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特開2024-162740液体吐出ヘッド、及び、液体吐出装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162740
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、及び、液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20241114BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20241114BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B41J2/14
B41J2/18
B41J2/01 401
B41J2/14 201
B41J2/14 613
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078597
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 龍
(72)【発明者】
【氏名】宮下 岳穂
(72)【発明者】
【氏名】戸田 恭輔
(72)【発明者】
【氏名】田丸 勇治
(72)【発明者】
【氏名】吉川 晋平
(72)【発明者】
【氏名】村岡 千秋
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA26
2C056EA28
2C056EB08
2C056EB30
2C056EC08
2C056EC29
2C056FA03
2C056FA10
2C056HA05
2C056HA17
2C056HA23
2C056HA51
2C056JA01
2C056JB04
2C056KA05
2C056KB16
2C056KB26
2C057AF21
2C057AG29
2C057AG85
2C057AG99
2C057AL24
2C057AN01
2C057AQ02
2C057BA04
2C057BA13
(57)【要約】
【課題】所望の温度に調整した液体の温度を簡易な構成によって維持することができる液体吐出ヘッドを提供する。
【解決手段】液体吐出ヘッドは、吐出口、圧力室、供給流路、エネルギー発生素子、及び回収流路を含む吐出モジュールと、吐出モジュールに接合され、当該吐出モジュールを支持するための支持部材と、を備える。圧力室、供給流路、及び回収流路を流れる液体は、温度調整機構によって所定の温度に調整されている。支持部材を構成する素材の熱伝導率は、1.0(W/m・K)以下である。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出することが可能な吐出口と、
前記吐出口から吐出するための液体を収容可能な圧力室と、
前記圧力室に液体を供給するための供給流路と、
前記圧力室に収容された液体を吐出するためのエネルギーを発生させることが可能なエネルギー発生素子と、
前記吐出口から吐出されなかった液体を前記圧力室から回収するための、回収流路と、
を含む吐出モジュールと、
前記吐出モジュールに接合され、当該吐出モジュールを支持するための支持部材と、
を備え、
前記圧力室、前記供給流路、及び前記回収流路を流れる液体は、温度調整機構によって所定の温度に調整されており、
前記支持部材を構成する素材の熱伝導率は、1.0(W/m・K)以下である、
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記支持部材を構成する素材は、樹脂である、
請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記支持部材の前記吐出モジュールと接合する方向の厚みは、2mm以上である、
請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記支持部材は、複数の前記吐出モジュールを支持する、
請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記支持部材における前記吐出モジュールが接合される方向を向く面の面積は、1500mm2以上である、
請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記支持部材の内部を流れる液体の流量は、10mL/sec以下である、
請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記吐出モジュールにおける前記支持部材が接合される方向を向く面の面積は、400mm2以下である、
請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記吐出モジュールを覆わない様に、前記液体吐出ヘッドの前記吐出モジュールが配された面を覆うフェイスカバーを更に備え、
前記フェイスカバーを構成する素材の熱伝導率は、1.0(W/m・K)以下である、請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記所定の温度は、40℃である、
請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
前記温度調整機構を更に備え、
前記温度調整機構は、前記吐出モジュールに形成された流路に沿って配される、
請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項11】
前記温度調整機構は、加熱素子、液体の温度を検出するための温度センサ、及び前記加熱素子を駆動するためのドライバを含む、
請求項10に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項12】
前記供給流路に液体を供給する流れと、前記回収流路から液体を回収する流れと、を発生させることが可能な循環ポンプを更に備える、
請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項13】
前記吐出モジュールは、
第1の色のインクのための前記圧力室、前記供給流路、及び前記回収流路を含む第1の循環経路と、
前記第1の色のインクとは異なる第2の色のインクのための前記圧力室、前記供給流路、及び前記回収流路を含む第2の循環経路と、を含む、
請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項14】
前記エネルギー発生素子は、発熱することにより液体中に膜沸騰を生成可能な発熱抵抗素子である、
請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項15】
請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドを搭載して主走査方向に移動させるためのキャリッジと、
記録媒体を主走査方向と交差する搬送方向に搬送させるための搬送手段と、
を備え、
前記液体吐出ヘッドにより前記記録媒体に画像を記録する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体吐出ヘッド、及び、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクを吐出しながら記録を行うことが可能な液体吐出装置では、液体吐出ヘッドの吐出口からインク中の揮発成分が蒸発することが原因で吐出口近傍のインクの粘度が上昇してしまうことがある。インクの粘度が上昇すると、液体吐出ヘッドの吐出特性に影響を及ぼす虞がある。インクの粘度上昇を抑制する方法の1つとして、液体吐出ヘッドに供給するインクを循環路内において循環させる方法が知られている。
【0003】
特許文献1には、インクの循環系を接続することが可能なインクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)が記載されている。
【0004】
また、液体吐出ヘッドには、記録に用いる液体を目標温度にして粘度を適切にするための温度調整機構が配されていることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-140992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1には、記録に用いる液体を所望の温度にした後、その温度を維持する手段は、開示されていない。加えて、特許文献1のインクジェットヘッドは、セラミック製の基板を備える。セラミックは、熱伝導率が比較的高い。このため、特許文献1のインクジェットヘッドでは、液体を所望の温度に調整したとしても、その基板から熱が逃げてしまい、調整した温度を維持することが困難である。
【0007】
そこで、本開示は、所望の温度に調整した液体の温度を簡易な構成によって維持することができる液体吐出ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく、本開示の液体吐出ヘッドは、液体を吐出することが可能な吐出口と、前記吐出口から吐出するための液体を収容可能な圧力室と、前記圧力室に液体を供給するための供給流路と、前記圧力室に収容された液体を吐出するためのエネルギーを発生させることが可能なエネルギー発生素子と、前記吐出口から吐出されなかった液体を前記圧力室から回収するための、回収流路と、を含む吐出モジュールと、前記吐出モジュールに接合され、当該吐出モジュールを支持するための支持部材と、を備え、前記圧力室、前記供給流路、及び前記回収流路を流れる液体は、温度調整機構によって所定の温度に調整されており、前記支持部材を構成する素材の熱伝導率は、1.0(W/m・K)以下である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示の液体吐出ヘッドによれば、所望の温度に調整した液体の温度を簡易な構成によって維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態における液体吐出装置の一例を示す外観斜視図。
図2】一実施形態における液体吐出ヘッドの模式的な分解斜視図。
図3図2に示した各部品を組付けた状態の斜視図。
図4図3のA矢視図。
図5】一実施形態における循環ユニットの一例を示す外観概略図。
図6】一実施形態における液体の循環経路を示す模式図。
図7】一実施形態における吐出モジュールユニットを上方から見た分解斜視図。
図8】一実施形態における吐出モジュールユニットを下方から見た分解斜視図。
図9】一実施形態における開口プレートの模式的な平面図。
図10】一実施形態における記録素子基板の模式的な平面図。
図11】一実施形態における吐出モジュールユニットの模式的な断面図。
図12】一実施形態における吐出モジュールユニットの模式的な断面図。
図13】一実施形態における吐出モジュールユニットの模式的な断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて本開示の各実施形態の例を説明する。但し、以下の記載は、本開示の範囲を限定しない。
【0012】
<液体吐出装置の説明>
図1は、本実施形態で使用することが可能な液体吐出装置100の一例を示す外観斜視図である。
【0013】
図中の座標軸について説明する。本明細書で参照する図面において、X方向及びY方向は、水平面上で互いに直交する2方向を示す。Z方向は、鉛直方向を示す。+Y方向は液体吐出装置100の前方を、-Y方向は後方を、-X方向は左を、+X方向は右を、+Z方向は上方を、-Z方向は下方を、夫々示す。+Y方向は、記録媒体101の搬送方向の下流でもあり、-Y方向は、記録媒体101の搬送方向の上流でもある。適宜、X方向を主走査方向、Y方向を副走査方向と呼ぶ。以下の説明において、断りのない限り、上方、下方、及び、左右は、液体吐出装置100が通常の状態で使用される使用姿勢おける方向を示す。
【0014】
本実施形態では、「液体」がインクである場合を想定して説明する。しかし、本実施形態で使用することができる液体は、インクに限定されない。即ち、液体として、記録媒体101におけるインクの定着性の向上、光沢ムラの軽減、又は、耐擦過性の向上を目的として使用される処理液等を含む種々の記録液が使用されてもよい。
【0015】
「記録媒体」とは、一般的な液体吐出装置で用いられる紙のみならず、布、プラスチックフィルム、金属板、ガラス、セラミックス、樹脂、木材、又は、皮革等、液体を受容可能な媒体を意味する。
【0016】
「記録」(「印刷」ともいう。)とは、文字及び図形等の有意の情報を形成することのみを意味しない。「記録」とは、画像、模様、又はパターン等、無意の情報を形成することも意味する。更に、「記録」とは、人間が視覚で知覚し得る様に顕在化したものであるか否かも問わない。即ち、「記録」とは、記録媒体101上に構造物を形成する、又は媒体の加工を行うことも意味する。
【0017】
図1に示す様に、液体吐出装置100は、インクを吐出して記録を行うことが可能な液体吐出ヘッド102を備える。液体吐出ヘッド102は、主走査方向(±X方向)に往復移動することが可能なキャリッジ103に搭載される。キャリッジ103は、主走査方向に延在するガイド軸104によって、ガイド軸104に沿って摺動可能に支持される。キャリッジ103は、ガイド軸104と平行に配された無端ベルト105に固定される。
【0018】
キャリッジ103が無端ベルト105に固定された状態で、インクを吐出する吐出口が形成された液体吐出ヘッド102の吐出口面は、記録媒体101を-Z方向側から支持する不図示のプラテンと平行に対向した状態に保たれる。キャリッジモータ(不図示)の駆動による駆動プーリ(不図示)の回転によって、無端ベルト105は、左方向(-X方向)又は右方向(+X方向)へと移動する。無端ベルト105が、主走査方向に移動することにより、キャリッジ103も、ガイド軸104に沿って、主走査方向に往復移動する。
【0019】
本実施形態では、液体吐出ヘッド102には、その内部でインクを循環させることが可能な1つ以上(本例では4つ)の循環ユニット106が搭載される。尚、実際には、循環ユニット106を覆うカバーが装着される。しかし、説明の便宜上、そのカバーは、図示されない。
【0020】
液体吐出ヘッド102には、記録に必要となる電気信号を送るための電気配線、インクタンク107からポンプ108を介してインクを供給するためチューブ、及び空気を供給するための配管が接続される。これらの電気配線、チューブ、及び配管は、ガイド109に沿って、液体吐出ヘッド102に案内される。
【0021】
本実施形態では、4つの循環ユニット106の夫々には、CMYK(シアン色、マゼンタ色、イエロー色、ブラック色)の4色のインクが、個別に供給される。液体吐出ヘッド102は、これらの4色のインクを用いたフルカラー印刷が可能である。尚、本実施形態の適用することが可能なインクの色は、これらの4色に限られない。インクの色は、これら以外の色を含む、3色以下5色以上でもよい。
【0022】
液体吐出装置100は、搬送モータ(不図示)によって駆動される、第1の搬送ローラ110、第2の搬送ローラ111、第3の搬送ローラ112、及び第4の搬送ローラ113を備える。これらの搬送ローラの夫々を駆動させる搬送モータの夫々は、正逆両方向に回転可能である。搬送方向において、第1の搬送ローラ110と第2の搬送ローラ111とは、キャリッジ103の上流側(-Y方向側)において、記録媒体101を矜持可能である。第3の搬送ローラ112と第4の搬送ローラ113とは、キャリッジ103の下流側(+Y方向側)において、記録媒体101を矜持可能である。
【0023】
本実施形態では、搬送方向は、主走査方向と直交する方向(+Y方向)に定められている。図1の矢印が示す様に、液体吐出装置100を右側(-X方向側)から見た場合、第1の搬送ローラ110は時計回りに回転し、第2の搬送ローラ111は反時計回りに回転する。第3の搬送ローラ112は反時計回りに回転し、第4の搬送ローラ113は時計回りに回転する。これらの搬送ローラの回転によって、記録媒体101は、主走査方向と交差(本例の場合は、直交)する搬送方向(+Y方向)に搬送される。液体吐出装置100は、記録媒体101を搬送方向における下流側(+Y方向側)へと間欠的に移動させる一方、液体吐出ヘッド102を、主走査方向へと移動させつつ、インクを吐出させることによって画像の記録を行う。以下、この様な液体吐出ヘッド102の動作を「記録動作」と呼ぶ。この様に、本実施形態における液体吐出装置100は、所謂シリアル型のインクジェットプリンターである。尚、本実施形態では、液体吐出ヘッド102は、インクを吐出に適した温度に調整することが可能な温度調整機構(後述する)を備える。インクが所定の温度に到達した後に記録動作は開始される。これにより、記録動作中、インクの粘性が適正に保たれる。
【0024】
また、液体吐出装置100には、吐出口の吐出性能の維持及び回復を行うための回復機構(不図示)が配される。この回復機構は、液体吐出ヘッド102における走査の基準位置(ホームポジション)の付近に設けられた非記録領域内に配される。この回復機構には、吐出口を封止するためのキャップ(不図示)、及び吐出口が形成された吐出口面に付着した余分なインク等を掻き取るためのワイパ(不図示)等が含まれる。非記録時には、キャップが、吐出口面を覆う位置に相対的に移動する。そして、吐出口における乾燥の抑制、インクの充填、又は吐出性能を回復させるための吸引動作等が行われる。
【0025】
<液体吐出ヘッド構成の説明>
図2は、本実施形態の液体吐出ヘッド102の分解斜視図である。
【0026】
図2に示す様に、液体吐出ヘッド102は、インクを吐出するための吐出ユニット201と、インクを循環させるための循環ユニット106と、を含む。吐出ユニット201は、複数の部材が積層された吐出モジュールユニット202と、循環ユニット106を収容することが可能な筐体203と、を含む。
【0027】
吐出モジュールユニット202は、吐出口を有する吐出モジュール204、液体吐出ヘッド102の下面から背面に亘って配された接続基板205、接続基板205を支持可能な支持部材206、及び接続基板205と電気的に接続可能な電気基板207を含む。吐出モジュールユニット202には、接続基板205の下面(-Z方向を向く面)を覆うことが可能なフェイスカバー212も含まれる。
【0028】
吐出モジュール204は、支持部材206の下面に接合された第1の吐出モジュール204aと、第2の吐出モジュール204bと、を含む。以下、第1の吐出モジュール204a及び第2の吐出モジュール204bの夫々を区別する必要が無い場合には、単に、吐出モジュール204と呼ぶ。尚、吐出モジュール204は、フェイスカバー212で覆われない。
【0029】
循環ユニット106は、シアン色、マゼンタ色、イエロー色、及びブラック色の各色に対応した、第1の循環ユニット106a、第2の循環ユニット106b、第3の循環ユニット106c、及び第4の循環ユニット106dを含む。
【0030】
以下、第1の循環ユニット106a、第2の循環ユニット106b、第3の循環ユニット106c、及び第4の循環ユニット106dの夫々を区別する必要がない場合には、単に、循環ユニット106と呼ぶ。筐体203と循環ユニット106との間にシール部材を挟み込み、ビス締めすることによって、循環ユニット106は、筐体203に固定される。尚、循環ユニット106は、筐体203に溶着されてもよい。
【0031】
筐体203は、装置本体からインクを受け入れる方向を向く接続面208を有する。接続面208には、ガイド109(図1参照)に沿って案内されたチューブを接続するため第1の接続部209a、第2の接続部209b、第3の接続部209c、及び第4の接続部209dが形成される。シアン色のインクを供給するチューブは、第1の接続部209aに接続される。マゼンタ色のインクを供給するチューブは、第2の接続部209bに接続される。イエロー色のインクを供給するチューブは、第3の接続部209cに接続される。ブラック色のインクを供給するチューブは、第4の接続部209dに接続される。第1の接続部209aは、第1の循環ユニット106aに繋がっている。第2の接続部209bは、第2の循環ユニット106bに繋がっている。第3の接続部209cは、第3の循環ユニット106cに繋がっている。第4の接続部209dは、第4の循環ユニット106dに繋がっている。以下、第1の接続部209a、第2の接続部209b、第3の接続部209c、及び第4の接続部209dの夫々を区別する必要がない場合には、単に、接続部209と呼ぶ。この様に、インクタンクからチューブを介して供給されたインクは、接続部209を経由し、循環ユニット106に供給される。
【0032】
筐体203の底部210には、第1の吐出モジュール204a及び第2の吐出モジュール204bを支持可能な支持部材206が接合される。循環ユニット106に供給されたインクは、底部210内に形成された流路を経由し、支持部材206を鉛直方向(Z方向)に貫通するように形成された開口に供給される。筐体203の下面に支持部材206の上面を接合する手法の一例として、接着剤を用いて接着する例が挙げられる。筐体203の下面に支持部材206の上面を接合する他の例として、支持部材206の上面と筐体203の下面との間にシール部材を挟み、ビス締めすることによって、支持部材206を筐体203に固定する例が挙げられる。
【0033】
筐体203は、接続面208が向く方向(-Y方向)とは反対方向(+Y方向)を向くコンタクト面211を有する。コンタクト面211には、電気基板207が配される。支持部材206の下面(-Z方向を向く面)には、接続基板205の上面(+Z方向を向く面)が接合される。
【0034】
接続基板205の下面(-Z方向を向く面)には、フェイスカバー212の上面(+Z方向を向く面)が接合される。フェイスカバー212の上面は、接続基板205の下面に対して、接着剤により接着される。尚、フェイスカバー212は、ビス締め等の機械的な方法によって、支持部材206に固定されてもよい。フェイスカバー212によって、ワイピングする際におけるワイパの擦れ及び記録動作時の紙擦れ等から吐出口面を保護することができる。フェイスカバー212が存在することで、液体吐出ヘッド102の下面(-Z方向を向く面)は、フェイスカバー212を備えない液体吐出ヘッドの下面より、平面性が向上する。これにより、回復機構のキャップが液体吐出ヘッド102の下面を覆う際における、キャッピングの信頼性も向上する。
【0035】
図3は、図2に示した各部品を組付けた状態の斜視図である。尚、図3では、説明の便宜上、フェイスカバーを図示していない。
【0036】
図3に示す様に、支持部材206の上面と筐体203の下面とが接着した状態で、支持部材206は、筐体203を支持している。循環ユニット106が筐体203に収容された状態で、液体吐出ヘッド102の内部には、接続部209から吐出口まで連通する流路が形成される。
【0037】
図4は、図3のA矢視図である。尚、図4では、説明の便宜上、フェイスカバーを図示していない。
【0038】
図4に示す様に、電気基板207には、装置本体から送られた電気信号を受け取るための端子401が配される。電気基板207は、加締めによって、筐体203に固定される。電気基板207は、接着剤又は両面テープによって、コンタクト面211に貼り付けられてもよい。コンタクト面211では、電気基板207の端子(不図示)と接続基板205の端子(不図示)とが、ワイヤボンディングにより接続される。尚、電気基板207の端子(不図示)と接続基板205の端子(不図示)とは、ACF(Anisotropic Conductive Film)により圧着されてもよい。
【0039】
底部210では、接続基板205の端子(不図示)と吐出モジュール204の端子(不図示)とは、ワイヤボンディングにより接続される。尚、接続基板205の端子(不図示)と吐出モジュール204の端子(不図示)とが、フライングリードボンディングにより接続されてもよい。
【0040】
この様な構成によれば、装置本体から端子401に送られた電気信号は、電気基板207及び接続基板205を介して吐出モジュール204に送られる。その電気信号に応じて、吐出モジュール204からインクが吐出される。本実施形態では、第1の吐出モジュール204aに形成された第1の吐出口列からシアン色のインクが吐出され、第2の吐出口列からマゼンタ色のインクが吐出される。また、第2の吐出モジュール204bに形成された第3の吐出口列からイエロー色のインクが吐出され、第4の吐出口列からブラック色のインクが吐出される。
【0041】
<循環経路の説明>
図5は、本実施形態の記録装置に適用される循環ユニット106の外観概略図である。循環ユニット106には、第1、第2、第3、及び第4の循環ユニットが含まれるが、図5では、説明の便宜上、1つの循環ユニットを例に挙げて説明を行う。第1、第2、第3、及び第4の循環ユニットの構成は、循環するインクの色を除いて、全て同一である。
【0042】
図5に示す様に、循環ユニット106は、インクに含まれる塵埃等を除去することが可能なフィルタ501と、圧力制御手段としての第1の圧力制御機構502及び第2の圧力制御機構503と、インクを循環させるための循環ポンプ504と、を含む。本実施形態の循環ポンプ504は、ダイヤフラムに貼り付けた圧電素子に駆動電圧を入力することでポンプ室内の容積を変化させ、圧力変動により2つの逆止弁を交互に動かして送液する、圧電ダイヤフラムポンプである。
【0043】
図6は、液体吐出ヘッド102の内部におけるインクの循環経路を示す模式図である。本実施形態では、循環経路は、4つ存在する。説明の便宜上、図6では、4つの循環経路のうち1つを例に挙げて説明する。これら4つの循環経路の構成は、循環するインクの色を除いて、全て同一である。
【0044】
図6に示す様に、液体吐出ヘッド102の内部には、インクを循環させることが可能な循環経路が配される。この循環経路は、第1のバルブ室601と吐出モジュールユニット202との間でインクを循環させる。
【0045】
本実施形態では、液体吐出ヘッド102の内部に形成された循環経路の総体積は、約10mLである。本実施形態の「循環経路」とは、第1のバルブ室601から吐出モジュールユニット202、第2のバルブ室610、及び循環ポンプ504を経由して、再び第1のバルブ室601に戻ってくるまでの経路を意味する。
【0046】
第1の圧力制御機構502は、第1のバルブ(不図示)を有する第1のバルブ室601、及び、第1のバルブ室601と第1のバルブを介して連通する様に形成された第1の圧力制御室602を含む。第1の圧力制御機構502と第2の圧力制御機構503とは、バイパス流路604によって接続される。
【0047】
第2の圧力制御機構503は、第2のバルブ(不図示)を有する第2のバルブ室610、及び、第2のバルブ室610と第2のバルブを介して接続する様に形成された第2の圧力制御室609を含む。
【0048】
循環ユニット106の内部には、第2の圧力制御室609と循環ポンプ504とを接続する様に形成されたポンプ入口流路611、及び循環ポンプ504と第1の圧力制御室602とを接続する様に形成されたポンプ出口流路612が配される。
【0049】
筐体203の底部には、第1の圧力制御室602と吐出モジュールユニット202とを接続する様に形成された第1の供給流路603、及び吐出モジュールユニット202と第2の圧力制御室609とを接続する様に形成された第2の回収流路608が配される。
【0050】
吐出モジュールユニット202には、第1の供給流路603と複数の圧力室606とを接続する様に形成された第2の供給流路605、及び、複数の圧力室606と第2の回収流路608とを接続する様に形成された第1の回収流路607が配される。
【0051】
<インクの循環>
ポンプ108の駆動によって、インクは、インクタンク107からフィルタ501を経由して、第1のバルブ室601へ加圧供給される。その後、インクが第1のバルブを介して第1の圧力制御室602へ流れ込む際には、第1のバルブ室601にて、圧力が制御される。
【0052】
他方、循環ポンプ504は、循環ポンプ504よりも上流に配されたポンプ入口流路611から循環ポンプ504よりも下流に配されたポンプ出口流路612へとインクを送液する様に、駆動する。循環ポンプ504の駆動によって、第1の圧力制御室602内の圧力が制御され、第1の供給流路603及びバイパス流路604へ、インクが供給される。第1の供給流路603に供給されたインクは、第2の供給流路605を経由して、複数の圧力室606に供給される。バイパス流路604へ供給されたインクは、第2のバルブ室610に供給される。
【0053】
個々の圧力室606には、インクを吐出するための吐出口1101と吐出エネルギーを発生するための発熱抵抗素子1102とが配される(図11参照)。圧力室606に供給され、且つ吐出口から吐出されなかったインクは、第1の回収流路607、及び第1の回収流路607と接続する様に形成された第2の回収流路608を経由し、第2の圧力制御室609に回収される。第2の圧力制御室609では、インクが第2のバルブ室610へ流れ込む際に圧力が制御される。第2の圧力制御室609にて、圧力が制御されると、インクは、第2のバルブを介して第2のバルブ室610へ流れ込む。
【0054】
第2のバルブ室610では、インクが第2の圧力制御室609へ戻される際に圧力が制御される。第2のバルブ室610にて、圧力が制御されると、インクは、第2のバルブを介して第2の圧力制御室609に戻される。
【0055】
第2のバルブ室610から第2の圧力制御室609に戻されたインクは、ポンプ入口流路611を経由して、循環ポンプ504に回収される。循環ポンプ504に回収されたインクは、ポンプ出口流路612を介して、第1の圧力制御室602へと再び供給される。
【0056】
以上が、本実施形態における循環経路の説明である。
【0057】
<吐出モジュールユニット202の説明>
図7は、本実施形態における吐出モジュールユニット202を上方から見た分解斜視図である。図7では、理解を容易にするため、接続基板及び電気基板は、図示されない。図7における実線の矢印は、支持部材206から吐出モジュール204に供給されるインクの流れを示す。一方、図7における破線の矢印は、吐出モジュール204から支持部材206に回収されるインクの流れを示す。
【0058】
図7に示す様に、吐出モジュールユニット202は、2つの吐出モジュール204と、1つの支持部材206と、を含む。1つの吐出モジュール204は、1つの記録素子基板701と、1つの開口プレート702と、を含む。開口プレート702を構成する素材は、シリコンでもよいし、樹脂でもよい。
【0059】
記録素子基板701の上面(図7では、+Z方向を向く面)には、記録素子基板701の長手方向(図7では、Y方向)に沿って、複数の共通供給流路703、及び複数の共通回収流路704が形成される。尚、記録素子基板701の厚さ(図中のZ方向の長さ)は、0.5~1mmである。
【0060】
記録素子基板701の下面(図7では、-Z方向を向く面)には、共通供給流路703から圧力室にインクを供給するための供給口と、圧力室から共通回収流路704にインクを回収するための回収口と、が形成される。尚、ここでいう「供給」及び「回収」とは、順方向のインク循環時における供給及び回収を夫々意味する。
【0061】
記録素子基板701は、シリコンにより構成される。記録素子基板701には、複数の発熱抵抗素子の夫々に対して電力を供給するための電気配線が、成膜技術により、形成される。1つの記録素子基板701には、複数の吐出口が形成された1つの吐出口形成部材(後述する)が接合される。
【0062】
開口プレート702は、記録素子基板701にインクを供給するための複数のプレート供給口705、及び記録素子基板701からインクを回収するための複数のプレート回収口706を備える。
プレート供給口705及びプレート回収口706は、開口プレート702を重力方向(図7ではZ方向)に貫通する様に形成される。1つのプレート供給口705は、1つの共通供給流路703に対してインクを供給することが可能である。1つのプレート回収口706は、1つの共通回収流路704からインクを回収することが可能である。
【0063】
1つの支持部材206は、2つの開口プレート702にインクを供給するための複数の支持部材供給口707、及び2つの開口プレート702からインクを回収するための複数の支持部材回収口708を備える。支持部材供給口707及び支持部材回収口708は、支持部材206を重力方向(図7ではZ方向)に貫通する様に形成される。1つの支持部材供給口707は、2つのプレート供給口705に対してインクを供給することが可能である。1つの支持部材回収口708は、2つのプレート回収口706からインクを回収することが可能である。
【0064】
図8は、本実施形態における吐出モジュールユニット202を下方から見た分解斜視図である。図8における実線の矢印は、支持部材206から吐出モジュール204に供給されるインクの流れを示す。一方、図8における破線の矢印は、吐出モジュール204から支持部材206に回収されるインクの流れを示す。図8においても、理解を容易にするため、接続基板及び電気基板は図示されない。
【0065】
図8に示す様に、1つの記録素子基板701の下面(図中の-Z方向を向く面)に、1つの吐出口形成部材801の上面(図中の+Z方向を向く面)が接着される。複数の吐出口が吐出口形成部材801の下面(図8では、-Z方向を向く面)に長手方向(Y方向)に沿って配されることにより、1つの吐出口列802が形成される。本例では、吐出口形成部材801の短手方向(X方向)に、4つの吐出口列802が配される。
【0066】
4つの吐出口列802のうち短手方向(X方向)に連続する2つの吐出口列802から同一色のインクが吐出される。本例では、1つの吐出口形成部材801から2色のインクが吐出される。従って、2つの吐出口形成部材801及び2つの記録素子基板701を使用することにより、上述した4色のインクを吐出口することができる。
【0067】
図9は、本実施形態における開口プレート702の模式的な平面図である。
【0068】
図9に示す様に、開口プレート702は、複数のプレート供給口705を備える。尚、図9の「IN」で示した開口が、プレート供給口705である。他方、「OUT」で示した開口が、プレート回収口706である。1つの開口プレート702において、上述した4色のうち2色のインクが供給されたり、回収されたりする。本例では、開口プレート702の長手方向(Y方向)に沿って配された5つのプレート供給口705が、1つの共通供給流路に接続される。開口プレート702の長手方向(Y方向)に沿って配された5つのプレート回収口706が、1つの共通回収流路に接続される。
【0069】
図10は、本実施形態における記録素子基板701の模式的な平面図である。尚、図10の「IN」で示した流路が、共通供給流路703である。他方、「OUT」で示した流路が、共通回収流路704である。
【0070】
図10に示す様に、1つの記録素子基板701の上面には、4つの共通供給流路703と、4つの共通回収流路704と、が形成される。4つの共通供給流路703及び4つの共通回収流路704は、1つの記録素子基板701を重力方向(Z方向)に貫通しない。1つの共通供給流路703の下面には、複数の供給口1001が、記録素子基板701の長手方向(Y方向)に沿って配される。
【0071】
1つの供給口1001は、共通供給流路703の底から記録素子基板701を下面に向かって貫通する様に形成される。1つの共通回収流路704の下面には、複数の回収口1002が、記録素子基板701の長手方向(Y方向)に沿って配される。1つの回収口1002は、共通回収流路704の底から記録素子基板701を下面に向かって貫通する様に形成される。
【0072】
また、吐出口列802(図8参照)の本数と同数の共通供給流路703及び共通回収流路704が形成される。上述した様に、1つの記録素子基板701に1つの吐出口形成部材801が接合しており、1つの吐出口形成部材801に4つの吐出口列802が形成される(図8参照)。このため、本例では、1つの記録素子基板701に4つの共通供給流路703及び4つの共通回収流路704が形成される。1つの吐出口列802(図8参照)に含まれる吐出口の個数と同数の供給口1001が、1つの共通供給流路703に形成される。1つの吐出口列802(図8参照)に含まれる吐出口の個数と同数の回収口1002が、1つの共通回収流路704に形成される。共通供給流路703、共通回収流路704、供給口1001、及び回収口1002は、フォトリソグラフィ技術により形成される。
【0073】
ここで、長手方向(Y方向)における両端の2つの回収口1002の夫々は、吐出口列802(図8参照)の長手方向(Y方向)における両端よりも外側に位置する。そして、図10に示す様に、共通回収流路704における長手方向(Y方向)の両端は、長手方向(Y方向)における両端の2つの回収口1002よりも外側に位置する。この様に、本実施形態では、共通回収流路704が袋小路とならない位置に、長手方向(Y方向)における両端の2つの回収口1002が配される。この様な回収流路の構成は、シリアルスキャン方式の液体吐出ヘッドでは、非常に有効である。
【0074】
<吐出モジュールユニット202内におけるインクの流れ>
図11は、吐出モジュールユニット202をX方向に切断し、Y方向から見た模式的な断面図である。図11では、吐出モジュールユニット202は、プレート供給口705が形成された領域を通る切断線で切断されている。図11図13では、説明の便宜上、上述した4色のうち1色のインクが流れる1種類の流路の構成を例に挙げて説明する。但し、上述した4色の各色のインクが流れる4種類の流路における各流路の構成は、流れるインクの色を除いて、全て同一である。
【0075】
図11に示す様に、吐出口形成部材801は、インクを吐出するための吐出口1101と、吐出口1101から連続して形成された圧力室606と、を備える。圧力室606及び吐出口1101は、フォトリソグラフィ技術により形成される。
【0076】
1つの記録素子基板701は、インクを吐出するために利用されるエネルギーを発生することが可能なエネルギー発生素子として、複数の発熱抵抗素子1102を備える。発熱抵抗素子1102は、圧力室606が形成された位置と対応する位置に配される。
【0077】
1つの記録素子基板701は、論理配線、又はヒーター配線に使用される導電体層を形状的に高抵抗化した加熱素子を含む複数の温度調整機構1103を備える。1つの温度調整機構1103の近傍に、上記加熱素子に対して熱エネルギーを与えて駆動するためのドライバ(不図示)、及びインクの温度を検出するための温度センサ(不図示)が配される。温度調整機構1103は、この温度センサにより検出された温度と、所望の目標温度(例えば、40℃)と、の温度差に応じた異なる発熱量でインクを加熱して、インクの温度が所望の温度となる様に調整することが可能である。
【0078】
吐出口形成部材801の上面(図中の+Z方向を向く面)は、1つの圧力室606が1つの供給口1001及び1つの回収口1002に対して結合される様に、記録素子基板701の下面(図中の-Z方向を向く面)に接着される。記録素子基板701の上面は、1つの共通供給流路703が1つのプレート供給口705に対して結合される様に、開口プレート702の下面に接着される。開口プレート702の上面は、2つのプレート供給口705が1つの支持部材供給口707に対して結合される様に、支持部材206の下面に接着される。
【0079】
この様に、吐出口形成部材801、記録素子基板701、開口プレート702、及び支持部材206が接合された状態で、吐出モジュールユニット202は、支持部材供給口707から吐出口1101まで連続する流路が形成される。このため、吐出モジュールユニット202では、インクを供給する際に、上述した4色のインクの色ごとに支持部材供給口707、プレート供給口705、共通供給流路703、供給口1001、及び圧力室606へと順方向に流れるインクの流れが発生する。その後、圧力室606に充填されたインクに対して、発熱抵抗素子1102によりエネルギーが加えられると、インクが、吐出口1101から吐出される。
【0080】
この様に、本実施形態では、エネルギー発生素子として、発熱することにより液体中に膜沸騰を生成可能な発熱抵抗素子が採用されている。但し、ピエゾ方式及びその他各種の吐出方式の液体吐出ヘッドであっても、本開示の技術を適用することができる。
【0081】
図12は、吐出モジュールユニット202をX方向に切断し、Y方向から見た模式的な断面図である。図12では、吐出モジュールユニット202は、プレート回収口706が形成された領域を通る切断線で切断されている。
【0082】
図12に示す様に、記録素子基板701の上面は、1つの共通回収流路704が1つのプレート回収口706に対して結合される様に、開口プレート702の下面に接着される。開口プレート702の上面は、2つのプレート回収口706が1つの支持部材回収口708に対して結合される様に、支持部材206の下面に接着される。この様に、吐出口形成部材801、記録素子基板701、開口プレート702、及び支持部材206が接合された状態で、吐出モジュールユニット202は、吐出口1101から支持部材回収口708まで連続する流路が形成される。
【0083】
このため、1つの吐出モジュールユニット202では、2色のインクを回収する際に、インク色ごとに圧力室606、回収口1002、共通回収流路704、プレート回収口706、及び支持部材回収口708へと流れるインクの流れが発生する。そして、支持部材回収口708から筺体の底部に形成された流路を介して、循環ユニットにインクが戻される。
【0084】
図13は、吐出モジュールユニット202をX方向に切断し、Y方向から見た模式的な断面図である。図13では、吐出モジュールユニット202は、プレート供給口及びプレート回収口が形成されていない領域を通る切断線で切断されている。
【0085】
図13に示す様に、吐出モジュールユニット202は、開口プレート702及び支持部材206のどちらにも開口が形成されていない領域を有する。プレート供給口及びプレート回収口が形成されていない領域は、開口プレート702と支持部材206との接着面として使用される。このため、この領域では、支持部材供給口及び支持部材回収口のどちらも形成されない。
【0086】
また、この領域は、支持部材供給口と支持部材回収口とを仕切るための領域でもある。この領域では、インクを供給する際、重力方向(-Z方向)へのインクの流れは、支持部材206によって、一旦、遮断される。従って、この領域では、インクは、筺体の底部に形成された流路をY方向に沿って流れる。そして、インクが支持部材供給口に到達したところで、図11で説明した様なインクの流れが発生する。
【0087】
一方、この領域では、インクを回収する際、反重力方向(+Z方向)へのインクの流れは、開口プレート702によって、一旦、遮断される。従って、この領域では、インクは、共通回収流路704に沿って流れる。そして、インクがプレート回収口に到達したところで、図12で説明した様なインクの流れが発生する。以上が、この領域における正確なインクの流れである。
【0088】
この様な状況下、本実施形態では、記録素子基板701に形成された流路に沿って、温度調整機構1103が配される。本例では、温度調整機構1103は、記録素子基板701の長手方向全域に沿って延在する。尚、温度調整機構1103は、記録素子基板701の長手方向に沿って、部分的又は断続的に延在してもよい。
【0089】
この様な構成によれば、記録素子基板701の内部を流れるインクを温度調整機構1103で加熱し、インクの温度を所望の目標温度に調整することができる。本例では、温度調整機構1103は、記録素子基板701に配される。しかし、インクを所望の目標温度に調整して吐出することができるのであれば、温度調整機構1103を配する位置は、記録素子基板701に限られない。温度調整機構1103は、液体循環経路のどこに配されてもよいし、液体吐出ヘッドの外部に配されてもよい。例えば、温度調整機構1103は、吐出口形成部材801、開口プレート702、支持部材206、ポンプ出口流路612(図6参照)、又は第1の回収流路607(図6参照)に配されてもよい。
【0090】
<目標温度の維持>
インクの温度を吐出に適した温度に調整したとしても、記録動作中に熱が逃げてしまい、その温度が低下した場合、液体吐出ヘッドの吐出特性に影響を及ぼす虞がある。そこで、本実施形態では、熱伝導率が比較的低い材料によって、支持部材206が構成される。具体的には、熱伝導率が1.0(W/m・K)以下の材料(例えば、樹脂等)によって、支持部材206が構成される。
【0091】
この様な構成によれば、熱伝導率が高い材料(例えば、アルミナ等のセラミック)によって構成された支持部材よりも断熱性を向上させることができる。この様に、熱伝導率が比較的低い材料を用いて支持部材206を製造することで、調整した温度を容易に維持することができる。即ち、本実施形態の液体吐出ヘッドによれば、所望の温度に調整した液体の温度を簡易な構成によって維持することができる。
【0092】
また、吐出モジュール204の内部を流れるインクの温度を維持するという観点で、支持部材206の厚み(Z方向の長さ)は、2mm以上であることがより好ましい。この構成によれば、筐体が比較的熱伝導率が高い材料(例えば、金属等)により構成された場合であっても、吐出モジュール204から、支持部材206を介して筐体に逃げる熱量を低減させることができる。その結果、インクを所望の温度に上昇させるために必要な時間及び電力を削減することができる。
【0093】
また、調整したインクの温度を維持するという観点で、支持部材206における吐出モジュール204が接着される方向を向く面(-Z方向を向く面)の面積は、大きいことが望ましい。例えば、支持部材206における下面(-Z方向を向く面)の面積は、1500mm2以上であることが好ましい。この様な構成によれば、支持部材206の熱抵抗を比較的大きくすることができる。このため、吐出モジュール204の内部を流れるインクの温度を維持することが容易となる。更に、インクを所望の温度に上昇させるために必要な時間及び電力を削減することもできる。
【0094】
また、支持部材206の内部を流れるインクの流量は、少ない程よい。例えば、支持部材206の内部を流れるインクの流量は、10mL/sec以下であることが好ましい。この様な構成によれば、インクの単位量に対する支持部材206の体積がより大きくなる。このため、支持部材206の内部を流れるインクの温度を維持することが容易となる。更に、インクを所望の温度に上昇させるために必要な時間及び電力を削減することもできる。
【0095】
更に、フェイスカバー212も熱伝導率が比較的低い材料によって、構成されることが好ましい。具体的には、熱伝導率が1.0(W/m・K)以下の材料(例えば、樹脂等)によって、フェイスカバー212が構成されることが好ましい。液体吐出ヘッドにおける温度維持の効果は、熱伝導率が比較的低い材料の体積が大きい程向上する。従って、フェイスカバー212も熱伝導率が比較的低い材料によって構成される場合、液体吐出ヘッド102は、温度維持の効果をより好適に発揮することができる。
【0096】
この様な構成によれば、熱伝導率が比較的高い材料で構成されたフェイスカバーを備えた液体吐出ヘッドに比べると、熱伝導率が比較的低い材料で構成されたフェイスカバー212を備える液体吐出ヘッドの方が温度維持の効果は高くなる。例えば、アルミナ製のフェイスカバーを備えた液体吐出ヘッドに比べると、樹脂製のフェイスカバー212を備えた液体吐出ヘッド方が温度維持の効果は高くなる。
【0097】
また、フェイスカバーを備えない液体吐出ヘッドに比べると、熱伝導率が比較的低い材料で構成されたフェイスカバー212を備える液体吐出ヘッドの方が、温度維持の効果は高くなる。その結果、インクを所望の温度に上昇させるために必要な時間及び電力を削減することもできる。尚、熱伝導率が比較的低い材料を用いてフェイスカバー212を構成することは、必須の構成ではない。熱伝導率が比較的低い材料を用いて支持部材206が構成されるだけであっても、本実施形態の効果を得ることは可能である。
【0098】
[その他の実施形態]
吐出モジュール204から空気中に逃げてしまう熱量を最小限にするという観点で、吐出モジュール204における支持部材206が接着される方向を向く面(+Z方向を向く面)の面積は、小さいことが望ましい。例えば、吐出モジュール204における上面(+Z方向を向く面)の面積は、400mm2以下であることが、より好ましい。
【0099】
この様な構成によれば、吐出モジュール204の表面積を低減することができる。吐出モジュール204の表面積を可能な限り小さくすることにより、調整した温度を維持することが容易となる。更に、インクを所望の温度に上昇させるために必要な時間及び電力を削減することもできる。
【0100】
また、シリアル方式における液体吐出ヘッドの動作は、往路の走査が終了した時点から復路の走査が開始される時点までの間、一旦、停止する。従って、シリアル方式の液体吐出ヘッドは、ライン方式の液体吐出ヘッドに比べると、走査が止まっている間に、吐出モジュール204の温度が低下する傾向がある。そのため、支持部材206を備えるシリアル方式の液体吐出ヘッドの方が、支持部材206を備えるライン方式の液体吐出ヘッドよりも、温度維持の効果をより好適に発揮することができる。
【0101】
図1の例では、シリアル方式の液体吐出ヘッドが示されたが、フルマルチ方式及びその他の方式の液体吐出ヘッドであっても、本開示の技術を適用することができる。
【0102】
本開示は、以下の構成を含む。
【0103】
[構成1]
液体を吐出することが可能な吐出口と、
前記吐出口から吐出するための液体を収容可能な圧力室と、
前記圧力室に液体を供給するための供給流路と、
前記圧力室に収容された液体を吐出するためのエネルギーを発生させることが可能なエネルギー発生素子と、
前記吐出口から吐出されなかった液体を前記圧力室から回収するための、回収流路と、
を含む吐出モジュールと、
前記吐出モジュールに接合され、当該吐出モジュールを支持するための支持部材と、
を備え、
前記圧力室、前記供給流路、及び前記回収流路を流れる液体は、温度調整機構によって所定の温度に調整されており、
前記支持部材を構成する素材の熱伝導率は、1.0(W/m・K)以下である、
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【0104】
[構成2]
前記支持部材を構成する素材は、樹脂である、
構成1に記載の液体吐出ヘッド。
【0105】
[構成3]
前記支持部材の前記吐出モジュールと接合する方向の厚みは、2mm以上である、
構成1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【0106】
[構成4]
前記支持部材は、複数の前記吐出モジュールを支持する、
構成1乃至3の何れか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【0107】
[構成5]
前記支持部材における前記吐出モジュールが接合される方向を向く面の面積は、1500mm2以上である、
構成1乃至4の何れか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【0108】
[構成6]
前記支持部材の内部を流れる液体の流量は、10mL/sec以下である、
構成1乃至5の何れか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【0109】
[構成7]
前記吐出モジュールにおける前記支持部材が接合される方向を向く面の面積は、400mm2以下である、
構成1乃至6の何れか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【0110】
[構成8]
前記吐出モジュールを覆わない様に、前記液体吐出ヘッドの前記吐出モジュールが配された面を覆うフェイスカバーを更に備え、
前記フェイスカバーを構成する素材の熱伝導率は、1.0(W/m・K)以下である、構成1乃至7の何れか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【0111】
[構成9]
前記所定の温度は、40℃である、
構成1乃至8の何れか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【0112】
[構成10]
前記温度調整機構を更に備え、
前記温度調整機構は、前記吐出モジュールに形成された流路に沿って配される、
構成1乃至9の何れか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【0113】
[構成11]
前記温度調整機構は、加熱素子、液体の温度を検出するための温度センサ、及び前記加熱素子を駆動するためのドライバを含む、
構成10に記載の液体吐出ヘッド。
【0114】
[構成12]
前記供給流路に液体を供給する流れと、前記回収流路から液体を回収する流れと、を発生させることが可能な循環ポンプを更に備える、
構成1乃至11の何れか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【0115】
[構成13]
前記吐出モジュールは、
第1の色のインクのための前記圧力室、前記供給流路、及び前記回収流路を含む第1の循環経路と、
前記第1の色のインクとは異なる第2の色のインクのための前記圧力室、前記供給流路、及び前記回収流路を含む第2の循環経路と、を含む、
構成1乃至12の何れか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【0116】
[構成14]
前記エネルギー発生素子は、発熱することにより液体中に膜沸騰を生成可能な発熱抵抗素子である、
構成1乃至13の何れか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【0117】
[構成15]
構成1乃至14の何れか1項に記載の液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドを搭載して主走査方向に移動させるためのキャリッジと、
記録媒体を主走査方向と交差する搬送方向に搬送させるための搬送手段と、
を備え、
前記液体吐出ヘッドにより前記記録媒体に画像を記録する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
図1
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図13