(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162751
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】インク吐出検査装置、インク吐出検査方法、インク吐出検査プログラム、インク吐出装置、および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20241114BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B41J2/165 501
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078615
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 康範
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EB08
2C056EB27
2C056EB39
2C056EB40
2C056FA04
(57)【要約】
【課題】ノズル毎のインク吐出状態を高精度に判定することが可能なインク吐出検査装置を提供する。
【解決手段】インク吐出装置に設けた複数のノズルからのインクの吐出状態を検査するためのインク吐出検査装置であって、前記各ノズルに電圧を印加して得られる残留振動の波形が示す特徴値について、前記ノズル毎に設定した判定閾値と比較することにより前記各ノズルにおけるインクの吐出状態を判定する波形判定部を備えたインク吐出検査装置である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク吐出装置に設けた複数のノズルからのインクの吐出状態を検査するためのインク吐出検査装置であって、
前記各ノズルに電圧を印加して得られる残留振動の波形が示す特徴値について、前記ノズル毎に設定した判定閾値と比較することにより前記各ノズルにおけるインクの吐出状態を判定する波形判定部を備えた
インク吐出検査装置。
【請求項2】
前記ノズル毎に設定した判定閾値を保持する判定閾値保持部を備えた
請求項1に記載のインク吐出検査装置。
【請求項3】
前記各ノズルは、印加電圧に応じて変形する圧電素子を用いて構成されたものである
請求項1に記載のインク吐出検査装置。
【請求項4】
前記波形判定部は、前記各ノズルについて、インクの吐出状態がインク不吐出であるか否かの判定を実施する
請求項1に記載のインク吐出検査装置。
【請求項5】
前記ノズル毎のインク吐出結果に基づいて前記判定閾値を設定する閾値設定制御部を備える
請求項1に記載のインク吐出検査装置。
【請求項6】
前記閾値設定制御部は、前記ノズル毎のインク吐出結果に基づいて、前記ノズル毎に設定した判定閾値を補正する
請求項5に記載のインク吐出検査装置。
【請求項7】
前記ノズル毎のインクの吐出結果に基づいて、前記各ノズルにおけるインクの吐出状態を判定するインク吐出結果判定部を備え、
前記閾値設定制御部は、前記ノズル毎に前記波形判定部での判定結果と前記インク吐出結果判定部での判定結果とを照合し、照合結果に基づいて前記ノズル毎に前記判定閾値を補正する
請求項6に記載のインク吐出検査装置。
【請求項8】
前記閾値設定制御部は、前記判定閾値のうち、前記波形判定部での判定結果と前記インク吐出結果判定部での判定結果とが不一致な不一致ノズルの判定閾値を補正する
請求項7に記載のインク吐出検査装置。
【請求項9】
前記ノズル毎のインク吐出結果は、前記ノズル毎のインク吐出によって形成された画像を画像読取装置で読み取った情報に対応する
請求項5に記載のインク吐出検査装置。
【請求項10】
前記画像はチャート画像である
請求項9に記載のインク吐出検査装置。
【請求項11】
前記ノズル毎のインク吐出結果は、前記各ノズルからのインクの吐出をレーザー光学センサーの遮光検出により取得した情報に対応する
請求項5に記載のインク吐出検査装置。
【請求項12】
前記ノズル毎のインク吐出結果は、前記インク吐出装置によって形成された画像を目視して取得した情報に対応する
請求項5に記載のインク吐出検査装置。
【請求項13】
前記判定閾値は、前記波形の振幅、周期、バイアスレベル、減衰率、および位相のうちの少なくとも一つに対して設定された値である
請求項1に記載のインク吐出検査装置。
【請求項14】
前記閾値設定制御部は、前記各ノズルに対し、前記照合結果に基づく前記判定閾値の変更を複数回行なうことにより、前記判定閾値を補正する
請求項7に記載のインク吐出検査装置。
【請求項15】
前記閾値設定制御部は、前記各ノズルに対し、異なる複数種類の判定閾値による複数回の照合を実施することにより、前記判定閾値を補正する
請求項7に記載のインク吐出検査装置。
【請求項16】
インク吐出装置に設けた複数のノズルからのインクの吐出状態を検査するインク吐出検査方法であって、
波形判定部は、前記各ノズルに電圧を印加して得られる残留振動の波形が示す特徴値について、前記ノズル毎に設定した判定閾値と比較することにより、前記各ノズルにおけるインクの吐出状態を判定する
インク吐出検査方法。
【請求項17】
インク吐出装置に設けた複数のノズルからのインクの吐出状態の検査をコンピュータに実行させるためのインク吐出検査プログラムであって、
波形判定部に対し、前記各ノズルに電圧を印加して得られる残留振動の波形が示す特徴値について、前記ノズル毎に設定された判定閾値と比較させることにより、前記各ノズルにおけるインクの吐出状態を判定させる
インク吐出検査プログラム。
【請求項18】
請求項1~請求項15のうちの何れか1項に記載のインク吐出検査装置を備えた
インク吐出装置。
【請求項19】
請求項18に記載のインク吐出装置と、
前記インク吐出装置によるインク吐出によって画像を形成する記録媒体を、前記インク吐出装置に対して所定の搬送方向に搬送する媒体搬送装置とを備えた
画像形成装置。
【請求項20】
さらに、前記インク吐出装置に対して前記搬送方向の下流側に配置され、前記記録媒体に形成された画像を読み取る画像読取部を備え、
前記インク吐出装置が備えるインク吐出検査装置は、前記画像読取部で読み取った画像に基づいて、前記インク吐出装置の各ノズルにおけるインクの吐出状態を判定するインク吐出結果判定部を備え、
前記インク吐出検査装置の閾値設定制御部は、前記インク吐出検査装置の波形判定部での判定結果と前記インク吐出結果判定部での判定結果とに基づいて、前記ノズル毎にインクの吐出状態を判定するための判定閾値を補正する
請求項19に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク吐出検査装置、インク吐出検査方法、インク吐出検査プログラム、インク吐出装置、および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の画像形成装置は、駆動素子によって各ノズルに設けた圧電素子を駆動させることにより、ノズルからインク滴を吐出させるインク吐出装置を有する。このようなインク吐出装置は、駆動素子に駆動電圧を印加した場合に生じる残留振動に基づいて、吐出不良が発生する不良ノズルを検出することが可能であり、不良ノズルの検出についての様々な方法が提案されている。例えば下記特許文献1には、「複数の検査対象ノズルに対応する複数の駆動素子を駆動させた後の残留振動を合成した第1検出信号に基づいて、1個の検査対象ノズルに対応する前記駆動素子を駆動させることにより得られる第2検出信号(残留振動)の判定に用いる閾値を補正する」と記載され、これにより、環境温度や経年変化に応じて閾値を補正することができ、より精度よくノズルの状態(ヘッド)を検査することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、インクを吐出するノズルは、容量にバラツキを有し、またノズルに設けた圧電素子も、弾性率および配線インピーダンスなどにバラツキを有する。このため、検査対象ノズルの判定に用いる閾値が、全ての検査対象ノズルに対して共通に用いられる特許文献1の技術では、検査対象ノズル毎に生じるこれらのバラツキを考慮した精度の高い判定を行うことができなかった。
【0005】
そこで本発明は、ノズル毎のインク吐出状態を高精度に判定することが可能なインク吐出検査装置、インク吐出検査方法、インク吐出検査プログラムを提供すること、さらには高精度に制御されたインク吐出による画像形成が可能なインク吐出装置、および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するための本発明は、インク吐出装置に設けた複数のノズルからのインクの吐出状態を検査するためのインク吐出検査装置であって、前記各ノズルに電圧を印加して得られる残留振動の波形が示す特徴値について、前記ノズル毎に設定した判定閾値と比較することにより前記各ノズルにおけるインクの吐出状態を判定する波形判定部を備えたインク吐出検査装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、ノズル毎のインク吐出状態を高精度に判定することが可能なインク吐出検査装置、インク吐出検査方法、インク吐出検査プログラムを提供すること、さらには高精度に制御されたインク吐出による画像形成が可能なインク吐出装置、および画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【
図2】実施形態に係る画像形成装置のインク吐出装置が有するヘッドユニットの底面図である。
【
図3】実施形態に係る画像形成装置の要部のブロックである。
【
図4】ノズルを有するインク室にパルス波を印加した場合に生じる残響波形を説明する図である。
【
図5】実施形態に係るインク吐出検査方法を示すフローチャート(その1)である。
【
図6】実施形態に係るインク吐出検査方法を示すフローチャート(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を適用したインク吐出検査装置、インク吐出検査方法、インク吐出検査プログラム、インク吐出装置、および画像形成装置の各実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
≪画像形成装置≫
図1は、実施形態に係る画像形成装置1の概略構成図である。この図に示す画像形成装置1は、インクジェット方式のものであって、記録媒体2の主面上にインク画像を形成するための装置である。記録媒体2は、シート状のものであって、枚葉シートであっても連続シートであってもよい。また記録媒体2は、布帛のような布材、普通紙、厚紙、薄紙、和紙、特殊紙、段ボール紙、樹脂フィルム、建材等の様々な材質のものが用いられる。
【0011】
このような画像形成装置1は、媒体搬送装置10、インク吐出装置20、画像読取装置30、インク吐出検査装置40、および操作部50を備えている。次に、これらの各構成要素の詳細を説明する。
【0012】
<媒体搬送装置10>
媒体搬送装置10は、複数の搬送ローラー11,12に無端状のベルト13を掛け回して構成されたものである。複数の搬送ローラー11,12のうちの1つは駆動ローラーであり、無端状のベルト13を回動させる。ベルト13は、外周面が吸着性を有し、外周面上部にシート状の記録媒体2を保持する。これにより、この媒体搬送装置10は、ベルト13に保持させた記録媒体2を、ベルト13の回動に追従する搬送方向[x]に搬送する構成となっている。
【0013】
<インク吐出装置20>
インク吐出装置20は、媒体搬送装置10に保持させた記録媒体2に対してインクを吐出させる複数のヘッドユニット21を備えている。これらのヘッドユニット21は、記録媒体2の搬送方向[x]に対して垂直な搬送幅方向[y]にわたって配置され、記録媒体2の搬送幅方向[y]にわたってインクを吐出する。
【0014】
このようなヘッドユニット21は、各インク色に対応して設けられており、各色のヘッドユニット21は、搬送方向[x]に沿って、任意に設定された配色順序で配列される。
【0015】
図2は、実施形態に係る画像形成装置のインク吐出装置が有する各ヘッドユニット21の底面図であり、
図1に示したヘッドユニット21のうちの1つを、媒体搬送装置10側から見た図である。
図1および
図2に示すヘッドユニット21は、媒体搬送装置10に向かうインク吐出面21aに沿って、複数のインクヘッド22を配列したものである。図示した例においては、2つのインクヘッド22を1組とし、複数組(ここでは8組)のインクヘッド22の組が、2列の千鳥状に配置された構成となっている。各インクヘッド22において、ヘッドユニット21のインク吐出面21aに配置された面には、複数のノズル23におけるインクの吐出開口が配列されている。
【0016】
各ノズル23は、インクを貯留するインク室と、インクを吐出する吐出開口とを有する。このうちインク室は、底面にヘッドチップが配置された構成のものである。ヘッドチップは、インク液滴吐出のための駆動源として圧電素子を用いたピエゾ方式のものが用いられる。
【0017】
図3は、実施形態に係る画像形成装置1の要部のブロックである。
図3に示すように、インク吐出装置20の各インクヘッド22は、駆動素子としてのパルス駆動部24によって印加された駆動電圧(パルス波)を、信号切替部25での切り替えにより、それぞれのタイミングで各ノズル23に印加する。これにより、各ノズル23は、それぞれのタイミングでインクを吐出し、媒体搬送装置10によって搬送されている記録媒体2(
図1参照)に対してインクを着弾させることで、記録媒体2上に画像を形成する。
【0018】
<画像読取装置30>
図1に戻り、画像読取装置30は、インク吐出装置20よりも搬送方向[x]の下流側において、媒体搬送装置10によって搬送される記録媒体2に対向して配置されている。この画像読取装置30は、例えば搬送幅方向[y]にわたって撮像素子をライン状に配列させたラインセンサーであり、ヘッドユニット21の配置部を通過した記録媒体2の表面を撮像する。またこの画像読取装置30は、撮像素子を二次元的に配列させたものであってもよい。
【0019】
<インク吐出検査装置40>
インク吐出検査装置40は、インク吐出装置20の各ノズル23(
図2参照)からのインク吐出状態を判定する部分である。このインク吐出検査装置40は、計算機によって構成されている。計算機は、いわゆるコンピュータとして用いられるハードウェアである。計算機は、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などの記憶装置を備える。さらに、計算機は、不揮発性の記憶部およびネットワークインタフェースを備える。
【0020】
このようなインク吐出検査装置40は、インク吐出装置20の制御部に組み込まれた構成のものであって、インク吐出装置20の一部として設けられていてもよい。
【0021】
図3に示すように、インク吐出検査装置40は、残響波形取得部41、判定閾値保持部42、残響波形判定部43、閾値設定制御部44、読取画像取得部45、読取画像判定部46、判定結果照合部47、および入出力制御部48を備えている。これらの各機能要素は、インク吐出検査装置40を構成するROMに保存されたインク吐出検査プログラム、または操作部50や他の外部装置からRAMや記憶部にロードされて保存されたインク吐出検査プログラムを実行する部分である。以下、これらの各機能要素を説明する。
【0022】
[残響波形取得部41]
残響波形取得部41は、インク吐出装置20が有するインクヘッド22の各ノズル23から、インク吐出装置20の各インクヘッド22が有する信号切替部25から残響波形を取得する。ここで、残響波形取得部41が取得する残響波形を説明する。
【0023】
図4は、ノズルにパルス波[p]を印加した場合の残響波形[R]を説明する図である。
図4に示すように、残響波形[R]とは、ノズル23に対し、パルス駆動部24(
図3参照)からパルス波[p]を加えた場合、その直後にノズルに生じる残留振動を電圧波形としてとらえた波形である。このような残響波形[R]は、ノズルからのインクの吐出状態によって異なる波形となる。すなわち、インクの吐出状態が正常である正常ノズルから得られる正常波形[Ra]と、インクの吐出状態が異常であるインク不吐出ノズルから得られる異常波形[Rb]とは、振幅、周期、バイアスレベル(平均バイアス)、減衰率、および位相などの特徴値が異なる。
【0024】
[判定閾値保持部42]
図3に戻り、判定閾値保持部42は、残響波形に基づいて各ノズル23a,23b,23c,…からのインク吐出状態を判定するための判定閾値を保持する。判定閾値保持部42は、各ノズル23a,23b,23c,…について、それぞれ個別に設定された各判定閾値を保持する。判定閾値は、信号切替部25から取得した残響波形[R]の特徴値である振幅、周期、バイアスレベル(平均バイアス)、減衰率、および位相のうちの少なくとも1つに対して設定された値である。
【0025】
このような判定閾値は、予め設定された初期値であるか、または次に説明する閾値設定制御部44において初期値を補正した値、または閾値設定制御部44において補正した値を閾値設定制御部44においてさらに補正した値であることとする。判定閾値保持部42が保持する判定閾値の初期値の設定の手順は、以降のインク吐出検査方法において詳細に説明する。
【0026】
[残響波形判定部43]
残響波形判定部43は、残響波形取得部41で取得したノズル23毎の残響波形[R]が示す特徴値と、判定閾値保持部42に保持されたノズル毎の判定閾値とを比較することにより、各ノズルについて個別にインクの吐出状態を判定する。
【0027】
残響波形判定部43によるインクの吐出状態の判定は、例えば各ノズルが、正常にインクを吐出している正常ノズルであるか、インクの吐出状態が正常ではない欠陥ノズルであるかの判定である。例えば、振幅、周期などの各特徴値が、それぞれに設定した判定閾値の範囲内である場合に、正常にインクを吐出している正常ノズルであると判定し、それ以外の場合には、インクの吐出状態が正常ではない欠陥ノズルであると判定する。また、欠陥ノズルは、インク不吐出である場合とともに、インクを吐出していても吐出量が異常なノズルである場合を含んでもよい。また、残響波形判定部43によるインクの吐出状態の判定は、正常ノズルであるか欠陥ノズルであるかの判定だけではなく、さらに欠陥ノズルについては、インク不吐出ノズルであるか、吐出量異常ノズルであるかの判定を実施してもよい。
【0028】
[閾値設定制御部44]
閾値設定制御部44は、ノズル毎のインク吐出結果に基づいて、残響波形取得部41で取得したノズル23毎の残響波形[R]に対する判定閾値を設定し、設定した判定閾値を判定閾値保持部42に保持させる。
【0029】
さらに閾値設定制御部44は、以降に説明する判定結果照合部47において抽出した判定の各不一致ノズルに対する判定閾値を補正する。また、判定閾値保持部42に保持された不一致ノズルに対する判定閾値を、補正した値に更新させる。なお、閾値設定制御部44による判定閾値の設定および補正は、以降のインク吐出検査方法において詳細に説明する。
【0030】
[読取画像取得部45]
読取画像取得部45は、画像読取装置30で読み取った読取画像の画像データを取得する。読取画像取得部45が取得する読取画像の画像データは、ノズル毎のインクの吐出結果として形成されるチャート画像のデータである。読取画像取得部45による画像データの取得のタイミングは、以降のインク吐出検査方法において詳細に説明する。
【0031】
[読取画像判定部46]
読取画像判定部46は、インク吐出結果判定部の一例として設けられたものであり、画像読取装置30から取得した画像データに基づいて、各ノズルからのインクの吐出状態を判定する。読取画像判定部46によるインクの吐出状態の判定は、残響波形判定部43での判定と同様に、各ノズルが、正常ノズルであるか欠陥ノズルであるかの特定、さらに欠陥ノズルについては、インク不吐出ノズルであるか、吐出量異常ノズルであるかの特定である。
【0032】
なお、このインク吐出検査装置40は、読取画像判定部46に換えて、画像判定結果取得部を有していてもよい。画像判定結果取得部は、画像読取装置30で読み取った画像に基づいて判定された各ノズルにおけるインクの吐出状態の判定結果を、例えば操作部50から取得する。この場合、各ノズルにおけるインクの吐出状態の判定は、目視で実施してもよい。
【0033】
[判定結果照合部47]
判定結果照合部47は、残響波形判定部43での判定結果と、読取画像判定部46での判定結果とをノズル毎に照合し、判定結果が異なるノズルを、不一致ノズルとして抽出する。この場合、判定結果照合部47は、残響波形判定部43では正常ノズル、読取画像判定部46では欠陥ノズルと判定されたノズルを抽出するか、または残響波形判定部43では欠陥ノズル、読取画像判定部46では正常ノズルと判定された各ノズルを抽出する。
【0034】
また、判定結果照合部47は、全てのノズルについて、所定回数の比較を実施したか否かの判断を実施し、所定回数に達していなかった場合には、残響波形の取得と不一致ノズルの抽出とを繰り返す。なお、判定結果照合部47による繰り返しのタイミングは、以降の以降のインク吐出検査方法において詳細に説明する。
【0035】
[入出力制御部48]
入出力制御部48は、操作部50からの指示に基づいて、媒体搬送装置10(
図1参照)およびインク吐出装置20を駆動させることで、媒体搬送装置10に保持された記録媒体に対するチャート画像の形成処理を実施させる。また入出力制御部48は、画像読取装置30の駆動により、記録媒体2に形成されたチャート画像の読み取りを実施する。さらに、入出力制御部48は、インク吐出装置20のパルス駆動部24を駆動させることで、各ノズル23に、テストパルスを印加させ、その際の残響波形を残響波形判定部43に取得させる。
【0036】
<操作部50>
操作部50は、この画像形成装置1において実施される画像形成に関する各種の指示や設定を入力する部分である。例えばこの操作部50からは、インク吐出装置20に対するインク吐出検査の開始の指示が入力され、また判定閾値保持部42が保持する判定閾値の初期値が入力される。またこのような操作部50は、表示部を有していてもよく、画像読取装置30で読み取った画像を表示する構成であってもよい。さらにこのような操作部50は、ここでの図示を省略した画像形成装置1の制御部や、インク吐出検査装置40との間でデータの受け渡しのための通信が可能なパーソナルコンピューターや、プリンターコントローラーなどの外部装置であってもよい。
【0037】
≪インク吐出検査方法≫
次に、実施形態に係るインク吐出検査方法を説明する。
図5および
図6は、実施形態に係るインク吐出検査方法を示すフローチャート(その1)および(その2)であって、先に説明したインク吐出検査装置40の各機能要素が、インク吐出検査プログラムを実行することによって実施される手順を示す。このうち、
図5は、インク吐出検査の手順を示すフローチャートであり、
図6は、インク吐出検査に際して実施される判定閾値の補正手順を示すフローチャートである。以下、
図5および
図6フローチャートに示す順に、
図1~
図4を参照しつつ、実施形態に係るインク吐出検査方法を説明する。
【0038】
<インク吐出検査の手順>
先ず、
図5のフローチャートに示す順に、
図1~
図4を参照しつつ、インク吐出検査の手順を説明する。
【0039】
[ステップS11(
図5)]
ステップS11において、入出力制御部48は、操作部50からの検査開始の指示に基づいて、インク吐出装置20のパルス駆動部24に対して、インク吐出装置20が有するインクヘッド22の各ノズル23にテストパルスを印加させる。これにより、残響波形取得部41は、ノズル23毎の各残響波形[R]を取得する。
【0040】
この際、入出力制御部48は、インクを吐出しない程度のテストパルスを、記録媒体2に対する画像形成の合間に、各ノズル23に印加する。記録媒体2に対する画像形成の合間とは、例えば媒体搬送装置10によって搬送される記録媒体2と記録媒体2との間の紙間にインク吐出装置20が位置している状態である。また、記録媒体2に対向してインク吐出装置20が位置している状態であっても、インク吐出による画像形成を実施していない状態のノズルは、記録媒体2に対する画像形成の合間のノズルであるとしてテストパルスを印加してもよい。
【0041】
[ステップS12(
図5)]
ステップS12において、残響波形判定部43は、ステップS11で取得したノズル23毎の各残響波形[R]が示す特徴値と、判定閾値保持部42に保持されたノズル毎の判定閾値とを比較することにより、各ノズルについて個別にインクの吐出状態を判定する。残響波形判定部43によるノズル23毎のインクの吐出状態の判定は、残響波形判定部43の項目で述べた通りである。
【0042】
残響波形判定部43は、判定結果を、操作部50に出力する。これにより、画像形成装置1のオペレーターは、インク吐出装置20が有するインクヘッド22の各ノズル23のインク吐出状態を確認し、インクの吐出状態が正常ではない欠陥ノズルの修復を図ることができる。
【0043】
<判定閾値の補正手順>
次に、
図6のフローチャートに示す順に、
図1~
図4を参照しつつ、インク吐出検査に際して実施される判定閾値の補正手順を説明する。
【0044】
[ステップS100(
図6)]
ステップS100において、閾値設定制御部44は、操作部50からの判定閾値の設定指示に基づいて、残響波形取得部41が取得したノズル毎の残響波形[R]に対して、各残響波形[R]の各特徴値に対する判定閾値を設定する。残響波形[R]の取得は、ステップ11で説明した手順と同様に実施される。また、判定閾値を設定する残響波形[R]の特徴値は、振幅、周期、バイアスレベル(平均バイアス)、減衰率、および位相のうちの少なくとも1つであることとする。
【0045】
ただし判定閾値を設定するための残響波形[R]の取得に先立ち、先ず、チャート図形の確認によって検知した初期の欠陥ノズルについて、洗浄、加圧などによって機能回復させた状態としておく。この状態において、各ノズル23に対し、同一のテストパルスをパルス駆動部24により印加してノズル毎の残響波形を取得し、取得した各残響波形[R]に対して、判定閾値の初期値を設定する。これにより、インク吐出結果が正常であると判定された状態の各ノズルの残響波形[R]に基づいて、各ノズルの判定閾値を設定する。閾値設定制御部44は、設定したノズル23毎の判定閾値を、判定閾値保持部42に保存させる。
【0046】
なお、各残響波形[R]に対する判定閾値の初期値の設定は、インク吐出検査装置40の外部で実施してもよい。この場合、外部で設定した判定閾値の初期値は、操作部50からインク吐出検査装置40に入力され、判定閾値保持部42に保存される。また判定閾値の初期値は、各ノズルに対して共通のデフォルト値を設定してもよい。
【0047】
[ステップS101]
ステップS101において、入出力制御部48は、操作部50からの指示に基づいて、媒体搬送装置10およびインク吐出装置20に対して、判定用画像の形成処理を実行させる。ここで形成する判定用画像は、ノズル欠陥を検出するためのチャート画像である。
【0048】
[ステップS102]
ステップS102において、入出力制御部48は、画像読取装置30に対してステップS101で形成した判定画像の読み取りを実行させる。また、読取画像取得部45は、画像読取装置30で読み取った判定画像を取得する。
【0049】
[ステップS103]
ステップS103において、読取画像判定部46は、読取画像取得部45で取得した判定画像に基づいて、各ノズルについて個別にインク吐出状態を判定する。読取画像判定部46による各ノズルについてのインク吐出状態の判定は、読取画像判定部46の項目で述べた通りである。
【0050】
なお、このインク吐出検査装置40が、読取画像判定部46に換えて、画像判定結果取得部を有していている場合、上述したステップS101~S103に換えて、外部で特定した各ノズルについてのインク吐出状態の特定結果を、例えば操作部50から取得するステップを実施する。この場合、例えば、ノズル欠陥を検出するためのチャート画像に基づいて、目視によって各ノズルについてのインク吐出状態の特定を実施すればよい。
【0051】
[ステップS104]
ステップS104において、入出力制御部48は、インク吐出装置20のパルス駆動部24の制御により、各ノズル23に対してテストパルスを印加し、その際に発生する各ノズル23の残響波形を残響波形取得部41に取得させる。この際、印加するテストパルスは、判定閾値の初期値を設定した場合(ステップ100)およびインク吐出検査(ステップS11)においてテストパルスと同一であることとする。
【0052】
[ステップS105]
ステップS105において、残響波形判定部43は、ステップS104で取得した各ノズルの残響波形と判定閾値保持部42が保持する各ノズルについての判定閾値とに基づいて、各ノズルについて個別にインク吐出状態を特定する。残響波形判定部43による各ノズルについてのインク吐出状態の特定は、残響波形判定部43の項目で述べた通りである。
【0053】
[ステップS106]
ステップS106において、判定結果照合部47は、ステップS103における読取画像判定部46での判定結果と、ステップS105における残響波形判定部43での判定結果とを照合し、全てのノズルの判定結果が一致しているか否かを判断する。判定結果照合部47は、全てのノズルの特定結果が一致している(YES)と判断した場合には、ステップS108に進み、それ以外の場合にはステップS107に進む。
【0054】
[ステップS107]
ステップS107において、閾値設定制御部44は、ステップS106において判定結果が異なる不一致ノズルとして抽出された全てのノズルについて、判定閾値保持部42に保持されている判定閾値の補正を実施する。
【0055】
例えば、
図4に示した例では、正常波形[Ra]に対して、異常波形[Rb]においては、振幅が小さく、周期が小さく、平均バイアス値が低い傾向にある。このため、残響波形判定部43では正常ノズル、読取画像判定部46ではインク不吐出ノズルと判定されたノズルの場合、振幅の最小閾値を大きくするか、周期の最小閾値を大きくするか、平均バイアス値の最小閾値を高くするかのうちの少なくとも1つの補正を実施する。また残響波形判定部43ではインク不吐出ノズル、読取画像判定部46では正常ノズルと判定されたノズルの場合、振幅の最小閾値を小さくするか、周期の最小閾値を小さくするか、平均バイアス値の最小閾値を低くするかのうちの少なくとも1つの補正を実施する。
【0056】
閾値設定制御部44は、各ノズルについて補正した判定閾値を、判定閾値保持部42に上書き保存させる。その後、ステップS104に戻り、以降を繰り返す。
【0057】
[ステップS108]
ステップS108において、判定結果照合部47は、ステップS106において、不一致ノズルと判定したノズルについての判定閾値の補正回数が、所定回数に達したか否かを判断する。判定結果照合部47は、所定回数に達した(YES)と判断した場合に、処理を終了させる。一方、所定回数に達していない(NO)と判断した場合には、ステップS107に進む。
【0058】
これにより、最初のステップS106において、不一致ノズルと判定されたノズルは、以降の繰り返しで実施されるステップS106において不一致ノズルと判定されない場合であっても、ステップS107において判定閾値の補正(変更)が所定回数だけ繰り返し実施されることになる。
【0059】
また、判定閾値が、異なる複数種類の特徴値に対して設定されている場合、所定回数だけ繰り返して実施されるステップS107においては、異なる特徴値に対する判定閾値の変更を実施する。これにより、最初のステップS106において不一致ノズルと判定されたノズルに対し、異なる複数種類の判定閾値による複数回の照合を実施し、判定閾値の精度の向上を図る。
【0060】
≪実施形態の効果≫
以上説明した実施形態によれば、ノズル23毎の残留波形に対して個別に設定した判定閾値に基づいて、各ノズル23のインク吐出状態を判定することにより、ノズル毎の容量のバラツキやノズルに設けた圧電素子の弾性率および配線インピーダンスなどのバラツキに依らずに、ノズル毎のインク吐出状態を高精度に判定することが可能となる。
【0061】
また、ノズル毎の残留波形に基づくにインク吐出状態の判定結果と、インク吐出結果としてのチャート画像に基づくインク吐出状態の判定結果とを照合することで、ノズル毎に個別に設定した判定閾値を補正する構成であるため、各ノズルからの実際のインク吐出結果に基づいてノズル毎の判定閾値を高精度に補正することが可能である。これにより、ノズル毎に高精度に補正された判定閾値を用いて、上述したバラツキに依存しないノズル毎のインク吐出状態の判定を実施することができる。
【0062】
また以上のように、ノズルからのインク吐出状態を精度良好に判定可能となることにより、精度の高いインク吐出による高精細な画像形成が可能となる。
【0063】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、さらに様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施形態においては、ノズル毎のインク吐出結果として、画像読取装置30で読み取ったチャート画像の画像データを例示した。しかしながら、ノズル毎のインク吐出結果は、各ノズルからのインク吐出を直接検知した結果であってもよい。この場合、画像読取装置30に換えて、各ノズルからのインクの吐出を検知するレーザー光学センサーを設ける。そして、光学センサーの発光部で発光させたレーザー光の遮光検出の結果を、各ノズルからのインクの吐出結果とすることができる。
【符号の説明】
【0064】
1…画像形成装置
2…記録媒体
10…媒体搬送装置
20…インク吐出装置
23,23a,23b,…ノズル
30…画像読取装置
40…インク吐出検査装置
42…判定閾値保持部
43…残響波形判定部(波形判定部)
44…閾値設定制御部
46…読取画像判定部(インク吐出結果判定部)
[R],[Ra],[Rb]…残響波形