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特開2024-162750インプリント装置、インプリント方法、および物品の製造方法。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162750
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】インプリント装置、インプリント方法、および物品の製造方法。
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20241114BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078614
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】石本 瑞樹
【テーマコード(参考)】
4F209
5F146
【Fターム(参考)】
4F209AF01
4F209AG05
4F209AH33
4F209AP06
4F209AR07
4F209PA02
4F209PB01
4F209PN13
4F209PQ11
5F146AA31
5F146EA07
5F146ED01
5F146FA10
(57)【要約】
【課題】インプリント処理においてリワークの発生を低減する。
【解決手段】モールドを用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント処理を実行するインプリント装置である。インプリント装置は、モールド上に形成された複数のマークを観察する観察手段と、モールド上におけるマークの位置に基づいてインプリント処理で使用するマークを選択し、インプリント処理の実行前に選択したマークを観察手段に観察させ、観察結果に基づいてインプリント処理の実行可否を判断する制御手段と、を有する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モールドを用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント処理を実行するインプリント装置であって、
前記モールド上に形成された複数のモールド側マークを観察する観察手段と、
前記インプリント処理で使用する前記モールド側マークを選択し、前記インプリント処理の実行前に選択した前記モールド側マークを前記観察手段に観察させ、観察結果に基づいて前記インプリント処理の実行可否を判断する制御手段と、を有することを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記インプリント処理の対象である前記基板上に形成された複数の基板側マークの位置情報を取得し、取得された前記位置情報を用いて前記インプリント処理で使用する前記モールド側マークを選択することを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記観察手段に観察させる前記モールド側マークの順番を、前記観察手段の駆動時間が閾値以下となるように決定することを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記観察手段を駆動する駆動手段をさらに有し、
前記制御手段は、前記観察結果に基づいて、前記観察手段の撮像エリアの光学中心位置に対する前記モールド側マークの中心位置の相対位置のずれ量を取得し、前記相対位置のずれ量を補正するように前記観察手段を駆動させることを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記インプリント処理において、前記モールドと前記基板の相対位置のずれ量を検出するために使用する前記モールド側マークを選択することを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項6】
前記インプリント装置は複数の前記観察手段を有し、
前記観察手段は、前記インプリント処理の実行前に観察した前記モールド側マークと同一の前記モールド側マークを、前記インプリント処理の実行中においても観察することを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記モールド側マークのパターン情報を含むレシピ情報を取得し、
前記観察結果は、前記モールド側マークが前記観察手段の撮像エリア内において、前記レシピ情報と一致するマークパターンが観察できたか否かの情報を含むことを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記インプリント処理の実行可否を判断した結果、実行不可であると判断した場合に、マーク異常を発報することを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項9】
前記制御手段は、モールド保持部に保持された前記モールドの位置のずれ量が計測された後に、選択した前記モールド側マークを前記観察手段に観察させることを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項10】
モールドを用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント処理を実行するインプリント方法であって、
前記モールド上に形成された複数のモールド側マークから、前記インプリント処理で使用する前記モールド側マークを選択し、前記インプリント処理の実行前に選択した前記モールド側マークを観察し、観察結果に基づいて前記インプリント処理の実行可否を判断することを特徴とするインプリント方法。
【請求項11】
請求項1に記載のインプリント装置を用いてパターンを基板に形成する工程と、
前記形成する工程でパターンを形成された前記基板を加工する加工工程と、を含み、
前記加工工程で加工された前記基板から物品を製造することを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント装置、インプリント方法、および物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パターンが形成された面を有するモールドを用いて、基板上のインプリント材を成形するインプリント装置が、半導体デバイスなどの量産用リソグラフィー装置の1つとして注目されている。インプリント装置は、モールドと基板上のインプリント材とを接触させた状態でインプリント材を硬化させ、硬化したインプリント材からモールドを剥離させることにより、インプリント材で構成された凹凸のパターンを基板上に形成することができる。インプリント装置では、モールドと基板との位置合わせにおいて、ダイバイダイアライメント方式が一般に用いられている。ダイバイダイアライメント方式では、モールドと基板上のインプリント材が接触した状態で、モールドと基板に設けられたマークを重ね合わせる。これにより検出できるモアレ等の合成像より、モールドと基板の相対位置ずれ量を計測し、ずれ量を補正駆動することで、精度よく位置合わせを行うものである。
【0003】
しかしながら、インプリント処理中に行うダイバイダイアライメント方式の位置合わせにおいて、アライメントマークを正しく検出できないことがしばしば起こりうる。アライメントマークに異物が付着した場合や、モールドの洗浄によってアライメントマークの表面処理が剥脱し、マーク表面の光学特性が変化する場合に、アライメントマークを正しく検出できないことがある。
【0004】
また、実際にインプリント処理で使用するアライメントマークのマークパターンが、レシピ情報から取得したアライメントマークのマークパターンに対して異なる場合も、相対位置ずれ量を正しく検出することができない。ここでいうマークパターンとは、アライメントマークを形成する模様や形状、およびその向きのことである。マークパターンは、ユーザによってインプリント処理前にレシピに登録されるが、ユーザの登録ミスにより実際のマークパターンと異なる場合がある。
【0005】
ダイバイダイアライメント方式では、一つの基板上に複数のショット領域を設けることで、同一基板上に対し、ショット領域の数だけ繰り返し位置合わせとインプリント処理を行う。
【0006】
インプリント処理中にアライメントマークの検出に異常が発生した場合は、位置合わせを正しく行うことができないため、インプリント処理を続行できなくなりエラー停止する。量産時においてエラー停止が発生すると、エラー停止したショットの位置合わせ精度が保証されない状態となるため、基板がリワークとなる。
【0007】
また、ダイバイダイアライメント方式では、ショットごとに使用するアライメントマークを替えることが可能であるため、ショットごとに位置合わせに最適なアライメントマークを選択することができる。その反面、インプリント処理中に一カ所でもアライメントマークの検出に異常が発生すると、基板がリワークとなる。基板がリワークとなった場合、基板上のインプリント材を一度除去し、基板をインプリント処理前の状態に再生させなければならないため、生産性の低下を招く。
【0008】
上記の問題に対し、特許文献1の例では、アライメントマークの検出を行う前に、相対位置ずれの検出で使用できないマークを禁止マークとしてユーザに選択させている。選択した禁止マークを位置合わせに使用しないことで、アライメントマークの検出で異常が発生することを防止している。また、特許文献2の例では、アライメントマークの検出で異常が発生した場合に、アライメントマークを正常に検出するためのリカバリー処理を行うことで、スループットを向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2017-103297号公報
【特許文献2】特開2016-96269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1の例では、ユーザのオペレーションミスにより禁止マークの選択に間違いがあった場合、アライメントマークの検出異常を防ぐことができない。また、特許文献2の例では、モールドと基板が接触した後にリカバリー処理を行っているため、リカバリーに失敗した場合はリワークとなる。
【0011】
そこで本発明は、インプリント処理においてリワークの発生を低減する技術を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としてのインプリント装置は、モールドを用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント処理を実行するインプリント装置であって、前記モールド上に形成された複数のマークを観察する観察手段と、前記モールド上における前記マークの位置に基づいて前記インプリント処理で使用する前記マークを選択し、前記インプリント処理の実行前に選択した前記マークを前記観察手段に観察させ、観察結果に基づいて前記インプリント処理の実行可否を判断する制御手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、例えば、インプリント処理においてリワークの発生を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】インプリント装置の構成の一例を表す図である。
図2】インプリント装置を用いたロット処理の一例を示すフロー図である。
図3】インプリント装置を用いたインプリント処理を示すフロー図である。
図4】インプリント装置を用いたインプリント処理を説明する模式図である。
図5】基板上のショットレイアウトの一例を示す図である。
図6】パーシャル・フィールドとフル・フィールドのインプリント処理に用いるマークの違いについて説明する図である。
図7】モールドのパターン領域内のアライメントマークのレイアウトの一例を説明する図である。
図8】モールド3のアライメントマークの異常を説明する図である。
図9】第1実施形態に係るロット処理を示すフロー図である。
図10】第1実施形態に係るマーク観察処理を示すフロー図である。
図11】TTMスコープの駆動と観察の動作を説明する模式図である。
図12】収差がマークパターンに与える影響について説明する模式図である。
図13】第2実施形態に係るマーク観察処理を示すフロー図である。
図14】第2実施形態に係るインプリント処理を示すフロー図である。
図15】物品の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の好ましい実施形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
<第1実施形態>
図1は、インプリント装置の構成の一例を表す図である。本実施形態におけるインプリント装置1は、半導体デバイス製造工程に使用される基板5に対し、原版であるモールド3の凹凸パターンを転写する加工装置であり、インプリント技術の中でも紫外線を用いた光硬化法を採用した装置である。図1では、モールド3に対する紫外線17の照射方向に平行な方向をZ方向とし、Z方向に垂直な平面内で基板5が移動する方向をX方向、X軸に直行する方向をY方向として説明する。
【0017】
本実施形態のインプリント装置1は、照明系ユニット2と、モールド3を保持するインプリントヘッド4と、基板5を保持する基板ステージ6と、インプリント材塗布装置7と、モールド搬送装置11と、基板搬送装置12と、制御装置10とを備える。
【0018】
照明系ユニット2はインプリント処理(転写処理ともいう)の際に、モールド3に対して紫外線17を照射する照明手段である。この照明系ユニット2は、光源と、光源から射出された紫外線をインプリントに適切な光に調整するための複数の光学素子を含む。照明系ユニット2から照射された紫外線17は、インプリントヘッド4の直上にあるハーフミラー18で反射され、モールド3を通して、基板5上のインプリント材14を硬化させる。
【0019】
モールド3は、基板5に対する対向面に所定の凹凸パターンが3次元状に形成された型である。モールド3は、例えば、外周部が矩形であり、基板5に対向する面において、所定の凹凸パターンが3次元状に形成されたパターン領域を有しており、紫外線を透過する材料(石英など)で構成される。
【0020】
インプリントヘッド4は、モールド3を保持、及び固定するためのモールド保持部である。インプリントヘッド4は、モールド3を保持した状態で、モールド3を基板5上のインプリント材14に押し付けるためのZ方向の駆動機構を有する。また、基板5やモールド3の傾きに応じて、モールド3全体を傾けるための傾き補正駆動機構も有する。
【0021】
モールド3上部のハーフミラー18のさらに上部に、TTM(Through The Mold)スコープ13を備える。TTMスコープ13は、モールド3に設けられたアライメントマークと、基板5に設けられたアライメントマークとを観察するための光学系と撮像系を有するアライメントスコープである。光学系は、アライメントマークを照射する光を発する光源と、光源から発せられる光の波長を選択する波長フィルターと、光源の光の強度を調整するNDフィルターとを含む。撮像系は、イメージセンサーなどの受光素子を含む。
【0022】
TTMスコープ13によって、モールド3に設けられたアライメントマークと、基板5に設けられたアライメントマークとが重なった状態を観測することにより、X方向およびY方向の相対位置ずれ量を計測することができる。即ち、TTMスコープ13は、インプリント処理において、モールド3上に形成されたアライメントマークと、基板5上に形成されたアライメントマークとの位置ずれ量の計測を行う観察手段として機能する。
【0023】
図1のインプリント装置1は、TTMスコープ13を4台搭載している。TTMスコープを複数配置することで複数のアライメントマークを同時に計測することが可能となり、XY方向のずれ量だけでなく、回転方向および倍率方向のずれ量の計測も可能となる。
【0024】
また、モールド3は、転写パターンのデザインによってアライメントマークの設計位置座標が異なることが想定される。そのため、TTMスコープ13は、XY方向に駆動する機構を有することが望ましい。また、本実施形態のように、インプリント装置1にTTMスコープ13が複数配置される場合は、それぞれが独立してXY方向に駆動するのが望ましい。
【0025】
基板5は、凹凸パターンが転写される基板であって、例えば、単結晶シリコン基板やSOI(Silicon on Insulator)基板などを含む。
【0026】
基板ステージ6は、基板5を、例えば、真空吸着や静電吸着により保持し、かつ、XY平面内を自由に移動可能な基板保持部である。基板ステージ6はZ軸まわりの回転駆動機構を設けることが望ましい。また、Z方向や、XY軸周りの回転機構を設けることで、インプリントヘッド4のZ方向駆動や傾き補正駆動機構を代用してもよい。基板ステージ6には、モールド3の表面を計測可能な、モールド高さセンサー9が搭載されている。モールド高さセンサー9は、基板ステージをXY平面に沿って駆動しながら、モールド3の表面の各位置を計測することが可能である。基板ステージ6は、基板ステージ定盤15に沿って駆動する。この場合は、基板ステージがXY方向に駆動したときのZ方向や傾きの基準は、基板ステージ定盤15となる。
【0027】
基板ステージ定盤15は、基板ステージ定盤マウント16によって、床からの振動から絶縁する構造になっている。図1のインプリント装置1の例では、装置全体が、このマウントの上に構成することで、床からの振動の影響を受けないような構造になっている。
【0028】
基板高さセンサー8は、基板5の表面を計測することで、基板高さを計測可能なセンサーである。基板ステージ6をXY方向に駆動することで、基板5の各位置の高さを計測可能である。
【0029】
インプリント材塗布装置7は、基板5上に未硬化のインプリント材14を塗布する塗布手段である。
【0030】
インプリント材14には、硬化用のエネルギーが与えられることによって硬化する硬化性組成物(未硬化状態の樹脂と呼ぶこともある)が用いられる。硬化用のエネルギーとしては、電磁波、熱などが用いられる。電磁波としては、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される、赤外線、可視光線、紫外線などの光を用いる。本実施形態では、硬化用のエネルギーとして紫外線を用いる例について説明する。つまり、本実施形態において、インプリント材14は、照明系ユニット2からの紫外線17を受光することにより硬化する光硬化樹脂である。インプリント材14は、熱可塑性もしくは熱硬化性樹脂であってもよい。
【0031】
硬化性組成物は、光の照射によって、或いは、加熱によって硬化する組成物である。光の照射によって硬化する光硬化性組成物は、重合性化合物と光重合開始剤とを少なくとも含有し、必要に応じて、非重合性化合物又は溶剤を含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。
【0032】
OAS(Off Axis Scope)19は、基板5上のマークを計測するための検出機構である。基板ステージ6をXY方向に駆動させて、基板5上のマークを計測することが可能であるため、OAS19は、TTMスコープ13と異なり、XY方向への駆動機構は不要である。また、OAS19は、TTMスコープ13に比較して、配置上の制約が緩いため、光学的に有利なスコープを搭載しやすい。視野を大きく、計測分解能を高くすることも可能である。
【0033】
モールド搬送装置11は、モールド3を搬送し、インプリントヘッド4に対して、モールド3を設置する搬送手段である。
【0034】
基板搬送装置12は、基板5を搬送し、基板ステージ6に対して、基板5を設置する搬送手段である。
【0035】
制御装置10は、インプリント装置1の各構成ユニットの動作およびセンサー値などの取得を行う制御部である。制御装置10は、インプリント装置1の各ユニットに回線により接続された、不図示のコンピュータ、またはシーケンサなどで構成され、CPU(Central Processing Unit)やメモリ(記憶部)などを含む。また、制御装置10は、メモリに格納されたプログラムに従って、インプリント装置1全体の各構成要素の動作調整などを統括的に制御する。また、制御装置10は、インプリント装置1の他の部分と一体で(共通の筐体内に)構成してもよい。さらに、インプリント装置1の他の部分とは別体で(別の筐体内に)構成してもよいし、インプリント装置1とは別の場所に設置し遠隔で制御してもよい。
【0036】
図1のインプリント装置1を用いたインプリント方法を、図2を参照して説明する。図2は、インプリント装置1を用いたロット処理の一例を示すフロー図である。ロット処理は、1ロット内の一連のインプリント処理であり、1ロットには複数の基板が含まれる。このフローチャートで示す各動作(ステップ)は、制御装置10のCPUの制御によって実行されうる。
【0037】
S101では、モールド搬送装置11によってこれから使用するモールド3がインプリントヘッド4に搭載される。このとき、モールド3は、真空バキュームなどによってインプリントヘッド4にチャッキングされる。
【0038】
S102では、モールド高さセンサー9によってモールド3の表面を計測する。これらの情報は、制御装置10に送られ、インプリント処理時のインプリントヘッド4のZ方向への駆動量を決定する。また、モールド3の表面の複数点の表面高さを計測することで、モールド3の表面の傾きを算出し、モールド3と基板5の表面が平行になるように、インプリントヘッド4を傾斜させるための傾き量の決定に使用する。なお、インプリント処理の詳細については後述する。
【0039】
S103では、TTMスコープ13を用いて、モールド3搭載時の位置ずれ量を計測する。言い換えると、モールド3のインプリントヘッド4に対する位置ずれ量を計測する。アライメントマークの設計位置座標に基づいて、TTMスコープ13をXY方向に駆動することで、アライメントマークがTTMスコープ13の視野に入るようにする。この状態でアライメントマークの位置座標を計測する。計測した位置座標と設計位置座標とのずれ量が、モールド3の搭載時の位置ずれ量である。
【0040】
次に、基板5側の処理について説明する。S104では、基板搬送装置12により、使用する基板5が基板ステージ6に搭載される。このとき、基板5は、真空バキュームなどによって基板ステージ6にチャッキングされる。
【0041】
S105では、基板高さセンサー8によって基板5の表面形状を計測する。基板5の表面形状の情報は制御装置10に送られ、基板5上のパターンが形成される領域(または表面)の高さおよび傾きの算出に使用される。制御装置10は、基板5の表面形状の情報と、S102のモールド3の高さおよび傾きの情報から、インプリント処理時のインプリントヘッド4のZ方向への駆動量と、モールド3と基板5の表面が平行になるようにインプリントヘッド4を傾斜させるための駆動量を算出する。
【0042】
S106では、OAS19によって基板5の搭載時の位置ずれを計測する。言い換えると、基板5を基板ステージ6に搭載した時の基板ステージ6に対する位置ずれを計測する。基板5上の各ショット領域に配置されたアライメントマークのXY方向それぞれ最低1点を計測することで、基板5の搭載時のXY方向のずれ量を計測することができる。また、2点以上計測することで、基板5の回転量を計測可能となる。さらに多くのマークを計測することで、基板5上のショット領域の配列情報を、関数近似などの計算処理から算出可能となる。
【0043】
S107では、1ショット領域分のインプリント処理を実施する。詳細については後述する。
【0044】
S108では、基板上のすべてのショット領域に対してインプリント処理が終了したか否かが判断され、未処理のショットがあれば(No)、S107を繰り返し、全ショットのインプリント処理を実施する。全ショット領域へのインプリント処理が終了したと判定されると(Yes)、この基板の処理が終了となる。
【0045】
S109では、ロットにおける未処理の基板があれば(No)、次の基板に対し、S104の搬送から繰り返すことになる。全基板の処理が完了すれば(Yes)、ロット処理が終了する。
【0046】
次に、図2のS107の1ショットインプリント処理を、図3および図4を参照して、詳細に説明する。1ショットインプリント処理では、基板5上の1ショット領域分のインプリント処理を行う。図3は、インプリント装置1を用いたインプリント処理を示すフロー図である。このフローチャートで示す各動作(ステップ)は、制御装置10のCPUの制御によって実行されうる。図4は、インプリント装置1を用いたインプリント処理を説明する模式図である。
【0047】
S201では、インプリント処理を行うショット領域に対し、インプリント材塗布装置7によって、インプリント材14を塗布する。インプリント材14は、非常に小さいドロップとして基板5の表面に塗布される。ショット領域内のどの場所にどれだけのドロップを配置するかは、インプリントされるパターン(基板上に形成されるパターン)などに応じて事前に決定しておく。図4(A)はS201を説明する模式図である。
【0048】
インプリント材14が塗布された後、S202で、インプリント対象のショット領域がモールド3の直下に来るように基板ステージ6を駆動する。
【0049】
S203では、TTMスコープ13の光源の波長、NDフィルターの透過率、イメージセンサーの受光の時間などの計測条件を設定する。なお、S201~S203の処理は、必ずしも逐次的に実行する必要はなく、処理時間を短縮するため、並列的に実行してもよい。図4(B)は、S202~203を説明する模式図である。
【0050】
S204では、インプリントヘッド4をZ方向に駆動し、ショット領域に塗布されたインプリント材14に、モールド3を押し当てる(押印処理)。なお、基板ステージ6を駆動し、基板5に塗布されたインプリント材14を、モールド3に押し当てても良いし、基板ステージ6とインプリントヘッド4の両方を駆動してもよい。
【0051】
S205では、TTMスコープ13によって、モールド3のマーク20と、基板5上のショット領域内のマーク21を同時に観察することで、モールド3と基板5上のショット領域の相対位置ずれ量を計測する。図4(C)は、S204~205を説明する模式図である。
【0052】
S206では、S205で計測した相対位置ずれ量を補正するように基板ステージ6を駆動する。
【0053】
S207では、インプリント材14が十分にモールド3の凹凸部に充填される時間を待つ。このときS207の待ち時間内で、S205とS206を交互に繰り返してもよい。もしくは、S205の計測結果が許容範囲に入る時間と、S207でインプリント材14が充填される時間の遅い方を待ってからS208へ遷移しても良い。
【0054】
S208では、照明系ユニット2から紫外線17を照射して、基板上のインプリント材14を硬化させる。図4(D)は、S206~208を説明する模式図である。
【0055】
S209では、インプリントヘッド4を上に持ち上げ、モールド3と基板5を引きはがす。図4(E)は、S209を説明する模式図である。ここでは、S204と同様に基板ステージ6を駆動、または基板ステージ6とインプリントヘッド4の両方を駆動してもよい。この結果、モールド3の凹凸パターンが基板5のショット領域に転写(形成)される。以上が、本実施形態に係るインプリント装置1を用いた、基本的なロットの処理フローである。
【0056】
図5は、基板5上のショットレイアウトの一例を示す図である。具体的には、本図では基板5のXY平面の方向に、複数のショット領域22a~22kを配置したショットレイアウトを示している。なお、ショット領域とは、本実施形態では、後述するモールド3のパターン領域25に相当する大きさの領域、即ち、1回のインプリント処理でモールド3のパターン領域25に対応するインプリント材のパターンが形成される領域(成形領域)を意味する。
【0057】
マーク21に代表される複数のアライメントマークを含むマーク群は、ショット領域22a~22k内にそれぞれ9カ所ずつ配置されている。マーク21は、基板5側に形成された基板側マークであり、モールド3に対するショット領域22a~22kの相対位置ずれ量を計測するためのマークである。マーク21には、マークパターンが形成されている。マーク21のマークパターンとモールド3上のマーク20のマークパターンとを重ね合わせることでモアレ画像を検出できるようになっており、検出したモアレ画像から相対位置ずれ量を計測することが可能である。
【0058】
図5に示す、マーク21に代表されるマーク群のうち、斜線が引かれたマークは、インプリント処理中に相対位置ずれ量を計測するために実際に使用されるマークである。また、パターン被転写領域23に代表される領域群は、ショット領域22a~22k内にそれぞれ4カ所ずつ配置されている。後述するモールド3のパターン転写領域をパターン被転写領域23上に塗布されたインプリント材14に押印することで、基板5上にパターンが転写される。なお、図5に示すショット領域22a~22kおよびマーク21、パターン被転写領域23の形状およびサイズ、配置および配置数は一例でありこの限りではない。実際には、ユーザ設定に応じて、様々なショットレイアウトパターンで実施される。また、ショット領域内のアライメントマークの配置やマークパターンも設定により異なる。
【0059】
破線で示すインプリント領域24は、インプリント材14が塗布された基板5上の領域であり、マーク21の配置やインプリント処理によるパターンの形成が可能な領域である。インプリント領域24には、ショット領域22a~22kが隙間なく配列して形成されている。これは、基板一枚に対して可能な限り多くのショット領域を形成するほうが、スループットの点で有利であるためである。
【0060】
ショット領域22a、22c、22d、22h、22i、22kのように、ショット領域全域がインプリント領域24内に収まらないショット領域のことを、パーシャル・フィールドという。これに対し、ショット領域22b、22e、22f、22g、22jのように、ショット領域全域がインプリント領域24内に収まっているショット領域のことを、フル・フィールドという。パーシャル・フィールドとフル・フィールドとでは、ショット領域内における相対位置ずれ量の計測に使用するマークが異なる。これについて、図6を用いて説明する。
【0061】
図6は、パーシャル・フィールドとフル・フィールドのインプリント処理に用いるマークの違いについて説明する図である。図6(A)は、フル・フィールドのインプリント処理に用いるマークについて説明する図である。図6(B)は、パーシャル・フィールドのインプリント処理に用いるマークについて説明する図である。図6(A)および(B)のショット領域22には、マーク21a~21iが配置されている。マーク21a~21iは、モールド3と基板5の相対位置のずれ量を検出する用途で使用されるアライメントマークである。相対位置ずれ量の計測に使用するアライメントマークは、インプリント領域24内である必要があるため、インプリント領域24内かつショット領域22内のマークの中から選択しなければならない。また、相対位置ずれ量の計測に使用するアライメントマークは、可能な限り位置ずれ量の計測精度が高くなるようなマークを選択することが好ましい。そのため、図6(A)に示すように、インプリント処理の対象となるショット領域がフル・フィールドである場合は、ショット領域22の四隅に位置する斜線で示すマーク21a、21c、21g、21iを相対位置ずれ量の計測に使用することが好ましい。一方、図6(B)に示すようにインプリント処理の対象となるショット領域がパーシャル・フィールドである場合は、マーク21aおよび21bは、インプリント領域24外に位置するため、相対位置ずれ量の計測に使用することができない。よって、斜線で示すマーク21c、21d、21g、21iを相対位置ずれ量の計測に使用することが好ましい。
【0062】
図6(A)および(B)の斜線マークで示すように、フル・フィールドとパーシャル・フィールドでは、相対位置ずれ量の計測に使用するマークのショット領域内の位置座標が異なる。また、図5のショット領域22aとショット領域22cのように、パーシャル・フィールドのショットの中でも、インプリント領域24外となるマークの位置座標が異なるショットであれば、ずれ量の計測に使用するマークの位置座標は異なる。
【0063】
続いて、モールド3のパターン領域内のアライメントマークのレイアウトについて、図7を用いて説明する。図7は、モールド3のパターン領域内のアライメントマークのレイアウトの一例を説明する図である。パターン領域25は、基板5上のショット領域22に対応する領域である。マーク20a~20iは、パターン領域25内に配置されているアライメントマークであり、9カ所に配置されている。また、マーク20a~20iは、モールド3側に形成されたモールド側マークであり、相対位置ずれ量を計測するためのマークパターンが形成されている。マーク20a~20iのショット領域内における位置座標は、それぞれ基板5上の各ショット領域のマーク21の位置座標に対応している。
【0064】
パターン転写領域26は、パターン領域25内に4カ所配置されている。モールド3のパターン領域25を基板5のショット領域22に押印することで、パターン転写領域26に形成されているパターンが、パターン被転写領域23に転写される。モールド3のパターン領域25を、図5で示した基板5上のショット領域22a~22kに押印する場合、ショット領域22a~22kのそれぞれに対し、位置合わせを行う必要がある。ショット領域毎に位置合わせを行うためには、基板5の全ショット領域の相対位置ずれ量の計測に使用するアライメントマークに対応するモールド3上の位置座標に、正常に検出可能なアライメントマークが存在している必要がある。そのため、モールド3上のアライメントマークのうち、位置合わせに使用するマークは、図7に斜線で示すように、マーク20a~20iのうち、マーク20eを除く全てのマークとなる。
【0065】
図3で示した通り、モールド3と基板5上のショット領域との相対位置ずれ量の計測は、1ショットインプリント処理(S107)内の、TTMスコープ13の計測条件設定(S203)で実施される。このとき、相対位置ずれ量の計測に異常が発生すると、インプリント処理を正常に行うことができない。
【0066】
相対位置ずれ量の計測が正しく行えない主な原因として、モールド3のアライメントマークに異常があるケースが挙げられる。図7で示したモールド3のマーク20aを例として、マークに異常が発生しうるケースについて、図8を用いて説明する。図8は、モールド3のアライメントマークの異常を説明する図である。本図では、TTMスコープ13の撮像エリア27を拡大表示することにより、各アライメントマークについて説明をする。図8(A)は、アライメントマークの検出が正常に行われる一例を示す図である。本図のマーク20a内の斜線部は、マークパターンを模式的に表したものである。図8(A)に示すマーク20aは、レシピ情報から抽出した設計情報通りにモールド3に形成されている。なお、レシピ情報は設計情報を含み、設計情報はアライメントマークの位置情報である設計位置座標とマークに形成されているマークパターン情報を含む。
【0067】
これに対し、図8(B)~(F)は、アライメントマークの検出に異常があるケースである。図8(B)は、アライメントマークの検出に異常がある第1例を示す図である。本図は、レシピに登録されているマーク20aのマークパターン情報に対し、実際のモールド3のマーク20aのマークパターンが異なるケースである。この場合、モールド3のマークパターンが設計情報通りでないため、アライメントマークを認識することができない。
【0068】
図8(C)は、アライメントマークの検出に異常がある第2例を示す図である。本図は、レシピに登録されているマーク20aの設計位置座標に対し、実際のモールド3のマーク20aの位置座標が異なるケースである。このケースでは、TTMスコープの撮像エリア27でマーク20aが観察できないため、位置ずれ量の計測を行うことができない。
【0069】
図8(D)は、アライメントマークの検出に異常がある第3例を示す図である。本図は、実際のモールド3のマーク20aのマークパターンに欠陥40があり、モアレ画像を正常に認識できない場合である。このようなケースは、インプリント処理によってモールド上のマークに異物が付着した場合等に起こりうる。
【0070】
図8(E)は、アライメントマークの検出に異常がある第4例を示す図である。本図は、モールドの洗浄によってマークパターンが薄れ、設計情報のマークパターンとは異なるパターンとして検出される場合である。この場合、アライメントマークの検出において、マークパターンが異常であると認識される。
【0071】
図8(F)アライメントマークの検出に異常がある第5例を示す図である。本図は、アライメントマーク周辺に付着した異物41による想定外の反射光や散乱光等の影響により、マークパターンを正しく検出できない場合である。このように、アライメントマークに直接異物が付着していない場合でも、検出異常となりうるケースがある。
【0072】
図8(B)~(F)に代表されるようなモールド3のアライメントマークの検出異常の発生、ひいてはリワークの発生を防ぐためのロット処理について、図9を用いて説明する。なお、本図において図2と同様のステップについては同じ番号を付して説明を省略し、差異についてのみ詳細に説明する。図9は、第1実施形態に係るロット処理を示すフロー図である。このフローチャートで示す各動作(ステップ)は、制御装置10のCPUの制御によって実行されうる。S101~S103の処理後、S301で、インプリント処理においてモールド3と基板5の相対位置ずれ量の計測に使用するモールド3上のアライメントマークの観察を、TTMスコープ13を用いて行う。即ち、制御装置10は、TTMスコープ13にモールド3上のアライメントマークを観察させる。その後、使用する全てのアライメントマークの観察が完了したら、基板搬送・搭載(S104)を行う。このとき、マーク観察(S301)は、必ずしも基板搬送・搭載(S104)の直前に行う必要はない。1ショットインプリント処理(S107)を行う前のタイミングで実施していれば、本発明における効果を得ることができる。なお、マーク観察(S301)は、S103において、インプリントヘッド4に保持されたモールド3の位置のずれ量が計測された後に実施されることが好ましい。しかし、モールド3のインプリントヘッド4に対する位置ずれ量がない状態で、モールド3がインプリントヘッド4へ搭載可能であれば、S103よりも前に実施されてもよい。
【0073】
ここから、マーク観察(S301)の詳細な処理について、図10を用いて説明する。図10は、第1実施形態に係るマーク観察処理を示すフロー図である。このフローチャートで示す各動作(ステップ)は、制御装置10のCPUの制御によって実行されうる。マーク観察を開始後、S401では、制御装置10は、レシピ情報を取得する。具体的には、制御装置10はユーザによってレシピに登録された基板5上のショット領域のレイアウト情報と、使用するアライメントマークの設計位置座標、およびマークパターン情報を取得する。
【0074】
S402では、制御装置10は、レシピ情報から取得した基板5上のマークの位置座標(位置情報)およびマークパターン情報に基づいて、インプリント処理で必要となるマーク20を選択する。具体的には、制御装置10は、レシピ情報を用いて、インプリント処理において、モールド3と基板5の相対位置のずれ量を検出するために使用するマーク20を選択する。なお、ここでは、レシピ情報を用いて、インプリント処理で使用するマーク20を選択しているが、これに限られない。例えば、インプリント処理で使用するマークを、ロット毎に付されるロット番号と紐づけたテーブルを予め制御装置10に記憶させ、該テーブルを用いて、インプリント処理で使用するマーク20を選択してもよい。また、マークを観察する順番を決定する。このとき、マークを観察する順番に制約は無いものの、マーク観察の処理時間を少なくするため、TTMスコープ13の駆動時間が閾値以下、好ましくは最短となる順番とする。また、複数のTTMスコープ13で複数のマークを同時に観察する場合、どのTTMスコープ13でどのマークを観察するかの組み合わせを、インプリント処理の実行時と同じ組み合わせに限定するのがよい場合がある。例えば、TTMスコープ13ごとにマーク観察に最適な光量設定が異なる場合、マーク観察時とインプリント処理時とで用いるTTMスコープ13が異なれば、光量の違いによりマークパターンの検出結果が異なる可能性がある。そのため、このような場合は、インプリント処理時と同じ組み合わせでマークパターンを観察することで、パターンの判断精度を高めるようにするのが好ましい。言い換えると、TTMスコープ13が、インプリント処理の実行前に観察したマークと同一のマークを、インプリント処理の実行中において観察するようにすることが好ましい。
【0075】
S403では、制御装置10は、観察対象のマークの設計位置座標に基づき、TTMスコープ13をマーク位置座標に対して駆動させる。インプリント装置1にTTMスコープ13が複数搭載されている場合は、複数台を同時に複数の観察対象のマークの設計位置座標に駆動させ、位置合わせを行うのが好ましい。同時に駆動することにより、駆動処理時間を短縮することができる。第1実施形態では、インプリント装置1は、TTMスコープ13を4台搭載しているため、4つのTTMスコープ13を駆動させ、モールド3上の4つのマークの設計座標位置に対し、TTMスコープ13の撮像エリアの中心を合わせる。
【0076】
ここから、TTMスコープ13の駆動と観察の動作について、図10のフローと図11の模式図を用いて説明する。図11は、TTMスコープ13の駆動と観察の動作を説明する模式図である。図11(A)は、観察対象であるモールド3のマーク20a、20c、20g、20iの位置座標に、4つのTTMスコープ13の撮像エリア27a、27b、27c、27dの中心位置を駆動させた状態を表している。マーク観察を行うためには、TTMスコープ13のフォーカスをマークパターンに合わせる必要がある。そのため、XY方向の駆動に加え、必要があればZ方向にも駆動させてTTMスコープ13のフォーカス調整を行う。
【0077】
図10のS404では、TTMスコープ13によりモールド3上のアライメントマークの撮像を行う。そして、制御装置10は、TTMスコープ13により撮像した撮像エリア内の画像を解析する。具体的には、画像認識により、撮像で得られたマークパターン情報と、レシピに登録されたマークパターン情報とを比較する。
【0078】
S405では、制御装置10は、モールド3上のアライメントマークの観察結果に基づいて、インプリント処理の実行可否を判断する。具体的には、制御装置10は、マークパターン情報の比較結果に基づいて、インプリント処理の実行可否を判断する。即ち、ここで、モールド3上のアライメントマークの観察結果は、レシピ情報と一致するマークパターンが観察できたか否かの情報を含む。制御装置10は、TTMスコープ13の撮像エリアに対象のマークが収まっていない、またはマークのパターンがレシピ情報で取得したマークパターンと一致していないと判断した場合、マークの検出に異常があったと判断する(No)。つまり、制御装置10は、インプリント処理の実行は不可であると判断する。この場合、マーク観察を異常終了し、マーク観察フローを終了する。またユーザに対し、ブザーや操作パネルへの表示等でアライメントマークの観察異常を発報し、ロット処理シーケンスをエラー停止する(S408)。即ち、制御装置10は、インプリント処理の実行可否を判断した結果、実行不可であると判断した場合に、マーク異常を発報する。一方、TTMスコープ13の撮像エリア内で観察したマークパターンが、レシピ情報で取得したマークパターンと一致している場合は、正常にマークの検出ができたものと判断する(Yes)。つまり、制御装置10は、インプリント処理の実行は可能であると判断し、S406の処理に移る。
【0079】
S406では、制御装置10は、インプリント処理で使用する全てのアライメントマークの観察が終了したか否かを判断する。モールド上に未観察のマークがある場合(No)は、TTMスコープ13を未観察のマークの座標位置に駆動させるため、S402に戻り、次の観察対象のマークを選択する。
【0080】
図11(B)は、図11(A)の状態から次の観察対象であるモールド3上の未観察のマーク20b、20d、20f、20hの座標位置に、TTMスコープ13の撮像エリア27a、27b、27c、27dの中心位置を駆動させた状態を表している。TTMスコープ13の駆動処理時間を最小限にするため、図11(A)の状態からの駆動量が最小となるような(B)の状態に駆動させている。
【0081】
図11(C)は、図11(B)の状態でマーク観察が終了した後の状態を表している。マーク20eは観察対象のマークではないため、TTMスコープ13駆動する必要はない。図11(C)の状態では、モールド3上に未観察のマークが存在していないので、マーク観察を終了する(図10、S407)。
【0082】
以上、本実施形態によれば、インプリント処理で使用するモールド上のアライメントマークをインプリント処理の実行前に観察することで、アライメントマークの異常を事前に検出することが可能となり、リワークの発生を低減することができる。
【0083】
<第2実施形態>
第2実施形態では、第1実施形態の図10で示したマーク観察結果の別の活用例として、TTMスコープ13の撮像エリアの中心位置に対するアライメントマークの中心位置の相対位置ずれ量を取得し、相対位置のずれを補正する方法について説明する。
【0084】
図10で示したS404のモールド上のアライメントマークの撮像において、TTMスコープ13をモールド上の観察対象のマークの座標位置に駆動させたとき、TTMスコープ13の撮像エリアの中心位置に対してマークの中心位置がずれることがある。これは、設計位置に対する装置の製造誤差やTTMスコープ13の駆動量のばらつき等の理由により発生する。また、TTMスコープ13はレンズを通して結像する光学スコープであり、撮像面に形成される光学像には収差が発生する。そのため、TTMスコープ13を用いてアライメントマークのマークパターンを観察する場合、TTMスコープ13の撮像エリアとマークパターンの中心位置にずれが生じると、撮像面に形成されるマークパターンの結像性能は収差により悪化する。モールドと基板との位置ずれ量の計測は、検出したマークパターンに基づいて行われる。そのため、マークパターンの結像性能の悪化は、インプリント処理中に行うモールドと基板との位置ずれ量計測の精度悪化に直結する。インプリント装置におけるモールドと基板との位置合わせの要求精度はnmオーダーであるため、収差による位置合わせの精度悪化は無視できない問題である。
【0085】
ここで、収差がマークパターンに与える影響について、図12を用いて説明する。図12は、収差がマークパターンに与える影響について説明する模式図である。図12(A)は、縦縞模様28のマークパターンを有する、撮像対象のアライメントマークを表す模式図である。図12(B)および(C)は、TTMスコープ13の撮像エリア29の一例を示す模式図である。図12(B)および(C)では、アライメントマークを撮像したときに撮像面に形成される光学像30aおよび30bを模式的に表している。図12においては、TTMスコープ13の撮像エリアの中心が光学中心であり、光学中心に近づくほど収差が小さくなるものとする。
【0086】
図12(B)は、TTMスコープ13の撮像エリア中心に対し、アライメントマークの中心がXY平面上において一致するように配置した例である。アライメントマーク全域が撮像エリアの中心付近に位置しているため、収差による影響はほとんどなく、精度よく光学像が形成されている。
【0087】
一方、図12(C)は、TTMスコープ13の撮像エリア中心に対し、アライメントマークの中心がXY平面上の離れた点に位置するように配置した例である。アライメントマーク全域が撮像エリアの端部付近に位置しているため、収差による影響が大きく、マークパターンがぼやけた光学像が形成されている。図12(C)は、収差がマークパターンの光学像に与える影響の一例であり、実際には光学系により、収差が光学像に与える影響は、ぼやけ、ゆがみ、曲がり等さまざまである。
【0088】
このような収差による結像性能の悪化を低減するためには、TTMスコープ13の撮像エリア中心に、マークパターン中心が重なるように調整する必要がある。つまり、TTMスコープ13の撮像エリア中心とマークパターン中心が一致するように相対位置ずれを補正することで、マークパターンの結像性能の悪化、およびモールドと基板との相対位置ずれ量計測の精度悪化を防ぐことができる。
【0089】
撮像エリア中心とマークパターン中心との相対位置ずれ量を計測する処理フローについて、図13を用いて説明する。図13は、第2実施形態に係るマーク観察処理を示すフロー図である。このフローチャートで示す各動作(ステップ)は、制御装置10のCPUの制御によって実行されうる。なお、本図において図10と同様のステップについては同じ番号を付して説明を省略し、差異についてのみ詳細に説明する。
【0090】
S405において、アライメントマークを正常に観察できた場合、続くS501で、制御装置10は、TTMスコープ13の撮像エリア中心(光学中心位置)とマークパターン中心位置との相対位置ずれ量を、例えば、計測して取得する。そして、計測値をずれ量の補正値として保持する。インプリント処理で使用する全てのマークに対しずれ量の補正値を取得し、全てのマーク観察が終了したら(S406、Yes)、マーク観察を終了する(S407)。
【0091】
続いて、撮像エリア中心とマークパターン中心との相対位置ずれ量を補正する処理フローについて、図14を用いて説明する。図14は、第2実施形態に係るインプリント処理を示すフロー図である。このフローチャートで示す各動作(ステップ)は、制御装置10のCPUの制御によって実行されうる。なお、本図において図3と同様のステップについては同じ番号を付して説明を省略し、差異についてのみ詳細に説明する。
【0092】
S201~S203の処理を実行した後、S601において、撮像エリア中心とマークパターン中心の相対位置ずれ量を補正する。具体的には、制御装置10は、図13のS501の処理で取得したずれ量の補正値に基づき、TTMスコープ13を駆動させる。相対位置のずれを補正した後、インプリントヘッドを下げてモールドを基板に押し付ける(S204)。
【0093】
ダイバイダイアライメント方式のインプリント装置においては、まず、前回ショット時に、撮像エリア中心とマークパターン中心とのずれ量の補正値を取得しておく。そして、次回ショット時に、前回のショット時に取得したずれ量の補正値に基づいて、相対位置ずれ量を補正することが可能である。しかしながら、ロット処理の最初に行う第一ショットは、前回ショットの計測結果が存在しないため、前回ショットに基づいた補正を行うことができない。また、前回ショットのアライメントマークに対し、次回ショットのアライメントマークの像高が異なる場合においては、前回ショットのずれ量補正値を適用することができない。このように、前回ショットのずれ量の補正値が存在しない場合、適用できない場合においては、本実施形態に係る補正方法が有効である。
【0094】
以上説明した通り、本実施形態によれば、マーク観察時に、撮像エリア中心とマークパターン中心との相対位置ずれ量を取得し、ずれ量を補正することで、精度良くモールドと基板との位置合わせを行うことができる。これにより、リワークの発生を低減することができる。
【0095】
<物品製造方法の実施形態>
インプリント装置を用いて形成した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサー、或いは、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサー、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
【0096】
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。
【0097】
次に、物品の具体的な製造方法について説明する。図15(A)に示すように、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコンウエハ等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面に組成物3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になった組成物3zが基板上に付与された様子を示している。
【0098】
図15(B)に示すように、インプリント用の型4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上の組成物3zに向け、対向させる。図15(C)に示すように、組成物3zが付与された基板1zと型4zとを接触させ、圧力を加える。組成物3zは型4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型4zを透して照射すると、組成物3zは硬化する。
【0099】
図15(D)に示すように、組成物3zを硬化させた後、型4zと基板1zを引き離すと、基板1z上に組成物3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凸部が硬化物の凹部に対応した形状になっており、即ち、組成物3zに型4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
【0100】
図15(E)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。図15(F)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。なお、型4zとして、凹凸パターンを設けた回路パターン転写用の型を用いた例について述べたが、凹凸パターンがない平面部を有する型(平面テンプレート)であってもよい。
【0101】
<その他の実施形態>
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【0102】
本発明は、上述の実施形態の1つ以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1つ以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0103】
本実施形態の開示は、以下の構成を含む。
(構成1)
モールドを用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント処理を実行するインプリント装置であって、
前記モールド上に形成された複数のモールド側マークを観察する観察手段と、
前記インプリント処理で使用する前記モールド側マークを選択し、前記インプリント処理の実行前に選択した前記モールド側マークを前記観察手段に観察させ、観察結果に基づいて前記インプリント処理の実行可否を判断する制御手段と、を有することを特徴とするインプリント装置。
【0104】
(構成2)
前記制御手段は、前記インプリント処理の対象である前記基板上に形成された複数の基板側マークの位置情報を取得し、取得された前記位置情報を用いて前記インプリント処理で使用する前記モールド側マークを選択することを特徴とする構成1に記載のインプリント装置。
【0105】
(構成3)
前記制御手段は、前記観察手段に観察させる前記モールド側マークの順番を、前記観察手段の駆動時間が閾値以下となるように決定することを特徴とする構成1または2に記載のインプリント装置。
【0106】
(構成4)
前記観察手段を駆動する駆動手段をさらに有し、
前記制御手段は、前記観察結果に基づいて、前記観察手段の撮像エリアの光学中心位置に対する前記モールド側マークの中心位置の相対位置のずれ量を取得し、前記相対位置のずれ量を補正するように前記観察手段を駆動させることを特徴とする構成1乃至3のいずれか1つに記載のインプリント装置。
【0107】
(構成5)
前記制御手段は、前記インプリント処理において、前記モールドと前記基板の相対位置のずれ量を検出するために使用する前記モールド側マークを選択することを特徴とする構成1乃至4のいずれか1つに記載のインプリント装置。
【0108】
(構成6)
前記インプリント装置は複数の前記観察手段を有し、
前記観察手段は、前記インプリント処理の実行前に観察した前記モールド側マークと同一の前記モールド側マークを、前記インプリント処理の実行中においても観察することを特徴とする構成1乃至5のいずれか1つに記載のインプリント装置。
【0109】
(構成7)
前記制御手段は、前記モールド側マークのパターン情報を含むレシピ情報を取得し、
前記観察結果は、前記モールド側マークが前記観察手段の撮像エリア内において、前記レシピ情報と一致するマークパターンが観察できたか否かの情報を含むことを特徴とする構成1乃至6のいずれか1つに記載のインプリント装置。
【0110】
(構成8)
前記制御手段は、前記インプリント処理の実行可否を判断した結果、実行不可であると判断した場合に、マーク異常を発報することを特徴とする構成1乃至7のいずれか1つに記載のインプリント装置。
【0111】
(構成9)
前記制御手段は、モールド保持部に保持された前記モールドの位置のずれ量が計測された後に、選択した前記モールド側マークを前記観察手段に観察させることを特徴とする構成1乃至8のいずれか1つに記載のインプリント装置。
【0112】
(方法1)
モールドを用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント処理を実行するインプリント方法であって、
前記モールド上に形成された複数のモールド側マークから、前記インプリント処理で使用する前記モールド側マークを選択し、前記インプリント処理の実行前に選択した前記モールド側マークを観察し、観察結果に基づいて前記インプリント処理の実行可否を判断することを特徴とするインプリント方法。
【0113】
(方法2)
請求項1に記載のインプリント装置を用いてパターンを基板に形成する工程と、
前記形成する工程でパターンを形成された前記基板を加工する加工工程と、を含み、
前記加工工程で加工された前記基板から物品を製造することを特徴とする物品の製造方法。
【符号の説明】
【0114】
1 インプリント装置
5 基板
3 モールド
4 インプリントヘッド
6 基板ステージ
10 制御装置
13 TTMスコープ
14 インプリント材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15