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特開2024-16273作業関連情報管理装置および作業関連情報管理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016273
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】作業関連情報管理装置および作業関連情報管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20240101AFI20240130BHJP
【FI】
G06Q50/02
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023196361
(22)【出願日】2023-11-20
(62)【分割の表示】P 2022194651の分割
【原出願日】2019-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205350
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 芳正
(74)【代理人】
【識別番号】100117617
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭策
(72)【発明者】
【氏名】小島 右資
(57)【要約】      (修正有)
【課題】圃場内で走行する作業車両の位置情報に基づいて特定される圃場の形状が、基準圃場の形状とずれがある場合であっても、作業車両による作業が基準圃場で行われたとして作業関連情報を管理することができる作業関連情報管理装置および作業関連情報管理システムを提供する。
【解決手段】圃場内を走行しながら作業可能な作業車両と、作業車両が圃場内で行った作業についての作業関連情報を、圃場毎に管理する管理サーバと、を含む作業関連情報管理システムにおいて、管理サーバは、作業車両の位置情報に基づいて、作業車両が作業しながら走行した作業圃場の形状を特定する圃場形状特定部を備え、圃場形状特定部が特定する作業圃場の形状を、基準圃場の形状と比較し、作業圃場と基準圃場とが重複する場合には、作業圃場を基準圃場とみなす。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場内を作業しながら走行する作業車両の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記位置情報取得部によって取得された前記作業車両の前記位置情報に基づいて、前記作業車両が作業しながら走行した作業圃場の形状を特定する圃場形状特定部と、
を備え、
前記圃場形状特定部によって特定される前記作業圃場の形状を、基準圃場の形状と比較し、前記作業圃場と前記基準圃場とが重複する場合には、前記作業圃場を前記基準圃場とみなすことを特徴とする作業関連情報管理装置。
【請求項2】
前記圃場形状特定部は、前記作業車両とは異なる基準作業車両の位置情報に基づいて前記基準圃場の形状を特定する、請求項1に記載の作業関連情報管理装置。
【請求項3】
前記作業車両と、請求項1または2に記載の作業関連情報管理装置とを含む、作業関連情報管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業関連情報管理装置および作業関連情報管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、農作業の対象である圃場の形状を把握するために、GPS(Global Positioning System)等の測位装置を搭載したトラクタを圃場内で走行させながらトラクタの位置情報を取得し、この位置情報から圃場の形状を特定する技術が開示されている。
下記特許文献2には、測位装置を搭載したコンバインで圃場内の作物の収穫することによって、収穫した作物の収穫量およびコンバインの位置情報を取得し、圃場内における収穫量の分布を示す収量マップを生成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-133701号公報
【特許文献2】特許第5778108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
位置情報に基づいて特定される圃場の形状には、測位装置の個体差、走行経路の違い等の測位誤差に起因してずれが生じるおそれがある。
一方、近年、普及が進む営農システムでは、耕耘から収穫までの一連の農作業の見える化が図られている。一連の農作業の見える化を達成するためには、耕耘から収穫までの一連の農作業に関する作業関連情報を、圃場毎に適切に管理する必要がある。
【0005】
営農システムでは、農作業中に取得される位置情報に基づいて、農作業が行われた圃場が特定される。したがって、農作業中に取得される位置情報に基づいて特定される圃場の形状と、営農システムで管理されている圃場の形状とにずれが生じる場合には、同一の圃場に対して行われた農作業に関する作業関連情報が、異なる圃場に関する作業関連情報として取り扱われてしまう。これにより、一連の農作業に関する作業関連情報を圃場毎に管理できないという不都合が生じる。
【0006】
そこで、この発明の一つの目的は、圃場内で走行する作業車両の位置情報に基づいて特定される圃場の形状が、基準圃場の形状とずれがある場合であっても、作業車両による作業が基準圃場で行われたとして作業関連情報を管理することができる作業関連情報管理装置および作業関連情報管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の一実施形態は、圃場内を作業しながら走行する作業車両の位置情報を取得する位置情報取得部と、前記位置情報取得部によって取得された前記作業車両の前記位置情報に基づいて、前記作業車両が作業しながら走行した作業圃場の形状を特定する圃場形状特定部とを備え、前記圃場形状特定部によって特定される前記作業圃場の形状を、基準圃場の形状と比較し、前記作業圃場と前記基準圃場とが重複する場合には、前記作業圃場を前記基準圃場とみなす作業関連情報管理装置を提供する。
【0008】
この装置によれば、位置情報取得部によって取得される作業車両の位置情報に基づいて特定される作業圃場と、基準圃場とが重複する場合に、作業圃場内での作業が、作業車両が基準圃場内で作業を行ったものとみなされる。そのため、作業圃場の形状と基準圃場の形状とにずれが生じる場合であっても、作業車両による作業が基準圃場で行われたとして作業関連情報を管理することができる。したがって、同じ圃場で行った作業が、別の圃場で行った作業として別々に管理されることを抑制でき、作業関連情報管理装置に管理された作業関連情報を参照しやすくなる。
【0009】
この発明の一実施形態では、前記圃場形状特定部は、前記作業車両とは異なる基準作業車両の位置情報に基づいて前記基準圃場の形状を特定する。
同一の圃場が作業対象である場合にも、作業車両の種類によって走行経路が異なる場合がある。たとえば、作業車両がコンバインである場合と、作業車両がトラクタである場合とでは、僅かに異なる走行経路を走行することがある。また、仮に種類が異なる作業車両が同じ走行経路を走行したつもりであっても、実際の走行軌跡は、圃場内を走行する度に僅かに異なる。同一圃場内で作業を行っているにもかかわらず、走行軌跡が僅かに異なるからといって異なる圃場での作業として扱われてしまうと、作業関連情報の管理が複雑化する。
【0010】
そこで、作業圃場の形状が作業車両の位置情報に基づいて特定され、基準圃場の形状が作業車両とは異なる基準作業車両の位置情報に基づいて特定される構成であれば、作業車両の種類が基準作業車両の種類と異なる場合であっても、作業関連情報を正しく管理することができる。
この発明の他の実施形態は、前記作業車両と前記作業関連情報管理装置とを含む、作業関連情報管理システムを提供する。この構成によれば、上述の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る作業関連情報管理システムの構成を示す模式図である。
図2図2は、前記作業関連情報管理システムに備えられる作業車両の電気的構成を示すブロック図である。
図3図3は、前記作業関連情報管理システムに備えられる作業関連情報管理サーバの電気的構成を示すブロック図である。
図4図4は、前記作業関連情報管理サーバに記憶される圃場情報管理テーブルの一例である。
図5図5は、前記作業関連情報管理サーバに備えられるサーバ制御部によって特定される基準圃場の形状および作業圃場の形状を比較するための模式図である。
図6図6は、前記サーバ制御部によって生成されるマップの模式図である。
図7図7は、前記作業関連情報管理サーバに記憶される作業関連情報管理テーブルの一例である。
図8図8は、前記サーバ制御部による圃場判定処理を説明するためのフローチャートの一例である。
図9図9は、ユーザ端末に表示される管理圃場についての作業関連情報についての画像の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、この発明の実施の形態を添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る作業関連情報管理システム1の構成を示す模式図である。図1を参照して、作業関連情報管理システム1は、圃場内で作業車両が行う作業に関連する情報(作業関連情報)を、圃場毎に適切に管理するシステムである。
作業関連情報管理システム1は、圃場内を走行しながら作業可能な作業車両2と、作業車両2が圃場内で行った作業についての作業関連情報を、圃場毎に管理する管理サーバ4とを含む。管理サーバ4によって管理されている圃場を管理圃場という。管理サーバ4は、作業関連情報管理装置の一例である。
【0013】
作業車両2は、通信網6を介して、管理サーバ4と無線通信可能である。管理サーバ4は、管理サーバ4を運営する管理事業者の管理センタ5内に配置されている。管理サーバ4は、管理センタ5内のオペレータによって操作される。管理サーバ4は、作業車両2だけでなく、管理圃場の所有者が操作するユーザ端末9とも、無線通信可能である。ユーザ端末9は、外部端末の一例である。
【0014】
この明細書において、作業車両2には、走行機と、走行機に牽引される作業機とからなる作業車両や、走行機と作業機とが一体になっている作業車両が含まれる。
走行機と作業機とが一体となっている作業車両としては、たとえば、田植機やコンバイン等が挙げられる。コンバインとしては、普通型コンバインや自脱型コンバイン等が挙げられる。この実施形態では、作業車両2が普通型コンバインである場合を例にとって説明する。
【0015】
なお、この実施形態とは異なり、走行機が作業機を牽引する構成における走行機は、たとえば、トラクタである。トラクタに牽引される作業機としては、たとえば、肥料散布機(施肥機)、薬剤散布機、ロールベーラ、耕耘機、プラウ、レベラー、草刈機、播種機、収穫機等が挙げられる。
作業車両2は、走行部21、エンジン22、脱穀装置23、グレンタンク24、排出オーガ26、および刈取部27を含む。走行部21は、たとえば、左右一対のクローラ式走行装置によって構成されている。エンジン22は、作業車両2の各部を駆動するための動力を発生させる。刈取部27は、圃場内で生育した作物を刈り取る。脱穀装置23は、刈取部27によって刈り取られた作物を脱穀処理する。グレンタンク24は、脱穀粒を貯留する。排出オーガ26は、グレンタンク24内の脱穀粒を作業車両2の外部に排出するために脱穀粒を搬送する。
【0016】
図2は、作業車両2の電気的構成を示すブロック図である。
作業車両2は、制御部(以下、「作業車両制御部40」)を含む。作業車両制御部40は、CPUおよびメモリ41(揮発性メモリ、不揮発性メモリ等)を備えたマイクロコンピュータを含む。作業車両制御部40は、作業車両2の動作(前進、後進、停止、旋回等の動作)を制御する。
【0017】
作業車両制御部40には、複数のコントローラ(コントローラ群42)、測位データ算出部43、操作部44、無線通信部45、記憶部46および収穫センサ48が電気的に接続されている。
複数のコントローラは、作業車両2の各部を制御するためのものである。複数のコントローラには、エンジン22の回転数等を制御するエンジンコントローラ、刈取部27の昇降を制御する昇降コントローラ、作業車両2の走行部21の一対のクローラを個別に駆動することで作業車両2の走行を制御する走行コントローラ等が含まれる。
【0018】
測位データ算出部43は、作業車両2に取り付けられた衛星信号受信用アンテナ47に電気的に接続されている。衛星信号受信用アンテナ47は、衛星測位システムを構成する測位衛星からの信号を受信するものである。衛星測位システムは、たとえば、GNSS(Global Navigation Satellite System)である。衛星信号受信用アンテナ47で受信された測位信号は、測位データ算出部43に入力される。
【0019】
測位データ算出部43は、所定の時間間隔(たとえば、1秒間隔)の作業車両2の測位データを算出する。測位データには、作業車両2(厳密には、衛星信号受信用アンテナ47)の位置情報(たとえば緯度・経度情報)と、位置情報に対応する時刻情報とが含まれる。作業車両制御部40は、測位データ算出部43から測位データを取得する。
無線通信部45は、管理サーバ4と無線通信するための通信インターフェースである。記憶部46は、不揮発性メモリ等の記憶デバイスから構成されている。操作部44は、作業車両2の運転席付近に設けられ、作業者による手動操作が可能である。操作部44には、各種操作レバーやスイッチが含まれる。
【0020】
収穫センサ48は、作業車両2が収穫した作物の収穫量を算出するための信号を出力する。収穫センサ48は、たとえば、歪みゲージや圧電素子等である。
作業車両2によって作物から脱穀された穀粒は、グレンタンク24に投入される。収穫センサ48は、グレンタンク24に投入される穀粒が収穫センサ48に衝突する際の衝撃の大きさを検出する。収穫センサ48は、検出された衝撃の大きさに基づく信号を出力する。
【0021】
作業車両制御部40は、収穫センサ48からの出力信号に基づいて、所定時間毎(たとえば、1秒毎)の収穫量を算出する収穫量算出部49を含む。
作業車両制御部40は、エンジン22が起動されてからエンジン22が停止されるまでの間の時系列データを管理サーバ4に向けて送信する。時系列データには、位置情報、時刻情報、機番、型式、作物種別、および作業データが含まれる。機番とは、作業車両2の一台ずつに設定された番号である。時系列データに含まれる位置情報は、所定の時間間隔で取得された作業車両2の位置情報である。
【0022】
本実施形態では、作業車両2がコンバインであるため、作業データには、所定時間毎の収穫量が含まれている。本実施形態とは異なり、作業車両2が、田植作業と同時に施肥作業が可能な田植機である場合には、時系列データには、作業データとして、所定時間毎の施肥量が含まれる。本実施形態とは異なり、作業車両2が、作業機として耕耘機が連結されたトラクタである場合には、時系列データには、作業データとして、耕耘機の所定時間毎の回転数等が含まれる。
【0023】
図3は、管理サーバ4の電気的構成を示すブロック図である。
管理サーバ4は、管理サーバ4を制御する制御部(以下では、「サーバ制御部60」という。)を含む。サーバ制御部60は、CPUおよびメモリ(揮発性メモリ、不揮発性メモリ等)61を備えたマイクロコンピュータを含む。サーバ制御部60には、無線通信部62、操作表示部63、操作部64および記憶部65が電気的に接続されている。
【0024】
無線通信部62は、サーバ制御部60が作業車両2と無線通信するための通信インターフェースである。操作表示部63は、たとえば、タッチパネルディスプレイである。操作部64は、たとえば、キーボード、マウス等を含む。記憶部65は、ハードディスク、不揮発性メモリ等の記憶デバイスから構成されている。
記憶部65には、圃場情報管理テーブル66が記憶されている。図4は、圃場情報管理テーブル66の一例である。図4に示すように、圃場情報管理テーブル66には、管理圃場の圃場ID、圃場名称および圃場位置情報が記憶されている。圃場IDは、管理圃場毎に予め設定された番号のことである。圃場位置情報は、対応する管理圃場の位置および形状を特定するための位置情報である。
【0025】
サーバ制御部60は、無線通信部62を介して、作業車両2から送信される時系列データを受信する。サーバ制御部60は、作業車両2の位置情報を取得する位置情報取得部の一例であり、作業車両2によって行われた作業の作業データを取得する作業データ取得部の一例でもある。サーバ制御部60は、受信した時系列データCを記憶部65に記憶するとともにメモリ61に保存する。
【0026】
サーバ制御部60は、メモリ61に保存された時系列データCを処理対処データとして、作業関連情報管理処理(後述する図8を参照)を行う。具体的には、サーバ制御部60は、処理対象データに対応する管理圃場を特定し、かつ、処理対象データに基づいてマップMを生成し、処理対象データおよびマップMを管理圃場に関連付けて管理する。その後、サーバ制御部60は、メモリ61から時系列データCを削除する。
【0027】
サーバ制御部60は、作業関連情報管理処理に関連して、圃場形状特定部70、重複度合判定部71、マップ生成部72および情報管理部73を含む。
圃場形状特定部70は、処理対象データに含まれる作業車両2の位置情報に基づいて作業車両2が作業を行った圃場(作業圃場)の形状を特定する。そして、圃場形状特定部70は、管理圃場のうち作業圃場に最も近接する管理圃場を基準圃場として、その形状を特定する。たとえば、重心位置が最も作業圃場の重心位置に近い管理圃場が基準圃場として扱われる。
【0028】
基準圃場の圃場位置情報は、処理対象データよりも以前に取得された時系列データCに含まれる作業車両2の位置情報である。たとえば、基準圃場の圃場位置情報は、昨年度(第1時期)において作業車両2が収穫作業を行った際の作業車両2の位置情報であり、処理対象データに含まれる作業車両2の位置情報は、今年度(第2時期)において作業車両2が収穫作業を行った際の作業車両2の位置情報である。この場合、基準圃場の形状は、第1時期に作物を収穫しながら走行した作業車両2の位置情報に基づいて特定され、作業圃場の形状は、第1時期よりも後の第2時期に作物を収穫しながら走行した作業車両2の位置情報に基づいて特定される。
【0029】
図5は、圃場形状特定部70によって特定される基準圃場の形状および作業圃場の形状を比較するための模式図である。
圃場形状特定部70は、たとえば、ポリゴン(多角形)を形成することによって、基準圃場の形状と作業圃場の形状とを特定する。詳しくは、圃場形状特定部70は、基準圃場の圃場位置情報に基づいて、図5に実線で示すポリゴン80(多角形)を生成し、処理対象データに含まれる作業車両2の時間毎の位置情報に基づいて、図5に二点鎖線で示すポリゴン81(多角形)を生成する。
【0030】
ポリゴンは、たとえば、凸包である。凸包とは、与えられた点を全て包含する最小の凸多角形をいう。作業圃場のポリゴン81は、処理対象データに含まれる作業車両2の全ての位置情報を包含する最小の凸多角形である。基準圃場のポリゴン80は、基準圃場の圃場位置情報を全て包含する最小の凸多角形である。
重複度合判定部71は、圃場形状特定部70によって特定された作業圃場の形状と、基準圃場の形状とを比較し、作業圃場と基準圃場との重複度合が、所定の度合以上であるか否かを判定する。
【0031】
具体的には、作業圃場と基準圃場との重複度合が所定の度合以上であるか否かの判定は、作業圃場のポリゴン81において基準圃場のポリゴン80と重複している部分の面積が、作業圃場のポリゴン81の全体の面積に対して、所定の割合以上であるか否に基づいて行われる。所定の割合は、たとえば、90%である。
マップ生成部72は、処理対象データに含まれる作業車両2の位置情報と、当該位置情報に対応する作業データとに基づいてマップM(図6を参照)を生成する。本実施形態のように、作業車両2がコンバインである場合、マップMは、収量マップである。収量マップは、圃場内の収穫量の分布状況を示すマップである。
【0032】
マップMでは、圃場が複数のメッシュmに分割され、各メッシュmに作業データ(収穫量)が付与される。各メッシュmには、そのメッシュm内の位置に作業車両2が存在するときに測定された収穫量の合計の値が付与される。
各メッシュmには番号が付されている。i番目のメッシュmにおける収穫量の合計の値には、符号「Qi」を付す。圃場にメッシュmがn個付与されている場合、iはN以下の自然数である(1≦i≦n)。
【0033】
サーバ制御部60は、マップ生成部72によって生成されたマップMを記憶部65に記憶する。
サーバ制御部60は、収量マップに基づいて生成可能な施肥マップを記憶部65に記憶させてもよい。施肥マップは、収穫の翌年度に圃場内の各位置において散布すべき肥料の量を示すマップである。施肥マップは、圃場において収穫量が少なかった箇所には散布する肥料の量が多くなり、圃場において収穫量が多かった箇所には散布する肥料の量が少なくなるように生成される。
【0034】
本実施形態とは異なり、作業車両2が、植付作業とともに施肥作業を実行可能な田植機である場合、マップMは、散布済み肥料マップである。散布済み肥料マップは、圃場内の各位置において実際に散布された肥料の量を示すマップである。
本実施形態とは異なり、作業車両2が、作業機として耕耘機が連結されたトラクタである場合、マップMは、耕耘マップである。耕耘マップは、圃場内の各位置における耕耘機の回転数を示すマップである。
【0035】
記憶部65には、圃場情報管理テーブル66とは別に、作業関連情報管理テーブル67が記憶されている。図7は、作業関連情報管理テーブル67の一例である。作業関連情報管理テーブル67には、作業関連情報として、時系列データID、圃場ID、作業期間、機番、合計作業データ、作物種別、マップ種別、マップID等が記憶されている。
時系列データIDとは、記憶部65に記憶されている時系列データCに設定される番号のことである。各時系列データCには、異なる時系列データIDが設定されている。
【0036】
作業期間は、対応する時系列データCに含まれる時刻情報のうち最も早い時刻から最も遅い時刻までの期間である。合計作業データとは、対応する時系列データCに含まれる作業データの合計である。本実施形態では、作業データは収穫量であるため、合計作業データは、合計収穫量である。マップIDとは、マップ生成部72によって生成されたマップM毎に設定される番号のことである。マップ種別とは、マップMの種別であり、マップ種別としては、たとえば、収量マップ、散布済み肥料マップ、耕耘マップ等が挙げられる。
【0037】
情報管理部73は、重複度合判定部71による判定結果に基づいて、作業データ(収穫量)やマップMを、管理圃場と関連付けて管理する。情報管理部73は、重複度合判定部71による判定結果に基づいて、作業関連情報管理テーブル67に、処理対象データに基づいて、時系列データID、圃場ID、作業期間、機番、合計収穫量、作物種別等を追加する。
【0038】
作業関連情報管理テーブル67に追加される圃場IDは、重複度合判定部71による判定結果によって異なる。詳しくは、情報管理部73は、作業圃場と基準圃場との重複度合が所定の度合以上であると重複度合判定部71が判定した場合には、処理対象データに対応する圃場IDの欄には、基準圃場の圃場IDを追加する。これにより、処理対象データに含まれる作業データ(収穫量)が、作業関連情報として、基準圃場と関連付けられる。
【0039】
情報管理部73は、作業圃場と基準圃場との重複度合が所定の度合よりも小さいと重複度合判定部71が判定した場合には、圃場情報管理テーブル66に新規管理圃場として作業圃場の位置情報を追加し、当該新規管理圃場に新たな圃場IDを設定する。その後、情報管理部73は、処理対象データに対応する圃場IDの欄には、新規管理圃場の圃場IDを追加する。これにより、処理対象データに含まれる作業データ(収穫量)が、作業関連情報として、新規管理圃場と関連付けられる。
【0040】
情報管理部73は、処理対象データに基づいてマップ生成部72がマップMを生成すると、生成されたマップMのマップIDおよびマップ種別を、処理対象データに対応するマップIDおよびマップ種別の欄にそれぞれ追加する。これにより、処理対象データに基づいて生成されたマップMが、作業関連情報として、基準圃場または新規管理圃場と関連付けられる。
【0041】
詳しくは、作業圃場と基準圃場との重複度合が所定の度合以上であると重複度合判定部71が判定した場合には、マップMが基準圃場と関連付けられる。作業圃場と基準圃場との重複度合が所定の度合よりも小さいと重複度合判定部71が判定した場合には、マップMが新規管理圃場と関連付けられる。
次に、サーバ制御部60によって実行される作業関連情報管理処理について詳しく説明する。図8は、サーバ制御部60によって実行される作業関連情報管理処理を説明するためのフローチャートである。
【0042】
作業関連情報管理処理では、まず、サーバ制御部60が、作業車両2から受信した時系列データCをメモリ61に設定することで、処理対象データを取得する(ステップS1)。そして、サーバ制御部60の圃場形状特定部70が、作業圃場の形状と基準圃場の形状とを特定する(ステップS2)。そして、サーバ制御部60の重複度合判定部71が、作業圃場の形状と基準圃場の形状との重複度合が、所定の度合以上であるか否かを判定する(ステップS3)。
【0043】
作業圃場と基準圃場との重複度合が、所定の度合以上であると重複度合判定部71が判定した場合には(ステップS3:YES)、サーバ制御部60の情報管理部73が、処理対象データを基準圃場と関連付ける(ステップS4)。具体的には、前述したように、情報管理部73は、処理対象データに含まれる情報を作業関連情報管理テーブル67に追加する際に、圃場IDの欄に基準圃場の圃場IDを追加する。ステップS4の後、サーバ制御部60は、作業関連情報管理処理を終了する。
【0044】
作業圃場と基準圃場との重複度合が、所定の度合よりも小さいと重複度合判定部71が判定した場合には(ステップS3:NO)、サーバ制御部60の情報管理部73が、処理対象データを基準圃場とは異なる新規管理圃場と関連付ける(ステップS5)。具体的には、前述したように、情報管理部73は、処理対象データに含まれる情報を作業関連情報管理テーブル67に追加する際に、圃場IDの欄に新規管理圃場の圃場IDを追加する。ステップS5の後、サーバ制御部60は、作業関連情報管理処理を終了する。
【0045】
管理圃場の所有者は、ユーザ端末9を利用して、自身が所有する管理圃場について行われた作業についての作業関連情報を、管理サーバ4から取得することができる。図9は、ユーザ端末9に表示される作業関連情報比較画像100の一例である。
作業関連情報比較画像100は、管理圃場の所有者がユーザ端末9を用いて管理サーバ4にアクセスすることによって、ユーザ端末9に送信される。作業関連情報比較画像100は、ユーザ端末9のディスプレイ等の表示部90に表示される。
【0046】
作業関連情報比較画像100の中央よりも上側の上側領域101と、作業関連情報比較画像100の中央よりも下側の下側領域102とに、それぞれ、同一の管理圃場についての作業関連情報が表示される。各領域101,102には、マップMとともに、圃場ID、圃場位置情報、マップ種別、メッシュサイズ、年度、作物種別、合計作業データ等が表示されている。年度は、作業関連情報管理テーブル67に記憶されている作業期間から算出されている。
【0047】
各領域101,102に表示される作業関連情報は、作業関連情報管理テーブル67に記憶されている作業関連情報から選択することができる。詳しくは、マップ種別、年度、作物種別の欄の右側の三角形状のタブを選択して、表示したい作業関連情報に対応する内容にマップ種別、年度および作物種別を変更し、更新ボタンを選択することで、所望の作業関連情報を表示させることができる。また、マップMのメッシュサイズの欄の右側の三角形状のタブを選択して、所望のメッシュサイズに変更することができる。メッシュサイズは、たとえば、5m、10mおよび20mのうちから選択できるようになっている。
【0048】
したがって、管理圃場の所有者は、作業関連情報比較画像100に自身の管理圃場における作業関連情報を容易に比較することができる。図9に示す例では、上側領域101には、2018年の米の収穫に関する作業関連情報が表示されており、下側領域102には、2019年の米の収穫に関する作業関連情報が表示されている。2018年の米の収穫状況と、2019年の米の収穫状況を比較して、翌年の田植の際に、管理圃場内の各位置における施肥量を検討することができる。
【0049】
この実施形態によれば、サーバ制御部60によって取得される作業車両2の位置情報に基づいて特定される作業圃場と、基準圃場との重複度合が所定の度合以上である場合に、作業圃場内での作業に関連する作業関連情報が、基準圃場に関連付けられる。すなわち、作業車両2が基準圃場内で作業を行ったとみなされる。そのため、作業圃場の形状と基準圃場の形状とに若干ずれが生じる場合であっても、作業車両2による作業が基準圃場で行われたとして作業関連情報を管理することができる。したがって、同じ圃場で行った作業が、別の圃場で行った作業として別々に管理されることを抑制でき、管理サーバ4に管理された作業関連情報を参照しやすくなる。
【0050】
またこの実施形態によれば、サーバ制御部60が作業車両2によって行なわれた作業の作業データを取得する作業データ取得部として機能し、サーバ制御部60のマップ生成部72が、サーバ制御部60によって取得された作業車両2の位置情報と作業データとに基づいてマップMを生成する。そして、サーバ制御部60の情報管理部73は、作業圃場と基準圃場との重複度合が所定の度合以上であると重複度合判定部71が判定した場合に、マップMを作業関連情報として基準圃場と関連付けて管理する。
【0051】
そのため、作業圃場の形状と基準圃場の形状とが若干異なる場合であっても、作業車両2の作業データに基づいて生成されたマップMを、基準圃場についての最新のマップMとして管理することができる。したがって、同じ圃場で行った作業に関するマップMが、別の圃場で行った作業に関するマップMとして別々に管理されることを抑制でき、管理サーバ4に管理されたマップMを参照しやすくなる。
【0052】
この構成によれば、作業車両2はコンバインであり、マップMが収量マップである。そのため、作業圃場の形状と基準圃場の形状とが若干異なる場合であっても、コンバインによって収穫される作物の収穫量に基づいて生成された収量マップを、基準圃場についての最新の収量マップとして管理することができる。そのため、収穫の翌年度に当該基準圃場に肥料を散布する際に、最新の収量マップを参照することができる。具体的には、圃場において収穫量が少なかった箇所には散布する肥料の量を多くし、圃場において収穫量が多かった箇所には散布する肥料の量を少なくすることで圃場における収穫量の均一化を図る可変施肥に利用することができる。サーバ制御部60に最新の収量マップに基づいて施肥マップを生成させることで、効率良く可変施肥を実行することができる。
【0053】
ここで、単一の作業車両を用いて複数回作業を行う場合において、作業対象が同一の圃場であっても、作業時期に応じて走行経路を変更することがある。また、同一の圃場内で同じ走行経路を走行したつもりであっても、実際の走行軌跡は、圃場内を走行する度に僅かに異なる。同一圃場内で作業を行っているにもかかわらず、走行軌跡が異なるからといって異なる圃場での作業として扱われてしまうと、作業関連情報の管理が複雑化する。具体的には、管理サーバ4のオペレータが管理サーバ4を操作して、作業関連情報管理テーブル67の圃場IDを手動で変更する必要がある。管理サーバ4のオペレータの代わりに、管理圃場の所有者が、ユーザ端末9を用いて、作業関連情報管理テーブル67の圃場IDを手動で変更してもよい。
【0054】
本実施形態では、基準圃場の形状が第1時期に圃場内で作業車両2が走行する際の位置情報に基づいて特定され、作業圃場の形状が第1時期よりも後の第2時期に圃場内で作業車両2が走行する際の位置情報に基づいて特定される。そのため、作業圃場の特定に用いられる位置情報が取得された作業の作業時期と、基準圃場の特定に用いられる位置情報が取得された作業の作業時期とが異なる場合であっても、作業関連情報を正しく管理することができる。
【0055】
上述の実施形態とは異なり、基準圃場の圃場位置情報として、作業車両2とは異なる基準作業車両7(図1の二点鎖線を参照)の位置情報を用いてもよい。つまり、基準圃場の形状が、作業車両2とは異なる基準作業車両7の位置情報に基づいて特定されてもよい。たとえば、処理対象データに含まれる位置情報がコンバインの位置情報である場合にも、コンバイン以外の作業車両、トラクタ等の作業車両の位置情報を基準圃場の位置情報として用いることができる。
【0056】
基準作業車両7にも、作業車両2と同様に、衛星信号受信用アンテナが設けられており、基準作業車両7の制御部は、衛星信号受信用アンテナから測位信号を受信できるように構成されている。
同一の圃場が作業対象である場合にも、作業車両の種類によって走行経路が異なる場合がある。たとえば、作業車両がコンバインである場合と、作業車両がトラクタである場合とでは、僅かに異なる走行経路を走行することがある。また、仮に種類が異なる作業車両が同じ走行経路を走行したつもりであっても、実際の走行軌跡は、圃場内を走行する度に僅かに異なる。同一圃場内で作業を行っているにもかかわらず、走行軌跡が僅かに異なるからといって異なる圃場での作業として扱われてしまうと、先ほどと同様に、作業関連情報の管理が複雑化する。
【0057】
そこで、作業圃場の形状が作業車両2の位置情報に基づいて特定され、基準圃場の形状が作業車両とは異なる基準作業車両7の位置情報に基づいて特定される構成であれば、作業車両2の種類が基準作業車両7の種類と異なる場合であっても、作業関連情報を正しく管理することができる。
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、さらに他の形態で実施することができる。
【0058】
たとえば、上述の実施形態では、時系列データに作物種別が含まれるとしたが、時系列データには作物種別が含まれていない場合もあり得る。その場合、管理圃場の所有者または管理サーバ4のオペレータが、作業関連情報管理テーブル67に作物種別を入力する必要がある。
また、管理圃場の圃場位置情報は、作業車両の位置情報でなくてもよく、管理圃場の地図情報等に基づいて管理サーバ4内で設定された位置情報であってもよい。
【0059】
その他、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0060】
1 :作業関連情報管理システム
2 :作業車両
4 :管理サーバ(作業関連情報管理装置)
7 :基準作業車両
60 :サーバ制御部(位置情報取得部、作業データ取得部)
70 :圃場形状特定部
71 :重複度合判定部
72 :マップ生成部
73 :情報管理部
80 :ポリゴン(基準圃場の形状)
81 :ポリゴン(作業圃場の形状)
M :マップ
図1
図2
図3
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図8
図9