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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162765
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】弾性クローラ
(51)【国際特許分類】
   B62D 55/253 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
B62D55/253 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078637
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石嵜 友己
(57)【要約】
【課題】耐久性に優れた弾性クローラ10の提供。
【解決手段】弾性クローラ10は、メインベルト14、ホール及び膜18を有している。メインベルト14は、無端形状を有する。このメインベルト14は、内周面及び外周面を有している。ホールは、内周面に開口している。このホールは、駆動輪の爪を受け入れうる。膜18は、ホールの底を塞いでいる。膜18は、カップ48とジョイント50とを有している。ジョイント50は、カップ48とメインベルト14とを繋いでいる。ジョイント50は、リセス56を含んでいる。このリセス56の直下において、ジョイント50の厚さは小さい。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
爪を有する駆動輪を含む走行装置の弾性クローラであって、
無端形状であって、内周面及び外周面を有するメインベルト、
上記内周面に開口しており、かつ上記爪を受け入れうるホール、
並びに
上記ホールを塞ぐ膜
を備えており、
上記膜が、カップと、このカップと上記メインベルトとを繋ぐジョイントとを含んでおり、
上記ジョイントが、その直下においてこのジョイントの厚さが小さいリセスを有する、弾性クローラ。
【請求項2】
上記リセスの直下における上記ジョイントの最小厚さの、上記ジョイントの最大厚さに対する比率Pe1が、35%以上75%以下である、請求項1に記載の弾性クローラ。
【請求項3】
上記リセスが、上記弾性クローラの前後方向に延在する、請求項1又は2に記載の弾性クローラ。
【請求項4】
上記リセスの断面形状が円弧又は矩形である、請求項1又は2に記載の弾性クローラ。
【請求項5】
上記ジョイントが、上記リセスの直下において、左右方向中心に向かって徐々に厚さが小さくなる形状を有する、請求項1又は2に記載の弾性クローラ。
【請求項6】
上記リセスが、上記弾性クローラの左右方向において上記ジョイントの実質的に中心に位置する、請求項1又は2に記載の弾性クローラ。
【請求項7】
上記ジョイントの最大厚さの、上記メインベルトの最大厚さに対する比率Pe2が、5%以上25%以下である、請求項1又は2に記載の弾性クローラ。
【請求項8】
上記カップが、ボトムシートと、このボトムシートから起立して上記ジョイントに至るサイドシートとを含んでおり、
上記サイドシートが、上記ボトムシートから上記ジョイントに向かうに従って、上記弾性クローラの左右方向外側に向かう傾斜を有する、請求項1又は2に記載の弾性クローラ。
【請求項9】
上記サイドシートの、上記弾性クローラの左右方向に対する角度が、15°以上90°以下である、請求項8に記載の弾性クローラ。
【請求項10】
上記カップが、ボトムシートと、このボトムシートから起立して上記ジョイントに至るサイドシートとを含んでおり、
上記弾性クローラの左右方向における、上記ジョイントの長さの、上記ボトムシートの長さに対する比率Pe3が、15%以上50%以下である、請求項1又は2に記載の弾性クローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、弾性クローラを開示する。詳細には、本明細書は、爪を含む駆動輪を有する走行装置の、弾性クローラに関する。
【背景技術】
【0002】
農機具等の走行装置は、スプロケット(駆動輪)、転輪及び弾性クローラを有している。スプロケットは、爪を含んでいる。弾性クローラは、ゴム等からなり無端形状を有するメインベルトと、このメインベルトの内周面に開口するホールとを有している。このホールは、スプロケットの爪を受け入れ、スプロケットからの駆動力をメインベルトに伝達する。
【0003】
ホールには、土砂等が侵入しうる。この土砂は、メインベルトの内周面と転輪との間に介在する。この介在は、メインベルトを損傷する。特開2003-175868公報には、ホールの底を塞ぐ膜を有する弾性クローラが、開示されている。この膜は、ホールへの土砂の侵入を阻止しうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-175868公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
膜は、爪と擦れ合う。膜はさらに、爪によって押圧され、異物と接触する。この擦動、押圧、接触等を要因として、膜に亀裂が発生しうる。この亀裂が成長し、メインベルトにまで至ることがある。この亀裂は、メインベルトへの水の侵入を招き、メインベルト中の金属部材の腐食を誘発する。亀裂の成長は、弾性クローラの寿命を損なう。
【0006】
本出願人の意図するところは、耐久性に優れた弾性クローラの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、爪を有する駆動輪を含む走行装置の弾性クローラを開示する。このクローラは、
無端形状であって、内周面及び外周面を有するメインベルト、
上記内周面に開口しており、かつ上記爪を受け入れうるホール、
並びに
上記ホールを塞ぐ膜
を有する。この膜は、カップと、このカップと上記メインベルトとを繋ぐジョイントとを含む。ジョイントは、その直下においてこのジョイントの厚さが小さいリセスを有する。
【発明の効果】
【0008】
この弾性クローラでは、膜に亀裂が発生した場合、この亀裂のメインベルトへの到達をリセスが抑制する。このクローラは、耐久性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態に係る弾性クローラを含む走行装置が示された概略図である。
図2図2は、図1の弾性クローラの一部が示された拡大平面図である。
図3図3は、図2のIII-III線に沿った断面図である。
図4図4は、図2のIV-IV線に沿った断面図である。
図5図5は、図2のV-V線に沿った断面図である。
図6図6は、図2の弾性クローラの膜の近傍が示された拡大平面図である。
図7図7は、図6のVII-VII線に沿った拡大断面図である。
図8図8は、図6の膜の一部が示された拡大斜視図である。
図9図9は、図6の膜が示された平面図である。
図10図10は、図7の矢印Xで示された部分の拡大図である。
図11図11は、他の実施形態に係る弾性クローラの一部が示された断面図である。
図12図12は、さらに他の実施形態に係る弾性クローラの一部が示された断面図である。
図13図13は、さらに他の実施形態に係る弾性クローラの一部が示された断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態が詳細に説明される。
【0011】
図1に、走行装置2が示されている。この走行装置2は、駆動輪4、従動輪6、複数の転輪8及び弾性クローラ10を有している。本実施形態では、駆動輪4は、スプロケット12である。この走行装置2は、図示されない駆動手段(エンジン等)を有している。この駆動手段により、スプロケット12が回転させられる。クローラ10は、スプロケット12と従動輪6との間に巻き掛けられている。スプロケット12の回転により、クローラ10が回転する。クローラ10が回転するとき、転輪8はクローラ10を案内する。この案内により、クローラ10の蛇行が阻止される。クローラ10の回転により、装置2が走行する。典型的な走行装置2として、土木機器、建設機器及び農業用機器が挙げられる。走行装置2が、複数の従動輪6を有してもよい。走行装置2が、従動輪6と他の従動輪6との間に位置する転輪8を有してもよい。
【0012】
図2-5に、弾性クローラ10が示されている。これらの図面において、矢印Xは左右方向を表し、矢印Yは前後方向を表し、矢印Zは厚み方向を表す。左右方向Xは、駆動輪4の軸方向でもある。前後方向Yは、クローラ10の周方向でもある。図1-5に示されるように、このクローラ10は、メインベルト14、複数のホール16、複数の膜18、複数のラグ20、複数の芯金22、複数の転輪ガイド24及び一対の抗張体26を有している。
【0013】
メインベルト14は、無端形状を有する。このメインベルト14は、内周面28及び外周面30を有している。メインベルト14はさらに、一対の外縁32を有している。図2において矢印Wmは、メインベルト14の幅を表す。幅Wmは、左側の外縁32から右側の外縁32までの距離である。メインベルト14の幅Wmは、クローラ10の幅でもある。幅Wmは、通常は100mm以上600mm以下である。メインベルト14は、弾性材料から形成されている。ゴム、合成樹脂、エラストマー等が、メインベルト14に用いられうる。メインベルト14の典型的な材質は、架橋されたゴム組成物である。
【0014】
図2に示されるように、複数のホール16が前後方向Yに沿って並んでいる。本実施形態では、これらのホール16は、等ピッチで並んでいる。それぞれのホール16は、前後方向Yにおいて、芯金22とこれに隣接する他の芯金22との間に位置している。ホール16は、メインベルト14の内周面28に開口している。図4に示されるように、ホール16は、一対の側壁34を有している。
【0015】
弾性クローラ10が走行するとき、このホール16にスプロケット12の爪36(図1を参照)が入り込む。ホール16は、爪36を受け入れる。この爪36により、スプロケット12から芯金22を介してメインベルト14へと、駆動力が伝達される。
【0016】
図4及び5に示されるように、それぞれの膜18は、厚み方向Zにおいて、ホール16の外側に位置している。この膜18は、ホール16の底を塞いでいる。本実施形態では、膜18は、メインベルト14と一体である。従って膜18の材質は、メインベルト14の材質と同じである。膜18は、弾性を有する。膜18は、変形能を有する。膜18は、厚み方向Zの外側からホール16へと土砂が侵入することを、阻止する。換言すれば、膜18は、土砂による内周面28の損傷を抑制しうる。膜18の材質がメインベルト14の材質と異なってもよい。
【0017】
図1に示されるように、複数のラグ20が、周方向に沿って並んでいる。実施形態では、これらのラグ20は、等ピッチで並んでいる。図1、3及び4に示されるように、それぞれのラグ20は、メインベルト14の外周面30から突出している。このラグ20の材質は、メインベルト14の材質とは異なっている。ラグ20の典型的な材質は、架橋されたゴム組成物である。ラグ20の材質が、メインベルト14の材質と同じであってもよい。
【0018】
図2に示されるように、複数の芯金22が、前後方向に沿って並んでいる。本実施形態では、これらの芯金22は、等ピッチで並んでいる。それぞれの芯金22は、幅方向中心に位置している。芯金22は、概してメインベルト14に埋設されている。芯金22の一部は、メインベルト14から露出している。芯金22の一部がメインベルト14から露出する場合も含め、本明細書では、「埋設」と称される。芯金22は、硬質である。芯金22の典型的な材質は、スチール、ステンレススチール等の金属である。
【0019】
図3に示されるように、この芯金22は、センター38、一対のホーン40(horn)及び一対のウイング42を有している。それぞれのホーン40は、センター38から厚み方向内向き(図3の上向き)に突出している。それぞれのウイング42は、センター38から左右方向外向きに突出している。芯金22を含まない弾性クローラ10を、装置2が有してもよい。
【0020】
図1及び2に示されるように、複数の転輪ガイド24が、前後方向Yに沿って並んでいる。これらの転輪ガイド24は、等ピッチで並んでいる。それぞれの転輪ガイド24は、左右方向中心に位置している。図3に示されるように、この転輪ガイド24は、メインベルト14の内周面28から突出している。この転輪ガイド24は、一対のガイド突起44を有している。図3に示されるように、それぞれのガイド突起44は、芯金22のホーン40を含んでいる。換言すれば、ホーン40は、芯金22の一部であり、かつガイド突起44の一部でもある。このガイド突起44はさらに、メインベルト14の一部を含んでいる。転輪ガイド24が、メインベルト14を含まないガイド突起44を有してもよい。換言すれば、ガイド突起44において、ホーン40が完全に露出してもよい。
【0021】
抗張体26は、メインベルト14に埋設されている。抗張体26は、厚み方向Zにおいて芯金22の外側(図3の下側)に位置している。この抗張体26は、複数のコード46を有している。これらのコード46は、左右方向Xに並列している。それぞれのコード46は、前後方向に延在している。このコード46は、メインベルト14の過剰な伸張を抑制しうる。コード46の典型的な材質は、スチール、ステンレススチール等の金属である。コード46が、有機繊維から形成されてもよい。抗張体26を含まない弾性クローラ10を、装置2が有してもよい。
【0022】
図6及び7に、膜18が示されている。本実施形態では、膜18は、左右対称な形状を有している。この膜18は、カップ48と一対のジョイント50とを含んでいる。それぞれのジョイント50は、カップ48とホール16の側壁34とを繋いでいる。換言すればジョイント50は、カップ48とメインベルト14とを繋いでいる。
【0023】
本実施形態では、カップ48は、ボトムシート52と一対のサイドシート54とを有している。図7に示されるように、ボトムシート52は、左右方向Xに対して概ね平行である。それぞれのサイドシート54は、ボトムシート52から起立しており、ジョイント50に至っている。このサイドシート54は、厚み方向Zに対して傾斜している。サイドシート54は、ボトムシート52からジョイント50に向かうに従って、左右方向外側に向かっている。
【0024】
図8は、図6の膜18の一部が示された拡大斜視図である。図6-8に示されるように、ジョイント50は、左右方向Xに対して概ね平行である。ジョイント50は、一対のリセス56と、複数のサブリセス58とを有している。本実施形態では、それぞれのリセス56は、厚み方向内側に開口している。リセス56は、前後方向Yに沿って延在している。リセス56の延在方向が、前後方向Yに対して傾斜してもよい。図8から明らかなように、リセス56の直下において、ジョイント50の厚さは小さい。従って、リセス56の直下におけるジョイント50の破断力は、小さい。
【0025】
本発明者が得た知見によれば、膜18の亀裂は、左右方向Xに沿って成長しやすい。図9に示された点P1にもし亀裂が生じると、この亀裂は、矢印A1に沿って点P2にまで成長しうる。点P2において、亀裂はリセス56に達する。リセス56の直下においてジョイント50の破断力が小さいので、亀裂は矢印A2に沿って、点P3に向かって成長する。換言すれば、亀裂は、リセス56の長さ方向に沿って成長する。リセス56は、このリセス56に沿った亀裂の成長を促す。リセス56は、亀裂のメインベルト14(図7参照)への到達を阻止する。このクローラ10では、メインベルト14への水の侵入が生じにくい。このクローラ10では、メインベルト14の中の抗張体26の腐食が、生じにくい。このクローラ10は、耐久性に優れる。
【0026】
亀裂は、点P3からメインベルト14に至りうる。この場合において、点P1からメインベルト14までの亀裂成長の軌跡は、直線的ではない。この亀裂がメインベルト14に至るまでの弾性クローラ10の走行距離は、リセス56を含まない膜を有するクローラのそれと比べ、十分大きい。リセス56は、クローラ10の耐久性に寄与しうる。亀裂が、点P3から、サブリセス58に沿ってさらに成長してもよい。
【0027】
図10は、図7の矢印Xで示された部分の拡大図である。図10から明らかなように、リセス56の断面形状は、概して半円である。リセス56が、半円以外の円弧形状を有してもよい。
【0028】
図10において、矢印Trはリセス56の直下におけるジョイント50の厚さを表し、矢印Tjはリセス56のない位置におけるジョイント50の厚さを表す。厚さTrは、ジョイント50の最小厚さである。厚さTjは、ジョイント50の最大厚さである。最小厚さTrの、最大厚さTjに対する比率Pe1は、75%以下が好ましい。比率Pe1が75%以下であるジョイント50では、リセス56に沿った亀裂の成長が促される。この観点から、比率Pe1は65%以下がより好ましく、60%以下が特に好ましい。比率Pe1は、35%以上が好ましい。比率Pe1が35%以上であるジョイント50では、リセス56が起点である亀裂が生じにくい。さらに、比率Pe1が35%以上であるジョイント50では、リセス56に沿った亀裂の成長が、急すぎない。これらの観点から、比率Pe1は40%以上がより好ましく、45%以上が特に好ましい。
【0029】
図10において矢印Wrは、リセス56の幅を表す。リセス56に沿った亀裂の成長が促されるとの観点から、幅Wrは0.5mm以上が好ましく、2.0mm以上がより好ましく、3.0mm以上が特に好ましい。ジョイント50の強度の観点から、幅Wrは20mm以下が好ましい。
【0030】
図10から明らかなように、リセス56は、左右方向Xにおいてジョイント50の実質的に中心に位置している。換言すれば、リセス56はカップ48から離れており、かつメインベルト14からも離れている。図10において、矢印Liはジョイント50の内側エンドからリセス56までの距離を表し、矢印Loはジョイント50の外側エンドからリセス56までの距離を表す。距離Li及びLoのそれぞれは、左右方向Xに沿って測定される。
【0031】
リセス56がカップ48から離れているので、この弾性クローラ10では、リセス56が亀裂の起点となりにくい。この観点から、距離Liと距離Loとの比(Li/Lo)は30/70以上が好ましく、40/60以上がより好ましく、45/55以上が特に好ましい。
【0032】
リセス56がメインベルト14から離れているので、この弾性クローラ10では、リセス56に存在する亀裂がメインベルト14に至りにくい。この観点から、比(Li/Lo)は70/30以下が好ましく、60/40以下がより好ましく、55/45以下が特に好ましい。
【0033】
図9において矢印Lrは、リセス56の長さを表す。長さLrとリセス56の幅Wr(図10参照)との比(Lr/Wr)は、2.0以上が好ましい。比(Lr/Wr)が2.0以上であるジョイント50では、リセス56に沿った亀裂の成長が促される。この観点から、比(Lr/Wr)は5.0以上がより好ましく、10.0以上が特に好ましい。比(Lr/Wr)は、500以下が好ましい。
【0034】
図4において矢印Tmは、メインベルト14の最大厚さを表す。ジョイント50の最大厚さTj(図10参照)の、メインベルト14の最大厚さTmに対する比率Pe2は、5%以上25%以下が好ましい。比率Pe2が5%以上であるジョイント50は、耐久性に優れる。この観点から、比率Pe2は8%以上がより好ましく、10%以上が特に好ましい。比率Pe2が25%以下であるジョイント50では、リセス56に沿った亀裂の成長が促される。この観点から、比率Pe2は22%以下がより好ましく、20%以下が特に好ましい。
【0035】
図7において矢印Lbは、ボトムシート52の長さを表す。図10において矢印Ljは、ジョイント50の長さを表す。長さLb及びLjのそれぞれは、左右方向Xに沿って測定される。ジョイント50の長さLjの、ボトムシート52の長さLbに対する比率Pe3は、15%以上50%以下が好ましい。比率Pe3が15%以上である弾性クローラ10では、リセス56に沿った亀裂の成長が促される。この観点から、比率Pe3は20%以上がより好ましく、25%以上が特に好ましい。比率Pe3が50%以下であるクローラ10では、ボトムシート52が十分に長いので、膜18における応力が分散されて亀裂の発生及び成長が抑制されうる。この観点から、比率Pe3は40%以下がより好ましく、35%以下が特に好ましい。
【0036】
図7において矢印θは、左右方向Xに対するサイドシート54の角度を表す。角度θは、15°以上が好ましい。角度θが15°以上である膜18では、ボトムシート52が十分に長いので、膜18における応力が分散されて亀裂の発生及び成長が抑制されうる。この観点から、角度θは45°以上がより好ましく、60°以上が特に好ましい。角度θは、90°以下が好ましい。
【0037】
図11に、他の実施形態に係る弾性クローラ60の一部が示されている。図11には、カップ62、ジョイント64及びメインベルト66が示されている。このクローラ60の、ジョイント64以外の部材の構造は、図1-10に示されたクローラ10のそれらと同じである。
【0038】
図11に示されるように、ジョイント64は、リセス68を有している。このリセス68の断面形状は、矩形である。図示されないが、リセス68は、図8に示されたリセス56と同様、前後方向Yに沿って延在している。リセス68の直下において、ジョイント64の厚さは小さい。従って、リセス68の直下におけるジョイント64の破断力は、小さい。
【0039】
ボトムシート52(図9参照)で発生した亀裂は成長し、リセス68に達する。リセス68の直下においてジョイント64の破断力が小さいので、亀裂はリセス68に沿って成長する。リセス68は、亀裂のメインベルト66への到達を抑制する。このクローラ60では、メインベルト66への水の侵入が生じにくい。このクローラ60では、メインベルト66の中の抗張体の腐食が、生じにくい。このクローラ60は、耐久性に優れる。
【0040】
ジョイント64における、最小厚さTrの最大厚さTjに対する比率Pe1は、75%以下が好ましく、65%以下がより好ましく、60%以下が特に好ましい。比率Pe1は、35%以上が好ましく、40%以上がより好ましく、45%以上が特に好ましい。
【0041】
リセス68の幅Wrは、0.5mm以上が好ましく、2.0mm以上がより好ましく、3.0mm以上が特に好ましい。幅Wrは、20mm以下が好ましい。
【0042】
ジョイント64の内側エンドからリセス68までの距離Liと、ジョイント64の外側エンドからリセス68までの距離Loとの比(Li/Lo)は、30/70以上が好ましく、40/60以上がより好ましく、45/55以上が特に好ましい。比(Li/Lo)は70/30以下が好ましく、60/40以下がより好ましく、55/45以下が特に好ましい。
【0043】
リセス68の長さLr(図9参照)とリセス68の幅Wrとの比(Lr/Wr)は、2.0以上が好まく、5.0以上がより好ましく、8.0以上が特に好ましい。比(Lr/Wr)は、500以下が好ましい。
【0044】
ジョイント64の最大厚さTjの、メインベルト66の最大厚さTm(図4参照)に対する比率Pe2は、5%以上25%以下が好ましい。比率Pe2は、8%以上がより好ましく、10%以上が特に好ましい。比率Pe2は、22%以下がより好ましく、20%以下が特に好ましい。
【0045】
ジョイント64の長さLjの、ボトムシートの長さLb(図7参照)に対する比率Pe3は、15%以上50%以下が好ましい。比率Pe3は、20%以上がより好ましく、25%以上が特に好ましい。比率Pe3は、40%以下がより好ましく、35%以下が特に好ましい。
【0046】
図12に、さらに他の実施形態に係る弾性クローラ70の一部が示されている。図12には、カップ72、ジョイント74及びメインベルト76が示されている。このクローラ70の、ジョイント74以外の部材の構造は、図1-10に示されたクローラ10のそれらと同じである。
【0047】
図12に示されるように、ジョイント74は、第一リセス78及び第二リセス80を有している。第一リセス78は、厚み方向内向きに開口している。第一リセス78の断面形状は、矩形である。図示されないが、第一リセス78は、図8に示されたリセス56と同様、前後方向Yに沿って延在している。第二リセス80は、厚み方向外向きに開口している。第二リセス80の断面形状は、矩形である。図示されないが、第二リセス80も、前後方向Yに沿って延在している。第一リセス78及び第二リセス80に挟まれた部分において、ジョイント74の厚さは小さい。従って、第一リセス78及び第二リセス80の直下におけるジョイント74の破断力は、小さい。
【0048】
ボトムシート52(図9参照)で発生した亀裂は成長し、第一リセス78及び第二リセス80に達する。第一リセス78及び第二リセス80の直下においてジョイント74の破断力が小さいので、亀裂は第一リセス78及び第二リセス80に沿って成長する。第一リセス78及び第二リセス80は、亀裂のメインベルト76への到達を抑制する。このクローラ70では、メインベルト76への水の侵入が生じにくい。このクローラ70では、メインベルト76の中の抗張体の腐食が、生じにくい。このクローラ70は、耐久性に優れる。
【0049】
ジョイント74における、最小厚さTrの最大厚さTjに対する比率Pe1は、75%以下が好ましく、65%以下がより好ましく、60%以下が特に好ましい。比率Pe1は、35%以上が好ましく、40%以上がより好ましく、45%以上が特に好ましい。
【0050】
第一リセス78及び第二リセス80の幅Wrは、0.5mm以上が好ましく、2.0mm以上がより好ましく、3.0mm以上が特に好ましい。幅Wrは、20mm以下が好ましい。第二リセス80が、第一リセス78の幅とは異なる幅を有してもよい。第二リセス80が、第一リセス78の形状とは異なる形状を有してもよい。
【0051】
ジョイント74の内側エンドから第一リセス78又は第二リセス80までの距離Liと、ジョイント74の外側エンドから第一リセス78又は第二リセス80までの距離Loとの比(Li/Lo)は、30/70以上が好ましく、40/60以上がより好ましく、45/55以上が特に好ましい。比(Li/Lo)は70/30以下が好ましく、60/40以下がより好ましく、55/45以下が特に好ましい。
【0052】
ジョイント74の最大厚さTjの、メインベルト76の最大厚さTm(図4参照)に対する比率Pe2は、5%以上25%以下が好ましい。比率Pe2は、8%以上がより好ましく、10%以上が特に好ましい。比率Pe2は、22%以下がより好ましく、20%以下が特に好ましい。
【0053】
第一リセス78又は第二リセス80の、長さLr(図9参照)と幅Wrとの比(Lr/Wr)は、2.0以上が好まく、5.0以上がより好ましく、8.0以上が特に好ましい。比(Lr/Wr)は、500以下が好ましい。
【0054】
ジョイント74の長さLjの、ボトムシートの長さLb(図7参照)に対する比率Pe3は、15%以上50%以下が好ましい。比率Pe3は、20%以上がより好ましく、25%以上が特に好ましい。比率Pe3は、40%以下がより好ましく、35%以下が特に好ましい。
【0055】
図13に、さらに他の実施形態に係る弾性クローラ82の一部が示されている。図13には、カップ84、ジョイント86及びメインベルト88が示されている。このクローラ82の、ジョイント86以外の部材の構造は、図1-10に示されたクローラ10のそれらと同じである。
【0056】
図13に示されるように、ジョイント86は、リセス90を有している。図13において符号P4は、リセス90の最深点である。ジョイント86は、リセス90の直下において、点P4に向かって徐々に厚さが小さくなる形状を有している。図示されないが、リセス90は、図8に示されたリセス56と同様、前後方向Yに沿って延在している。リセス90の直下におけるジョイント86の破断力は、小さい。
【0057】
ボトムシート52(図9参照)で発生した亀裂は成長し、リセス90に達する。リセス90の直下においてジョイント86の破断力が小さいので、亀裂はリセス90に沿って成長する。リセス90は、亀裂のメインベルト88への到達を抑制する。このクローラ82では、メインベルト88への水の侵入が生じにくい。このクローラ82では、メインベルト88の中の抗張体の腐食が、生じにくい。このクローラ82は、耐久性に優れる。
【0058】
ジョイント86における、最小厚さTrの最大厚さTjに対する比率Pe1は、75%以下が好ましく、65%以下がより好ましく、60%以下が特に好ましい。比率Pe1は、35%以上が好ましく、40%以上がより好ましく、45%以上が特に好ましい。
【0059】
リセス90の幅Wrは、0.5mm以上が好ましく、2.0mm以上がより好ましく、3.0mm以上が特に好ましい。幅Wrは、20mm以下が好ましい。
【0060】
リセス90の長さLr(図9参照)とリセス90の幅Wrとの比(Lr/Wr)は、2.0以上が好まく、5.0以上がより好ましく、8.0以上が特に好ましい。比(Lr/Wr)は、500以下が好ましい。
【0061】
ジョイント86の最大厚さTjの、メインベルト88の最大厚さTm(図4参照)に対する比率Pe2は、5%以上25%以下が好ましい。比率Pe2は、8%以上がより好ましく、10%以上が特に好ましい。比率Pe2は、22%以下がより好ましく、20%以下が特に好ましい。
【0062】
ジョイント86の長さLjの、ボトムシートの長さLb(図7参照)に対する比率Pe3は、15%以上50%以下が好ましい。比率Pe3は、20%以上がより好ましく、25%以上が特に好ましい。比率Pe3は、40%以下がより好ましく、35%以下が特に好ましい。
【0063】
[開示項目]
以下の項目のそれぞれは、好ましい実施形態の開示である。
【0064】
[項目1]
爪を有する駆動輪を含む走行装置の弾性クローラであって、
無端形状であって、内周面及び外周面を有するメインベルト、
上記内周面に開口しており、かつ上記爪を受け入れうるホール、
並びに
上記ホールを塞ぐ膜
を備えており、
上記膜が、カップと、このカップと上記メインベルトとを繋ぐジョイントとを含んでおり、
上記ジョイントが、その直下においてこのジョイントの厚さが小さいリセスを有する、弾性クローラ。
【0065】
[項目2]
上記リセスの直下における上記ジョイントの最小厚さの、上記ジョイントの最大厚さに対する比率Pe1が、35%以上75%以下である、項目1に記載の弾性クローラ。
【0066】
[項目3]
上記リセスが、上記弾性クローラの前後方向に延在する、項目1又は2に記載の弾性クローラ。
【0067】
[項目4]
上記リセスの断面形状が円弧又は矩形である、項目1から3のいずれかに記載の弾性クローラ。
【0068】
[項目5]
上記ジョイントが、上記リセスの直下において、左右方向中心に向かって徐々に厚さが小さくなる形状を有する、項目1から3のいずれかに記載の弾性クローラ。
【0069】
[項目6]
上記リセスが、上記弾性クローラの左右方向において上記ジョイントの実質的に中心に位置する、項目1から5のいずれかに記載の弾性クローラ。
【0070】
[項目7]
上記ジョイントの最大厚さの、上記メインベルトの最大厚さに対する比率Pe2が、5%以上25%以下である、項目1から6のいずれかに記載の弾性クローラ。
【0071】
[項目8]
上記カップが、ボトムシートと、このボトムシートから起立して上記ジョイントに至るサイドシートとを含んでおり、
上記サイドシートが、上記ボトムシートから上記ジョイントに向かうに従って、上記弾性クローラの左右方向外側に向かう傾斜を有する、項目1から7のいずれかに記載の弾性クローラ。
【0072】
[項目9]
上記サイドシートの、上記弾性クローラの左右方向に対する角度が、15°以上90°以下である、項目8に記載の弾性クローラ。
【0073】
[項目10]
上記カップが、ボトムシートと、このボトムシートから起立して上記ジョイントに至るサイドシートとを含んでおり、
上記弾性クローラの左右方向における、上記ジョイントの長さの、上記ボトムシートの長さに対する比率Pe3が、15%以上50%以下である、項目1から7のいずれかに記載の弾性クローラ。
【産業上の利用可能性】
【0074】
前述の弾性クローラは、種々の走行装置に適している。このクローラは特に、農業機械及び建設機械に適している。
【符号の説明】
【0075】
2・・・走行装置
4・・・駆動輪
6・・・従動輪
8・・・転輪
10・・・弾性クローラ
12・・・スプロケット
14・・・メインベルト
16・・・ホール
18・・・膜
20・・・ラグ
22・・・芯金
24・・・転輪ガイド
26・・・抗張体
28・・・内周面
30・・・外周面
32・・・外縁
34・・・側壁
36・・・爪
38・・・センター
40・・・ホーン
42・・・ウイング
44・・・ガイド突起
46・・・コード
48・・・カップ
50・・・ジョイント
52・・・ボトムシート
54・・・サイドシート
56・・・リセス
58・・・サブリセス
60・・・弾性クローラ
62・・・カップ
64・・・ジョイント
66・・・メインベルト
68・・・リセス
70・・・弾性クローラ
72・・・カップ
74・・・ジョイント
76・・・メインベルト
78・・・第一リセス
80・・・第二リセス
82・・・弾性クローラ
84・・・カップ
86・・・ジョイント
88・・・メインベルト
90・・・リセス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13