(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162743
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】インクジェット用インク
(51)【国際特許分類】
C09D 11/322 20140101AFI20241114BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20241114BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
C09D11/322
B41M5/00 120
B41J2/01 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078601
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】宮田 美都子
(72)【発明者】
【氏名】池滝 何以
(72)【発明者】
【氏名】畑尻 晴弘
(72)【発明者】
【氏名】土橋 一揮
(72)【発明者】
【氏名】中込 雅俊
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056FC01
2H186BA08
2H186DA12
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB48
2H186FB57
4J039AD03
4J039AD09
4J039BC07
4J039BC31
4J039BE01
4J039BE22
4J039BE25
4J039EA46
4J039EA48
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】ノズル詰まりの発生を抑制しつつ、所望の画像濃度を有する画像を形成できるインクジェット用インクを提供する。
【解決手段】インクジェット用インクは、水性媒体と、前記水性媒体に分散する顔料粒子とを含有する。前記顔料粒子は、顔料及び架橋樹脂を含む。前記架橋樹脂は、特定樹脂と、特定架橋剤との架橋物である。前記特定樹脂は、α-メチルスチレンに由来する第1繰り返し単位と、スチレンに由来する第2繰り返し単位と、(メタ)アクリル酸に由来する第3繰り返し単位と、アルキレングリコール(メタ)アクリレート又はジアルキレングリコール(メタ)アクリレートに由来する第4繰り返し単位とを有する特定共重合体の中和物である。前記特定架橋剤は、分子中に2以上のエポキシ基と1以上のヒドロキシ基とを有する多官能エポキシ化合物を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性媒体と、前記水性媒体に分散する顔料粒子とを含有し、
前記顔料粒子は、顔料及び架橋樹脂を含み、
前記架橋樹脂は、特定樹脂と、特定架橋剤との架橋物であり、
前記特定樹脂は、α-メチルスチレンに由来する第1繰り返し単位と、スチレンに由来する第2繰り返し単位と、(メタ)アクリル酸に由来する第3繰り返し単位と、アルキレングリコール(メタ)アクリレート又はジアルキレングリコール(メタ)アクリレートに由来する第4繰り返し単位とを有する特定共重合体の中和物であり、
前記特定共重合体の有する全繰り返し単位100質量%に対して、
前記第1繰り返し単位の含有割合は、1質量%以上65質量%以下であり、
前記第2繰り返し単位の含有割合は、1質量%以上60質量%以下であり、
前記第3繰り返し単位の含有割合は、10質量%以上40質量%以下であり、
前記第4繰り返し単位の含有割合は、1質量%以上12質量%以下であり、
前記特定共重合体の酸価は、50mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であり、
前記特定共重合体の数平均分子量は、3000以上18000以下であり、
前記特定樹脂の中和率は、20%以上100%以下であり、
前記特定架橋剤は、分子中に2以上のエポキシ基と1以上のヒドロキシ基とを有する多官能エポキシ化合物を含み、
前記特定架橋剤の水溶率は、80%以上であり、
前記架橋樹脂の架橋率は、25%以上90%以下である、インクジェット用インク。
【請求項2】
1,050,000Gで3時間遠心処理して得られる上澄み液における固形分の含有割合は、2.0質量%以下である、請求項1に記載のインクジェット用インク。
【請求項3】
前記特定架橋剤は、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル及びソルビトールポリグリシジルエーテルのうち少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載のインクジェット用インク。
【請求項4】
前記特定共重合体の有する全繰り返し単位100質量%に対して、
前記第1繰り返し単位の含有割合は、15質量%以上55質量%以下であり、
前記第2繰り返し単位の含有割合は、10質量%以上40質量%以下であり、
前記第3繰り返し単位の含有割合は、20質量%以上35質量%以下であり、
前記第4繰り返し単位の含有割合は、4質量%以上11質量%以下である、請求項1又は2に記載のインクジェット用インク。
【請求項5】
前記特定架橋剤のエポキシ当量は、100g/eq.以上250g/eq.である、請求項1又は2に記載のインクジェット用インク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用インクに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置には、顔料及び水性媒体を含有する水性のインクジェット用インクが用いられることがある。インクジェット用インクには、インクジェット記録装置の記録ヘッドのノズル詰まりの発生を抑制できること、及び形成される画像に所望の画像濃度を付与できることが要求されている。このような要求に対して、例えば、アゾメチン金属錯体顔料とポリマー分散剤とを含有する顔料水分散液を含むインクジェット用インクが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のインクジェット用インクによっても、ノズル詰まりの発生を十分に抑制しつつ、所望の画像濃度を有する画像を確実に形成することはできない。
【0005】
本発明の目的は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ノズル詰まりの発生を抑制しつつ、所望の画像濃度を有する画像を形成できるインクジェット用インクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るインクジェット用インクは、水性媒体と、前記水性媒体に分散する顔料粒子とを含有する。前記顔料粒子は、顔料及び架橋樹脂を含む。前記架橋樹脂は、特定樹脂と、特定架橋剤との架橋物である。前記特定樹脂は、α-メチルスチレンに由来する第1繰り返し単位と、スチレンに由来する第2繰り返し単位と、(メタ)アクリル酸に由来する第3繰り返し単位と、アルキレングリコール(メタ)アクリレート又はジアルキレングリコール(メタ)アクリレートに由来する第4繰り返し単位とを有する特定共重合体の中和物である。前記特定共重合体の有する全繰り返し単位100質量%に対して、前記第1繰り返し単位の含有割合は、1質量%以上65質量%以下であり、前記第2繰り返し単位の含有割合は、1質量%以上60質量%以下であり、前記第3繰り返し単位の含有割合は、10質量%以上40質量%以下であり、前記第4繰り返し単位の含有割合は、1質量%以上12質量%以下である。前記特定共重合体の酸価は、50mgKOH/g以上300mgKOH/g以下である。前記特定共重合体の数平均分子量は、3000以上18000以下である。前記特定樹脂の中和率は、20%以上100%以下である。前記特定架橋剤は、分子中に2以上のエポキシ基と1以上のヒドロキシ基とを有する多官能エポキシ化合物を含む。前記特定架橋剤の水溶率は、80%以上である。前記架橋樹脂の架橋率は、25%以上90%以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るインクジェット用インクは、ノズル詰まりの発生を抑制しつつ、所望の画像濃度を有する画像を形成できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下において、体積中位径(D50)の測定値は、何ら規定していなければ、動的光散乱式粒径分布測定装置(マルバーン社製「ゼータサイザーナノZS」)を用いて測定された値である。
【0009】
本明細書において、酸価は、JIS(日本産業規格)K0070:1992に記載の方法に従って求めることができる。
【0010】
数平均分子量(Mn)の測定値は、何ら規定していなければ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した値である。
【0011】
本明細書では、アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。本明細書では、アクリレート及びメタクリレートを包括的に「(メタ)アクリレート」と総称する場合がある。本明細書に記載の各成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
<インクジェット用インク>
以下、本発明の実施形態に係るインクジェット用インク(以下、単にインクと記載することがある)を説明する。本実施形態のインクは、水性媒体と、水性媒体に分散する顔料粒子とを含有する。顔料粒子は、顔料及び架橋樹脂を含む。架橋樹脂は、特定樹脂と、特定架橋剤との架橋物である。特定樹脂は、α-メチルスチレンに由来する第1繰り返し単位と、スチレンに由来する第2繰り返し単位と、(メタ)アクリル酸に由来する第3繰り返し単位と、アルキレングリコール(メタ)アクリレート又はジアルキレングリコール(メタ)アクリレートに由来する第4繰り返し単位とを有する特定共重合体の中和物である。特定共重合体の有する全繰り返し単位100質量%に対して、第1繰り返し単位の含有割合は、1質量%以上65質量%以下であり、第2繰り返し単位の含有割合は、1質量%以上60質量%以下であり、第3繰り返し単位の含有割合は、10質量%以上40質量%以下であり、第4繰り返し単位の含有割合は、1質量%以上12質量%以下である。特定共重合体の酸価は、50mgKOH/g以上300mgKOH/g以下である。特定共重合体の数平均分子量は、3000以上18000以下である。特定樹脂の中和率は、20%以上100%以下である。特定架橋剤は、分子中に2以上のエポキシ基と1以上のヒドロキシ基とを有する多官能エポキシ化合物を含む。特定架橋剤の水溶率は、80%以上である。架橋樹脂の架橋率は、25%以上90%以下である。
【0013】
本明細書において、架橋率とは、架橋樹脂の原料(特定樹脂)に含まれる官能基(特定架橋剤と反応可能な基)の総数を100%としたときに、架橋樹脂において架橋構造を形成している官能基の数の割合を示す。本実施形態のインクに用いられる特定架橋剤は、主に酸基(特に、-COOH)と反応する。そのため、「架橋樹脂の原料に含まれる官能基の総数」は、特定樹脂に含まれる酸基の総数に相当する。架橋率は、例えば、特定架橋剤に含まれる架橋官能基(エポキシ基)のモル数Xと、特定樹脂に含まれるカルボキシ基のモル数Yとを、下記数式に当てはめることにより算出できる。
架橋率[%]=100×架橋官能基のモル数X/カルボキシ基のモル数Y
【0014】
特定架橋剤の架橋官能基のモル数Xは、例えば、特定架橋剤の使用量[g]を、架橋剤のエポキシ当量[g/eq.]で除算することで算出される。特定樹脂に含まれるカルボキシ基のモル数Yは、特定樹脂の使用量と、特定樹脂の1g当たりのカルボキシ基のモル数とを積算することにより算出される。特定樹脂の1g当たりのカルボキシ基のモル数は、特定樹脂の原料となる特定共重合体の酸価を、KOHの分子量(56.1)で除算することにより算出される。
【0015】
本実施形態のインクの用途としては、特に限定されないが、例えば、浸透性の記録媒体又は非浸透性の記録媒体への画像形成に用いることができる。本実施形態のインクは、浸透性の記録媒体への画像形成に好適である。浸透性の記録媒体は、インクの浸透性に優れる。浸透性の記録媒体としては、例えば、印刷用紙、及び繊維を原料とする媒体(例えば、布地)が挙げられる。印刷用紙としては、例えば、普通紙、コピー紙、再生紙、薄紙、厚紙、及び光沢紙が挙げられる。
【0016】
本実施形態のインクは、上述の構成を備えることにより、ノズル詰まりの発生を抑制しつつ、所望の画像濃度を有する画像を形成できる。その理由は以下のように推察される。公知のインクにおいて、ノズル詰まりの発生を抑制するためには、顔料粒子に高い分散安定性を付与することが有効である。しかし、顔料粒子の分散安定性が高い公知のインクは、形成される画像の画像濃度が低い傾向がある。これは、分散安定性が高い顔料粒子を含有する公知のインクを記録媒体に着弾させると、顔料粒子が水性媒体と共に記録媒体の深部にまで浸透してしまうためである。このように、公知のインクにおいては、ノズル詰まりの発生の抑制と、形成される画像の画像濃度とは、両立が困難である。
【0017】
これに対して、本実施形態のインクが含有する顔料粒子は、顔料及び架橋樹脂を含む。架橋樹脂は、特定樹脂と、特定架橋剤との架橋物である。特定樹脂は、特定共重合体の中和物である。ここで、架橋樹脂は、原料となる特定共重合体の酸価が比較的高いため、比較的多くの酸基を有している。また、架橋樹脂の酸基は、適度に中和されている。酸基(特に、中和された酸基)は、親水性が高い。そのため、架橋樹脂は、適度に高い親水性を有する。また、特定架橋剤は、ヒドロキシ基を有すると共に、水溶率が高いため、比較的親水性が高い。更に、特定架橋剤は、反応性に優れる架橋性基であるエポキシ基を有するため、特定樹脂と効率的に架橋構造を形成できる。架橋樹脂は、親水性が適度に高い特定樹脂と特定架橋剤との架橋物であるため、親水性が適度に高い。更に、架橋樹脂は、原料となる特定共重合体の分子サイズが適切であるため、顔料粒子を効率的に被覆できる。更に、架橋樹脂は、架橋構造を有するため、顔料粒子から脱離し難い。顔料粒子は、このような架橋樹脂を含むことにより、水性媒体に安定的に分散することができる。その結果、顔料粒子は、適度に優れた分散安定性を有する。
【0018】
また、架橋樹脂の原料となる特定共重合体は、第1繰り返し単位~第4繰り返し単位をそれぞれ所定の含有割合で有する。α-メチルスチレンに由来する第1繰り返し単位は、架橋樹脂と顔料粒子との親和性を適度に増大させる。スチレンに由来する第2繰り返し単位は、架橋樹脂に適度な疎水性を付与し、顔料粒子の分散安定性を調整する。(メタ)アクリル酸に由来する第3繰り返し単位と、アルキレングリコール(メタ)アクリレート又はジアルキレングリコール(メタ)アクリレートに由来する第4繰り返し単位とは、架橋樹脂に適度な親水性を付与し、顔料粒子に分散安定性を付与する。これらの結果、顔料粒子の分散安定性は、最適化されている。そのため、本実施形態のインクは、ノズル詰まりの発生を抑制しつつ、所望の画像濃度を有する画像を形成できる。
【0019】
以下、本実施形態のインクについて、更に詳細に説明する。なお、以下に説明する各成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
[上澄み液における固形分の含有割合]
本実施形態のインクが含有する架橋樹脂のうち、一部の架橋樹脂は、本実施形態のインクの製造時又は保存時に顔料粒子から脱離し、水性媒体に遊離している場合がある。このような水性媒体に遊離している架橋樹脂を、遊離樹脂と記載する。本実施形態のインクを1,050,000Gで3時間遠心処理して得られる上澄み液に含まれる固形分を、遊離樹脂と見做すことができる。遊離樹脂は、本実施形態のインクにより形成される画像の耐擦過性を向上させる機能があるが、量が多いとノズル詰まりの原因となる場合がある。そのため、本実施形態のインクにおいて、遊離樹脂の含有割合は、低い方が好ましい。但し、本実施形態のインクにおいて、遊離樹脂は不可避的に発生し、完全に除去することは困難である。
【0021】
以上から、本実施形態のインクにおいて、1,050,000Gで3時間遠心処理して得られる上澄み液における固形分の含有割合としては、2.0質量%以下が好ましく、0.1質量%以上1.5質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上1.0質量%以下が更に好ましい。上述の上澄み液における固形分の含有割合を2.0質量%以下とすることで、本実施形態のインクは、ノズル詰まりの発生を更に効果的に抑制できる。上述の固形分の含有割合は、実施例に記載の方法又はこれに準拠した方法により測定できる。
【0022】
[顔料粒子]
顔料粒子は、顔料及び架橋樹脂を含む。顔料粒子は、例えば、顔料を含むコアと、コアを被覆する架橋樹脂とにより構成される。顔料粒子における顔料及び架橋樹脂の合計含有割合としては、90質量%以上が好ましく、100質量%がより好ましい。
【0023】
本実施形態のインクの色濃度、色相、又は安定性を最適化する観点から、顔料粒子の体積中位径としては、30nm以上200nm以下が好ましく、80nm以上130nm以下がより好ましい。
【0024】
本実施形態のインクにおいて、顔料粒子の含有割合としては、6.0質量%以上20.0質量%以下が好ましく、10.0質量%以上15.0質量%以下がより好ましい。顔料粒子の含有割合を5.0質量%以上とすることで、本実施形態のインクは、所望の画像濃度を有する画像を更に形成し易くなる。また、顔料粒子の含有割合を20.0質量%以下とすることで、本実施形態のインクの流動性を最適化できる。
【0025】
(顔料)
顔料としては、例えば、黄色顔料、橙色顔料、赤色顔料、青色顔料、紫色顔料、及び黒色顔料が挙げられる。黄色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー(74、93、95、109、110、120、128、138、139、151、154、155、173、180、185、及び193)が挙げられる。橙色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ(34、36、43、61、63、及び71)が挙げられる。赤色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド(122及び202)が挙げられる。青色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー(15、より具体的には15:3)が挙げられる。紫色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントバイオレット(19、23、及び33)が挙げられる。黒色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラック(7)が挙げられる。
【0026】
本実施形態のインクにおいて、顔料の含有割合としては、3.0質量部以上15.0質量部が好ましく、7.0質量部以上12.0質量部以下がより好ましい。顔料粒子における顔料の含有割合としては、45質量%以上80質量%以下が好ましく、55質量%以上70質量%以下がより好ましい。
【0027】
(架橋樹脂)
架橋樹脂は、例えば、顔料粒子において、顔料を被覆する。架橋樹脂は、特定樹脂と、特定架橋剤との架橋物である。架橋樹脂の架橋率は、25%以上90%以下であり、35%以上65%以下が好ましく、35%以上45%以下がより好ましい。架橋樹脂の架橋率を25%以上とすることで、顔料粒子から架橋樹脂が脱離することを抑制できる。架橋樹脂の架橋率を90%以下とすることで、顔料粒子の分散安定性を最適化できる。なお、架橋樹脂の架橋率は、実施例に記載の方法又はこれに準拠した方法により算出できる。
【0028】
本実施形態のインクにおいて、架橋樹脂の含有割合としては、0.5質量%以上10.0質量%が好ましく、2.0質量%以上4.5質量%以下がより好ましい。架橋樹脂の含有割合を0.5質量%以上とすることで、顔料粒子の分散安定性を更に最適化できる。架橋樹脂の含有割合を10.0質量%以上とすることで、遊離樹脂の発生を抑制できる。
【0029】
顔料粒子において、顔料100質量部に対する架橋樹脂の含有量としては、25質量部以上60質量部以下が好ましく、30質量部以上45質量部以下がより好ましい。顔料100質量部に対する架橋樹脂の含有量を25質量部以上60質量部以下とすることで、顔料粒子の分散安定性を更に最適化できる。
【0030】
(特定樹脂)
特定樹脂は、特定共重合体の中和物である。特定樹脂の中和率は、20%以上100%以下であり、40%以上95%以下が好ましく、50%以上70%以下がより好ましい。特定樹脂の中和率を20%以上100%以下とすることで、架橋樹脂に対して適度に高い親水性を付与し、顔料粒子の分散安定性を最適化できる。
【0031】
特定樹脂は、アルカリ金属原子を含むことが好ましい。即ち、特定樹脂は、アルカリ金属原子を含む中和剤で特定共重合体を中和した中和物であることが好ましい。アルカリ金属原子は、本実施形態のインクが乾燥状態に晒されても本実施形態のインクから揮発しない。そのため、特定共重合体がアルカリ金属原子を含む中和剤で中和されていることにより、本実施形態のインクが乾燥状態に晒されても架橋樹脂の中和状態(親水性)が維持される。アルカリ金属原子としては、カリウム原子又はナトリウム原子が好ましい。中和剤としては、アルカリ金属原子を含む水酸化物が好ましく、NaOH又はKOHがより好ましい。
【0032】
(特定共重合体)
特定共重合体の数平均分子量としては、3000以上18000以下が好ましく、5000以上12000以下がより好ましく、8000以上10000以下が更に好ましい。特定樹脂の数平均分子量を3000以上18000以下とすることで、架橋樹脂が顔料粒子を効率的に被覆できる。これにより、顔料粒子から架橋樹脂が脱離することを抑制できる。
【0033】
特定共重合体の酸価は、50mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であり、100mgKOH/g以上200mgKOH/g以下が好ましく、150mgKOH/g以上200mgKOH/g以下がより好ましい。特定共重合体の酸価を50mgKOH/g以上300mgKOH/g以下とすることで、架橋樹脂に十分に架橋構造を導入し易くなると共に、顔料粒子の分散安定性を最適化できる。特定共重合体の酸価を300mgKOH/g以下とすることで、顔料粒子の分散安定性が過度に高くなることを抑制できる。その結果、本実施形態のインクにより形成される画像に所望の画像濃度を付与できる。
【0034】
特定共重合体は、α-メチルスチレンに由来する第1繰り返し単位と、スチレンに由来する第2繰り返し単位と、(メタ)アクリル酸に由来する第3繰り返し単位と、アルキレングリコール(メタ)アクリレート又はジアルキレングリコール(メタ)アクリレートに由来する第4繰り返し単位とを有する。
【0035】
アルキレングリコール(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコール(メタ)アクリレート、プロピレングリコール(メタ)アクリレート及びブチレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられ、エチレングリコール(メタ)アクリレートが好ましい。
【0036】
ジアルキレングリコール(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート及びジブチレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられ、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレートが好ましい。
【0037】
特定共重合体の有する全繰り返し単位100質量%に対して、α-メチルスチレンに由来する第1繰り返し単位の含有割合は、1質量%以上65質量%以下であり、15質量%以上55質量%以下が好ましく、25質量%以上50質量%以下がより好ましく、40質量%以上48質量%以下が更に好ましい。第1繰り返し単位の含有割合を1質量%以上65質量%以下とすることで、顔料粒子の分散安定性を更に最適化できる。
【0038】
特定共重合体の有する全繰り返し単位100質量%に対して、スチレンに由来する第2繰り返し単位の含有割合は、1質量%以上60質量%以下であり、10質量%以上40質量%以下が好ましく、15質量%以上27質量%以下がより好ましい。第2繰り返し単位の含有割合を1質量%以上60質量%以下とすることで、顔料粒子の分散安定性を更に最適化できる。
【0039】
特定共重合体の有する全繰り返し単位100質量%に対して、(メタ)アクリル酸に由来する第3繰り返し単位の含有割合は、10質量%以上40質量%以下であり、20質量%以上35質量%以下が好ましく、25質量%以上32質量%以下がより好ましい。第3繰り返し単位の含有割合を10質量%以上40質量%以下とすることで、顔料粒子の分散安定性を更に最適化できる。
【0040】
特定共重合体の有する全繰り返し単位100質量%に対して、アルキレングリコール(メタ)アクリレート又はジアルキレングリコール(メタ)アクリレートに由来する第4繰り返し単位の含有割合は、1質量%以上12質量%以下であり、4質量%以上11質量%以下が好ましく、4質量%以上8質量%以下がより好ましい。第4繰り返し単位の含有割合を1質量%以上12質量%以下とすることで、顔料粒子の分散安定性を更に最適化できる。
【0041】
特定共重合体の有する全繰り返し単位100質量%に対して、第1繰り返し単位の含有割合は、15質量%以上55質量%以下であり、第2繰り返し単位の含有割合は、10質量%以上40質量%以下であり、第3繰り返し単位の含有割合は、20質量%以上35質量%以下であり、第4繰り返し単位の含有割合は、4質量%以上11質量%以下であることが好ましい。
【0042】
特定共重合体は、ランダム重合体でもよく、ブロック重合体でもよい。特定共重合体は、ランダム重合体であることが好ましい。
【0043】
特定共重合体の原料となるモノマーの組成としては、下記表1に示す組成1~3の何れかが好ましい。下記表1において、数値は、好ましい含有割合[質量%]の数値範囲を示す。例えば、組成1のスチレンの「18-22」は、スチレンを18質量%以上22質量%以下含有することを示す。
【0044】
【0045】
(特定架橋剤)
特定架橋剤は、分子中に2以上のエポキシ基と1以上のヒドロキシ基とを有する多官能エポキシ化合物(以下、多官能エポキシ化合物(X)と記載することがある)を含む。特定架橋剤の水溶率は、80%以上であり、90%以上が好ましく、98%以上が更に好ましい。特定架橋剤の水溶率を80%以上とすることで、顔料粒子の分散安定性を最適化できる。特定架橋剤の水溶率は、25℃において、特定架橋剤10gと、水90gとを混合した際に、特定架橋剤の全量(10g)に対する水に溶解した特定架橋剤の質量Aの比率(100×A/10g)である。例えば、25℃において、特定架橋剤10gと、水90gとを混合した際に、9gの特定架橋剤が水に溶解し、1gの特定架橋剤が水に溶けずに沈殿した場合(質量A:9g)、水溶率は90%となる。
【0046】
多官能エポキシ化合物(X)において、分子中のエポキシ基の個数としては、2以上8以下が好ましく、2以上5以下がより好ましい。多官能エポキシ化合物(X)において、分子中のヒドロキシ基の個数としては、1以上5以下が好ましく、1以上3以下がより好ましい。
【0047】
多官能エポキシ化合物(X)としては、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(特に、ジグリセロールポリグリシジルエーテル又はトリグリセロールポリグリシジルエーテル)又はソルビトールポリグリシジルエーテルが好ましく、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル又はトリグリセロールポリグリシジルエーテルがより好ましい。
【0048】
特定架橋剤は、多官能エポキシ化合物(X)に加え、その他の多官能エポキシ化合物を更に含んでもよい。その他の多官能エポキシ化合物としては、下記化学式(2)で表される化合物(グリセロールトリグリシジルエーテル)が好ましい。特定架橋剤において、多官能エポキシ化合物(X)と、グリセロールトリグリシジルエーテルとの合計含有割合としては、80質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく100質量%が更に好ましい。
【0049】
多官能エポキシ化合物(X)としては、例えば、下記化学式(1)、(3)、(4)又は(5)で表される化合物が挙げられる。特定架橋剤としては、下記化学式(1)で表される化合物と下記化学式(2)で表される化合物との混合物、下記化学式(3)で表される化合物、下記化学式(4)で表される化合物、又は下記化学式(5)で表される化合物が好ましい。
【0050】
【0051】
特定架橋剤のエポキシ当量としては、100g/eq.以上250g/eq.以下が好ましく、130g/eq.以上200g/eq.以下がより好ましく、130g/eq.以上170g/eq.以下が更に好ましい。なお、エポキシ当量は、例えば、JIS(日本産業規格)K7236:2009に記載の方法に従って求めることができる。
【0052】
[水性媒体]
本実施形態のインクが含有する水性媒体は、水を含む媒体である。水性媒体は、溶媒として機能してもよく、分散媒として機能してもよい。水性媒体の具体例としては、水及び水溶性有機溶媒を含む水性媒体が挙げられる。
【0053】
(水)
本実施形態のインクにおいて、水の含有割合としては、25.0質量%以上80.0質量%以下が好ましく、35.0質量%以上60.0質量%以下がより好ましい。
【0054】
(水溶性有機溶媒)
水溶性有機溶媒としては、例えば、グリコール化合物、トリオール化合物、グリコールエーテル化合物、ラクタム化合物、含窒素化合物、アセテート化合物、チオジグリコール及びジメチルスルホキシドが挙げられる。
【0055】
グリコール化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、2-エチル-1,2-ヘキサンジオールが挙げられる。グリコール化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、2-エチル-1,2-ヘキサンジオール、3-メチルー1,5-ペンタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール又はプロピレングリコールが好ましい。
【0056】
トリオール化合物としては、例えば、グリセリン及び1,2,3-ブタントリオールが挙げられる。
【0057】
グリコールエーテル化合物としては、例えば、ジエチルジグリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル(ジエチルジグリコール)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。グリコールエーテル化合物としては、トリエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。
【0058】
ラクタム化合物としては、例えば、2-ピロリドン及びN-メチル-2-ピロリドンが挙げられる。ラクタム化合物としては、2-ピロリドンが好ましい。
【0059】
含窒素化合物としては、例えば、1,3-ジメチルイミダゾリジノン、ホルムアミド及びジメチルホルムアミドが挙げられる。
【0060】
アセテート化合物としては、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートが挙げられる。
【0061】
水溶性有機溶媒としては、グリコール化合物又はグリコールエーテル化合物が好ましく、エチレングリコール又はジエチルジグリコールがより好ましい。
【0062】
本実施形態のインクにおける水溶性有機溶媒の含有割合としては、10.0質量%以上50.0質量%以下が好ましく、30.0質量%以上40.0質量%以下がより好ましい。
【0063】
本実施形態のインクにおけるグリコール化合物の含有割合としては、5.0質量%以上45.0質量%以下が好ましく、15.0質量%以上25.0質量%以下がより好ましい。
【0064】
本実施形態のインクにおけるグリコールエーテル化合物の含有割合としては、5.0質量%以上30.0質量%以下が好ましく、10.0質量%以上20.0質量%以下がより好ましい。
【0065】
[界面活性剤]
本実施形態のインクは、界面活性剤を更に含有することが好ましい。界面活性剤は、記録媒体に対する本実施形態のインクの浸透性(濡れ性)を最適化できる。界面活性剤としては、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤が挙げられる。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤が好ましい。
【0066】
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートエーテル、モノデカノイルショ糖、及びアセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物が挙げられる。ノニオン界面活性剤としては、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物が好ましい。
【0067】
本実施形態のインクにおける界面活性剤の含有割合としては、0.05質量%以上3.0質量%以下が好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下がより好ましい。
【0068】
[他の成分]
本実施形態のインクは、必要に応じて、公知の添加剤(例えば、溶解安定剤、乾燥防止剤、酸化防止剤、粘度調整剤、pH調整剤及び防カビ剤)を更に含有してもよい。
【0069】
[インクの製造方法]
次に、本実施形態のインクを製造する方法の一例について説明する。インクの製造方法は、例えば、特定共重合体を中和することで特定樹脂を調製する中和処理工程と、顔料及び特定樹脂を水中で分散処理することで顔料粒子分散液を調製する分散処理工程と、顔料粒子分散液に特定架橋剤を添加する架橋工程と、架橋工程後の顔料粒子分散液に水性媒体を添加することでインクを調製する添加工程とを備える。本実施形態のインクの製造方法は、架橋工程後の顔料粒子分散液を遠心した後に上澄み液を水性媒体で置換する遠心工程を更に備えることが好ましい。
【0070】
(中和処理工程)
本工程では、特定共重合体を中和することで特定樹脂を調製する。特定共重合体を中和する方法としては、例えば、特定共重合体と、中和剤(例えば、アルカリ水溶液)とを混合する方法が挙げられる。
【0071】
(顔料処理工程)
本工程では、顔料及び特定樹脂を水中で分散処理することで顔料粒子分散液を調製する。分散処理に用いる分散装置としては、例えば、メディア型分散機等の湿式分散装置が挙げられる。
【0072】
本工程において、分散処理に供する溶液における特定樹脂の含有割合としては、例えば、5.0質量%以上25.0質量%以下である。分散処理に供する溶液における顔料の含有割合としては、例えば、1.0質量%以上10.0質量%以下である。本工程において、分散処理に供する溶液は、消泡剤を更に含有することが好ましい。分散処理に供する溶液における消泡剤の含有割合としては、例えば、0.01質量%以上0.1質量%以下である。
【0073】
本工程では、得られた顔料粒子分散液に対して、フィルター(例えば、孔径5μm)を用いたろ過で粗大粒子を除去することが好ましい。
【0074】
(架橋工程)
本工程では、顔料粒子分散液に特定架橋剤を添加する。これにより、顔料粒子分散液に含まれる特定樹脂と特定架橋剤とが反応し、特定樹脂が架橋される。その結果、特定架橋剤及び特定樹脂の反応生成物である架橋樹脂が生じる。本工程では、特定架橋剤の添加後、顔料粒子分散液を攪拌しながら加熱することが好ましい。加熱温度としては、例えば、70℃以上95℃以下とすることができる。加熱時間としては、例えば、2分以上6時間以下とすることができる。
【0075】
(遠心工程)
本工程では、架橋工程後の顔料粒子分散液を遠心した後に上澄み液を水性媒体で置換する。これにより、顔料粒子分散液の水性媒体に含まれていた遊離成分を除去することができる。遠心条件としては、例えば、回転速度10000rpm以上100000rpm以下、遠心時間12時間以上48時間以下とすることができる。
【0076】
(添加工程)
本工程では、架橋工程後の顔料粒子分散液(遠心工程を行っている場合、遠心工程後の顔料粒子分散液)に水性媒体を添加する。これにより、インクを得ることができる。なお、本工程では、必要に応じて他の成分(より具体的には、界面活性剤、溶解安定剤、保湿剤、浸透剤、及び粘度調整剤のうちの少なくとも1つ)を更に添加してもよい。本工程では、水性媒体の添加後、得られた混合液を攪拌機で攪拌することが好ましい。得られたインクは、フィルター(例えば孔径5μm以下のフィルター)により異物及び粗大粒子を除去してもよい。
【実施例0077】
以下、本発明の実施例を説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0078】
実施例において、架橋樹脂の架橋率は、以下の方法で算出した。まず、架橋剤に含まれる架橋官能基(エポキシ基)のモル数Xを算出した。架橋剤の架橋官能基のモル数Xは、架橋剤の使用量[g]を、架橋剤のエポキシ当量[g/eq.]で除算することで算出した。次に、特定樹脂に含まれるカルボキシ基のモル数Yを算出した。特定樹脂に含まれるカルボキシ基のモル数Yは、特定樹脂の使用量と、特定樹脂の1g当たりのカルボキシ基のモル数とを積算することにより算出した。特定樹脂の1g当たりのカルボキシ基のモル数は、特定樹脂の酸価を、KOHの分子量(56.1)で除算することにより算出した。次に、上述で求めた値を下記数式に当てはめることにより、架橋樹脂の架橋率を算出した。
架橋率[%]=100×架橋官能基のモル数X/カルボキシ基のモル数Y
【0079】
[樹脂(R-1)の調製]
スターラー、窒素導入管、コンデンサー及び滴下漏斗を備える四つ口フラスコに、100.0質量部のイソプロピルアルコールと、250.0質量部のメチルエチルケトンとを投入した。別途、20.0質量部のスチレンと、40.0質量部のα-メチルスチレンと、5.0質量部のエチレングリコールアクリレートと、25.0質量部のメタクリル酸と、0.3質量部のアゾビスイソブチロニトリル(AIBN、重合開始剤)とを混合し、モノマー溶液を調製した。また、150.0質量部のメチルエチルケトンと、0.1質量部のAIBNとを混合し、メチルエチルケトン溶液を調製した。
【0080】
次に、上述の四つ口フラスコ内に窒素ガスを導入することで窒素雰囲気とした。次に、上述の四つ口フラスコ内容物を70℃で加熱還流しながら、滴下漏斗を用い、上述のモノマー溶液の全量を2時間かけて上述の四つ口フラスコ内へ供給した。モノマー溶液を供給した後、更に6時間にわたって上述の四つ口フラスコ内容物を70℃で加熱還流を行った。次に、上述の四つ口フラスコ内容物を70℃で加熱還流しながら、滴下漏斗を用い、上述のメチルエチルケトン溶液の全量を15分かけて上述の四つ口フラスコ内へ供給した。メチルエチルケトン溶液を供給した後、更に5時間にわたって上述の四つ口フラスコ内容物を70℃で加熱還流を行った。これにより、特定共重合体である樹脂(R-1)を含有する樹脂水溶液を得た。樹脂水溶液からメチルエチルケトン及びイソプロピルアルコールを留去することにより、樹脂(R-1)を単離した。
【0081】
(酸価の測定)
JIS(日本産業規格)K0070:1992(化学製品の酸価、けん化価、エステル価、よう素価、水酸基価及び不けん化物の試験方法)に記載の方法に準拠し、樹脂(R-1)の酸価を測定した。測定結果を下記表3及び4に示す。
【0082】
(数平均分子量の測定)
以下の条件のゲルろ過クロマトグラフィ(GPC)により、樹脂(R-1)の数平均分子量を測定した。測定結果を下記表3及び4に示す。
【0083】
(GPC条件)
測定装置:東ソー株式会社製「HLC-8020GPC」
カラム:超高性能セミミクロSEC用カラム(東ソー株式会社製「TSKgel SuperMultipore HZ-H」、充填剤:スチレン-ジビニルベンゼン樹脂、カラムサイズ:内径4.6mm×長さ15cm、充填剤粒子径:6μm)
カラム本数:3本
溶離液:テトラヒドロフラン
溶出液流速:0.35mL/分
試料溶液量:10μL
カラム温度:40℃
検出器:RI(屈折率)検出器
検量線:東ソー株式会社製の単分散ポリスチレン標準試料(F-40、F-20、F-4、F-1、A-5000、A-2500及びA-1000)と、n-プロピルベンゼンとを用いて作成された検量線
【0084】
[樹脂(R-2)~(R-14)の調製]
モノマー溶液の調製において、使用するモノマーの種類及び量を下記表3に示す通りに変更した以外は、樹脂(R-14)の調製と同様の方法により、樹脂(R-2)~(R-14)を調製した。なお、下記表3において、「EGアクリレート」は、エチレングリコールアクリレートを示す。「DPGA」は、ジプロピレングリコールアクリレートを示す。
【0085】
(樹脂水溶液(r-1)~(r-14)の調製)
下記表3に示す通りの樹脂(詳しくは、樹脂(R-1)~(R-14)の何れか)と、水酸化カリウムと、水とを混合し、樹脂水溶液(r-1)~(r-14)を得た。樹脂水溶液(r-1)~(r-14)は、中和された樹脂(特定樹脂に相当)が含まれていた。水酸化カリウムの添加量は、中和された樹脂の中和率が下記表3に示す通りとなる量とした。水の添加量は、樹脂水溶液(r-1)~(r-14)の固形分濃度(中和された樹脂の含有割合)が30質量%となる量とした。
【0086】
【0087】
樹脂(R-1)~(R-14)について、第1繰り返し単位~第4繰り返し単位のそれぞれの含有割合[質量%]を下記表4に示す。
【0088】
【0089】
<インクの調製>
以下の方法により、実施例1~4及び比較例1~16のインクを調製した。まず、実施例において使用した架橋剤のメーカー及び商品名を以下に示す。架橋剤の化学名、化学式、エポキシ当量及び水溶率を下記表5に示す。なお、下記表5において、架橋剤(EX-313)の化学式「(1)+(2)」は、化学式(1)で表される化合物と、化学式(2)で表される化合物とを含んでいることを示す。
【0090】
架橋剤(EX-313):ナガセケムテックス株式会社製「デナコール(登録商標)EX-313」
架橋剤(EX-512):ナガセケムテックス株式会社製「デナコール(登録商標)EX-512」
架橋剤(EX-521):ナガセケムテックス株式会社製「デナコール(登録商標)EX-521」
架橋剤(EX-614B):ナガセケムテックス株式会社製「デナコール(登録商標)EX-614B」
架橋剤(EX-612):ナガセケムテックス株式会社製「デナコール(登録商標)EX-612」
架橋剤(EX-810):ナガセケムテックス株式会社製「デナコール(登録商標)EX-810」
架橋剤(EX-145):ナガセケムテックス株式会社製「デナコール(登録商標)EX-145」
【0091】
【0092】
【0093】
各架橋剤のうち、架橋剤(EX-313)、(EX-512)、(EX-521)、(EX-614B)は、特定架橋剤であった。
【0094】
[実施例1のインクの調製]
(分散処理)
顔料(オリオンエンジニアドカーボンズ株式会社「Printex(登録商標)80」、カーボンブラック)15.0質量部と、上述の樹脂水溶液(r-1)15.0質量部(中和後の樹脂(R-1)4.5質量部を含有)と、消泡剤(サンノプコ株式会社製「SNデフォーマー1340」、アマイドワックス系界面活性剤)0.1質量部と、イオン交換水とを混合し、混合物を得た。イオン交換水の添加量は、混合物が100質量部となる量とした。
【0095】
メディア型分散機(ウィリー・エ・バッコーフェン社(WAB社)製「ダイノミル」)を用いて、上述の混合物に対して4時間の分散処理を行った。分散処理においては、メディアとして、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いた。メディアの充填率は、ベッセルの容量に対して60体積%とした。分散処理における処理温度(チラー温度)は、10℃に設定した。分散処理後、メディア型分散機の内容物からメディアを除去することにより、顔料粒子分散液を得た。次に、顔料粒子分散液を孔径5μmのフィルターでろ過することにより、異物及び粗大粒子を除去した。
【0096】
(架橋処理)
温度計及び攪拌羽根を備える3つ口フラスコを反応容器として用いた。ろ過後の顔料粒子分散液100.0質量部を反応容器内に投入した。ウォーターバスを用い、反応容器の内容物の温度を30℃に維持した。次に、反応容器に、架橋剤(EX-313)0.82質量部を投入した。次に、反応容器の内容物を250rpmで1時間攪拌した。次に、反応容器の内容物を250rpmで攪拌しながら、昇温速度0.5℃/分で80℃まで反応容器の内容物を昇温させた。次に、反応容器の内容物の温度を80℃に維持しつつ、反応容器の内容物を250rpmで4時間攪拌した。これにより、反応容器の内容物を反応させた。反応により、中和後の樹脂(R-1)は架橋剤(EX-313)で架橋され、架橋樹脂を形成した。次に、反応容器の内容物の温度が室温になるまで放冷した。これにより、架橋処理後の顔料粒子分散液を得た。
【0097】
実施例1の顔料粒子分散液において、架橋樹脂の架橋率を以下の方法で算出した。なお、計算の便宜上、1質量部=1gと仮定して算出した。架橋剤の架橋官能基のモル数Xは、架橋剤の使用量(0.82g)を、架橋剤のエポキシ当量(141g/eq)で除算することで算出した。実施例1において、架橋剤の架橋官能基のモル数Xは、5.82mmolであった。
【0098】
次に、中和後の樹脂(R-1)に含まれるカルボキシ基のモル数Yを算出した。まず、樹脂(R-1)の酸価(181mgKOH/g)を、KOHの分子量(56.1)で除算することにより、中和後の樹脂(R-1)の1g当たりのカルボキシ基のモル数を算出した。中和後の樹脂(R-1)の1g当たりのカルボキシ基のモル数は、3.23mmol/gであった。次に、中和後の樹脂(R-1)の使用量(4.5g)と、中和後の樹脂(R-1)の1g当たりのカルボキシ基のモル数とを積算することにより、中和後の樹脂(R-1)に含まれるカルボキシ基のモル数Yを算出した。中和後の樹脂(R-1)に含まれるカルボキシ基のモル数Yは、14.54mmolであった。
【0099】
次に、上述で求めた値を下記数式に当てはめることにより、架橋樹脂の架橋率を算出した。架橋樹脂の架橋率は、40%であった。
架橋率[%]=100×架橋官能基のモル数X/カルボキシ基のモル数Y
【0100】
(遠心処理)
架橋処理後の顔料粒子分散液を容器に移し、この容器を遠心法付着力測定装置(株式会社ナノシーズ製「NS-C100」)に設置した。上述の遠心法付着力測定装置を用い、回転速度50000rpmの条件で24時間にわたって上述の架橋処理後の顔料粒子分散液を遠心処理した。遠心処理後、容器から上澄み液を除去し、その後、除去した上澄み液と同体積のイオン交換水を容器へ加えた。このようにして、架橋処理後の顔料粒子分散液の水性媒体から遊離成分を除去した。
【0101】
(添加処理)
容器に、下記表6に示す組成1となるように、各成分を投入した。具体的には、実施例1においては、遠心処理後の顔料粒子分散液60.0質量部(顔料約9質量部、樹脂約3質量部)と、エチレングリコール20.0質量部と、ジエチルジグリコール15.0質量部と、ノニオン界面活性剤(日信化学工業株式会社製「オルフィン(登録商標)E1004」)0.3質量部と、イオン交換水4.7質量部とを投入した。攪拌機(新東科学株式会社製「スリーワンモーター BL-600」)を用いて、上述の容器の内容物を回転速度400rpmの条件で攪拌し、混合物を得た。得られた混合液を、フィルター(孔径:5μm)を用いて濾過した。これにより、実施例1のインクを得た。
【0102】
[実施例2~4及び比較例1~16のインクの調製]
樹脂分散液の種類と、架橋剤の種類及び使用量と、添加処理における組成(下記表6の組成1~組成3の何れか)とを下記表7に示す通りに変更した以外は、実施例1のインクの調製と同様の方法により、実施例2~4及び比較例1~16のインクを調製した。
【0103】
【0104】
【0105】
[上澄み液固形分の測定]
以下の方法により、実施例1~4及び比較例1~16のインクを遠心分離した。そして、得られた上澄み液に含まれる固形分の含有割合を測定した。具体的には、まず、測定対象(実施例1~4及び比較例1~16のインクの何れか)に対して、超遠心機(エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズ株式会社製「himac(登録商標)CS150FNX」、ローター:S140AT)を用いて、回転数140,000rpm(1,050,000G)で3時間遠心処理した。これにより測定対象に含まれる顔料粒子を沈殿させた。
【0106】
次に、遠心処理後の測定対象に含まれる上澄み液30μLを熱質量測定用アルミ容器に移した。次に、上澄み液30μLの質量(A)を測定した。次に、熱質量分析装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製「TG/DTA7200」)を用いて、下記表8に示すスキームに沿って熱質量分析を行った。そして、温度200℃~500℃の間での測定対象の減質量(B)を測定した。減質量(B)を、上澄み液中の固形分(主に遊離樹脂)の質量と見做した。上澄み液中の固形分の含有割合は、下記数式に沿って算出した。測定結果を下記表9に示す。
上澄み液中の固形分の含有割合[質量%]=100×B/A
【0107】
【0108】
上澄み液に含まれる固形分の含有割合は、2.0質量%以下の場合を「A(好ましい)」とし、2.0質量%超の場合を「B(好ましくない)」と判定した。
【0109】
<評価>
以下の方法により、実施例1~4及び比較例1~16のインクの各々について、ノズル詰まり及び形成される画像の画像濃度を評価した。評価結果を下記表9に示す。
【0110】
[評価機]
評価機として、ラインヘッド搭載インクジェット記録装置(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製の試験機)を用いた。評価対象となる実施例1~4及び比較例1~16のインクを、それぞれ、評価機のブラック用インクタンクに充填した。
【0111】
[ノズル詰まり]
ノズル詰まりの評価は、温度25℃、湿度60%RHの環境下において行った。記録媒体として、インクジェット用マット紙(セイコーエプソン株式会社製「スーパーファイン紙」)を用いた。評価機を用いて、100枚の記録媒体に対して連続してソリッド画像(150mm×200mm)を連続で形成した。次に、評価機の記録ヘッドからインクをパージするパージ処理を行った。次に、評価機の記録ヘッドにおけるインク吐出面をクリーニングワイパーでワイプするワイプ処理を行った。次に、評価機を用いて、上述のマット紙に対してノズルチェックパターンの形成を行った。その結果、何れの評価対象においても、全てのノズル(7968本)からインクが吐出されていることが確認された。即ち、ノズル詰まりが発生したノズルの本数は0本であった。次に、評価機の記録ヘッドについて、パージ処理及びワイプ処理を行った。次に、評価機の記録ヘッドにキャップを付けない状態で、評価機を7日間静置した。次に、評価機の記録ヘッドについて、上述のパージ処理及びワイプ処理を行った。次に、評価機を用いて、上述のマット紙に対してノズルチェックパターンの形成を行った。そして、形成されたノズルチェックパターンを観察し、ノズル詰まりが発生したノズルの本数を確認した。評価機の記録ヘッドの全ノズル本数に対するノズル詰まりが発生したノズルの本数の割合を、ノズル詰まりの評価値とした。ノズル詰まりは、下記基準に沿って判定した。
【0112】
(ノズル詰まりの基準)
A(良好):評価値が10%未満
B(不良):評価値が10%以上
【0113】
[画像濃度]
画像濃度の評価は、温度25℃、湿度50%RHの環境下において行った。記録媒体としては、PPC用紙(富士フイルムビジネスイノベーション株式会社製「C2」)を用いた。評価機を用いて、記録媒体に10cm×10cmのソリッド画像を形成した。ソリッド画像の形成においては、記録ヘッドから吐出されるインクの一滴あたりの体積が11pL(1画素あたりインク11pL)となるように評価機を設定した。反射濃度計(X-Rite社製「RD-19」)を用いて、形成されたソリッド画像の画像濃度を測定した。画像濃度の測定においては、ソリッド画像中において無作為に選択した10箇所の画像濃度を各々測定し、10箇所の画像濃度の算術平均値を、画像濃度の評価値(ID)として採用した。画像濃度は、以下の基準で判定した。
【0114】
(画像濃度の基準)
A(良好):IDが1.15以上である。
B(不良):IDが1.15未満である。
【0115】
【0116】
表9に示す通り、実施例1~4のインクは、水性媒体と、水性媒体に分散する顔料粒子とを含有していた。顔料粒子は、顔料及び架橋樹脂を含んでいた。架橋樹脂は、特定樹脂と、特定架橋剤との架橋物であった。特定樹脂は、α-メチルスチレンに由来する第1繰り返し単位と、スチレンに由来する第2繰り返し単位と、(メタ)アクリル酸に由来する第3繰り返し単位と、アルキレングリコール(メタ)アクリレート又はジアルキレングリコール(メタ)アクリレートに由来する第4繰り返し単位とを有する特定共重合体の中和物であった。特定共重合体の有する全繰り返し単位100質量%に対して、第1繰り返し単位の含有割合は、1質量%以上65質量%以下であり、第2繰り返し単位の含有割合は、1質量%以上60質量%以下であり、第3繰り返し単位の含有割合は、10質量%以上40質量%以下であり、第4繰り返し単位の含有割合は、1質量%以上12質量%以下であった。特定共重合体の酸価は、50mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であった。特定共重合体の数平均分子量は、3000以上18000以下であった。特定樹脂の中和率は、20%以上100%以下であった。特定架橋剤は、分子中に2以上のエポキシ基と1以上のヒドロキシ基とを有する多官能エポキシ化合物を含んでいた。特定架橋剤の水溶率は、80%以上であった。架橋樹脂の架橋率は、25%以上90%以下であった。実施例1~4のインクは、ノズル詰まりの発生を抑制しつつ、所望の画像濃度を有する画像を形成できた。
【0117】
一方、比較例1のインクは、架橋樹脂の架橋率が25%未満であった。架橋樹脂の架橋率が低すぎる場合、顔料粒子から特定樹脂が脱離し易いと判断される。その結果、比較例1のインクは、ノズル詰まりの発生を抑制できなかった。
【0118】
比較例2のインクは、架橋樹脂の架橋率が90%超であった。架橋樹脂の架橋率が高すぎる場合、架橋樹脂の親水性が低下し、顔料粒子の分散安定性が低下すると判断される。その結果、比較例2のインクは、ノズル詰まりの発生を抑制できなかった。また、比較例2のインクは、形成される画像の画像濃度も不良であった。
【0119】
比較例3のインクは、架橋剤の水溶率が80%未満であった。比較例3のインクは、架橋剤の水溶率が低いことにより、顔料粒子の分散安定性が低いと判断される。その結果、比較例3のインクは、ノズル詰まりの発生を抑制できなかった。
【0120】
比較例4及び5のインクは、架橋剤がヒドロキシ基を有しなかった。比較例4及び5のインクは、架橋剤がヒドロキシ基を有しないことにより、顔料粒子の分散安定性が低いと判断される。その結果、比較例4及び5のインクは、ノズル詰まりの発生を抑制できなかった。
【0121】
比較例6~13のインクは、特定樹脂に含まれる繰り返し単位の構成が上述とは異なっていた。これにより、比較例6~13のインクは、顔料粒子の分散安定性が低いと判断される。その結果、比較例6~13のインクは、ノズル詰まりの発生を抑制できなかった。また、比較例10及び12のインクは、形成される画像の画像濃度も不良であった。
【0122】
比較例14のインクは、特定樹脂の中和率が20%以下であった。中和率が20%以下の特定樹脂は、親水性が低いと判断される。その結果、比較例14のインクは、顔料粒子の分散安定性が低く、ノズル詰まりの発生を抑制できなかった。
【0123】
比較例15及び16のインクは、特定共重合体の数平均分子量が3000未満又は18000超であった。比較例15及び16のインクは、特定樹脂の分子サイズが適切でないため、顔料を特定樹脂によって効率的に被覆することが出来なかったと判断される。その結果、比較例15及び16のインクは、ノズル詰まりの発生を抑制できなかった。また、比較例15のインクは、形成される画像の画像濃度も不良であった。