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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162726
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】メス端子
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/11 20060101AFI20241114BHJP
   H01R 13/03 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
H01R13/11 Z
H01R13/03 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078574
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】山口 裕司
(57)【要約】
【課題】接続端子の接点部と相手方接続端子の接点部との間に存在する異物を除去できる技術の提供を目的とする。
【解決手段】メス端子40は、オス端子20と接続されるメス端子40であって、オス端子20が挿入される筒状部43と、筒状部43の内側に位置し、オス端子20と接触することによりオス端子20と電気的に接続される接触片44と、接触片44よりもオス端子20の挿入方向Aの後方に位置し、オス端子20の挿入時にオス端子20と接触する摺動片45と、を備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オス端子と接続されるメス端子であって、
前記オス端子が挿入される筒状部と、
前記筒状部の内側に位置し、前記オス端子と接触することにより前記オス端子と電気的に接続される接触片と、
前記接触片よりも前記オス端子の挿入方向後方に位置し、前記オス端子の挿入時に前記オス端子と接触する摺動片と、
を備えるメス端子。
【請求項2】
請求項1に記載のメス端子であって、
前記オス端子との接続時において、前記摺動片と前記オス端子との接触圧が、前記接触片と前記オス端子との接触圧よりも小さい、メス端子。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のメス端子であって、
前記接触片および前記摺動片は、前記オス端子と接触する方向に付勢される弾性変形可能な部分であり、
前記挿入方向から見て、前記接触片の自然状態の頂点は、前記摺動片の自然状態の頂点よりも前記オス端子と接触する方向に突出する、メス端子。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のメス端子であって、
一枚の板状部材により形成され、
前記摺動片は、前記筒状部から延出する第1延出部が曲げ加工されることにより形成され、
前記接触片は、前記筒状部から前記挿入方向において前記摺動片に対して反対方向に延出する第2延出部が曲げ加工されることにより形成される、メス端子。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載のメス端子であって、
前記摺動片と前記オス端子との接触面積は、前記接触片と前記オス端子との接触面積よりも大きい、メス端子。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載のメス端子であって、
前記摺動片は、前記筒状部および前記接触片とは異なる部材であり、
前記筒状部および前記接触部には、メッキ処理が施される、メス端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、メス端子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のコネクタは、電線の端部に設けられた端子をコネクタハウジングに設けられたキャビティに収容する構成を備える。キャビティに収容される端子は、相手方端子に対して接続される電気接続部を有する。電気接続部は、ボックス状の形体をしており、相手方端子に係合するバネ片を内蔵する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-002074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、自動車などの車両において、車両に搭載される各種の機器が、車体側の機器に対して、接続端子を介して接続されることがある。このような場合に、接続する側の接続端子の接点部と接続される側の接続端子の接点部との間に異物が存在する場合には、その異物により両接点部の間で接続不良が起こり得る。また、接続端子の接点部同士の間に異物が存在することにより、接続端子の相手方接続端子への挿入時に異物が両接点部を傷つけることも考え得る。このように両接点部が傷付くことにより、両接点部の間で接続不良が起こり得る。
【0005】
そこで、本開示は、接続端子の接点部と相手方接続端子の接点部との間に存在する異物を除去できる技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のメス端子は、オス端子と接続されるメス端子であって、前記オス端子が挿入される筒状部と、前記筒状部の内側に位置し、前記オス端子と接触することにより前記オス端子と電気的に接続される接触片と、前記接触片よりも前記オス端子の挿入方向後方に位置し、前記オス端子の挿入時に前記オス端子と接触する摺動片と、を備えるメス端子である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、接続端子の接点部と相手方接続端子の接点部との間に存在する異物を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、接続システムを模式的に示す斜視図である。
図2図2は、オス端子とメス端子とが接続された状態を示す側面図である。
図3図3は、オス端子とメス端子との接続部分を上方から示す説明図である。
図4図4は、接触片の自然状態の頂点の位置と、摺動片の自然状態の頂点の位置とを、オス端子の挿入方向に沿って示す説明図である。
図5図5は、メス端子における接触片および摺動片を拡大して示す説明図である。
図6図6は、オス端子とメス端子とが接続されるまでの途中の状態を示す側面図である。
図7図7は、オス端子とメス端子とが接続されたときの状態を示す側面図である。
図8図8は、メス端子の組立前の板状部材の状態を示す説明図である。
図9図9は、オス端子と変形例1に係るメス端子とが接続されたときの状態を示す側面図である。
図10図10は、オス端子と変形例2に係るメス端子とが接続されたときの状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示のメス端子は、次の通りである。
【0011】
(1)オス端子と接続されるメス端子であって、前記オス端子が挿入される筒状部と、前記筒状部の内側に位置し、前記オス端子と接触することにより前記オス端子と電気的に接続される接触片と、前記接触片よりも前記オス端子の挿入方向後方に位置し、前記オス端子の挿入時に前記オス端子と接触する摺動片と、を備えるメス端子である。
【0012】
摺動片が接触片よりもオス端子の挿入方向後方に位置するので、摺動片が接触片よりも先にオス端子と接触する。摺動片によりオス端子に付着する異物が除去される。これにより、メス端子とオス端子との間に異物が入りにくい。また、メス端子とオス端子との間で異物が絡んでメス端子とオス端子とを傷つけにくい。これらの理由で接触抵抗の増加が抑制される。
【0013】
(2)(1)のメス端子において、前記オス端子との接続時において、前記摺動片と前記オス端子との接触圧が、前記接触片と前記オス端子との接触圧よりも小さくてもよい。この場合、摺動片が接触片とオス端子との接触に影響を及ぼすことが抑制される。
【0014】
(3)(1)または(2)のメス端子において、前記接触片および前記摺動片は、前記オス端子と接触する方向に付勢される弾性変形可能な部分であり、前記挿入方向から見て、前記接触片の自然状態の頂点は、前記摺動片の自然状態の頂点よりも前記オス端子と接触する方向に突出してもよい。
【0015】
この場合、接触片および摺動片がオス端子と接触したときに、接触片が摺動片よりも大きく弾性変形する。摺動片とオス端子との接触圧を小さくし易い。このように摺動片とオス端子との接触圧を小さくした場合、摺動片が接触片とオス端子との接触に影響を及ぼすことが抑制される。
【0016】
(4)(1)ないし(3)のいずれか一つのメス端子において、一枚の板状部材により形成され、前記摺動片は、前記筒状部から延出する第1延出部が曲げ加工されることにより形成され、前記接触片は、前記筒状部から前記挿入方向において前記摺動片に対して反対方向に延出する第2延出部が曲げ加工されることにより形成されてもよい。
【0017】
この場合、一枚の板状部材により形成されるので、製造工数や製造コストを低減できる。
【0018】
(5)(1)ないし(4)のいずれか一つのメス端子において、前記摺動片と前記オス端子との接触面積は、前記接触片と前記オス端子との接触面積よりも大きくてもよい。
【0019】
同じ力がかかった時には接触面積が大きい方が圧力を小さくできる。このため、接触面積の大きい摺動片とオス端子との接触圧を低減できる。摺動片によるオス端子との接触による影響を及ぼすことが抑制される。
【0020】
(6)(1)ないし(5)のいずれか一つのメス端子において、前記摺動片は、前記筒状部および前記接触片とは異なる部材であり、前記筒状部および前記接触部には、メッキ処理が施されてもよい。
【0021】
摺動片が筒状部や接触片と異なる部材であるので、摺動片についてはメッキ処理がされなくてもよい。この場合、摺動片のメッキ処理が省略される分、製造コストを低減できる。
【0022】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のメス端子の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0023】
[実施形態1]
<1.接続システムの構成>
実施形態1に係るメス端子40を利用した接続システム100の構成について、図1図2を参照しながら説明する。図1は、接続システム100を模式的に示す斜視図である。
【0024】
接続システム100は、各種の機器間を電気的に接続するシステムであり、オスコネクタ101と、メスコネクタ102とを備える。
【0025】
(基本構成)
オスコネクタ101は、電線10の端部に設けられた端子(オス端子)20と、オス端子20が収容されるコネクタハウジング(オスハウジング)30とを備える。メスコネクタ102は、電線10の端部に設けられた端子(メス端子)40と、メス端子40が収容されるコネクタハウジング(メスハウジング)50とを備える。電線10およびその端部に設けられた端子20,40が、端子付電線と呼ばれることもある。
【0026】
(オスハウジング)
オスハウジング30は、樹脂などの絶縁材料で形成された筐体であり、例えば、金型成形によって形成される。オスハウジング30は、例えば、直方体状の外形を備え、一方の端面(被差し込み面)301に凹部31が設けられる。また、オスハウジング30には、他方の端面(背面)302から凹部31の奥の面303に貫通する端子収容室(キャビティ)32が、1以上(図の例では6つ)、設けられる。各端子収容室32には、オス端子20が個別に収容される。オス端子20は、例えば、背面302から端子収容室32に挿入され、被覆接続部21および芯線接続部22が端子収容室32に収容されるとともに接点部23が凹部31内に延出した状態で、端子収容室32に対して固定(例えば係止によって固定)される。背面302から延出した各電線10は、粘着テープ、結束バンド、などによって形成される結束具13で結束されてもよい。
【0027】
(メスハウジング)
メスハウジング50は、オスハウジング30と同様、樹脂などの絶縁材料で形成された筐体であり、例えば、金型成形によって形成される。メスハウジング50は、例えば、直方体状の外形を備え、一方の端面(差し込み面)501から他方の端面(背面)502に貫通する端子収容室(キャビティ)51が、1以上(図の例では6つ)、設けられる。各端子収容室51には、メス端子40が個別に収容される。メス端子40は、例えば、背面502から端子収容室51に挿入され、全体が端子収容室51に収容された状態で、端子収容室51に対して固定(例えば係止によって固定)される。背面502から延出した各電線10は、粘着テープ、結束バンド、などによって形成される結束具13で結束されてもよい。
【0028】
(電線)
電線10は、例えば絶縁電線であり、芯線11とその周囲を囲む絶縁被覆12とを含んで構成される。芯線11は、導電性の部材(導体)であり、各種の導電性材料(例えば、銅、銅合金、アルミニウム、あるいは、アルミニウム合金、など)で形成される。絶縁被覆12は、非導電性の柔軟な被覆であり、各種の合成樹脂材料(例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、あるいは、架橋ポリエチレン(XLPE)、など)で形成される。
【0029】
(端子)
図2は、オス端子20とメス端子40とが接続された状態を示す側面図である。なお、図2において、接続部分を部分的に断面で示している。図3は、オス端子20とメス端子40との接続部分を上方から示す説明図である。なお、図3において、摺動片45とオス端子20との接触部分と、接触片44とオス端子20との接触部分とが斜線で示されている。
【0030】
オス端子20の一端側(基端側)には、被覆接続部21と芯線接続部22とが設けられる。同様に、メス端子40の一端側(基端側)にも、被覆接続部41と芯線接続部42とが設けられる。被覆接続部21,41は、絶縁被覆12の端部に機械的に接続される。被覆接続部21,41と絶縁被覆12との間の接続は、適宜の方法(例えば、圧着など)によって実現される。また、絶縁被覆12の端部からは、一定の長さ分だけ芯線11が延び出た状態(つまり、一定の長さ分だけ芯線11の周囲から絶縁被覆12が剥がされて芯線11が露出した状態)とされており、芯線接続部22,42は、この延び出た芯線11に機械的および電気的に接続される。芯線接続部22,42と芯線11との間の接続は、適宜の方法(例えば、圧着、超音波溶接、抵抗溶接、半田付け、など)によって実現される。
【0031】
オス端子20の他端側(先端側)には、相手方の端子と電気的に接続される接点部23が設けられる。本実施形態においては、オス端子20の接点部23は、細長い板形状である。ただし、接点部23は、この形状に限らず、例えば、棒状、タブ状、ピン状、などであってもよい。
【0032】
メス端子40は、筒状部43と、筒状部43の内側に位置する接触片44と、摺動片45と、を備える。
【0033】
筒状部43には、オス端子20が挿入される。本実施形態においては、筒状部43は四角柱形状に形成される。筒状部43の内側には、底面43aと上面43bと一対の側面43cとが設けられる。筒状部43の底面43aに沿ってオス端子20の接点部23が挿入される。接触片44は、筒状部43の内側に位置し、オス端子20との接続時にはオス端子20(接点部23)と接触する。これにより、接触片44は、オス端子20と電気的に接続される。接触片44は、筒状部43の上面43bから筒状部43の内側に延出する。接触片44は、弾性変形可能な部分である。接触片44は、例えばバネ片である。接触片44は、例えば、板状部材が曲げ加工されることにより形成される。図2に示すように、接触片44は、例えば、オス端子20の挿入方向Aからみて右側面視において、時計回りに折り曲げられている。接触片44は、オス端子と接触する方向に付勢される。接触片44の下面には例えば凸部44aが設けられる。凸部44aは例えばプレス加工により形成される。
【0034】
本実施形態においては、摺動片45は、筒状部43の内側に位置する。なお、摺動片45は、筒状部43の外側に位置していてもよい。摺動片45は、接触片44よりもオス端子20の挿入方向A(図2参照)後方に位置する。摺動片45は、オス端子20のメス端子40への挿入時にオス端子20(接点部23)と接触する。摺動片45は、筒状部43の上面43bから筒状部43の内側に延出する。摺動片45もまた、弾性変形可能な部分である。摺動片45は、例えばバネ片である。摺動片45は、例えば、板状部材が曲げ加工されることにより形成される。図2に示すように、摺動片45は、例えば、オス端子20の挿入方向Aからみて右側面視において、反時計回りに折り曲げられている。摺動片45は、オス端子20と接触する方向に付勢される。なお、本実施形態においては、接触片44と摺動片45とは、弾性変形可能な部分としているが、これに限定されない。接触片44および摺動片45は、オス端子20の接点部23と接触可能な位置、大きさ、および形状であれば、弾性変形不可能であってもよい。
【0035】
(接触片44と摺動片45との関係)
上述のメス端子40がオス端子20と接続する時の、摺動片45とオス端子20との接触圧は、接触片44とオス端子20との接触圧よりも小さいことが好ましい。また、摺動片45とオス端子20との接触面積は、接触片44とオス端子20との接触面積よりも大きいことが好ましい。また、摺動片45とオス端子20との接触幅は、接触片44とオス端子20との接触幅よりも大きいことが好ましい。なお、図3に示す斜線部Bは、接続時における接触片44とオス端子20との接触部分であり、斜線部Cは、接続時における摺動片45とオス端子20との接触部分である。図3の斜線部B、Cに示すように、斜線部Bは斜線部Cよりも小さい。つまり、接触片44とオス端子20との接触面積は、摺動片45とオス端子20との接触面積よりも小さい。このため、接触片44と摺動片45とに対して同じ力がかかった場合に、接触面積が大きい摺動片45の方が接触圧を小さくすることができる。このようにして、摺動片45とオス端子20との接触圧を小さくしている。ただし、摺動片45とオス端子20との接触圧を小さくする構成として、例えば摺動片45の頂点の位置をオス端子20の接点部23の高さに近付けるなど、他の構成が採用されてもよい。
【0036】
図4は、接触片44の自然状態の頂点の位置と、摺動片45の自然状態の頂点の位置とを、オス端子20の挿入方向Aに沿って示す説明図である。なお、接点部23を仮想線により接触片44および摺動片45とともに図示している。
【0037】
図4に示すように、自然状態の接触片44の頂点Dの位置は、オス端子20がメス端子40の筒状部43の底面43aに沿って挿入された場合にオス端子20の接点部23の上面23aよりも下方に位置する。なお、自然状態とは、オス端子20の接続前の状態であり、頂点Dに対して負荷のかかっていない状態である。頂点Dは、接触片44の下端部分である。頂点Dは凸部44aの頂点でもあり、後述する頂点Eと比較して、幅方向に広がりがない。接触片44の自然状態においては頂点Dの位置と接点部23の位置とが干渉する。したがって、オス端子20が筒状部43内に挿入されたときに、接点部23が頂点Dを押し上げるようにして、接点部23と頂点Dとが接触する。
【0038】
また、図4に示すように、自然状態の摺動片45の頂点Eの位置は、オス端子20がメス端子40の底面43aに沿って挿入された場合にオス端子20の接点部23の上面43bよりも下方に位置する。上述のとおり、自然状態とは、オス端子20の接続前の状態であり、頂点Eに対して負荷のかかっていない状態である。頂点Eは、摺動片45の下端部分である。頂点Eは摺動片45の幅方向と同等の幅を有している。摺動片45の自然状態においては頂点Eの位置と接点部23の位置とが干渉する。したがって、オス端子20が筒状部43内に挿入されたときに、接点部23が頂点Eを押し上げるようにして、接点部23と頂点E(および頂点Eの周辺部分)とが接触する。なお、頂点Eは頂点Dに比べて上方に位置する。したがって、摺動片45の弾性変形が接触片44の弾性変形よりも小さな変形でよい。これにより、接触片44とオス端子20との接触圧よりも摺動片45とオス端子20との接触圧の方が小さくなりやすい。
【0039】
また、オス端子(オス端子金具)20およびメス端子(メス端子金具)40は、いずれも、導電性部材であり、基体部(メス端子40においては基体部40a)と、これを覆うメッキ層(メス端子40においてはメッキ層40b)とを含んで構成される。図5は、メス端子40における接触片44および摺動片45を拡大して示す説明図である。
【0040】
基体部40aは、例えば、銅、黄銅、銅合金、などにより形成される。メッキ層40bは、例えば、錫(Sn)、錫合金(例えば、錫に、銀、銅、ビスマス、などが添加された錫合金)、貴金属(例えば、金、銀)、などにより形成される。メッキ層40bが設けられることによって、端子間の接触抵抗の増大が抑制される。すなわち、メッキ層40bが設けられることによって、例えば、基体部40aの表面に酸化皮膜などが形成されにくくなるため、皮膜抵抗(ひいては、接触抵抗)の増大が抑制される。は、例えば、錫(Sn)、錫合金(例えば、錫に、銀、銅、ビスマス、などが添加された錫合金)、貴金属(例えば、金、銀)、などにより形成される。メッキが設けられることによって、端子間の接触抵抗の増大が抑制される。すなわち、メッキが設けられることによって、例えば、基体部の表面に酸化皮膜などが形成されにくくなるため、または、メッキ層40b上に形成される酸化被膜は破壊できるので、皮膜抵抗(ひいては、接触抵抗)の増大が抑制される。
【0041】
(オス端子20とメス端子40との接続に至るまで)
図6は、オス端子20とメス端子40とが接続されるまでの途中の状態を示す側面図である。図7は、オス端子20とメス端子40とが接続されたときの状態を示す側面図である。なお、図6および図7において、部分的に断面で示している。
【0042】
メス端子40の筒状部43にオス端子20の接点部23が挿入されることにより、メス端子40とオス端子20とが電気的に接続される。図6に示すように、メス端子40の筒状部43にオス端子20の接点部23が挿入されるときに、まず摺動片45が接点部23に接触する。このとき、摺動片45の頂点Eがオス端子20の接点部23の上面23aと接触する。このように摺動片45の頂点E(およびその周辺部分)がオス端子20の接点部23の上面23aに持ち上げられる。そして、頂点E(およびその周辺部分)がオス端子20の接点部23の上面23aに接触する。その後、接点部23の上面23aを摺動片45の頂点E(およびその周辺部分)が摺動する。これにより、接点部23の上面23aの上方にある塵や埃等の異物が摺動片45により除去される。なお、異物は摺動片45に押されて、オス端子20の挿入方向に対して反対方向に移動される。したがって、オス端子20の接点部23において、接触片44と接触する位置上から異物が除去される。その後、図7に示すように、接触片44が接点部23に接触する。このとき、接触片44の頂点Dが接点部23の上面23aに持ち上げられる。そして、頂点Dがオス端子20の接点部23の上面23aに接触する。このようにして、摺動片45により異物が除去された後の接点部23に接触片44が接触するので、接触片44と接点部23との間に異物が入りこむことが抑制される。また、メス端子40とオス端子20との間で異物が絡んでメス端子40とオス端子20とを傷つけることが抑制される。
【0043】
また、自然状態の接触片44の頂点Dは、自然状態の摺動片45の頂点Eよりもオス端子20と接触する方向に突出している。このため、接点部23との接触により、接触片44の方が摺動片45よりも弾性変形されている。このため、接点部23との接触圧は、接触片44の方が摺動片45よりも大きい。つまり、摺動片45と接点部23との接触圧は、接触片44と接点部23との接触圧よりも小さい。このため、接点部23が摺動片45により影響を受け難い。
【0044】
(メス端子40の構成)
本実施形態においては、メス端子40は一枚の板状部材により形成される。図8は、メス端子40の組立前の板状部材の状態を示す説明図である。
【0045】
板状部材には、筒状部43を構成する底面43a、上面43b、一対の側面43c、および保持面43dが連なった状態で並設される。底面43a、上面43b、および、一対の側面43cは、折り曲げ加工されて、筒状部43の底面43a、上面43b、一対の側面43cとなる。保持面43dは、一方の側面43cと重なって、一方の側面43cに接合される。これにより、筒状部43の形状が四角柱の状態で維持される。
【0046】
筒状部43を構成する底面43aから、電線把持部46が延設される。電線把持部46には、芯線11を把持するための芯線接続部42を構成する一対の第1腕部142が延設される。また、電線把持部46には、電線10の絶縁被覆12の部分を把持するための被覆接続部41を構成する一対の第2腕部141もまた延設される。一対の第1腕部142は、電線把持部46上に芯線11が載置された状態で折り曲げられて、芯線接続部42を形成する。また、一対の第2腕部141もまた、電線把持部46上に絶縁被覆12が載置された状態で折り曲げられて、被覆接続部41を形成する。
【0047】
筒状部43を構成する上面43bから、摺動片45を構成する第1延出部145が延出される。第1延出部145は、曲げ加工されることにより、摺動片45が形成される。また、同様に、筒状部43を構成する上面43bから、接触片44を構成する第2延出部144が延出される。第2延出部144は、曲げ加工されることにより、接触片44が形成される。
【0048】
<2.効果等>
以上のように構成されたメス端子40は、オス端子20と接続されるメス端子40であって、オス端子20が挿入される筒状部43と、筒状部43の内側に位置し、オス端子20と接触することによりオス端子20と電気的に接続される接触片44と、接触片44よりもオス端子20の挿入方向A(図2参照)の後方に位置し、オス端子20の挿入時にオス端子20と接触する摺動片45と、を備える。これにより、摺動片45が接触片44よりも先にオス端子20と接触する。したがって、摺動片45が接触片44と接触する前にオス端子20上を摺動することによって、摺動片45によりオス端子20に付着する異物が除去される。このため、メス端子40とオス端子20との間に異物が入らない。また、メス端子40とオス端子20との間で異物が絡んでメス端子40とオス端子20との接続に影響を与えにくい。例えば、メス端子40とオス端子20とを構成するメッキ層が剥がれることによって、接触抵抗が増大することが抑制される。
【0049】
また、オス端子20との接続時において、摺動片45とオス端子20との接触圧が、接触片44とオス端子20との接触圧よりも小さい。このため、摺動片45とオス端子20との接触によって、オス端子上のメッキ層が剥がれるなどが抑制される。本実施形態においては、接触片44および摺動片45は、オス端子20と接触する方向に付勢される弾性変形可能な部分である。そして、挿入方向Aから見て、接触片44の自然状態の頂点Dは、摺動片45の自然状態の頂点Eよりもオス端子20と接触する方向に突出する。そうすると、接触片44と摺動片45とがオス端子20と接触するときに、接触片44が摺動片45よりも大きく弾性変形する。つまり、摺動片45の弾性変形少なくなり、摺動片45とオス端子20との接触圧が小さくなる。摺動片45とオス端子20との接触圧が小さくなり、摺動片45とオス端子20との接触による影響が低減される。
【0050】
また、摺動片45とオス端子20との接触面積は、接触片44とオス端子20との接触面積よりも大きい。特に、本実施形態においては、接触片44の下面には例えば凸部44aが設けられるので、凸部44aがオス端子20の接点部23の上面23aと接触する。これに対し、摺動片45は、オス端子20の接点部23の上面23aと接触する部分が凹凸のない平面状である。このようにして、摺動片45とオス端子20との接触面積が、接触片44とオス端子20との接触面積よりも大きくなるようにしている。これにより、同じ力がかかった時には接触面積が大きい方が圧力を小さくできる。摺動片45とオス端子20との接触圧を低減できる。したがって、摺動片45によるオス端子20との接触による影響が低減される。
【0051】
[変形例1]
図9は、オス端子20と変形例1に係るメス端子240とが接続されたときの状態を示す側面図である。なお、図9においても、図6および図7と同様に、部分的に断面で示している。
【0052】
図9に示すメス端子240は、メス端子40の接触片44の代わりに接触片244を備える。接触片44は、オス端子20の挿入方向Aからみて右側面視において、時計回りに折り曲げられている。これに対し、接触片244は、オス端子20の挿入方向Aからみて右側面視において、挿入方向A後方へ折り曲げられて、筒状部43の上面43bに沿って内側に入り込んだ後、反時計回りに折り曲げられている。
【0053】
このようなメス端子240によっても、摺動片45が接触片244と接触する前にオス端子20上を摺動することによって、摺動片45によりオス端子20に付着する異物が除去される。
【0054】
[変形例2]
図10は、オス端子20と変形例2に係るメス端子340とが接続されたときの状態を示す側面図である。なお、図10においても、図6および図7と同様に、部分的に断面で示している。
【0055】
図10に示すメス端子340は、メス端子40の摺動片45の代わりに摺動片345を備える。摺動片345は、筒状部43および接触片44とは異なる部材である、また、摺動片345は、筒状部43および接触片44には、メッキ処理が施される。
【0056】
摺動片345は、筒状部43の上面43bに溶接などの方法により接合される。摺動片345は別部材であり、筒状部43および接触片44は一枚の板状部材により形成される。筒状部43および接触片44については、実施形態1と同様に、基体部40aと、これを覆うメッキ層40bとを含んで構成される。これに対し、摺動片345は、メッキ処理が施されないで形成される。したがって、摺動片345にメッキ処理されないので、その分製造コストが安くなる。
【0057】
[その他]
上記の実施形態に係るメス端子40において、摺動片45とオス端子20との接触圧を小さくする構成は、上記に例示されたものに限られない。例えば、摺動片45とオス端子20との接触圧を小さくする構成として、例えば摺動片45を形成する板厚を薄くする構成も採用可能である。
【0058】
また、上記の実施形態に係るメス端子40の接触片44および摺動片45は、同一の一枚の板状部材により形成される構成が採用されるが、これに限られない。例えば、接触片44が別部材により構成されてもよく、接触片44および摺動片45がともに別部材により形成されてもよい。
【0059】
上記の各実施形態に係るメス端子40を用いた接続システム100は、車両に搭載される機器間の接続に用いられてもよいし、それ以外の各種の機器間の接続に用いられてもよい。
【0060】
なお、上記の各実施形態および各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【符号の説明】
【0061】
10 電線
11 芯線
12 絶縁被覆
13 結束具
20 オス端子
21,41 被覆接続部
22,42 芯線接続部
23 接点部
23a 上面
30 オスハウジング
31 凹部
32 端子収容室
40,240,340 メス端子
40a 基体部
40b メッキ層
43 筒状部
43a 底面
43b 上面
43c 側面
43d 保持面
44,244 接触片
44a 凸部
45,345 摺動片
46 電線把持部
50 メスハウジング
51 端子収容室
100 接続システム
101 オスコネクタ
102 メスコネクタ
141 第2腕部
142 第1腕部
144 第2延出部
145 第1延出部
302 背面
303 面
502 背面
A 挿入方向
B 斜線部
C 斜線部
D 頂点
E 頂点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10