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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162735
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】空中映像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 30/56 20200101AFI20241114BHJP
   G02B 5/10 20060101ALI20241114BHJP
   G02B 26/08 20060101ALN20241114BHJP
【FI】
G02B30/56
G02B5/10 A
G02B26/08 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078590
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】関口 博
(72)【発明者】
【氏名】後藤 正浩
【テーマコード(参考)】
2H042
2H141
2H199
【Fターム(参考)】
2H042DD08
2H042DD09
2H141MA12
2H141MB24
2H141MC01
2H141MF28
2H199BA20
2H199BA32
2H199BB19
2H199BB49
2H199BB59
(57)【要約】
【課題】小型であって、空間に表示された映像の浮遊感が高い空中映像表示装置を提供する。
【解決手段】空中映像表示装置は、平行光を発する発光部と、反射面の傾きを変更可能な少なくとも1つの可動ミラー部とを備える発光ユニットと、前記発光ユニットの前記各可動ミラー部の反射面の傾きを制御する制御部と、を備え、前記発光ユニットは、互いに間隔をあけて離散的に複数配列されており、前記制御部は、複数の前記発光ユニットの各前記可動ミラー部を制御して、複数の前記発光ユニットから発せられた光を空中の1つの集光点に集光し、かつ、前記集光点を移動させて空中に映像を表示する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行光を発する発光部と、反射面の傾きを変更可能な少なくとも1つの可動ミラー部とを備える発光ユニットと、
前記発光ユニットの前記各可動ミラー部の反射面の傾きを制御する制御部と、
を備え、
前記発光ユニットは、互いに間隔をあけて離散的に複数配列されており、
前記制御部は、複数の前記発光ユニットの前記各可動ミラー部を制御して、複数の前記発光ユニットから発せられた光を空中の1つの集光点に集光し、かつ、前記集光点を移動させて空中に映像を表示する、
空中映像表示装置。
【請求項2】
前記発光ユニットは、さらに、凹面状の反射面である凹面ミラーを有する、
請求項1に記載の空中映像表示装置。
【請求項3】
前記発光ユニットは、赤色光を発する赤色発光ユニット、青色光を発する青色発光ユニット、緑色光を発する緑色発光ユニットの3つを1つの発光ユニットとして一体に備えている、
請求項1に記載の空中映像表示装置。
【請求項4】
配列された前記発光ユニットを被覆するように設けられ、光透過性を有しない非透光部と、前記発光ユニットからの光が透過する複数の透光部とを有するカバー部材を備える、
請求項1に記載の空中映像表示装置。
【請求項5】
前記透光部は、前記カバー部材の厚み方向に平行な断面において、前記発光ユニットから発せられた前記平行光が入射角度0度以上20度以下で入射して、前記透光部内に入射する傾斜面を有する光学形状、及び、前記透光部を透過した前記平行光が入射角度0度以上20度以下で入射して、前記透光部から出射する傾斜面を備える光学形状の少なくとも1つを備える、
請求項4に記載の空中映像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空中映像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空中に映像が浮遊しているように映像を表示する空中映像表示装置として、様々なものが開発されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-137779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1には、微細なミラーを集積して形成されたパネルと液晶ディスプレイとを用いて、空中に画像を表示する表示装置が開示されている。しかし、このような表示装置では、画像の向こうにパネルが視認されてしまい、画像の浮遊感が損なわれる場合があるという問題があった。
【0005】
また、空中に映像を表示する表示装置の多くは、装置が大掛かりであったり、装置の内部に画像が浮いているように見えたりするものが多く、映像だけが空中に浮遊しているようには見えないという問題があった。
【0006】
本発明の課題は、小型であって、空中に表示された映像の浮遊感が高い空中映像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0008】
(1)第1の発明は、平行光を発する発光部(12,22)と、反射面の傾きを変更可能な少なくとも1つの可動ミラー部とを備える発光ユニット(11,21,31)と、前記発光ユニットの前記各可動ミラー部の反射面の傾きを制御する制御部(17,27)と、を備え、前記発光ユニットは、互いに間隔をあけて離散的に複数配列されており、前記制御部は、複数の前記発光ユニットの前記各可動ミラー部を制御して、複数の前記発光ユニットから発せられた光を空中の1つの集光点(F)に集光し、かつ、前記集光点を移動させて空中に映像を表示する空中映像表示装置(10,20,30)である。
【0009】
(2)第2の発明は、第1の発明において、前記発光ユニット(21)が、さらに、凹面状の反射面である凹面ミラー(25)を有する空中映像表示装置(10,20,30)である。
【0010】
(3)第3の発明は、第1の発明又は第2の発明において、前記発光ユニット(31)が、赤色光を発する赤色発光ユニット(31R)、緑色光を発する緑色発光ユニット(31G)、青色光を発する青色発光ユニット(31B)の3つを1つの発光ユニットとして一体に備えている空中映像表示装置(10,20,30)である。
【0011】
(4)第4の発明は、第1の発明から第3の発明までのいずれかにおいて、配列された前記発光ユニット(11,21,31)を被覆するように設けられ、光透過性を有しない非透光部(162)と、前記発光ユニットからの光が透過する複数の透光部を(161)とを有するカバー部材(16)を備える空中映像表示装置(10,20,30)である。
【0012】
(5)第5の発明は、第4の発明において、前記透光部(161)が、前記カバー部材(16)の厚み方向に平行な断面において、前記発光ユニット(11,21,31)から発せられた前記平行光(L)が入射角度0度以上20度以下で入射して、前記透光部内に入射する傾斜面(163a)を備える光学形状(163)、及び、前記透光部を透過した前記平行光が入射角度0度以上20度以下で入射して、前記透光部から出射する傾斜面(164a)を備える光学形状(164)の少なくとも1つを備える空中映像表示装置(10,20,30)である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、小型であって、空中に表示された映像の浮遊感が高い空中映像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態の空中映像表示装置を説明する図である。
図2】第1実施形態の空中映像表示装置を説明する図である。
図3】第1実施形態の空中映像表示装置10における発光ユニット11の配列の様子を示す図である。
図4】第1実施形態の発光ユニット11を説明する図である。
図5】集光点Fの動きを説明する図である。
図6】集光点Fが左右方向に移動する様子を示す図である。
図7】第2実施形態の発光ユニット21を説明する図である。
図8】第2実施形態の発光ユニット21を説明する図である。
図9】第3実施形態の空中映像表示装置30において、発光ユニット31が配列される様子を示した図である。
図10】透光部161の変形形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、図1を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。
本明細書において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば、平行や直交等の用語については、厳密に意味するところに加え、同様の光学的機能を奏し、平行や直交と見なせる程度の誤差を有する状態も含むものとする。
【0016】
本明細書において、板、シート等の言葉を使用しているが、これらは、一般的な使い方として、厚さの厚い順に、板、シート、フィルムの順で使用されており、本明細書中でもそれに倣って使用している。しかし、このような使い分けには、技術的な意味は無いので、これらの文言は、適宜置き換えることができるものとする。
【0017】
(第1実施形態)
図1及び図2は、第1実施形態の空中映像表示装置10を説明する図である。図1は、第1実施形態の空中映像表示装置10の斜視図であり、図2は、第1実施形態の空中映像表示装置10の側面図である。
図1及び以下に示す各図において、理解を容易にするために、適宜、XYZ直交座標系を設けている。図1において、水平面をXY平面とし、鉛直方向をZ方向とした。また、空間に表示される映像Pを観察する観察者Oから見て、左側を+X側、手前側を+Y側、鉛直方向上側を+Z側とする。
【0018】
本実施形態の空中映像表示装置10は、所定の間隔を空けて離散的に配列された複数の発光ユニット11(後述の図3参照)と、これらの複数の発光ユニット11を覆うように、その上側(+Z側)に、複数の透光部161を有するカバー16とを備えている。また、本実施形態の空中映像表示装置10は、発光ユニット11内の後述する可動ミラー部13の反射面の傾き(傾斜方向、傾斜角度)や発光ユニット11の発光等を制御する制御部17(図4参照)を備えている。
【0019】
図3は、第1実施形態の空中映像表示装置10における発光ユニット11の配列の様子を示す図である。
発光ユニット11は、平行光である光Lを発する。この発光ユニット11は、図3に示すように、空中映像表示装置10において、XY平面上に互いに所定の間隔を空けて離散的に配列されている。発光ユニット11のX方向の配列ピッチとY方向における配列ピッチは、所望する光学性能等に応じて、適宜設定可能である。この発光ユニット11の詳細については、後述する。
【0020】
カバー16の透光部161は、発光ユニット11からの光が出射する部分である。透光部161は、発光ユニット11にそれぞれ対応している。発光ユニット11から発せられた光は、対応する透光部161を透過して空中映像表示装置10から出射する。
理解を容易にするために、図1図2、後述する図6では、発光ユニット11及び透光部161が、Y方向に3つ、X方向に3つ、計9つ設けられる例を示している。しかし、本実施形態では、実際には、発光ユニット11及び透光部161は、Y方向に50個、X方向に50個配列されて設けられている。なお、発光ユニット11及び透光部161の個数は、一例であり、上述の個数に限定されない。
【0021】
本実施形態の空中映像表示装置10は、複数の発光ユニット11から発せられ、透光部161から出射した複数の光線Lが、1点(図1等に示す集光点F)に集光するように構成されており、この集光点Fが高速で空中の所定の面S上を移動する(走査する)ことにより、空間に映像Pを形成する。観察者Oには、この映像Pが、空間に浮遊する映像として観察される。
本実施形態では、理解を容易にするために、単色(緑色)の映像を表示する例を挙げて説明する。
【0022】
図4は、第1実施形態の発光ユニット11を説明する図である。図4では、発光ユニット11の斜視図を示しており、カバー16も示している。
発光ユニット11は、発光部12、可動ミラー部13を備えている。発光ユニット11は、発光部12が発した光Lを、可動ミラー部13により所定の方向に反射させて、透光部161から空中映像表示装置10の外へ出射する。発光ユニット11は、可動ミラー部13のミラー131の反射面の傾きを変化させることにより、光Lの進行方向を変更可能である。
【0023】
発光部12は、平行光である光Lを、可動ミラー部13のミラー131の反射面に投射する。なお、発光部12が投射する光Lは、平行光に限らず、平行光とみなせる程度の光の拡散性又は集光性を有する光であってもよい。
また、発光部12は、可動ミラー部13のミラー131の反射面に対して斜めに、すなわち、ミラー131の反射面の法線方向に対して角度をなす方向から入射するように、光Lを投射する。
【0024】
発光部12は、光源121、光学素子122、固定ミラー123を備えている。
光源121は、マイクロLED(Light Emitting Diode)等、小型の発光源である。本実施形態では、光源121として、緑色の光を発するマイクロLEDを用いている。光源121は、制御部17により発光のON/OFF等が制御される。
【0025】
LEDに関しては、従来からあるLED(平面視での径が数mm)に比べて大きさの小さいものも開発されており、ミニLED(平面視での径が約100~200μm)、マイクロLED(平面視での径が約100μm以下)等と呼ばれるものが知られている。これらの呼称は、大きさの違いを意味しているが、その大きさの境界が明確ではないため、本明細書において、マイクロLEDとは、径約100μm以下のものとする。
【0026】
光学素子122は、光源121から発せられた光を平行光とする光学素子である。光源121から発せられた光は、広がりを有しているため、光学素子122により平行光とする。本実施形態では、光学素子122として、出射側となる固定ミラー側が凸曲面状である凸レンズを用いている。なお、光学素子122は、光源121の発する光を平行光とすることができるものであれば、例えば、液晶レンズやミラー等を適宜選択してもよい。
【0027】
固定ミラー123は、光学素子122により平行光となった光Lを、可動ミラー部13側へ反射するミラーである。固定ミラー123は、反射面が平面状であり、その傾きの方向や角度が固定されている。
本実施形態では、各発光ユニット11の固定ミラー123の傾き(固定ミラー123の反射面の傾斜方向、傾斜角度)は、その発光ユニット11の空中映像表示装置10内におけるX方向及びY方向の位置に応じて、個々に調整され、固定されている。しかし、これに限らず、例えば、すべての発光ユニット11において、固定ミラー123の傾きが一定であってもよい。また、固定ミラー123の傾きは、その固定ミラー123を有する発光ユニット11の空中映像表示装置10内におけるY方向の位置に応じて傾きを異ならせてもよいし、X方向の位置等に応じて傾きを異ならせてもよい。
なお、固定ミラー123は、光源121の光を直接、可動ミラー部13側へ入射させられる場合、省略してもよい。
【0028】
可動ミラー部13は、発光部12から投射された光を反射して、集光点Fへ向ける。可動ミラー部13は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の技術を用いて、そのミラー131の反射面の傾きが制御可能である。
本実施形態の可動ミラー部13は、ミラー131と、ミラー131を回転させる軸132,133と、可動枠134、固定部135とを有する。可動ミラー部13のミラー131は、ミラー131の反射面内において互いに直交する2つの軸132,133を回転軸として所定の角度で回転可能であり、2方向(本実施形態では、X方向及びY方向)においてミラー131の反射面の傾きを変更可能である。
【0029】
可動ミラー部13を平面視したとき、軸132は、ミラー131の中心を通りX方向に平行な直線上に設けられ、ミラー131の反射面をX軸周りに回転させる(傾かせる)ことができる。また、軸133は、ミラー131の中心を通りY方向に平行な直線上に設けられ、ミラー131の反射面をY軸周りに回転させる(傾かせる)ことができる。ミラー131は、各軸を中心として+Z側を正の値として±10°回転可能である。
固定部135は、ミラー131の回転に伴う回転等を行わない部分であり、光源121とともに不図示のベース部材に固定される。可動枠134は、軸132により固定部135に対してX軸周りに回転可能な枠部材である。また、可動枠134は、軸133を介してミラー131が配置されており、ミラー131が可動枠134に対してY軸周りに回転可能である。
【0030】
可動ミラー部13は、軸132、133のそれぞれに回転モータ等の駆動部(不図示)が設けられており、制御部17により各軸の駆動部を制御することによって、ミラー131の反射面の傾き(傾斜方向、傾斜角度)が所望の傾きに制御される。
集光点Fに各発光ユニット11からの光Lを集光するため、可動ミラー部13のミラー131の反射面の傾きは、空中映像表示装置10内における各発光ユニット11の位置により異なっている。
【0031】
本実施形態では、上述のような軸132,133等を備える可動ミラー部13を例に挙げて説明したが、これに限らず、例えば、可動ミラー部13としては、DMD(Digital Micromirror Device)を好適に用いることができる。
【0032】
カバー16は、発光ユニット11の上側(+Z側)に配置された板状又はシート状の部材であり、不図示のベース部材に対して固定される。カバー16は、観察者Oから発光ユニット11が視認されることを防止したり、空中映像表示装置10が周囲の環境と調和させたりするために設けられる。カバー16には、発光ユニット11が発する光が透過する透光部161と、それ以外の領域であって光透過性を有しない非透光部162とを有している。
【0033】
透光部161は、光透過性を有する部材により形成されており、前述のように、各発光ユニット11と対応しており、発光ユニット11と同数設けられている。
透光部161は、図1図4では、平面視した形状が正方形形状である例を示したが、これに限らず、菱形形状や長方形形状、六角形形状等の多角形形状等や、円形形状、楕円形状等としてもよく、適宜その形状を選択してよい。また、透光部161には、その両表面に光の反射を抑制する反射抑制膜を備えていてもよい。このような反射抑制膜としては、AR(Anti Reflection)膜、LR(Low Reflection)膜のいずれも適用可能であり、例えば、ドライ法(真空蒸着やスパッタリング等)により形成される光学多層膜や、ウェット法(スプレーコート等)により形成される単層の低屈折率層等が好適である。
【0034】
カバー16は、例えば、光透過性の高い樹脂製やガラス製の板状の部材であって、非透光部162が黒色等の暗色系に着色されており、透光部161が着色されていない形態としてもよい。また、カバー16は、非透光部162に、光透過性を有しない暗色系のシート等が積層されている形態としてもよい。
また、非透光部162は、空中映像表示装置10が配置される周囲の環境と調和するように、周囲の環境に応じた模様(木目模様や大理石模様等)や、意匠性を向上させるデザイン性の高い模様(縞模様、格子模様、ダマスク模様等)が印刷等により形成されていてもよい。
【0035】
制御部17は、空中映像表示装置10の各部を制御する制御回路であり、例えば、CPU(中央処理装置)等から構成される。制御部17は、不図示の記憶部に記憶された各種プログラムを適宜読み出して実行することにより、前述したハードウェアと協働し、本発明に係る各種機能を実現している。制御部17は、各発光ユニット11に設けられた光源121の発光のON/OFFや、その発光量を調節したり、各発光ユニット11に設けられた可動ミラー部13のミラー131の傾きを制御したりする。これにより、空中映像表示装置10は、複数の発光ユニット11から発せられた光を空中の1つの集光点F(図1図2参照)に集光し、その集光点Fを移動させることによって空中に映像P(図2参照)を表示することができる。
【0036】
本実施形態の空中映像表示装置10の映像表示方法について説明する。
図5は、集光点Fの動きを説明する図である。図5では、空中映像表示装置10は、空中に文字「A」を表示する例を示している。
図6は、集光点Fが左右方向に移動する様子を示す図である。図6では、空中映像表示装置10の斜視図を示している。
前述のように、空中映像表示装置10において、各発光ユニット11の可動ミラー部13は、ミラー131の反射面の傾きが制御部17により制御されている。この制御部17の制御により、全ての発光ユニット11から発せられた光Lは、図2に示すように、空間内の仮想の面S上の1つの集光点Fに集光する。そして、この集光点Fは、空中を移動する。図6では、図6(a)、図6(b)、図6(c)の順に集光点Fが左右方向(X方向)に左から右へ移動している様子を示している。
【0037】
図5に示すように、集光点Fは、面S(図2参照)上において、例えば、観察者Oから見て、点Aを始点とし、左(+X側)から右(-X側)へ点Bまで移動した後、その下段に移り点Cから点DまでX方向に左(+X側)から右(-X側)へ移動する。このとき、図6(a)から図6(b)、図6(c)に示すように、集光点Fの左右方向(X方向)の移動に合わせて、各発光ユニット11からの光Lの進行方向も変化している。
集光点Fは、この走査を繰り返し、終点となる点Eまで移動し、再度、点Aから移動(走査)を開始する。この集光点Fの移動は、高速で行われており、観察者Oは、集光点Fの軌跡を、空中に浮遊する映像P(図5ではアルファベットの「A」)として認識する。
【0038】
前述の図2では、この面Sは、XZ平面に平行な面として示しているが、例えば、Z方向に対して所定の角度傾斜した面等としてもよい。また、面Sは、表示する映像に応じた曲面等を有する面とし、点Fの位置をY方向において変化させながら点Fを移動させることにより、空中映像表示装置10は、空中に浮遊する立体映像を表示することも可能である。
【0039】
以上の通り、本実施形態によれば、液晶ディスプレイと微細なミラーが配列されたパネル等を用いる従来の空中映像表示装置と比べて、そのようなパネルが不要であり、装置を大幅に小型化できる。また、本実施形態によれば、パネルが不要であるので、空中に浮遊する映像を観察者Oが視認する際にパネルやパネルに表示される映像が視認されることがなく、映像視認時に空中映像表示装置10が目立たず、映像の空中への浮遊感を向上させることができる。
【0040】
さらに、本実施形態によれば、発光ユニット11は、自発光する光源121を備えており、液晶ディスプレイ等を用いていないので、従来の空中映像表示装置に比べて明るい映像を表示できる。
【0041】
また、本実施形態によれば、空中映像表示装置10は、カバー16を備えており、発光ユニット11が観察者に視認されにくい。さらに、カバー16は、その非透光部162に意匠性を高める模様等を印刷等により設けることができるので、空中映像表示装置10の置かれる環境との調和を高めたり、意匠性を高めたりすることができる。
【0042】
(第2実施形態)
第2実施形態の空中映像表示装置20は、発光ユニット21が凹面ミラー25と、2つの可動ミラー部(第1可動ミラー部24、第2可動ミラー部23)とを備える点が異なる以外は、第1実施形態の空中映像表示装置10と同様である。したがって、以下に示す第2実施形態では、主に、発光ユニット21について説明する。また、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0043】
図7及び図8は、第2実施形態の発光ユニット21を説明する図である。図7は、発光ユニット21の斜視図であり、図8は、発光ユニット21の側面図であり、理解を容易にするために、第1可動ミラー部24及び第2可動ミラー部23は、ミラー241,131のみを示している。また、図8では、ミラー241,131の傾きが異なる場合を破線で示している。図7及び図8では、カバー16等も示している。
第2実施形態の発光ユニット21は、発光部22、第1可動ミラー部24、第2可動ミラー部23、凹面ミラー25、制御部27を備えている。空中映像表示装置20は、複数の発光ユニット21が互いに間隔をあけて配列されている。
【0044】
制御部27は、空中映像表示装置20の各部を制御する制御回路であり、前述の第1実施形態の制御部17と同様に、例えば、CPU(中央処理装置)等から構成される。制御部27は、各発光ユニット21に設けられた発光部22の発光のON/OFFや、発光量を調節したり、各発光ユニット21に設けられた第1可動ミラー部24のミラー241及び第2可動ミラー部23のミラー131の傾きを制御したりする。
【0045】
発光部22は、第1実施形態に示した発光部12と同様に、光源、光学素子、固定ミラー等(不図示)を備える。発光部22と第1可動ミラー部24との配置関係等が第1実施形態とは相違するので、発光部22の固定ミラーの傾きも第1実施形態とは異なる。
【0046】
第1可動ミラー部24は、ミラー241、軸242と、固定部245とを備える。第1可動ミラー部24は、前述の第1実施形態の可動ミラー部13と同様に、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の技術を用いて、そのミラー241の反射面の傾き(反射面の角度)が制御可能である。
【0047】
第1可動ミラー部24を平面視したとき、軸242は、ミラー241の中心を通りX方向に平行な直線上に設けられ、ミラー241の反射面をX軸周りに回転させる(傾かせる)ことができる。ミラー241は、軸242を中心として+Z側を正の値として±10°回転可能である。
固定部245は、ミラー241の回転に伴う回転等を行わない部分であり、光源121とともに不図示のベース部材に固定される。
【0048】
第2可動ミラー部23は、第1実施形態に示した可動ミラー部13と同様であり、ミラー131、軸132、軸133、可動枠134、固定部135を有する。本実施形態では、発光ユニット21が第1可動ミラー部24を備えるため、便宜上、第2可動ミラー部23と呼ぶ。
第1可動ミラー部24及び第2可動ミラー部23は、制御部27によって、各軸に設けられた駆動部が制御され、各ミラーの反射面の傾きが制御されている。
【0049】
発光部22から発せられた平行光である光Lは、第1可動ミラー部24のミラー241の反射面の法線方向に対して角度をなす方向からミラー241に入射して反射し、第2可動ミラー部23へ向かう。そして、光Lは、第2可動ミラー部23のミラー131の反射面に対して、その反射面の法線方向に対して角度をなす方向から入射して反射し、凹面ミラー25へ向かう。
【0050】
なお、本実施形態では、第2可動ミラー部23と第1可動ミラー部24との位置を入れ替え、第2可動ミラー部23が発光部22からの光を第1可動ミラー部24へ反射する形態としてもよい。
【0051】
凹面ミラー25は、その反射面が凹面状となっているミラーである。凹面ミラー25は、その反射面が、Z方向を軸としてY方向に湾曲しており、-Y側に凸となるように湾曲している。凹面ミラー25は、固定されており、その傾きや凹曲面の曲率等が変化することはない。また、凹面ミラー25の湾曲形状の曲率等は、所望する光学設計等に応じて、適宜設定可能である。
【0052】
第2可動ミラー部23で反射された光Lは、凹面ミラー25で反射して、透光部161を透過して集光点Fへ向かう。制御部27により、第1可動ミラー部24及び第2可動ミラー部23の各ミラーの反射面の傾きが制御され、集光点Fは、空中の面S上を移動する。これにより、空中映像表示装置20は、観察者に空中に浮遊する映像を表示する。
【0053】
集光点Fが空中を移動すると、第1可動ミラー部24及び第2可動ミラー部23の各ミラーの傾きの方向や角度が変わる。そのため、透光部161から光Lが出光する出光点もX方向やY方向に移動する。したがって、凹面ミラー25を備えない空中映像表示装置の場合、集光点Fの位置や映像の大きさ等によっては、出光点の移動量も大きくなり、透光部161が大きくなり、目立ちやすくなる場合がある。
【0054】
しかし、凹面ミラー25を備える発光ユニット21では、図8に示すように、このような透光部161における出光点の移動、本実施形態においては、特にX方向の移動を抑えることができる。これにより、透光部161を小さくでき、目立ちにくくできる。
【0055】
なお、これに限らず、凹面ミラー25は、例えば、反射面が凹状の球面状である形態としてもよい。凹状の球面ミラーとした場合は、透光部161における光Lの出光点の移動を、X方向及びY方向において抑制できる。
【0056】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、小型であって、映像視認時に装置本体が目立たず、空間に表示された画像の浮遊感が高い空中映像表示装置20を提供することができる。また、本実施形態によれば、透光部161における光Lの出光点の移動を小さくできるので、透光部161をより小さくすることができ、空中映像表示装置20の存在をより目立たなくすることができ、意匠性等も向上できる。
【0057】
(第3実施形態)
第3実施形態の空中映像表示装置30は、カラー映像を表示し、発光ユニット31が異なる点以外は、第1実施形態の空中映像表示装置10と同様である。したがって、前述の第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
第3実施形態の空中映像表示装置30は、所定の間隔をあけて離散的に配列された複数の発光ユニット31と、カバーや制御部等(いずれも不図示)とを備えている。
【0058】
図9は、第3実施形態の空中映像表示装置30において、発光ユニット31が配列される様子を示した図である。図9では、空中映像表示装置30をZ方向から見た一部を示しており、理解を容易にするために、カバーは、省略している。
図9に示すように、第3実施形態の空中映像表示装置30は、赤色光を発する赤色発光ユニット31Rと、緑色光を発する緑色発光ユニット31Gと、青色光を発する青色発光ユニット31Bとを1つずつ一体に備える発光ユニット31を、X方向及びY方向に配列している。
【0059】
赤色光を発する赤色発光ユニット31Rは、光源121であるLEDが赤色光を発する以外は、第1実施形態の発光ユニット31と同様である。青色光を発する青色発光ユニット31Bは、光源121であるLEDが青色光を発する以外は、第1実施形態の発光ユニット11と同様である。緑色光を発する緑色発光ユニット31Gは、光源121であるLEDが緑色光を発するものであり、第1実施形態の発光ユニット31に相当する。
【0060】
本実施形態のカバー(不図示)は、第1実施形態等に示したカバー16と同様である。
本実施形態の制御部(不図示)は、空中映像表示装置30の各部を制御する制御回路であり、前述の第1実施形態の制御部17と同様に、例えば、CPU(中央処理装置)等から構成される。本実施形態の制御部は、赤色光を発する赤色発光ユニット31R、緑色光を発する緑色発光ユニット31G、及び、青色光を発する青色発光ユニット31Bのそれぞれから光の発光のON/OFFや、発光量を調節したり、各色の発光ユニット31R,31G,31Bに設けられた可動ミラー部のミラーの傾きを制御したりする。
【0061】
この発光ユニット31は、所謂、1画素に相当する。そして、この発光ユニット31の各色の光量を制御部(不図示)によって調整することにより、本実施形態の空中映像表示装置30は、空中に浮遊するカラー映像を表示することができる。
【0062】
なお、図9では、1つの発光ユニット31において、赤色光を発する赤色発光ユニット31Rと、緑色光を発する緑色発光ユニット31Gと、青色光を発する青色発光ユニット31BとがX方向に隣接して一体に配列されて発光ユニット31を形成している例を示したが、3光の発光ユニットの配列は、この例に限定されない。例えば、赤色発光ユニット31Rと、緑色発光ユニット31Gと、青色発光ユニット31Bとが、互いに隣接しながら、三角形形状の各頂点に位置するように配置されていてもよい。
いずれの場合においても、発光部の固定ミラーの角度や可動ミラー部のミラーの傾きの制御等により、十分に各色の光の進行方向が揃えられ、集光点Fが形成される。
【0063】
なお、発光ユニット31は、上述の例に限らず、光源121として、赤色光を発するLED、緑色光を発するLED、青色光を発するLEDの3つのLEDを一体に備える形態としてもよい。各色のLEDの位置によって、光学素子122や固定ミラー123への入射角度に差異が生じる場合があるが、そのようなずれは、可動ミラー部13の制御等で抑制することができる。
【0064】
また、発光ユニット31は、赤色光、緑色光、青色光を発する発光部分が厚み方向に積層された小型のLEDを発光部として用いた形態としてもよい。このような形態とすれば、カラー映像を表示するための発光ユニット31や空中映像表示装置30をさらに小型化できる。
【0065】
本実施形態によれば、第1実施形態や第2実施形態と同様に、小型であって、画像視認時に装置本体が目立たず、空間に表示された画像の浮遊感が高い空中映像表示装置30を提供することができる。また、本実施形態によれば、空中映像表示装置30は、カラー映像を表示でき、表示画像の多様さや意匠性を向上させることができる。
【0066】
(変形形態)
以上説明した各実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の範囲内である。
【0067】
(1)各実施形態において、カバー16は、透光部161がカバー16に設けられた開口(孔)であってもよい。また、カバー16は、透光部161が、この開口を塞ぐように設けられた光透過性を有する板状又はシート状の部材であり、非透光部162とは異なる部材により形成されていてもよい。このとき、透光部161は、光透過性の高い樹脂製又はガラス製の部材であり、その両表面に光の反射を抑制する反射抑制膜等を備えていてもよい。
【0068】
(2)各実施形態において、透光部161は、光が入射する面が、カバー16の平面方向に対して傾斜する傾斜面である形態としてもよい。
図10は、透光部161の変形形態を示す図である。図10では、カバー16の透光部161のYZ面に平行な断面を示している。
カバー16の透光部161において、光が透光部161に入射する際の反射損失や、透光部161から出射する際の反射損失を抑える観点から、図10に示すように、透光部161の両面に、溝状の光学形状である溝163,164を形成してもよい。
【0069】
溝163は、カバー16の透光部161の内部側(-Z側)に設けられ、溝164は、透光部161の外部側(+Z側)に設けられている。この溝163,164は、図10に示す断面形状が、三角形形状である。溝163は、第1の面163aと第2の面163bとを有し、溝164は、第1の面164aと第2の面164bとを有している。第1の面163aと第1の面164aは、図10に示すYX面に平行な断面において、平行となっている。
【0070】
第1の面163aは、XY面に対して所定の角度で傾斜した傾斜面である。第1の面163aは、発光ユニットが発した光Lが、YZ面に平行な断面において、第1の面163aに対して入射角度0度以上20度以下で入射して、透光部161内に入射する面である。
第1の面164aは、XY面に対して所定の角度で傾斜した傾斜面である。第1の面164aは、透光部161内を透過する光Lが、YZ面に平行な断面において、第1の面164aに対して入射角度0度以上20度以下で入射して、透光部161から出射する面である。
なお、第1の面163a,164aに平行光が入射する入射角度は、反射損失を低減する観点から、0度であることが望ましいが、0度より大きくとも20度以下であれば、十分に反射損失を低減できる。
【0071】
このような溝163,164を備える透光部161とすることにより、透光部161へ入射する光や透光部161から出射する光の界面での反射損失を抑えることができ、より明るい映像を表示できる。
また、上述の溝163の代わりに、光学形状として表面から突出する凸形状を形成するようにしてもよい。この場合、凸形状は、断面形状が三角形状であり、上述の第1の面、第2の面に対応する傾斜面が設けられ、第1の面には、発光ユニットが発した光Lが、YZ面に平行な断面において、入射角度0度以上20度以下で入射する。
【0072】
(3)各実施形態において、光源121としてレーザー光を発する光源を用いてもよい。この場合、光学素子122は、備えなくともよい。
【0073】
(4)第1実施形態において、固定ミラーは、発光部12の可動ミラー部13に対する位置を調整する等により、例えば、X方向に延在する形態とし、X方向に隣接する複数の発光ユニット11の光源121において用いられる形態としてよい。
【0074】
(5)発光ユニット11,21,31は、互いに間隔をあけて配列されているのであれば、その配置が不規則であってもよい。
【0075】
なお、上述した各実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は、以上説明した各実施形態等によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0076】
10,20,30 空中映像表示装置
11,21,31 発光ユニット
12,22 発光部
13 可動ミラー部
23 第2可動ミラー部
24 第1可動ミラー部
25 凹面ミラー


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10