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2024-162759電線評価装置、電線評価方法および電線評価プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162759
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】電線評価装置、電線評価方法および電線評価プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/00 20060101AFI20241114BHJP
   G01M 17/007 20060101ALN20241114BHJP
【FI】
G01R31/00
G01M17/007 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078627
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000682
【氏名又は名称】弁理士法人ワンディ-IPパ-トナ-ズ
(72)【発明者】
【氏名】岡山 直樹
(72)【発明者】
【氏名】奥村 宗一郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 淳
(72)【発明者】
【氏名】三浦 勝司
(72)【発明者】
【氏名】松本 悠希
【テーマコード(参考)】
2G036
【Fターム(参考)】
2G036AA24
2G036BA10
2G036BB20
2G036CA07
2G036CA08
(57)【要約】
【課題】電線の状態を簡単に評価する。
【解決手段】電線評価装置は、撮像装置によって撮像された電線の撮像画像を取得する第1取得部と、前記第1取得部によって取得された前記撮像画像に基づいて、前記電線の3次元画像を作成する作成部と、前記作成部によって作成された前記3次元画像に基づいて、前記電線に対する負荷を評価する評価処理を行う評価部とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置によって撮像された電線の撮像画像を取得する第1取得部と、
前記第1取得部によって取得された前記撮像画像に基づいて、前記電線の3次元画像を作成する作成部と、
前記作成部によって作成された前記3次元画像に基づいて、前記電線に対する負荷を評価する評価処理を行う評価部とを備える、電線評価装置。
【請求項2】
前記第1取得部は、変位している前記電線の複数の状態にそれぞれ対応する複数の前記撮像画像を取得し、
前記作成部は、前記撮像画像ごとに前記3次元画像を作成し、
前記評価部は、さらに、前記作成部によって作成された複数の前記3次元画像に基づいて、前記負荷に応じた前記電線の変位を表す変位値の、前記状態間の変化量を算出する、請求項1に記載の電線評価装置。
【請求項3】
前記評価部は、前記評価処理において、算出した前記変化量に基づいて、前記電線の寿命に関する判断を行う、請求項2に記載の電線評価装置。
【請求項4】
前記電線評価装置は、さらに、
前記変化量と前記寿命に関する情報との対応関係を示す対応情報を取得する第2取得部を備え、
前記評価部は、前記評価処理において、算出した前記変化量、および前記第2取得部によって取得された前記対応情報に基づいて、前記寿命に関する判断を行う、請求項3に記載の電線評価装置。
【請求項5】
前記電線の変位は、前記電線の組み付け先の通常時における変位である、請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の電線評価装置。
【請求項6】
前記評価部は、前記変化量として、前記状態間の、前記電線の曲率半径の変化量、および前記電線のねじれ角の変化量を算出する、請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の電線評価装置。
【請求項7】
電線評価装置における電線評価方法であって、
撮像装置によって撮像された電線の撮像画像を取得するステップと、
取得した前記撮像画像に基づいて、前記電線の3次元画像を作成するステップと、
作成した前記3次元画像に基づいて、前記電線に対する負荷を評価する評価処理を行うステップとを含む、電線評価方法。
【請求項8】
電線評価装置において用いられる電線評価プログラムであって、
コンピュータを、
撮像装置によって撮像された電線の撮像画像を取得する第1取得部と、
前記第1取得部によって取得された前記撮像画像に基づいて、前記電線の3次元画像を作成する作成部と、
前記作成部によって作成された前記3次元画像に基づいて、前記電線に対する負荷を評価する評価処理を行う評価部、
として機能させるための、電線評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電線評価装置、電線評価方法および電線評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両およびロボットアーム等に組み付けられる電線が開発されている。たとえば、特許文献1(特開2021-44126号公報)には、以下のような車両用ワイヤハーネスが開示されている。すなわち、車両用ワイヤハーネスは、複数のケーブルと、前記複数のケーブルを収容するシースと、前記シースの端部に設けられた樹脂モールド部材とを備え、前記樹脂モールド部材は、前記シースの端部を保持するシース保持部と、前記シースの端部から延出された前記複数のケーブルのそれぞれの一部を保持するケーブル保持部と、取付対象に固定される固定部とを一体に有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-44126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電線の開発では、組み付け先における電線の状態を想定した試験を繰り返し行う場合があり、この場合、多くの時間およびコストを要する。電線の状態を簡単に評価することにより、電線の開発を効率的に行う技術が望まれている。
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、電線の状態を簡単に評価することが可能な電線評価装置、電線評価方法および電線評価プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の電線評価装置は、撮像装置によって撮像された電線の撮像画像を取得する第1取得部と、前記第1取得部によって取得された前記撮像画像に基づいて、前記電線の3次元画像を作成する作成部と、前記作成部によって作成された前記3次元画像に基づいて、前記電線に対する負荷を評価する評価処理を行う評価部とを備える。
【0007】
本開示の一態様は、このような特徴的な処理部を備える電線評価装置として実現され得るだけでなく、電線評価装置の一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得たり、電線評価装置を含むシステムとして実現され得る。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、電線の状態を簡単に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の実施の形態に係る電線評価システムの構成の一例を示す図である。
図2図2は、本開示の実施の形態に係る電線評価システムの評価対象である電線の変位を説明するための図である。
図3図3は、本開示の実施の形態に係る電線評価装置の構成の一例を示す図である。
図4図4は、2次元画像を用いて電線の曲率半径を測定する場合における課題を説明するための図である。
図5図5は、本開示の実施の形態に係る電線評価装置が所定期間において作成した3次元画像の個数と、曲率変化量との関係を説明するための図である。
図6図6は、本開示の実施の形態に係る電線評価装置における曲率半径の測定結果の一例を示す図である。
図7図7は、本開示の実施の形態に係る電線評価装置におけるねじれ角の測定結果の一例を示す図である。
図8図8は、本開示の実施の形態に係る電線評価装置が保存する対応情報を概念的に示す図である。
図9図9は、本開示の実施の形態に係る電線評価装置が評価処理を行う際の動作手順を定めたフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
最初に、本開示の実施の形態の内容を列記して説明する。
(1)本開示の実施の形態に係る電線評価装置は、撮像装置によって撮像された電線の撮像画像を取得する第1取得部と、前記第1取得部によって取得された前記撮像画像に基づいて、前記電線の3次元画像を作成する作成部と、前記作成部によって作成された前記3次元画像に基づいて、前記電線に対する負荷を評価する評価処理を行う評価部とを備える。
【0011】
このように、電線の撮像画像に基づいて作成した3次元画像を用いて当該電線に対する負荷を評価する構成により、たとえば、電線の試作品を用いた試験を行う必要がなく、電線の状態を簡単に評価することができる。これにより、電線の開発時間を短縮することができ、電線の開発コストを削減することができる。
【0012】
(2)上記(1)において、前記第1取得部は、変位している前記電線の複数の状態にそれぞれ対応する複数の前記撮像画像を取得してもよく、前記作成部は、前記撮像画像ごとに前記3次元画像を作成してもよく、前記評価部は、さらに、前記作成部によって作成された複数の前記3次元画像に基づいて、前記負荷に応じた前記電線の変位を表す変位値の、前記状態間の変化量を算出してもよい。
【0013】
このような構成により、たとえば組み付け先等における電線の変位を模擬した場合において、当該変位を表す変位値の変化量をより正確に把握することができる。
【0014】
(3)上記(2)において、前記評価部は、前記評価処理において、算出した前記変化量に基づいて、前記電線の寿命に関する判断を行ってもよい。
【0015】
このような構成により、たとえば電線の変位を模擬した場合の変化量を用いて、より正確な寿命判断を行うことができる。
【0016】
(4)上記(3)において、前記電線評価装置は、さらに、前記変化量と前記寿命に関する情報との対応関係を示す対応情報を取得する第2取得部を備えてもよく、前記評価部は、前記評価処理において、算出した前記変化量、および前記第2取得部によって取得された前記対応情報に基づいて、前記寿命に関する判断を行ってもよい。
【0017】
このような構成により、たとえば電線の変位を模擬した場合の変化量を用いて、電線の寿命に関する判断を簡単に行うことができる。
【0018】
(5)上記(2)から(4)のいずれかにおいて、前記電線の変位は、前記電線の組み付け先の通常時における変位であってもよい。
【0019】
このような構成により、電線評価装置が、組み付け先において想定される電線の状態を検査するシステムに用いられる場合、組み付け先の通常時における電線に対する負荷をより正確に評価することができる。また、電線評価装置が、組み付け先において想定される電線の変位を監視するシステムにおいて用いられる場合、組み付け先の通常時における電線の変位を把握することにより、組み付け先の異常時における電線の変位を間接的に把握することができる。
【0020】
(6)上記(2)から(5)のいずれかにおいて、前記評価部は、前記変化量として、前記状態間の、前記電線の曲率半径の変化量、および前記電線のねじれ角の変化量を算出してもよい。
【0021】
このような構成により、電線の変位量として、より有用な情報を得ることができる。
【0022】
(7)本開示の実施の形態に係る電線評価方法は、電線評価装置における電線評価方法であって、撮像装置によって撮像された電線の撮像画像を取得するステップと、取得した前記撮像画像に基づいて、前記電線の3次元画像を作成するステップと、作成した前記3次元画像に基づいて、前記電線に対する負荷を評価する評価処理を行うステップとを含む。
【0023】
このように、電線の撮像画像に基づいて作成した3次元画像を用いて当該電線に対する負荷を評価する構成により、たとえば、電線の試作品を用いた試験を行う必要がなく、電線の状態を簡単に評価することができる。これにより、電線の開発時間を短縮することができ、電線の開発コストを削減することができる。
【0024】
(8)本開示の実施の形態に係る電線評価プログラムは、電線評価装置において用いられる電線評価プログラムであって、コンピュータを、撮像装置によって撮像された電線の撮像画像を取得する第1取得部と、前記第1取得部によって取得された前記撮像画像に基づいて、前記電線の3次元画像を作成する作成部と、前記作成部によって作成された前記3次元画像に基づいて、前記電線に対する負荷を評価する評価処理を行う評価部、として機能させるためのプログラムである。
【0025】
このように、電線の撮像画像に基づいて作成した3次元画像を用いて当該電線に対する負荷を評価する構成により、たとえば、電線の試作品を用いた試験を行う必要がなく、電線の状態を簡単に評価することができる。これにより、電線の開発時間を短縮することができ、電線の開発コストを削減することができる。
【0026】
以下、本開示の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0027】
[電線評価システム]
図1は、本開示の実施の形態に係る電線評価システムの構成の一例を示す図である。図1を参照して、電線評価システム501は、カメラ21と、電線評価装置101と、表示装置151とを備える。カメラ21は、撮像装置の一例である。
【0028】
電線評価装置101は、組み付け先に組み付けられる前における電線11の状態を評価する。一例として、電線評価装置101は、電線11の寿命を評価する。そして、電線評価装置101は、評価結果を示す画面を表示装置151に表示する処理を行う。表示装置151は、たとえば有線で電線評価装置101と接続されている。なお、電線評価装置101および表示装置151は、一体化されてもよい。
【0029】
電線11は、電力および制御信号の少なくともいずれか一方を伝送する。電線11は、たとえばハーネスである。電線11は、たとえば、車両におけるサスペンション等に組み付けられる。なお、電線11は、車両に限らず、ロボットアーム等の他の装置に組み付けられてもよい。
【0030】
電線11は、たとえば、組み付け先に固定される固定部11aを含む。図1に示す例では、電線11は、複数の固定部11aを含む。なお、電線11は、複数の固定部11aを含む構成に限らず、1つの固定部11aを含んでもよい。
【0031】
図2は、本開示の実施の形態に係る電線評価システムの評価対象である電線の変位を説明するための図である。
【0032】
図2を参照して、たとえば、電線11は、組み付け先の通常時を模擬して変位する。すなわち、電線11の変位は、一例として組み付け先の通常時における変位である。具体的には、たとえば、電線11は、図示しないアクチュエータによって駆動されることで変位する。たとえば、電線11は、屈曲変位し、かつねじれ変位する。図2は、電線11の屈曲変位の一例を示している。
【0033】
図2に示す例では、電線11の状態は、時刻t1において、伸長している状態(以下、「伸長状態」とも称する。)である。次に、電線11は、時刻t2において、紙面下側に凸となるように屈曲している状態に変位する。次に、電線11は、時刻t3において伸長状態に変位する。次に、電線11は、時刻t4において紙面上側に凸となるように屈曲している状態に変位する。
【0034】
再び図1を参照して、カメラ21は、変位している電線11を撮像する。たとえば、電線評価システム501は、複数のカメラ21を備える。図1では、電線評価システム501が2つのカメラ21を備える例を示している。
【0035】
たとえば、各カメラ21の撮像領域は、少なくとも一部が互いに異なる。たとえば、電線評価システム501において、2つのカメラ21が設けられ、各カメラ21の撮像画像に基づいて電線11の3次元画像が作成される場合、当該2つのカメラ21の撮像領域は、一部重複する。各カメラ21は、たとえば有線で電線評価装置101と接続されている。なお、電線評価システム501は、複数のカメラ21を備える構成に限らず、1つのカメラ21を備える構成であってもよい。また、各カメラ21は、無線伝送路を介して電線評価装置101と接続される構成であってもよい。
【0036】
[電線評価装置]
図3は、本開示の実施の形態に係る電線評価装置の構成の一例を示す図である。図3を参照して、電線評価装置101は、画像取得部51と、作成部52と、評価部53と、記憶部54とを備える。画像取得部51、作成部52および評価部53の一部または全部は、たとえば、1または複数のプロセッサを含む処理回路(Circuitry)により実現される。記憶部54は、たとえば上記処理回路に含まれる不揮発性メモリである。画像取得部51は、第1取得部の一例である。評価部53は、第2取得部の一例である。
【0037】
(画像取得部)
図1および図3を参照して、画像取得部51は、カメラ21によって撮像された電線11の撮像画像を取得する。たとえば、画像取得部51は、変位している電線11の複数の状態にそれぞれ対応する複数の撮像画像を取得する。当該撮像画像は、対応する撮像時刻における電線11の屈曲およびねじれ等の変位を示す。
【0038】
より詳細には、画像取得部51は、電線11の変位の始点、当該変位の終点、および当該変位の1つ以上の中途点にそれぞれ対応する複数の撮像画像を取得する。
【0039】
具体的には、たとえば、各カメラ21は、撮像画像と、当該撮像画像の撮像時刻とを含む画像情報を電線評価装置101へ送信する。各カメラ21は、たとえば定期的に、画像情報を電線評価装置101へ送信する。ここでは、各カメラ21は、たとえば、共通の撮像時刻において電線11を撮像し、かつ共通の送信時刻において画像情報を電線評価装置101へ送信する。
【0040】
電線評価装置101において、画像取得部51は、各カメラ21から画像情報を受信すると、受信した各画像情報に含まれる撮像画像と、対応する撮像時刻とを含む撮像情報を作成する。
【0041】
画像取得部51は、各カメラ21から画像情報を受信するごとに、撮像情報を作成する。そして、画像取得部51は、所定期間Tsにおいて作成した複数の撮像情報(以下、「時系列の撮像情報」とも称する。)を作成部52へ出力する。所定期間Tsの長さは、たとえば、電線11が始点から終点まで変位するのに要する時間以上である。なお、画像取得部51は、時系列の撮像情報を作成部52へ出力するとともに、当該時系列の撮像情報を記憶部54に保存してもよい。
【0042】
また、カメラ21は、画像情報を電線評価装置101へ送信する構成に限らず、たとえば、メモリカードおよびUSB(Universal Serial Bus)(登録商標)等の記録媒体に画像情報を保存する構成であってもよい。この場合、画像取得部51は、当該記録媒体から画像情報を取得してもよい。
【0043】
[課題の説明]
図4は、2次元画像を用いて電線の曲率半径を測定する場合における課題を説明するための図である。図4において、上図の左側には、電線11の3次元画像C1が示されている。上図の右側には、3次元画像C1を、ある平面B1に投影した場合における電線11の2次元画像C11が示されている。下図には、3次元画像C1を、平面B1と異なる他の平面B2に投影した場合における電線11の2次元画像C12が示されている。ここで、電線11の真の曲率を曲率K1、2次元画像C11に基づいて測定される電線11の曲率を曲率K11、および2次元画像C12に基づいて測定される電線11の曲率を曲率K12とする。
【0044】
図4を参照して、2次元画像C11における電線11の形状、および2次元画像C12における電線11の形状は、互いに異なる。そのため、曲率K11および曲率K12も、互いに異なる。このように、曲率の測定に用いる2次元画像に応じて測定結果が異なることから、2次元画像を用いる場合、電線11の真の曲率K1を測定することが困難である。2次元画像を用いて電線11のねじれ角を測定する場合も同様に、電線11の真のねじれ角を測定することが困難である。
【0045】
そこで、本開示の実施の形態に係る電線評価装置101では、以下のような構成および動作により、上記課題を解決する。
【0046】
[電線評価装置の構成]
(作成部)
作成部52は、画像取得部51によって取得された撮像画像に基づいて、電線11の3次元画像C1を作成する。
【0047】
再び図3を参照して、たとえば、作成部52は、電線11の状態Sに対応する撮像画像ごとに3次元画像C1を作成する。
【0048】
より詳細には、たとえば、作成部52は、時系列の撮像情報を画像取得部51から受けると、撮像情報ごとに3次元画像C1を作成する。
【0049】
具体的には、たとえば、作成部52は、撮像情報に含まれる複数のカメラ21からの撮像画像を用いてフォトグラメトリを行うことにより、対応する撮像時刻における電線11の3次元画像C1を作成する。
【0050】
作成部52は、3次元画像C1を作成すると、作成した3次元画像C1と、当該撮像時刻とを含む3次元画像情報を作成する。そして、作成部52は、作成した複数の3次元画像情報(以下、「時系列の3次元画像情報」とも称する。)を評価部53へ出力する。
【0051】
なお、作成部52は、フォトグラメトリ以外の他の方法によって3次元画像C1を作成してもよい。また、作成部52は、時系列の3次元画像情報を評価部53へ出力するとともに、当該時系列の3次元画像情報を記憶部54に保存してもよい。
【0052】
(評価部)
評価部53は、作成部52によって作成された3次元画像に基づいて、電線11に対する負荷を評価する評価処理を行う。
【0053】
より詳細には、たとえば、評価部53は、作成部52によって作成された複数の3次元画像に基づいて、上記負荷に応じた電線11の変位を表す変位値の、状態S間の変化量を算出する。ここでは、たとえば、評価部53は、変化量として、変位している電線11の状態S間の、電線11の曲率半径の変化量(以下、「曲率変化量」とも称する。)、および電線11のねじれ角の変化量(以下、「ねじれ角変化量」とも称する。)を算出する。
【0054】
具体的には、たとえば、評価部53は、時系列の3次元画像情報を作成部52から受けると、3次元画像情報ごとに、対応する撮像時刻における電線11の曲率半径およびねじれ角を測定する。
【0055】
再び図2および図3を参照して、たとえば、評価部53は、3次元画像情報に含まれる電線11の3次元画像C1から、電線11の長手方向の一方の端部P1と他方の端部P2とを結ぶ代表線を求める。そして、評価部53は、求めた代表線の曲率半径およびねじれ角を測定する。
【0056】
評価部53は、3次元画像情報ごとに、電線11の曲率半径およびねじれ角を算出する。そして、評価部53は、算出した複数の曲率半径を用いて、変位している電線11の状態S間の、曲率変化量を算出する。また、評価部53は、算出した複数のねじれ角を用いて、変位している電線11の状態S間の、ねじれ角変化量を算出する。
【0057】
図5は、本開示の実施の形態に係る電線評価装置が所定期間において作成した3次元画像の個数と、曲率変化量との関係を説明するための図である。
【0058】
図5において、上図は、電線評価装置101における曲率半径の測定結果の一例を示す図である。下図は、電線評価装置101における曲率半径の測定結果の他の例を示す図である。上図および下図において、横軸は撮像時刻を示し、縦軸は電線11の曲率半径を示している。また、上図および下図において、グラフKは、曲率半径の実際の時系列変化を示し、値A0は、グラフKにおける曲率半径の最大値から曲率半径の最小値を減算した値である。すなわち、値A0は、実際の曲率変化量を示す。
【0059】
図5を参照して、上図では、所定期間Tsに含まれる撮像時刻t1からt4の各々において、対応する3次元画像を用いて電線11の曲率半径が測定される。上図では、所定期間Tsにおける曲率半径の測定回数は、4回である。上図において、曲率半径の最大値は、撮像時刻t3における曲率半径r3であり、曲率半径の最小値は、撮像時刻t1における曲率半径r1である。この場合、評価部53は、曲率半径r3から曲率半径r1を減算した値A1を曲率変化量として算出する。
【0060】
下図では、所定期間Tsに含まれる撮像時刻t11からt18の各々において、対応する3次元画像を用いて電線11の曲率半径が測定される。下図では、所定期間Tsにおける曲率半径の測定回数は、8回である。すなわち、下図では、所定期間Tsにおける曲率半径の測定回数が、上図と比較して多い。下図において、曲率半径の最大値は、撮像時刻t17における曲率半径r7であり、曲率半径の最小値は、撮像時刻t15における曲率半径r5である。この場合、評価部53は、曲率半径r7から曲率半径r5を減算した値A2を曲率変化量として算出する。
【0061】
図5に示す例では、曲率半径r7は曲率半径r3より大きく、曲率半径r5は曲率半径r1より小さい。そのため、値A2は、値A1より大きい。
【0062】
このように、曲率変化量は、所定期間Tsにおける曲率半径の測定回数に応じて異なる場合がある。すなわち、曲率変化量は、所定期間Tsにおいて電線評価装置101が作成する3次元画像の個数に応じて異なる場合がある。
【0063】
図5に示す例では、値A2は、値A1と比較して、実際の曲率変化量を示す値A0に近い値である。そのため、電線評価装置101における評価処理においては、値A2を用いることが好ましい。すなわち、電線評価装置101において評価処理を行う場合、所定期間Tsにおいてできるだけ多くの3次元画像を用いることが好ましい。
【0064】
[電線の寿命の算出]
図6は、本開示の実施の形態に係る電線評価装置における曲率半径の測定結果の一例を示す図である。図6において、横軸は撮像時刻を示し、縦軸は曲率半径を示している。図6および後述する図7に示す撮像時刻t21からt30は、所定期間Tsに含まれる。
【0065】
図6を参照して、たとえば、評価部53は、3次元画像情報ごとに、対応する撮像時刻における電線11の曲率半径を測定すると、曲率半径の測定結果の最大値から当該測定結果の最小値を減算した値を曲率変化量として算出する。
【0066】
図6に示す例では、曲率半径の測定結果の最大値は、撮像時刻t24における曲率半径r4であり、当該測定結果の最小値は、撮像時刻t27における曲率半径r7である。評価部53は、曲率半径r4から曲率半径r7を減算した値A11を曲率変化量として算出する。
【0067】
図7は、本開示の実施の形態に係る電線評価装置におけるねじれ角の測定結果の一例を示す図である。図7において、横軸は撮像時刻を示し、縦軸はねじれ角を示している。
【0068】
図7を参照して、たとえば、評価部53は、3次元画像情報ごとに、対応する撮像時刻における電線11のねじれ角を測定すると、ねじれ角の測定結果の最大値から当該測定結果の最小値を減算した値をねじれ角変化量として算出する。
【0069】
図7に示す例では、曲率半径の測定結果の最大値は、撮像時刻t24におけるねじれ角θ4であり、当該測定結果の最小値は、撮像時刻t27におけるねじれ角θ7である。評価部53は、ねじれ角θ4からねじれ角θ7を減算した値A12をねじれ角変化量として算出する。
【0070】
再び図3を参照して、たとえば、評価部53は、評価処理において、算出した曲率変化量およびねじれ角変化量に基づいて、電線11の寿命Lに関する判断を行う。
【0071】
より詳細には、たとえば、評価部53は、曲率変化量と、電線11が断線するまでの屈曲回数(以下、「断線屈曲回数」とも称する。)との対応関係を示す対応情報T1を取得する。また、たとえば、評価部53は、ねじれ角変化量と、電線11が断線するまでのねじれ回数(以下、「断線ねじれ回数」とも称する。)との対応関係を示す対応情報T2を取得する。断線屈曲回数および断線ねじれ回数は、電線11の寿命Lに関する情報の一例である。
【0072】
そして、評価部53は、評価処理において、算出した曲率変化量およびねじれ角変化量、ならびに取得した対応情報T1,T2に基づいて、電線11の寿命Lに関する判断を行う。
【0073】
図8は、本開示の実施の形態に係る電線評価装置が保存する対応情報を概念的に示す図である。図8において、上図は、対応情報T1を概念的に示すグラフG1である。下図は、対応情報T2を概念的に示すグラフG2である。
【0074】
グラフG1において、横軸は断線屈曲回数を示し、縦軸は曲率変化量を示している。グラフG1において、断線屈曲回数が大きくなるほど、曲率変化量は小さくなる。すなわち、曲率変化量と断線屈曲回数とは反比例の関係にある。
【0075】
グラフG2において、横軸は断線ねじれ回数を示し、縦軸はねじれ角変化量を示している。グラフG2において、断線ねじれ回数が大きくなるほど、ねじれ角変化量は小さくなる。すなわち、ねじれ角変化量と断線ねじれ回数とは反比例の関係にある。
【0076】
図3および図8を参照して、たとえば、記憶部54は、対応情報T1,T2を記憶する。
【0077】
評価部53は、曲率変化量A11およびねじれ角変化量A12を算出すると、記憶部54における対応情報T1および対応情報T2を読み出す。そして、評価部53は、対応情報T1を参照することにより、算出した曲率変化量A11に対応する断線屈曲回数N1を特定する。また、評価部53は、対応情報T2を参照することにより、算出したねじれ角変化量A12に対応する断線ねじれ回数N2を特定する。
【0078】
評価部53は、断線屈曲回数N1および断線ねじれ回数N2を特定すると、屈曲変位による電線11の疲労損傷度D1、およびねじれ変位による電線11の疲労損傷度D2を算出する。ここで、疲労損傷度とは、マイナー則に基づいて算出される疲労損傷の度合いを示す値である。
【0079】
具体的には、評価部53は、特定した断線屈曲回数N1を以下の式(1)に代入することにより、疲労損傷度D1を算出する。
D1=1/N1 ・・・(1)
【0080】
また、評価部53は、特定した断線ねじれ回数N2を以下の式(2)に代入することにより、疲労損傷度D2を算出する。
D2=1/N2 ・・・(2)
【0081】
そして、評価部53は、算出した、疲労損傷度D1および疲労損傷度D2を、以下の式(3)に代入することにより、屈曲変位およびねじれ変位、すなわち複数種類の変位による電線11の疲労損傷度D3を算出する。
D3=D1+D2 ・・・(3)
【0082】
評価部53は、疲労損傷度D3を算出すると、算出した疲労損傷度D3を以下の式(4)に代入することにより、電線11の寿命Lを算出する。
L=1/D3 ・・・(4)
【0083】
評価部53は、寿命Lを算出すると、算出した寿命Lを含む画面情報を作成する。そして、評価部53は、作成した画面情報を表示装置151へ送信する。
【0084】
表示装置151は、電線評価装置101から画面情報を受信すると、当該画面情報を示す評価結果画面を表示する。
【0085】
なお、評価部53は、表示装置151の代わりに、ノートPC(Personal Computer)等の端末装置へ画面情報を送信してもよい。また、評価部53は、評価結果画面を含むHTML(HyperText Markup Language)形式の電子メールを端末装置へ送信してもよい。
【0086】
[動作の流れ]
図9は、本開示の実施の形態に係る電線評価装置が評価処理を行う際の動作手順を定めたフローチャートである。
【0087】
図9を参照して、まず、電線評価装置101は、所定期間Tsにおいて、変位している電線11の状態Sにそれぞれ対応する複数の撮像画像を取得する(ステップS101)。
【0088】
次に、電線評価装置101は、取得した複数の撮像画像にそれぞれ対応する複数の3次元画像を作成する(ステップS102)。
【0089】
次に、電線評価装置101は、作成した3次元画像ごとに、対応する撮像時刻における電線11の曲率半径およびねじれ角を測定する(ステップS103)。
【0090】
次に、電線評価装置101は、変位している電線11の状態S間の、曲率変化量およびねじれ角変化量を算出する。たとえば、上述したように、電線評価装置101は、曲率半径の測定結果の最大値から曲率半径の測定結果の最小値を減算した値を、曲率変化量として算出する。また、電線評価装置101は、ねじれ角の測定結果の最大値からねじれ角の測定結果の最小値を減算した値を、ねじれ角変化量として算出する(ステップS104)。
【0091】
次に、電線評価装置101は、記憶部54から対応情報T1,T2を取得する(ステップS105)。
【0092】
次に、電線評価装置101は、電線11に対する負荷を評価する評価処理を行う。たとえば、上述したように、電線評価装置101は、算出した曲率変化量およびねじれ角変化量、ならびに取得した対応情報T1,T2を用いて、電線11の寿命Lを算出する(ステップS106)。
【0093】
次に、電線評価装置101は、評価結果を示す画面情報を表示装置151へ送信する。たとえば、上述したように、電線評価装置101は、算出した寿命Lを含む画面情報を表示装置151へ送信する(ステップS107)。
【0094】
なお、本開示の実施の形態に係る電線評価システム501において、電線評価装置101は、作成した複数の3次元画像に基づいて、評価処理を行う構成であるとしたが、これに限定するものではない。電線評価装置101は、1つの3次元画像に基づいて、評価処理を行う構成であってもよい。この場合、電線評価装置101は、1つの3次元画像に基づいて、当該3次元画像に対応する撮像時刻における、電線11の曲率半径の絶対値および電線11のねじれ角の絶対値の少なくともいずれか一方を算出する。そして、電線評価装置101は、算出した少なくともいずれか一方の絶対値を用いて評価処理を行う。
【0095】
また、本開示の実施の形態に係る電線評価システム501において、電線評価装置101は、算出した曲率変化量およびねじれ角変化量に基づいて、電線11の寿命Lを判断する構成であるとしたが、これに限定するものではない。電線評価装置101は、算出した曲率変化量およびねじれ角変化量に基づいて、組み付け先における電線11の配索状態を評価する構成であってもよい。
【0096】
また、本開示の実施の形態に係る電線評価システム501において、電線評価装置101は、評価処理において、曲率変化量およびねじれ角変化量を用いる構成であるとしたが、これに限定するものではない。電線評価装置101は、曲率変化量およびねじれ角変化量を用いずに、ある撮像時刻における、電線11の曲率半径の絶対値および電線11のねじれ角の絶対値の少なくともいずれか一方を用いて評価処理を行う構成であってもよい。
【0097】
また、本開示の実施の形態に係る電線評価システム501において、電線評価装置101は、評価処理において、算出した曲率変化量およびねじれ角変化量、ならびに対応情報T1,T2を用いて、電線11の寿命Lに関する判断を行う構成であるとしたが、これに限定するものではない。電線評価装置101は、対応情報T1,T2を用いずに、たとえば、曲率変化量を断線屈曲回数に変換する変換式、およびねじれ角変化量を断線ねじれ回数に変換する変換式を用いて、電線11の寿命Lに関する判断を行う構成であってもよい。
【0098】
また、本開示の実施の形態に係る電線評価システム501において、電線評価装置101は、電線11の変位値の状態S間の変化量として、曲率変化量およびねじれ角変化量を算出する構成であるとしたが、これに限定するものではない。電線評価装置101は、曲率半径およびねじれ角以外の変位値の、状態S間の変化量を算出する構成であってもよい。また、電線評価装置101は、曲率変化量およびねじれ角変化量の少なくともいずれか一方を算出する構成であってもよい。
【0099】
また、本開示の実施の形態に係る電線評価装置101の評価対象である電線11の変位は、電線11の組み付け先の通常時における変位であるとしたが、これに限定するものではない。電線11の変位は、電線11の組み付け先に関わらず、評価処理用に予め定められた変位であってもよい。
【0100】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0101】
上述の実施の形態の各処理(各機能)は、1または複数のプロセッサを含む処理回路により実現される。上記処理回路は、上記1または複数のプロセッサに加え、1または複数のメモリ、各種アナログ回路、各種デジタル回路が組み合わされた集積回路等で構成されてもよい。上記1または複数のメモリは、上記各処理を上記1または複数のプロセッサに実行させるプログラム(命令)を格納する。上記1または複数のプロセッサは、上記1または複数のメモリから読み出した上記プログラムに従い上記各処理を実行してもよいし、予め上記各処理を実行するように設計された論理回路に従って上記各処理を実行してもよい。上記プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、およびASIC(Application Specific Integrated Circuit)等、コンピュータの制御に適合する種々のプロセッサであってよい。なお、物理的に分離した上記複数のプロセッサが互いに協働して上記各処理を実行してもよい。たとえば、物理的に分離した複数のコンピュータのそれぞれに搭載された上記プロセッサがLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、およびインターネット等のネットワークを介して互いに協働して上記各処理を実行してもよい。上記プログラムは、外部のサーバ装置等から上記ネットワークを介して上記メモリにインストールされても構わないし、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、および半導体メモリ等の記録媒体に格納された状態で流通し、上記記録媒体から上記メモリにインストールされても構わない。
【0102】
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
[付記1]
撮像装置によって撮像された電線の撮像画像を取得する第1取得部と、
前記第1取得部によって取得された前記撮像画像に基づいて、前記電線の3次元画像を作成する作成部と、
前記作成部によって作成された前記3次元画像に基づいて、前記電線に対する負荷を評価する評価処理を行う評価部とを備え、
前記第1取得部は、前記電線の変位の始点、前記変位の終点および前記変位の1つ以上の中途点にそれぞれ対応する複数の前記撮像画像を取得し、
前記作成部は、前記撮像画像ごとに前記3次元画像を作成し、
前記評価部は、前記作成部によって作成された複数の前記3次元画像に基づいて、前記評価処理を行う、電線評価装置。
【0103】
[付記2]
処理回路を備え、
前記処理回路は、
撮像装置によって撮像された電線の撮像画像を取得し、
取得した前記撮像画像に基づいて、前記電線の3次元画像を作成し、
作成した前記3次元画像に基づいて、前記電線に対する負荷を評価する評価処理を行う、電線評価装置。
【符号の説明】
【0104】
11 電線
11a 固定部
21 カメラ
51 画像取得部
52 作成部
53 評価部
54 記憶部
101 電線評価装置
151 表示装置
501 電線評価システム
T1,T2 対応情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9