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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162744
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】アナログフロントエンド回路
(51)【国際特許分類】
   H03M 1/12 20060101AFI20241114BHJP
   H03F 3/45 20060101ALI20241114BHJP
   H03F 3/68 20060101ALI20241114BHJP
   H03M 3/02 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
H03M1/12 A
H03F3/45
H03F3/68
H03M3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078602
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 卓
(72)【発明者】
【氏名】大東 睦夫
【テーマコード(参考)】
5J022
5J064
5J500
【Fターム(参考)】
5J022BA03
5J022BA06
5J022BA08
5J022CA07
5J022CF01
5J022CF02
5J022CF03
5J022CF07
5J064BA03
5J064BB07
5J064BC06
5J064BC08
5J064BC10
5J064BC11
5J064BC16
5J064BC19
5J500AA01
5J500AA12
5J500AA51
5J500AC13
5J500AC53
5J500AC92
5J500AF09
5J500AF15
5J500AF18
5J500AH25
5J500AH29
5J500AH39
5J500AH42
5J500AK02
5J500AK17
5J500AK31
5J500AK34
5J500AK42
5J500AM05
5J500AM13
5J500AS15
5J500AT01
5J500DP02
(57)【要約】
【課題】コモンモードノイズを除去するとともに入力オフセットの影響をできるだけ受けずに入力信号を増幅可能な低消費電力のアナログフロントエンド回路を提供する。
【解決手段】アナログフロントエンド回路1は、第1の入力電圧Vinpと第2の入力電圧Vinnとの差電圧を増幅する計装アンプ2と、ΔΣアナログ・デジタル変換器3とを備える。ΔΣアナログ・デジタル変換器3は、計装アンプ2を構成する第1の差動アンプAMP1および第2の差動アンプAMP2のそれぞれの出力電圧Vop,Vonの差電圧をアナログ・デジタル変換する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の入力電圧と第2の入力電圧との差電圧を増幅する計装アンプを備え、
前記計装アンプは、
前記第1の入力電圧が非反転入力端子に入力される第1の差動アンプと、
前記第2の入力電圧が非反転入力端子に入力される第2の差動アンプと、
前記第1の差動アンプの反転入力端子と出力端子との間に接続された第1の抵抗器と、
前記第2の差動アンプの反転入力端子と出力端子との間に接続された第2の抵抗器と、
前記第1の差動アンプの前記反転入力端子と前記第2の差動アンプの前記反転入力端子との間に接続された第3の抵抗器とを含み、
さらに、前記第1の差動アンプの前記出力端子からの出力電圧と前記第2の差動アンプの前記出力端子からの出力電圧との差電圧をアナログ・デジタル変換するΔΣアナログ・デジタル変換器を備える、アナログフロントエンド回路。
【請求項2】
前記ΔΣアナログ・デジタル変換器の電圧増幅率は、前記計装アンプの電圧増幅率よりも大きい、請求項1に記載のアナログフロントエンド回路。
【請求項3】
前記計装アンプは、
前記第3の抵抗器の第1端と前記第1の差動アンプの前記反転入力端子との間に接続された第1のスイッチと、
前記第3の抵抗器の第2端と前記第2の差動アンプの前記反転入力端子との間に接続された第2のスイッチとをさらに含む、請求項1または2に記載のアナログフロントエンド回路。
【請求項4】
前記ΔΣアナログ・デジタル変換器は、
前記第1の差動アンプの前記出力端子に接続された第1のスイッチトキャパシタと、
前記第2の差動アンプの前記出力端子に接続された第2のスイッチトキャパシタと、
前記第1のスイッチトキャパシタおよび前記第2のスイッチトキャパシタととともに積分器を構成する、完全差動アンプならびに前記完全差動アンプの入出力端子間に接続された第1のコンデンサおよび第2のコンデンサと、
前記完全差動アンプの出力電圧を参照電圧と比較する比較器とを含む、請求項1または2に記載のアナログフロントエンド回路。
【請求項5】
前記第1の抵抗器および前記第2の抵抗器は、前記第1の差動アンプおよび前記第2の差動アンプにおいて増幅率を設定するとともに位相補償抵抗として用いられる、請求項4に記載のアナログフロントエンド回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アナログフロントエンド回路に関する。
【背景技術】
【0002】
アナログフロントエンド回路とは、センサなどのデバイスとデジタル信号処理回路とを接続するアナログ回路であり、ゲイン調整とアナログ・デジタル(AD:Analog-to-Digital)変換とを行う。アナログフロントエンド回路には、しばしば計装アンプが用いられる。
【0003】
計装アンプは、信号の増幅機能とコモンモードノイズの除去機能をもつ。センサから生成される微小なアナログ信号を増幅させるとともに高い入力インピーダンスをもつために、計装アンプはセンサとアナログ・デジタル変換器(ADC:Analog-to-Digital Converter)との間に接続されて使用される。
【0004】
通常、計装アンプは2段組みの合計3つのアンプから構成される。このため、アンプの数が消費電力および回路面積の点で問題となる。また、2段目のアンプによって信号とともに入力電圧のオフセットが増幅されてしまうため、アンプの電圧増幅率を上げられないという問題も存在する。
【0005】
国際公開第2019/097871号(特許文献1)は、入力電圧のオフセットを除去するためのオフセット調整回路を1段目の差動アンプの前段に設けた計装アンプを開示する。これにより、計装アンプのゲインを大きく取ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2019/097871号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1に開示された計装アンプは、オフセット調整回路を追加したために消費電力が従来よりも大きいという問題がある。本開示は、上記の背景技術を考慮してなされたものであり、その目的は、コモンモードノイズを除去するとともに入力電圧のオフセットの影響をできるだけ受けずに入力電圧を増幅可能な低消費電力のアナログフロントエンド回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態のアナログフロントエンド回路は、第1の入力電圧と第2の入力電圧との差電圧を増幅する計装アンプと、ΔΣアナログ・デジタル変換器とを備える。計装アンプは、第1の差動アンプと、第2の差動アンプと、第1の抵抗器と、第2の抵抗器と、第3の抵抗器とを含む。第1の差動アンプの非反転入力端子には、第1の入力電圧が入力される。第2の差動アンプの非反転入力端子には、第2の入力電圧が入力される。第1の抵抗器は、第1の差動アンプの反転入力端子と出力端子との間に接続される。第2の抵抗器は、第2の差動アンプの反転入力端子と出力端子との間に接続される。第3の抵抗器は、第1の差動アンプの反転入力端子と第2の差動アンプの反転入力端子との間に接続される。ΔΣアナログ・デジタル変換器は、第1の差動アンプの出力端子からの出力電圧と第2の差動アンプの出力端子からの出力電圧との差電圧をアナログ・デジタル変換する。
【発明の効果】
【0009】
上記の実施形態によれば、計装アンプを構成する第1および第2の差動アンプのそれぞれの出力電圧の差電圧をアナログ・デジタル変換するΔΣアナログ・デジタル変換器が設けられる。この構成により、コモンモードノイズを除去するとともに入力電圧のオフセットの影響をできるだけ受けずに入力電圧を増幅可能な低消費電力のアナログフロントエンド回路を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1によるアナログフロントエンド回路の構成例を示す回路図である。
図2】比較例の計装アンプの構成を示す回路図である。
図3図1の計装アンプの変形例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、各実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、その説明を繰り返さない。
【0012】
実施の形態1.
[アナログフロントエンド回路の構成]
図1は、実施の形態1によるアナログフロントエンド回路1の構成例を示す回路図である。図1に示すように、アナログフロントエンド回路1は、計装アンプ2と、ΔΣAD変換器3とを備える。
【0013】
計装アンプ2は、差動アンプAMP1,AMP2と、抵抗器R1,R2,R3とを備える。差動アンプAMP1,AMP2の各々はたとえばオペアンプである。
【0014】
差動アンプAMP1の非反転入力端子は、入力電圧Vinpが入力される入力ノード21に接続される。差動アンプAMP2の非反転入力端子は、入力電圧Vinnが入力される入力ノード22に接続される。抵抗器R1は、差動アンプAMP1の反転入力端子と出力端子との間に接続される。抵抗器R2は、差動アンプAMP2の反転入力端子と出力端子との間に接続される。抵抗器R3は、差動アンプAMP1の反転入力端子と差動アンプAMP2の反転入力端子との間に接続される。差動アンプAMP1の出力電圧Vopおよび差動アンプAMP2の出力電圧Vonは、ΔΣAD変換器3に直接入力される。
【0015】
上記の入力電圧Vinpおよび入力電圧Vinnは、同じ差動信号の正極信号および負極信号であってもよい。もしくは、入力電圧Vinp,Vinnの一方がシングルエンド信号であり、他方が固定電圧であってもよい。
【0016】
ΔΣAD変換器3は、スイッチトキャパシタ31,34と、ループフィルタ37と、1ビットADCとしての比較器CMP1と、ローパスフィルタI1とを備える。スイッチトキャパシタ31,34とループフィルタ37とによって差動積分回路が構成される。
【0017】
スイッチトキャパシタ31は、可変容量コンデンサC1と、スイッチSW1,SW3,SW5,SW7とを備える。可変容量コンデンサC1の第1電極は、スイッチSW3を介して計装アンプ2の差動アンプAMP1の出力端子に接続されるとともに、スイッチSW1を介してノード32に接続される。可変容量コンデンサC1の第2電極は、スイッチSW7を介してループフィルタ37を構成する完全差動アンプAMP3の反転入力端子に接続されるとともに、スイッチSW5を介してノード33に接続される。
【0018】
スイッチトキャパシタ34は、可変容量コンデンサC2と、スイッチSW2,SW4,SW6,SW8とを備える。可変容量コンデンサC2の第1電極は、スイッチSW4を介して計装アンプ2の差動アンプAMP2の出力端子に接続されるとともに、スイッチSW2を介してノード35に接続される。可変容量コンデンサC2の第2電極は、スイッチSW6を介してループフィルタ37を構成する完全差動アンプAMP3の非反転入力端子に接続されるとともに、スイッチSW6を介してノード36に接続される。
【0019】
図1の例では、ノード32,33,35,36は、同じ基準電位を与える基準ノードである。
【0020】
ループフィルタ37は、完全差動アンプAMP3と、固定容量コンデンサC3,C4と、スイッチSW9,SW10とを備える。完全差動アンプAMP3の反転入力端子は、スイッチトキャパシタ31のスイッチSW7を介して可変容量コンデンサC1の第2電極に接続される。完全差動アンプAMP3の非反転入力端子は、スイッチトキャパシタ34のスイッチSW8を介して可変容量コンデンサC2の第2電極に接続される。固定容量コンデンサC3およびスイッチSW9は、完全差動アンプAMP3の反転入力端子と非反転出力端子との間に直列に接続される。固定容量コンデンサC4およびスイッチSW10は、完全差動アンプAMP3の非反転入力端子と反転出力端子との間に直列に接続される。
【0021】
比較器CMP1は、ループフィルタ37の完全差動アンプAMP3の出力電圧を参照電圧と比較する。比較器CMP1の比較結果は、可変容量コンデンサC1,C2の容量値にそれぞれフィードバックされる。
【0022】
なお、ΔΣAD変換器3は、可変容量コンデンサC1,C2を固定容量コンデンサとし、デジタル・アナログ変換器を用いて、CMP1の出力をノード32,35の電圧としてフィードバックするように構成されていてもよい。
【0023】
ローパスフィルタI1は、比較器CMP1の出力の帯域を制限しダウンサンプリングすると共に、そのビット幅を広げることにより、最終的なデジタル出力Vdを生成する。生成されたデジタル出力Vdは、出力ノード38から出力される。
【0024】
なお、アナログフロントエンド回路1は、スイッチSW1~SW10の開閉を制御するコントローラ40をさらに備えていてもよい。コントローラ40は、論理回路によって構成されていてもよいし、FPGA(Field Programmable Gate Array)によって構成されていてもよいし、CPU(Central Processing Unit)およびメモリなどを含むマイクロコンピュータによって構成されていてもよい。
【0025】
[アナログフロントエンド回路の動作の特徴]
次に、上記の構成のアナログフロントエンド回路1の動作の特徴について説明する。計装アンプ2の抵抗器R1,R2の各々の抵抗値をRとし、抵抗器R3の抵抗値をRとすると、計装アンプ2の電圧増幅率Av1は次式(1A)で表される。また、入力電圧Vinp,Vinnに対する出力電圧差ΔVout=Vop-Vonは、次式(1B)で表される。
【0026】
【数1】
【0027】
ΔΣAD変換器3のスイッチトキャパシタ31,34の可変容量コンデンサC1,C2の各々の容量値をCとし、ループフィルタ37の固定容量コンデンサC3,C4の各々の容量値をCとすると、スイッチトキャパシタ31,34およびループフィルタ37で構成される積分器の電圧増幅率Av2は、次式(2)で表される。
【0028】
【数2】
【0029】
したがって、上式(1A)および(2)から入力電圧Vinp,Vinnの電圧差に対する完全差動アンプAMP3の出力電圧の電圧増幅率Avは、次式(3)で表される。
【0030】
【数3】
【0031】
上式(1A),(1B)に示されるように、入力電圧Vinp,Vinnにオフセットが存在する場合、図1の計装アンプ2はオフセット電圧をそのまま増幅してΔΣAD変換器3に出力する。したがって、入力電圧のオフセットが無視できない場合、計装アンプ2の電圧増幅率Av1をできるだけ低く抑える必要がある。一方、ΔΣAD変換器3では、可変容量コンデンサC1,C2と完全差動アンプAMP3によって入力オフセット電圧が除去されるため、入力オフセット電圧の影響をあまり受けずに電圧増幅率Av2を上げることができる。
【0032】
したがって、計装アンプ2の抵抗比R/RとΔΣAD変換器3の容量比C/Cを適切に設定することによって、入力オフセットの影響を低減しつつ高い増幅率のアナログフロントエンド回路1を実現することができる。入力電圧Vinp,Vinnのオフセットが無視できないほど大きい場合、計装アンプ2の電圧増幅率Av1をより低くして、ΔΣAD変換器3の電圧増幅率Av2をより高くする。
【0033】
また、コモンモードノイズは基本的には、計装アンプ2の出力電圧Vop,Vonが差動入力されるΔΣAD変換器3の完全差動アンプAMP3によって除去できる。計装アンプ2の差動アンプAMP1,AMP2は、入力電圧Vinp,Vinnに対する入力インピーダンスを高くかつ互いに等しくするために設けられている。
【0034】
上記のように高い電圧増幅率とコモンモードノイズの除去機能とを実現するには、計装アンプ2の後段のAD変換器は、ΔΣAD変換器3のように計装アンプ2の差動出力電圧Vop,Vonが直接差動アンプに入力される構成であることが重要である。フラッシュ型、パイプライン型などのように計装アンプ2の出力電圧が比較器に直接入力されるタイプのAD変換器では、上記の効果は得られない。
【0035】
なお、図1の計装アンプ2の差動アンプAMP1には、ΔΣAD変換器3の可変容量コンデンサC1が負荷容量として接続されている。また、差動アンプAMP2には、可変容量コンデンサC2が負荷容量として接続されている。したがって、発振を防ぐために、差動アンプAMP1,AMP2として完全補償型オペアンプを用いてもよい。もしくは、可変容量コンデンサC1,C2の容量値に応じて抵抗器R1,R2を位相補償に用いることにより発振を防ぐこともできる。この場合には、差動アンプAMP1,AMP2の内部の位相補償用の抵抗および/または容量を減らすことができる。
【0036】
[比較例の計装アンプの構成]
以下、比較例の計装アンプ4を参照しつつ、本実施形態のアナログフロントエンド回路1の特徴についてさらに説明する。比較例の計装アンプ4は、市販の計装アンプに類似した構成を有している。
【0037】
図2は、比較例の計装アンプ4の構成を示す回路図である。図2の計装アンプ4は、2段構成になっており、第1段目の増幅部5と第2段目の増幅部6とを含む。第1段目の増幅部5は、図1の計装アンプ2と同様の構成であるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0038】
第2段目の増幅部6は、完全差動アンプAMP4と抵抗器R4,R5,R6,R7とを備える。完全差動アンプAMP4の反転入力端子は、抵抗器R4を介して差動アンプAMP1の出力端子に接続される。完全差動アンプAMP4の非反転入力端子は、抵抗器R5を介して差動アンプAMP2の出力端子に接続される。抵抗器R6は、完全差動アンプAMP4の反転入力端子と非反転出力端子との間に接続される。抵抗器R7は、完全差動アンプAMP4の非反転入力端子と反転出力端子との間に接続される。
【0039】
図2の計装アンプ4を図1の計装アンプ2に代えて用いる場合、完全差動アンプAMP4の非反転出力端子は、図1のスイッチSW3を介して可変容量コンデンサC1の第1電極に接続される。完全差動アンプAMP4の反転出力端子は、図1のスイッチSW4を介して可変容量コンデンサC2の第1電極に接続される。
【0040】
市販の計装アンプの場合、主として第1段目の増幅部5によって入力電圧が増幅される。第1段目の増幅部5において、抵抗器R1,R2の各々の抵抗値をRとし、抵抗器R3の抵抗値をRとする。この場合、第1段目の増幅部5の電圧増幅率Av1は前述の式(1A)で表される。また、入力電圧Vinp,Vinnに対する出力電圧差ΔVout=Vop-Vonは、前述の式(1B)で表される。
【0041】
市販の計装アンプの場合、第2段目の増幅部6は専らコモンモードノイズの除去のために用いられる。この場合、抵抗器R4の抵抗値と抵抗器R6の抵抗値とが等しくなり、抵抗器R5の抵抗値と抵抗器R7の抵抗値とが等しくなるように構成されるので、第2段目の増幅部6の電圧増幅率は1である。
【0042】
本実施形態のアナログフロントエンド回路1では、上記の第2段目の増幅部6が設けられておらず、ΔΣAD変換器3の可変容量コンデンサC1,C2と完全差動アンプAMP3によってコモンモードノイズが除去される。このため、第2段目の増幅部6を構成する完全差動アンプAMP4および抵抗器R4~R7が不要になるので、従来よりも低消費電力化および小面積化を実現できる。
【0043】
[実施の形態1のまとめ]
以上のとおり、実施の形態1のアナログフロントエンド回路1によれば、計装アンプ2は、第1の入力電圧Vinpが入力される第1の差動アンプAMP1と第2の入力電圧Vinnが入力される第2の差動アンプとを含む。ΔΣAD変換器3は、第1の差動アンプAMP1の出力電圧と第2の差動アンプAMP2の出力電圧との差電圧をAD変換する。上記の構成によれば、ΔΣAD変換器3を構成する可変容量コンデンサC1,C2と完全差動アンプAMP3によってコモンモードノイズが除去される。さらに、ΔΣAD変換器3の電圧増幅率Av2を計装アンプ2の電圧増幅率Av1よりも大きくすることによって、オフセットの影響をできるだけ受けずに入力電圧を増幅できる。また、市販の計装アンプと異なり、コモンモードノイズを除去するための第3の差動アンプを設ける必要がないので、低消費電力化および小面積化が実現できる。
【0044】
なお、第1の入力電圧Vinpおよび第2の入力電圧Vinnは、差動信号の正極信号および負極信号であってもよい。もしくは、第1の入力電圧Vinpおよび第2の入力電圧Vinnの一方をシングルエンド信号とし、他方を固定電圧にしてもよい。
【0045】
上記では、ΔΣAD変換器3として離散時間型のΔΣ変調器の構成を示したが、連時間型のΔΣ変調器であっても、上記と同様の低消費電力化およびオフセット低減効果を実現できる。また、入力電圧が比較器を介さずに直接差動アンプに入力されるタイプのAD変換器であれば、上記のΔΣAD変換器に代えて用いても上記の同様の効果を奏することができる。
【0046】
実施の形態2.
実施の形態2では、実施の形態1の計装アンプ2の変形例について説明する。変形例の計装アンプ2Aは、入力電圧Vinp,Vinnのオフセットがさらに著しい場合に適用される。
【0047】
図3は、図1の計装アンプ2の変形例を示す回路図である。図3の計装アンプ2Aは、スイッチSW11,SW12をさらに備える点で図1のアナログフロントエンド回路1の計装アンプ2と異なる。スイッチSW11は、抵抗器R3の第1端と差動アンプAMP1の反転入力端子との間に接続される。スイッチSW12は、抵抗器R3の第2端と差動アンプAMP2の反転入力端子との間に接続される。スイッチSW11,SW12の開閉は、たとえば、図1のコントローラ40によって制御される。
【0048】
図3のその他の構成は図1の場合と同様であるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0049】
図3のスイッチSW11,SW12は、通常時にはオン状態に制御される。この場合の図3の計装アンプ2Aの動作は、実施の形態1の場合と同じである。
【0050】
一方、入力電圧Vinp,Vinnのオフセットが著しい場合には、スイッチSW11,SW12はオフ状態に制御される。この場合、差動アンプAMP1は入力電圧Vinpを増幅する電圧増幅率1倍のバッファアンプとなり、差動アンプAMP2は入力電圧Vinnを増幅する電圧増幅率1倍のバッファアンプとなる。これにより、入力電圧オフセット影響を極力小さくできる。
【0051】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。この出願の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0052】
1 アナログフロントエンド回路、2,2A,4 計装アンプ、3 ΔΣアナログ・デジタル変換器、21,22 入力ノード、31,34 スイッチトキャパシタ、32,33,35,36 グラウンド(基準ノード)、37 ループフィルタ、38 出力ノード、40 コントローラ、AMP1,AMP2 差動アンプ、AMP3,AMP4 完全差動アンプ、Av,Av1,Av2 電圧増幅率、C1,C2 可変容量コンデンサ、C3,C4 固定容量コンデンサ、CMP1 比較器、I1 ローパスフィルタ、R1~R7 抵抗器、SW1~SW12 スイッチ、Vd デジタル出力、Vinn,Vinp 入力電圧、Von,Vop 出力電圧。
図1
図2
図3