樹脂(B6)のアロイ、樹脂(B1)と樹脂(B2)とのアロイ、樹脂(B2)と樹脂(B4)とのアロイ、樹脂(B2)と他の高硬度樹脂とのアロイ、樹脂(B2)とアクリル樹脂とのアロイ、樹脂(B6)とアクリル樹脂とのアロイ等が挙げられる。
【0153】
前記他の高硬度樹脂としては、メタクリル酸メチル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体等が挙げられる。
【0154】
前記アクリル樹脂としては、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチルとアクリル酸メチルまたはアクリル酸エチルとの共重合体等が挙げられる。市販品としては、アクリペット(三菱ケミカル株式会社製)、スミペックス(住友化学株式会社製)、パラペット(株式会社クラレ製)等が挙げられる。
【0155】
2種の樹脂のアロイとする場合、よりガラス転移温度が高い樹脂同士のアロイとすることが好ましい。なお、上述のアロイは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0156】
アロイの製造方法としては、特に制限されないが、スクリュー径26mmの2軸押出機を用い、シリンダー温度240℃で溶融混錬して、ストランド状に押出してペレタイザーでペレット化する方法等が挙げられる。
【0157】
高硬度樹脂層に含まれる高硬度樹脂は、1種類であっても2種類以上であってもよく、樹脂(B1)~(B6)から2種類以上を選択する場合は、同じまたは異なるカテゴリーから選択することができ、さらに樹脂(B1)~(B6)以外の高硬度樹脂を含んでいてもよい。
【0158】
高硬度樹脂層中の高硬度樹脂の含有量は、高硬度樹脂層の全質量に対して、70~100質量%であることが好ましく、80~100質量%であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0159】
[他の樹脂]
高硬度樹脂層は、高硬度樹脂以外の他の樹脂を含んでいてもよい。前記他の樹脂としては、メタクリル酸メチル-スチレン共重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリカーボネート、シクロオレフィン(コ)ポリマー樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、各種エラストマーなどが挙げられる。これらの他の樹脂は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0160】
他の樹脂の含有量は、高硬度樹脂層の全質量に対して、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、0質量%であることが特に好ましい。
【0161】
[添加剤]
高硬度樹脂層は、添加剤等を含んでいてもよい。当該添加剤としては、上述したものが用いられうる。
【0162】
[高硬度樹脂層]
高硬度樹脂層の厚みは、好ましくは10~250μmであり、より好ましくは30~200μmであり、特に好ましくは60~150μmである。高硬度樹脂層の厚みが10μm以上であると、表面硬度が高くなることから好ましい。一方、高硬度樹脂層の厚みが250μm以下であると耐衝撃性が高くなることから好ましい。
【0163】
[高硬度樹脂層の基材層への積層]
上述したとおり、基材層と高硬度樹脂層の間にはさらなる層が存在していてもよいが、ここでは、基材層上に高硬度樹脂層を積層する場合について説明する。
【0164】
高硬度樹脂層を基材層に積層する方法としては、特に限定されず、別に形成した基材層と高硬度樹脂層とを重ね合わせて、両者を加熱圧着する方法;個別に形成した基材層と高硬度樹脂層とを重ね合わせて、両者を接着剤によって接着する方法;基材層と高硬度樹脂層とを共押出成形する方法;予め形成しておいた高硬度樹脂層に、基材層をインモールド成形して一体化する方法等が挙げられる。これらのうち、製造コストや生産性の観点から、共押出成形する方法が好ましい。
【0165】
共押出の方法は特に限定されない。例えば、フィードブロック方式では、フィードブロックで基材層の片面上に高硬度樹脂層を配置し、Tダイでシート状に押し出した後、成形ロールを通過させながら冷却して所望の積層体を形成する。また、マルチマニホールド方式では、マルチマニホールドダイ内で基材層の片面上に高硬度樹脂層を配置し、シート状に押し出した後、成形ロールを通過させながら冷却して所望の積層体を形成する。
なお、上記方法は高硬度樹脂層を基材層以外の層に積層する場合にも同様の方法で積層することができる。
【0166】
基材層と高硬度樹脂層の合計厚みは、好ましくは0.5~3.5mm、より好ましくは0.5~3.0mm、さらに好ましくは1.2~3.0mmである。合計厚みが0.5mm以上であると、シートの剛性を保つことができることから好ましい。一方、合計厚みが3.5mm以下であると、シートの下にタッチパネルを設置する場合等にタッチセンサーの感度が悪くなるのを防ぐことができることから好ましい。
【0167】
基材層および高硬度樹脂層の合計厚みに占める基材層の厚みの割合は、好ましくは75%~99%であり、より好ましくは80~99%であり、特に好ましくは85~99%である。上記範囲とすることにより、硬度と耐衝撃性を両立できる。
【0168】
<ハードコート層>
本明細書において、「ハードコート」とは、重合基として(メタ)アクリロイル基を含有するモノマーまたはオリゴマーまたはプレポリマーを含むハードコーティング組成物を重合して架橋構造を形成した塗膜を意味する。
【0169】
本発明において、ハードコーティング組成物は、(A)2~15官能の(メタ)アクリレートオリゴマー、(B)分子量200未満でかつ、25℃での粘度が15cps以下の1~2官能(メタ)アクリレートモノマー、(C)光重合開始剤、(D)表面改質剤、および(E)表面改質剤を含む。なお、本明細書において、光重合開始剤とは光ラジカル発生剤を指す。
【0170】
(A)成分である(メタ)アクリレートオリゴマーの含有量としては、上記(A)成分及び(B)成分の合計含有量に対して40~80質量%であることが好ましく、50~75質量%がより好ましく、55~75質量%が特に好ましい。
【0171】
(B)成分である(メタ)アクリレートモノマーの含有量としては、上記(A)成分及び(B)成分の合計含有量に対して20~60質量%であることが好ましく、25~50質量%がより好ましく、25~45質量%が特に好ましい。
【0172】
(C)成分である光重合開始剤の含有量としては、上記(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して0.1~10質量部であることが好ましく、0.5~7質量部がより好ましく、1~5質量部が特に好ましい。
【0173】
(D)成分である表面改質剤の含有量としては、上記(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して0.1~10質量部であることが好ましく、0.5~7質量部がより好ましく、1~5質量部が特に好ましい。
【0174】
(E)成分である色相改善剤の含有量としては、上記(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して0.002~0.020質量部であり、0.003~0.018質量部が好ましく、0.005~0.015質量部がより好ましい。
【0175】
<(A)成分>[(メタ)アクリレートオリゴマー]
本発明で使用される(A)成分である(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、2~15官能、好ましくは2~9官能、より好ましくは2~6官能の多官能(メタ)アクリレートオリゴマーである。ここでいうオリゴマーとは、好ましくは構成単位の数が2以上、より好ましくは2~20程度の重合体であり、分子量の下限値は約400以上、より好ましくは1200以上のものである。オリゴマーの分子量の上限値は、好ましくは6000以下、より好ましくは4000以下である。
【0176】
(A)成分の具体例としては、以下に示す(1)~(4)の多官能(メタ)アクリレートオゴマーが挙げられる。
(1)多官能ポリオール(メタ)アクリレートオリゴマー、すなわち多価アルコール(ポリオール又はポリヒドロキシ含有化合物)と、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの誘導体からなる群から選択される化合物と、の反応によって得られるポリアクリレートまたはポリメタクリレートのオリゴマー
(2)多官能ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、すなわち多価アルコール(ポリオール)と、多価カルボン酸(多塩基酸もしくは多塩基性カルボン酸)又はその無水物と、アクリル酸およびメタクリル酸やそれらの誘導体と、から得られる飽和若しくは不飽和ポリエステルのポリアクリレートまたはポリメタクリレートのオリゴマー
(3)多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、すなわちポリイソシアネートと、活性水素及びアクリロイルオキシ基またはメタアクリロイルオキシ基を有する化合物と、から得られるウレタンポリアクリレートまたはウレタンポリメタクリレートのオリゴマー
(4)多官能ポリグリシジルエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、すなわちポリグリシジルエーテルと、アクリル酸およびメタクリル酸やそれらの誘導体と、から得られるポリアクリレートまたはポリメタクリレートのオリゴマー
【0177】
上記(1)多官能ポリオール(メタ)アクリレートオリゴマーの製造に使用される多価アルコール(ポリオール)としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、数平均分子量が300~1000のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2'-チオジエタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノールのような2価アルコール;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタグリセロール、グリセロール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,6-ヘキサントリオールのような3価のアルコール;ペンタエリスリトール、ジグリセロール、ジペンタエリスリトールのような4価以上のアルコールが挙げられる。
【0178】
上記(2)多官能ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーは、(メタ)アクリル酸と、多塩基性カルボン酸(無水物)と、ポリオール(ポリヒドロキシ含有化合物又は多価アルコール)との反応により得られる。より具体的には、二塩基性カルボン酸(無水物)とポリオールとの脱水縮合反応によってポリエステルポリオールを製造したのち、この反応生成物をアクリル酸又はメタクリル酸と反応させることにより、多官能ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーを得ることができる。
【0179】
ポリエステルポリオールの製造に用いられる「ポリオール」とも称されるポリヒドロキシ含有化合物は、好ましくは3個以上のヒドロキシ基を有する化合物である。一般に、本発明に使用することができるポリオールは、3個~6個のヒドロキシ基、好ましくは3個~4個のヒドロキシ基、および2個~約36個の炭素原子を有する化合物である。このようなポリオールとしては、分岐鎖または直鎖脂肪族ポリオール、脂環式ポリオール、芳香族ポリオール、及びポリエーテルポリオールが挙げられる。
脂肪族ポリオールとしては、トリオール、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、およびトリメチロールエタン;テトラオール、例えば、ペンタエリトリトールおよびジ-トリメチロールプロパン;およびヘキサオール、例えば、ジペンタエリトリトールを挙げることができる。
さらに、脂肪族および脂環式ポリオールを、種々の量のエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドと反応させて、エトキシル化および/またはプロポキシル化ポリオールを得ることができる。エトキシル化および/またはプロポキシル化ポリオールの例としては、エトキシル化トリメチロールプロパン、プロポキシル化トリメチロールプロパン、エトキシル化グリセリン、プロポキシル化グリセリン、エトキシル化ペンタエリトリトール、およびプロポキシル化ペンタエリトリトールを挙げることができる。
【0180】
芳香族ポリオールとしては、ビスフェノールAジアクリレート等が挙げられる。
本発明に使用できるポリエーテルポリオールは、芳香族ポリエーテルおよび脂肪族ポリエーテルの両方である。ポリエーテルポリオールの脂肪族基は、直鎖、分岐鎖、または環であってよい。ポリエーテルポリオールの例としては、トリ-グリコール、例えば、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ならびに混合ポリエーテル、例えば、ポリ(プロピレン-エチレン)グリコールを挙げることができる。
【0181】
ポリエステルポリオールの製造に用いられる二塩基性カルボン酸(無水物)の例としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸;テトラヒドロフタル酸、3,6-エンドメチレンテトラヒドロフタル酸などの脂環族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸;ピロメリット酸;チオジグリコール酸;チオジバレリン酸;ジグリコール酸;あるいはマレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸が挙げられる。これらの塩化物、無水物またはエステルを用いることもできる。好ましくはこれらの二塩基性カルボン酸の無水物が用いられる。特に好ましいものはテトラヒドロフタル酸無水物などの脂環族ジカルボン酸無水物である。
ポリエステルポリオールは、エステル結合を有するポリオールである。例えば、過剰のポリオールを二塩基酸(無水物)と反応させて、約1個~約6個のエステル結合および反応性ヒドロキシ基を有する低分子量化合物を得る。前記ポリオール単独および混合物のいずれかを使用して、ポリエステルポリオールを製造することができる。
ポリエステルポリオールは、さらに種々の量のエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドと反応させて、エトキシル化および/またはプロポキシル化ポリエステルポリオールとすることもできる。
【0182】
本発明で用いられる上記(2)多官能ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーは、このようにして得られるポリエステルポリオールをアクリル酸、メタクリル酸及びそれらの誘導体からなる群から選択される化合物と反応させることにより得ることができる。
アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの誘導体からなる群から選択される化合物のなかでは、アクリル酸を用いるのがより好ましい。
【0183】
上記(2)多官能ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーにおいて、ポリオール(ポリヒドロキシ含有化合物)は単一で、または他のポリヒドロキシ含有化合物と組み合わせて、使用することができる。さらに、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの誘導体からなる群から選択される化合物は、各々単一で、または相互に組み合わせて使用することができる。ポリヒドロキシ含有化合物の混合物を用いる場合には混合エステル生成物が得られる。アクリル酸およびメタクリル酸の混合物が使用される場合も同様に、生成物は混合アクリレートオリゴマーとなる。
【0184】
好ましいポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーは、テトラヒドロフタル酸無水物及びトリメチロールプロパンと、アクリル酸とを常法によりエステル化反応させることにより得られる2~4官能のアクリレートオリゴマーである。
【0185】
上記(3)多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、1分子中に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基および水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーとポリイソシアネートとのウレタン化反応生成物や、ポリオール類をポリイソシアネートと反応させて得られるイソシアネート化合物と1分子中に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基および水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーとのウレタン化反応生成物が挙げられる。
【0186】
多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの製造において、ウレタン化反応に用いられるポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、芳香族のイソシアネート類を水素添加して得られるジイソシアネート (例えば、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネートなどのジイソシアネート) 、トリフェニルメタントリイソシアネート、ジメチレントリフェニルトリイソシアネートなどのジまたはトリイソシアネート、あるいはジイソシアネートをシアヌレート化させて得られるポリイソシアネートが挙げられる。
【0187】
多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの製造において、イソシアネート化合物の製造に使用されるポリオール類としては、上記(1)多官能ポリオール(メタ)アクリレートオリゴマーの製造に使用される多価アルコールとして例示した化合物を挙げることができる。
上記ポリオール類とポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート化合物の具体例としては、トリメチロールプロパントルイレンジイソシアネート等が挙げられる。
多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの製造に用いられる「活性水素およびアクリロイルオキシ基(又はメタアクリロイルオキシ基)を含有する化合物」としては、水酸基及びアクリロイルオキシ基(又はメタアクリロイルオキシ基)を含有する化合物である。具体的には、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0188】
本発明で特に好ましく使用される多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの具体例としては、トリメチロールプロパントルイレンジイソシアネート、または、イソシアヌレート基含有ポリイソシアネートと活性水素および(メタ)アクリロイルオキシ基を含有する化合物との反応生成物が挙げられる。
更に具体的には、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリアクリレートオリゴマー、トリメタクリレートオリゴマー、ジアクリレートオリゴマーもしくはジメタクリレートオリゴマー;ジ(2-ヒドロキシエチル)モノ(2-ヒドロキシヘプタン)イソシアヌレートのトリアクリレートオリゴマー、トリメタクリレートオリゴマー、ジアリレートオリゴマーもしくはジメタクリレートオリゴマー;及びウレタン結合で繋がった両末端に(メタ)アクリロイルオキシ基を含有する化合物(分子量1200以上)が挙げられる。
多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは市販品を用いることができる。市販品の具体例としては、UN-3320HC(根上工業)、UA-510H(共栄社化学)、CN968(サートマー)、Eb-220(ダイセルサイテック) 、U6HA(新中村化学)、7600B(三菱ケミカル)、7650B(三菱ケミカル)、7550B(三菱ケミカル)等が挙げられるがこの限りではない。本発明では特に、6官能ウレタンアクリレートオリゴマーを好ましく使用することができる。
【0189】
ハードコート層は、(A)成分である(メタ)アクリレートオリゴマーを1種類または2種類以上含んでいてよい。
【0190】
<(B)成分>[(メタ)アクリレートモノマー]
本発明で使用される(B)成分である(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子内に(メタ)アクリロイル基が官能基として存在するものであり、1官能モノマーまたは2官能モノマーが挙げられる。モノマーの分子量の上限値は200未満であり、好ましくは190以下であり、より好ましくは180以下である。モノマーの分子量が200以上であると高硬度樹脂層への密着性が著しく低下することがある。また、モノマーの25℃での粘度は15cps以下であり、10cps以下であることが好ましく、7cps以下であることがさらに好ましく、5cps以下であることが特に好ましい。モノマーの粘度は、セコニック製 振動式粘度計VM-100A-Lを使用して25℃の条件下で測定することができる。
【0191】
分子量が200未満の1官能モノマーとしては(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルが例示できる。(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、エチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(アリルオキシメチル)アクリル酸メチル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアクリレート、アクリル酸=3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート等が例示できる。
【0192】
また、分子量が200未満の2官能の(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、1,4-ブタンジオールジアクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が例示できる。
【0193】
ハードコート層は、(B)成分である(メタ)アクリレートモノマーを1種類または2種類以上含んでいてよい。
【0194】
<(C)成分>[光重合開始剤]
光重合開始剤としては、単官能光重合開始剤が挙げられる。具体的には、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン[ダロキュアー2959:メルク社製];α-ヒドロキシ-α,α'-ジメチルアセトフェノン[ダロキュアー1173:メルク社製];メトキシアセトフェノン、2,2'-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン[イルガキュア-651:BASF(株)製]、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン[イルガキュア184:BASF(株)製]などのアセトフェノン系開始剤;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインエーテル系開始剤;その他、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド、アシルホスフォナートなどを例示することができる。
【0195】
<(D)成分>[表面改質剤]
表面改質剤とは、レベリング剤、帯電防止剤、界面活性剤、撥水撥油剤、無機粒子、有機粒子などのハードコート層の表面性能を変えるものである。
【0196】
前記レベリング剤としては、例えば、ポリエーテル変性ポリアルキルシロキサン、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエステル変性水酸基含有ポリアルキルシロキサン、アルキル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、変性ポリエーテル、シリコン変性アクリルなどが挙げられる。
【0197】
前記帯電防止剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステルモノグリセライド、グリセリン脂肪酸エステル有機酸モノグリセライド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤などが挙げられる。
【0198】
前記界面活性剤および前記撥水撥油剤としては、例えば、含フッ素基・親油性基含有オリゴマー、含フッ素基・親水性基・親油性基・UV反応性基含有オリゴマーなどのフッ素を含有した界面活性剤および撥水撥油剤が挙げられる。
【0199】
前記無機粒子としては、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、ガラス粒子などが挙げられる。
【0200】
前記有機粒子としては、例えば、アクリル粒子、シリコン粒子などが挙げられる。
【0201】
ハードコート層は、表面改質剤を1種類または2種類以上含んでいてよい。
【0202】
<(E)成分>[色相改善剤]
色相改善剤とはアクリル樹脂やポリカーボネート樹脂などに基づく黄色味を打ち消し消すために添加するものである。
【0203】
前記色相改善剤として、一般的にはアンスラキノン系染料が入手容易であり好ましい。具体的なブルーイング剤としては、例えば一般名Solvent Violet13[CA.No(カラーインデックスNo)60725;商標名バイエル社製「マクロレックスバイオレットB」、三菱化学(株)製「ダイアレジンブルーG」、住友化学工業(株)製「スミプラストバイオレットB」]、一般名Solvent Violet31[CA.No68210;商標名 三菱化学(株)製「ダイアレジンバイオレットD」]、一般名Solvent Violet33[CA.No60725;商標名 三菱化学(株)製「ダイアレジンブルーJ」]、一般名Solvent Blue94[CA.No61500;商標名 三菱化学(株)製「ダイアレジンブルーN」]、一般名Solvent Violet36[CA.No68210;商標名 バイエル社製「マクロレックスバイオレット3R」]、一般名Solvent Blue97[商標名 バイエル社製「マクロレックスブルーRR」]および一般名SolventBlue45[CA.No61110;商標名 サンド社製「テトラゾールブルーRLS」]、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社のマクロレックスバイオレットやトリアゾールブルーRLS等が挙げられる。
【0204】
[ハードコート層の形成方法]
ハードコート層の形成方法は特に限定されないが、例えば、ハードコート層の下に位置する層(例えば高硬度樹脂層)上にハードコーティング組成物を塗布した後、光重合させることにより形成することができる。
【0205】
ハードコーティング組成物(重合性組成物)を塗布する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、スライドコート法、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、メニスカスコート法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ビートコート法、捌け法などが挙げられる。
【0206】
光重合における光照射に用いられるランプとしては、光波長420nm以下に発光分布を有するものが用いられる。その例としては低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプなどが挙げられる。この中でも、高圧水銀灯またはメタルハライドランプは開始剤の活性波長領域の光を効率よく発光し、得られる高分子の粘弾性的性質を架橋により低下させるような短波長の光や、反応組成物を加熱蒸発させるような長波長の光を多く発光しないために好ましい。
【0207】
上記ランプの照射強度は、得られるポリマーの重合度を左右する因子であり、目的製品の性能毎に適宜制御される。通常のアセトフェノン基を有する開裂型の開始剤を配合した場合、照度は0.1~300mW/cmの範囲が好ましい。特に、メタルハライドランプを用いて、照度を10~40mW/cmとすることが好ましい。
【0208】
光重合反応は、空気中の酸素またはハードコーティング組成物中に溶解する酸素により阻害される。そのため、光照射は酸素による反応阻害を消去し得る手法を用いて実施することが望ましい。そのような手法の1つとして、ハードコーティング組成物をポリエチレンテレフタレートやテフロン製のフィルムによって覆って酸素との接触を断ち、フィルムを通して光をハードコーティング組成物へ照射する方法がある。また、窒素ガスや炭酸ガスのような不活性ガスにより酸素を置換したイナート雰囲気下で、光透過性の窓を通して組成物に光を照射してもよい。
【0209】
光照射をイナート雰囲気下で行う場合、その雰囲気酸素濃度を低レベルに保つために、常に一定量の不活性ガスが導入される。この不活性ガスの導入により、ハードコーティング組成物表面に気流が発生し、モノマー蒸発が起こる。モノマー蒸発のレベルを抑制するためには、不活性ガスの気流速度は、不活性ガス雰囲気下を移動するハードコート液が塗布された積層体に対する相対速度として1m/sec以下であることが好ましく、0.1m/sec以下であることがより好ましい。気流速度を上記範囲にすることにより、気流によるモノマー蒸発は実質的に抑えられる。
【0210】
ハードコート層の密着性を向上させる目的で、塗布面に前処理を行うことがある。処理例として、サンドブラスト法、溶剤処理法、コロナ放電処理法、クロム酸処理法、火炎処理法、熱風処理法、オゾン処理法、紫外線処理法、樹脂組成物によるプライマー処理法などの公知の方法が挙げられる。
【0211】
ハードコート層は、さらに修飾されてもよい。例えば、アンチグレア処理、反射防止処理、防汚処理、帯電防止処理、耐候性処理および防眩処理のいずれか一つ以上を施すことができる。これらの処理方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、反射低減塗料を塗布する方法、誘電体薄膜を蒸着する方法、帯電防止塗料を塗布する方法などが挙げられる。
【0212】
なお、アンチグレア処理は、特に制限されないが、アンチグレア型を用いる方法が挙げられる。例えば、まず高硬度樹脂層と、ハードコーティング組成物を塗布して得られた塗膜と、アンチグレア型とをこの順に積層させる。次いで、ハードコーティング組成物を光重合し、アンチグレア型を脱型する方法が挙げられる。ハードコーティング組成物の光重合体(ハードコート層)は、アンチグレア型との接触面において、アンチグレア型の粗面が反映された形状を有することとなる。なお、アンチグレア型の材料は、UV光を透過するものであれば特に制限はなく、ガラス、透明樹脂等が用いられる。アンチグレア処理の他の方法として、ハードコーティング組成物に粒子を添加する方法、得られたハードコート層表面を処理する方法等が挙げられる。使用するアンチグレア型の種類(表面のヘーズ、厚さ等)、添加する粒子の添加量等を制御することで、ハードコート層のヘーズを調整することができる。
【0213】
<成形用積層樹脂シート>
成型用積層樹脂シートの鉛筆硬度は、2H以上であることが好ましく、2H~4Hであることがより好ましく、3H~4Hであることがさらに好ましい。これは、鉛筆硬度が5H以上になると熱成形後にクラックが生じるので、鉛筆硬度を2H~4Hにすることで成形性と硬度を両立することができる。成形用積層樹脂シートの鉛筆硬度は、ハードコート層の表面に対して角度45度、荷重750gで次第に硬度を増して鉛筆を押し付け、きず跡を生じなかった最も硬い鉛筆の硬度を意味する(JIS K 5600-5-4:1999に準拠した鉛筆ひっかき硬度試験)。
【0214】
<L*a*b*値及びYI値(色相評価)>
成形用積層樹脂シートについて、日本電色工業(株)製の分光色彩計 SE6000を用い、透過法によりL*a*b*値とYI値を測定した。
ここで、L*は明度を表し、値が大きいほど白色度が高いことを示す。a*は赤-緑の程度を表し、値が大きいほど赤みが強く、値が小さいほど緑味が強いことを示す。b*は黄-青の程度を表し、値が大きいほど黄色味が強く、値が小さいほど青みが強いことを示す。また、YIは黄色度であり、値が小さいほど黄色味が弱く、色相が良好であることを意味する。後述する実施例に記載されるように、JIS-K-7373に準拠して測定される。
【0215】
L*に関し、70を下回ると白色度が低くなり、明度が下がる。L*≧80を満たすことがより好ましく、L*≧85を満たすことがさらに好ましく、L*≧90を満たすことが特に好ましい。
【0216】
a*に関し、-0.8を下回ると緑味が強くなり、0.4を超えると赤味が強くなる。-0.6≦a*≦0.3を満たすことがより好ましく、-0.4≦a*≦0.1を満たすことがさらに好ましく、-0.3≦a*≦0.08を満たすことが特に好ましい。
【0217】
b*に関し、-0.2を下回ると青みが強くなり、0.7を超えると黄色味が強くなる。-0.12≦b*≦0.6を満たすことがより好ましく、-0.1≦b*≦0.5を満たすことがさらに好ましく、0≦b*≦0.5を満たすことが特に好ましい。
【0218】
YIに関し、-0.5を下回ると青みが強くなり、1.2を超えると黄色味が強くなる。-0.2≦YI≦1.15を満たすことがより好ましく、0≦YI≦1を満たすことがさらに好ましく、0.03≦YI≦1を満たすことが特に好ましい。
【0219】
<成形品>
本発明の一実施形態によれば、上述した成形用積層樹脂シートを用いて成形された成形品が提供される。
【0220】
成形方法は特に限定されないが、成形用積層樹脂シートの特性から、熱成形が適している。熱成形は、当該分野で通常使用される方法で行うことができる。具体的な熱成型の方法としては、例えば、熱プレス成形、圧空成形、真空成形、TOM成形が挙げられる。
【0221】
成形温度は、100~200℃であることが好ましい。
【実施例0222】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明は実施例の態様に制限されるものではない。
【0223】
実施例のために、メタクリル樹脂(C-1)及びスチレン共重合体(D-1)として、下記に示す材料を使用したが、これらに限定されるわけではない。
メタクリル樹脂(C-1):アルケマ株式会社製ALTUGLAS(登録商標)V020(重量平均分子量:127,000、ガラス転移温度:134℃、温度230℃・3.8kg荷重下のメルトフローレイト:1.8g/10分、屈折率1.49、mm/mr/rr=7.4モル%/37.4モル%/55.2モル%)
スチレン共重合体(D-1):Polyscope社製XIBOND160((d1)/(d2)=スチレン/無水マレイン酸=78質量%/22質量%、重量平均分子量:69,500、ガラス転移温度:143℃、温度230℃・3.8kg荷重下のメルトフローレイト:7.6g/10分、屈折率1.58)(樹脂(B6)に相当)
【0224】
ハードコーティング組成物を構成する成分として、以下の各材料を用い、下記表1に記載した通りの配合比(質量部)となるように用いた。
CN968NS((A)成分):サートマー製、6官能ウレタンアクリレートオリゴマー
7600B((A)成分):三菱ケミカル製、6官能ウレタンアクリレートオリゴマー
AOMA((B)成分):日本触媒製、下記構造式で表される2-(アリルオキシメチル)アクリル酸メチル(1官能)
分子量:156.2
粘度(25℃):2cps
【化12】
THF-A((B)成分):大阪有機化学工業製、下記構造式で表されるテトラヒドロフルフリルアクリレート(1官能)
分子量:156.2
粘度(25℃):3cps
【化13】
イルガキュア184((C)成分):BASF(株)製、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
RS-90((D)成分):DIC(株)製、含フッ素基・親水性基・親油性基・UV反応性基含有オリゴマー
Solvent Blue94((E)成分):[CA.No61500;商標名 三菱化学(株)製「ダイアレジンブルーN」]
【0225】
<成形用積層樹脂シート(ハードコート層)の密着性の測定>
JIS-K5400-5-6に準じ、カッター刃で1mmピッチで縦横6本ずつの刻みを入れ、25マスを刻んだ。そこにニチバン製のセロハンテープをしっかりと密着させ、60°手前方向に剥がした。塗膜の剥離が無い場合を合格(○)とし、1マスでも剥離した場合は不合格(×)とした。
【0226】
<成形用積層樹脂シート(ハードコート層)の耐擦傷性の測定>
耐擦傷性:♯0000のスチールウールにて100g/cmの荷重で15往復させ5本未満の傷が付くものを合格(○)、5本以上の傷が付くものを不合格(×)とした。
【0227】
<成形用積層樹脂シート(ハードコート層)の鉛筆硬度の測定>
実施例および比較例で製造した成形用積層樹脂シートを、JIS K 5600-5-4:1999に準拠した鉛筆ひっかき硬度試験にて評価した。ハードコート層の表面に対して角度45度、荷重750gで次第に硬度を増して鉛筆を押し付け、きず跡を生じなかった最も硬い鉛筆の硬度を鉛筆硬度として評価した。硬度2H以上を合格とした。
【0228】
<成形用積層樹脂シート(ハードコート層)の弾性変形割合、マルテンス硬度の測定>
ハードコート層の弾性変形割合、マルテンス硬度の測定は、Fischer製 HM2000 LTを使用して測定した。測定条件は以下の通りである。
最大荷重:3mN
最大荷重に達した時の保持時間:5秒
荷重速度、除荷速度:10mN/sec
【0229】
<成形用積層樹脂シートの色差測定>
日本電色工業(株)製の分光色彩計 SE6000を用いて、成形用積層樹脂シートをJIS-K-7373に準拠して、a*、b*、L*、YI(ASTM:E313)を以下の条件で測定した。
光源:D65
測定方法:透過
【0230】
<ハードコート層のクラック発生の有無(成形性)の評価>
実施例および比較例で製造した成形用積層樹脂シートを熱成形して、50mmR部分、75mmR部分または、100mmR部分のクラックの有無をそれぞれ確認した。目視にてクラックの発生が確認されなかったものを合格(○)とし、クラックの発生が確認されたものを不合格(×)とした。
【0231】
<実施例1>
〔高硬度樹脂(B-1)のペレット製造〕
上記メタクリル樹脂(C-1)を50質量部と、上記スチレン共重合体(D-1)を50質量部との合計100質量部に対して、リン系添加剤PEP-36(株式会社ADEKA製)500ppm、およびステアリン酸モノグリセリド(製品名:H-100、理研ビタミン株式会社製)0.2質量%を加え、ブレンダーで20分混合後、目開き10μmのポリマーフィルターを取り付けたスクリュー径26mmの2軸押出機(東芝機械株式会社製、TEM-26SS、L/D≒40)を用い、シリンダー温度240℃で溶融混錬して、ストランド状に押出してペレタイザーでペレット化した。高硬度樹脂(B-1)のペレットは安定して製造できた。
高硬度樹脂(B-1)のペレットは外観:〇(透明)であり、ガラス転移温度:121℃、温度230℃・3.8kg荷重下のメルトフローレイト:2.5g/10分、屈折率1.54であった。
【0232】
(成形用積層樹脂シートの製造)
軸径35mmの単軸押出機と、軸径65mmの単軸押出機と、各押出機に連結されたフィードブロックと、フィードブロックに連結されたTダイとを有する多層押出装置を用いて、基材層と高硬度樹脂層からなる積層体を成形した。
【0233】
具体的には、軸径35mmの単軸押出機に上記で得られた高硬度樹脂(B-1)を連続的に導入し、シリンダ温度230℃、吐出速度2.6kg/hの条件で押し出した。また、軸径65mmの単軸押出機にポリカーボネート樹脂(ユピゼータT-1380;三菱ガス化学製、Tg:125℃、重量平均分子量(Mw):44,500)を連続的に導入し、シリンダ温度240℃、吐出速度50.0kg/hの条件で押し出した。
【0234】
押し出された高硬度樹脂およびポリカーボネート樹脂を2種2層の分配ピンを備えたフィードブロックに導入し、240℃の温度で高硬度樹脂とポリカーボネート樹脂を積層した。さらにそれを温度240℃のTダイに導入してシート状に押し出し、上流側から温度120℃、130℃、190℃とした3本の鏡面仕上げロールで鏡面を転写しながら冷却し、高硬度樹脂層とポリカーボネート樹脂層(基材層)との積層体を得た。得られた積層体の厚みは2.0mm、高硬度樹脂層の厚みは中央付近で60μmであった。
【0235】
上記で得られた積層体の高硬度樹脂層側に、下記表1の組成(質量部)で調合された各ハードコーティング組成物を用い、以下の手順で硬化塗膜(ハードコート層)を上記高硬度樹脂層上に形成し、各成形用積層樹脂シートを得た。
100℃にセッティングされた熱風循環乾燥機中で加温された、高硬度樹脂層とポリカーボネート樹脂層(基材層)との積層体に調合されたハードコーティング組成物をのせ、バーコーターで硬化後の塗膜厚みが5~10μmになるようにひき、その上に100μm厚のPETフィルムをのせ、ハンドローラーでレベリングさせた。これに、出力密度120W/cmのメタルハライドランプを用い、光源下14cmの位置でコンベアースピード1.0m/分の条件で紫外線を照射して硬化塗膜(ハードコート層)を形成した。硬化後、PETフィルムを剥離し、ハードコーティング組成物の硬化塗膜を有する成形用積層樹脂シートを得た。
【0236】
(成形体の製造)
上記で製造した成形用積層樹脂シートを熱プレスして成形体を製造した。なお、使用した熱プレス機は、サーボモーターにより型締め駆動する仕組みのものであり、この際、型締め力の最大値は3000kgfとした。
製造した成形用積層樹脂シートを120℃に設定した棚段乾燥機に入れ、予備加熱を3分間行った。棚段乾燥機から取り出したシートの温度は80℃であった。
棚段乾燥機から成形用積層樹脂シートを取り出した後、50秒でアルミ製熱プレス用金型(図1)の下型に設置した。
成形用積層樹脂シートをクリアランス(金型上下で成形用シートを挟み込む隙間)が2mmで下型の曲率半径Rが50mmのアルミ製熱プレス用金型(図1)で熱プレス成形した。上下の金型の温度はともに120℃、型締め力は200kgf、プレス時間は3分で行った。
成形後の成形用積層樹脂シートについて、ハードコート層におけるクラックの発生の有無について評価した。
【0237】
得られた成形用積層樹脂シートの評価結果を下記表2に記載した。実施例1~5の成形用積層樹脂シートは、すべての性能を満足するものであった。一方、比較例1~3の成形用積層樹脂シートは、すべての性能を満足するには至らず、総合判定は不合格であった。
【0238】
【表1】
【0239】
【表2】
【0240】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
図1