(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162760
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】部分めっき装置および部分めっき方法
(51)【国際特許分類】
C25D 5/02 20060101AFI20241114BHJP
C25D 7/00 20060101ALI20241114BHJP
C25D 7/06 20060101ALI20241114BHJP
C25D 17/06 20060101ALI20241114BHJP
C25D 17/08 20060101ALI20241114BHJP
C25D 17/12 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
C25D5/02 G
C25D5/02 H
C25D7/00 H
C25D7/06 E
C25D7/06 H
C25D7/06 G
C25D17/06 H
C25D17/08 Q
C25D17/12 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078628
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】506365131
【氏名又は名称】DOWAメタルテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(72)【発明者】
【氏名】島津 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】池浦 惇平
【テーマコード(参考)】
4K024
【Fターム(参考)】
4K024AA03
4K024AA11
4K024AB02
4K024BA09
4K024BB10
4K024BC02
4K024CB02
4K024CB03
4K024CB10
4K024CB13
4K024CB26
4K024DA03
4K024DA04
4K024DB07
4K024EA04
4K024FA16
4K024GA16
(57)【要約】
【課題】ドラム型治具を使用して部分めっきを行う際に、被めっき材のめっき不要部への不要なめっき液の接触を抑制し、めっき不要部へのめっきの付着量を低減する。
【解決手段】ドラム型治具11を用いた部分めっき装置1であって、端子部材21からなる被めっき材をドラム型治具11の円筒面11aに押圧するためのバックアップベルト31を備え、ドラム型治具11の円筒面11aは、端子部材21の被めっき面23aにめっき液を供給する開口部13を備え、バックアップベルト31は、基材32と、基材32の一方の面に配置されて端子部材21の端子部23を被めっき面23aの反対側となる裏面23b側からドラム型治具11の円筒面11aに押圧するための軟質弾性体33を有し、軟質弾性体33のアスカーC硬度が0.5°~25°である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラム型治具を用いた部分めっき装置であって、
端子部材からなる被めっき材を前記ドラム型治具の円筒面に押圧するためのバックアップベルトを備え、
前記ドラム型治具の円筒面は、前記端子部材の被めっき面にめっき液を供給する開口部を備え、
前記バックアップベルトは、基材と、前記基材の一方の面に配置されて前記端子部材の端子部を被めっき面の反対側となる裏面側から前記ドラム型治具の円筒面に押圧するための軟質弾性体を有し、
前記軟質弾性体のアスカーC硬度が0.5°~25°であることを特徴とする、部分めっき装置。
【請求項2】
前記基材の一方の面において、前記軟質弾性体が配置されていない領域に、前記軟質弾性体よりもアスカーC硬度が高く且つ厚さが小さい硬質弾性体を有していることを特徴とする、請求項1に記載の部分めっき装置。
【請求項3】
前記硬質弾性体のアスカーC硬度が35°以上であることを特徴とする、請求項2に記載の部分めっき装置。
【請求項4】
前記軟質弾性体は、合成ゴムであることを特徴とする、請求項1または2に記載の部分めっき装置。
【請求項5】
前記軟質弾性体は、シリコーンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ニトリルゴムの群から選ばれる1または2以上の合成ゴムが主成分であることを特徴とする、請求項1または2に記載の部分めっき装置。
【請求項6】
前記軟質弾性体の厚さと前記硬質弾性体の厚さとの差が、前記被めっき材の板厚以上であることを特徴とする、請求項2または3に記載の部分めっき装置。
【請求項7】
前記軟質弾性体は、前記端子部材の端子部全体を覆う幅を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の部分めっき装置。
【請求項8】
端子部材からなる被めっき材をバックアップベルトでドラム型治具の円筒面に押圧して密着させ、前記端子部材の端子部に、前記ドラム型治具に形成された開口部からめっき液を供給して端子部の被めっき面にめっきを形成する端子部材の部分めっき方法であって、
前記バックアップベルトは、基材と、前記基材の一方の面に配置された、アスカーC硬度が0.5°~25°の軟質弾性体を有し、
前記軟質弾性体により、少なくとも前記端子部材の端子部を、前記端子部材のめっきを形成する前記被めっき面とは反対側の裏面側から押圧し、前記端子部材を前記ドラム型治具の円筒面に密着させてめっきを行うことを特徴とする、部分めっき方法。
【請求項9】
前記基材の一方の面において、前記軟質弾性体が配置されていない領域に、前記軟質弾性体よりもアスカーC硬度が高く且つ厚さが小さい硬質弾性体を有していることを特徴とする、請求項8に記載の部分めっき方法。
【請求項10】
前記硬質弾性体のアスカーC硬度が35°以上であることを特徴とする、請求項9に記載の部分めっき方法。
【請求項11】
前記軟質弾性体は、合成ゴムであることを特徴とする、請求項8または9に記載の部分めっき方法。
【請求項12】
前記軟質弾性体は、シリコーンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ニトリルゴムの群から選ばれる1または2以上の合成ゴムが主成分であることを特徴とする、請求項8または9に記載の部分めっき方法。
【請求項13】
前記軟質弾性体の厚さと前記硬質弾性体の厚さとの差が、前記被めっき材の板厚以上であることを特徴とする、請求項9または10に記載の部分めっき方法。
【請求項14】
前記軟質弾性体により、前記端子部材の端子部全体を、前記端子部材の裏面側から押圧することを特徴とする、請求項8または9に記載の部分めっき方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラム型治具を用いた部分めっき装置および部分めっき方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
端子部材には、導電性や耐食性の付与を目的としてめっきが施される。通常、先ずNiやCuなどの下地めっきを行った後、下地めっきの表面にAuやAgなどの貴金属めっきを行う。下地めっきは、貴金属めっきの密着性向上や耐食性等の付与を目的とし、表面の貴金属めっきは、導電性や耐食性等の付与を目的として行われる。
【0003】
表面のめっきに使用されるAuやAgなどの貴金属は高価であり、めっきによる原材料コストを抑えるため、表面のめっきを端子部材の必要最小限の範囲(部分、領域)に形成することが望ましい。金属板材をプレス加工等により端子形状に加工された端子の中間製品である端子部材の場合、必要最小限の範囲とは、接点として利用される部分であり、例えば一方(表側)の板面(非破断面)の端子先端部である。さらに、プレス加工による破断面である側面や他方の板面(裏面)にはめっきが形成されないことである。
【0004】
このようにめっきが必要な箇所に限定して部分めっきを行う方法として、従来、ドラム型治具を使用しためっき方法が知られている。これは、ドラム型治具に被めっき材を巻き付け、ドラム型治具の内側から噴出口を介してめっき液を噴射し、連続的にめっきを行う方法である。
【0005】
ドラム型治具を用いためっきを行う際、従来、バックアップベルトを用いて被めっき材を外側からドラム型治具に押し当てた状態でめっきが行われる。
【0006】
例えば特許文献1には、回転ドラム式部分めっき装置において、マスキングベルトに凸部を設けて回転ドラム周面の凹部に嵌合させ、マスキングベルトの位置変動を抑えることが開示されている。
【0007】
特許文献2には、回転ドラム式部分めっき装置において、回転ドラムの外周部に押圧して密着させるバックアップ部材に、回転ドラムのめっき孔に対応してめっき液抜け用の開口部を形成して、めっき抜けやにじみの問題を解決することが開示されている。
【0008】
特許文献3には、回転ドラム型治具を用いて端子部材のめっきを行う際に、ドラム型治具の開口部の周囲に、端子の側面に沿って、絶縁材料からなる側壁部材を設けることにより、端子の側面にめっきが付着するのを抑制することが開示されている。
【0009】
特許文献4には、部分めっきされる基体の突出部にめっき層を形成する際、絶縁体で該基体の幅方向より突出部を挟み、突出頂部分を流動するめっき液に浸漬させることで、不要部分にめっき層を形成させないようにすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11-131284号公報
【特許文献2】特開2013-216937号公報
【特許文献3】特開2015-108186号公報
【特許文献4】特開平2-97692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、いずれの方法でも、端子部材などの被めっき材において、例えば設計上めっきが不要な部分(めっき不要部)であるプレス破断面(端子の側面)や、被めっき面とは反対側の板面にめっき液が接触して、めっき不要部にめっきが付着することは避けられず、コストが上昇するという問題がある。
【0012】
本発明の目的は、ドラム型治具を使用して部分めっきを行う際に、被めっき材のめっき不要部への不要なめっき液の接触を抑制し、めっき不要部へのめっきの付着量を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記問題を解決するため、本発明は、ドラム型治具を用いた部分めっき装置であって、端子部材からなる被めっき材を前記ドラム型治具の円筒面に押圧するためのバックアップベルトを備え、前記ドラム型治具の円筒面は、前記端子部材の被めっき面にめっき液を供給する開口部を備え、前記バックアップベルトは、基材と、前記基材の一方の面に配置されて前記端子部材の端子部を被めっき面の反対側となる裏面側から前記ドラム型治具の円筒面に押圧するための軟質弾性体を有し、前記軟質弾性体のアスカーC硬度が0.5°~25°であることを特徴とする、部分めっき装置を提供する。
【0014】
前記基材の一方の面において、前記軟質弾性体が配置されていない領域に、前記軟質弾性体よりもアスカーC硬度が高く且つ厚さが小さい硬質弾性体を有してもよい。また、前記硬質弾性体のアスカーC硬度が35°以上であることが好ましい。前記軟質弾性体は、合成ゴムでもよい。前記軟質弾性体は、シリコーンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ニトリルゴムの群から選ばれる1または2以上の合成ゴムが主成分でもよい。
【0015】
前記軟質弾性体の厚さと前記硬質弾性体の厚さとの差が、前記被めっき材の板厚以上であることが好ましい。前記軟質弾性体は、前記端子部材の端子部全体を覆う幅を有することが好ましい。
【0016】
また、本発明によれば、端子部材からなる被めっき材をバックアップベルトでドラム型治具の円筒面に押圧して密着させ、前記端子部材の端子部に、前記ドラム型治具に形成された開口部からめっき液を供給して端子部の被めっき面にめっきを形成する端子部材の部分めっき方法であって、前記バックアップベルトは、基材と、前記基材の一方の面に配置された、アスカーC硬度が0.5°~25°の軟質弾性体を有し、前記軟質弾性体により、少なくとも前記端子部材の端子部を、前記端子部材のめっきを形成する前記被めっき面とは反対側の裏面側から押圧し、前記端子部材を前記ドラム型治具の円筒面に密着させてめっきを行うことを特徴とする、部分めっき方法が提供される。
【0017】
前記基材の一方の面において、前記軟質弾性体が配置されていない領域に、前記軟質弾性体よりもアスカーC硬度が高く且つ厚さが小さい硬質弾性体を有してもよい。また、前記硬質弾性体のアスカーC硬度が35°以上であることが好ましい。前記軟質弾性体は、合成ゴムでもよい。前記軟質弾性体は、シリコーンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ニトリルゴムの群から選ばれる1または2以上の合成ゴムが主成分でもよい。
【0018】
前記軟質弾性体の厚さと前記硬質弾性体の厚さとの差が、前記被めっき材の板厚以上であることが好ましい。前記軟質弾性体により、前記端子部材の端子部全体を、前記端子部材の裏面側から押圧することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ドラム型治具を使用してAu等の部分めっきを行う際に、被めっき材の部分めっきが不要な部分へのめっき液の接触を抑制し、めっき不要部へのめっきの付着量を低減する部分めっき装置および部分めっき方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】ドラム型治具を用いた部分めっき装置の概略を示す上面図である。
【
図2】ドラム型治具の側面図であり、(a)はドラム型治具の円筒面、(b)はスポットめっき時のドラム型治具の円筒面の状態を示す。
【
図3】本発明の実施形態にかかるバックアップベルトの例を示し、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【
図4】本発明の実施例および比較例におけるバックアップベルトの断面図および端子部材とバックアップベルトとの位置関係を示す正面図であり、(a)は本発明の実施例1、(b)は比較例1である。
【
図5】本発明の実施例および比較例におけるバックアップベルトの断面図および端子部材とバックアップベルトとの位置関係を示す正面図であり、(a)は本発明の実施例2、(b)は実施例3、(c)は比較例2である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を、図を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態にかかるバックアップベルトを備えた部分めっき装置1の概略を示すものである。本発明が対象とする部分めっき装置1は、帯状の端子部材21からなる被めっき材をドラム型治具11の円筒面11aに押圧するための、帯状のバックアップベルト31を備えている。ドラム型治具11の円筒面11aは、
図2(a)、(b)に示すように、端子部材21の端子部23の被めっき面23aにめっき液を供給する開口部13を備えている。端子部材21は、ガイド穴22hを有する上部支持部22と、上部支持部22から延伸する端子部23を有している。本明細書では、端子部23の被めっき面23a側において、開口部13に面して部分めっきが行われる領域を、被めっき領域と呼称する。バックアップベルト31は、
図3(b)に示すように、基材32と、基材32の一方の面に、端子部材21の端子部23に接触して被めっき面23aとは反対側となる裏面23b側から端子部23をドラム型治具11の円筒面11aに押圧するための帯状の軟質弾性体33が設けられ、軟質弾性体33のアスカーC硬度が0.5°~25°であることを特徴としている。さらに、
図3(b)に示すように、基材32の一方の面において、軟質弾性体33が配置されていない位置に、軟質弾性体33よりもアスカーC硬度が高く且つ厚さが小さい硬質弾性体34が設けられていることが好ましい。
【0023】
ここで、端子部23を押圧するとは、端子部23の少なくとも一部を押圧することをいう。軟質弾性体33が端子部23と接する領域は、端子部23の一部でもよいし、全部でもよい。そして、被めっき領域は、端子部23の被めっき面23a側の一部でも全部でもよい。
【0024】
なお、アスカーC硬度とは、JIS K7312で規定されているスプリング硬さ試験(タイプC)の試験方法により得られる値であり、JIS K7312に準拠した硬度計を用いて測定すれば良い。
【0025】
また、部分めっき装置1には、被めっき材である端子部材21を搬送する部材搬送ロール2、バックアップベルト31を搬送するバックアップベルト搬送ロール3が設けられている。
【0026】
本実施形態では、このようなドラム型治具11を用いた(連続式の)部分めっき装置1において、基材32上に軟質弾性体33と硬質弾性体34とが設けられたバックアップベルト31を用いて、被めっき材としての端子部材21にAuめっきを行う場合を例として説明する。
【0027】
ドラム型治具11は、例えば絶縁性の塩ビ等の樹脂で形成された円筒形状であり、被めっき材としての端子部材21をドラム型治具11の円筒面11aに密着させ外周部に沿って搬送しながら部分めっきする治具である。部材搬送ロール2によって端子部材21が送り出されるのに応じてドラム型治具11が回転する。ドラム型治具11の円筒面11aには、
図2(a)に示すように位置決めピン12が設けられていて、この位置決めピン12が、
図2(b)に示すように端子部材21に形成されたガイド穴22hに嵌合されることにより、端子部材21は、ドラム型治具11上での搬送方向および上下方向(搬送方向に対して垂直方向)の位置が固定される。そして、端子部材21の位置が固定されたときに、端子部材21の端子部23の被めっき面23aにおける被めっき領域と、めっき液の供給領域となるドラム型治具11の開口部13とが同じ位置で重なるように、ドラム型治具11の円筒面11aに、複数の開口部13が形成されている。なお、端子部材21はプレスによる抜き材からなる端子部材21とすることができ、
図2(b)に示す形状のものに限ることはない。例えば、帯状の端子部材21の抜き部分の上方にガイド穴22hを含む上部支持部22、抜き部分の下方に下部支持部25(
図4、5参照)、抜き部分の左右にタイバーと呼ばれる上部支持部22と下部支持部25とを連結する部分がある形状を有するものでもよい。
【0028】
ドラム型治具11の内側には、Auめっき液噴流装置14が設けられている。Auめっき液噴流装置14には、図示しないめっき液槽からAuめっき液が供給され、Auめっき液噴流装置14の表面にある金属板15とドラム型治具11との間の空間にAuめっき液が供給される。そして、ドラム型治具11の円筒面11aに設けられた開口部13から、Auめっき液が端子部材21の端子部23に向けて噴出され、被めっき領域にAuめっき液が供給される。金属板15をアノードとし、端子部材21をカソードとして、被めっき領域に供給されたAuめっき液を介して電流を流すことで、端子部材21の端子部23の被めっき面23aに連続的に部分めっきが行われる。連続的に部分めっきが行われる際、端子部材21は、外側(被めっき面23aとは反対側となる端子部材21の裏面23b側)からドラム型治具11の円筒面11aにバックアップベルト31で押圧される。
【0029】
図3は、バックアップベルト31の平面図および断面図である。帯状のバックアップベルト31は、基材32と、基材32の一方の面に例えば接着により設けられた硬度の異なる2種類の合成ゴム等の軟質弾性体33および硬質弾性体34で構成される。
【0030】
基材32は、浸透性の無い帯状の部材であることが好ましい。浸透性がないとは、めっき液が基材32の一方の面に接触した場合でも他方の面からめっき液が染み出さないことをいう。また、基材32は、バックアップベルト31として使用できる程度に、柔軟性を持ちながら引張応力に耐えることができる材料であればよく、例えば、芯材がポリエステル帆布であって、芯材の片面にシリコンコート、反対側の面にシリコンを含浸させた材料などが使用できる。
【0031】
そして、基材32の表面の、端子部23に接触する可能性がある領域の一部または全部には、アスカーC硬度が0.5°~25°の帯状の軟質弾性体33が接着等により設けられている。軟質弾性体33が配置されていない領域には、アスカーC硬度が35°以上で、軟質弾性体33の厚さよりも薄い帯状の硬質弾性体34が接着等により設けられていることが好ましい。この場合、端子部材21をバックアップベルト31でドラム型治具11の円筒面11aに押圧して密着させた際、基材32上の軟質弾性体33は硬質弾性体34よりも端子部材21側(ドラム型治具11側)に突出している。軟質弾性体33および硬質弾性体34の厚さは例えば0.1~10mmとすることが好ましい。
【0032】
本発明においては、バックアップベルト31の軟質弾性体33により、少なくとも端子部材21の端子部23(および端子部間)を、端子部材21のめっきを形成する被めっき面23aとは反対側の裏面23b側から押圧し、端子部材21をドラム型治具11の円筒面11aに密着させてめっきを行うことを特徴とする。めっき液はドラム型治具11に形成された開口部13から供給され、端子部材21の端子部23の被めっき面23aにめっきを形成する。端子部23の被めっき面23aにおいてめっきを形成された領域が被めっき領域である。
【0033】
軟質弾性体33は、押圧により変形して端子部間の空間を埋めるとともに、端子部23の裏面23bおよび側面を覆い、端子部23の裏面23bおよび側面(例えばプレス加工による破断面)へのめっき液の接触、付着を抑制する。軟質弾性体33の硬さがアスカーC硬度で0.5°~25°であれば端子部23の側面に沿って変形することができるが、25°を超えると十分に変形しなくなり、端子部23の側面へのAuめっき液の接触、付着を抑制できなくなる恐れがある。即ち後述の硬質弾性体34のような硬い弾性体で押圧した場合は、めっき液の接触を抑制することが困難である。したがって、軟質弾性体33の硬度を25°以下とする。また、軟質弾性体33のアスカーC硬度が0.5°よりも小さいと、端子部23がバックアップベルト31に沈み込んで、被めっき面23aの一部まで覆ってしまうことがあり、その場合はめっき不良となるおそれがある。そのため、軟質弾性体33のアスカーC硬度は0.5°~25°とし、1°~20°であることが、より好ましい。
【0034】
基材32の表面に配置される軟質弾性体33と硬質弾性体34の形状は、端子部23の形状や被めっき領域の形状に応じて種々の形状とすることができ、費用面からは、帯状とすることが好ましい。また、基材32の一方の面において軟質弾性体33が配置される領域は、端子部23に接触する可能性がある領域の少なくとも一部を含む。軟質弾性体33は、特定の幅をもつ帯状とすることができ、少なくとも端子部23の先端部を覆う幅とすることが好ましく、余分なAuめっき液の付着を防ぐためには、端子部23全体を覆う幅とすることがより好ましい。
【0035】
また、基材32の一方の面において軟質弾性体33が配置されていない領域に、軟質弾性体33よりも硬度が高く且つ厚さが小さい硬質弾性体34を有してもよい。その場合、基材32の一方の面において硬質弾性体34が配置される領域は、端子部材21の上部支持部22におけるガイド穴22hが接触する可能性がある領域を包含する領域とすることが好ましい。この領域に硬質弾性体34を使用することで、端子部材21のドラム型治具11の円筒面11aに対する傾きの変化を効果的に抑制することができるためである。ガイド穴22hが接触する可能性がある領域までを軟質弾性体33とした場合には、端子部材21の円筒面11aに対する角度にバラツキが生じ、被めっき領域のメッキ厚さにバラツキが生じる恐れがある。
【0036】
軟質弾性体33の材質は合成ゴムを主成分とするものが好ましく、シリコーンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ニトリルゴムの群から選ばれる1または2以上の合成ゴムが主成分であることが好ましい。また、これらの合成ゴムの発泡体であってもよい。
【0037】
硬質弾性体34としては、アスカーC硬度が35°以上の例えばシリコーンゴムなどの合成ゴムを用いることができる。硬質弾性体34を軟質弾性体33と同じ厚さにすると、軟質弾性体33に端子部23の側面を覆うような変形が発生しにくくなる。したがって、押圧が無い状態において、軟質弾性体33は、硬質弾性体34の表面から突出するように、軟質弾性体33の厚さを硬質弾性体34の厚さより大きくすることが好ましい。さらに、押圧が無い状態において、軟質弾性体33の突出寸法(軟質弾性体33と硬質弾性体34の厚さの差)は、被めっき材の板厚以上とすることがより好ましい。軟質弾性体33のアスカーC硬度の大きさに拠るが、突出寸法は被めっき材の板厚の1倍以上5倍以下とすることができ、例えば、被めっき材が板厚0.64mmの場合は、突出寸法を1mm~3mm程度とすることができる。突出寸法を被めっき材の板厚以上とすることで、端子側面を十分に覆うことが出来るため、端子側面部のAu付着量を削減する効果が大きくなる。なお、本明細書において、軟質弾性体33および硬質弾性体34の各々の厚さは、帯状の幅方向での平均厚さとする。
【0038】
バックアップベルト31を以上の構成とすることにより、被めっき材である端子部材21の被めっき面23aの裏側(裏面23b)や側面(プレスによる破断面、エッチング面等)にめっき液が接触するのを抑制することができる。また、端子部23を押圧する部分を軟質弾性体33にすることで、例えばプレスによる抜き材からなる端子部材21の抜き部分(端子と端子の間の空間)に軟質弾性体33が変形して入り込み、めっき不要部分へのめっき液の接触を低減できる。さらに、軟質弾性体33で電流が遮蔽されることにより、抜き部分の破断面や周辺部への不要なめっき付着量が低減される。
【0039】
また、本発明の部分めっき方法は、(帯状の)端子部材21からなる被めっき材を(帯状の)バックアップベルト31でドラム型治具11の円筒面11aに押圧して密着させ、端子部材21の端子部に、ドラム型治具11に形成された開口部13からめっき液を供給して端子部23の被めっき面23aにめっきを形成する端子部材21の部分めっき方法であって、バックアップベルト31は、基材32と、基材32の一方の面に配置されたアスカーC硬度が0.5°~25°の帯状の軟質弾性体33を有し、軟質弾性体33により、少なくとも端子部材21の端子部23を、端子部材21のめっきを形成する被めっき面23aとは反対側の裏面23b側から押圧し、端子部材21をドラム型治具11の円筒面11aに密着させてめっきを行うことを特徴とする。基材32の一方の面において、軟質弾性体33が配置されていない位置に、軟質弾性体33よりもアスカーC硬度が高く且つ厚さが小さい硬質弾性体34が設けられていることが好ましい。
【0040】
以下、本発明の実施形態にかかる、基材32上に軟質弾性体33と硬質弾性体34とが設けられたバックアップベルト31を用いた部分めっき方法の手順を説明する。本実施形態も、被めっき材としての端子部材21にAuめっきを行う場合を例として説明する。端子部材21にめっきを行う際には、前処理、下地めっき(Niめっき、Cuめっき等)、仕上げめっき(表面めっき、本めっき、ともいう)、後処理を順に行うことが好ましい。
【0041】
先ず、前処理として、端子部材21の表面の油分を除去するための脱脂、表面の酸化皮膜を除去する等のための酸洗、薬液等を除去するための水洗を行う。前処理は、一般的には、水洗、脱脂、水洗、酸洗、水洗の順に行われる。
【0042】
前処理が終了すると、仕上げめっきと下地めっきとの密着性向上や端子部材21自体の腐食劣化、端子部材21の金属元素の拡散を防止するため、下地めっきとして、例えばスルファミン酸Niめっき液に端子部材21全体を浸漬して電気Niめっきを行う。下地めっきの方法はこれに限らず、端子部材21の必要な部分にNiが均一に付着すればよい。また、下地めっきとしてCuめっきを施しても良い。
【0043】
なお、前処理および下地めっき、さらに後述の後処理は、例えばリール・ツー・リールめっき方式による連続めっき装置(図示しない)で行うのが好ましく、この連続めっき装置に本発明の部分めっき装置が組み込まれているのが好ましい。
【0044】
下地めっきが行われた後、端子部材21の例えば端子先端部の端子部23の被めっき面23aに、仕上げめっきとして本めっきを行う。本めっきは、耐食性や導電性、耐摩耗性や、その他部品に要求される特性を満たすために行われ、Auめっきの他に、例えばAg、Sn等のめっきが行われる。端子部材21は部材搬送ロール2で搬送され、バックアップベルト31によってドラム型治具11の円筒面11aに押さえ付けられる。バックアップベルト31は、基材32上に軟質弾性体33が設けられたものであり、軟質弾性体33により、端子部材21の端子部23を裏面側から押圧する。あるいは、バックアップベルト31は、例えば前述の実施形態と同様、基材32上に軟質弾性体33と硬質弾性体34とが設けられたものでもよい。Auめっき液は、前述したようにドラム型治具11の円筒面11aに形成された複数の開口部13を介して外部に供給される。このようにして、端子部材21を搬送しながら、Auめっき液が噴出され、端子部材21の端子先端の端子部23の被めっき面23aにAuめっき皮膜が形成される。端子部23の裏面23bはバックアップベルト31の軟質弾性体33で押圧され、軟質弾性体33が変形して端子部23の裏面23bおよび側面を覆うことにより、Auめっき液が端子部23の被めっき面23aからはみ出して付着するのを抑制する。
【0045】
Auめっき後の端子部材21は、後処理として、水洗後、熱風で乾燥させ、一連の連続めっき処理が完了する。めっき後の端子部材21は、例えばプレス加工等により必要な形状に加工分割して端子として用いられる。
【0046】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、ドラム型治具11の円筒面11aに位置決めピン12を備えないようにしても良く、位置決めピン12とガイド穴22hを用いない他の方法で位置決めを行う構成とすることもできる。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0047】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、又は、上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0048】
なお、以下のような構成例も本開示の技術的範囲に属する。
(1) ドラム型治具を用いた部分めっき装置であって、
端子部材からなる被めっき材を前記ドラム型治具の円筒面に押圧するためのバックアップベルトを備え、
前記ドラム型治具の円筒面は、前記端子部材の被めっき面にめっき液を供給する開口部を備え、
前記バックアップベルトは、基材と、前記基材の一方の面に配置されて前記端子部材の端子部を被めっき面の反対側となる裏面側から前記ドラム型治具の円筒面に押圧するための軟質弾性体を有し、
前記軟質弾性体のアスカーC硬度が0.5°~25°であることを特徴とする、部分めっき装置。
(2) 前記基材の一方の面において、前記軟質弾性体が配置されていない領域に、前記軟質弾性体よりもアスカーC硬度が高く且つ厚さが小さい硬質弾性体を有していることを特徴とする、前記(1)に記載の部分めっき装置。
(3) 前記硬質弾性体のアスカーC硬度が35°以上であることを特徴とする、前記(2)に記載の部分めっき装置。
(4) 前記軟質弾性体は、合成ゴムであることを特徴とする、前記(1)~(3)のいずれかに記載の部分めっき装置。
(5) 前記軟質弾性体は、シリコーンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ニトリルゴムの群から選ばれる1または2以上の合成ゴムが主成分であることを特徴とする、前記(1)~(4)のいずれかに記載の部分めっき装置。
(6) 前記軟質弾性体の厚さと前記硬質弾性体の厚さとの差が、前記被めっき材の板厚以上であることを特徴とする、前記(2)~(5)のいずれかに記載の部分めっき装置。
(7) 前記軟質弾性体は、前記端子部材の端子部全体を覆う幅を有することを特徴とする、前記(1)~(6)のいずれかに記載の連続式部分めっき装置。
(8) 端子部材からなる被めっき材をバックアップベルトでドラム型治具の円筒面に押圧して密着させ、前記端子部材の端子部に、前記ドラム型治具に形成された開口部からめっき液を供給して端子部の被めっき面にめっきを形成する端子部材の部分めっき方法であって、
前記バックアップベルトは、基材と、前記基材の一方の面に配置された、アスカーC硬度が0.5°~25°の軟質弾性体を有し、
前記軟質弾性体により、少なくとも前記端子部材の端子部を、前記端子部材のめっきを形成する前記被めっき面とは反対側の裏面側から押圧し、前記端子部材を前記ドラム型治具の円筒面に密着させてめっきを行うことを特徴とする、部分めっき方法。
(9) 前記基材の一方の面において、前記軟質弾性体が配置されていない領域に、前記軟質弾性体よりもアスカーC硬度が高く且つ厚さが小さい硬質弾性体を有していることを特徴とする、前記(8)に記載の部分めっき方法。
(10) 前記硬質弾性体のアスカーC硬度が35°以上であることを特徴とする、前記(9)に記載の部分めっき方法。
(11) 前記軟質弾性体は、合成ゴムであることを特徴とする、前記(8)~(10)のいずれかに記載の部分めっき方法。
(12) 前記軟質弾性体は、シリコーンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ニトリルゴムの群から選ばれる1または2以上の合成ゴムが主成分であることを特徴とする、前記(8)~(11)のいずれかに記載の連続式部分めっき方法。
(13) 前記軟質弾性体の厚さと前記硬質弾性体の厚さとの差が、前記被めっき材の板厚以上であることを特徴とする、前記(9)~(12)のいずれかに記載の連続式部分めっき方法。
(14) 前記軟質弾性体により、前記端子部材の端子部全体を、前記端子部材の裏面側から押圧することを特徴とする、前記(8)~(13)のいずれかに記載の連続式部分めっき方法。
【実施例0049】
[実施例1]、[比較例1]
黄銅の圧延材(C2600R-H)にプレス加工が施され端子部23が形成された端子部材21に、前述の部分めっき装置を備えた連続めっき処理装置を用いて、前述の、前処理、下地めっきとしてNiめっき、本めっきとしてAuめっき、後処理を行う試験を行った。バックアップベルト31aの軟質弾性体33aと硬質弾性体34aの形状は帯状とした。
【0050】
実施例1のバックアップベルト31aは、
図4(a)に示すように、端子部23と接触する可能性がある領域に、端子部材21の被めっき面とは反対の裏面側から端子部23全体を覆う幅で軟質弾性体33aを配置し、軟質弾性体33aが配置されていない領域を硬質弾性体34aとした。端子部材21は、ガイド穴22hを有する上部支持部22、および下部支持部25を有し、上部支持部22におけるガイド穴22hと接触する領域を包含する領域と、下部支持部25と接触する領域には、硬質弾性体34aを配置した。バックアップベルト31aの基材32は、芯材がポリエステル帆布であって、芯材の片面にシリコンコート、反対側の面にシリコンを含浸させた厚さ2mmのものとした。そして、その基材32に、アスカーC硬度が1°、厚さ7mmのエチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)発泡体からなる軟質弾性体33aと、アスカーC硬度が35°、厚さ5mmのシリコーンゴムからなる硬質弾性体34aを接着した。
【0051】
なお、端子部材21の厚さは0.64mmであり、押圧がない状態における軟質弾性体33aの厚さから硬質弾性体34aの厚さを引いた厚さ2mmは、端子部材21の板厚の3.1倍である。
【0052】
比較例1のバックアップベルト31bは、
図4(b)に示すように、端子部材21の裏面側の全面をアスカーC硬度が35°のシリコーンゴムからなる硬質弾性体34bで覆うものとした。すなわち、実施例1と同じ基材32の全面にアスカーC硬度が35°のシリコーンゴムからなる硬質弾性体34bを接着したバックアップベルト31bを用いた。
【0053】
実施例1、比較例1ともに、めっき必要箇所である被めっき面の端子部23のAuめっき皮膜の膜厚が同じになるようにめっき条件を調整してAuめっき皮膜を形成し、部分めっき品を作製した。
【0054】
実施例1の部分めっき品のプレス加工による抜き部分の側面(端子部23の断面)や端子部23の裏面のAuめっき皮膜の膜厚を蛍光X線膜厚計で測定したところ、端子部23の側面へのめっきの付着はわずかであり、端子部の裏面のAuめっきの付着は観察されなかった。同様に比較例1の部分めっき品のAuめっき皮膜の膜厚を測定したところ、端子部23の側面のほぼ全面に端子部23の表面と同等のAuめっきの付着が観察され、端子部23の裏面にもわずかにAuめっきの付着が観察された。すなわち、本発明により、Auめっき不要部へのAu付着量を大幅に削減できることが確認された。
【0055】
[実施例2、実施例3、比較例2]
バックアップベルト31の帯状の軟質弾性体33および硬質弾性体34の幅、並びに端子部材21の裏面側から端子部23を覆う箇所を変更した以外は、実施例1と同様に、黄銅の圧延材(C2600R-H)にプレス加工が施され端子部23が形成された端子部材21に、下地めっきとしてNiめっき、本めっきとしてAuめっきを行う試験を行った。
【0056】
実施例2のバックアップベルト31cは、
図5(a)に示すように、軟質弾性体33cの幅を、端子部23全体および下部支持部25部分を覆う幅に変更し、それ以外の箇所を硬質弾性体34cとした以外は、実施例1と同様にした。
【0057】
実施例3のバックアップベルト31dは、
図5(b)に示すように、軟質弾性体33dの幅を、端子部23の一部である先端部のみを覆う幅に変更し、それ以外の軟質弾性体33dが配置されていない領域を硬質弾性体34dとした以外は、実施例1と同様にした。
【0058】
比較例2のバックアップベルト31eは、
図5(c)に示すように、端子部23と接触する可能性がある領域に軟質弾性体33eを配置せず、端子部材21の裏面側から下部支持部25部分と接触する領域のみに軟質弾性体33eを配置し、それ以外の箇所を硬質弾性体34eとした以外は、実施例1と同様にした。
【0059】
実施例1と同様の方法で、実施例2の部分めっき品を観察した結果、端子部23の側面へのめっきの付着はわずかであり、端子部23の裏面のAuめっきの付着は観察されなかった。また、実施例3の部分めっき品を観察した結果、端子部23の先端部分での側面へのめっきの付着はわずかであり、端子部23の先端部分での裏面のAuめっきの付着は観察されなかった。同様に比較例2の部分めっき品を観察したところ、端子部23の側面および裏面のほぼ全面にAuめっきの付着が観察された。
【0060】
以上のように、実施例1、2、3ともに、比較例1、2に比べて、被めっき面ではないめっき不要部分(端子部23の側面や裏面)へのAuめっき液の接触を削減でき、Auめっきの付着量を低減することができた。特に実施例2が最もAu付着量を削減できた。比較例1、2は、端子部23を押圧する部分が硬質弾性体34cのため、端子部23の側面へのAuめっき液の付着は避けられなかった。
【0061】
[実施例4、実施例5、実施例6]
軟質弾性体33のアスカーC硬度がそれぞれ5°(実施例4)、10°(実施例5)、15°(実施例6)のものを用いた以外は、実施例1と同様の方法で部分めっき材を作製した。
【0062】
実施例1と同様の方法で、実施例4、実施例5、実施例6の部分めっき品を観察した結果、いずれの部分めっき品についても、端子部23の側面へのAuめっきの付着はわずかで、側面への付着量は比較例1、2に比べて減少しており、端子部23の裏面のAuめっきの付着は観察されなかった。すなわち、本発明によりAu付着量を大幅に削減できることが確認された。