IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社プライムポリマーの特許一覧 ▶ 株式会社タケックス・ラボの特許一覧

特開2024-162761竹粉含有プロピレン系樹脂組成物および成形体
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162761
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】竹粉含有プロピレン系樹脂組成物および成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/10 20060101AFI20241114BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20241114BHJP
   C08L 101/12 20060101ALI20241114BHJP
   C08L 97/02 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
C08L23/10
C08L23/26
C08L101/12
C08L97/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078632
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】505130112
【氏名又は名称】株式会社プライムポリマー
(71)【出願人】
【識別番号】304049075
【氏名又は名称】株式会社タケックス・ラボ
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福井 洋文
(72)【発明者】
【氏名】板倉 啓太
(72)【発明者】
【氏名】古田 貴憲
(72)【発明者】
【氏名】岡田 久幸
(72)【発明者】
【氏名】山田 勇己
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA00Z
4J002AH00Y
4J002BB12W
4J002BB14W
4J002BB15Z
4J002BB21X
4J002BP01Z
4J002FD01Y
4J002GG01
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】低比重かつ熱変形温度が高いプロピレン系樹脂組成物、ならびに、前記プロピレン系樹脂組成物を用いて形成される成形体を提供することを課題とする。
【解決手段】下記要件(1)および(2)を満たすプロピレン系重合体(A)20~98質量%と、エラストマー(B)0~50質量%と、変性プロピレン樹脂(C)1~20質量%と、平均粒径が10μm以上、2000μm以下であり、且つ粒子径600μm以上の粒子の含有率が30%以上である竹粉(D)1~49質量%とを含むプロピレン系樹脂組成物:(1)メルトフローレート(MFR)(ASTM D1238、230℃、2.16kg荷重)が0.5~1000g/10分である;(2)示差走査型熱量計(DSC)で測定される融点(Tm)が150℃~170℃である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記要件(1)および(2)を満たすプロピレン系重合体(A)20~98質量%と、
エラストマー(B)0~50質量%と、
変性プロピレン樹脂(C)1~20質量%と、
平均粒径(JIS R1629に準拠したレーザー回折散乱法により測定される累積体積が50%となる粒子径)が10μm以上、2000μm以下であり、且つ粒子径600μm以上の粒子の含有率(JIS K0069に準拠した篩分け試験方法において目開き600μmの篩残分の重量比)が30%以上である竹粉(D)1~49質量%と
を含むプロピレン系樹脂組成物(ただし、前記成分(A)、(B)、(C)および(D)の合計を100質量%とする。):
(1)メルトフローレート(MFR)(ASTM D1238、230℃、2.16kg荷重)が0.5~1000g/10分である;
(2)示差走査型熱量計(DSC)で測定される融点(Tm)が150℃~170℃である。
【請求項2】
前記プロピレン系重合体(A)が、下記要件(3)および(4)をさらに満たす、請求項1に記載のプロピレン系樹脂組成物:
(3)アイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)が97.0%よりも高く、99.9%以下である;
(4)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が4.0~20.0である。
【請求項3】
請求項1ないし請求項2に記載のプロピレン系樹脂組成物を含む成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低比重かつ耐熱剛性にすぐれたプロピレン系樹脂組成物および当該組成物を含む成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレン系重合体は、比重が小さく、成形性やリサイクル性に優れていることから、日用雑貨、台所用品、包装用フィルム、家電製品、機械部品、電気部品、自動車部品など、種々の分野で利用されている。自動車部品では、自動車の安全性、居住性および快適性の向上、IT機器の増加に伴い、車載重量は増加する傾向があることから、プロピレン系重合体を含むプロピレン系樹脂組成物の使用比率が上昇している。特に、プロピレン系重合体、タルク、エチレン・α-オレフィン共重合体ゴムからなるプロピレン系樹脂組成物は、剛性と耐衝撃性のバランスに優れていることから、バンパー、インパネなどの自動車内外装部品に広く使用されている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
ここで、近年、地球温暖化を背景に、カーボンニュートラルに向けた取り組みが重要視されており、プロピレン系樹脂組成物においても、LCA(ライフサイクルアセスメント)の観点で、低CO2排出量化が求められている。原料調達から製造過程での低CO2排出量化、かつ軽量フィラーとして、天然植物由来のフィラー活用が考えられ、その一つとして竹の活用が挙げられる。特に、竹を粉砕した竹粉が、繊維抽出工程が含まれる竹繊維よりもフィラー製造工程における低CO2排出量の観点で有利と考えられる。竹粉をフィラーとして活用した事例として、プロピレン重合体と竹粉からなる樹脂組成物の製造方法が開示されている(特許文献3)。しかし、耐熱剛性(熱変形温度)の向上効果が不十分であり、低比重かつ耐熱剛性に優れたプロピレン系樹脂組成物の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3-250040号公報
【特許文献2】特開平7-053843号公報
【特許文献3】特開2019-199099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来技術に鑑み、本発明は、低比重かつ熱変形温度が高いプロピレン系樹脂組成物、ならびに、前記プロピレン系樹脂組成物を用いて形成される成形体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、高立体規則性のプロピレン系重合体と竹粉を含むプロピレン系樹脂組成物を用いることにより、低比重かつ熱変形温度が高くなることを見出し、本発明を完成させるに至った。本発明の態様例を以下に示す。
【0007】
[1]下記要件(1)および(2)を満たすプロピレン系重合体(A)20~98質量%と、
エラストマー(B)0~50質量%と、
変性プロピレン樹脂(C)1~20質量%と、
平均粒径(JIS R1629に準拠したレーザー回折散乱法により測定される累積体積が50%となる粒子径)が10μm以上、2000μm以下であり、且つ粒子径600μm以上の粒子の含有率(JIS K0069に準拠した篩分け試験方法において目開き600μmの篩残分の重量比)が30%以上である竹粉(D)1~49質量%と
を含むプロピレン系樹脂組成物(ただし、前記成分(A)、(B)、(C)および(D)の合計を100質量%とする。):
(1)メルトフローレート(MFR)(ASTM D1238、230℃、2.16kg荷重)が0.5~1000g/10分である;
(2)示差走査型熱量計(DSC)で測定される融点(Tm)が150℃~170℃である。
[2]前記プロピレン系重合体(A)が、下記要件(3)および(4)をさらに満たす、項[1]に記載のプロピレン系樹脂組成物:
(3)アイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)が97.0%よりも高く、99.9%以下である;
(4)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が4.0~20.0である。
[3]項[1]ないし[2]に記載のプロピレン系樹脂組成物を含む成形体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低比重および耐熱剛性に優れた竹粉含有プロピレン系樹脂組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
[プロピレン系樹脂組成物]
本発明のプロピレン系樹脂組成物(以下、単に「本発明の組成物」ともいう。)は、後述する、プロピレン系重合体(A)20~98質量%と、エラストマー(B)0~50質量%と、変性プロピレン樹脂(C)1~20質量%と、平均粒径(JIS R1629に準拠したレーザー回折散乱法により測定される累積体積が50%となる粒子径)が10μm以上、2000μm以下であり、且つ粒子径600μm以上の粒子の含有率(JIS K0069に準拠した篩分け試験方法において目開き600μmの篩残分の重量比)が30%以上である竹粉(D)1~49質量%とを含む(ただし、前記成分(A)、(B)、(C)および(D)の合計を100質量%とする。)。以下、各成分について説明する。
【0010】
[プロピレン系重合体(A)]
プロピレン系重合体(A)は、下記要件(1)および(2)を満たす。
【0011】
<要件(1)>
MFR(ASTM D1238、230℃、2.16kg荷重)が0.5~1000g/10分、好ましくは1.0~500g/10分、より好ましくは5~200g/10分である。MFRが前記範囲内であると、本発明の組成物の成形性と機械強度とのバランスに優れる。
【0012】
<要件(2)>
示差走査型熱量計(DSC)で測定される融点(Tm)が150℃~170℃、好ましくは155℃~170℃、更に好ましくは160℃~170℃である。融点が前記範囲内であると、本発明の組成物の耐熱剛性と耐衝撃性とのバランスに優れる。
【0013】
前記プロピレン系重合体(A)は、さらに下記要件(3)または(4)のいずれかを満たすことが好ましく、下記要件(3)および(4)の両方を満たすことがより好ましい。
【0014】
<要件(3)>
アイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)が97.0%よりも高く、99.9%以下、好ましくは97.3%よりも高く、99.9%以下、更に好ましくは97.5%よりも高く、99.9%以下である。アイソタクチックメソペンタッド分率が前記範囲内であると、本発明の組成物の耐熱剛性が優れる。
【0015】
ここで、アイソタクチックメソペンタッド分率は、分子鎖中の五連子アイソタクティック構造の存在割合を示しており、プロピレンモノマー単位が5個連続してメソ構造を有する連鎖の中心にあるプロピレン構造単位の分率である。アイソタクチックメソペンタッド分率は、後述する方法により求めることができる。
【0016】
<要件(4)>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が4.0~20.0、好ましくは4.5~15.0、より好ましくは4.8~10.0である。重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)が前記範囲内にあると、本発明の組成物の耐熱剛性および成形性が優れる。
【0017】
前記プロピレン重合体(A)は、一実施態様においてプロピレン単独重合体(Ah)である。
【0018】
前記プロピレン重合体(A)は、一実施態様においてランダム共重合体であり、例えば、プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(Ar)である。ランダム共重合体の場合、プロピレンに由来する構成単位の含有割合は、全繰返し構成単位100モル%中、好ましくは90モル%以上100モル%未満、より好ましくは93モル%以上99モル%以下である。前記含有割合は、例えば炭素核磁気共鳴分析(13C-NMR)により測定することができる。
【0019】
前記α-オレフィンとしては、例えば、プロピレン以外の炭素数2~20のα-オレフィンが挙げられ、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンが挙げられ、エチレンが好ましい。これらは1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
前記プロピレン重合体(A)は、一実施態様において、本発明に係るプロピレン重合体(A)の要件を満たすプロピレン単独重合体部(Ah)とプロピレン・α-オレフィン共重合体部(Ac)とからなるプロピレン系ブロック共重合体(Ab)であっても良い。
【0021】
前記共重合体部(Ac)は、プロピレンと、プロピレン以外の炭素数2~20のα-オレフィンとの共重合体からなる。前記α-オレフィンの具体例は上述したとおりであり、エチレンが好ましい。
【0022】
前記共重合体部(Ac)は、プロピレンに由来する構成単位を40.0~75.0モル%、好ましくは45.0~70.0モル%、より好ましくは50.0~65.0モル%の範囲で有し、プロピレン以外の炭素数2~20のα-オレフィンに由来する構成単位を25.0~60.0モル%、好ましくは30.0~55.0モル%、より好ましくは35.0~50.0モル%の範囲で有する。ただし、プロピレンに由来する構成単位と前記α-オレフィンに由来する構成単位との合計を100モル%とする。前記含有割合は、例えば炭素核磁気共鳴分析(13C-NMR)により測定することができる。
【0023】
前記プロピレン系ブロック共重合体(Ab)は、前記単独重合体部(Ah)を好ましくは50~99質量%、より好ましくは60~99質量%、さらに好ましくは70~97質量%の範囲で含有し、前記共重合体部(Ac)を好ましくは1~50質量%、より好ましくは1~40質量%、さらに好ましくは3~30質量%の範囲で含有する。ただし、前記単独重合体部(Ah)と前記共重合体部(Ac)との合計を100質量%とする。プロピレン・α-オレフィン共重合体部(Ac)は、通常、前記プロピレン系ブロック共重合体(Ab)の23℃でのn-デカン可溶成分に相当する。
【0024】
前記プロピレン系ブロック共重合体(Ab)の前記共重合体部(Ac)(23℃でのn-デカン可溶成分)の135℃のデカリンで測定した極限粘度[η]は、通常は1.0~12.0dl/g、好ましくは1.5~11.0dl/g、より好ましくは2.0~10.0dl/gである。
【0025】
前記プロピレン系重合体(A)は、本発明に係る要件を満たす範囲で、1種または2種以上のプロピレン重合体からなる組成物の形態で使用しても良い。
【0026】
本発明に係るプロピレン系重合体(A)は、バイオマス由来プロピレンを含んでいてもよい。重合体を構成するプロピレンがバイオマス由来プロピレンのみでもよいし、バイオマス由来プロピレンと化石燃料由来プロピレンの両方を含んでもよい。バイオマス由来プロピレンとは、菌類、酵母、藻類および細菌類を含む、植物由来または動物由来などの、あらゆる再生可能な天然原料およびその残渣を原料としてなるプロピレンで、炭素として14C同位体を10-12程度の割合で含有し、ASTM D6866に準拠して測定したバイオマス炭素濃度(pMC)が100(pMC)程度である。バイオマス由来プロピレンは、従来から知られている方法により得られる。本発明に係るプロピレン系重合体(A)がバイオマス由来プロピレンを含むことは環境負荷低減(主に温室効果ガス削減)の観点から好ましい。重合用触媒、重合プロセス、重合温度、などの重合体製造条件が同等であれば、原料プロピレンがバイオマス由来プロピレンを含んでいても、14C同位体を10-14~10-12程度の割合で含む以外の分子構造は化石燃料由来プロピレンからなるプロピレン単独重合体と同等である。従って、性能も変わらないとされる。
【0027】
本発明に係るプロピレン系重合体(A)は、ケミカルリサイクル由来プロピレンを含んでいてもよい。重合体を構成するプロピレンがケミカルリサイクル由来プロピレンのみでもよいし、ケミカルリサイクル由来プロピレンと化石燃料由来プロピレンおよび/またはバイオマス由来プロピレンを含んでもよい。ケミカルリサイクル由来プロピレンは、従来から知られている方法により得られる。本発明に係るプロピレン系重合体(A)がケミカルリサイクル由来プロピレンを含むことは環境負荷低減(主に廃棄物削減)の観点から好ましい。原料モノマーがケミカルリサイクル由来モノマーを含んでいても、ケミカルリサイクル由来モノマーは廃プラスチックなどの重合体を解重合、熱分解等でプロピレンなどのモノマー単位にまで戻したモノマー、ならびに該モノマーを原料にして製造したモノマーであるので、重合用触媒、重合プロセス、重合温度などの重合体製造条件が同等であれば、分子構造は化石燃料由来モノマーからなるプロピレン単独重合体と同等である。従って、性能も変わらないとされる。
【0028】
≪プロピレン系重合体(A)の製造方法≫
前記プロピレン系重合体(A)の製造方法は特に限定されず、例えばチーグラー・ナッタ触媒またはメタロセン触媒の存在下でプロピレンを単独重合するか、またはプロピレンと他のモノマーとを共重合することによって製造することができる。前記触媒としては、例えば、特開2014-214202号公報、特開2016-084387号公報、国際公開第2019/004418号、特開2007-224179号公報などに記載された触媒が挙げられる。
【0029】
[エラストマー(B)]
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、必要に応じてエラストマー(B)を含んでいても良い。エラストマー(B)の種類は特に限定されないが、エチレン・α-オレフィン共重合体、スチレン系ブロック共重合体が好ましい。
【0030】
前記エチレン・α-オレフィン共重合体は、例えば、エチレンと炭素数3~20、好ましくは3~10のα-オレフィンから選ばれる1種以上のα-オレフィンとを共重合して得られる。α-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-へキセン、1-オクテンが好ましく、1-ブテン、1-オクテンが特に好ましい。α-オレフィンは1種単独で使用しても良く、2種以上を混合して使用してもよい。
【0031】
前記エチレン・α-オレフィン共重合体のASTM D1238に準拠して測定した230℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.1~40g/10分、より好ましくは1~20g/10分、特に好ましくは1~10g/10分である。メルトフローレートが0.1g/10分以上であれば、樹脂流動性の低下や混練時の分散不良が起こりにくく、成形体の耐衝撃性等の物性が低下しにくい。一方、40g/10分以下であれば、成形体に十分な耐衝撃性が得られる傾向にある。
【0032】
前記エチレン・α-オレフィン共重合体における共重合体中の全構造単位に対するα-オレフィン由来構造単位の含有比率は5~50mol%、好ましくは5~40mol%、より好ましくは7~35mol%、特に好ましくは10~30mol%である。ただし、エチレンに由来する構成単位およびα-オレフィンに由来する構成単位の合計を100mol%とする。
【0033】
前記スチレン系ブロック共重合体としては、例えば、スチレン・共役ジエン型ジブロック共重合体、スチレン・共役ジエン・スチレントリブロック共重合体を用いることができる。その他、流動性を向上させる為に共役ジエンのビニル結合量を低下させたブロックY’を用いたX-Y-Y’型トリブロック共重合体を用いることもできる。ブロック共重合体の水素添加物としては、特にX-Y-X型トリブロック共重合体が好ましい。ここで、Xはスチレン由来の構造単位を表し、Yは共役ジエン由来の構造単位を表す。
【0034】
前記スチレン系ブロック共重合体において、スチレン含有量は好ましくは10~25質量%であり、MFR(ASTM D1238、190℃、2.16kg荷重)は好ましくは0.5~15g/10分、より好ましくは1~10g/10分である。
【0035】
前記スチレン系ブロック共重合体の具体例としては、スチレン・エチレン・ブテン・スチレンブロック共重合体、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体、スチレン・エチレン・プロピレンブロック共重合体が挙げられる。
【0036】
≪エラストマー(B)の製造方法≫
エラストマー(B)の製造方法は、特に限定されないが、例えば、WO2007/034920号公報の段落[0043]~[0088]に記載の方法で製造することができる。
【0037】
[変性プロピレン樹脂(C)]
変性プロピレン樹脂(C)としては、竹粉(D)とプロピレン系重合体(A)との親和性を改良し強度や耐熱性を向上する点から、無水脂肪酸変性ポリプロピレンが好ましく、無水マレイン酸変性ポリプロピレンがより好ましい。
【0038】
前記無水マレイン酸変性ポリプロピレンとしては、具体的に、三井化学社製アドマー(登録商標)、三洋化成社製ユーメックス(登録商標)、デュポン社製MZシリーズ、Exxon社製Exxelor(登録商標)、アディバントジャパン株式会社製ポリボンド3200等の市販品を使用することができる。
【0039】
≪変性プロピレン樹脂(C)の製造方法≫
変性プロピレン樹脂(C)は、プロピレン系重合体を酸変性することにより得られる。その変性方法としては、例えば、グラフト変性や共重合化がある。
【0040】
変性に用いる変性剤としては、不飽和カルボン酸およびその誘導体がある。不飽和カルボン酸の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ナジック酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、ソルビン酸、メサコン酸、アンゲリカ酸、フタル酸が挙げられる。不飽和カルボン酸の誘導体としては、例えば、酸無水物、エステル、アミド、イミド、金属塩がある。その具体例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水ナジック酸、無水フタル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、マレイン酸モノエチルエステル、アクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイミド、N-ブチルマレイミド、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウムが挙げられる。中でも、不飽和ジカルボン酸およびその誘導体が好ましく、無水マレイン酸および無水フタル酸がより好ましい。
【0041】
前記変性プロピレン樹脂(C)は、種々公知の方法、例えば、プロピレン系重合体を有機溶媒に溶解し、次いで得られた溶液に不飽和カルボン酸またはその誘導体及び必要に応じて有機過酸化物などのラジカル開始剤を加え、通常、60~350℃、好ましくは80~190℃の温度で、0.5~15時間、好ましくは1~10時間反応させる方法、あるいは、押出機などを使用して、無溶媒で、プロピレン系重合体と、不飽和カルボン酸もしくはその誘導体及び必要に応じて有機過酸化物などのラジカル開始剤を加え、通常、プロピレン系重合体の融点以上、好ましくは180~350℃、0.5~10分間反応させる方法を採り得る。
【0042】
[竹粉(D)]
竹粉(D)の平均粒径(JIS R1629に準拠したレーザー回折散乱法により測定される累積体積が50%となる粒子径)は、10μm以上2000μm以下、好ましくは15μm以上1000μm以下である。竹粉の粒径が2000μmよりも大きいと、プロピレン系樹脂組成物の耐衝撃性が低下する場合がある。また、竹粉の粒径が10μmよりも小さいとプロピレン系樹脂組成物の剛性が低下する場合がある。
【0043】
前記竹粉(D)は、更に粒子径600μmを超える粒子の含有率(JIS K0069に準拠した篩分け試験方法において目開き600μmの篩残分の重量比)が30%以上である。粒子径600μmを超える粒子の前記含有率が30%未満である場合は熱変形温度が低下する恐れがある。
【0044】
前記竹粉(D)は、チップソー式の切削式粉砕機を用いて竹を粉末状に加工した後に、篩別して用いることが好ましい。また、本発明の要件を満たす範囲において、竹の種類に制約はなく、一種類または複数の竹の種類からなる竹粉を使用することができる。本発明に用いる竹粉は竹齢3齢以上の孟宗竹を用いることが好ましい。
【0045】
[無機充填材]
本発明に係るプロピレン系樹脂組成物では、本発明の目的を損なわない範囲で、上述した成分(A)~(D)以外の無機充填材を添加しても良い。無機充填材としては、例えば、タルク、クレー、マイカ、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、リン酸アンモニウム塩、珪酸塩類、炭酸塩類、カーボンブラック、硫酸マグネシウム繊維、ガラス繊維、炭素繊維等が挙げられる。これらは、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
[他の成分]
本発明の組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、上述した成分(A)~(D)以外の、樹脂、ゴム、充填剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤、核剤などの他の成分を配合することができる。これらは、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
[プロピレン系樹脂組成物の態様]
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系重合体(A)、エラストマー(B)、変性プロピレン樹脂(C)、および竹粉(D)を含む。前記成分(A)、(B)、(C)および(D)の合計を100質量%とした場合、
前記成分(A)が20~98質量%、好ましくは30~98質量%、より好ましくは40~90質量%であり、
前記成分(B)が0~50質量%、好ましくは0~40質量%。より好ましくは0~30質量%であり、
前記成分(C)が1~20質量%、好ましくは1~15質量%、より好ましくは1~10質量%であり、
前記成分(D)が1~49質量%、好ましくは5~49質量%である。
【0048】
前記成分(C)の使用量が前記範囲より少ない場合は、成形体の剛性の向上効果が認めらない場合がある。一方、使用量が前記範囲より多い場合は、成形体の機械的特性における衝撃強度が低下する場合がある。
【0049】
<プロピレン系樹脂組成物の製造方法>
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、上述した各成分を配合することにより製造することができる。各成分は、任意の順番で逐次配合してもよく、同時に混合してもよい。また、一部の成分を混合した後に他の成分を混合するような多段階の混合方法を採用してもよい。各成分の配合方法としては、例えば、バンバリーミキサー、単軸押出機、2軸押出機、高速2軸押出機などの混合装置を用いて、各成分を同時にもしくは逐次に、混合または溶融混練する方法が挙げられる。
【0050】
[成形体]
本発明の成形体は、上述した本発明の組成物を用いて形成される。本発明の組成物からなる成形体は、軽量かつ耐熱剛性に優れていることから、例えば自動車部品、家電部品、食品容器など様々な分野に好適に用いることができる。
【0051】
自動車部品としては、例えば、バンパー、サイドモール、空力アンダーカバーなどの自動車外装部品;インストルメントパネル、内装トリムなどの自動車内装部品;フェンダー、ドアパネル、ステップなどの外板部品;エンジンカバー、ファン、ファンシェラウドなどのエンジン周囲部品;などが挙げられる。
【0052】
食品容器としては、例えば、食器、レトルト容器、冷凍保存容器、レトルトパウチ、電子レンジ耐熱容器、冷凍食品容器、冷菓カップ、カップ、飲料ボトルなどの食品容器、レトルト容器、ボトル容器などが挙げられる。
【0053】
本発明の成形体のその他の用途としては、例えば、家電製品の筐体、電線被覆材、高圧電線用碍子、化粧品・香水スプレー用チューブ、医療用チューブ、輸液チューブ、パイプ、ワイヤーハーネス、自動二輪・鉄道車両・航空機・船舶等の内装材、インストルメントパネル表皮、ドアトリム表皮、リアーパッケージトリム表皮、天井表皮、リアピラー表皮、シートバックガーニッシュ、コンソールボックス、アームレスト、エアバックケースリッド、シフトノブ、アシストグリップ、サイドステップマット、リクライニングカバー、トランク内シート、シートベルトバックル、インナー・アウターモール、ルーフモール、ベルトモールなどのモール材、ドアシール、ボディシールなどの自動車用シール材、グラスランチャンネル、泥よけ、キッキングプレート、ステップマット、ナンバープレートハウジング、自動車用ホース部材、エアダクトホース、エアダクトカバー、エアインテークパイプ、エアダムスカート、タイミングベルトカバーシール、ボンネットクッション、ドアクッションなどの自動車内外装材、制振タイヤ、静動タイヤ、カーレースタイヤ、ラジコンタイヤなどの特殊タイヤ、パッキン、自動車ダストカバー、ランプシール、自動車用ブーツ材、ラックアンドピニオンブーツ、タイミングベルト、ワイヤーハーネス、グロメット、エンブレム、エアフィルタパッキン、家具・履物・衣料・袋物・建材等の表皮材、建築用シール材、防水シート、建材シート、建材ガスケット、建材用ウインドウフィルム、鉄芯保護部材、ガスケット、ドア、ドア枠、窓枠、廻縁、巾木、開口枠等、床材、天井材、壁紙、健康用品(例:滑り止めマット・シート、転倒防止フィルム・マット・シート)、健康器具部材、衝撃吸収パッド、プロテクター・保護具(例:ヘルメット、ガード)、スポーツ用品(例:スポーツ用グリップ、プロテクター)、スポーツ用防具、ラケット、マウスガード、ボール、ゴルフボール、運搬用具(例:運搬用衝撃吸収グリップ、衝撃吸収シート)、制振パレット、衝撃吸収ダンパー、インシュレーター、履物用衝撃吸収材、衝撃吸収発泡体、衝撃吸収フィルムなどの衝撃吸収材、グリップ材、雑貨、玩具、靴のミッドソール・インナーソール・アウトソール、サンダル、吸盤、歯ブラシ、床材、体操用マット、電動工具部材、農機具部材、放熱材、透明基板、防音材、クッション材、電線ケーブル、形状記憶材料、ガスケット、高圧蒸気滅菌等高温処理される用途のパッキング材、工業用シール材、工業用ミシンテーブル、ナンバープレートハウジング、ペットボトルキャップライナーなどのキャップライナー、文房具、オフィス用品、OAプリンタ脚、FAX脚、ミシン脚、モータ支持マット、オーディオ防振材などの精密機器・OA機器支持部材、OA用耐熱パッキン、衣装ケース、デスクマットなどが挙げられる。
【0054】
本発明の成形体の成形法としては、特に限定されず、重合体の成形法として公知の様々な方法を採用することができるが、特に射出成形や、押出成形、プレス成形が好ましい。
【実施例0055】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例に記載された各種物性の測定方法は以下のとおりである。
【0056】
<アイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)>
重合体の立体規則性の指標の1つであり、そのミクロタクティシティーを調べたアイソタクチックメソペンタッド分率mmmm〔%〕は、プロピレン系重合体においてMacromolecules 8,687(1975)に基づいて帰属した13C-NMRスペクトルのピーク強度比より算出した。13C-NMRスペクトルは、日本電子製EX-400の装置を用い、TMSを基準とし、温度130℃、o-ジクロロベンゼン溶媒を用いて測定した。
【0057】
<融点>
前記昇温溶出分別測定(TREF)により122℃以上の温度で溶出した成分の融点を、示差走査熱量計(DSC、パーキンエルマー社製)を用いて下記条件で測定を行った。ここで測定した第3stepにおける吸熱ピークを融点(Tm)と定義した。
(測定条件)
第1step:10℃/minで240℃まで昇温し、10分間保持する。
第2step:10℃/minで60℃まで降温する。
第3step:10℃/minで240℃まで昇温する。
【0058】
<重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)>
分子量分布の指標であるMw/Mn値は、下記条件で測定したクロマトグラムを公知の方法によって解析することによって得た。
(測定条件)
装置:Waters製ゲル浸透クロマトグラフAllianceGPC2000型
カラム:東ソー製TSKgel GMH6-HT x2+TSKgel GMH6-HTL x2
移動相:o-ジクロロベンゼン(0.025%BHT含有)
流速:1.0ml/min
温度:140℃
カラム校正:東ソー製単分散ポリスチレン
試料濃度:0.15%(w/v)
注入量:0.4ミリリットル
【0059】
<無水マレイン酸グラフト量>
変性プロピレン樹脂を約2g採取し、500mlの沸騰p-キシレンに完全に加熱溶解した。変性プロピレン樹脂が溶けたp-キシレン溶液を2Lビーカーに移して、23℃雰囲気下で約1時間放冷させた。その後、1200mlのアセトンを前記ビーカーに加えて、撹拌しながらポリマーを析出させた。析出物を濾過、乾燥して未グラフト分を除去した変性プロピレン樹脂の精製物を得た。この精製物からのプレスフィルムのFT-IR測定し、1790cm-1と974cm-1のピーク強度比により、ポリプロピレン中にグラフトした無水マレイン酸量をwt%換算で算出した。
【0060】
<極限粘度[η]>
デカリン溶媒を用いて、135℃で測定した。サンプル約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度[ηsp]を測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度[ηsp]を測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時の[ηsp/C]の値を極限粘度[η]として求めた。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)
【0061】
<メルトフローレート(MFR)>
ASTM D1238Eに準拠し、測定温度は230℃とし、2.16kg荷重で測定した。
【0062】
<比重>
23℃、水中置換法にて測定を行った。
【0063】
<加熱変形温度>
JIS K7191に準拠し、以下の条件で加熱変形温度を測定した。
(測定条件)
試験片:10mm(幅)×4mm(厚さ)×80mm(長さ)
荷重:0.45MPa
【0064】
[製造例1]
<プロピレン系単独重合体(Ah-1)の製造方法>
(1)固体状チタン触媒成分の調製
無水塩化マグネシウム95.2g、デカン442mlおよび2-エチルヘキシルアルコール390.6gを130℃で2時間加熱反応を行って均一溶液とした後、この溶液中に無水フタル酸21.3gを添加し、さらに130℃にて1時間攪拌混合を行い、無水フタル酸を溶解させた。
【0065】
このようにして得られた均一溶液を室温に冷却した後、-20℃に保持した四塩化チタン200ml中に、この均一溶液の75mlを1時間にわたって滴下装入した。装入終了後、この混合液の温度を4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでフタル酸ジイソブチル(DIBP)5.22gを添加し、これより2時間同温度にて攪拌保持した。
【0066】
2時間の反応終了後、熱濾過にて固体部を採取し、この固体部を275mlの四塩化チタンに再懸濁させた後、再び110℃で2時間、加熱した。反応終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、110℃のデカンおよびヘキサンにて溶液中に遊離のチタン化合物が検出されなくなるまで充分洗浄した。
【0067】
ここで、この遊離チタン化合物の検出は次の方法で確認した。予め窒素置換した100mlの枝付きシュレンクに上記固体触媒成分の上澄み液10mlを注射器で採取し装入した。次に、窒素気流にて溶媒ヘキサンを乾燥し、さらに30分間真空乾燥した。これに、イオン交換水40ml、(1+1)硫酸10mlを装入し30分間攪拌した。この水溶液をろ紙を通して100mlメスフラスコに移し、続いて鉄(II)イオンのマスキング剤として濃リン酸水溶液1mlとチタンの発色試薬として3%過酸化水素水5mlを加え、さらにイオン交換水で100mlにメスアップしたこのメスフラスコを振り混ぜ、20分後にUVを用い420nmの吸光度を観測しこの吸収が観測されなくなるまで遊離チタンの洗浄除去を行った。
【0068】
上記のように調製された固体状チタン触媒成分(A)は、デカンスラリーとして保存したが、この内の一部を、触媒組成を調べる目的で乾燥した。このようにして得られた固体状チタン触媒成分(A)の組成は、チタン2.3重量%、塩素61重量%、マグネシウム19重量%、DIBP12.5重量%であった。
【0069】
(2)前重合触媒の製造
固体触媒成分100g、トリエチルアルミニウム39.3mL、ヘプタン100Lを内容量200Lの攪拌機付きオートクレーブに挿入し、内温15~20℃に保ちプロピレンを600g挿入し、60分間攪拌しながら反応させ、触媒スラリーを得た。
【0070】
(3)本重合
内容量58Lのジャケット付循環式管状重合器にプロピレンを43kg/時間、水素を177NL/時間、(2)で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として0.58g/時間、トリエチルアルミニウム3.1ml/時間、ジシクロペンチルジメトキシシラン3.3ml/時間を連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状重合器の温度は70℃であり、圧力は3.53MPa/Gであった。
【0071】
得られたスラリーは内容量100Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを45kg/時間、水素を気相部の水素濃度が3.2mol%になるように供給した。重合温度70℃、圧力3.28MPa/Gで重合を行った。
【0072】
得られたプロピレン系単独重合体(Ah-1)は、80℃で真空乾燥を行った。プロピレン系単独重合体(Ah-1)の物性を表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
[製造例2]
<プロピレン系ブロック共重合体(Ab-1)の製造方法>
(1)固体状チタン触媒成分の調製
製造例1に記載と同様の方法で固体状チタン触媒成分を得た。
【0075】
(2)前重合触媒の製造
製造例1に記載と同様の方法で前重合触媒成分を含む触媒スラリーを得た。
【0076】
(3)本重合
内容量58Lのジャケット付循環式管状重合器にプロピレンを43kg/時間、水素を300NL/時間、(2)で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として0.55g/時間、トリエチルアルミニウム2.9ml/時間、ジシクロペンチルジメトキシシラン3.1ml/時間を連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状重合器の温度は70℃であり、圧力は3.74MPa/Gであった。
【0077】
得られたスラリーは内容量100Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを45kg/時間、水素を気相部の水素濃度が8.7mol%になるように供給した。重合温度70℃、圧力3.49MPa/Gで重合を行った。
【0078】
得られたスラリーを内容量2.4Lの移液管に移送し、当該スラリーをガス化させ、気固分離を行った後、内容量480Lの気相重合器にポリプロピレンホモポリマーパウダーを送り、エチレン・プロピレンブロック共重合を行った。なお、当該パウダーの一部を共重合前にサンプリングしてMFRとmmmmの測定を行った。気相重合器内のガス組成が、エチレン/(エチレン+プロピレン)として0.23(モル比)、水素/エチレンとして0.031(モル比)になるようにプロピレン、エチレン、水素を連続的に供給した。重合温度70℃、圧力1.0MPa/Gで重合を行った。
【0079】
得られたプロピレン系ブロック共重合体(Ab-1)は、80℃で真空乾燥を行った。得られたプロピレン系ブロック共重合体(Ab-1)の物性を表2に示す。
【0080】
【表2】
【0081】
[製造例3]
<プロピレン系ランダム共重合体(Ar-1)の製造方法>
[固体状チタン触媒成分(a-1)の調製]
無水塩化マグネシウム95.2g、デカン442mlおよび2-エチルヘキシルアルコール390.6gを130℃で2時間加熱反応を行って均一溶液とした後、この溶液中に無水フタル酸21.3gを添加し、さらに130℃にて1時間攪拌混合を行い、無水フタル酸を溶解させた。
【0082】
このようにして得られた均一溶液を室温に冷却した後、-20℃に保持した四塩化チタン200ml中に、この均一溶液の75mlを1時間にわたって滴下装入した。装入終了後、この混合液の温度を4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでフタル酸ジイソブチル(DIBP)5.22gを添加し、これより2時間同温度にて攪拌保持した。
【0083】
2時間の反応終了後、熱濾過にて固体部を採取し、この固体部を275mlの四塩化チタンに再懸濁させた後、再び110℃で2時間、加熱した。反応終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、110℃のデカンおよびヘキサンにて溶液中に遊離のチタン化合物が検出されなくなるまで充分洗浄した。
【0084】
上記の様に調製された固体状チタン触媒成分はヘキサンスラリーとして保存されるが、このうち一部を乾燥して触媒組成を調べた。固体状チタン触媒成分は、チタンを2.3重量%、塩素を61重量%、マグネシウムを19重量%およびDIBPを12.5重量%の量で含有していた。
【0085】
[予重合触媒(b-1)の製造]
遷移金属触媒成分(a-1)100g、トリエチルアルミニウム15.4mL、ヘプタン100Lを内容量200Lの攪拌機付きオートクレーブに挿入し、内温5℃に保ちプロピレンを600g挿入し、60分間攪拌しながら反応させた。重合終了後、四塩化チタン4.1mLを装入し、予重合触媒(b-1)とした。この予重合触媒(b-1)は遷移金属触媒成分1g当りポリプロピレンを6g含んでいた。
【0086】
[プロピレン系ランダム共重合体(Ar-1)の製造]
内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器に、プロピレンを130kg/時間、エチレンを2.6kg/時間、予重合触媒(b-1)を遷移金属触媒成分として0.50g/時間、トリエチルアルミニウムを5.2mL/時間、ジシクロペンチルジメトキシシランを2.8mL/時間で連続的に供給し、水素を気相部の水素濃度が6.0mol%になるよう供給した。攪拌機付きベッセル重合器の温度は70℃であり、圧力は3.25MPa/Gであった。
【0087】
得られたスラリーは失活後、プロピレンを蒸発させてパウダー状のプロピレン系ランダム共重合体を得た。得られたプロピレン系ランダム共重合体は、MFRが8.0g/10分、エチレン含量が4.2wt%であった。
【0088】
得られたプロピレン系ランダム共重合体100重量部に対し、耐熱安定剤ホスタノックスP-EPQ(クラリアントケミカルズ(株)商標)0.1重量部、ステアリン酸カルシウム0.1重量部、カヤヘキサAD(化薬ヌーリオン(株)商標)0.029重量部をタンブラーにて混合後、二軸押出機にて下記条件にて溶融混練してペレット状のプロピレン系ランダム共重合体(Ar-1)を調製した。プロピレン系ランダム共重合体(Ar-1)の物性を表3に示す。
【0089】
<溶融混練条件>
同方向二軸混練機:品番 KZW-15、(株)テクノベル製
混練温度:210℃
スクリュー回転数:500rpm
フィーダー回転数:40rpm
【0090】
【表3】
【0091】
[実施例1]
製造例1で製造されたプロピレン系単独重合体(Ah-1)69重量部、エラストマー(B-1)(タフマー A-1050S(三井化学(株)商標))10重量部、平均粒径500μmであり、且つ粒子径600μmを超える粒子の含有率が32%である竹粉(D-1)((株)タケックス・ラボ製)20重量部、無水マレイン酸変性PP([η]=0.43dl/g、無水マレイン酸グラフト量=3wt%)(C-1)1重量部、IRGANOX1010(チバガイギー(株)商標)0.1重量部、耐熱安定剤IRGAFOS168(チバガイギー(株)商標)0.1重量部、ステアリン酸カルシウム0.1重量部をタンブラーにて混合後、二軸押出機にて下記の条件で溶融混練してペレット状のプロピレン系樹脂組成物を調製し、射出成形機にて下記の条件で試験片を作成した。得られたプロピレン系樹脂組成物の物性を表4に示す。
【0092】
<溶融混練条件>
同方向二軸混練機:品番 KZW-15、(株)テクノベル製
混練温度:170℃
スクリュー回転数:600rpm
フィーダー回転数:80rpm
【0093】
<JIS小型試験片/射出成形条件>
射出成形機:品番 EC40、東芝機械(株)製
シリンダー温度:190℃
金型温度:40℃
射出時間-保圧時間:20秒(一次充填時間:1秒)
冷却時間:5秒
【0094】
[実施例2]
実施例1において、プロピレン系単独重合体(Ah-1)69重量部とエラストマー(B-1)10重量部に代えて、製造例2で製造されたプロピレン系ブロック共重合体(Ab-1)79重量部とした以外は実施例1と同様にして、プロピレン系樹脂組成物を得た。得られた組成物の物性を表4に示す。
【0095】
[実施例3]
実施例1において、プロピレン系単独重合体(Ah-1)69重量部に代えて、プロピレン系ブロック共重合体(Ab-1)69重量部とした以外は実施例1と同様にして、プロピレン系樹脂組成物を得た。得られた組成物の物性を表4に示す。
【0096】
[実施例4]
実施例1において、プロピレン系単独重合体(Ah-1)69重量部とエラストマー(B-1)10重量部に代えて、プロピレン系単独重合体(Ah-1)及びプロピレン系ブロック共重合体(Ab-1)をそれぞれ39.5重量部とした以外は実施例1と同様にして、プロピレン系樹脂組成物を得た。得られた組成物の物性を表4に示す。
【0097】
[実施例5]
実施例1において、プロピレン系単独重合体(Ah-1)69重量部とエラストマー(B-1)10重量部に代えて、プロピレン系単独重合体(Ah-1)及びプロピレン系ブロック共重合体(Ab-1)をそれぞれ37重量部とエラストマー(B-1)5重量部とした以外は実施例1と同様にして、プロピレン系樹脂組成物を得た。得られた組成物の物性を表4に示す。
【0098】
[実施例6]
実施例1において、プロピレン系単独重合体(Ah-1)69重量部とエラストマー(B-1)10重量部に代えて、プロピレン系単独重合体(Ah-1)及びプロピレン系ブロック共重合体(Ab-1)をそれぞれ32重量部とエラストマー(B-1)15重量部とした以外は実施例1と同様にして、プロピレン系樹脂組成物を得た。得られた組成物の物性を表4に示す。
【0099】
[比較例1]
実施例1において、プロピレン系単独重合体(Ah-1)69重量部とエラストマー(B-1)10重量部に代えて、製造例3で製造されたプロピレン系ランダム共重合体(Ar-1)79重量部とした以外は実施例1と同様にして、プロピレン系樹脂組成物を得た。得られた組成物の物性を表4に示す。
【0100】
[比較例2]
プロピレン系単独重合体(Ah-1)90重量部、タルク(浅田製粉(株)製JM-209)10重量部、IRGANOX1010(チバガイギー(株)商標)0.1重量部、耐熱安定剤IRGAFOS168(チバガイギー(株)商標)0.1重量部、ステアリン酸カルシウム0.1重量部をタンブラーにて混合後、実施例1と同様の方法でプロピレン系樹脂組成物を得た。得られた組成物の物性を表4に示す。
【0101】
[比較例3]
比較例2においてプロピレン系単独重合体(Ah-1)90重量部に代えて、プロピレン系単独重合体(Ah-1)80重量部とエラストマー(B-1)10重量部とした以外は比較例2と同様にして、プロピレン系樹脂組成物を得た。得られた組成物の物性を表4に示す。
【0102】
[比較例4]
比較例2においてプロピレン系単独重合体(Ah-1)90重量部に代えて、プロピレン系単ブロック共重合体(Ab-1)90重量部とした以外は比較例2と同様にして、プロピレン系樹脂組成物を得た。得られた組成物の物性を表4に示す。
【0103】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、軽量かつ耐熱剛性に優れていることから、例えば自動車部品、家電部品、食品容器など様々な分野に好適に用いることができる。