(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162768
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】立形研削盤
(51)【国際特許分類】
B24B 5/12 20060101AFI20241114BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20241114BHJP
B24B 5/08 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B24B5/12
B24B41/06 C
B24B41/06 A
B24B5/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078649
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】391003668
【氏名又は名称】トーヨーエイテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】真田 謙郎
(72)【発明者】
【氏名】上杉 燎平
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
【Fターム(参考)】
3C034AA01
3C034AA05
3C034BB79
3C034BB83
3C034DD20
3C043AA08
3C043CC03
3C043DD05
3C043DD12
(57)【要約】
【課題】シューベースがどのような位置にあっても常にローダアームをワークの受け渡し位置に対して正確に位置決めできるようにする。
【解決手段】立形研削盤1であり、内周研削時と外周研削時とで回転台2の回転方向を逆にしてシューベース3を所定位置に旋回させた状態で回転するワークWの外周面をシュー31で支持することにより、中心線C1を回転軸J1に対して偏心させた状態で研削する。ローダアーム5がシューベース3に軸支されることにより、これらの相対的な位置関係は一定とされる一方で、シューベース3が旋回することにより、ローダアーム5と受け渡し位置の相対的な位置関係は不定とされている。制御装置6が、ローダアーム5の作動開始時におけるローダアーム5と受け渡し位置の位置関係が任意な状態から、受け渡し位置に対してローダアーム5を適正位置にセットする処理を実行する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの中心線を上下の方向であるZ軸方向に配置し、当該中心線回りに当該ワークを回転させてその内周面及び外周面の双方を研削する立形研削盤であって、
前記ワークを載置した状態で支持するとともに前記Z軸方向に延びる回転軸を中心に正転又は逆転の各方向に回転する回転台と、
前記回転台の上に支持された状態の前記ワークの外周面と対向するシューを有するとともに前記Z軸方向に延びる旋回軸を中心に旋回するシューベースと、
前記ワークを搬送してストッパで位置決めすることにより、所定の受け渡し位置に前記ワークをセットするコンベアと、
前記Z軸方向に延びる揺動軸を中心に揺動することにより、前記受け渡し位置にセットされた前記ワークを前記回転台の上に移送させるローダアームと、
前記回転台及び前記シューベースに対し、略水平な方向であるX軸方向における前記受け渡し位置の位置を調整するX軸調整機構と、
前記シューベース、前記コンベア、前記ローダアーム、及び、前記X軸調整機構の動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記ワークの内周面の研削時と外周面の研削時とで前記回転台の回転方向を逆にして、前記シューベースを所定位置に旋回させた状態で、回転する前記ワークの外周面を前記シューで支持することにより、前記中心線を前記回転軸に対して偏心させた状態で研削するように構成されており、
前記ローダアームが前記シューベースに軸支されることにより、当該ローダアームと当該シューベースの相対的な位置関係は一定とされる一方で、前記シューベースが旋回することにより、前記ローダアームと前記受け渡し位置の相対的な位置関係は不定とされ、
前記制御装置が、前記ローダアームと前記受け渡し位置の位置関係を調整するアーム位置調整部を有し、当該アーム位置調整部が、前記ローダアームの作動開始時における前記ローダアームと前記受け渡し位置の位置関係が任意な状態から、前記受け渡し位置に対して前記ローダアームを適正位置にセットするアーム位置決め処理を実行することを特徴とする立形研削盤。
【請求項2】
請求項1に記載の立形研削盤において、
前記アーム位置調整部は、前記ローダアームの揺動角度及び前記受け渡し位置の前記X軸方向における位置の双方を調整することにより、前記アーム位置決め処理を実行する立形研削盤。
【請求項3】
請求項2に記載の立形研削盤において、
前記受け渡し位置の教示に基づいて、前記X軸方向と直交するY軸方向に、前記ローダアームが前記受け渡し位置に対して適正位置にセットされるように前記ローダアームの揺動角度を調整した後に、前記受け渡し位置の前記X軸方向における位置を前記X軸調整機構で調整する、立形研削盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示する技術は、立形研削盤に関し、その中でも特にセンタレスタイプの立形研削盤のローディング機構に関する。
【背景技術】
【0002】
立形研削盤には、主に金属製の円筒状の部材を加工対象(ワーク)とし、そのワークを上下方向に延びる縦軸回りに回転させながら、その内周面及び外周面の双方の研削が可能な装置がある。そのような立形研削盤の一例は、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
また、センタレスタイプの研削盤もある。その研削盤は、ワークの内周面の研削と外周面の研削とで回転方向を逆にするとともに、それぞれの回転方向でワークの中心を回転軸の中心から偏心させた状態で研削する装置である。その研削盤では、電磁チャックでワークの底面を吸着し、研削時に偏心して回転するワークの外周面をシューで支持する。シューは、所定の旋回軸に旋回可能な状態で軸支されているシューベースに設置されている。
【0004】
それにより、偏心した回転によってワークに作用する押付力をシューで受け止めた状態で研削できるので、安定した研削が行える。センタレスタイプの研削盤の一例は、特許文献2に開示されている。ただし、その研削盤は、水平方向に延びる横軸回りにワークを回転させながら研削するので、立形ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-140911号公報
【特許文献2】特開2008-307619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
センタレスタイプの立形研削盤の場合、上述したように、偏心したワークの外周面をシューで受け止めるので、研削部位及びワークに応じてシューの適正位置が変わる。それに伴ってシューベースが旋回してその位置も変化する。
【0007】
従って、ローダアームを揺動操作することにより、所定位置に位置決めされたワークをローダアームの先端に支持して、シューベースの所定位置にワークをローダアームで移送する場合、シューベースの位置に合わせてローダアームの揺動角度を調整する必要がある。しかし、その揺動角度の調整は、微小なうえに、高精度が求められるため、誤差が生じ易く、難しい。
【0008】
それに対し、ローダアームをシューベースに軸支すれば、ローダアームとシューベースとの位置関係を一定にできる。従って、そうすれば、シューベースの位置が変化しても、ローダアームを所定の角度揺動することで、常に適正位置にワークを移送できる。
【0009】
しかし、そうした場合、コンベアでワークを搬送し、所定の受け渡し位置にセットされたワークをローダアームで自動的に支持して移送する機種では、シューベースが旋回することによってローダアームと受け渡し位置にセットされたワークとの位置関係は不定となるという問題が発生する。
【0010】
ローダアームやシューベースの寸法にもよるが、例えば、シューベースが約0.4°旋回しただけで、ローダアームの先端では数mmの位置ズレが発生する。その結果、ローディング不良、更にはローダアームやワークの破損といった不具合を招くおそれがある。
【0011】
そこで、今回、そのようなタイプの立形研削盤において、ワークの移送、つまりローディングの開始にシューベースがどのような位置にあっても、常にローダアームをワークの受け渡し位置に対して正確に位置決めでき、ワークを適切に移送できる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
開示する技術は、ワークの中心線を上下の方向であるZ軸方向に配置し、当該中心線回りに当該ワークを回転させてその内周面及び外周面の双方を研削する立形研削盤に関する。
【0013】
前記立形研削盤は、前記ワークを載置した状態で支持するとともに前記Z軸方向に延びる回転軸を中心に正転又は逆転の各方向に回転する回転台と、前記回転台の上に支持された状態の前記ワークの外周面と対向するシューを有するとともに前記Z軸方向に延びる旋回軸を中心に旋回するシューベースと、前記ワークを搬送してストッパで位置決めすることにより、所定の受け渡し位置に前記ワークをセットするコンベアと、前記Z軸方向に延びる揺動軸を中心に揺動することにより、前記受け渡し位置にセットされた前記ワークを前記回転台の上に移送させるローダアームと、前記回転台及び前記シューベースに対し、略水平な方向であるX軸方向における前記受け渡し位置の位置を調整するX軸調整機構と、前記シューベース、前記コンベア、前記ローダアーム、及び、前記X軸調整機構の動作を制御する制御装置と、を備える。
【0014】
そして、前記ワークの内周面の研削時と外周面の研削時とで前記回転台の回転方向を逆にして、前記シューベースを所定位置に旋回させた状態で、回転する前記ワークの外周面を前記シューで支持することにより、前記中心線を前記回転軸に対して偏心させた状態で研削するように構成されている。更に、前記ローダアームが前記シューベースに軸支されることにより、当該ローダアームと当該シューベースの相対的な位置関係は一定とされる一方で、前記シューベースが旋回することにより、前記ローダアームと前記受け渡し位置の相対的な位置関係は不定とされるようになっている。
【0015】
そうして、前記制御装置が、前記ローダアームと前記受け渡し位置の位置関係を調整するアーム位置調整部を有し、当該アーム位置調整部が、前記ローダアームの作動開始時における前記ローダアームと前記受け渡し位置の位置関係が任意な状態から、前記受け渡し位置に対して前記ローダアームを適正位置にセットするアーム位置決め処理を実行することを特徴とする。
【0016】
すなわち、この立形研削盤によれば、いわゆるセンタレスタイプであるので、ワークの内周面及び外周面の双方を安定して研削でき、高精度な加工が行える。
【0017】
そして、ローダアームがシューベースに軸支されることにより、ローダアームとシューベースの相対的な位置関係は一定とされているので、ローダアームは、シューベースの位置に関係無く、受け渡し位置で支持したワークを、同じ揺動動作で、常に、適切な加工位置に移送することができる。従って、移送したワークがシューベースなどに接触することを防止できる。
【0018】
ところがそうした場合、シューベースが旋回することにより、ローダアームと受け渡し位置の相対的な位置関係は不定となり、シューベースを所定の基準位置にセットした状態でなければ、ローダアームがワークを適切に受け取ることができなくなる。その結果、適正位置と基準位置との間で、シューベースを繰り返し旋回させることとなり、誤操作を招き易い。
【0019】
それに対し、この立形研削盤では更に、制御装置が有するアーム位置調整部が、ローダアームの作動開始時におけるローダアームと受け渡し位置の位置関係が任意な状態から、受け渡し位置に対してローダアームを適正位置にセットするアーム位置決め処理を実行するように構成されている。
【0020】
それにより、シューベースがどのような位置にあっても、簡便かつ正確に、アーム位置決め処理が実行できるようになる。従って、開示する技術による立形研削盤によれば、上述したような不利も無く、高精度な加工が安定して行えるうえに、利便性にも優れる。
【0021】
前記アーム位置調整部は、前記ローダアームの揺動角度及び前記受け渡し位置の前記X軸方向における位置の双方を調整することにより、前記アーム位置決め処理を実行する、としてもよい。
【0022】
より具体的には、前記受け渡し位置の教示に基づいて、前記X軸方向と直交するY軸方向に、前記ローダアームが前記受け渡し位置に対して適正位置にセットされるように前記ローダアームの揺動角度を調整した後に、前記受け渡し位置の前記X軸方向における位置を前記X軸調整機構で調整する、とするとよい。
【0023】
そうすれば、受け渡し位置の教示を一回行うだけで、その後は、シューベースがどのような位置にあっても、簡便かつ正確に、ローダアームを受け渡し位置に対して位置決めできる。
【発明の効果】
【0024】
開示する技術によれば、ローディングの開始にシューベースがどのような位置にあっても、常にローダアームをワークの受け渡し位置に対して正確に位置決めできる。従って、ワークを受け渡し位置から適切に研削位置に移送できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】開示する技術を適用した立形研削盤の主要部分の概略斜視図である。
【
図2】立形研削盤のローディング機構の部分を上方から見た簡略図である。
【
図3】制御装置とローディングの関連装置を示すブロック図である。
【
図4】立形研削盤のワークのローディング動作について説明するための図である。
【
図5】立形研削盤のワークのローディング動作について説明するための図である。
【
図6】立形研削盤のワークのローディング動作について説明するための図である。
【
図7】立形研削盤のローディング機構の細部構成を説明するための図である。
【
図8】改良したアーム位置決め処理の説明に用いる参照図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、開示する技術の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。
【0027】
なお、説明で用いるX軸,Y軸,Z軸の各方向は、各図に矢印で示す。Z軸方向は上下の方向に相当し、X軸方向及びY軸方向は略水平な方向に相当する(X軸,Y軸,Z軸の各方向は互いに直交)。X軸は左右方向に相当し、Y軸は前後方向に相当する。また、回転方向は上方から見た場合とする。
【0028】
<立形研削盤の全体構成>
図1及び
図2に、開示する技術を適用した立形研削盤1を示す。
図1は、立形研削盤1の主要部分を、その前方かつ左斜め上方から見た概略斜視図であり、
図2は、そのローディング機構の部分を上方から見た簡略図である。
【0029】
この立形研削盤1は、回転台2、シューベース3、コンベア4、及びローダアーム5を備える。回転台2及びシューベース3は加工機8を構成している。ローダアーム5は、ローディング機構を構成している。立形研削盤1はまた、これらシューベース3、コンベア4、ローダアーム5などの動作を制御する制御装置6を備える(制御装置6は後述)。
【0030】
(回転台)
回転台2は、回転駆動される主軸20の上部に設置された円板状の部分からなり、Z軸方向に延びる回転軸J1を中心に正転又は逆転の各方向に回転可能に構成されている。回転台2の上面は、通電によって磁力を発生する電磁チャックとなっている。
【0031】
立形研削盤1は、
図1に仮想線で示すような、主に、磁性を有する金属製の円筒状部材を加工対象(ワークW)としている。ワークWは、研削時には、その中心線C1をZ軸方向に配置した状態で回転台2の上に載置される。そして、電磁チャックが発生する磁力の作用でワークWの底面が回転台2の上面に吸着されることにより、ワークWは回転台2によって支持される。
【0032】
立形研削盤1には、
図1に仮想線で示すような内面用及び外面用の各砥石7が設置されている。この立形研削盤1は、これらの砥石7を用いて、ワークWの内周面及び外周面の双方が研削できるように構成されている(内周研削及び外周研削)。これら砥石7は、交換でき、Z軸方向に延びる軸を中心に回転駆動できるように構成されている。
【0033】
ワークWは、回転台2に支持されて中心線C1の回りに正転又は逆転の各方向に回転される。そうした状態で、ワークWの内周面又は外周面に、回転している砥石7を押し付けることにより、ワークWを研削する。
【0034】
更にこの立形研削盤1は、後述するシュー31を利用したセンタレスタイプであり、回転するワークWの外周面をシュー31で支持して研削する。そうすることにより、ワークWの中心線C1を回転軸J1に対して偏心させた状態で研磨するように構成されている。
【0035】
(シューベース)
図1に示すように、回転台2の周囲にシューベース3が配置されている。シューベース3は、後述するサーボモータ63の回転駆動により、回転軸J1から離れた位置でZ軸方向に延びる旋回軸J2を中心にして、基準となる位置(基準位置)から正逆両方向に旋回可能に構成されている。
【0036】
シューベース3は、回転台2の周囲を囲む円弧状の作用部30を有している。シューベース3が基準位置に位置している時は、
図2に示すように、作用部30の中心(作用中心C2)は回転軸J1に一致する。
【0037】
作用部30の離れた位置から回転台2に向かって2つのシュー31,31が突出している。それにより、これらシュー31,31は、回転台2の上に支持された状態のワークWの外周面とギャップを隔てて対向するように構成されている。各シュー31の突端部分には、ワークWの外周面に沿うように円弧状の摺動面31aが形成されている。
【0038】
内周研削時と外周研削時とで、ワークW及び回転台2の回転方向は逆になる。すなわち、内周研削時には、砥石7を時計回りに回転させるとともに、ワークW及び回転台2を時計回りに回転させる。外周研削時には、砥石7を時計回りに回転させるとともに、ワークW及び回転台2を反時計回りに回転させる。
【0039】
そして、シューベース3は、ワークWの回転方向に応じて、基準位置から所定の旋回角度(例えば、-0.4~+0.4°の範囲内)分だけ旋回して、所定位置に配置される。その状態で、シュー31で回転するワークWの外周面を支持し、ワークWを研削する。
【0040】
具体的には、ワークWの中心が回転軸J1から偏心しているので、ワークWには遠心力が作用する。その遠心力によって生じる押付力をシュー31に作用させ、ワークWをシュー31で受け止める。そうすることにより、安定した研削が行える。
【0041】
内周研削時と外周研削時とでは、ワークWの回転方向が逆であるので、ワークWの中心線C1の偏心方向も逆になる。また、内周研削時にはワークWの外径は変化しないが、外周研削時には、ワークWの外周面が研削されるので、ワークWの外径は小さく変化する。それに応じて、シューベース3の旋回方向は、内周研削時と外周研削時とで、それぞれ異なる適切な位置がある。それに応じて、シューベース3は適宜旋回されるように構成されている。
【0042】
回転台2、主軸20、シューベース3などで構成されている加工機8は、
図2に矢印A1で示すように、X軸方向にスライド可能構成されている。そして、加工機8は、後述するサーボモータ65(X軸調整機構)により、X軸方向に移動でき、高精度な位置調整が可能となっている。
【0043】
(コンベア)
コンベア4は、いわゆるベルトコンベアであり、回転台2の前方に隣接した状態でX軸方向に延びるように配置されている。コンベア4は、その上面にワークWを載せ、X軸方向を左側から右側に向かってワークWを搬送する。
【0044】
回転台2の前方に位置したコンベア4の下流側の部分には、位置決め用のストッパ40が設置されている。ストッパ40は、ワークWを受け止めるV形状をした規制部40aを有している。それにより、コンベア4の上流側の部分に載置されたワークWがコンベア4によって搬送されると、ワークWは、その規制部40aによって受け止められ、
図1に仮想線で示すように、所定の受け渡し位置にセットされる。
【0045】
(ローダアーム)
ローダアーム5は、受け渡し位置にセットされたワークWを回転台2の上に移送するために設けられている。ローダアーム5は、水平方向に延びる柱状の部材からなり、その先端部分には、ワークWを搬送可能に支持するワーク支持部50が設けられている。ワーク支持部50のZ軸方向に延びる中心線がワークWの支持中心C3を構成している。
【0046】
このローダアーム5の場合、ワーク支持部50は、複数の係合ピン50aを有し、これら係合ピン50aがワークWの内周面に接することで、ワークWを内側から支持してスライド可能に構成されている。なお、ワーク支持部50の形態はワークWの形状に応じて適宜選択できる。例えば、電磁石でワークWの底面を吸着するように構成してもよい。
【0047】
ローダアーム5の基端部分は軸支部51によって軸支されており、ローダアーム5は、Z軸方向に延びる揺動軸J3を中心に揺動可能に構成されている。揺動軸J3は、回転軸J1及び旋回軸J2よりもコンベア4の側、かつ、回転軸J1及び旋回軸J2よりもコンベア4の上流側に配置されている。揺動軸J3はまた、受け渡し位置よりもコンベア4の上流側に位置している。
【0048】
軸支部51は、不図示のアクチュエータにより、
図1に矢印A2で示すように、Z軸方向に移動可能に構成されている。軸支部51には、後述するサーボモータ64が設置されている。それにより、ローダアーム5は、サーボモータ64の回転駆動により揺動するとともにアクチュエータの駆動により上下動する。
【0049】
具体的には、ローダアーム5は、その先端部分にある支持中心C3が、受け渡し位置にセットされたワークWの中心線C1と一致する位置(移送開始位置)と、支持中心C3が、シューベース3の作用中心C2に一致する位置(移送終了位置)との間を揺動するとともに、係合ピン50aがワークWから抜き差しされるよう、上下動しながら移動する。
【0050】
(制御装置)
図3に、制御装置6及びその主な関連装置を示すブロック図を示す。制御装置6は、旋回角度センサ60、揺動角度センサ61、加工機位置センサ62、シューベース3のサーボモータ63、ローダアーム5のサーボモータ64、加工機8のサーボモータ65などと電気的に接続されている。これら関連装置と電気信号を入出力することにより、制御装置6は、シューベース3、ローダアーム5、加工機8の動作を制御する。
【0051】
制御装置6は、そのハードウエアとして、プロセッサ6a、メモリ6b、インターフェース6cなどを有するとともに、そのソフトウエアとしてメモリ6bに実装された制御プログラム、制御データなどを有している。そして、制御装置6には、その機能的な構成としてアーム位置調整部68が設けられているが、これについては別途後述する。
【0052】
シューベース3を回転駆動するサーボモータ63には、その旋回角度を検出する旋回角度センサ60が付設されている。同様に、ローダアーム5を回転駆動するサーボモータ64には、その揺動角度を検出する揺動角度センサ61が付設されている。
【0053】
加工機8には、そのX軸方向の位置を検出する加工機位置センサ62が付設されている。例えば、受け渡し位置にワークWをセットした時の加工機位置センサ62の値を記憶しておけば、その後に加工機8がX軸方向に移動しても、加工機位置センサ62によって受け渡し位置の相対的な位置が特定できる。
【0054】
(立形研削盤のローディング動作)
この立形研削盤1では、コンベア4の上流側にワークWを載置するだけで、後は自動的にワークWを回転台2の上の適正位置に移送し、ワークWの内周研削及び外周研削の双方が行えるように自動化されている。その概要を
図4、
図5、
図6を参照して説明する。
【0055】
図4の上図に仮想線で示すように、ワークWをコンベア4の上流側に置く。そうして、立形研削盤1の運転を開始すると、コンベア4が作動してワークWをその下流側の右方へと搬送する。コンベア4の下流側にはストッパ40が設置されているので、ワークWは、その規制部40aによって受け止められ、
図4の上図に実線で示すように、所定の受け渡し位置にセットされる。
【0056】
そうして、
図4の下図に示すように、ローダアーム5は、退避した位置から上下動及び揺動することにより、移送開始位置に移動する。そうすることにより、各係合ピン50aがワークWの内周面に接触することによって、ローダアーム5にワークWが支持される。
【0057】
ワークWがローダアーム5によって支持されると、
図4の下図に矢印A1で示すように、サーボモータ65が作動することにより、加工機8がX軸方向に所定距離、スライドする。それに伴い、
図5の上図に示すように、ワークWがコンベア4の上をスライドして、ストッパ40から離れた位置に配置される。
【0058】
そうした後、
図5の下図に示すように、ローダアーム5が揺動し、それに伴い、ワークWは、コンベア4から回転台2へスライドしながら移送され、
図6の上図に示すように、その中心線C1がシューベース3の作用中心C2と一致した状態で回転台2の上に載置される。
【0059】
ワークWが回転台2の上に載置されると、
図6の上図に矢印A1で示すように、サーボモータ65が作動することにより、加工機8がX軸方向を逆にスライドして、元の位置に復帰する。ローダアーム5は、昇降及び揺動することによってワークWから離脱した後、
図6の下図に示すように、退避した位置に移動する。
【0060】
その後、ワークWは、電磁チャックで回転台2に支持されて所定の方向に回転される。そうして、ワークWの外周面をシュー31で支持しながら砥石7の位置や回転を制御することにより、ワークWの内周研削及び外周研削が行われる。
【0061】
<立形研削盤の細部構成>
この立形研削盤1では、軸支部51はシューベース3に組み付けられている。
【0062】
すなわち、軸支部51はシューベース3と一体化されていて、ローダアーム5はシューベース3に軸支された状態となっている。従って、ローダアーム5とシューベース3の相対的な位置関係は一定とされている。それにより、ローダアーム5は、シューベース3の位置に関係無く、ローダアーム5を所定の揺動角度だけ揺動することで、移送開始位置で支持したワークWを、常に、移送終了位置に移送することができる。
【0063】
従って、移送したワークWがシュー31などに接触することを防止できる。
【0064】
その一方で、
図7に仮想線で示すように、シューベース3が実線で示す基準位置から旋回し、基準位置からズレている場合には、それに伴って軸支部51及びローダアーム5の位置も変位する。すなわち、シューベース3が旋回することにより、ローダアーム5と受け渡し位置の相対的な位置関係は不定となる。
【0065】
ローダアーム5やシューベース3の寸法にもよるが、例えば、シューベース3が約0.4°旋回しただけでも、ローダアーム5の支持中心C3の位置は、受け渡し位置(詳細には受け渡し位置にセットされたワークWの中心線C1の位置)から数mmズレてしまう。その状態でローダアーム5が、受け渡し位置に向かって変位すると、ローディング不良、更にはローダアーム5やワークWの破損といった不具合を招くおそれがある。
【0066】
ローディング開始時には常にシューベース3を基準位置に戻すようにすればよいが、そうすれば、適正位置と基準位置との間で、シューベース3を繰り返し旋回させることとなり、誤操作を招き易い。そこで、この制御装置6には、シューベース3の位置に応じて、ローダアーム5と受け渡し位置の位置関係を調整するアーム位置調整部68が設けられている。
【0067】
(アーム位置調整部)
アーム位置調整部68は、ローダアーム5の作動開始時におけるローダアーム5と受け渡し位置の位置関係が任意な状態から、受け渡し位置に対してローダアーム5を適正位置、つまり移送開始位置にセットする処理(アーム位置決め処理)を実行する。
【0068】
例えば、制御装置6のメモリ6bに、シューベース3の旋回角度毎に、ローダアーム5を移送開始位置にセットすることができる制御データを事前に取得し、これら制御データをアーム調整マップとしてメモリ6bに実装する。そうすれば、研削前に受け渡し位置及びシューベース3の旋回角度などの教示(制御装置6への動作情報の入力作業)を行うことにより、アーム位置調整部68は、そのアーム調整マップを用いてアーム位置決め処理を実行することができる。
【0069】
しかし、この場合、ワークWの加工状態に応じて適切な旋回角度を後から変更した場合など、受け渡し位置及び/又はシューベース3の旋回角度に変更があった時には、その都度、受け渡し位置及びシューベース3の旋回角度を教示する必要がある。従って、誤操作し易いという不具合がある。
【0070】
(改良したアーム位置決め処理)
そこで、本実施形態の立形研削盤1では、そのような不具合が解消できるように、アーム位置決め処理が改良されている。すなわち、改良したアーム位置決め処理では、アーム位置調整部68が、ローダアーム5の揺動角度及び受け渡し位置のX軸方向における位置の双方を調整する。
【0071】
具体的には、受け渡し位置の教示に基づいて、Y軸方向にローダアーム5が受け渡し位置に対して適正位置にセットされるように、ローダアーム5の揺動角度を調整した後に、受け渡し位置のX軸方向における位置を調整する。
【0072】
すなわち、固定されているシューベース3の旋回軸J2を原点にして、受け渡し位置の水平面上の位置を特定できるようにする。そうして、受け渡し位置のY軸方向における位置のズレをローダアーム5の揺動角度で調整して誤差を無くす。それにより、ローダアーム5をY軸方向に位置決めできる。受け渡し位置のX軸方向における位置のズレは、加工機8のX軸方向の位置調整によってその誤差を調整できる。それにより、ローダアーム5をX軸方向にも位置決めできる。
【0073】
従って、受け渡し位置の教示を1回行えば、その後は、シューベース3がどのような位置にあっても、簡便かつ正確に、アーム位置決め処理が実行できるようになる。
【0074】
図7を参照して、改良したアーム位置決め処理の内容を説明する。
図7に示すように、シューベース3の旋回軸J2がX軸及びY軸の原点(X=0,Y=0)とされ、それによって水平面上での位置がX軸及びY軸によって規定されている。なお、
図7では、便宜上、距離や角度を誇張して表してある。
【0075】
「A」は、揺動軸J3から支持中心C3までの距離であり、ローダアーム5の長さに相当する(アーム長A)。「B」は、旋回軸J2から揺動軸J3までの距離である(ベース長B)。アーム長A及びベース長Bは固定値であり、制御データとして設定されている。
【0076】
事前に、加工機8及びシューベース3が基準位置に位置している時(揺動角度が0「ゼロ」の時)に、受け渡し位置(詳細には受け渡し位置にセットされたワークWの中心線C1の位置)の教示がなされる。それにより、その時のコンベア4の基準位置(ワークWの中心線C1のX軸方向における位置)、ベース長BとY軸とがなす基準角度(θ0)、アーム長AとX軸とがなす基準角度(φ0)などが制御データとして設定される。なお、いずれの角度も時計回りをプラスとする。
【0077】
これら制御データから、揺動軸J3の位置(XL,YL)が特定される(XL=Bsinθ0,YL=Bcosθ0)。また、揺動軸J3から受け渡し位置までの相対的な距離(LC,LC)も特定される(LC=Acosφ0,LC=Asinφ0)。従って、これらから受け渡し位置の位置(XC,YC)が特定できる(XC=LC-XL,YC=LC+YL)。
【0078】
θ1は、シューベース3が基準位置から旋回角度sで旋回した時にベース長BとY軸とがなす角度である(θ1=θ0+s)。φ1は、その時のアーム長AとX軸とがなす角度である。この状態からアーム位置決め処理する場合を想定する。
【0079】
このときの揺動軸J3の位置(XL1,YL1)は、それぞれ(Bsinθ1,Bcosθ1)である。旋回角度sは旋回角度センサ60で検出されるので、これら位置も特定できる。上述したように、受け渡し位置のY軸方向の位置(YC)は特定されているので、そのときの揺動軸J3から受け渡し位置までのY軸方向の距離(LC1)は算出できる(LC1=YC-YL1)。
【0080】
これらから、ローダアーム5の支持中心C3がその位置(YC)となる揺動角度(φ2)を算出する(φ2=asin(LC1/アーム長A))。この結果に基づいて、
図7に実線及び仮想線のアーム長Aで示すように、ローダアーム5の揺動角度をφ1からφ2に調整する。なお、揺動角度は揺動角度センサ61で検出できる。そうすることで、ローダアーム5の支持中心C3を受け渡し位置におけるY軸方向の適正位置にセットできる(誤差は0)。
【0081】
このとき、ローダアーム5の支持中心C3のX軸方向における位置は未調整である。そこで、旋回角度s、揺動角度φ2などから支持中心C3のX軸方向におけるズレ量ΔXを再計算する。ズレ量ΔXが求まれば、後は、サーボモータ65を作動させ、加工機8をそのズレ量ΔX分移動させる。その結果、ローダアーム5の支持中心C3が受け渡し位置にセットされたワークWの中心線C1と一致し(誤差は0)、ローダアーム5は、適正な移送開始位置にセットされる。
【0082】
従って、この改良されたアーム位置決め処理によれば、受け渡し位置の教示を1回行えば、その後は、シューベース3がどのような位置にあっても、簡便かつ正確に、アーム位置決め処理が実行できるようになる。コンベア4は、加工機8に対して左右逆に配置してあってもよい。X軸方向の位置調整はコンベア4を移動させてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 立形研削盤
2 回転台
3 シューベース
4 コンベア
5 ローダアーム
6 制御装置
7 砥石
8 加工機
31 シュー
40 ストッパ
60 旋回角度センサ
61 揺動角度センサ
62 加工機位置センサ
63 シューベースのサーボモータ
64 ローダアームのサーボモータ
65 加工機のサーボモータ
68 アーム位置調整部
W ワーク(加工対象)
C1 中心線
C2 作用中心
C3 支持中心
J1 回転軸
J2 旋回軸
J3 揺動軸